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特開2023-57316液封防振装置の製造方法、及び液封防振装置
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  • 特開-液封防振装置の製造方法、及び液封防振装置 図1
  • 特開-液封防振装置の製造方法、及び液封防振装置 図2
  • 特開-液封防振装置の製造方法、及び液封防振装置 図3
  • 特開-液封防振装置の製造方法、及び液封防振装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057316
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】液封防振装置の製造方法、及び液封防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
F16F13/10 L
F16F13/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166768
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】服部 優三
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047CA02
3J047CD02
3J047FA01
3J047GA01
(57)【要約】
【課題】内筒に対する意図せぬブラスト処理を排除し、内筒に対する錆の発生を効果的に抑制可能な液封防振装置の製造方法を提供する。
【解決手段】内筒10と、内筒10の外周面に設けられ、樹脂からなる外内筒20と、外内筒20の外周側に設けられた中間筒30と、外内筒20と中間筒30の間に介在するゴム材50とを備えた液封防振装置1の製造方法であって、内筒10の軸方向の所定位置を基準として分割された外内筒、中間筒及びゴム材からなる分割体P1;P2を加硫によって少なくとも2つ成形する工程と、分割体P1;P2を内筒10の軸方向一端側及び他端側から内筒に圧入する工程とを備えた態様とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、
前記内筒の外周面に設けられ、樹脂からなる外内筒と、
前記外内筒の外周側に設けられた中間筒と、
前記外内筒と前記中間筒の間に介在するゴム材と、
を備えた液封防振装置の製造方法であって、
前記内筒の軸方向の所定位置を基準として分割された前記外内筒、前記中間筒及び前記ゴム材からなる分割体を加硫によって少なくとも2つ成形する工程と、
前記分割体を前記内筒の軸方向一端側及び他端側から前記内筒に圧入する工程と、
を備えたことを特徴とする液封防振装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数の分割体の圧入によって前記内筒の軸方向に対向する合わせ面に相補形状を形成することを特徴とする請求項1に記載の液封防振装置の製造方法。
【請求項3】
内筒と、
前記内筒の外周面に設けられ、樹脂からなる外内筒と、
前記外内筒の外周側に設けられた中間筒と、
前記外内筒と前記中間筒の間に介在するゴム材と、
を備えた液封防振装置であって、
前記外内筒、前記中間筒及び前記ゴム材が前記内筒の軸方向の所定位置を基準として少なくとも2以上に分割された分割体として構成され、
前記分割体が前記内筒に圧入された状態であることを特徴とする液封防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封防振装置に関し、特に、防錆処理や下地処理を簡略化可能な液封防振装置の製造方法、及び液封防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献に示すように、防振特性や耐久性を変化させるために金属製の内筒の軸方向中央部を径方向外側に膨出させ、その周囲にゴム材を配置する形態の液封防振装置が知られている。また、近年においては、内筒の軸方向の形状を変えることなく、内筒の外周面に接着剤を介して樹脂製の筒状体を設け、当該筒状体によって膨出部を形成する試みがなされている。
このような形態にあっては、接着剤を介して一体化された内筒及び筒状体に対してブラスト処理を施し、筒状体の外周面とゴム材との一体性を確保する工程が必要となるが、当該ブラスト処理によってブラストが不要な内筒の軸方向端面や内周面までもがえぐられ、錆の発生点となり易くなるという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-59625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記点を課題としてなされた発明であって、内筒に対する意図せぬブラスト処理を排除し、内筒に対する錆の発生を効果的に抑制可能な液封防振装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するための液封防振装置の製造方法として、内筒と、内筒の外周面に設けられ、樹脂からなる外内筒と、外内筒の外周側に設けられた中間筒と、外内筒と中間筒の間に介在するゴム材とを備えた液封防振装置の製造方法であって、内筒の軸方向の所定位置を基準として分割された外内筒、中間筒及びゴム材からなる分割体を加硫によって少なくとも2つ成形する工程と、分割体を内筒の軸方向一端側及び他端側から内筒に圧入する工程とを備えた態様とした。
本態様によれば、樹脂からなる外内筒を含む分割体を形成した後に、当該分割体を内筒に圧入することから、内筒がブラストに曝されることなく、錆の発生を抑制することができる。また、分割体と内筒とが圧入によって一体化されることから、外内筒と内筒との下地処理や接着処理を不要とすることができる。
【0006】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】液封防振装置を示す概要図である。
図2】一方の分割体を示す図である。
図3】他方の分割体を示す図である。
図4】分割体の他の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[液封防振装置の構造]
図1(a)~(c)は、実施形態に係る液封防振装置1の概要を示す。同図の(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図である。
同図に示すように、液封防振装置1は、内筒10と外内筒20と中間筒30とゴム材50とオリフィス形成部材70、及び、外筒80を備える。内筒10は、例えば、自動車のサスペンションアーム等の振動発生部側に対して組み付けられ、外筒80は、例えば、車体フレーム等の振動受動部側に対して組み付けられる。以下、本明細書において図1乃至図3の矢印で示す上下、左右、前後方向を液封防振装置1の上下、左右、前後方向として説明する。また、図1(b)及び図1(c)の一点鎖線で示す内筒10の中心軸Jの延長方向(以下、軸方向とも言う)は、上下方向と一致する。
【0009】
図1(a)に示すように、内筒10は、中心に円柱状の貫通孔10aが形成された筒状体であって、アルミニウムや鉄等の金属から構成される。内筒10は、軸方向の長さ寸法が外内筒20の長さ寸法と同寸であって、かつ、中間筒30及び外筒80の長さ寸法よりも長く形成される。即ち、内筒10及び外内筒20の上端部と下端部とは、それぞれ、中間筒30及び外筒80の上端部と下端部から上方及び下方に突出する。
【0010】
内筒10の外周面の形状は、平面視、左右方向に延長する互いに平行な2つの直線部と、2つの直線部を結んだ半円状の円弧部とを有する角丸長方形(トラック状ともいう)に形成される。貫通孔10aは、中心軸Jが角丸長方形の中心を通る位置に形成される。内筒10の軸方向中央部には、内筒10の外周面から径方向外側に突出する膨出部12が形成される。膨出部12は、内筒10の全周に亘って連続して形成される。本例では、膨出部12の断面形状を、頂点が内筒10の軸方向中心を通る三角形状としたが、円弧状や台形状であってもよい。また、膨出部12は、液封防振装置1の耐久性の向上や防振特性を変更のため等に選択的に採用可能であり、任意の形状に設定される。
【0011】
外内筒20は、内筒10と同軸上に、内筒10の外周面に沿って密接に設けられた筒状の部材であって、樹脂等から構成される。また、外内筒20の外周形状は、内筒10と同じく、平面視角丸長方形としている。外内筒20の軸方向中央部には、外周面から径方向外側に突出する膨出部22が設けられる。外内筒20の内周面の形状は内筒10の外周面の軸方向の形状と同形状である。外内筒20の外周面の軸方向に沿った形状は、内周面の形状と同じであってもよいが、本例では、断面視台形状の膨出部22とした。膨出部22を断面視台形状とすることにより、外内筒20の外周面に加硫接着されるゴム材50との接着面積を大きくでき、外内筒20とゴム材50との接着強度を高めることができる。
【0012】
外内筒20は、内筒10の軸方向中心を通り内筒10の軸方向に垂直な面(以下、分割線Sという)で上下方向に分割(2分割)されている。以下、外内筒20の分割線Sよりも上側の部分を上側外内筒200とし、下側の部分を下側外内筒210とする。
【0013】
中間筒30は、内筒10と同軸上に、外内筒20の外周側に設けられ、ゴム材50を介して外内筒20と一体化されている。図1(a)に示すように、中間筒30は、内筒10の膨出部12よりも上方に位置する環状の上側環状部32と、下方に配置された環状の下側環状部34を有する。上側環状部32と下側環状部34の内径寸法及び外径寸法は、同一に設定される。図1(c)に示すように、上側環状部32及び下側環状部34は、軸方向に延長する接続部36により接続される。接続部36は、周方向に所定範囲に渡って形成され、前後方向に設けられた一対の領域である。
接続部36は、上側環状部32及び下側環状部34よりも縮径され、軸方向と平行に延長する直線部36aを有する。直線部36aの上部は、径方向外側に向かって傾斜する上側接続片36bを介して上側環状部32と接続される。直線部36aの下部は、径方向外側に向かって傾斜する下側接続片36cを介して下側環状部34と接続される。
【0014】
図2図3にも示すように、中間筒30は、外内筒20と同様に分割線Sにて上側中間筒300と下側中間筒310とに分割されている。即ち、中間筒30は、接続部36の直線部36aの軸方向中心にて上下方向に分割される。より詳細には、直線部36aを基準として分割線Sよりも上側の部分を上側直線部37とし、下側の部分を下側直線部38とすると、上側中間筒300は、上側環状部32と上側接続片36b及び上側直線部37から構成される。同様に、下側中間筒310は、下側環状部34と下側接続片36c及び下側直線部38から構成される。なお、中間筒30を構成する材料は、所定の剛性のあるものであれば、外内筒20のように樹脂であってもよいし、内筒10のように金属であってもよい。
【0015】
ゴム材50は、外内筒20の外周面と中間筒30の内周面に加硫接着され、外内筒20と中間筒30とを弾性的に連結する。図1(b)に示すように、ゴム材50は、外内筒20の上端側から中間筒30の上側環状部32に向けて延在する上壁部52と、外内筒20の下端側から中間筒30の下側環状部34に向けて延在する下壁部54とを有する。上壁部52と下壁部54は、外内筒20の外周を被覆する被覆部56により接続される。被覆部56は、上壁部52及び下壁部54に対して径方向内側に窪むように形成されており、その外周面は、上壁部52の下面及び下壁部54の上面と共に液室WL,WRの一部を区画する。
【0016】
上壁部52、下壁部54及び被覆部56の径方向外側の開放部には、オリフィス形成部材70が圧入によってはめ込まれる。オリフィス形成部材70のはめ込みによって、オリフィス形成部材70の内周面、上壁部52の下面、下壁部54及び被覆部56によって周方向に所定範囲に渡って延在する液室WL,WRが区画される。
【0017】
図1(c)に示すように、ゴム材50は、周方向に所定範囲に渡って形成された隔壁部58を有する。隔壁部58が液室WL,WR間に形成されることにより、液室WL,WRが周方向に間隔を有して離間した状態となる。なお、液室の数や形状、範囲、或いはゴム材50の断面形状は減衰特性等の要求に応じて適宜設定可能である。
【0018】
ゴム材50は、外内筒20及び中間筒30と同様に、分割線Sにて上側ゴム材500と下側ゴム材510とに分割されている。即ち、ゴム材50は、隔壁部58及び被覆部56の軸方向中心にて上下方向に分割される。
【0019】
被覆部56における分割線Sよりも上側の部分を上側被覆部56a、下側の部分を下側被覆部56bとし、隔壁部58における分割線Sよりも上側の部分を上側隔壁58a、下側の部分を下側隔壁58bとすると、上側ゴム材500は、上壁部52、上側被覆部56a及び上側隔壁58aから構成される。また、下側ゴム材510は、下壁部54、下側被覆部56b及び下側隔壁58bから構成される。詳細については後述するが、上側隔壁58aの下端面には上側嵌合部60が形成され、下側隔壁58bの上端面には、上側嵌合部60と嵌合する下側嵌合部62が形成される。
【0020】
オリフィス形成部材70は、断面形状が台形状の本体部72と、矩形状のオリフィス通路74とを備える。オリフィス形成部材70は樹脂等から構成される平面視円弧状の部材であって、中間筒30を構成する接続部36の外周面と外筒80の内周面との間にはめ込まれ、周方向の両端面がゴム材50の隔壁部58の周方向両端面と密接する。
【0021】
オリフィス通路74は、本体部72の外周面側に設けられ、周方向に沿って延在する溝幅が狭く深さの浅い溝であって、外筒80の内周面に開口する。オリフィス通路74には左右の液室WL,WRと連通する不図示の流路が設けられている。液室WL,WRには、例えば、エチレングリコール、水、シリコーンオイル等が封入されており、各液室WL,WRに封入された液体は、オリフィス通路74を通じて相互に流動可能とされる。
【0022】
外筒80は、内筒10と同軸上に、中間筒30の径方向外側に配置される円筒状の部材であって、アルミニウムや鉄等の金属から構成される。外筒80は、中間筒30及びオリフィス形成部材70の外周面を覆うように密接する。外筒80の両端部に形成されたカシメ部82;84は、中間筒30側に折曲され、中間筒30の上端及び下端を保持する。
【0023】
[分割体について]
以上説明したように、本例では、外内筒20と中間筒30及びゴム材50とが、それぞれ分割線Sで上下に分割されており、一方の上側分割体P1と他方の下側分割体P2とが軸方向に組み合わされてなる。以下、それぞれの分割体P1;P2について詳説する。
【0024】
図2は、上側外内筒200と上側中間筒300及び上側ゴム材500が一体化された上側分割体P1を示す図である。同図の(a)は、下側分割体P2との合わせ面S1を見た平面図であり、(b)は、(a)のC1-C1断面図、(c)は上側嵌合部60のD1-D1拡大断面図である。
【0025】
図3は、下側外内筒210と下側中間筒310及び下側ゴム材510が一体化された下側分割体P2を示す図である。同図の(a)は、上側分割体P1への合わせ面S2を見た平面図であり、(b)は(a)のC2-C2断面図、(c)は下側嵌合部62のD2-D2拡大断面図である。
【0026】
[嵌合部の形状について]
図2(b),(c)に示すように、合わせ面S1における上側隔壁58aの端面(下端面)に形成された上側嵌合部60は、下側に突出する山部60aと上側へ凹む谷部60bとが交互に形成された凹凸状である。一方、図3に示すように、下側隔壁58bの端面(上端面)に形成された下側嵌合部62は、下側へ凹む谷部62aと上側に突出する山部62bとが交互に形成された凹凸状である。また、山部60aは軸方向に対向する谷部62aと合致する形状とされ、谷部60bは軸方向に対抗する山部62bに合致する形状とされる。つまり、上側分割体P1と下側分割体P2とを分割線Sにて突き合わせると、軸方向に対向する上側隔壁58a及び下側隔壁58bに形成された上側嵌合部60と下側嵌合部62とが相互に嵌り合う相補形状が形成される。なお、各山部及び各谷部の形状は図示に限られず、その断面形状が矩形状等に設定された相補形状であっても良い。
【0027】
次に、液封防振装置1の製造工程について説明する。
[分割体の製造]
(1)内筒10、上側外内筒200、下側外内筒210、上側中間筒300、下側中間筒310、オリフィス形成部材70、及び、外筒80を個別に作製する。
(2)次に、予めブラスト処理した上側外内筒200と上側中間筒300を金型内に位置決めする。そして、金型を加熱しながら圧力をかけて、ゲートから未加硫ゴムをキャビティ内に充填し、所定時間加硫した後に脱型する。当該工程により、上側ゴム材500を介して上側外内筒200と上側中間筒300とが加硫接着された上側分割体P1を得る。
(3)次に、(2)と同様の工程を経て下側ゴム材510を介して下側外内筒210と下側中間筒310とが加硫接着された下側分割体P2を得る。
なお、内筒10は、上側外内筒200及び下側外内筒210とは別個に作製可能であるため、ブラスト処理を要しない。
【0028】
[分割体の圧入]
(4)上側分割体P1を内筒10の上側から軸方向中央に向けて圧入し、下側分割体P2を内筒10の下側から軸方向中央に向けて圧入する。また、圧入時においては、内筒10の外周が平面視角丸長方形であるため、上側分割体P1及び下側分割体P2が周方向(回転方向)にズレることはない。また、圧入によって上側嵌合部60と下側側嵌合部62同士が嵌合するため、互いに対抗する合わせ面S1;S2同士が隙間なく密着し、液漏れを防止できる。なお、各嵌合部に加えて、又はこれに代えて上側分割体P1と下側分割体P2とを接着剤等で接着したり、Oリング等のシール材を介在させてもよい。
【0029】
[組立工程]
(5)上側分割体P1及び下側分割体P2の内筒10への圧入後には、一対のオリフィス形成部材70を取付ける。本例では、オリフィス形成部材70の隔壁部58間における内筒10の軸方向端部を上側外内筒200の下面側まで延長するとともに、下側外内筒210の上面側まで延長させている。これにより、オリフィス形成部材70を上下方向から拘束でき、オリフィス形成部材70を上側分割体P1とC2との間に強固に固定可能となる。
(6)最後に外筒80を中間筒30に取付ける。外筒80の取付けは液中にて、外筒80の上下のカシメ部82;84を中間筒30側に曲げて封止することで、液体を液室WL,WR内に封入する。
【0030】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0031】
例えば、本例では、外内筒20と中間筒30とゴム材50とをそれぞれ上下方向に2分割としたが、分割数は内筒10の膨出形状が複雑である場合等には3以上の分割数としても良い。また、本例では、分割線Sの位置を内筒10の軸方向中心を通り内筒10の軸方向に垂直な面と一致するものとしたが、膨出部12の位置が内筒10の軸方向中心より上下にズレた位置にある場合等には、分割線Sの位置を軸方向中心からズレた位置に設定しても良い。
【0032】
また、本例では、ゴム材50の上壁部52と下壁部54の内周面側の形状を略平面としたが、上側分割体P1と下側分割体P2とを個別に加硫成形可能な上記工程によれば、図4に示すアンダーカットされた形状とすることも可能である。
具体的には、図4に示すように、上側分割体P1に設けられる上壁部52の内面52aの形状を上側に凸とし、下側分割体P2に設けられる下壁部54の内面54aの形状を下側に凸とすることにより、ゴム材50の体積を少なくしつつ、液室の容積の拡大を図ることが可能である。一般的にこのようなアンダーカット形状は、ゴム材50の周り込みが不十分となり易いため金型での成形では実現困難であるが、上側分割体P1と下側分割体P2とを金型によって個別に成形する本例の工程によれば、金型の形状変化によってゴム材50の周り込みが可能となり、アンダーカット形状を容易に成形することが可能となる。
【0033】
以上の通り、本発明によれば、内筒がブラストに曝されることないので、錆の発生を抑制することができる。また、分割体と内筒とが圧入によって一体化されることから、外内筒と内筒との下地処理や接着処理が不要となる。また、分割体の合わせ面に相補形状を形成したので、合わせ面同士を隙間なく連結することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 液封防振装置、10 内筒、12 膨出部、20 外内筒、30 中間筒、
50 ゴム材、60 上側嵌合部、62 下側嵌合部、70 オリフィス形成部材、
80 外筒、200 上側外内筒、210 下側外内筒、300 上側中間筒、
310 下側中間筒 P1;P2 分割体、S1;S2 合わせ面、WL;WR 液室。
図1
図2
図3
図4