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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057298
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】温度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/16 20060101AFI20230414BHJP
   G01K 1/143 20210101ALI20230414BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20230414BHJP
   F24C 3/12 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01K1/16
G01K1/143
G01K1/14 L
F24C3/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166733
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】511174948
【氏名又は名称】株式会社立山科学センサーテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 正敏
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CA08
2F056CA14
2F056CL02
2F056DA08
(57)【要約】
【課題】従来品に対するコストアップを小さく抑えつつ、耐熱性を格段に向上させることができるシンプルな構造の温度検出装置を提供する。
【解決手段】温度センサ30は、温度検知素子42が集熱部材28の下筒部40の内側の、板状部38の下面に近接した位置に固定され、複数のリード線44が下筒部40の内側を通じて引き出される。下筒部40の内側に、セラミック粉末を主成分とする充填剤46が充填され、充填剤46により、リード線44の第一の部分44(1)は、芯線44aと下筒部40とが離間した状態、且つ、芯線44a同士が互いに離間した状態に位置決めされる。支持シャフト24の内壁面が下筒部40の外周面に近接又は摺接し、支持シャフト24の外壁面がホルダ32の内周面に近接又は摺接し、支持シャフト24の内壁面及び外壁面により、集熱部材28及びホルダ32が上下方向にガイドされる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置されたガスバーナを有する調理用加熱器の、前記ガスバーナに囲まれた内側空間に設置して使用される温度検出装置であって、
前記調理用加熱器に載置された調理具の底面の温度を検知する接触式のセンサ装置と、前記調理用加熱器の前記内側空間の下側の位置に固定され、前記センサ装置を上下方向に移動可能に支持する筒状の支持シャフトとを備え、
前記センサ装置は、前記調理具の底面に当接する上面を有した板状部と前記板状部の中央部の下面から下向きに延びる下筒部とが一体になった金属製の部材である集熱部材と、温度検知素子と前記温度検知素子に接続された複数のリード線とを有した温度センサと、金属製の筒状体であるホルダと、前記ホルダの内側に収まる大きさのバネ部材とで構成され、
組み立て状態で、
前記温度センサは、前記温度検知素子が前記下筒部の内側の、前記板状部の下面に近接した位置に固定されるとともに、複数の前記リード線が前記下筒部の内側を通じて前記支持シャフトの内側に引き出されており、
前記下筒部の内側に、セラミック粉末を主成分とする充填剤が充填され、複数の前記リード線の、前記下筒部の内側に在る第一の部分は、前記充填剤によって、電気伝導部である芯線と前記下筒部とが離間した状態、且つ、前記芯線同士が互いに離間した状態に位置決めされており、
複数の前記リード線の、前記支持シャフトの内側に在る第二の部分は、前記支持シャフトの内側に、前記第一の部分とともに移動可能に収容されており、
前記ホルダは、上端部全周が前記板状部の下面側に液密に固定されて内側に前記下筒部を収容し、前記バネ部材は、前記ホルダの内側に、前記集熱部材及び前記ホルダを前記支持シャフトの上端部に対して上向きに付勢するように設置されており、
前記集熱部材の前記下筒部の下端部は、前記支持シャフトの上端部の内側に収容され、前記支持シャフトの上端部は、前記ホルダの下端部の内側に収容され、前記支持シャフトの内壁面が前記集熱部材の前記下筒部の外周面に近接又は摺接し、前記支持シャフトの外壁面が前記ホルダの内周面に近接又は摺接し、前記内壁面及び前記外壁面により、前記集熱部材及び前記ホルダが上下方向にガイドされることを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
前記センサ装置は、大径部及び小径部が同心状に連続する筒状体であって、特定位置に透孔が形成されたカバー部材を有し、
組み立て状態で、前記カバー部材は、前記小径部が前記ホルダの側周面に固定され、前記大径部が、前記ホルダの側周面を覆うように同心状に所定空間を設けて配置され、前記大径部の上端部が、前記集熱部材の前記板状部から流れた煮汁が内側に流入できるように、前記板状部の周縁部から離間し、前記透孔が、前記大径部の内側に流入した前記煮汁を排出可能な位置に配されている請求項1記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記集熱部材の前記板状部の上面は、前記調理具の底面に面接触が可能な平坦な面に形成されている請求項1又は2記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記リード線は、前記芯線を絶縁被覆材で被覆したものである請求項1又は2記載の温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用加熱器のガスバーナ上に載置された調理具の底面の温度を検出する温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環状に配置されたガスバーナを有する調理用加熱器の、ガスバーナに囲まれた内側空間に設置して使用される温度検出装置がある。
【0003】
例えば、本願出願人による特許文献1に開示されているように、調理用加熱器に載置された調理具の底面に接触することによって調理具の温度を検知するセンサ装置部と、調理用加熱器に固定され、調理用加熱器の内側空間に向けてセンサ装置部を突没可能に支持する支持シャフトとを備えた温度検出装置があった。
【0004】
センサ装置部は、調理具の底面に当接する集熱板と、集熱板の裏面側に固定された温度センサと、筒状の内側に温度センサ及びそのリード線を収容するとともに、筒状の上端部が集熱板の下面側に液密に固定されたホルダと、ホルダの内側に設けられ、支持部材の上端部に対して集熱板及びホルダを突出方向に付勢するバネ部材とで構成される。支持シャフトは、ホルダの内周面に摺接する外壁面を有し、当該外壁面でホルダを突没方向にガイドする構造になっている。
【0005】
さらに特許文献1には、センサ装置部に、ホルダの側面を同心状に所定空間を空けて覆う筒状のカバーを取り付けた構成が開示されている。カバーは、集熱板等にガスバーナの熱風が直接当たらないようにする遮熱用のカバーで、カバーの下端部がホルダの下端部付近に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-44468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
温度検出装置を備えた調理用加熱器の多くは、調理具の底面の温度が基準温度を超えると、ガスバーナを自動的に消火する安全装置を備えている。一般的な火力の調理用加熱器の場合、基準温度は290℃程度に設定されている。また、ガスバーナに囲まれた内側空間の最高温度は350℃程度になると想定されるので、従来の温度検出装置は、350℃の環境下での使用に耐えるように設計されていた。しかし、より火力が強い調理用加熱器の場合、ガスバーナの内側空間の最高温度が500~600℃に達する可能性があるため、温度検出装置の耐熱性を向上させることが求められる。
【0008】
特許文献1の温度検出装置は、環境温度が500~600℃になると、この高温がホルダ内に在る2本のリード線に作用して芯線を被覆する絶縁チューブ等が溶けてしまい、芯線同士の短絡、或いは芯線と金属部品との接触により故障してしまうことが懸念される。この問題は、絶縁チューブ等の素材を、合成樹脂の中で最も耐熱性が高いと言われるポリイミド樹脂にしたとしても、解決することは難しい。
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、従来品に対するコストアップを小さく抑えつつ、耐熱性を格段に向上させることができるシンプルな構造の温度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、環状に配置されたガスバーナを有する調理用加熱器の、前記ガスバーナに囲まれた内側空間に設置して使用される温度検出装置であって、
前記調理用加熱器に載置された調理具の底面の温度を検知する接触式のセンサ装置と、前記調理用加熱器の前記内側空間の下側の位置に固定され、前記センサ装置を上下方向に移動可能に支持する筒状の支持シャフトとを備え、
前記センサ装置は、前記調理具の底面に当接する上面を有した板状部と前記板状部の中央部の下面から下向きに延びる下筒部とが一体になった金属製の部材である集熱部材と、温度検知素子と前記温度検知素子に接続された複数のリード線とを有した温度センサと、金属製の筒状体であるホルダと、前記ホルダの内側に収まる大きさのバネ部材とで構成され、
組み立て状態で、前記温度センサは、前記温度検知素子が前記下筒部の内側の、前記板状部の下面に近接した位置に固定されるとともに、複数の前記リード線が前記下筒部の内側を通じて前記支持シャフトの内側に引き出されており、
前記下筒部の内側に、セラミック粉末を主成分とする充填剤が充填され、複数の前記リード線の、前記下筒部の内側に在る第一の部分は、前記充填剤によって、電気伝導部である芯線と前記下筒部とが離間した状態、且つ、前記芯線同士が互いに離間した状態に位置決めされており、
複数の前記リード線の、前記支持シャフトの内側に在る第二の部分は、前記支持シャフトの内側に、前記第一の部分とともに移動可能に収容されており、
前記ホルダは、上端部全周が前記板状部の下面側に液密に固定されて内側に前記下筒部を収容し、前記バネ部材は、前記ホルダの内側に、前記集熱部材及び前記ホルダを前記支持シャフトの上端部に対して上向きに付勢するように設置されており、
前記集熱部材の前記下筒部の下端部は、前記支持シャフトの上端部の内側に収容され、前記支持シャフトの上端部は、前記ホルダの下端部の内側に収容され、前記支持シャフトの内壁面が前記集熱部材の前記下筒部の外周面に近接又は摺接し、前記支持シャフトの外壁面が前記ホルダの内周面に近接又は摺接し、前記内壁面及び前記外壁面により、前記集熱部材及び前記ホルダが上下方向にガイドされる温度検出装置である。
【0011】
前記センサ装置は、大径部及び小径部が同心状に連続する筒状体であって、特定位置に透孔が形成されたカバー部材を有し、組み立て状態で、前記カバー部材は、前記小径部が前記ホルダの側周面に固定され、前記大径部が、前記ホルダの側周面を覆うように同心状に所定空間を設けて配置され、前記大径部の上端部が、前記集熱部材の前記板状部から流れた煮汁が内側に流入できるように、前記板状部の周縁部から離間し、前記透孔が、前記大径部の内側に流入した前記煮汁を排出可能な位置に配されている構成にすることが好ましい。
【0012】
また、前記集熱部材の前記板状部の上面は、前記調理具の底面に面接触が可能な平坦な面に形成されていることが好ましい。また、前記リード線は、前記芯線を絶縁被覆材で被覆したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の温度検出装置は、温度検知素子に接続された複数のリード線が集熱部材の下筒部の内側を通じて引き出され、リード線の第一の部分(下筒部の内側に在る部分)の芯線が、下筒部の内側の充填剤によって適切な状態に位置決めされる。充填剤は、耐熱性が極めて高いセラミック粉末を主成分とするものであり、数百℃の環境下で軟化したり溶けたりするものではない。したがって、温度検出装置の環境温度が非常に高温(例えば500~600℃)になり、この高温がリード線の第一の部分に作用して絶縁被覆材が溶けたとしても、芯線と金属製の下筒部とが接触する不具合や芯線同士が短絡する不具合が防止され、その後も支障なく安全に使用することができる。
【0014】
また、従来品(特許文献1の温度検出装置)は、支持シャフトの外壁面でホルダを上下方向にガイドする構造になっているが、本発明の温度検出装置の場合は、支持シャフトの外壁面でホルダを上下方向にガイドし、さらに支持シャフトの内壁面で集熱部材の下筒部を上下方向にガイドする構造になっているので、センサ装置が移動する時、従来品よりも傾きにくく、非常にスムーズに移動することができる。さらに、集熱部材の下筒部及びホルダは耐久性に優れた金属製なので、支持シャフトの内壁面又は外壁面を繰り返し摺動しても、変形したり折れたりしにくい。
【0015】
また、本発明の温度検出装置の場合、従来品と比較すると、組み立て時、下筒部に充填剤を充填する工程が追加になるが、それほど手間が掛かる工程ではない。その他、一部の部材の構造が少し変更されるが、従来の組み立て工程を大きく変更する必要はない。したがって、本発明の温度検出装置は、従来品と同様に効率よく組み立てることができ、コストアップも小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の温度検出装置の第一の実施形態が設置された調理用加熱器の使用状態を示す模式図である。
図2】第一の実施形態の温度検出装置を示す縦断面図である。
図3】集熱部材に温度センサを取り付ける手順の一例を順に示す図(a)、(b)である。
図4】集熱部材に温度センサを取り付ける手順の一例を順に示す図(a)、(b)である。
図5】集熱部材に温度センサを取り付ける手順の一例を順に示す図(a)、(b)である。
図6】第一の実施形態の温度検出装置の一変形例を示す縦断面図である。
図7】第一の実施形態の温度検出装置の他の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の温度検出装置の第一の実施形態について、図1図5に基づいて説明する。この実施形態の温度検出装置10は、図1に示すように、環状に配置されたガスバーナ12を有する調理用加熱器14の、ガスバーナ12に囲まれた内側空間16に設置して使用される。
【0018】
調理用加熱器14は、鍋等の調理具18を支持部材20で支持し、温度検出装置10で調理具18の底面18aの温度を検出する。そして、底面18aの温度が基準温度(例えば290℃)を超えると、図示しない安全装置が作動してガスバーナ12が自動的に消火される。また、非常に火力が強い調理用加熱器14の場合、内側空間16の最高温度は、通常よりも高温(例えば500~600℃)になると想定される。
【0019】
温度検出装置10は、図1図2に示すように、調理具18の底面18aの温度を検知する接触式のセンサ装置22と、調理用加熱器14の内側空間16の下側の位置に固定され、センサ装置22を上下方向に移動可能に支持する円筒形状の支持シャフト24とを備えている。支持シャフト24は、長さ方向の途中の部位を調理用加熱器14の取り付け部14aに固定することによって、ほぼ垂直に立設される。また、支持シャフト24は、筒状の上端部に、外向きフランジ状に形成された突条であるストッパ部26を備えている。なお、図2に示す支持シャフト24は、筒状本体にストッパ部26を一体に形成した構造になっているが、筒状本体に別体のリング状部材を取り付けることによってストッパ部26を設けてもよい。
【0020】
センサ装置22は、集熱部材28、温度センサ30、ホルダ32、バネ部材34及びカバー部材36で構成される。
【0021】
集熱部材28は、調理具18の底面18aに当接する上面を有した板状部38と、板状部38の中央部の下面から下向きに延びる下筒部40とが一体になった金属製の部材である。板状部38の上面は、調理具18の底面18aに対して良好に熱結合できるように、底面18aに面接触できる平坦な面になっている。また、下筒部40の長さは、下端部が支持シャフト24の上端部の内側に収容される長さに設定されている。なお、集熱部材28は、板状部38及び下筒部40を一体に形成したものでもよいし、別々に製作した板状部38及び下筒部40を接合して一体にしたものでもよい。
【0022】
温度センサ30は、サーミスタ等の温度検知素子42と温度検知素子42に接続された2本のリード線44とを有し、温度検知素子42が下筒部40の内側の、板状部38の裏面に近接する位置に固定され、リード線44が下筒部40の内側を通じて支持シャフト24の内側に引き出される。
【0023】
リード線44は、電気伝導部である芯線を絶縁チューブ等の絶縁被覆材で被覆した構造になっている。リード線44の、下筒部40の内側に在る第一の部分44(1)は、下筒部40の内側に充填されたセラミック粉末を主成分とする充填剤46によって、芯線と下筒部40とが離間した状態、且つ、互いの芯線同士が離間した状態に位置決めされている。支持シャフト24の内側に在る第二の部分44(2)は、支持シャフト24の内側に、第一の部分44(1)とともに移動可能に収容されている。
【0024】
ここで、温度センサ30の詳細な構造と集熱部材28への取り付け構造とを分かりやすく示すため、温度センサ30を構成する複数の部材を集熱部材28に取り付ける手順の一例を説明する。
【0025】
まず、図3(a)に示すように、2本の芯線44a(例えば、ジュメット線等の裸電線)が接続された温度検知素子42と、2つの絶縁被覆材44b(例えば、耐熱性が高いポリイミド樹脂等で成る絶縁チューブ)とを用意し、絶縁被覆材44bを芯線44aに装着する。絶縁被覆材44bは集熱部材28の下筒部40よりも長く、芯線44aは絶縁被覆材44bよりも長い。
【0026】
次に、集熱部材28を用意し、図3(b)に示すように、板状部38を下にして下筒部40を起立させ、下筒部40の中に液状の充填剤46Lを充填する。充填剤46Lは、主成分である酸化アルミニウム等のセラミック粉末、金属アルコキシド等のバインダ、その他の添加剤及びアルコール等の溶剤を混合して液状にしたものである。例えば、充填装置48のノズル48aの先端部を下筒部40の中の底部まで深く差し込み、先端部に設けた吐出口48bから充填剤46Lを吐出させる。そして、充填剤46Lの吐出速度に合わせてノズル48aを徐々に引き上げ、規定量の充填剤46Lを充填する。このようにすれば、充填剤46L内部に気泡が発生するのを防止しつつ、規定量の充填剤46Lを適切に充填することができる。
【0027】
下筒部40に充填剤46Lを充填すると、図4(a)に示すように、下筒部40の中に、芯線44aに絶縁被覆材44bを装着した温度検知素子42を深く差し込み、充填剤46Lの中に浸漬する。すると、充填剤46Lの一部が絶縁被覆材44b及び温度検知素子42の周囲の空間を埋めるように上向きに流れ、液面が下筒部40の開口端の位置まで上昇する。そして、所定の条件下で放置すると、充填剤46Lが硬化して固体の充填剤46となり、各部材が下筒部40の内側に固定される。
【0028】
次に、図4(b)に示すように、2本の芯線44cを所定の絶縁被覆材44dで被覆した被覆電線と、被覆電線を挿通可能な穴を有した絶縁被覆材44e(例えば、優れた柔軟性及び難燃性を備えたガラス編組チューブ等)とを用意する。そして、図5(a)、(b)に示すように、被覆電線の芯線44cの先端部を芯線44aの先端部に溶接等の方法で接合した後、絶縁被覆材44eを装着して接合部分を保護すると、集熱部材28に取り付けられた温度センサ30が組み上がる。この状態で、温度センサ30は、温度検知素子42が充填剤46によって板状部38に近接した位置に固定され、2本のリード線44の第一の部分44(1)が、芯線44aと下筒部40とが離間した状態、且つ、芯線44a同士が互いに離間した状態に位置決めされた状態になる。
【0029】
ホルダ32は、金属製の筒状体で、図2に示すように、上端部32aの全周が集熱部材28の板状部38の下面側に液密に固定されて内側に下筒部40を収容する。ホルダ32の上端部32aは、筒状の端部を外向きに開いてフランジ状になっており、板状部38の周縁部が上端部32aの全周に亘って折り込まれて液密状態にカシメられている。また、ホルダ32の長さは、下端部の内側に支持シャフト24の上端部が収容される長さに設定されている。さらに、下端部を少し小径にすることによって、段部32bが設けられている。
【0030】
バネ部材34は、ホルダ32の内側に設置されたコイルばねで、集熱部材28及びホルダ32を支持シャフト24の上端部に対して上向きに付勢する。具体的には、バネ部材34の下端部を支持シャフト24の上端面に当接させ、バネ材34の上端部が板状部38の下面を付勢する構造になっている。
【0031】
カバー部材36は、大径部36aと小径部36bとが同心状に連続する筒状体であって、大径部36a及び小径部36bの境界部に透孔36cが形成された金属製の部材である。カバー部材36は、小径部36bがホルダ32の下端部の側周面に固定され、大径部36aが、ホルダ32の側周面を覆うように同心状に所定空間を設けて配置される。大径部36aの上端部は、集熱部材28の板状部38から流れた煮汁が内側に流入できるように板状部38の周縁部から離間させる。そして、透孔36cは、大径部36aの内側に流入した煮汁を排出可能な位置に配される。
【0032】
このように、センサ装置22は、上記の集熱部材28、温度センサ30、ホルダ32、バネ部材34及びカバー部材36で構成され、支持シャフト24に対して上下方向に移動する。上方向の移動は、バネ部材34の弾性力が集熱部材28に作用することによってセンサ装置22が上向きに移動し、ホルダ32の段部32bが支持シャフト24のストッパ部26に係止され、それ以上移動できなくなる。センサ装置22がバネ部材34の弾性力に抗して下向きに移動する時の移動量は、コイルバネであるバネ部材34が最大に圧縮された位置に制限される。通常の使用時では、センサ装置22は、調理具18が調理用加熱器14の支持部材20に載置された時、調理具18の底面18aによって集熱部材28の板状部38が押し下げられた位置までの移動になる。
【0033】
支持シャフト24は、上端部の内壁面が下筒部40の外周面に近接又は摺接し、且つ、上端部の外壁面(ストッパ部26の外壁面)がホルダ32の内周面に近接又は摺接しており、当該内壁面及び外壁面により、集熱部材28及びホルダ32が上下方向に各々ガイドされ、センサ装置22は傾くことなくスムーズに上下方向に移動することができる。なお、リード線44の、支持シャフト24の内側に在る第二の部分44(2)は、支持シャフト24の内側に移動可能に収容されているので、センサ装置22の上下方向の移動を妨げない。
【0034】
その他、温度検出装置10のカバー部材36は、高温(例えば500~600℃)の熱風がホルダ32等の部材に直接当たらないように遮熱し、リード線44の第一の部分44(1)に対する熱の影響を軽減する働きをする。また、カバー部材36は、大径部36aが受けた熱を小径部36bからホルダ32の下端部に向けて逃がす構造になっている。ホルダ32の下端部は集熱部材28の板状部28から比較的離れており、カバー部材36から逃がされた熱が温度検知素子42に伝わりにくいので、調理具18の底部18aの実際の温度T1と温度検知素子42で検出される温度T2との差ΔTが小さくなり、高い精度で温度検出できるという利点がある。また、カバー部材36は、煮汁の排出が可能な透孔36cが設けられているので、透孔36cを通じてカバー部材36とホルダ32との間に空気の流れが発生し、ホルダ32が冷却されることによって第一の部分44(1)に加わる熱がさらに軽減される。
【0035】
また、透孔36cから排出された煮汁は、小径部36bの外周面を流れ落ちることになる。しかし、支持シャフト24の上端部はホルダ32の下端部の内側に収容されているので、小径部36bの外周面を流れ落ちた煮汁は、支持シャフト24とホルダ32とが摺動する境界部に侵入したり、支持シャフト24と下筒部40とが摺動する境界部に侵入したりすることができない。したがって、煮汁の影響でセンサ装置22の上下方向の移動に障害が発生することはない。
【0036】
以上説明したように、温度検出装置10は、温度センサ30の複数のリード線44が集熱部材28の下筒部40の内側を通じて引き出されているので、ホルダ32の熱がリード線44に直接伝わることが下筒部40によって阻止される。また、リード線44の第一の部分44(1)(下筒部40の内側に在る部分)の芯線44aが、下筒部40の内側の充填剤46によって適切な状態に位置決めされている。充填剤46は、耐熱性が極めて高いセラミック粉末を主成分とするものであり、数百℃の環境下で軟化したり溶けたりするものではない。したがって、温度検出装置10の環境温度が非常に高温(例えば500~600℃)になり、この高温が第一の部分44(1)に作用して絶縁被覆材44bが溶けたとしても、芯線44aと金属製の下筒部40とが接触する不具合や芯線44a同士が短絡する不具合が防止され、その後も支障なく安全に使用することができる。なお、リード線44の第二の部分44(2) (支持シャフト24の内側に在る部分)は、ガスバーナ12から比較的離れた位置にあってそれほど高温にならないので、充填剤46を用いた特別な保護構造は不要である。
【0037】
また、従来品(特許文献1の温度検出装置)は、支持シャフトの外壁面でホルダを上下方向にガイドする構造になっているが、温度検出装置10の場合は、支持シャフト24の外壁面でホルダ32を上下方向にガイドし、さらに支持シャフト24の内壁面で集熱部材28の下筒部40を上下方向にガイドする構造になっているので、センサ装置22が移動する時、従来品よりも傾きにくく、非常にスムーズに移動することができる。しかも、集熱部材28の下筒部40及びホルダ32は耐久性に優れた金属製なので、支持シャフト24の内壁面又は外壁面を繰り返し摺動しても、変形したり折れたりしにくい。
【0038】
また、温度検出装置10の場合、従来品と比較すると、組み立て時、下筒部40に充填剤46を充填する工程が追加になるが、これはそれほど手間が掛かる工程ではない。その他、一部の部材の構造が少し変更されるが、従来の組み立て工程を大きく変更する必要はない。したがって、温度検出装置10は、従来品と同様に効率よく組み立てることができ、コストアップも小さく抑えることができる。
【0039】
なお、本発明の温度検出装置は、上記第一の実施形態に限定されるものではない。例えば、図6に示す変形例の温度検出装置10xは、温度検出装置10のカバー部材36を異なる構造のカバー部材50に置き換えたものである。カバー部材50は、ホルダ32の側周面を覆って遮熱する筒状体で、上記のカバー部材36と基本的な機能は同じである。しかし、カバー部材50の場合、筒状体の上端部を内側に曲げ込むことによって取り付け部50aが設けられ、取り付け部50aがホルダ32の上端部の側周面に固定される構造になっている。また、カバー部材50には、カバー部材36の透孔36cに相当する透孔は設けていない。
【0040】
上記のカバー部材36を使用すると、大径部36aの内側に煮汁が流入して内側のホルダ32の外周面が汚れてしまう可能性があるが、このカバー部材50を使用すると、ホルダ32の外周面が煮汁で汚れるのを防止できるという利点がある。ただし、ホルダ32の上端部は集熱部材28の板状部28に比較的近く、カバー部材50からの熱が温度検知素子42に伝わりやすいので、調理具18の底部18aの実際の温度T1と温度検知素子42で検出される温度T2との差ΔTが、上記カバー部材36と比較して少し大きくなる。したがって、実際の温度T1を高精度に検知するためには、あらかじめ実験等を行って差ΔTを測定しておき、検出された温度T2を適切に補正できるようにすることが好ましい。なお、検出された温度T2を補正することは、上記のカバー部材36を使用する時も同様に実施することが好ましく、これによって温度検知の精度をさらに向上させることができる。
【0041】
また、カバー部材は、必要に応じて無くしてもよい。図7に示す変形例の温度検出装置10yは、温度検出装置10からカバー部材36を単純に取り除いたものであり、カバー部材36が無くした場合でも、リード線44の第一の部分44(1)は、セラミック粉末を主成分とする充填剤46によって安全に保護される。また、煮汁がホルダ32の外周面を流れ落ちたとしても、シャフト24の上端部から内部に侵入することが無いので、煮汁の影響でセンサ装置22の上下方向の移動に障害が発生することはない。
【0042】
集熱部材の板状部の上面は、上記の板状部38のように、底面18aに面接触できる平坦な面にして、調理具18の底面18aに対して良好に熱結合できるようにすることが好ましいが、狙いの熱結合が得られれば、緩やかな湾曲凸面にしてもよい。
【0043】
センサ素子のリード線は、上記のリード線44のように、電気伝導部である芯線を絶縁被覆材で被覆したものであることが好ましく、芯線が被覆されていれば、図3図5に示すような手順で容易に組み上げることができる。絶縁被覆材は、芯線を覆う絶縁チューブでもよいし、芯線の表面に定着している絶縁皮膜でもよい。しかし、条件が合えば、第一の部分44(1)の絶縁被覆材44bを無くし、芯線44aを充填剤46だけで保護する構造にすることも可能であり、絶縁被覆材44bを無くしても同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0044】
10,10x,10y 温度検出装置
12 ガスバーナ
14 調理用加熱器
14a 取り付け部
16 内側空間
18 調理具
18a 底面
20 支持部材
22 センサ装置
24 支持シャフト
26 ストッパ部
28 集熱部材
30 温度センサ
32 ホルダ
34 バネ部材
36,50 カバー部材
36a 大径部
36b 小径部
36c 透孔
38 板状部
40 下筒部
42 温度検知素子
44 リード線
44(1) 第一の部分
44(2) 第二の部分
44a,44c 芯線
44b,44d,44e 絶縁被覆材
46,46L 充填剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7