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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057232
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】ツール保持用装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/10 20060101AFI20230414BHJP
   A61G 15/00 20060101ALI20230414BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
A61G15/10
A61G15/00 P
A61C19/00 H
A61C19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166616
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】516330860
【氏名又は名称】株式会社NNG
(71)【出願人】
【識別番号】517399701
【氏名又は名称】小林 健一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】小泉 元樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 伶
【テーマコード(参考)】
4C052
4C341
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052KK00
4C052LL09
4C341MM11
4C341MN12
4C341MP05
4C341MS02
4C341MS15
4C341MS24
(57)【要約】
【課題】 施術の際に用いられるツールの保持を、施術者の妨げにならずかつ安定的に行うことを可能とする。
【解決手段】 ツール保持用装置10は、施術の際に用いられるツール30の保持に用いられる装置であって、長手方向を有し、少なくとも一方の端部にツール30を取り付け可能な取付用部材100と、一方の端部が施術用のチェア20に座った被施術者P側に向かうように、当該施術用のチェア20の背面で取付用部材100を支持する支持機構200とを備える。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施術の際に用いられるツールの保持に用いられるツール保持用装置であって、
長手方向を有し、少なくとも一方の端部に前記ツールを取り付け可能な取付用部材と、
前記一方の端部が施術用のチェアに座った被施術者側に向かうように、当該施術用のチェアの背面で前記取付用部材を支持する支持機構と、
を備えるツール保持用装置。
【請求項2】
前記取付用部材は、弧状であり、
前記支持機構は、前記取付用部材の両端部が前記施術用のチェアに座った被施術者側に向かうように当該取付用部材を支持する請求項1に記載のツール保持用装置。
【請求項3】
前記支持機構は、前記取付用部材の両端部の間が前記施術用のチェアに座った被施術者の前方に来るように、当該取付用部材を支持する請求項2に記載のツール保持用装置。
【請求項4】
前記取付用部材は、円弧状であり、
前記支持機構は、前記取付用部材を、円弧状の周方向に移動可能な状態で支持することができる請求項2又は3に記載のツール保持用装置。
【請求項5】
前記支持機構は、前記取付用部材の当該支持機構から延びる方向と前記施術用のチェアの背面とが成す角度を変更可能な状態で当該取付用部材を支持することができる請求項1~4の何れか一項に記載のツール保持用装置。
【請求項6】
前記支持機構は、前記施術用のチェアの被施術者の頭部又は頸部を支持する部分の裏で前記取付用部材を支持する請求項1~5の何れか一項に記載のツール保持用装置。
【請求項7】
前記取付用部材は、弧状に延びる細長い部材である請求項1~6の何れか一項に記載のツール保持用装置。
【請求項8】
前記取付用部材は、中空の部材である請求項1~7の何れか一項に記載のツール保持用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施術の際に用いられるツールの保持に用いられるツール保持用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科診療では、バキュームやミラー等のツールが患者の周辺で用いられる。特許文献1には、歯科治療の際にバキュームを保持する装置が示されている。このような装置を用いることで、バキュームを保持する者がいなくても診療を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-284333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される装置は床面に設置されるものであり、歯科治療を行う歯科医師の妨げになるおそれがある。例えば、歯科医師が装置に足を引っかけるおそれがある。また、当該装置は床面から高くのびるスタンド式であるため、ツールを保持する際に不安定で揺れやすい。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、施術の際に用いられるツールの保持を、施術者の妨げにならずかつ安定的に行うことを可能とすることができるツール保持用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るツール保持用装置は、施術の際に用いられるツールの保持に用いられるツール保持用装置であって、長手方向を有し、少なくとも一方の端部にツールを取り付け可能な取付用部材と、一方の端部が施術用のチェアに座った被施術者側に向かうように、当該施術用のチェアの背面で取付用部材を支持する支持機構と、を備える。
【0007】
本発明に係るツール保持用装置によれば、施術用のチェアの背面で支持されると共に、一方の端部が被施術者側に向かうようにされた取付用部材に、ツールが取り付けられて保持される。従って、本発明に係るツール保持用装置によれば、例えば、床面に設置される装置と比べて、ツールの保持を、施術者の妨げになることなくかつ安定的に行うこと可能とすることができる。
【0008】
取付用部材は、弧状であり、支持機構は、取付用部材の両端部が施術用のチェアに座った被施術者側に向かうように当該取付用部材を支持することとしてもよい。この構成によれば、ツールの保持を、更に施術者の妨げになることなくかつ安定的に行うこと可能とすることができる。
【0009】
支持機構は、取付用部材の両端部の間が施術用のチェアに座った被施術者の前方に来るように、当該取付用部材を支持することとしてもよい。この構成によれば、より適切な位置でのツールの保持を可能とすることができる。
【0010】
取付用部材は、円弧状であり、支持機構は、取付用部材を、円弧状の周方向に移動可能な状態で支持することができることとしてもよい。この構成によれば、取付用部材の両端部の位置を円弧状の周方向に移動することができ、より適切な位置でのツールの保持を可能とすることができる。
【0011】
支持機構は、取付用部材の当該支持機構から延びる方向と施術用のチェアの背面とが成す角度を変更可能な状態で当該取付用部材を支持することができることとしてもよい。この構成によれば、施術用のチェアに対する取付用部材の移動の自由度を上げることができ、より適切な位置でのツールの保持を可能とする、あるいは、ツール保持用装置の利便性を向上させることができる。
【0012】
支持機構は、施術用のチェアの被施術者の頭部又は頸部を支持する部分の裏で取付用部材を支持することとしてもよい。この構成によれば、より適切な位置でのより確実なツールの保持を可能とすることができる。
【0013】
取付用部材は、弧状に延びる細長い部材であることとしてもよい。この構成によれば、容易に取付用部材を構成することができ、容易にツール保持用装置を実現することができる。
【0014】
取付用部材は、中空の部材であることとしてもよい。この構成によれば、例えば、中空の部分にツールに電力を供給するためのケーブル等を配置することができ、ツール保持用装置の利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施術の際に用いられるツールの保持を、施術者の妨げにならずかつ安定的に行うことを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るツール保持用装置全体を示す図である。
図2】ツール保持用装置の支持機構を施術用のチェアの背面側から見た図である。
図3】ツール保持用装置の支持機構を施術用のチェアの側面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面と共に本発明に係るツール保持用装置の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0018】
図1に本実施形態に係るツール保持用装置10を示す。ツール保持用装置10は、例えば、歯科医院で用いられる。ツール保持用装置10は、施術用のチェア(歯科用ユニットチェア)20に取り付けられて、施術の際に用いられるツール30の保持に用いられる装置である。ツール保持用装置10は、決められた位置においてツール30が動かないようにツール30を保持する。歯科医院においては通常、被施術者である患者Pがチェア20に座った状態で施術が行われる。本実施形態における施術とは、患者Pがチェア20に座った状態で、歯科医師や歯科衛生士等の歯科スタッフが患者Pに対する診察、治療、及び治療に関する説明等を行うことである。
【0019】
歯科スタッフが施術を行う際は、種々のツールが用いられる。ツールのなかには、患者Pの周辺(例えば、患者Pの口腔の周辺)に配置されることが好適なものがある。ツール30はそのようなツールであり、より具体的には、口腔を映すミラー、口腔からの飛散物を吸引して回収するバキューム、口腔に当てる治療用ライト、口腔の状態や施術状況を撮像するためのカメラ、及び施術中の音声を記録するためのマイク等である。ツール30は、ツール保持用装置10及び保持機構32によって保持される。ツール保持用装置10及び保持機構32によってツール30が保持されることで、施術の際に歯科助手等がツール30を手で持ち続ける作業が不要になる。保持されるツール30は、歯科スタッフが行う施術に応じて取り換えることができる。なお、例として図1に示すツール30は、薄型の治療用ライトである。
【0020】
本実施形態に用いられるチェア20としては、従来の歯科診療用のチェアを用いることができる。例えば、チェア20は、図1に示すように背もたれ及びヘッドレストを有するものであってもよい。また、背もたれ及びヘッドレストは、角度が調整できるもの、即ち、リクライニング可能なものであってもよい。
【0021】
引き続いて、本実施形態に係るツール保持用装置10の構成を説明する。図1に示すようにツール保持用装置10は、取付用部材100と、支持機構200とを備えて構成される。図2にチェア20の背面側から見た支持機構200を示す。図3にチェア20の側面側から見た支持機構200を示す。
【0022】
取付用部材100は、ツール30を取り付けるための部材である。取付用部材100は、長手方向を有し、少なくとも一方の端部にツール30を取り付け可能である。例えば、取付用部材100は、弧状である。取付用部材100は、円弧状であってもよい。取付用部材100は、弧状の細長い部材であってもよい。取付用部材100は、中空の部材であってもよい。
【0023】
支持機構200は、取付用部材100をチェア20に対して取り付けて支持する機構である。支持機構200は、一方の端部がチェア20に座った患者P側に向かうように、チェア20の背面で取付用部材100を支持する。例えば、支持機構200は、弧状の取付用部材100の両端部がチェア20に座った患者P側に向かうように、チェア20の背面で当該取付用部材100を支持する。支持機構200は、弧状の取付用部材100の両端部の間がチェア20に座った患者Pの前方に来るように、当該取付用部材100を支持してもよい。支持機構200は、取付用部材100を、円弧状の周方向に移動可能な状態で支持できてもよい。支持機構200は、取付用部材100の当該支持機構200から延びる方向とチェア20の背面とが成す角度を変更可能な状態で当該取付用部材100を支持できてもよい。支持機構200は、チェア20の患者Pの頭部又は頸部を支持する部分の背面で取付用部材100を支持してもよい。
【0024】
例えば、取付用部材100及び支持機構200は、以下に示す構成を取る。図1に示すように、取付用部材100は、円弧状(C字状)に延びる細長い部材である。取付用部材100は、複数のツール30が取り付けられても変形しない程度の剛性を有する材料によって構成される。
【0025】
取付用部材100は、延びる方向と垂直の断面が円形の形状の部材である。但し、断面は円形である必要はなく、矩形又はその他の形状であってもよい。取付用部材100は、中空の部材であってもよく、その場合には中空部は、ツール30に電力を供給するためのケーブル(電気コード)等を配するために用いられてもよい。また、取付用部材100は、部材の延びる方向に沿って切込みが入っていてもよい。この場合、切込みにケーブル等を押し込むことで、ケーブル等を取付用部材100内に配することができ、配線が邪魔になりにくくなる。
【0026】
より具体的には、取付用部材100は、アルミニウムのパイプである。但し、取付用部材100は、アルミニウム以外の金属で構成されていてもよく、また、金属以外の部材で構成されていてもよい。また、ケーブル等を取付用部材100に通す場合には、取付用部材100の側面にケーブル等を通すことができる貫通孔を設けてもよい。
【0027】
例えば、取付用部材100の円弧の直径は50cmである。取付用部材100の太さ(断面の外径)は、後述するように保持機構32を介してツール30が安定して取り付けられる程度の太さ(例えば、数cm)であればよい。取付用部材100の円弧の中心角は240°である。即ち、120°の部分は円弧が切れて隙間になっている。なお、取付用部材100のサイズは、上記に限られるものではなく、保持機構32を介したツール30の取り付けに適したものであればよい。取付用部材100の隙間部分(取付用部材100の2つの端部100aの間の部分)は、患者Pの頭部等が通り抜けられる広さとしておいてもよい。
【0028】
取付用部材100の形状は、厳密な円弧である必要はなく、楕円又は歪みがある円弧であってもよい。また、取付用部材100の形状は、円弧状ではない弧状(例えば、U字状)であってもよい。
【0029】
支持機構200は、チェア20の背面に固定的に取り付けられる。なお、チェア20の背面とは、チェア20のうち、着席した患者Pの腰、背中、頸部及び頭部の、少なくともいずれか一つを支える部分の裏側である。より具体的には、チェア20の背面とは、背もたれ及びヘッドレストの後面である。支持機構200は、チェア20の患者Pの頭部を支持する部分であるヘッドレストの裏に固定的に取り付けられる。支持機構200のチェア20へ取り付けられる部分210としては、従来の取り付けの機構を用いることができる。
【0030】
支持機構200は、取付用部材100を支持する部材として、2つの支持用部材220を有している。2つの支持用部材220は、支持機構200のチェア20へ取り付けられる部分210に接続されている。2つの支持用部材220にはそれぞれ、取付用部材100の円弧状の形状にあわせた溝が設けられている。支持機構200は、2つの支持用部材220で挟むことで取付用部材100を支持する。支持用部材220は、PLA(ポリ乳酸)等の樹脂製であり、3Dプリンタを用いて作成される。但し、支持用部材220の材料および作成方法はこれに限られない。
【0031】
2つの支持用部材220によって挟まれる取付用部材100の部分は、円弧の中程の位置である。即ち、支持機構200は、取付用部材100を、取付用部材100の円弧の中程の位置で固定(支持)する。支持用部材220は、弧状の取付用部材100の両端部100aがチェア20に座った患者P側に向かうように当該取付用部材100を支持する。更には、図1に示すように、支持用部材220は、円弧状の取付用部材100の両端部100aの間がチェア20に座った患者Pの前方(例えば、当該患者Pの顔面の前方)に来るように、当該取付用部材100を支持してもよい。その際の円弧の中心は、チェア20に座った患者Pの(頭部の)位置になるようにしてもよい。即ち、支持用部材220は、そのように取付用部材100を支持できるように支持機構200に設けられる。
【0032】
取付用部材100がこのような位置に配置されることで、取付用部材100の両端部100aが、チェア20に座った患者Pの近傍に位置することとなる。その状態で、取付用部材100にツール30を取り付ければ、ツール30を患者Pの近傍で保持することができる。
【0033】
上記の2つの支持用部材220は、ネジによって接続されており、ネジを締めると2つの支持用部材220同士が互いに近づいて取付用部材100が動かないように固定される。ネジを緩めると2つの支持用部材220同士が互いに離れて取付用部材100を固定する力が弱まる。これにより、図1図3に示すように、取付用部材100は円弧状の周方向C、即ち、取付用部材100の軸方向に移動(摺動)可能な状態となる。このようにして、支持機構200は、ネジ締結によって取付用部材100を支持する。なお、ネジの締緩は、ツール保持用装置10のユーザ等によって行われてもよいし、電磁的に行われるものであってもよい。
【0034】
また、図3に示すように、取付用部材100の周方向Cの移動がしやすいように、支持機構200には、プーリ(滑車)230が設けられていてもよい。プーリ230は、対向する2つを1セットとして、支持用部材220の両脇に1セットずつ設けられ、支持用部材220に対して位置決め及び固定される。プーリ230の各セットは、取付用部材100を挟み込んで、取付用部材100が周方向Cに移動する際に回転するように設けられる。プーリ230は、支持用部材220と同様にPLA等の樹脂製であり、3Dプリンタを用いて作成される。但し、プーリ230の材料および作成方法はこれに限られない。プーリ230が設けられることで、より取付用部材100が周方向Cに移動しやすくなる。
【0035】
上記のように取付用部材100を周方向Cに移動可能な状態で当該取付用部材100を支持することで、取付用部材100の端部100aの位置を所望の位置に移動させることができる。これによってツール30をより望ましい位置で保持することができる。
【0036】
支持用部材220及びプーリ230からは、例え支持用部材220のネジを緩めた状態であっても、所定の押さえ力が取付用部材100に働いているとしてもよい。この場合、支持用部材220のネジを緩めた状態であっても、取付用部材100を移動させるためにはある程度の外力を取付用部材100に加える必要がある。このようにすることで、取付用部材100の位置を調整している最中に重力により取付用部材100が急に下がり、チェア20に座っている患者Pにぶつかるといったことが起きるのを防止できる。
【0037】
なお、取付用部材100を支持する機構は、上記のように2つの支持用部材220で挟んで支持する機構(クランプ機構)以外のものであってもよい。例えば、部材に貫通孔を設け、その貫通孔に取付用部材100を通すことによって取付用部材100を支持する機構であってもよい。
【0038】
支持機構200において、支持用部材220自体が、取付用部材100を挟み込んだ状態で回転できるようになっている。具体的には、支持機構200は、支持用部材220とチェア20へ取り付けられる部分210との間にその部分を中心に支持用部材220を回転できるような機構240を有している。機構240の部分に、支持用部材220の回転軸が設けられる。図1図3に示すように、2つの支持用部材220が鉛直方向に並んでいた場合に、チェア20の前後方向と垂直な方向かつ水平方向(図2における紙面の左右方向、図3における紙面の奥行方向)に延びる中心軸とした回転方向R1、及び鉛直方向(図2における紙面の上下方向、図3における紙面の上下方向)に延びる中心軸とした回転方向R2に回転できるようになっている。
【0039】
より具体的には、上記の回転の機構240は、ピンによって部材同士を連結させて、ピンを回転軸として回転させるものである。機構240の回転はロックすることが可能である。機構240は、より安全を確保するため、ツール30を用いて歯科スタッフが施術をしている間は、上記の回転が行われないように回転をロックする構成としてもよい。なお、回転は、上記のように2方向で行われる必要はなく、1方向又は3つ以上の方向で行われてもよい。また、回転軸及び回転の方向も上述したものに限られない。また、回転の機構240も上述したもの以外が用いられてもよい。
【0040】
上記のように支持用部材220を回転させることで、取付用部材100の支持機構200から延びる方向とチェア20の背面とが成す角度を変更させることができる。即ち、チェア20に対する取付用部材100の角度及び位置を調整することができる。
【0041】
これによって、例えば、患者Pがチェア20に座る前には、取付用部材100をヘッドレスト上方に跳ね上げて、取付用部材100が、患者Pがチェア20に座る際の妨げにならないようにすることができる。より具体的には、図1において、取付用部材100の隙間部分が鉛直方向の上側を向くようにする(即ち、取付用部材100の支持機構200から延びる方向を鉛直方向の上側にする)ことができる。一方で、患者Pがチェア20に座った後には、取付用部材100を下ろして患者Pの側頭部を囲むようにすることができる。より具体的には、図1に示すように取付用部材100の隙間部分が患者Pの前方に来るようにする(即ち、取付用部材100の支持機構200から延びる方向を水平方向にする)ことができる。なお、上記のように支持機構200は、取付用部材100を、ツール30の使用時つまり施術中はチェア20に対して動かないように固定し、ツール30の使用前つまり施術開始前や施術終了後あるいは施術を中断している間はチェア20に対して動くようにしてもよい。
【0042】
また、支持機構200は、チェア20の背面から取り外し可能となっている。従って、チェア20の交換時等には支持機構200を取り外し、新たなチェアに取り付けることができる。なお、支持機構200がチェア20に対し、取り外しできないように一体化されているとしてもよい。以上が、本実施形態に係るツール保持用装置10の構成である。
【0043】
上記のツール保持用装置10の取付用部材100には、保持機構32を介してツール30が取り付けられる。ツール30が取り付けられる位置は、例えば、図1に示されるようにチェア20に座った患者Pの近傍に位置する端部100a辺りである。但し、ツール30が取り付けられる位置は、上記に限られず、任意の箇所であってもよい。また、取付用部材100には、複数のツール30が取り付けられるとしてもよい。ツール30の取り付けの際には、保持機構32を介して位置や角度の調整がなされる。これによりツール30を適切な位置にて保持させることができる。取付用部材100に対するツール30の取り付けは、取付用部材100がチェア20に対して動かないよう固定された後に行われる。
【0044】
保持機構32は、ツール30を取付用部材100に取り付けるための機構である。保持機構32は、取付用部材100に対し取り付け及び取り外しが可能である。保持機構32は、例えば、図1に示すように、取付用部材100を挟み込むことができるクリップ形状となっている。また、保持機構32は、ツール30を着脱自在に保持できる。保持機構32が取付用部材100に取り付けられ、さらに保持機構32がツール30を保持することにより、ツール30は取付用部材100に取り付けられる。
【0045】
また、保持機構32は、クリップのように取付用部材100を挟む構造ではなく、貫通孔を有し、当該貫通孔に取付用部材100を通すことによって取付用部材100に取り付けられるものであってもよい。また、保持機構32は、各脚を自由に曲げることができる三脚のようなボールジョイントによる多関節構造によって取付用部材100を掴むものであってもよいし、フレキシブルアームを取付用部材100に巻き付ける構造であってもよい。そのほか、保持機構32は、クランプやネジ締結等によって取付用部材100に固定されるとしてもよい。また、保持機構32がツール30を保持する構造としては、クランプやネジ締結等を利用するとしてもよい。また、保持機構32は、ツール30と一体的に形成されていてもよい。
【0046】
上述したように本実施形態によれば、施術用のチェア20の背面で支持されると共に、弧状の取付用部材100の両端部100aが患者P側に向かうようにされた取付用部材100にツール30が取り付けられて保持される。取付用部材100は、チェア20の背面で支持されているので、施術者である歯科スタッフの妨げになりにくく、また、足を引っかけて倒してしまうこともない。このように、本実施形態によれば、床面に設置される装置と比べて、ツール30の保持を、歯科スタッフの妨げにならずかつ安定的に行うことが可能となる。また、取付用部材100は円弧状であり、端部100aの間には隙間があるので、例えば、施術中に患者Pが急に頭を動かしても、取付用部材100が患者Pにぶつかる危険が少ない。また、上記の隙間があることで患者の視野に取付用部材100が入り込みにくくなり、患者Pが圧迫感を感じにくくなる。歯科スタッフにとっても、上記の隙間から施術を行うことができるので、施術がしやすくなる。
【0047】
また、上述した実施形態のように、支持機構200は、取付用部材100の両端部100aの間がチェア20に座った患者Pの前方に来るように、当該取付用部材100を支持してもよい。この構成によれば、患者Pの前方でツール30を保持することができる。即ち、この構成によれば、より適切な位置でのツールの保持が可能となる。特に上述したように円弧の中心を患者Pの位置にすれば、取付用部材100と患者Pとの距離を一定とすることができ、ツール30の位置のコントロールが容易になる。但し、取付用部材100の両端部100aの間は、必ずしも患者Pの前方に来る必要はなく、取付用部材100の両端部100aが患者Pに向かうようにされればよい。
【0048】
また、上述した実施形態のように、取付用部材100が周方向Cに移動可能な状態にされてもよい。この構成によれば、取付用部材100の両端部100aの位置を周方向Cに移動することができ、より適切な位置でのツール30の保持が可能となる。但し、取付用部材100の周方向Cへの移動はできなくてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態のように、取付用部材100の支持機構200から延びる方向とチェア20の背面とが成す角度を変更可能な状態にされてもよい。即ち、チェア20に対する取付用部材100の角度及び位置を調整できるようにしてもよい。この構成によれば、チェア20に対する取付用部材100の移動の自由度を上げることができ、より適切な位置でのツール30の保持が可能となる。あるいは、ツール保持用装置10の利便性を向上させることができる。例えば、上述したように、患者Pがチェア20に座る前には、着席の邪魔にならないよう取付用部材100をヘッドレスト上方に跳ね上げおくことができる。また、患者Pが座った後に取付用部材100を下ろし、ツール30を最適な位置及び角度とすべく取付用部材100を移動させることもできる。但し、取付用部材100の上記の移動はできなくてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態のように、取付用部材100は、チェア20の患者Pの頭部を支持する部分であるヘッドレストの裏で支持されてもよい。あるいは、取付用部材100が支持される部分は、患者Pの頸部を支持する部分の裏であってもよい。この構成によれば、本実施形態のように取付用部材100を適切な位置に配置することができ、より適切な位置でのより確実なツール30の保持を可能とすることができる。但し、取付用部材100は、ヘッドレストの裏で支持される必要はなく、チェア20の背面で支持されればよい。例えば、チェア20の背もたれの裏でもよい。
【0051】
また、上述した実施形態のように、取付用部材100は、弧状に延びる細長い部材であってもよい。この構成によれば、例えば、本実施形態のように円弧状のパイプを取付用部材100とすることができる。即ち、容易に取付用部材100を構成することができ、容易にツール保持用装置10を実現することができる。但し、取付用部材100は、必ずしも細長い部材である必要はなく、ツール30を取り付け可能な弧状の部分を含むものであればよい。
【0052】
また、上述した実施形態のように、取付用部材100は、パイプ等の中空の部材であってもよい。この構成によれば、例えば、中空の部分にツール30に電力を供給するためのケーブル等を配置することができ、ツール保持用装置の利便性を向上させることができる。中空の部分にケーブル等を配置すれば、ケーブル等が施術の妨げになることを防止することができる。また、ケーブル等が見えなくなるので外観も向上する。また、取付用部材100を中空の部材とすることで取付用部材100を軽くすることができ、取付用部材100の自重によるたわみを軽減することができる。但し、取付用部材100は、中空の部材である必要はなく、中空ではない部材(中実の部材)であってもよい。
【0053】
また、取付用部材100は、長手方向を有し、少なくとも一方の端部にツール30を取り付け可能なものであればよい。支持機構200は、一方の端部がチェア20に座った患者P側に向かうように、当該チェア20の背面で取付用部材100を支持すればよい。例えば、取付用部材100を、曲線状(例えば、半弧状)の細長い部材とし、支持機構200は、取付用部材100の一方の端部がチェア20に座った患者P側に向かうように、取付用部材100のもう一方の端部を支持するようにしてもよい。また、このような取付用部材100を2本用いて、患者Pの左右の側でツール30を保持できるようにしてもよい。また、取付用部材100は、弧状である必要はない。例えば、取付用部材100は、直線状の細長い部材を組み合わせた形状であってもよい。
【0054】
なお、本実施形態では、施術用のチェア20を歯科医院の診察等に用いられるものとしたが、歯科医院以外で用いられる施術用のチェアを対象としてもよい。ツール保持用装置は、被施術者が施術用のチェアに座った状態で、施術の際に用いられる何らかのツールの保持が必要な場合に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
10…ツール保持用装置、100…取付用部材、200…支持機構、220…支持用部材、230…プーリ、20…チェア、30…ツール、32…保持機構。
図1
図2
図3