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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057318
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】ケース製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 12/46 20060101AFI20230414BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230414BHJP
   B21D 51/04 20060101ALI20230414BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20230414BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
F16B12/46 A
B23K26/21 P
B21D51/04
F16B5/06 P
F16B5/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166771
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(71)【出願人】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】入江 真
(72)【発明者】
【氏名】吉村 泰典
(72)【発明者】
【氏名】舟木 厚司
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 俊治
【テーマコード(参考)】
3J001
3J024
4E168
【Fターム(参考)】
3J001FA07
3J001GA02
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA03
3J001JD11
3J001KA02
3J001KA13
3J001KB03
3J024AA13
3J024BA02
3J024BA05
3J024BB02
3J024BB04
4E168BA04
4E168BA30
(57)【要約】
【課題】ケース製造時に部材同士を正確に位置合わせすることができるケース製造方法を提供する。
【解決手段】ケース製造方法では、ケースの周壁10を周方向に分割することで構成される複数の分割板材1を形成し、隣り合う分割板材1の一方1aの端縁近傍の表面上に少なくとも一つの突起1cを形成する。複数の分割板材1を、それぞれ、周壁10の合成位置に分割板材1を案内する治具2に収納する。治具2を上述した合成位置に移動させて隣り合う分割板材1の一方1aの突起1cに他方の端縁を接触させて、複数の分割板材1を仮保持する。仮保持された状態の複数の分割板材1の隣り合う分割板材1の端縁同士を接合して周壁10を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース製造方法であって、
ケースの周壁を周方向に分割することで構成される複数の分割板材を形成し、
隣り合う前記分割板材の一方の端縁近傍の表面上に少なくとも一つの突起を形成し、
複数の前記分割板材を、それぞれ、前記周壁の合成位置に前記分割板材を案内する治具に収納し、
前記治具を前記合成位置に移動させて前記隣り合う分割板材の前記一方の前記突起に他方の端縁を接触させて、複数の前記分割板材を仮保持し、
仮保持された状態の複数の前記分割板材の前記隣り合う分割板材の端縁同士を接合して前記周壁を形成する、ケース製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のケース製造方法であって、
複数の前記分割板材が、前記周壁を等分割して形成されており、それぞれが前記突起を含めて同一形状を有している、ケース製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のケース製造方法であって、
複数の前記分割板材が金属製である、ケース製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のケース製造方法であって、
前記隣り合う分割板材の前記一方の端縁と前記他方の前記端縁とを半引きで接触した状態で、前記一方の端縁と前記他方の前記端縁とを全長にわたってレーザ接合する、ケース製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のケース製造方法であって、
前記治具が、前記合成位置から放射状に延設されたレール上にスライド可能に設けられており、
仮保持された複数の前記分割板材と共に前記治具及び前記レールを放射中心回りに回転させて、前記一方の端縁と前記他方の前記端縁とを順次レーザ溶接する、ケース製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のケース製造方法であって、
前記周壁が二等分されて前記分割板材が形成されており、
前記治具に仮保持された前記分割板材が、前記レールの延設方向に直角な前記放射中心を通る直角線の方向から見て前記放射中心に対して点対称に配置される、ケース製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のケース製造方法であって、
前記治具が、前記分割板材を前記治具の内面に面接させる保持機構を有している、ケース製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケースを製造するには様々な方法がある。アスペクト比の大きな(即ち、開口面積に対して深さが深い)金属ケースをプレス形成する場合、いわゆる「深絞り」が必要になる。「深絞り」の場合、伸展性のよい金属を使用する必要があるし、大きなプレス圧力も必要になるし、長いストロークを有する金型も必要になる。また、アスペクト比の大きな樹脂ケースを射出成形するような場合は、ケースの深さに対応する長い型抜きストロークを有する金型が必要になる。即ち、ケースの素材によらず、大きな金型が必要となる。このため、下記特許文献1に開示されているように、ケースを複数の部材に分割して形成した後に、部材同士を接合することでケースを製造する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-198011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の部材からケースを製造するには、部材同士を正確に位置合わせしつつ接合する必要がある。ケースに気密性や液密性が求められる場合、部材同士の接合が不十分であると気密性や液密性が不十分となる。このため、接合時の部材同士の位置決めは重要である。部材同士を正確に位置決めできれば、部材同士をしっかり接合することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様のケース製造方法では、ケースの周壁を周方向に分割することで構成される複数の分割板材を形成し、隣り合う前記分割板材の一方の端縁近傍の表面上に少なくとも一つの突起を形成し、複数の前記分割板材を、それぞれ、前記周壁の合成位置に前記分割板材を案内する治具に収納し、前記治具を前記合成位置に移動させて前記隣り合う分割板材の前記一方の前記突起に他方の端縁を接触させて、複数の前記分割板材を仮保持し、仮保持された状態の複数の前記分割板材の前記隣り合う分割板材の端縁同士を接合して前記周壁を形成する。
【0006】
ケースの周壁を構成する分割板材を接合する際に、分割板材を収納した治具を上述した合成位置に移動させると、隣り合う分割板材の一方に形成された突起で他方の端縁を受け止めることで、隣り合う分割板材同士が正確に位置決めされて仮保持される。この位置決めは、すべての隣り合う分割板材同士で行われる。複数の分割板材は、正確に位置決めされた仮保持状態で接合されるので、しっかりと接合された周壁が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のケース製造方法によれば、ケース製造時に部材同士を正確に位置合わせして、部材同士をしっかりと接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るケース製造方法を示す概略斜視図である。
図2】分割板材の端縁の接触状態を示す拡大側面図である。
図3】分割板材の端縁の接触方法を示す拡大側面図である。
図4】分割板材で形成される周壁の形態を示す模式的側面図である。
図5】第一実施形態に係るケース製造装置を示す模式的斜視図である(製造工程前半)。
図6】上記ケース製造装置を示す模式的斜視図である(製造工程後半)。
図7】第一実施形態の変形例に係る製造装置を示す模式的斜視図である。
図8】製造装置における保持機構の動作を示す一部断面側面図である。
図9】第二実施形態に係るケース製造装置を示す模式的斜視図である。
図10】第二実施形態の変形例に係る製造装置を示す模式的部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しつつ、実施形態に係るケース製造方法について説明する。まず、実施形態の製造方法について、図1を参照して、概要を説明する。図1は、実施形態に係るケース製造方法を示す概略斜視図である。
【0010】
ケース製造方法では、ケースの周壁10を周方向に分割することで構成される複数の分割板材1(1a,1b)を形成し、隣り合う前記分割板材1の一方1a(1b)の端縁近傍の表面上に少なくとも一つの突起1cを形成し、複数の前記分割板材1を、それぞれ、前記周壁10の合成位置に前記分割板材1を案内する治具2に収納し、前記治具2を前記合成位置に移動させて前記隣り合う分割板材1の前記一方1a(1b)の前記突起1cに他方1b(1a)の端縁を接触させて、複数の前記分割板材1を仮保持し、仮保持された状態の複数の前記分割板材1の前記隣り合う分割板材の端縁同士を接合して前記周壁10を形成する。
【0011】
以下、より詳細に説明する。図1(a)及び(b)に示されるように、まず、ケースの周壁10(図1(d)参照)を周方向に分割して構成された複数の分割板材1が形成される。本実施形態では、ケースは直方体形状を有し、その周壁は二等分されて分割板材1が二つ形成される(分割板材1a、1b)。分割板材1は同一形状を有しており、90度に折り曲げられた金属板である。
【0012】
まず、金属板からプレス加工によって板材1xが打ち抜かれ(図1(a))、その後、プレス加工で90度折り曲げられて分割板材1が形成される。なお、隣り合う分割板材1の一方の端縁近傍の表面上には少なくとも一つの突起1cが形成される。本実施形態では、分割板材1の端縁近傍に二つの突起1cが形成される。なお、突起1cは、板材1xをプレス加工で金属板から打ち抜く際に同時に形成される。
【0013】
周壁10は、本実施形態ではL形板に二等分割されたが、三分割以上に分割されてもよいし、必ずしも等分割されなくてもよい。また、分割形状も、L形に限定されず、単なる平板や曲板、角張ったU字形(コ字形)などでもよい。また、分割の方向も、上下方向に分割したり斜めに分割したりしてもよい。また、形成されるケース(周壁10)のアスペクト比も限定されない。また、便宜上、本実施形態では「ケース」の語を用いているが、ここに言う「ケース」には、タンクやボトルなどと呼ばれる容器も含まれる。
【0014】
隣り合う分割板材1(1a、1b)の一方の分割板材1aに突起1cが形成され、後述するように、この突起1cに他方の分割板材1bの端縁が接触されることになる。逆に、隣り合う分割板材1の一方が分割板材1bであると考えれば、分割板材1bにも突起1cが形成され、この突起1cに他方の分割板材1aの端縁が接触されることになる。即ち、突起1cは両方の分割板材1a及び1bに形成される。本実施形態では、このようにして、突起1cも含めて同一形状の二つの分割板材1(1a、1b)が形成される。
【0015】
次に、図1(c)に示されるように、分割板材1はそれぞれ治具2に収納される。治具2は、収納した分割板材1を周壁10の合成位置に案内する。治具2は、分割板材1の設計形状に合わせた内面を備えており、かつ、分割板材1を内面に面接させる保持機構3も有している。保持機構3については追って詳しく説明するが(図8参照)、治具2には、保持機構3の吸着部30が挿通される挿通孔20が形成されている。二つの分割板材1は同一形状であるので、それを収納する二つの治具2も同形状である。本実施形態では、直方体形状のケースの周壁10を形成するので、各治具2も直方体形状の箱状の形態を有しており、その一部が分割板材1を収納するために開放されている。また、分割板材1同士の接合部を露出させるための開口部21も治具2に形成されている。
【0016】
図1(d)に示されるように、分割板材1を収納した治具2は、上述した合成位置に移動される。なお、二つの治具2(分割板材1)は合成位置に移動されるように、全ての治具2に関して相対的に移動されればよい。例えば、二つの治具2を互いに相手に向けて同じように移動させてもよいし、二つの治具2の一方を静止させて他方のみを移動させてもよい。なお、治具2の相対的な移動は、直線的な移動であっても曲線的な移動であってもよい。また、この治具2の相対的な移動は、周壁10が三つ以上の分割板材1に分割される場合も同様である。この場合、治具2の各移動量は等しくなくてもよい。複数の分割板材1が同一形状でない場合も同様である。
【0017】
上述した治具2の移動により、隣り合う分割板材1(1a,1b)の一方1a(1b)の突起1cに他方1b(1a)の端縁が接触されて、複数の分割板材1が周壁10の形状に仮保持される。分割板材1を仮保持する治具2の位置が、治具2の上述した合成位置である。即ち、分割板材1aの端縁が分割板材1bの突起1cに接触されて位置決めされると共に、分割板材1bの端縁が分割板材1aの突起1cに接触されて位置決めされる。この結果、周壁10を構成する全ての隣り合う分割板材1同士が正確に位置決めされて、分割板材1が周壁10の合成状態で仮保持される。この仮保持も、周壁10が三つ以上の分割板材1に分割される場合も同様であり、複数の分割板材1が同一形状でない場合も同様である。
【0018】
仮保持状態では、分割板材1同士の接合部、即ち、突起1cに接触されている端縁は、治具2の開口部21から露出される。次に、この仮保持状態で、分割板材1の端縁同士が接合され、周壁10が形成される。本実施形態では、金属製の分割板材1の接合部はレーザ溶接によって接合される。分割板材1が樹脂によって形成される場合は、接着剤などによって接合される。分割板材1を樹脂で形成する場合、接合部を溶着させることも可能であり、溶着をレーザ用いて行うことも可能である。
【0019】
図1(e)に示されるように、分割板材1の接合部を接合して形成された周壁10は、治具2から取り出される。最後に、周壁10には、底板11が接合される。本実施形態では、底板11もプレス加工によって打ち抜かれた金属板であり、底板11にも突起1cと同様の突起11cが四隅にプレス加工によって形成されている。突起11cによって、底板11の周壁10との位置合わせが行われる。底板11も、周壁10にレーザ溶接される。このようにして、ケースが製造される。図には示されていないが、ケースに所定の収容物が収容された後、適宜、蓋板も底板11と同様に接合される。ケースの用途によっては、着脱自在の蓋が用いられる。
【0020】
なお、図1の例では、治具2の形状のために、図1(d)に示される仮保持された分割板材1の接合部を接合した後に、底板11を周壁10に接合することができない。しかし、治具2の形状によっては、治具2で周壁10を保持している状態で底板11を接合することが可能な場合もある(後述する第二実施形態を参照)。そのような場合は、底板11を周壁10に接合した後にケースが治具2から取り外される。
【0021】
次に、突起1cの形状について、図2を参照しつつ説明する。図2は、分割板材1の端縁の接触状態を示す拡大側面図である。図2(a)に示される突起1cは、涙滴形状をその中心軸を通る平面で切断して二等分した形状を有している。突起1cの端縁側の表面は傾斜凸曲面である。図2(b)に示される突起1cは、円錐又は多角錐形状を有している(あるいは、三角柱を端縁に沿って延在させた形状を有している)。突起1cの端縁側の表面は傾斜曲面又は傾斜平面である。図2(c)に示される突起1cは、直方体形状の一部を切断した形状を有している。切断面は、端縁側に向けられた傾斜平面である。
【0022】
図2(d)に示される突起1cは、半球形状を有している(あるいは、二等分された円柱を端縁に沿って延在させた形状を有している)。突起1cの端縁側の表面は傾斜凸曲面である。図2(e)に示される突起1cは、球をその中心を通る互いに直角な二平面で四等分した形状を有している(あるいは、4等分された円柱を端縁に沿って延在させた形状を有している)。突起1cの端縁側の表面は分割板材1の内面に対して垂直な平面である。図2(f)に示される突起1cは、角が丸められた立方体形状を有している。突起1cの端縁側の表面は分割板材1の内面に対して垂直な平面である。また、図示はしないが、突起1cは、球の一部や円柱の一部の形状を有していてもよく、突起1cは、端縁の突起が分割板材1を位置決めできる形状を呈していれば足りる。
【0023】
なお、上述した図2(a)~(f)に示される突起1cの端縁方向の幅は小さい。しかし、突起1cは、上述した図2(a)~(f)に示される形状の断面を有し、端縁に沿って長く形成されてもよい。また、端縁に沿って複数の突起1cが形成される場合、全ての突起1cが同一形状でなくてもよい。このように、突起1cは、分割板材1の内面とそれ自体とで相手の分割板材1の端縁を位置決めできる形状に形成される。
【0024】
また、図2(a)~(f)に示されるように、分割板材1の端縁同士は、いわゆる「半引き」となるように接合(仮保持)されるのが好ましい。「半引き」では、分割板材1の一方の端面が、他方の端面の中間に位置する。金属製の分割板材1をレーザ溶接する場合、このような「半引き」を採用することで、分割板材1の接触(仮保持)された端面に向けてレーザを照射することで、分割板材1の端縁同士をその全長にわたって確実に接合することができる。このとき、図2の上方(又は、右上方)からレーザを照射すれば、周壁10(ケース)の内部に溶融金属が侵入することもない。食品用や医療用のケースを製造する場合、周壁10(ケース)の内部に溶融金属が侵入するのは品質上の問題となる。また、侵入した金属を除去する工程を増やせば製造効率が低下する。
【0025】
分割板材1が樹脂などの他の素材で形成される場合も、分割板材1の接合(仮保持)された端面に接着剤を充填することで、分割板材1の端縁同士をその全長にわたって確実に接合することができる。この場合も、「半引き」が採用されているので、接着剤を充填する面を確保しつつ、周壁10(ケース)の内への接着剤の侵入も防止できる。溶融金属や接着剤は、直角な二つの端面上に位置し、分割板材1の外面を汚損することなく、分割板材1の端縁同士をしっかりと接合することができる。
【0026】
「半引き」ではなく、いわゆる「片引き」の場合を考える。「片引き」では、分割板材1の一方の端面が、他方の外面と面一にされる。図2を例にすれば、「片引き」では、上側の水平な分割板材1の端面が下方の垂直な分割板材1の外面にまで達する。「片引き」でのレーザ溶接の場合、図2の上方からレーザを照射する場合と、図2の右方からレーザを照射する場合が考えられる。何れにしても、分割板材1の外面上にレーザ痕が残るため、外観品質が低下する。レーザ痕を除去する工程を増やせば、製造効率が低下する。また、図2の右方からレーザを照射する場合は、形成される周壁10(ケース)の内部に溶融金属が侵入する可能性がある。ただし、図2の上方からレーザを照射する場合は、高い接合強度を得ることができる。
【0027】
分割板材1が樹脂などの他の素材で形成される「片引き」の場合、例えば、接着剤を用いて接合することになるが、やはり、接着剤が分割板材1の外面上に残るため、外観品質が低下する。接着剤を外面上に残さないためには、分割板材1の端縁同士を接触させる前に接着剤を狭い面積の端面上に塗布しておかなければならず、工程が複雑になり、製造効率が低下する。なお、周壁10の内部コーナー部に溶接や接着剤を用いることも考えられるが、ケース内部への溶融金属や接着剤の侵入の可能性が残るし、ケース内の容積低下を招く。
【0028】
「半引き」や「片引き」ではなく、「両引き」の場合を考える。「両引き」では、分割板材1の一方の端縁が、他方の端縁と線接触される。図2を例にすれば、「両引き」では、上側の水平な分割板材1の端面が下方の垂直な分割板材1の内面までしか達しない。「両引き」でのレーザ溶接の場合、直角に配置された端面上に隅肉を盛る必要が生じるため、溶接棒や溶接ワイヤが必要となる。接着剤を用いる場合は、十分な接合強度が得られない。また、レーザ溶接でも接着剤接合でも、形成される周壁10(ケース)の内部に溶融金属や接着剤が侵入する可能性がある。
【0029】
なお、本実施形態では、レーザ接合と接着剤接合を例に説明したが、分割板材1の端縁同士は、他の方法で接合されてもよい。例えば、他の接合方法としては、機械的接合や冶金的接合が挙げられる。機械的接合としては、より具体的には、ボルト及びナットによる接合、カシメによる接合、リベットによる接合、圧入などが挙げられる。冶金的接合としては、より具体的には、レーザ溶接の他、融接、圧接(抵抗溶接)、ろう接(ロウ付けやハンダ付け)が挙げられる。
【0030】
次に、分割板材1の一方の突起1cに他方の端縁を接触する際の、分割板材1の移動軌跡について、図3を参照しつつ説明する。図3は、分割板材1の端縁の接触方法を示す拡大側面図である。図3では、図2(a)に示される突起1cを用いて説明する。上述したように、複数の治具2を合成位置に移動させることで、分割板材1の端縁同士が接触されるが、その際の端縁同士の移動軌跡も限定されない。また、図3では、接触直前の移動軌跡のみが示されている。
【0031】
図3(a)では、突起1cが形成された分割板材1に対して、分割板材1の端縁を垂直に接触させる。図3(b)では、突起1cが形成された分割板材1に対して、分割板材1の端縁を突起1cが形成された分割板材1の面方向に接触させる。図3(c)では、突起1cが形成された分割板材1に対して、分割板材1の端縁を斜めに接触させる。図3(d)は、図3(a)に準じた軌跡を示しており、分割板材1の端縁は、突起1cの傾斜凸曲面に案内される。この結果、分割板材1の端縁同士がより正確に位置決めされる。このような案内効果は、図2(b)~(d)に示される突起1cの形状でも実現され得る。
【0032】
図3(e)では、突起1cが形成された分割板材1に対して、分割板材1が回転運動することで、その端縁を上述した面方向に接触させる。図3(f)では、分割板材1が回転運動することで、突起1cが形成された分割板材1に対して、分割板材1の端縁を垂直に接触させる。なお、図3(b)や図3(e)の場合は、上述した案内効果は得られないが、突起1cが図2(e)や図2(f)に示されるよう端縁を面で受け止める突起1cの形状が好ましい。また、図3(f)の場合は、上述した案内効果を得るために、図2(a)~(d)のような形状が好ましい。
【0033】
図3では、上側の水平な分割板材1を静止させ、下側の垂直な分割板材1を移動させるものとして説明した。しかし、上述したように、これは相対的な移動を示しており、上側の水平な分割板材1を移動させ、下側の垂直な分割板材1を静止させておいてもよい。あるいは、両方の分割板材1を移動させることで、図3に示されるような移動軌跡が実現されてもよい。
【0034】
次に、形成される周壁10の形態について、図4を参照しつつ説明する。図4は、分割板材1同士の接触形態を示す模式的側面図である。なお、図4は、模式的に示された図であり、分割板材1で形成される周壁10の大きさや縦横比を正確に示すものではない。また、図4でも、図2(a)に示される突起1cを用いて説明する。図4(a)は、図1で示された形態を示している。複数の分割板材1によって、直方体形状のケース(周壁10)が形成される。図4(b)は、図4(a)のケースの角部が丸められた形態を示している。このような角部の曲率半径を変えることで、ケースの形状を変えることもできる。
【0035】
図4(c)に示される形態では、右上の接合部での分割板材1の接合形態がこれまで説明した形態と異なる。当該接合形態では、分割板材1の端縁同士は直角に接合されず、上述した面方向に接合される。このような接合形態とすることで、様々なケース(周壁10)の形状を実現することが可能となる。図4(d)に示される形態では、ケースの角部が丸められると共に、左下の接合形態も図4(c)の右上と同様の接合形態とされている。図4(d)の形態を考慮すると、分割板材1の曲率半径を変えることで、円筒や円錐形のケース(周壁10)を形成することも可能である。
【0036】
次に、第一実施形態の製造方法について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は、第一実施形態に係るケース製造装置を示す模式的斜視図である(製造工程前半)。図6は、上記ケース製造装置を示す模式的斜視図である(製造工程後半)。なお、分割板材1及び治具2については、図1を参照して説明したので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0037】
図5(a)に示されるように、本実施形態では、治具2が、移動機構4にスライド可能に取り付けられている。本実施形態の移動機構4は、フレームレールである(以下、単にレール4と呼ぶ)。複数の治具2は、放射状に延設されたレール4上にスライド可能に設けられている。本実施形態では、治具2は二つであるので、レール4は放射中心を通る直線上に設けられている。また、レール4は、その延設方向に直角で、かつ、放射中心を通る回転軸線(直角線)回りに回転可能に構成されている。
【0038】
まず、図1(b)に示される分割板材1が上述したように形成される。次に、分割板材1を治具2に収納するが、そのために、治具2は図5(a)に示されるようにレール4の両端にそれぞれ位置されている。この状態で、分割板材1が治具2にそれぞれ収納される。治具2に収納された分割板材1は、後述する保持機構3によって、その外面が治具2の内面に押し付けられるようにして治具2内に保持される。この結果、分割板材1に若干の変形があったとしても、治具2の内面に押し付けられることで、分割板材1は接合に適した設計形状を維持するように保持される。
【0039】
その状態から、図5(b)に示されるように、一対の治具2が、互いに相手に向けてレール4に沿ってスライドされる。このスライドによって、治具2は、合成位置に移動され、分割板材1同士は互いに接触される。即ち、図6(a)に示されるように、隣り合う分割板材1の一方の突起1cに他方の端縁が接触され、複数の分割板材1が仮保持される。仮保持された分割板材1の端縁同士は、上述したように突起1cによって正確に位置決めされている。この状態で、二箇所の接合部の一方が、レーザ接合される。例えば、図6(a)の上方(又は、右上方)から接合部にレーザを照射して端縁同士を接合する。
【0040】
次いで、図6(b)に示されるように、レール4を上述した回転軸線(直角線)回りに180度回転する。本実施形態では、周壁10が二等分されて分割板材1が形成されている。また、治具2に仮保持された分割板材1は、レール4の延設方向に垂直な上述した放射中心を通る直角線(回転軸線)の方向から見て当該放射中心に対して点対称に配置されている。このため、180度回転させることで、二箇所の接合部の他方を、一方をレーザ接合した位置に配置させることができる。
【0041】
従って、接合部の一方をレーザ接合したのと同様に、他方をそのままレーザ接合することができる。なお、本実施形態では、周壁10が二等分された。しかし、三つ以上に等分割する場合も、レールを放射状に延設すれば、治具(分割板材)及びレールを放射中心回りに所定角度ずつ回転させて、隣り合う分割板材の端縁同士を順次レーザ溶接する事が可能である。このようにすれば、単一のレーザ加工機のみで全ての接合部を順次接合することができ、装置構成が簡素化できると共に、製造効率が向上する。
【0042】
図7は、上述した第一実施形態の変形例に係る製造装置を示す模式的斜視図である。本変形例では、図7(a)に示されるように、治具2が、それぞれ幅方向にスライド可能に二分割されている。それ以外の構成は上述した第一実施形態と同様であるので、それらの詳しい説明は省略する。本変形例の各治具2は、幅方向に第一分割治具2a及び第二分割治具2bに分割されている。第一分割治具2a及び第二分割治具2bは、上述した直角線(回転軸線)に平行にスライド可能に構成されている。第一分割治具2a及び第二分割治具2bのスライド機構については、公知の機構を利用できるので、その詳しい説明は省略する。
【0043】
本変形例では、治具2に分割板材1を収納する際には、第一分割治具2a及び第二分割治具2bは分割板材1の幅よりも若干広く離間されている。そして、治具2に分割板材1を収納中、又は、収納後に、第一分割治具2a及び第二分割治具2bは、図7(b)に示されるように、互いに相手に向けてスライドされる。この結果、分割板材1は、治具2に対して幅方向にも正確に位置決めされる。その後の分割板材1の接合方法については、上述した第一実施形態の接合方法と同様である。本変形例によれば、分割板材1同士をより正確に接合することができる。
【0044】
次に、図8を参照して、保持機構3について説明する。図8は、第一実施形態(及びその変形例)に係る製造装置における保持機構3の動作を示す一部断面側面図である。図8では、治具2のみは、挿通孔20の位置での断面として示されている。図8(a)に示されるように、保持機構3は、負圧を利用して分割板材1を吸着する複数の吸着部30を備えている。各吸着部30は、治具2の挿通孔20に挿通されており、その先端の吸着カップは治具2の内部に位置している。その先端に吸着カップが形成された蛇腹部はたわむことができる。このため、上述した変形例における第一分割治具2a及び第二分割治具2bのスライド時には、蛇腹部がたわんで吸着カップによる分割板材1の吸着が外れることはない。
【0045】
図8(b)に示されるように、分割板材1は、保持機構3の吸着部30によって保持されることで、その外面が治具2の内面に押し付けられる(引き付けられる)。本実施形態の分割板材1は、折り曲げられた板材であるが、折り曲げ角度(90度)が設計値に対してわずかに大きかったり小さかったりしても、治具2の内面に押し付けられることで、仮保持に適した設計形状に維持される。図8(b)に示される状態から治具2が移動され、図8(c)に示されるように分割板材1同士が接触されて、分割板材1は保持機構3に保持されたまま仮保持される。
【0046】
この際に、分割板材1の端縁は、突起1cによって位置決めされる。本実施形態では、このときの端縁の位置決めは、図3(a)又は図3(d)に示される形態となる。ここで、分割板材1の端縁が、わずかに内方に変形していたとしても、図3(d)に示されるように突起1cによる案内効果があるので、分割板材1同士は正確に位置決めされる。分割板材1同士が接合された後に周壁10を治具2から取り外すときには、保持機構3による負圧を利用した吸着が解放される。
【0047】
次に、第二実施形態の製造方法について、図9を参照しつつ説明する。図9は、第二実施形態に係るケース製造装置を示す模式的斜視図である。なお、分割板材1は、第一実施形態のものと同じであるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、治具2Xは水平方向に移動される。本実施形態の移動機構4Xは、ロータリテーブル40と、ロータリテーブル40の上面に設けられた一対のレール41とを備えている。治具2Xは、レール41上にスライド可能に設けられている。本実施形態でも、治具2Xは、合成位置に移動され、分割板材1同士が互いに接触される。
【0049】
治具2Xは、90度に屈曲された形状を有しており、その内面に分割板材1を収納する凹部が形成されている。凹部の下縁には、分割板材1の下縁が載せられる直角段差22が形成されている。一方、凹部の上縁には、分割板材1の凹部への収納を案内する傾斜段差23が形成されている。また、本実施形態の保持機構3Xは、治具2Xの内面に埋め込まれた磁石である(以下、単に磁石3Xと呼ぶ)。磁石3Xの表面は、治具2Xの内面と面一にされている。
【0050】
分割板材1の治具2Xへの収納時には、治具2Xは各レール41の外端にそれぞれ位置されている。この状態で、分割板材1の下縁を直角段差22上に載せて、金属製の分割板材1を磁石3Xに吸着させる。もっとも、金属製の分割板材1が磁性を持たない場合は、磁力の代わりに弾性体を用いて吸着力を与えてもよい。磁石3Xの吸着力によって、分割板材1の上縁が傾斜段差23によって案内され、分割板材1の外面が治具2Xの内面に押し付け(引き付け)られて、治具2Xの凹部内に保持される。この結果、分割板材1に若干の変形があったとしても、治具2の内面に押し付けられることで、分割板材1は接合に適した設計形状を維持するように保持される。
【0051】
その状態から、一対の治具2Xが、互いに相手に向けてレール41に沿ってスライドされる。このスライドによって、治具2Xは、合成位置に移動され、分割板材1同士は互いに接触される。即ち、隣り合う分割板材1の一方の突起1cに他方の端縁が接触され、複数の分割板材1が仮保持される。仮保持された分割板材1の端縁同士は、突起1cによって正確に位置決めされる。この状態で、二箇所の接合部の一方が、レーザ接合される。例えば、ロータリテーブル40の側方から接合部にレーザを照射して端縁同士を接合する。
【0052】
次いで、ロータリテーブル40を、レール41の延設方向に直角な回転軸線(直角線)回りに180度回転する。本実施形態でも、周壁10が二等分されて分割板材1が形成されている。また、治具2Xに仮保持された分割板材1は、直角線(回転軸線)の方向から見て放射中心に対して点対称に配置されている。このため、本実施形態でも、180度回転させることで、二箇所の接合部の他方を、一方をレーザ接合した位置に配置させることができる。
【0053】
従って、接合部の一方をレーザ接合したのと同様に、他方をそのままレーザ接合することができる。第一実施形態でも説明したが、周壁10が三つ以上に等分割される場合でも、レールを放射状に延設すれば、治具(分割板材)及びレールを放射中心回りに所定角度ずつ回転させて、隣り合う分割板材の端縁同士を順次レーザ溶接する事が可能である。このようにすれば、単一のレーザ加工機のみで全ての接合部を順次接合することができ、設備構成が簡素化できると共に、製造効率が向上する。
【0054】
図10は、上述した第二実施形態の変形例に係る製造装置を示す模式的部分斜視図である。本変形例では、第一実施形態の変形例(図7参照)のように、治具2Xが、それぞれ幅方向にスライド可能に二分割されている。それ以外の構成は上述した第二実施形態と同様であるので、それらの詳しい説明は省略する。また、図10には、移動機構4は示されていない。本変形例の各治具2Xは、幅方向(図10中では垂直方向)に第一分割治具2Xa及び第二分割治具2Xbに分割されている。第一分割治具2Xa及び第二分割治具2Xbは、上述した直角線(回転軸線)に平行にスライド可能に構成されている。第一分割治具2Xa及び第二分割治具2Xbのスライド機構については、公知の機構を利用できるので、その詳しい説明は省略する。
【0055】
また、各分割治具2Xa,2Xbは、三角形の側壁(上壁又は下壁)を有している。これらの側壁の内面によって、第二実施形態における直角段差22が形成されている。即ち、本変形例では、第二実施形態における傾斜段差23は形成されない。
【0056】
本変形例では、治具2Xに分割板材1を収納する際には、第一分割治具2Xa及び第二分割治具2Xbは分割板材1の幅よりも若干広く離間されている。そして、下方の分割治具2Xa又は2xb上に分割板材1を載せると、分割板材1は磁石3Xに吸着される。その後、第一分割治具2Xa及び第二分割治具2Xbは、互いに相手に向けて相対的にスライドされる。本変形例では、具体的には、下方の分割治具2Xa又は2xbは静止され、上方の分割治具2Xb又は2xaのみが下方に移動される。この結果、分割板材1は、上下から直角段差22によって位置決めされ、治具2Xに対して幅方向にも正確に位置決めされる。
【0057】
その後の分割板材1の接合方法については、上述した第二実施形態の接合方法と同様である。従って、本変形例によっても、分割板材1同士をより正確に接合することができる。なお、本実施形態では磁石3Xによって分割板材1を保持するので、分割板材1は、磁石3Xによって保持された状態でも第一分割治具2Xa及び第二分割治具2Xbに対してスライド可能である。このため、第一分割治具2Xa及び第二分割治具2Xbのスライド時に分割板材1の吸着が外れることはない。
【0058】
上記実施形態(変形例を含む)によれば、[1]ケースの周壁10を周方向に分割することで構成される複数の分割板材1を形成し、[2]隣り合う分割板材1の一方の端縁近傍の表面上に少なくとも一つの突起1cを形成し、[3]複数の分割板材1を、それぞれ、周壁10の合成位置に分割板材1を案内する治具2(2X)に収納し、[4]治具2(2X)を合成位置に移動させて隣り合う分割板材1の一方の突起1cに他方の端縁を接触させて、複数の分割板材1を仮保持し、[5]仮保持された状態の複数の分割板材1の隣り合う分割板材1の端縁同士を接合して周壁10を形成する。
【0059】
従って、隣り合う分割板材1同士を正確に位置決めした状態で仮保持でき、仮保持した状態で分割板材1をしっかりと接合できる。即ち、ケース製造時に部材同士を正確に位置合わせして、部材同士をしっかりと接合することができる。また、ケースの周壁10を複数の分割板材1で形成するため、長いストロークを有する金型を用いる必要がないので、大きなプレス装置や樹脂成形機が必要なく、ケースの製造が容易になる。
【0060】
また、上記実施形態(変形例を含む)では、複数の分割板材1が、周壁10を等分割して形成されており、それぞれが突起1cを含めて同一形状を有している。このため、複数の分割板材1を同じ装置及び工程で形成できるので、製造コストを削減できると共に、製造効率を向上させることができる。また、分割板材1を収納する治具2も全て同じ形状に形成できるので、治具2の製造コストも削減できる、さらに、治具2の移動機構も同じように構成できるので、製造装置の構成を簡素化できる。
【0061】
さらに、上記実施形態(変形例を含む)では、複数の分割板材1が金属製である。金属製のケースを製造する場合、周壁10を複数の金属製の分割板材1で形成するため、「深絞り」の必要がない。このため、上述したように長いストロークの金型を必要とすることがなく、大きなプレス圧力も必要としない。この結果、製造装置の構成をより簡素化できる。また、「深絞り」の必要がないので、分割板材1に伸展性のよい金属を用いる必要がなくなるため、製造コストを低減できる。
【0062】
さらに、上記実施形態(変形例を含む)では、隣り合う分割板材1の一方の端縁と他方の前記端縁とを「半引き」で接触した状態で、一方の端縁と他方の端縁とを全長にわたってレーザ接合する。このため、接合強度を確保しつつも、製造効率を低下させることなく、優れた外観品質を有するケースを製造できる。さらに、ケース内部へのレーザ接合時の溶融金属や溶融樹脂の侵入も防止できる。またさらに、優れた気密性や液密性を有するケースを製造することができる。
【0063】
さらに、上記実施形態(変形例を含む)では、治具2(2X)が、上述した合成位置から放射状に延設されたレール4(41)上にスライド可能に設けられている。そして、仮保持された複数の分割板材1と共に治具2(2X)及びレール4(41)を放射中心回りに回転させて、一方の端縁と他方の端縁とを順次レーザ溶接する。従って、単一のレーザ加工機のみで全ての接合部を順次接合することができ、設備構成が簡素化できると共に、製造効率が向上する。
【0064】
ここで、上記実施形態(変形例を含む)では、周壁10が二等分されて分割板材1が形成されている。そして、治具2(2X)に仮保持された分割板材1が、レール4(41)の延設方向に直角な上記放射中心を通る直角線の方向から見て上記放射中心に対して点対称に配置される。周壁10を二等分割することで部品数を最小とし、併せて、治具2(2X)の数も最小にできるので、溶接すべき接合部も少なくできる。また、二つの治具2(2X)を直線的に移動させるため、その移動機構も簡素化できる。さらに、仮保持状態にある分割板材1の回転機構、すなわち、合成位置にある治具2の回転機構も簡素化できる。即ち、設備構成をより一層簡素化できると共に、製造効率がより一層向上する。
【0065】
上記実施形態(変形例を含む)では、治具2(2X)が、分割板材1を治具2(2X)の内面に面接させる保持機構3(3X)を有している。このため、分割板材1に変形が生じていても、分割板材1を設計形状に維持して保持することができる。この結果、より一層、分割板材1同士を正確に位置決めした状態で仮保持できる。
【0066】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、直方体形状のケースを製造されたが、周壁の分割形状を工夫することで、多面体形状や球状のケースを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1(1a,1b) 分割板材
10 周壁
2 治具
3,3X 保持機構
4,41 レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10