(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057238
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20230414BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G06T1/00 300
G01N21/27 A
G06T1/00 500A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166625
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓也
(72)【発明者】
【氏名】張本 和芳
(72)【発明者】
【氏名】林 祐光
【テーマコード(参考)】
2G059
5B057
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059DD20
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF01
2G059HH02
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
2G059PP04
5B057AA01
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE08
5B057CE17
5B057DA08
5B057DA16
5B057DB02
5B057DC04
5B057DC25
(57)【要約】
【課題】反毛フェルトの仕上がり具合を容易に事前確認できる画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理方法を提案する。
【解決手段】本発明は、標準サンプル画像データを解析して標準サンプルの混毛領域と単毛領域を判定する判定部11と、原材料画像データを解析して原材料の色別面積比を算出する算出部12と、混毛領域に対して色別面積比に基づく混色濃淡彩色加工をし、単毛領域に対して色別面積比に基づくランダム彩色加工をし、模擬画像データを生成する生成部13と、を備える画像処理装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反毛フェルトの標準サンプル画像データを解析して標準サンプルの混毛領域と単毛領域を判定する判定部と、
原材料画像データを解析して原材料の色別面積比を算出する算出部と、
前記混毛領域に対して前記色別面積比に基づく混色濃淡彩色加工をし、前記単毛領域に対して前記色別面積比に基づくランダム彩色加工をし、前記原材料を使用した反毛フェルトの模擬画像データを生成する生成部と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1の画像処理装置とタブレット端末とを備える画像処理システムであって、
前記タブレット端末は、
建物の表面を撮影する撮影部と、
前記画像処理装置から取得した前記模擬画像データを、前記撮影された表面とともに画面表示する表示部を備える画像処理システム。
【請求項3】
請求項1の画像処理装置とタブレット端末とを備える画像処理システムであって、
前記タブレット端末は、
前記画像処理装置から取得した前記模擬画像データを、建物の表面に投影させる投影部と、を備える画像処理システム。
【請求項4】
前記投影部が、前記標準サンプルを脱色して得られる脱色資材を下地に用いて前記模擬画像データと重ねて前記表面に投影させる請求項3に記載の画像処理システム。
【請求項5】
反毛フェルトの標準サンプル画像データを解析して標準サンプルの混毛領域と単毛領域を判定するステップと、
原材料画像データを解析して原材料の色別面積比を算出するステップと、
前記混毛領域に対して前記色別面積比に基づく混色濃淡彩色加工をし、前記単毛領域に対して前記色別面積比に基づくランダム彩色加工をし、前記原材料を使用した反毛フェルトの模擬画像データを生成するステップと、を実行する画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リサイクル推進の観点から反毛フェルトを用いた製品の技術開発が盛んである。例えば、特許文献1には、反毛フェルト層を有する成形用吸音マットが開示されている。この成形用吸音マットは、ジーンズ古着を解繊したジーンズ反毛とバインダ繊維とを混綿してジーンズ反毛フェルト層を形成したものである。
従来、反毛フェルトの仕上がりを事前に確認するため、実際の原材料(古布など)からサンプルを作成していた。サンプルの作成は、多大な時間と費用を要するとともに、相当量の原材料が必要となる。
反毛フェルトの仕上がり具合は、製造設備や混合する材料の量や種類に依存しており、サンプルの作成には、反毛フェルトの製造を行う業者の協力が不可欠である。よって、多くの業者に同時に依頼して作成してもらったサンプルを比較検討し、業務委託先を選択することになるが、業務委託の検討段階で相当量の原材料が必要となる。
しかしながら、反毛加工後の二次生産品に対して、加工前の原材料の色味や素材感を残す目的で、例えば、ユニフォーム等単一種の衣類のみを原材料として用いて二次生産品としての反毛フェルトを製造する場合、資源として確保できる原材料の物量が限られており、サンプルを作成する余裕がない場合が多い。この場合、サンプルを作成せず、事前確認無しで反毛フェルトを製造せざるを得なかった。しかし一方で、原材料が限られているからこそ二次生産品の品質を担保して欲しいという要求があり、この要求を満たすためにサンプルを作成し、反毛フェルトの仕上がり具合を事前に確認したいという要求もある。
なお、特許文献1には、そもそも反毛フェルトの事前確認に関する課題の提示がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような観点から、本発明は、反毛フェルトの仕上がり具合を容易に事前確認できる画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、反毛フェルトの標準サンプル画像データを解析して標準サンプルの混毛領域と単毛領域を判定する判定部と、原材料画像データを解析して原材料の色別面積比を算出する算出部と、前記混毛領域に対して前記色別面積比に基づく混色濃淡彩色加工をし、前記単毛領域に対して前記色別面積比に基づくランダム彩色加工をし、前記原材料を使用した反毛フェルトの模擬画像データを生成する生成部と、を備える画像処理装置である。
また、本発明は、反毛フェルトの標準サンプル画像データを解析して標準サンプルの混毛領域と単毛領域を判定するステップと、原材料画像データを解析して原材料の色別面積比を算出するステップと、前記混毛領域に対して前記色別面積比に基づく混色濃淡彩色加工をし、前記単毛領域に対して前記色別面積比に基づくランダム彩色加工をし、前記原材料を使用した反毛フェルトの模擬画像データを生成するステップと、を有する画像処理方法である。
反毛フェルトの標準サンプルは、反毛フェルトを製造する製造設備を用いる業者で予め用意できるものである。具体的に、標準サンプルは、当該業者における一般的な原材料を用いて当該業者の製造設備により事前に作成した標準品のサンプルであり、オーダ品に係る特定の原材料(原材料画像データに写っている原材料と同種の原材料)から作成したものである必要はない。つまり、標準サンプルおよび標準サンプル画像データの作成にオーダ品用の原材料を必要としない。また、標準サンプルの混毛領域と単毛領域の分布は、主に製造設備の解繊性能によって決定されるのであり、解繊対象の材質の違いにあまり影響されない。また、オーダ品用の原材料を使用した反毛フェルトの模擬画像データは、オーダ品用の原材料に用いられている色の種類や割合に対して、標準サンプルの混毛領域および単毛領域の各々に対応する彩色加工がなされた画像データであり、オーダ品用の原材料から実際に製造した反毛フェルトの仕上がり具合の再現性は高い。よって、サンプルの作成なしで、反毛フェルトの仕上がり具合を容易に事前確認できる。また、構想段階でのデザイン検討が可能となる。
【0006】
また、前記画像処理装置とタブレット端末とを備える画像処理システムであって、前記タブレット端末は、建物の表面を撮影する撮影部と、前記画像処理装置から取得した前記模擬画像データを、前記撮影された表面とともに画面表示する表示部を備えることが好ましい。
かかる構成によれば、建物の表面(壁面、床面、天井面、建具の表面など)に反毛フェルトを貼設した場合の内装(または外装でもよい)の仕上がり具合の事前確認を容易にできる。
【0007】
また、前記画像処理装置とタブレット端末とを備える画像処理システムであって、前記タブレット端末は、前記画像処理装置から取得した前記模擬画像データを、建物の表面に投影させる投影部と、を備えることが好ましい。
かかる構成によれば、建物の表面に反毛フェルトを貼設した場合の内装(または外装でもよい)の仕上がり具合の事前確認を容易にできる。
【0008】
また、前記投影部が、前記標準サンプルを脱色して得られる資材を下地に用いて前記模擬画像データと重ねて前記表面に投影させることが好ましい。
かかる構成によれば、脱色下地により、反毛フェルトを建物の表面に貼設した場合の質感(繊維の粗密や色の混ざり具合、肌触りなど)をイメージし易くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反毛フェルトの仕上がり具合を容易に事前確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の画像処理システムの機能構成図である。
【
図2】汎用的な標準サンプル画像データの例である。
【
図7】模擬画像データの生成のフローチャートである。
【
図8】AR技術を利用したときの内装仕上がり事前確認の説明図である。
【
図9】画像投影技術を利用したときの内装仕上がり事前確認の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
[構成]
図1は、本実施形態の画像処理システムの機能構成図である。画像処理システム100は、画像処理装置1と、タブレット端末2とを備えている。画像処理装置1は、画像データなどの各種データに対して所定の演算処理をする計算機である。タブレット端末2は、ユーザが携帯可能であり、データに対して所定の演算処理をする計算機である。画像処理装置1とタブレット端末2は、互いに無線通信可能に接続されているが、有線通信可能に接続されていてもよい。画像処理装置1とタブレット端末2はそれぞれ、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備える。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータに含まれる記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供可能となる。出力部は、画面表示をする表示部の機能を含めてもよい。
【0013】
画像処理装置1は、判定部11と、算出部12と、生成部13とを備えている。
判定部11は、標準サンプル画像データを解析して標準サンプルの混毛領域と単毛領域を判定する。
算出部12は、原材料画像データを解析して原材料(オーダ品の原材料)の色別面積比を算出する。
生成部13は、混毛領域に対して色別面積比に基づく混色濃淡彩色加工をし、単毛領域に対して色別面積比に基づくランダム彩色加工をし、模擬画像データを生成する。
標準サンプル画像データ、標準サンプル、混毛領域、単毛領域、原材料画像データ、原材料、色別面積比、混色濃淡彩色加工、ランダム彩色加工、および模擬画像データについては後記する。
【0014】
タブレット端末2は、撮影部21と、表示部22と、投影部23とを備えている。
撮影部21は、建物の表面(壁面、床面、天井面、建具の表面など)を撮影する。
表示部22は、画像処理装置1から取得した模擬画像データを、撮影された建物の表面とともに画面表示する。
投影部23は、画像処理装置1から取得した模擬画像データを、建物の表面に投影させる。また、投影部23は、標準サンプルを脱色して得られる脱色資材を下地に用いて模擬画像データを重ねて建物の表面に投影させることができる。
脱色資材については後記する。
【0015】
(標準サンプル画像データ、標準サンプル)
標準サンプル画像データは、所定の撮影装置で標準サンプルを撮影して生成される画像データである。標準サンプルは、加工を想定する製造設備で製造した反毛フェルトのサンプルである。標準サンプルは、製造設備を用いる業者で予め用意できる。反毛フェルトの製造の依頼者は、業者から標準サンプルを入手し、撮影装置で撮影することで標準サンプル画像データを取得できる。また、業者が標準サンプル画像データを依頼者に提供してもよい。
【0016】
(混毛領域、単毛領域)
反毛フェルトは、製造設備が原材料としての古着などを解繊した後、混綿することで製造される。このような反毛フェルトの布地は、混毛領域と単毛領域に分けることができる。
混毛領域は、原材料を構成する複数種類の繊維が混ざりあった領域である。混毛領域の色は、複数種類の繊維の色が混ざり合うため灰色に近づく。換言すれば、混毛領域の色のRGB値は、RGB=127:127:127に値になる。なお、灰色が濃い場合、RGB値は、RGB=0:0:0に近づき、灰色が薄い(淡い)場合、RGB値は、RGB=255:255:255に近づく。
単毛領域は、原材料を構成する複数種類の繊維のうち特定の繊維がそのまま残った領域である。単毛領域の色は、1つの繊維の色味がそのまま残るため、当該繊維の色になる。換言すれば、単毛領域の色のRGB値の比は、該当繊維の色のRGB値と同一である。
図2は、汎用的な標準サンプル画像データの例である。
図2に示すように、標準サンプルの表面の大部分は混毛領域であるが、符号4に示すように、一定の割合で単毛領域が存在する(
図2にて符号4で示さない単毛領域も存在する)。
図3は、標準サンプル画像データの例である。
図4は、混毛領域および単毛領域の説明図である。
図4において、
図3の標準サンプル画像データの全領域のうち混毛領域が黒色で示されており、単毛領域が白色で示されている。判定部11は、画像解析により、標準サンプル画像データの彩度を画素ごとに特定できる。例えば、判定部11は、画素の彩度が10%以下であれば混毛領域であると判定できる。判定部11は、画素の彩度が10%を超える領域の色彩領域、白領域、黒領域を単毛領域と判定できる。
【0017】
(原材料画像データ、原材料)
原材料画像データは、所定の撮影装置でオーダ品用の原材料を撮影して生成される画像データである。原材料は、業者に製造してもらう予定の反毛フェルトの原材料(例:ユニフォーム等単一種の衣類の古着)である。
図5は、原材料画像データの例である。原材料画像データは、依頼者が用意できる。
【0018】
(色別面積比)
例えば、算出部12は、
図5の原材料画像データのうち背景部分画像を除いた被写体部分画像を対象にして原材料の色別面積比を算出できる。色別面積比は、原材料に使用されている色が、原材料の全面積のうちどれくらいの割合を占めているかを示す値である。
図5の場合、原材料の古着に使用されている色は、紺色と白色であり、色別面積比は、紺色:白色=7:3(紺色70%、白色30%)である。
【0019】
(混色濃淡彩色加工)
生成部13は、標準サンプル画像データの混毛領域に対して混色濃淡彩色加工をすることができる。混色濃淡彩色加工は、混毛領域に彩色される灰色を構成する白色黒色の濃淡を、原材料となる古着を構成する複数種類の色を混ぜた場合の濃淡に置き換える画像処理である。
図5の場合、生成部13は、混毛領域に彩色される灰色を構成する白色黒色の濃淡を、白色紺色の濃淡に置き換える。より詳細には、標準サンプル画像データの混毛領域に濃い灰色が彩色されている場合、生成部13は当該混毛領域に濃い紺色を彩色する。標準サンプル画像データの混毛領域に薄い(淡い)灰色が彩色されている場合、生成部13は当該混毛領域に薄い紺色を彩色する。また、混毛領域全体に分布する紺色の濃淡は、
図5の原材料画像データの色別面積比(紺色:白色=7:3)に基づく。つまり、特定の混毛領域に濃い紺色が彩色されるとしても、当該混毛領域に彩色される紺色の彩度は、本来の紺色(白色の混色がない紺色)の彩度のせいぜい7割程度である。
【0020】
(ランダム彩色加工)
生成部13は、標準サンプル画像データの単毛領域に対してランダム彩色加工をすることができる。ランダム彩色加工は、単毛領域に彩色される単色を、原材料となる古着を構成する複数種類の色のいずれかにランダムに置き換える画像処理である。また、置き換えられる色は、原材料画像データの色別面積比に基づく。
図5の場合、生成部13は、原材料画像データの色別面積比(紺色:白色=7:3)に基づいて、単毛領域に彩色される単色を、70%の確率で紺色に置き換え、30%の確率で白色に置き換える。
【0021】
(模擬画像データ)
模擬画像データは、生成部13が、混色濃淡彩色加工をした混毛領域と、ランダム彩色加工をした単毛領域とを合わせることで生成される画像データである。
図6は、模擬画像データの例である。
図6の模擬画像データは、
図3の標準サンプル画像データから特定される混毛領域および単毛領域に対しそれぞれ、
図5の原材料画像データから得られる色別面積比に基づいて混色濃淡彩色加工およびランダム彩色加工がされた場合の画像データに相当する。
発明者は、模擬画像データの再現性を検証した。具体的には、発明者は、
図3の標準サンプル画像データに表示される標準サンプルを製造した製造設備によって、
図5の原材料画像データに表示されている原材料(古着)から反毛フェルトを実際に製造してもらった。また、発明者は、当該反毛フェルトを撮影装置で撮影して実反毛フェルト画像データ(図示略)を生成した。発明者が、模擬画像データと実反毛フェルト画像データの各々に対して、色構成の分析を行い、これらの分析結果を比較検討したところ、各々の単毛領域を構成する濃い単色の繊維の割合が同程度に存在することが確認された。つまり、模擬画像データは、実反毛フェルト画像データに類似しており、模擬画像データの再現性は良好であるといえる。よって、
図5の原材料(古着)を実際に作成することなく、模擬画像データを用いた事前確認が有用であるといえる。
なお、原材料の材質を考慮して、標準サンプルまたは標準サンプル画像データを選択する必要性は乏しい。標準サンプルの混毛領域と単毛領域の分布は、主に製造設備の解繊性能によって決定されるのであり、解繊対象の材質の違いにあまり影響されないためである。よって、原材料と同じ材質の標準サンプルの標準サンプル画像データから模擬画像データを生成してもよいし、原材料と異なる材質の標準サンプルの標準サンプル画像データから模擬画像データを生成してもよい。いずれの模擬画像データであっても再現性は良好である。
【0022】
[処理]
画像処理装置1の処理について説明する。
図7は、模擬画像データの生成のフローチャートである。まず、画像処理装置1は、外部から取得した標準サンプル画像データを入力する(ステップS1)。次に、判定部11が、標準サンプル画像データを解析して標準サンプルの混毛領域と単毛領域を判定する(ステップS2)。一方、画像処理装置1は、外部から取得した原材料画像データを入力する(ステップS3)。次に、算出部12が、原材料画像データを解析して原材料の色別面積比を算出する(ステップS4)。ステップS2,S4の後、生成部13が、混毛領域に対する混色濃淡彩色加工処理をする(ステップS5)。次に、生成部13が、単毛領域に対するランダム彩色加工処理をする(ステップS6)。その後、生成部13が、混色濃淡彩色加工をした混毛領域と、ランダム彩色加工をした単毛領域とを合わせて模擬画像データを生成する(ステップS7)。
依頼者は、生成された模擬画像データを参照して、原材料から製造した反毛フェルトの事前確認をすることができる。
以上で、
図8の処理が終了する。なお、ステップS5,S6の順序が逆でもよい。
【0023】
本実施形態によれば、標準サンプルおよび標準サンプル画像データの作成にオーダ品用の原材料を必要としない。また、生成される模擬画像データは、オーダ品用の原材料に用いられている色の種類や割合に対して、標準サンプルの混毛領域および単毛領域の各々に対応する彩色加工がなされた画像データであり、オーダ品用の原材料から実際に製造した反毛フェルトの仕上がり具合の再現性は高い。よって、標準サンプルの作成なしで、反毛フェルトの仕上がり具合を容易に事前確認できる。また、構想段階でのデザイン検討が可能となる。
【0024】
[内装仕上がり確認(1)]
模擬画像データを用いて建物の内装仕上がりを事前確認する手法について説明する。
図8は、AR技術を利用したときの内装仕上がり事前確認の説明図である。タブレット端末2は、画像処理装置1から模擬画像データ31を取得している。ユーザがタブレット端末2のカメラのレンズを建物の内壁に向けると、撮影部21は、建物の内壁を撮影でき、表示部22は、内壁の撮影画面を表示できる。ここで、表示部22は、AR(Augmented Reality)技術を利用して、実空間の内壁の撮影画面に模擬画像データ31を重ね合わせた画面を表示できる。ユーザは、当該画面を見て、建物の壁面に反毛フェルトを貼設した場合の内装の仕上がり具合を事前に確認できる。また、ユーザがタブレット端末2のカメラのレンズを内壁に近づけることで、表示部22の撮影画面から、壁面表面の質感(繊維の粗密や色の混ざり具合など)も事前に確認できる。
【0025】
[内装仕上がり確認(2)]
模擬画像データを用いて建物の内装仕上がりを事前確認する他の手法について説明する。
図9は、画像投影技術を利用したときの内装仕上がり事前確認の説明図である。タブレット端末2は、画像処理装置1から模擬画像データ31を取得している。ユーザがタブレット端末2を建物の内壁に向けると、投影部23は、画像投影技術(プロジェクションマッピング技術)を利用して、建物の内壁に模擬画像データ31を投影できる。ユーザは、模擬画像データ31が投影された壁面を見て、建物の壁面に反毛フェルトを貼設した場合の内装の仕上がり具合を事前に確認できる。
【0026】
また、標準サンプルを使用して脱色を行うことで脱色資材32を取得できる。投影部23は、画像投影技術(プロジェクションマッピング技術)を利用して、建物の内壁に、脱色資材32を下地とし、模擬画像データ31を重ね合わせて投影できる。ユーザは、模擬画像データ31が投影された脱色資材32の壁面を見て、建物の壁面に反毛フェルトを貼設した場合の内装の仕上がり具合だけでなく、壁面表面の質感(繊維の粗密や色の混ざり具合、肌触りなど)も事前に確認できる。
【0027】
[変形例]
(a):原材料に使用されてる色が3以上であっても、本発明を適用できる。
(b):建物の内装仕上がりに限らず、建物の外装仕上がりに対しても本発明を適用でき、仕上がりの事前確認が可能である。また、建物などの構造物に限らず、持ち運び可能な小物に対しても、本発明を適用でき、仕上がりの事前確認ができる。
【0028】
(c):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(d):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(e):その他、本発明の構成要素について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
100 画像処理システム
1 画像処理装置
11 判定部
12 算出部
13 生成部
2 タブレット端末
21 撮影部
22 表示部
23 投影部