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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057276
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】蛍光体デバイス及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230414BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230414BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20230414BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20230414BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230414BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20230414BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230414BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230414BHJP
【FI】
G02B5/20
F21S2/00 311
F21V9/30
F21S2/00 373
F21V29/502 100
H01L33/50
H01S5/02
F21Y115:30
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166704
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中島 功康
(72)【発明者】
【氏名】森 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳志
【テーマコード(参考)】
2H148
5F142
5F173
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA11
2H148AA19
2H148AA25
5F142AA02
5F142AA42
5F142AA62
5F142AA75
5F142DA02
5F142DA13
5F142DA61
5F142DA73
5F142FA24
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】高効率及び高輝度の蛍光体デバイス及び発光装置を提供する。
【解決手段】蛍光体デバイス1は、基板部材10と、基板部材10に設けられ、蛍光部21を有する波長変換部材20と、を備え、基板部材10と波長変換部材20とは、固相接合により接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部材と、
前記基板部材に設けられ、蛍光部を有する波長変換部材と、を備え、
前記基板部材と前記波長変換部材とは、固相接合により接合されている、
蛍光体デバイス。
【請求項2】
前記基板部材は、中間層を有し、
前記波長変換部材と前記中間層とが固相接合により接合されている、
請求項1に記載の蛍光体デバイス。
【請求項3】
前記中間層は、透明酸化物又は透明窒化物からなる透明膜である、
請求項2に記載の蛍光体デバイス。
【請求項4】
前記波長変換部材は、前記蛍光部の周囲に設けられた光反射部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項5】
前記基板部材は、透光基材と、前記透光基材の前記波長変換部材側の面である第1の面に設けられた誘電体多層膜と、を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項6】
前記透光基材を構成する材料の主成分は、Al、AlN、又は、GaNである、
請求項5に記載の蛍光体デバイス。
【請求項7】
前記基板部材は、さらに、前記透光基材の前記第1の面に背向する第2の面に設けられた反射防止膜を有する、
請求項5又は6に記載の蛍光体デバイス。
【請求項8】
さらに、前記基板部材の前記波長変換部材側の面とは反対側の面に接合層を介して設けられた金属板を備え、
前記金属板は、前記蛍光体デバイスに入射する光が通過する開口部を有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の蛍光体デバイスと、
前記蛍光体デバイスに入射する光を発する光源と、を備え、
前記蛍光体デバイスにおける前記蛍光部の外形サイズは、前記光源から出射した光が前記蛍光部に入射するときのスポットサイズと同等である、
発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体デバイス及び蛍光体デバイスを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ、内視鏡、車載ヘッドランプ、照明装置又は液晶表示装置等には、LED又は半導体レーザ等の固体発光素子を光源とする発光装置が用いられている。この種の発光装置は、例えば、光源と、光源が発する光を励起光として蛍光を発する蛍光体デバイスとを備える。この場合、プロジェクタ又は内視鏡に用いられる発光装置については高輝度が要求されるので、光源としては半導体レーザが用いられる。
【0003】
この種の蛍光体デバイスとして、特許文献1には、透光部材と、透光部材の上に配置された、蛍光部及び光反射部を有する波長変換部材とを備える光学部品が開示されている。特許文献1に開示された光学部品では、波長変換部材の蛍光部と透光部材との間に空間を設けている。
【0004】
このような蛍光デバイスにおいて、蛍光部の周囲に設けられた光反射部の内部には、蛍光部から放出される光を散乱反射させるための光反射粒子又は空隙(空気層)等の無数の光散乱部が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-53130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体デバイスでは、蛍光部に励起光が照射されることで蛍光部から所定の色の光が放出される。このとき、蛍光部に励起光が照射されることで蛍光部が発熱する。特に、蛍光部の光入射側の部分が高温になる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された蛍光体デバイスでは、蛍光部における高温になる部分と透光部材との間に空間が設けられているので、蛍光部で発生する熱の放熱性が悪い。このため、蛍光部の発光効率が低下し、蛍光体デバイスの効率及び輝度が低下する。
【0008】
そこで、蛍光部で発生する熱を光反射部に伝導しやすくして放熱性を良くするために、熱抵抗となる光反射部の光散乱部(光反射粒子、空隙)の数を少なくすることが考えられるが、光反射部の光散乱部の数を少なくすると、光反射部としての本来の光反射機能が低下する。つまり、蛍光部から放出される光が光反射部の内部の奥にまで導光しやすくなって、蛍光部から放出される光が光反射部で吸収される割合が高くなる。この結果、蛍光体デバイスとして利用できる光が少なくなり、結局、蛍光体デバイスの効率及び輝度が低下する。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高効率及び高輝度の蛍光体デバイス及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る蛍光体デバイスの一態様は、基板部材と、前記基板部材に設けられ、蛍光部を有する波長変換部材と、を備え、前記基板部材と前記波長変換部材とは、固相接合により接合されている。
【0011】
また、本発明に係る発光装置の一態様は、上記の蛍光体デバイスと、前記蛍光体デバイスに入射する光を発する光源と、を備え、前記蛍光体デバイスにおける前記蛍光部の外形サイズは、前記光源から出射した光が前記蛍光部に入射するときのスポットサイズと同等である。
【発明の効果】
【0012】
高効率及び高輝度の蛍光体デバイス及び発光装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態1に係る蛍光体デバイスの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係る発光装置の構成を示す図である。
図3A図3Aは、従来の蛍光体デバイスの構成を示す図である。
図3B図3Bは、従来の蛍光体デバイスに励起光が入射したときの様子を説明するための図である。
図4図4は、実施の形態1に係る蛍光体デバイスに励起光が入射したときの様子を説明するための図である。
図5図5は、実施の形態2に係る蛍光体デバイスの断面図である。
図6図6は、変形例に係る蛍光体デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0016】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1の構成を示す図である。図1において、(a)は、同蛍光体デバイス1の上面図であり、(b)は、(a)のIb-Ib線における同蛍光体デバイス1の断面図である。
【0017】
図1に示すように、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1は、基板部材10と、波長変換部材20とを備える。波長変換部材20は、基板部材10に設けられており、基板部材10は、波長変換部材20を支持している。波長変換部材20は、少なくとも、蛍光を発する蛍光部21と、光を反射する光反射部22とを有する。
【0018】
基板部材10は、透光基材11と、透光基材11に設けられた誘電体多層膜12及び反射防止膜13とを有する。
【0019】
透光基材11は、透光性を有する基板であり、波長変換部材20側の面である第1の面11a(上面)と、第1の面11aに背向する第2の面11b(下面)とを有する。
【0020】
透光基材11は、光透過率が高い基板であるとよい。具体的には、透光基材11は、向こう側が透けて見える程度に透過率が高い透明基板であるとよい。また、透光基材11としては、耐熱性が高い基板であるとよい。このような透明基板としては、Alからなるサファイア基板、AlNからなる窒化アルミニウム基板、又は、GaNからなる窒化ガリウム基板を用いることができる。この場合、透光基材11を構成する材料の主成分は、それぞれ、Al、AlN、又は、GaNとなる。また、耐熱性及び光透過率が高い透明基板としては、これらの透明基板に限るものではなく、ガラス基板等の透明基板であってもよい。
【0021】
誘電体多層膜12は、透光基材11の第1の面11aに設けられている。本実施の形態において、誘電体多層膜12は、基板部材10の最上層となる表面膜である。
【0022】
誘電体多層膜12は、複数の誘電体膜が積層された構成になっており、特定の光を反射するとともに、他の特定の光を透過する。本実施の形態における誘電体多層膜12は、波長変換部材20の蛍光部21の蛍光体で蛍光発光する光を反射し、かつ、蛍光体デバイス1に入射する励起光を透過する。例えば、蛍光部21が黄色蛍光体によって構成され、蛍光体デバイス1に入射する励起光が紫外光又は青色光である場合、誘電体多層膜12は、少なくとも蛍光部21が発する黄色光を反射し、かつ、励起光である紫外光又は青色光を透過する。
【0023】
このように透光基材11の第1の面11a側(波長変換部材20側)に誘電体多層膜12を設けることで、波長変換部材20の蛍光部21が発する光のうち基板部材10に向かう光を誘電体多層膜12で反射させることができる。これにより、蛍光体デバイス1から取り出せる蛍光部21の光を多くすることができる。
【0024】
反射防止膜13は、透光基材11の第2の面11bに設けられている。本実施の形態において、反射防止膜13は、基板部材10の最下層となる表面膜である。
【0025】
反射防止膜13は、単層膜及び多層膜のいずれであってもよい。一例として、反射防止膜13は、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等の少なくとも2種類の誘電体膜が積層された多層膜である。
【0026】
このように透光基材11の第2の面11bに反射防止膜13を設けることで、透光基材11の第2の面11b側から蛍光体デバイス1に入射する光が反射することを抑制することができる。これにより、透光基材11の第2の面11b側から透光基材11に入射する光を効率良く透光基材11に取り込むことができる。具体的には、蛍光部21を蛍光発光させるために蛍光体デバイス1に入射させる励起光を効率良く透光基材11に取り込むことができる。
【0027】
波長変換部材20の蛍光部21は、光を発する発光層であり、励起光により励起されて可視領域の所定の波長の光を蛍光発光する。一例として、蛍光部21は、黄色蛍光体によって構成された黄色蛍光体層である。この場合、黄色蛍光体層である蛍光部21は、黄色光よりも短波長の光(例えば紫外光~青色光)を励起光として蛍光を発する。つまり、黄色蛍光体層では、励起光の波長を当該励起光よりも長波長の黄色光に波長変換する。
【0028】
蛍光部21は、蛍光体のみから成る蛍光体層である。具体的には、蛍光部21は、焼結された単一の結晶相の蛍光体によって構成された蛍光体セラミックス層であり、主成分が蛍光体セラミックスである。このように、蛍光部21として蛍光体セラミックス層を用いることで、耐熱性及び放熱性を向上させることができる。また、蛍光部21として蛍光体セラミックス層を用いることで、蛍光の散乱による光損失を抑制できるため、蛍光部の変換効率を向上させることができる。本実施の形態において、蛍光部21は、単一の結晶相のみから成る蛍光体セラミックス層である。
【0029】
なお、蛍光部21としては、蛍光体がバインダ(結合剤)によって封止することで結合された蛍光体層であってもよい、又は、単結晶からなる蛍光体層を用いることができる。
【0030】
蛍光体がバインダによって結合された蛍光体層からなる蛍光部21としては、蛍光体が透明樹脂(屈折率約1.5)で封止された蛍光体含有樹脂層、蛍光体が液状ガラス(屈折率約1.5)で封止された蛍光体含有ガラス層、蛍光体がZnO(屈折率約2.0)等の透明無機材料で封止された蛍光体含有無機層、又は、蛍光体がアルミナ等のセラミックスからなるセラミックス焼結体(単結晶で屈折率約1.8)で結合された蛍光体セラミックス層を用いることができる。この場合、耐熱性及び放熱性の観点では、蛍光部21としては、蛍光体セラミックス層であるとよい。蛍光部21が単結晶からなる蛍光体層である場合、蛍光部21が空気を含まないため、蛍光部21の熱伝導性がよくなる。
【0031】
蛍光部21は、ガーネット構造を有する第1結晶相を含む。より具体的には、本実施の形態においては、蛍光部21は、ガーネット構造を有する第1結晶相のみによって構成されている。つまり、本実施の形態に係る蛍光部21は、ガーネット構造とは異なる構造を有する結晶相を含まない。ガーネット構造とは、A12の一般式で表される結晶構造である。元素Aには、Ca、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb及びLuなどの希土類元素が適用され、元素Bには、Mg、Al、Si、Ga及びScなどの元素が適用され、元素Cには、Al、Si及びGaなどの元素が適用される。このようなガーネット構造としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet))、LuAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(Lutetium Aluminum Garnet))、LuCaMgSi12(ルテチウム・カルシウム・マグネシウム・シリコン・ガーネット(Lutetium Calcium Magnesium Silicon Garnet))及びTAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット(Terbium Aluminum Garnet))などが挙げられる。本実施の形態において、蛍光部21を構成する蛍光体の材料は、(Y1-xCeAlAl12(つまり、(Y1-xCeAl12)(0.0001≦x<0.1)で表される結晶相、すなわちYAGによって構成されており、蛍光部21は、焼結YAGのみからなる蛍光体セラミックス層である。具体的には、蛍光部21は、YAG蛍光体からなる黄色蛍光体層である。
【0032】
なお、蛍光部21を構成する第1結晶相は、化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体であってもよい。このような固溶体としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.00001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-dCed)3Al2Al3O12(0.00001≦d<0.1)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-a)(Y1-xCex)3Al5O12・a(Lu1-dCed)3Al2Al3O12(0<a<1))が挙げられる。また、このような固溶体としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.00001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-zCez)2CaMg2Si3O12(0.00001≦z<0.15)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-b)(Y1-xCex)3Al2Al3O12・b(Lu1-zCez)2CaMg2Si3O12(0<b<1))などが挙げられる。蛍光部21が化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体から構成されることで、蛍光部21が放つ蛍光の蛍光スペクトルがより広帯域化し、緑色の光成分と赤色の光成分が増える。そのため、色域の広い出力光を放つ蛍光体デバイスを提供できる。
【0033】
また、蛍光部21を構成する第1結晶相は、前記した一般式A3B2C3O12で表される結晶相に対して、化学組成がずれた結晶相が含まれていてもよい。このような結晶相としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.00001≦x<0.1)で表される結晶相に対してAlがリッチな(Y1-xCex)3Al2+δAl3O12(δは正の数)が挙げられる。また、このような結晶相としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.00001≦x<0.1)で表される結晶相に対してYがリッチな(Y1-xCex)3+ζAl2Al3O12(ζは正の数)などが挙げられる。これらの結晶相は、一般式A3B2C3O12で表される結晶相に対して、化学組成がずれているが、ガーネット構造は維持している。蛍光部21が化学組成がずれた結晶相から構成されることで、蛍光部21の中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光及び蛍光がより散乱され、蛍光部21の発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い蛍光体デバイスを提供できる。 さらに、蛍光部21は、第1結晶相と、ガーネット構造以外の構造を有する異相とを含んでいてもよい。蛍光部21がこのような第1結晶相及び異相から構成されることで、蛍光部21の中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光及び蛍光がより散乱され、蛍光部21の発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い蛍光体デバイスを提供できる。
【0034】
蛍光部21の密度は、理論密度の95%以上100%以下であればよく、理論密度の97%以上100%以下であればよりよい。ここで、理論密度とは、層中の原子が理想的に配列しているとした場合の密度である。換言すると、理論密度とは、蛍光部21中に空隙がないと仮定したときの密度であり、結晶構造を用いて計算される値である。例えば、蛍光部21の密度が99%である場合、残りの1%は空隙に相当する。つまり、蛍光部21の密度が高いほど、空隙が少ない。蛍光部21の密度が上記範囲であると、蛍光部21が放つ全蛍光量が増えるため、放射される光量がより多い蛍光体デバイスを提供できる。また、蛍光部21の密度は、4.32g/cm3以上4.55g/cm3以下であればよく、4.41g/cm3以上4.55g/cm3以下であればよりよい。本実施の形態で示すように、蛍光部21がYAGで構成されている場合、蛍光部21の密度が上記範囲であると、蛍光部21の密度がそれぞれ理論密度の95%以上100%以下及び97%以上100%以下となる。蛍光部21の密度が上記範囲であることで、蛍光部21が吸収した励起光を効率よく蛍光に変換することができる。つまり、発光効率の高い蛍光部21が実現される。
【0035】
蛍光部21の上面視形状は、矩形状であるが、これに限らない。蛍光部21の上面視形状は、円形であってもよい。また、本実施の形態において、蛍光部21の厚さは、一定であるが、これに限らない。
【0036】
波長変換部材20の光反射部22は、蛍光部21の周囲に設けられている。本実施の形態において、光反射部22は、上面視において、蛍光部21の周囲全体を囲っている。具体的には、蛍光部21の上面視形状が矩形状であるので、光反射部22は、矩形状の開口部を有する。具体的には、光反射部22の上面視形状は、矩形状の開口部を有し且つ外形が矩形状の矩形枠状である。なお、光反射部22の上面視形状は、矩形枠状に限るものではなく、円環状等であってもよい。
【0037】
光反射部22は、蛍光部21と熱的に接している。つまり、蛍光部21と光反射部22とは、蛍光部21で発生する熱が光反射部22に伝導できるように設けられている。本実施の形態において、光反射部22は、物理的に蛍光部21に接触している。具体的には、光反射部22の内周側面の全てが蛍光部21の外周側面に接している。つまり、蛍光部21は、光反射部22の開口部に充填するように設けられている。
【0038】
なお、光反射部22の厚さ(高さ)は、蛍光部21の厚さ(高さ)と同じになっているが、これに限らない。つまり、光反射部22の厚さは、蛍光部21の厚さよりも低くてもよいし、蛍光部21の厚さよりも高くてもよい。ただし、光反射部22は、蛍光部21の上面にかからないように設けられているとよい。つまり、光反射部22は、光反射部22を構成する材料(バインダ等)が蛍光部21の上面にはみ出さないように形成されているとよい。
【0039】
光反射部22は、アルミナ等のセラミックス材料からなるセラミックス層、又は、樹脂材料等からなる樹脂層等によって構成されている。本実施の形態において、光反射部22は、可視光帯域の波長の光を反射するので白色である。つまり、光反射部22は、白色セラミックス層又は白樹脂層である。
【0040】
光反射部22の内部には、光を散乱反射させるための無数の光散乱部22aが存在している。具体的には、光反射部22がセラミックス層である場合、セラミックス層の内部には、光を散乱反射させるため光散乱部22aとして無数の空隙(空気層)が存在している。また、光反射部22が樹脂層である場合、樹脂層の内部には、光を散乱反射させるため光散乱部22aとして無数の光反射粒子が存在している。
【0041】
本実施の形態における蛍光部21は、焼結蛍光体のみからなる蛍光体セラミックス層であるので、光反射部22は、アルミナ等のセラミックスによって構成されたセラミックス層であるとよい。これにより、蛍光部21と光反射部22とが一体化しやすくなる。
【0042】
なお、蛍光部21がYAG蛍光体とアルミナのバインダとによって構成されている場合には、光反射部22はアルミナによって構成されたセラミックス層であるとよい。すなわち、光反射部22の主成分と蛍光部21のバインダとは、同一の無機材料によって構成されているとよい。これにより、蛍光部21と光反射部22とが一体化しやすくなる。
【0043】
また、このように光反射部22をアルミナ等のセラミックス焼結体によって構成する場合、焼結温度等を制御することによって、光反射部22を構成するセラミックス焼結体の内部に、光散乱部22aとして多数の空隙を形成することができる。これにより、光反射部22に入射する光は、セラミックス(アルミナ)と空隙との界面で散乱される。
【0044】
一方、光反射部22を樹脂材料からなる樹脂層で構成する場合、光反射部22は、例えば、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる絶縁性樹脂材料をバインダとして、このバインダに光散乱部22aとして光を散乱反射させるための光反射粒子を分散させることで形成することができる。この場合、光反射部22を構成する絶縁性樹脂材料としては、シリコン樹脂、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂等を用いることができる。また、この絶縁性樹脂材料に分散させる光反射粒子(光散乱部22a)としては、空気粒子(空気層)、又は、SiO(シリカ)、TiO、Al、ZrO、MgO等の無機材料からなる微粒子等を用いることができる。例えば、バインダとなる絶縁性樹脂材料に無数の光反射粒子を分散させたペーストを塗布して硬化させることで、白色樹脂層の光反射部22を形成することができる。なお、光反射粒子としては、金属微粒子を用いてもよい。
【0045】
そして、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、基板部材10と波長変換部材20とが固相接合により接合されている。具体的には、基板部材10の誘電体多層膜12と波長変換部材20の蛍光部21及び光反射部22とが固相接合により接合されている。
【0046】
基板部材10と波長変換部材20とを固相接合により接合する方法としては、例えば、被接合体である基板部材10と波長変換部材20とを加熱した状態で加圧して接合する方法が考えられる。これにより、基板部材10及び波長変換部材20を構成する原子が拡散する。また、基板部材10と波長変換部材20とを固相接合により接合する方法は、これに限るものではなく、その他に、プラズマ活性化接合、表面活性化接合(SAB)又は超高真空接合等がある。
【0047】
なお、基板部材10と波長変換部材20とを固相接合による接合する前に、基板部材10及び波長変換部材20の各々の接合面を研磨して滑らかにするとよい。これにより、固相接合により接合された基板部材10と波長変換部材20との接合界面の接合強度を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、基板部材10と波長変換部材20の蛍光部21及び光反射部22とを固相接合により接合したが、少なくとも基板部材10と波長変換部材20の蛍光部21とが固相接合により接合されていればよい。つまり、基板部材10と光反射部22とは、必ずしも固相接合されていなくてもよい。例えば、蛍光部21と光反射部22とを別々に作製する場合は、基板部材10と蛍光部21とを固相接合によって接合すればよく、基板部材10と光反射部22とは、固相接合により接合してもよいし、固相接合以外の方法で接合してもよい。
【0049】
次に、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1を用いた発光装置100の構成と蛍光体デバイス1の光学作用について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係る発光装置100の構成を示す図である。
【0050】
本実施の形態に係る発光装置100は、蛍光体デバイス1と、蛍光体デバイス1に入射する光を発する光源2とを備える。
【0051】
光源2は、波長変換部材20の蛍光部21を発光させるための励起光を出射する励起光源である。蛍光部21に含まれる蛍光体は、光源2から出射する励起光によって励起されて蛍光を発する。本実施の形態において、発光装置100は、蛍光体デバイス1に入射する励起光が蛍光体デバイス1を透過する透過型の発光装置である。つまり、蛍光体デバイス1に入射する励起光は、波長変換部材20を透過する。したがって、光源2は、光源2が出射する光が蛍光体デバイス1を透過するように配置されている。具体的には、光源2は、蛍光体デバイス1の下方(基板部材10側)に配置されている。
【0052】
光源2としては、例えば紫外光又は青色光のレーザ光を出射する半導体レーザを用いることができる。レーザ光は直進性に優れているので、光源2として半導体レーザを用いることで、蛍光部21に対して所望の入射角でレーザ光(励起光)を入射させることができる。なお、光源2は、半導体レーザに限らず、LED等の他の固体発光素子、又は固体発光素子以外の励起光源であってもよい。
【0053】
このように構成される発光装置100では、光源2から出射する光が蛍光体デバイス1に入射することで蛍光体デバイス1から所定の色の光が放出される。
【0054】
具体的には、本実施の形態において、光源2から出射した光は、基板部材10の裏面に入射する。基板部材10に入射した光源2の光は、基板部材10を透過して波長変換部材20の蛍光部21に到達する。このとき、蛍光部21の外形サイズは、光源2から出射した光が蛍光部21に入射するときのスポットサイズ(励起光のスポットサイズ)と同等になっているとよい。
【0055】
本実施の形態では、光源2の励起光が青色光で、蛍光部21が黄色蛍光体層である。この場合、蛍光部21には、光源2の青色光が入射する。これにより、蛍光部21の黄色蛍光体(YAG蛍光体)は、光源2の青色光の一部を吸収して励起されて蛍光として黄色光を発する。そして、蛍光部21では、この黄色光と黄色蛍光体に吸収されなかった光源2の青色光とが混ざり合って白色光となり、蛍光部21からは白色光が放射される。つまり、波長変換部材20から白色光が取り出される。
【0056】
このとき、基板部材10には、蛍光部21が発する黄色光を反射し、かつ、励起光である紫青色光を透過する誘電体多層膜12が形成されている。この構成により、蛍光部21が発する黄色光のうち光源2側に向かう光は、誘電体多層膜12で反射して光源2側とは反対側に進むことになる。
【0057】
また、蛍光部21の周囲には白色の光反射部22が形成されている。この構成により、蛍光部21から放出される白色光(青色光+黄色光)のうち横方向側に進行する光は、光反射部22で反射して、蛍光部21に戻って蛍光部21から外部に放射される。これにより、蛍光部21から取り出すことができる光を多くすることができる。
【0058】
また、本実施の形態において、蛍光体デバイス1は、リモートフォスファ型であり、蛍光体デバイス1と光源2とは空間的に離されて配置されている。これにより、蛍光体デバイス1(特に蛍光部21)が光源2で発生する熱の影響を受けることを抑制することができる。
【0059】
なお、図2において、光源2から出射する光は、基板部材10の裏面に対して垂直に入射されているが、基板部材10の裏面に対して斜めに入射されてもよい。
【0060】
次に、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1の作用効果について、従来の蛍光体デバイス1Xと比較しながら、本発明の一態様を得るに至った経緯も含めて説明する。図3Aは、従来の蛍光体デバイス1Xの構成を示す図であり、図3Bは、従来の蛍光体デバイス1Xに励起光が入射したときの様子を説明するための図である。図4は、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1に励起光が入射したときの様子を説明するための図である。
【0061】
図3Aに示すように、従来の蛍光体デバイス1Xは、基板部材10Xと、基板部材10Xの上に配置された波長変換部材20Xとを備える。基板部材10Xは、透光基材11Xと、誘電体多層膜12Xと、反射防止膜13Xとによって構成されている。また、波長変換部材20Xは、蛍光部21Xと光反射部22Xとによって構成されている。光反射部22Xの内部には、光を散乱反射させるための光散乱部22aが存在している。
【0062】
波長変換部材20Xの光反射部22Xと基板部材10Xとは、接続部材30Xによって接続されているが、波長変換部材20Xの蛍光部21Xと基板部材10Xとは接続されていない。つまり、波長変換部材20Xの蛍光部21Xと基板部材10Xの誘電体多層膜12Xとは接触しておらず、蛍光部21Xと基板部材10Xとの間には、接続部材30Xの厚み分の厚さの空間40Xが存在する。
【0063】
このように構成される従来の蛍光体デバイス1Xでは、図3Bに示すように、上記実施の形態1における蛍光体デバイス1と同様に、波長変換部材20Xの蛍光部21Xに励起光が入射することで白色光を放射する。
【0064】
蛍光部21Xに励起光が照射されると蛍光部21Xが発熱する。このとき、励起光の入射側の蛍光部21Xの下側の部分が上側の部分と比べて高温になる。
【0065】
しかしながら、従来の蛍光体デバイス1Xでは、蛍光部21Xにおける高温になる部分(下側の部分)と基板部材10Xとの間に空間40Xが設けられているので、蛍光部21Xで発生する熱が基板部材10Xに伝導しにくくなる。つまり、蛍光部21Xで発生する熱の放熱性が悪い。このため、従来の蛍光体デバイス1Xでは、蛍光部21Xの発光効率が低下し、蛍光体デバイス1Xの効率及び輝度が低下する。
【0066】
そこで、蛍光部21Xで発生する熱を波長変換部材20Xの光反射部22Xを利用して放熱することが考えられる。この場合、光反射部22Xの内部に存在する光散乱部22aが熱抵抗となるので、光散乱部22aの数を少なくすることで、蛍光部21Xで発生する熱が光反射部22Xへと伝導しやすくして放熱性を良くすることが考えられる。
【0067】
しかしながら、光反射部22Xの光散乱部22aの数を少なくすると、光反射部22Xとしての本来の光反射機能が低下する。つまり、蛍光部21Xから放出される光が光散乱部22aに当たらずに光反射部22Xの内部の奥にまで導光しやすくなり、蛍光部21Xから放出された光が光反射部22Xの内部で吸収される割合が高くなる。この結果、蛍光体デバイス1Xとして利用できる光が少なくなり、結局、蛍光体デバイス1Xの効率及び輝度が低下する。
【0068】
このように、従来の蛍光体デバイス1Xの構造では、光反射部22Xの光散乱部22aの数を増やして蛍光部21Xから放出される光が光反射部22Xの内部を導光することを抑制させることと、蛍光部21Xで発生する熱に対する放熱性を確保することとを両立させることが難しい。
【0069】
これに対して、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1では、図4に示すように、蛍光部21を有する波長変換部材20と基板部材10とが固相接合により接合されている。
【0070】
この構成により、励起光が蛍光部21に入射したときに蛍光部21で発生する熱を、基板部材10へと効率良く伝導させることができる。つまり、蛍光部21で発生する熱の放熱性を向上させることができる。これにより、蛍光部21の発光効率を向上させることができるので、蛍光体デバイス1の効率及び輝度を向上させることができる。
【0071】
そして、蛍光部21で発生する熱を基板部材10へと効率良く伝導させることができることから、蛍光部21の周囲に設けられた光反射部22の内部に存在する光散乱部22aの数を多くすることができる。つまり、熱抵抗となる光散乱部22aの数を多くすると光反射部22の熱伝導性が低くなって蛍光部21で発生する熱の放熱性が低下することになるが、図4に示すように、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、波長変換部材20と基板部材10とが固相接合により接合されているので、蛍光部21で発生する熱を基板部材10に効率良く伝導させることができるので、光散乱部22aの数を多くして光反射部22への熱の伝導が低下したとしても、蛍光部21で発生する熱の放熱性が低下することを抑制できる。
【0072】
このように、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、蛍光部21で発生する熱の放熱性を低下させることなく光反射部22の光散乱部22aを多くすることができるので、光反射部22の光反射機能を容易に向上させることができる。つまり、蛍光部21から放出された光が光反射部22の内部を導光することを抑制できる。
【0073】
また、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、少なくとも励起光に対して透明な基板部材10と透明材料からなる蛍光部21とを直接固相接合しているので、金属を介して固相接合する場合と比べて、蛍光体デバイス1の効率及び輝度を大幅に向上させることができる。つまり、金属を介した固相接合では接合部が不透明になったり著しく透光性が低下したりするが、本実施の形態のように、透明材料同士を直接固相接合することによって、透光性を確保することができる。
【0074】
また、本実施の形態において、蛍光部21の外形サイズは、光源2から出射した光が蛍光部21に入射するときのスポットサイズ(励起光のスポットサイズ)と同等になっている。これにより、蛍光部21から放出された光が光反射部22の内部を導光することをさらに抑制することができる。
【0075】
このように、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1によれば、光反射部22の光散乱部22aの数を増やして蛍光部21から放出される光が光反射部22の内部を導光することを抑制することと、蛍光部21で発生する熱に対する放熱性を確保することとを両立させることが可能となる。したがって、高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1を実現することができる。
【0076】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1において、基板部材10は、透光基材11と、透光基材11の第1の面11aに設けられた誘電体多層膜12とを有している。
【0077】
この構成により、蛍光部21が発する光のうち基板部材10に向かう光を誘電体多層膜12で反射させることができる。これにより、蛍光体デバイス1から取り出せる蛍光部21の光を多くすることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1を実現することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1において、基板部材10は、さらに、透光基材11の第2の面11bに設けられた反射防止膜13を有している。
【0079】
この構成により、蛍光体デバイス1に入射する励起光の取り込み効率を向上させることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1を実現することができる。
【0080】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1において、基板部材10の透光基材11を構成する材料の主成分は、Al、AlN、又は、GaNであるとよい。
【0081】
このようにすることで、基板部材10の熱伝導率を高くすることができる。これにより、蛍光部21で発生する熱を基板部材10にさらに効率良く伝導させることができるので、蛍光部21で発生する熱の放熱性をさらに向上させることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1を実現することができる。
【0082】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る蛍光体デバイス1Aについて、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態2に係る蛍光体デバイス1Aの断面図である。
【0083】
図5に示すように、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Aは、上記実施の形態1に係る蛍光体デバイス1に対して、基板部材10Aがさらに中間層14を有する構成になっている。
【0084】
中間層14は、誘電体多層膜12における波長変換部材20側の面に形成されている。本実施の形態において、中間層14は、基板部材10Aの最上層となる表面膜である。したがって、本実施の形態でも、上記実施の形態1と同様に、波長変換部材20と基板部材10Aとが固相接合により接合されているが、本実施の形態では、波長変換部材20と中間層14とが固相接合により接合されている。具体的には、波長変換部材20における蛍光部21及び光反射部22と中間層14とが固相接合により接合されている。中間層14としては、透明酸化物又は透明窒化物からなる透明膜を用いることができる。
【0085】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Aは、上記実施の形態1に係る蛍光体デバイス1に対して、さらに、金属板30を備える。
【0086】
金属板30は、基板部材10Aの波長変換部材20側の面とは反対側の面に接合層40を介して設けられている。具体的には、金属板30は、接合層40を介して基板部材10Aの反射防止膜13に接合されている。金属板30としては、銅板又はアルミニウム板を用いることができる。
【0087】
接合層40としては、樹脂材料を主成分とする樹脂接着剤又は金属材料を主成分とする金属接着剤等を用いることができる。蛍光部21で発生する熱を基板部材10A及び金属板30を介して効率良く放熱するとの観点では、接合層40は、銀焼結ペースト接着剤又は半田等の金属接着剤を用いるとよい。なお、接合層40として樹脂材料によって構成された樹脂接着剤を用いる場合であっても、樹脂材料に高熱伝導フィラーを分散させることで、蛍光部21で発生する熱を基板部材10A及び金属板30を介して効率良く放熱することができる。
【0088】
金属板30は、蛍光体デバイス1Aに入射する光が通過する開口部31を有する。例えば、金属板30は、矩形状の開口部31を有する。具体的には、金属板30の平面視形状は、矩形状の開口部31を有し且つ外形が矩形状の矩形枠状である。なお、本実施の形態において、金属板30の開口部31は、光反射部22の開口部と同じサイズ及び同じ形状であるが、これに限らない。
【0089】
以上、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Aによれば、上記実施の形態1と同様に、蛍光部21を有する波長変換部材20と基板部材10Aとが固相接合により接合されている。
【0090】
この構成により、蛍光部21で発生する熱を基板部材10Aへと効率良く伝導させることができるので、高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1Aを実現することができる。
【0091】
また、本実施の形態においても、蛍光部21の周囲に光反射部22が設けられている。これにより、蛍光部21から効率良く光を取り出すことができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1Aを実現することができる。
【0092】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Aにおいて、基板部材10Aは、中間層14を有しており、波長変換部材20と中間層14とが固相接合により接合されている。
【0093】
この構成により、波長変換部材20と基板部材10Aとの接合性を向上させることができる。これにより、蛍光部21で発生する熱をさらに効率良く基板部材10Aに伝導させることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1Aを実現することができる。
【0094】
この場合、基板部材10Aの中間層14は、透明酸化物又は透明窒化物からなる透明膜であるとよい。
【0095】
この構成により、波長変換部材20と基板部材10Aとの接合性を一層向上させることができるので、蛍光部21で発生する熱をさらに効率良く基板部材10Aに伝導させることができる。
【0096】
また、本実施の形態における蛍光体デバイス1Aでは、上記実施の形態1とは異なり、基板部材10Aと蛍光部21とを直接固相接合したものではないが、中間層14は、透明酸化物又は透明窒化物であるため、透明材料からなる蛍光部21と透明材料からなる中間層14とが直接固相接合されている。これにより、本実施の形態においても、金属を介して固相接合する場合と比べて、蛍光体デバイス1Aの効率及び輝度を大幅に向上させることができる。しかも、中間層14によって基板部材10Aと蛍光部21との接合性を向上させることもできる。また、母材同士だけでなく、異種材料同士を固相接合することによって特性を改善することもできる。
【0097】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Aは、さらに、基板部材10Aの波長変換部材20側の面とは反対側の面に接合層40を介して設けられた金属板30を備えており、金属板30は、蛍光体デバイス1Aに入射する光が通過する開口部31を有する。
【0098】
この構成により、蛍光部21で発生する熱の放熱性をさらに向上させることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1Aを実現することができる。
【0099】
なお、本実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、蛍光体デバイス1Aは、発光装置の透過型の波長変換素子として用いることができる。
【0100】
(変形例)
以上、本発明に係る蛍光体デバイス及び発光装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0101】
例えば、上記実施の形態1、2において、波長変換部材20は、蛍光部21に加えて光反射部22を有していたが、これに限らない。また、上記実施の形態1、2において、基板部材10、10Aは、透光基材11に加えて、誘電体多層膜12及び反射防止膜13を有していたが、これに限らない。具体的には、図6に示される変形例に係る蛍光体デバイス1Bのように、波長変換部材20Bは、光反射部22を有しておらず、蛍光部21のみによって構成されていてもよいし、基板部材10Bは、誘電体多層膜12及び反射防止膜13を有しておらず、透光基材11のみによって構成されていてもよい。この場合、蛍光部21と透光基材11とが固相接合により接合されている。
【0102】
また、上記実施の形態1、2において、発光装置は、蛍光体デバイス1、1Aに入射する励起光が蛍光体デバイス1、1Aを透過する透過型の発光装置であったが、これに限らない。例えば、発光装置は、蛍光体デバイス1、1Aに入射する励起光が蛍光体デバイス1、1Aを透過せずに蛍光体デバイス1、1Aで反射する反射型の発光装置であってもよい。つまり、発光装置は、光源2から出射する光が波長変換部材20で反射するように構成されていてもよい。この場合、波長変換部材20が形成される基板部材10、10Aは、反射基板となり、波長変換部材20の上方から励起光が照射される。
【0103】
また、上記実施の形態1、2において、発光装置は、蛍光体デバイス1、1Aが動かない固定型の発光装置であったが、これに限らない。具体的には、発光装置は、蛍光体デバイス1、1Aが回転する回転型の発光装置であってもよい。この場合、蛍光体デバイス1、1Aは、例えば、回転する蛍光体ホールとして用いることができる。
【0104】
その他、上記実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1、1A、1B 蛍光体デバイス
2 光源
10、10A、10B 基板部材
11 透光基材
12 誘電体多層膜
13 反射防止膜
14 中間層
20、20B 波長変換部材
21 蛍光部
22 光反射部
30 金属板
31 開口部
40 接合層
100 発光装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6