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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057303
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】昇降装置及び植物工場システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
A01G31/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166742
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】秋田 励紀
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314PD06
2B314PD07
2B314PD37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植物工場における複数段を有する栽培ラックに設置された栽培槽から苗床を取り出し及び/又は栽培槽へ苗床に配置するための昇降装置を提供する。
【解決手段】複数段に設置された栽培槽を有する複数の栽培ラックを含み、前記栽培槽内の液体に浮かせた苗床で植物を生育する植物工場において、苗床を昇降させ、栽培槽から苗床を取り出す且つ/又は栽培槽に苗床を設置するための昇降装置100であって、苗床を積載する積載部130と、前記積載部に接続され、前記積載部を吊るして保持する保持手段112と、前記保持手段を駆動して、前記積載部を昇降させる駆動部110と、前記駆動部を制御する制御部116とを備え、前記駆動部及び前記制御部は、栽培ラックの栽培槽が設置された段のうちの最上段よりも高い位置に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段に設置された栽培槽を有する複数の栽培ラック(10)を含み、前記栽培槽内の液体に浮かせた苗床で植物を生育する植物工場において、苗床を昇降させ、栽培槽から苗床を取り出す且つ/又は栽培槽に苗床を設置するための昇降装置(100)であって、
苗床を積載する積載部(130)と、
前記積載部に接続され、前記積載部を吊るして保持する保持手段(112)と、
前記保持手段を駆動して、前記積載部を昇降させる駆動部(110)と、
前記駆動部を制御する制御部(116)と
を備え、
前記駆動部及び前記制御部は、栽培ラックの栽培槽が設置された段のうちの最上段よりも高い位置に配置されている、前記昇降装置。
【請求項2】
前記植物工場内の複数の栽培ラックにわたる移動用レール(18)に沿って前記昇降装置を移動させる移動機構(120)をさらに備え、
前記移動用レール及び前記移動機構は、栽培ラックの栽培槽が設置された段のうちの最上段よりも高い位置に配置されている、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記保持手段は、スリングベルト又はワイヤーであり、
前記駆動部は、前記保持手段を巻き上げる巻上機(110a)と、前記巻上機の回転数を測定する回転計(114)とを備え、
前記制御部は、前記回転数に基づき前記積載部の高さ位置を判断する、請求項1又は2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記積載部の、苗床を載せる載置台(132)は、前記制御部による制御に応じて摺動移動し、前記栽培ラックにせり出す及び前記栽培ラックから引き込むように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記積載部は、前記制御部によりON/OFFが制御される電磁石を備え、
前記制御部は、前記積載部が苗床を栽培ラックから取り出す又は栽培ラックに設置する所定の高さに位置するときに、ON状態である前記電磁石と、栽培ラックに設けられた磁性体との間の磁力により、前記積載部は当該栽培ラックに対し固定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項6】
前記積載部は、磁性体を備え、
前記積載部が苗床を栽培ラックから取り出す又は栽培ラックに設置する所定の高さに位置するとき、栽培ラックに設けられた電磁石と前記磁性体との間の磁力により、前記積載部は当該栽培ラックに対し固定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項7】
前記積載部はつり合いおもりを備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項8】
前記移動用レールは、複数の栽培ラックにより支持されている、又は、前記植物工場の建屋構造体により支持されている、請求項2に記載の昇降装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の昇降装置と、
複数の栽培ラックであって、複数段に設置された栽培槽を備える前記栽培ラックと、
複数の前記栽培ラックにわたり設けられた移動用レール(18)であって、前記昇降装置は前記移動用レールに沿って移動する、前記移動用レールと
を含む植物工場システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置及びそれを用いた植物工場システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場内で行われる植物の水耕栽培では、植物を植えた定植パネル(苗床)が、栽培槽中の培養液に浸され、植物が育った後、栽培槽から取り出され、植物が収穫される。
【0003】
植物工場内のスペース効率を上げるために、高さ方向に複数段を有する栽培ラックに複数の栽培槽が設置され、栽培槽内の培養液に植物の苗床が浮かべられ、植物の生育が行われる。植物を収穫する際、栽培ラックから植物の苗床を取り出す必要があるが、苗床を取り出す際に、苗床を滑らして取り出す滑り台式を用いる方式も考えられる。しかし、この方式では膨大な水を消費し、水漏れの影響も大きくなることから現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-49106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物工場においては、栽培ラックの複数段に設けられた栽培槽から苗床を取り出し、及び、栽培槽へ苗床を配置する昇降装置が求められている。機械工場やロジスティック倉庫等で用いられる昇降装置として、例えば、特許文献1は、天井に敷設されたレールにそって走行する天井搬送車から昇降自在に吊り下げられた昇降枠に傾斜自在に支持され、転動又は摺動するワークを収容する天井搬送車キャリアを開示する。
【0006】
しかしながら、植物工場では機械工場等と異なり比較的大量の水(培養液)を用いており、水に浸かった苗床を栽培槽から取り出す及び苗床を栽培槽に配置する際に、昇降装置が水に濡れる等の問題が生じる。昇降装置の駆動系及び制御系が水に濡れると昇降装置の故障の要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、本発明は、植物工場における複数段を有する栽培ラックに設置された栽培槽から苗床を取り出し及び/又は栽培槽へ苗床に配置するための昇降装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明には、以下の態様が含まれる。
〔1〕
複数段に設置された栽培槽を有する複数の栽培ラック(10)を含み、前記栽培槽内の液体に浮かせた苗床で植物を生育する植物工場において、苗床を昇降させ、栽培槽から苗床を取り出す且つ/又は栽培槽に苗床を設置するための昇降装置(100)であって、
苗床を積載する積載部(130)と、
前記積載部に接続され、前記積載部を吊るして保持する保持手段(112)と、
前記保持手段を駆動して、前記積載部を昇降させる駆動部(110)と、
前記駆動部を制御する制御部(116)と
を備え、
前記駆動部及び前記制御部は、栽培ラックの栽培槽が設置された段のうちの最上段よりも高い位置に配置されている、前記昇降装置。
〔2〕
前記植物工場内の複数の栽培ラックにわたる移動用レール(18)に沿って前記昇降装置を移動させる移動機構(120)をさらに備え、
前記移動用レール及び前記移動機構は、栽培ラックの栽培槽が設置された段のうちの最上段よりも高い位置に配置されている、上記〔1〕に記載の昇降装置。
〔3〕
前記保持手段は、スリングベルト又はワイヤーであり、
前記駆動部は、前記保持手段を巻き上げる巻上機(110a)と、前記巻上機の回転数を測定する回転計(114)とを備え、
前記制御部は、前記回転数に基づき前記積載部の高さ位置を判断する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の昇降装置。
〔4〕
前記積載部の、苗床を載せる載置台 (132)は、前記制御部による制御に応じて摺動移動し、前記栽培ラックにせり出す及び前記栽培ラックから引き込むように構成されている、上記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の昇降装置。
〔5〕
前記積載部は、前記制御部によりON/OFFが制御される電磁石を備え、
前記制御部は、前記積載部が苗床を栽培ラックから取り出す又は栽培ラックに設置する所定の高さに位置するときに、ON状態である前記電磁石と、栽培ラックに設けられた磁性体との間の磁力により、前記積載部は当該栽培ラックに対し固定される、上記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の昇降装置。
〔6〕
前記積載部は、磁性体を備え、
前記積載部が苗床を栽培ラックから取り出す又は栽培ラックに設置する所定の高さに位置するとき、栽培ラックに設けられた電磁石と前記磁性体との間の磁力により、前記積載部は当該栽培ラックに対し固定される、上記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の昇降装置。
〔7〕
前記積載部はつり合いおもりを備える、上記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の昇降装置。
〔8〕
前記移動用レールは、複数の栽培ラックにより支持されている、又は、前記植物工場の建屋構造体により支持されている、上記〔2〕に記載の昇降装置。
〔9〕
上記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の昇降装置と、
複数の栽培ラックであって、複数段に設置された栽培槽を備える前記栽培ラックと、
複数の前記栽培ラックにわたり設けられた移動用レール(18)であって、前記昇降装置は前記移動用レールに沿って移動する、前記移動用レールと
を含む植物工場システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る昇降装置は、植物工場の用途に適しており、昇降装置の駆動系に水がかかり、故障することが防止又は低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】植物工場における栽培ラック10の模式図である。
図2】植物工場における栽培ラック10及び移動用レール18の模式図である。
図3】一実施形態に係る昇降装置100の正面模式図である。
図4】昇降装置100により苗床を取り出す動作のフローチャートである。
図5】昇降装置100により苗床を取り出す動作の説明図である。
図6】昇降装置100により苗床を取り出す動作の説明図である。
図7】他の実施形態に係る昇降装置100A、100Bの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、植物工場に設置される栽培ラック10の模式図である。植物工場は、複数段に設置された栽培槽を有する複数の栽培ラック10を含み、栽培槽内の液体(以後「培養液」という。)に浮かせた苗床で植物を生育する工場である。
【0012】
図1(a)は、苗床20の取り出し又は配置を行う側から栽培ラック10を見た図(正面図)であり、図1(b)は、栽培ラック10の側面図である。なお、栽培ラック10の段数は3段(上から第1の段、第2の段、及び第3の段と称する。)としているが、これに限定されず、栽培ラック10の段数は複数段(2以上の整数)であればよい。
【0013】
栽培ラック10は、複数段を有するフレーム12で構成され、各段には栽培槽11a~11cが設置される。栽培槽11a~11cは、水耕栽培用の培養液の貯留槽であり、栽培槽11a~11c内の培養液中に、植物22を保持した苗床20が浮かべられ、植物22が生育される。
【0014】
培養液の主成分は水であり、生育する植物22に応じた栄養素が添加される。苗床20の材料は、培養液よりも比重が軽い材料であって、植物22を保持した状態であっても培養液内で浮くものであれば特に限定されない。例えば、苗床20の材料として、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリエチレン樹脂等の合成樹脂発泡体、又は合成樹脂と金属(又は木材)との複合材などを用いることができる。
【0015】
植物工場内には、栽培ラック10が複数設置され、植物22を照らす照明(不図示)や空調を管理する装置等が適所に配置される。本発明者による別出願(特願2018-157238号)に記載の水耕栽培システムの全部又は一部を植物工場に適用してもよい。
【0016】
栽培ラック10の各段には、磁性体14a~14cが取り付けられ、磁性体14a~14cは、後述する昇降装置100の積載部130に取り付けられた対応する磁性体140とは、磁力により動かないように積載部130を固定する。積載部130は、磁性材料ではない材料(例えば、アルミ押出材、又は繊維強化プラスチックなど)を用いて形成される。磁性体14a~14cは、電磁石であってもよいし、永久磁石であってもよい。
【0017】
詳細には後述するが、積載部130の磁性体140が永久磁石の場合は、栽培ラック10の磁性体14a~14cは電磁石とするとよく、逆に、積載部130の磁性体140が電磁石の場合は、栽培ラック10の磁性体14a~14cは永久磁石とするとよい。積載部130が動かないようにするために、磁性体140及び磁性体14a~14cは磁力の強い材料(ネオジム等)で形成するとよい。
【0018】
図2に示すように、後述する昇降装置100が植物工場内の複数の栽培ラック10間を移動できるように、移動用レール18が設けられる。移動用レール18は、各栽培ラック10に固定され支持されるものであってもよいし、植物工場の建屋構造体(屋根、天井、壁、柱、梁、又は床など)に固定され支持されるものであってもよい。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態に係る昇降装置100を正面(栽培ラック10に苗床20を出し入れする側)から見た模式図である。
【0020】
昇降装置100は、苗床20を積載する積載部130と、積載部130に接続され、積載部130を吊るして保持する保持手段112と、保持手段112を駆動して積載部130を昇降させる駆動部110と、駆動部110を制御する制御部116とを備える。
【0021】
制御部116は、駆動部110を制御するコンピュータであり、駆動部110の巻上機110aの駆動量(保持部材112の巻き取り量及び送り出し量)を制御する。また、制御部116は、各種情報を格納する記憶部、及び別のコンピュータと無線又は有線ネットワークを通じて情報通信を行う通信モジュール(いずれも不図示)等を備える。
【0022】
積載部130は苗床20を収容できるサイズを有し、苗床20を載せて移動させる載置台132を備える。また、積載部130は保持手段120により吊るされた状態で移動することになるため、積載部130を籠型に形成し、積載部130の重量をできるだけ軽量化することが好ましい。また、積載部130を軽くすることで、磁性体140と磁性体14a~14cとの磁力による固定がより安定する。なお、必要に応じて積載部130の底につり合い重り(不図示)を取り付けるようにしてもよく、これにより、積載部130の移動時の安定性がより向上する。
【0023】
載置台132は、制御部116による制御に応じて(又は人力によって)、栽培ラック10にせり出す及び栽培ラック10から引き込むように、前後に摺動移動できるよう構成されている。苗床20を載せた載置台132が栽培ラック10にせり出して、苗床20が栽培槽11a~11cに配置される。また、苗床20を載せた載置台132が栽培ラック10から引き込み、苗床20が栽培槽11a~11cから取り出される。
【0024】
駆動部110は、保持手段112を巻き取り及び送り出す巻上機110aと、保持手段112の移動方向を高さ方向に変える滑車110b、110cと、巻上機110aの回転数を測定する回転計114とを備える。保持手段112は、積載部130を保持できる強度を有し、且つ、巻上機110aにより巻き取られることができる軟性を有するものであればどのようなものであってもよい。例えば、保持手段112は、スリングベルト又はワイヤーである。
【0025】
制御部116は、回転計114が測定した巻上機110aの回転数の情報に基づき、巻上機110aによる保持手段112の巻き取り及び送り出しを制御する。そして、制御部116は、巻上機110aによる保持手段112の巻き取り量及び送り出し量を制御することで、積載部130の高さ位置を調整する。
【0026】
制御部116の記憶部には、積載部130が栽培ラック10の各段に対応する位置に移動するために必要な、巻上機110aによる保持手段112の巻き取り量及び送り出し量に関する情報が予め経験的に求められ、格納される。
【0027】
例えば、作業者があるインターフェースを通じて入力した(又は植物工場の管理コンピュータで生成された)、積載部130を所定の段に移動させる指令が、無線又は有線ネットワークを介して制御部116に送られると、制御部116は、巻上機110aの対応する巻き取り量及び/又は送り出し量に関する情報を記憶部から読み出し、その情報に基づき駆動部110の巻上機110aを制御する。
【0028】
駆動部110、回転計114、及び制御部116はボード(又は筐体)105上に配置され、ボード105は、栽培ラック10の栽培槽11a~11cが設置された段のうちの最上段よりも高い位置に配置される。これにより、駆動部110、回転計114、及び制御部116が栽培槽11a~11cから漏れ出る培養液で濡れることを防ぐことができる。また、移動用レール(18)及び移動機構(120)も、栽培ラックの栽培槽が設置された段のうちの最上段よりも高い位置に配置される。
【0029】
昇降装置100は、複数の栽培ラック10間にわたり設けられた移動用レール18に沿って移動するための移動機構120をさらに備える。移動機構120は、ボード105に取り付けられ、移動用レール18に沿って、所定の栽培ラック10の位置に昇降装置100を移動させる。例えば、移動機構120は、昇降装置100を人力で移動させるための滑車や車輪であってもよい。また、移動機構120にモーター等の動力源及び車輪等を設け、制御部116又は別の制御装置(例えば植物工場の管理コンピュータ等)の指令に応じて移動機構120が昇降装置100を駆動し、昇降装置100が移動用レール18に沿って自走できるように構成してもよい。
【0030】
昇降装置100の積載部130には、栽培ラック10の各段に取り付けられた磁性体14a~14cに対応する位置に、磁性体140が取り付けられている。磁性体140は、制御部116の制御により磁力がON又はOFFに制御(「ON/OFF制御」という。)される電磁石であってもよいし、永久磁石であってもよい。
【0031】
栽培ラック10の磁性体14a~14cが永久磁石の場合、積載部130の磁性体140は、制御部116の制御により磁力がON/OFF制御される電磁石である。例えば、積載部130を栽培槽11c(第3の段)の位置に移動させる場合、移動中に積載部130の磁性体140が、栽培槽11a、11b(第1の段、第2の段)に対応する位置に取り付けられた磁性体14a、14bにくっつかないようにする必要がある。そこで、制御部116は、積載部130が栽培槽11a、11bを通過する間は磁性体140の磁力がOFFになるように制御し、積載部130が生育層11bを通過後又は栽培槽11cの位置に到着したときに、磁性体140の磁力がONになるように制御する。そして、積載部130の磁性体140と栽培ラック10の磁性体14cとの間の磁力の作用により、保持手段112で吊り下げられ不安定である積載部130が、生育層11cの位置で動かないように固定される。
【0032】
他方、積載部130の磁性体140が永久磁石の場合、栽培ラック10の磁性体14a~14cは、不図示の制御装置(例えば植物工場の管理コンピュータ等)の制御により磁力がON/OFF制御される電磁石である。例えば、積載部130を栽培槽11cの位置に移動させる場合、移動中に積載部130の磁性体140が、磁性体14a、14bにくっつかないようにする必要がある。そこで、当該制御装置は、制御部116と通信して、又は栽培ラック10に取り付けた光センサや接触センサを用いて、積載部130の位置を把握するようにし、当該制御装置は、積載部130が栽培槽11a、11bを通過する間は磁性体14a、14bの磁力がOFFになるように制御し、積載部130が栽培槽11bを通過後又は栽培槽11cの位置に到着したときに、磁性体14cの磁力がONになるように制御する。そして、積載部130の磁性体140と栽培ラック10の磁性体14cとの間の磁力の作用により、保持手段112で吊り下げられ不安定である積載部130が動かないよう固定される。
【0033】
なお、積載部130の磁性体140及び栽培ラック10の磁性体14a~14cがともに電磁石であってもよい。
【0034】
図4~6を用いて、昇降装置100による栽培ラック10から苗床20の取り出しの動作フローについて説明する。なお、苗床20を栽培ラック10の栽培槽11a~11cに配置する動作フローも同様であるから、説明は省略する。
【0035】
まず、所定の栽培ラック10に昇降装置100が移動用レール18に沿って移動する(ステップS1)。この移動は、移動機構120が滑車や車輪である場合のように人が昇降装置100に取り付けられたロープを引くなどして行われるものであってもよいし、移動機構120が自走できる場合のように自動で行われるものであってもよい。
【0036】
昇降装置100が所定の栽培ラック10に到着すると、制御部116は、駆動部110(巻上機110a)を駆動して、所定の栽培槽(例えば栽培槽11c)の位置に積載部130を移動させる(ステップS2)。例えば、図5の(a)から(c)の順で表されるように、積載部130は所定の栽培槽11cの位置に移動する。積載部130が所定の栽培槽11cの位置にくると、積載部130の磁性体140と栽培ラック10の磁性体14cとの間の磁力により、積載部130はその位置で固定される(ステップS3)。
【0037】
制御部116は(又は人力により)積載部130の載置台132を栽培槽11cにせり出すように摺動移動させ(ステップS4)、栽培槽11cに浮かぶ苗床20を載置台132に載せて栽培ラック10から取り出す(ステップS5)。
【0038】
例えば、図6の(a)から(c)の順で表されるように、積載部130が所定の栽培槽11cの位置で固定されると(図6(a))、制御部116は、載置台132を所定の栽培槽11c内にせり出すように摺動移動させ、栽培槽11c内の培養液に浮かぶ苗床20を載置台132に載せ(図6(b))、そして載置台132を積載部130内に引き込むよう摺動移動させる(図6(c))。
【0039】
積載部130に載せた苗床20は、その後の処理(例えば、植物22の収穫など)のため、作業者やベルトコンベアー等により別の場所に運ばれる。
【0040】
本発明の他の実施形態では、図7(a)に示すように、栽培ラック10の正面及び裏面の両方に昇降装置100A、100Bが設けられる。昇降装置100A、100Bは上記昇降装置100と同じ構成である。
【0041】
例えば、昇降装置100Aは苗床20を栽培ラック10の栽培槽に配置する用途で用いられ、昇降装置100Bは苗床20を栽培ラック10から取り出す用途で用いられる。昇降装置100Bにより取り出した苗床20は、その後の処理のためにベルトコンベアー200に置かれる。
【0042】
この実施形態に係る構成は、例えば、栽培槽中の培養液に浮かんで苗床20が紙面向かって右から左に非常にゆっくりと流れていき、最も左側に到着すると苗床20の植物22の生育が完了した状態となるような植物工場に適用するとよい。植物工場の管理コンピュータは、画像認識装置や接触センサ等(いずれも不図示)により生育が完了した植物22があると判定すると、昇降装置100Bを制御して、その植物22の苗床20がある栽培ラック10に移動させ、昇降装置100Bの制御部116を制御して、苗床20を栽培槽から取り出す。他方、植物工場の管理コンピュータは、植物22の取り出しを行った栽培槽には空きがあるため、昇降装置100Aを制御して、新しい苗床20を空いた栽培槽に設置するよう、昇降装置100Aを移動させ、昇降装置100Aの制御部116を制御して、新しい苗床20を栽培槽に設置する。このように、植物工場において植物の収穫及び生育を自動で行うことで、植物の生育を効率的に行うことを可能にする。
【符号の説明】
【0043】
10 栽培ラック
11(11a~11c) 栽培槽
12 フレーム
14(14a~14c) 磁性体
20 苗床
22 植物
100 昇降装置
110 駆動部
110a 巻上機
112 保持手段
114 回転計
116 制御部
120 移動機構
130 積載部
132 載置台
140 磁性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7