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特開2023-57354情報処理装置、判定方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057354
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、判定方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20230414BHJP
   G01S 17/93 20200101ALI20230414BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G08G3/02 A
G01S17/93
G01C21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166841
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】幸田 健志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将大
(72)【発明者】
【氏名】後藤田 明
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 邦雄
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5J084
【Fターム(参考)】
2F129AA14
2F129BB02
2F129BB03
2F129BB20
2F129DD53
5H181AA25
5H181CC03
5H181CC12
5H181CC27
5H181LL01
5J084AA05
5J084AB16
5J084AC03
5J084CA03
5J084CA65
(57)【要約】      (修正有)
【課題】船舶による橋梁下の通過に関する情報を好適に出力することが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置1のコントローラ13は、船舶が通過予定の橋梁の川岸からの距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得する。そして、コントローラ13は、橋梁高と、船舶最高点高とに基づき、橋梁下において船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定する。そして、コントローラ13は、橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得する第1取得手段と、
前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得する第2取得手段と、
前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定する橋梁通過可能範囲決定手段と、
前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する出力制御手段と、
と有する情報処理装置。
【請求項2】
前記橋梁通過可能範囲決定手段は、前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁と前記船舶との予測された間隔である予測間隔を前記川岸距離ごとに算出し、前記予測間隔に基づき、前記橋梁通過可能範囲を決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記橋梁通過可能範囲決定手段は、前記予測間隔と、前記船舶の横幅とに基づき、前記橋梁通過可能範囲を決定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記橋梁通過可能範囲決定手段は、前記予測間隔が閾値以上となる前記川岸距離の範囲を前記横幅に基づき縮小した範囲を、前記橋梁通過可能範囲として決定する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1取得手段は、単位領域であるボクセルごとの前記橋梁の位置を表すボクセルデータに基づき、前記橋梁高を取得する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力制御手段は、計測装置が出力する計測データに基づき、前記川岸から前記船舶までの距離を算出し、当該距離と前記橋梁通過可能範囲とに基づき、前記船舶の移動に関する情報を出力する、請求項1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記出力制御手段は、前記移動に関する情報を、前記船舶の操船制御を行う操船制御システムに供給する、又は、前記船舶に設けられた表示装置に表示させる、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記出力制御手段は、前記船舶の位置周辺の地図を表示する表示装置に、前記橋梁通過可能範囲を前記地図上に表示させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する制御方法であって、
船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、
前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得し、
前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定し、
前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する、
制御方法。
【請求項10】
船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、
前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得し、
前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定し、
前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶の橋梁下の通過可否の判定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザスキャナなどの計測装置を用いて計測した周辺物体の形状データを、予め周辺物体の形状が記憶された地図情報と照合(マッチング)することで、移動体の自己位置を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、空間を所定の規則で分割したボクセル中における検出物が静止物か移動物かを判定し、静止物が存在するボクセルを対象として地図情報と計測データとのマッチングを行う自律移動システムが開示されている。また、特許文献2には、ボクセル毎の静止物体の平均ベクトルと共分散行列とを含むボクセルデータとライダが出力する点群データとの照合により自己位置推定を行うスキャンマッチング手法が開示されている。さらに、特許文献3には、船舶の自動着岸を行う自動着岸装置において、ライダから照射される光が着岸位置の周囲の物体に反射してライダにより受光できるように、船舶の姿勢を変化させる制御を行う手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2013/076829
【特許文献2】国際公開WO2018/221453
【特許文献3】特開2020-59403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運航ルートを決める際、潮位予測情報等から橋梁を安全に通過できるルートを選択するのが一般的である。しかし、船舶が本当に通過できるか否かは、潮位予測よりも水位が高くなる場合等も勘案し、その橋に差し掛かる前に確認する必要がある。また、この場合、橋梁の形状によっては船舶が橋梁下を通過できる範囲が限定されるため、船舶が通過できる範囲を橋梁の通過前に的確に把握する必要がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、船舶による橋梁下の通過に関する情報を好適に出力することが可能な情報処理装置を提供することを主な目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、
船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得する第1取得手段と、
前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得する第2取得手段と、
前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定する橋梁通過可能範囲決定手段と、
前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する出力制御手段と、
と有する情報処理装置である。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、
コンピュータが実行する制御方法であって、
船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、
前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得し、
前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定し、
前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する、
制御方法である。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、
船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、
前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得し、
前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定し、
前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運航支援システムの概略構成図である。
図2】情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3】自己位置推定部が推定すべき自己位置を3次元直交座標で表した図である。
図4】ボクセルデータの概略的なデータ構造の一例を示す。
図5】自己位置推定部の機能ブロックの一例である。
図6】川岸距離によらず予測間隔が一定となる橋梁を通過する船舶を後方から観察した図である。
図7】川岸距離に応じて予測間隔が変化する橋梁を通過する船舶を後方から観察した図である。
図8】船舶の横幅を考慮した橋梁通過可能範囲の決定方法の概要を示す図である。
図9】予測間隔と川岸距離とを夫々軸とする2次元座標系において橋梁の橋梁高を表した図である。
図10】橋梁通過判定部の機能ブロックの一例である。
図11】(A)船舶が右岸及び左岸のうち右岸に近い場合の船舶周辺の上面図である。(B)橋梁を通過前の船舶周辺の上面図である。
図12】(A)船舶が右岸及び左岸のうち左岸に近い場合の船舶周辺の上面図である。(B)橋梁を通過前の船舶周辺の上面図である。
図13】表示装置の表示画面を示す。
図14】情報処理装置が実行するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得する第1取得手段と、前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得する第2取得手段と、前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定する橋梁通過可能範囲決定手段と、前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する出力制御手段と、と有する。この態様によれば、情報処理装置は、船舶が橋梁下を通過可能な橋梁通過可能範囲を的確に決定し、橋梁通過可能範囲に関する情報を出力することができる。
【0011】
上記情報処理装置の一態様では、前記橋梁通過可能範囲決定手段は、前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁と前記船舶との予測された間隔である予測間隔を前記川岸距離ごとに算出し、前記予測間隔に基づき、前記橋梁通過可能範囲を決定する。この態様によれば、情報処理装置は、アーチ形状の橋梁などの川岸距離ごとに高さが異なる橋梁に対する橋梁通過可能範囲を的確に決定することができる。
【0012】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記橋梁通過可能範囲決定手段は、前記予測間隔と、前記船舶の横幅とに基づき、前記橋梁通過可能範囲を決定する。これにより、情報処理装置は、カーブが急峻なアーチ形状の橋梁を通過する場合であっても、安全に船舶が通過可能な橋梁通過可能範囲を的確に決定することができる。好適な例では、前記橋梁通過可能範囲決定手段は、前記予測間隔が閾値以上となる前記川岸距離の範囲を前記横幅に基づき縮小した範囲を、前記橋梁通過可能範囲として決定するとよい。
【0013】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記第1取得手段は、単位領域であるボクセルごとの前記橋梁の位置を表すボクセルデータに基づき、前記橋梁高を取得する。この態様により、情報処理装置は、川岸距離に応じた橋梁高を好適に認識することができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記出力制御手段は、計測装置が出力する計測データに基づき、前記川岸から前記船舶までの距離を算出し、当該距離と前記橋梁通過可能範囲とに基づき、前記船舶の移動に関する情報を出力する。この態様により、情報処理装置は、橋梁通過可能範囲に応じた船舶の移動の要否等を的確に認識し、その認識結果に応じた移動に関する情報を好適に出力することができる。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記出力制御手段は、前記移動に関する情報を、操船制御システムに供給する、又は、前記船舶に設けられた表示装置に表示させる。この態様により、情報処理装置は、船舶の操船制御を行う操船制御システム又は操縦者に操船制御に必要な情報を好適に供給することができる。
【0016】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記出力制御手段は、前記船舶の位置周辺の地図を表示する表示装置に、前記橋梁通過可能範囲を前記地図上に表示させる。この態様により、情報処理装置は、橋梁通過可能範囲を、表示装置を使用する操縦者等に的確に把握させることができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行する制御方法であって、船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得し、前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定し、前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する。コンピュータは、この制御方法を実行することで、船舶が橋梁下を通過可能な橋梁通過可能範囲を的確に決定し、橋梁通過可能範囲に関する情報を出力することができる。
【0018】
本発明のさらに別の好適な実施形態によれば、船舶が通過予定の橋梁の川岸からの川岸距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、前記船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得し、前記橋梁高と、前記船舶最高点高とに基づき、前記橋梁下において前記船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定し、前記橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。コンピュータは、このプログラムを実行することで、船舶が橋梁下を安全に通過できるか否かを的確に判定することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。なお、任意の記号の上に「^」または「-」が付された文字を、本明細書では便宜上、「A^」または「A」(「A」は任意の文字)と表す。
【0020】
(1)運航支援システムの概要
図1(A)~図1(C)は、本実施例に係る運航支援システムの概略構成である。具体的には、図1(A)は、運航支援システムのブロック構成図を示し、図1(B)は、運航支援システムに含まれる船舶及び後述のライダ3の視野範囲(測距可能範囲)90を例示した上面図であり、図1(C)は、船舶及びライダ3の視野範囲90を後ろから示した図である。運航支援システムは、移動体である船舶と共に移動する情報処理装置1と、当該船舶に搭載されたセンサ群2とを有する。
【0021】
情報処理装置1は、センサ群2と電気的に接続し、センサ群2に含まれる各種センサの出力に基づき、情報処理装置1が設けられた船舶の位置(「自己位置」とも呼ぶ。)の推定を行う。そして、情報処理装置1は、自己位置の推定結果に基づき、船舶の自動運転制御等の運航支援を行う。本実施例では、運航支援の一例として、情報処理装置1は、通過予定の橋梁下の船舶の通過判定を行い、判定結果に応じた処理を実行する。なお、運航支援には、自動接岸(着岸)などの接岸支援などが含まれてもよい。情報処理装置1は、船舶に設けられたナビゲーション装置であってもよく、船舶に内蔵された電子制御装置であってもよい。
【0022】
また、情報処理装置1は、ボクセルデータ「VD」を含む地図データベース(DB:DataBase)10を記憶する。ボクセルデータVDは、3次元空間の最小単位となる立方体(正規格子)を示すボクセルごとに静止構造物の位置情報等を記録したデータである。ボクセルデータVDは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含み、後述するように、NDT(Normal Distributions Transform)を用いたスキャンマッチングに用いられる。情報処理装置1は、NDTスキャンマッチングにより、例えば、船舶の平面上の位置、高さ位置、ヨー角、ピッチ角及びロール角の推定を行う。なお、特に言及がない限り、自己位置は、船舶のヨー角などの姿勢角も含まれるものとする。
【0023】
センサ群2は、船舶に設けられた種々の外界センサ及び内界センサを含んでいる。本実施例では、センサ群2は、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)3と、船舶の速度を検出する速度センサ4と、GPS(Global Positioning System)受信機5と、3軸方向における対象移動体船舶の加速度及び角速度を計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)6とを含んでいる。
【0024】
ライダ3は、水平方向の所定の角度範囲(図1(B)参照)および垂直方向の所定の角度範囲(図1(C)参照)に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群データを生成する外界センサである。図1(B)及び図1(C)の例では、ライダ3として、船舶の左側面方向に向けられたライダと、船舶の右側面方向に向けられたライダとが夫々船舶に設けられている。なお、ライダ3の船舶への設置個数は2個に限らず、1個であってもよく、3個以上であってもよい。ライダ3は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。レーザ光を照射する方向(走査位置)ごとに計測されるデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。なお、ライダ3は、上述したスキャン型のライダに限らず、2次元アレイ状のセンサの視野にレーザ光を拡散照射することによって3次元データを生成するフラッシュ型のライダであってもよい。ライダ3は、本発明における「計測装置」の一例である。速度センサ4は、例えば、ドップラーを利用した速度計であってもよく、GNSSを利用した速度計であってもよい。
【0025】
なお、センサ群2は、GPS受信機5に代えて、GPS以外のGNSSの測位結果を生成する受信機を有してもよい。
【0026】
(2)情報処理装置の構成
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1は、主に、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ13と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0027】
インターフェース11は、情報処理装置1と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース11は、ライダ3、速度センサ4、GPS受信機5及びIMU6などのセンサ群2の各センサから出力データを取得し、コントローラ13へ供給する。また、インターフェース11は、例えば、コントローラ13が生成した船舶の制御に関する信号を、船舶の運転を制御する船舶の各構成要素に供給する。例えば、船舶は、エンジンや電気モータなどの駆動源と、駆動源の駆動力に基づき進行方向の推進力を生成するスクリューと、駆動源の駆動力に基づき横方向の推進力を生成するスラスターと、船舶の進行方向を自在に定めるための機構である舵等とを備える。そして、自動着岸などの自動運転時には、インターフェース11は、コントローラ13が生成した制御信号を、これらの各構成要素に供給する。なお、船舶に電子制御装置が設けられている場合には、インターフェース11は、当該電子制御装置に対し、コントローラ13が生成した制御信号を供給する。インターフェース11は、無線通信を行うためのネットワークアダプタなどのワイヤレスインターフェースであってもよく、ケーブル等により外部装置と接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。
【0028】
また、インターフェース11は、表示装置19とのインターフェース動作を行う。表示装置19は、ディスプレイ(ヘッドアップディスプレイ、プロジェクタなどを含む)であり、コントローラ13から供給される表示信号に基づく情報を表示する。また、インターフェース11は、表示装置19の他、入力装置、表示装置、音出力装置等の種々の周辺装置とのインターフェース動作を行ってもよい。
【0029】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ12は、コントローラ13が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、コントローラ13が実行するプログラムは、メモリ12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0030】
また、メモリ12は、ボクセルデータVDを含む地図DB10と、最高点情報IHとを記憶する。
【0031】
図DB10には、ボクセルデータVDの他、例えば、着岸場所(岸、桟橋を含む)に関する情報、船舶が移動可能な水路に関する情報などが含まれている。なお、地図DB10は、インターフェース11を介して情報処理装置1と接続されたハードディスクなどの情報処理装置1の外部の記憶装置に記憶されてもよい。上記の記憶装置は、情報処理装置1と通信を行うサーバ装置であってもよい。また、上記の記憶装置は、複数の装置から構成されてもよい。また、地図DB10は、定期的に更新されてもよい。この場合、例えば、コントローラ13は、インターフェース11を介し、地図情報を管理するサーバ装置から、自己位置が属するエリアに関する部分地図情報を受信し、地図DB10に反映させる。
【0032】
最高点情報IHは、船舶を基準とした座標系である船舶座標系において最も高い位置に存在する船舶の部位(最高点)の高さに関する情報である。例えば、最高点情報IHは、情報処理装置1が実行する自己位置推定における船舶の基準位置(「船舶基準位置」とも呼ぶ。)から最高点までの高さ(高さ方向の距離)を表す。船舶基準位置は、言い換えると、自己位置推定において位置が推定される対象となる船舶の代表位置である。最高点情報IHは、事前の計測結果に基づき生成され、メモリ12に予め記憶されている。
【0033】
また、メモリ12には、地図DB10の他、本実施例において情報処理装置1が実行する処理に必要な情報が記憶される。例えば、メモリ12には、ライダ3が1周期分の走査を行った場合に得られる点群データに対してダウンサンプリングを行う場合のダウンサンプリングのサイズの設定に用いられる情報が記憶される。他の例では、メモリ12には、船舶が通行すべき運航ルートに関する運航ルート情報が記憶されている。さらに別の例では、メモリ12には、船舶の横幅の長さに関する情報が記憶されている。その他、メモリ12には、種々の判定に用いる閾値等に関する情報が記憶されてもよい。
【0034】
コントローラ13は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)などの1又は複数のプロセッサを含み、情報処理装置1の全体を制御する。この場合、コントローラ13は、メモリ12等に記憶されたプログラムを実行することで、自己位置推定及び運航支援等に関する処理を行う。
【0035】
また、コントローラ13は、機能的には、自己位置推定部15と、橋梁通過判定部16と、出力制御部17と、を有する。そして、コントローラ13は、「第1取得手段」、「第2取得手段」、「橋梁通過可能範囲決定手段」、「出力制御手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0036】
自己位置推定部15は、ライダ3の出力に基づく点群データと、当該点群データが属するボクセルに対応するボクセルデータVDとに基づき、NDTに基づくスキャンマッチング(NDTスキャンマッチング)を行うことで、自己位置の推定を行う。ここで、自己位置推定部15による処理対象となる点群データは、ライダ3が生成した点群データであってもよく、当該点群データをダウンサンプリング処理した後の点群データであってもよい。
【0037】
橋梁通過判定部16は、自己位置推定部15による自己位置推定結果と、ボクセルデータVDと、最高点情報IHとに基づき、船舶が通過予定の運航ルート上に存在する橋梁下において船舶が安全に通過可能な範囲(「橋梁通過可能範囲」とも呼ぶ。)を決定する。一般に、中央部が高くて両脇は低いアーチ形状の橋梁が運航経路上にある場合は、川のどの部分を通行できるかを把握する必要がある。以上を勘案し、橋梁通過判定部16は、運航ルート上にある橋梁の各々に対し、橋梁通過可能範囲を判定する。
【0038】
出力制御部17は、橋梁通過判定部16が決定した橋梁通過可能範囲に基づく出力制御を行う。この場合、出力制御部17は、第1の出力制御の例として、次に船舶が通過する橋梁下を通過するために船舶が横移動すべき移動距離を橋梁通過可能範囲に基づき算出し、当該移動距離に関する情報を、操船制御システムに送信する。操船制御システムは、コントローラ13により実現されてもよく、船舶に設けられ、情報処理装置1とデータ通信を行う電子制御装置により実現されてもよい。第2の出力制御の例として、出力制御部17は、表示信号を生成し、表示信号を表示装置19に供給することで、橋梁通過可能範囲及び上述の移動距離に関する情報等を表示装置19に表示させる。
【0039】
(3)NDTスキャンマッチング
次に、自己位置推定部15が実行するNDTスキャンマッチングに基づく位置推定に関する説明を行う。
【0040】
図3は、自己位置推定部15が推定すべき自己位置を3次元直交座標で表した図である。図3に示すように、xyzの3次元直交座標上で定義された自己位置は、座標「(x、y、z)」、船舶のロール角「φ」、ピッチ角「θ」、ヨー角(方位)「ψ」により表される。ここでは、ロール角φは、船舶の進行方向を軸とした回転角、ピッチ角θは、xy平面に対する船舶の進行方向の仰角、ヨー角ψは、船舶の進行方向とx軸とのなす角として定義されている。座標(x、y、z)は、例えば緯度、経度、標高の組合せに相当する絶対位置、あるいは所定地点を原点とした位置を示すワールド座標である。そして、自己位置推定部15は、これらのx、y、z、φ、θ、ψを推定パラメータとする自己位置推定を行う。
【0041】
次に、NDTスキャンマッチングに用いるボクセルデータVDについて説明する。ボクセルデータVDは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含む。
【0042】
図4は、ボクセルデータVDの概略的なデータ構造の一例を示す。ボクセルデータVDは、ボクセル内の点群を正規分布で表現する場合のパラメータの情報を含み、本実施例では、ボクセルごとに、「ボクセルID」と、「ボクセル座標」と、「属性情報」と、「平均ベクトル」と、「共分散行列」とを含む。
【0043】
「ボクセルID」は、各ボクセルの識別情報を示す。「ボクセル座標」は、各ボクセルの中心位置などの基準となる位置の絶対的な3次元座標を示す。なお、各ボクセルは、空間を格子状に分割した立方体であり、予め形状及び大きさが定められているため、ボクセル座標により各ボクセルの空間を特定することが可能である。ボクセル座標は、ボクセルIDとして用いられてもよい。
【0044】
「属性情報」は、対象のボクセルの属性に関する情報を示す。例えば、本実施例では、橋梁に該当するボクセルの「属性情報」には、橋梁部分であることを示す情報が含まれる。なお、橋梁の桁下部(即ち河川上の構造部の底面)に該当するボクセルの「属性情報」には、桁下部であることを示す情報がさらに含まれていてもよい。
【0045】
「平均ベクトル」及び「共分散行列」は、対象のボクセル内での点群を正規分布で表現する場合のパラメータに相当する平均ベクトル及び共分散行列を示す。なお、任意のボクセル「n」内の任意の点「i」の座標を
(i)=[x(i)、y(i)、z(i)]
と定義し、ボクセルn内での点群数を「N」とすると、ボクセルnでの平均ベクトル「μ」及び共分散行列「V」は、それぞれ以下の式(1)及び式(2)により表される。
【0046】
【数1】
【0047】
【数2】
【0048】
次に、ボクセルデータVDを用いたNDTスキャンマッチングの概要について説明する。
【0049】
船舶を想定したNDTによるスキャンマッチングは、3次元空間(ここではxyz座標とする)内の移動量及び船舶の向きを要素とした推定パラメータ
P=[t、t、t、tφ、tθ、tψ
を推定することとなる。ここで、「t」はx方向の移動量、「t」はy方向の移動量、「t」はz方向の移動量、「tφ」はロール角、「tθ」はピッチ角、「tψ」はヨー角を示す。
【0050】
また、ライダ3が出力する点群データの座標を、
(j)=[x(j)、y(j)、z(j)]
とすると、X(j)の平均値「L´」は、以下の式(3)により表される。
【0051】
【数3】
そして、上述の推定パラメータPを用い、平均値L´を公知の座標変換処理に基づき座標変換する。以後では、変換後の座標を「L」とする。
【0052】
そして、自己位置推定部15は、ワールド座標系に変換した点群データに対応付けられるボクセルデータVDを探索する。ここで、ワールド座標系は、地図DB10(ボクセルデータVDを含む)において採用されている絶対的な座標系である。このとき、自己位置推定部15は、水面位置より(高さ方向において)下に位置するボクセルのボクセルデータVDを、探索対象から除外してもよい。これにより、情報処理装置1は、点群データとボクセルとの対応付けを行う際に、不必要な処理を省くことができ、対応付けの誤りに起因した位置推定精度の低下を抑制する。
【0053】
そして、自己位置推定部15は、探索したボクセルデータVDに含まれる平均ベクトルμと共分散行列Vとを用い、ボクセルnのマッチングに関する評価関数値(「個別評価関数値」とも呼ぶ。)「E」を算出する。
【0054】
この場合、自己位置推定部15は、以下の式(4)に基づき、ボクセルnの個別評価関数値Eを算出する。
【0055】
【数4】
【0056】
そして、自己位置推定部15は、以下の式(5)により示される、マッチングの対象となる全てのボクセルを対象とした総合的な評価関数値(「スコア値」とも呼ぶ。)「E(k)」を算出する。スコア値Eは、マッチングの適合度を示す指標となる。
【0057】
【数5】
その後、自己位置推定部15は、ニュートン法などの任意の求根アルゴリズムによりスコア値E(k)が最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、自己位置推定部15は、時刻kにおいてデッドレコニングにより算出した位置(「DR位置」とも呼ぶ。)「XDR(k)」に対し、推定パラメータPを適用することで、NDTスキャンマッチングに基づく自己位置(「NDT位置」とも呼ぶ。)「XNDT(k)」を算出する。そして、自己位置推定部15は、NDT位置XNDT(k)を、現在の処理時刻kでの最終的な自己位置の推定結果(「推定自己位置」とも呼ぶ。)「X^(k)」とみなす。なお、DR位置やNDT位置には、位置だけでなく姿勢も含まれている。ここで、DR位置XDR(k)は、推定自己位置X^(k)の算出前の暫定的な自己位置に相当し、予測自己位置「X(k)」とも表記する。この場合、NDT位置XNDT(k)は、以下の式(6)により表される。
【0058】
【数6】
【0059】
図5は、自己位置推定部15の機能ブロック図の一例である。図5に示すように、自己位置推定部15は、デッドレコニング部51と、座標変換部52と、水面反射データ除去部53と、NDT位置算出部54とを有する。なお、図5では、データの授受が行われるブロック同士を矢印により結んでいるが、ブロック間のデータの流れはこれに限定されない。後述する他の機能ブロックの図においても同様である。
【0060】
デッドレコニング部51は、センサ群2が出力する信号に基づき、DR位置の算出を行う。具体的には、デッドレコニング部51は、速度センサ4及びIMU6等の出力に基づく船舶の移動速度と角速度を用い、前回時刻からの移動距離と方位変化を求める。そして、デッドレコニング部51は、現在の処理時刻kに対する直前の処理時刻である時刻k-1の推定自己位置X^(k-1)に対し、前回時刻からの移動距離と方位変化を加えた時刻kでのDR位置XDR(k)を算出する。このDR位置XDR(k)は、デッドレコニングに基づき時刻kにおいて求められた自己位置であり、予測自己位置X(k)に相当する。なお、自己位置推定開始直後であって、時刻k-1の推定自己位置X^(k-1)が存在しない場合等には、デッドレコニング部51は、例えば、GPS受信機5が出力する信号に基づき、DR位置XDR(k)を定める。
【0061】
座標変換部52は、ライダ3の出力に基づく点群データを、地図DB10と同一の座標系であるワールド座標系に変換する。この場合、座標変換部52は、例えば、時刻kでデッドレコニング部51が出力する予測自己位置に基づき、時刻kでの点群データの座標変換を行う。なお、移動体(本実施例では船舶)に設置されたライダを基準とした座標系の点群データを移動体の座標系に変換する処理、及び移動体の座標系からワールド座標系に変換する処理等については、例えば、国際公開WO2019/188745などに開示されている。
【0062】
水面反射データ除去部53は、水面で反射した光をライダ3が受光することで誤って生成したデータ(「水面反射データ」とも呼ぶ。)を、座標変換部52から供給される点群データから除去する。この場合、水面反射データ除去部53は、水面位置よりも下方(同一高さを含む、以下同じ。)の位置(即ちz座標値が同一又は低い位置)を表すデータを、水面反射データとして点群データから除去する。なお、水面反射データ除去部53は、例えば、船舶が岸から所定距離以上離れた位置に存在するときにライダ3が出力する点群データの座標変換処理後のz座標値に基づき、水面位置を推定するとよい。そして、水面反射データ除去部53は、座標変換部52から供給される点群データから水面位置よりも下方のデータを除去した点群データを、NDT位置算出部54に供給する。
【0063】
NDT位置算出部54は、水面反射データ除去部53から供給される点群データに基づいてNDT位置を算出する。この場合、NDT位置算出部54は、水面反射データ除去部53から供給されるワールド座標系の点群データと、同じワールド座標系で表されたボクセルデータVDとを照合することで、点群データとボクセルとの対応付けを行う。そして、NDT位置算出部54は、点群データと対応付けがなされた各ボクセルを対象として、式(4)に基づく個別評価関数値を算出し、式(5)に基づくスコア値E(k)が最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、NDT位置算出部54は、式(6)に基づき、デッドレコニング部51が出力するDR位置XDR(k)に対し、時刻kで求めた推定パラメータPを適用することで定まる時刻kでのNDT位置XNDT(k)を求める。NDT位置算出部54は、NDT位置XNDT(k)を、時刻kでの推定自己位置X^(k)として出力する。
【0064】
以後において、橋梁の高さを「橋梁高」と呼び、船舶の最高点の高さを「船舶最高点高」とも呼ぶ。なお、橋梁高は、河川上での橋梁の底面の高さ(即ち桁下部分の高さ)を表すものとする。また、船舶最高点高及び橋梁高の算出において採用される「高さ」は、地図DB10で採用されているワールド座標系での高さ(例えば標高)を表し、例えば、ワールド座標系におけるz座標値を指すものとする。また、船舶が通過すべき橋梁の橋脚部が存在する川岸(船舶の右側の川岸又は左側の川岸のいずれか)からの川幅方向における距離を、「川岸距離」とも呼ぶ。
【0065】
(4)橋梁通過可能範囲の決定
次に、橋梁通過判定部16が実行する橋梁通過可能範囲の決定方法について説明する。概略的には、橋梁通過判定部16は、ボクセルデータVDに基づき、川岸距離に応じた橋梁高を算出し、当該橋梁高と船舶最高点高とに基づき、橋梁下での船舶と橋梁との高さ方向での予測される間隔(「予測間隔」とも呼ぶ。)を、川岸距離ごとに算出する。そして、橋梁通過判定部16は、算出した予測間隔に基づき、橋梁通過可能範囲を決定する。
【0066】
(4-1)川岸距離によらず予測間隔が一定となる場合
ここでは、まず、川岸距離によらず予測間隔が一定となる場合について説明する。
【0067】
図6は、川岸距離によらず予測間隔が一定となる橋梁30を通過する船舶を後方から観察した図である。図6の例では、船舶には2台のライダ3が設けられており、ライダ3と同一高となる位置が船舶基準位置に定められている。また、船舶には、船舶の最高点となる突起部33が存在している。また、橋梁30は、河川の上方に位置する構造部の底面を構成する桁下部32を有し、船舶が通過可能な桁下空間31を形成している。また、破線の矩形枠35は、ボクセルデータVDが存在する各ボクセルの位置を示す。また、線「L1」は、橋梁高及び船舶最高点高などの高さを測る基準位置(即ちワールド座標系のz座標値が0の地点)と同一高となる位置を示し、線「L2」は、船舶基準位置と同一高となる位置を示す。また、線「L3」は、船舶の最高点と同一高となる位置を示し、線「L4」は、河川上での橋梁30の底面を形成する桁下部32と同一高となる位置を示している。
【0068】
この場合、橋梁通過判定部16は、以下に説明するように、矢印A1~A5に相当する高さ又は幅を、矢印A1~A5の順に算出することで、橋梁通過可否判定に用いる予測間隔を算出する。
【0069】
まず、橋梁通過判定部16は、地図DB10から通行予定の橋梁に該当するボクセル(矩形枠35参照)のボクセルデータVDを抽出し、抽出したボクセルデータVDに基づき橋梁高(矢印A1参照)を算出する。この場合、橋梁通過判定部16は、例えば、ボクセルデータVDに含まれる属性情報等を参照し、船舶が通る河川上に存在する橋梁(又は桁下部)に該当するボクセルのボクセルデータVDを抽出する。そして、橋梁通過判定部16は、例えば、抽出した各ボクセルデータVDに含まれる平均ベクトルのz座標値に基づいて橋梁高を算出する。ここでは、桁下部32が水平な面を形成しており、橋梁通過判定部16は、川岸距離によらず一定の高さとなる橋梁高を算出する。
【0070】
次に、橋梁通過判定部16は、自己位置推定部15が実行する自己位置推定の推定結果を取得し、自己位置推定結果が示すz座標を、船舶基準位置の高さ(矢印A2に相当する高さであり、以後では「船舶基準高」とも呼ぶ。)として特定する。図6では、一例として、船舶基準位置は、ライダ3の位置と同一の高さに設定されている。
【0071】
次に、橋梁通過判定部16は、メモリ12から最高点情報IHを参照することで、船舶基準位置から最高点までの高さ方向の幅(矢印A3参照)を特定する。そして、橋梁通過判定部16は、船舶基準高(矢印A2参照)に船舶基準位置から最高点までの高さ方向の幅(矢印A3参照)を加えた高さに相当する船舶最高点高(矢印A4参照)を算出する。
【0072】
そして、橋梁通過判定部16は、橋梁高から船舶最高点高を減算することで得られる幅を、予測間隔(矢印A5参照)として算出する。
【0073】
その後、橋梁通過判定部16は、算出した予測間隔が閾値(「予測間隔閾値Th」とも呼ぶ。)以上となる川岸距離の範囲を、橋梁30の橋梁通過可能範囲として決定する。図6の例では、橋梁通過判定部16は、橋梁30が跨る川幅全体が橋梁通過可能範囲であるとみなし、橋梁通過可能範囲に関する情報を出力制御部17に供給する。なお、橋梁通過判定部16は、後述する「(4-2)川岸距離に応じて予測間隔が変化する場合」のセクションにて説明するように、船幅を考慮して橋梁通過可能範囲を決定してもよい。この場合、橋梁通過可能範囲は、船幅の1/2ずつ両端が川幅より短い範囲に設定される。
【0074】
なお、予測間隔が予測間隔閾値Th未満となり、橋梁30に対する橋梁通過可能範囲が存在しない場合、出力制御部17は、橋梁30を船舶が通過できないと判定する。この場合、出力制御部17は、例えば、川幅が広く他船の居ない状況において引き返すことを促す情報、又は、ルートを変更することを促す情報などを表示装置19に表示させる。
【0075】
次に、予測間隔閾値Thの決定方法について補足説明する。ここでは一例として、自己位置推定部15による自己位置推定結果に基づき予測間隔閾値Thを決定する方法について説明する。なお、予測間隔閾値Thは、以下に説明する方法に基づき決定される代わりに、メモリ12等に予め記憶された固定値に定められてもよい。
【0076】
橋梁通過判定部16は、自己位置推定部15が直前の所定期間内において算出した複数の自己位置推定結果が示す船舶基準高(z座標値)の標準偏差「σ」を算出する。例えば、100[ms]周期で自己位置推定が算出される場合は、所定期間を5[s]に設定すると、50回分の船舶基準高算出値の標準偏差σとなる。ここで、標準偏差σは、図6における矢印A7が示す幅(即ち、線L2を中心とする矢印A6の半分の幅)に相当する。そして、橋梁通過判定部16は、上述の所定期間を変えながら所定時間間隔により算出した複数の標準偏差σの最大値「σ(max)」に対して所定の係数「k」を乗じた値を、予測間隔閾値Thとして算出する。即ち、橋梁通過判定部16は、以下の式(7)に基づき予測間隔閾値Thを算出する。
Th=k・σ(max) (7)
【0077】
この場合、係数kは、例えば、十分な信頼区間となる固定値(例えばk=5)に設定される。
【0078】
ここで、自己位置推定結果に基づき予測間隔閾値Thを決定することの効果について補足説明する。自己位置推定結果として得られる船舶高さのばらつきは、ライダ3が出力する点群データの誤差や船舶の揺れによる影響もあるが、波高が大きいことも要因となる。波高が大きいときは船舶のz方向の上下動も大きくなる。以上を勘案し、橋梁通過判定部16は、式(7)に基づき、標準偏差σが大きいほど予測間隔閾値Thを大きくすることで、予測間隔が安全上十分な間隔であるか否かを的確に判定することが可能となる。
【0079】
(4-2)川岸距離に応じて予測間隔が変化する場合
次に、アーチのカーブが急峻な橋梁など、川岸距離に応じて予測間隔が変化する橋梁を通過する場合の予測間隔の算出方法及び橋梁通過可能範囲の決定方法について説明する。
【0080】
図7は、川岸距離に応じて予測間隔が変化する橋梁30Aを通過する船舶を後方から観察した図である。橋梁30Aは、アーチ状に形成された桁下部32Aを有し、船舶が通過可能な桁下空間31Aを形成している。また、破線の矩形枠35Aは、ボクセルデータVDが存在する各ボクセルの位置を示す。また、線L5は、船舶の最高点と同一高となる位置を示している。
【0081】
この場合、橋梁通過判定部16は、地図DB10から通行予定の橋梁に該当するボクセル(矩形枠35A参照)のボクセルデータVDを抽出し、抽出したボクセルデータVDに含まれる平均ベクトルのz座標値に基づき、川岸距離に応じた橋梁高(川岸距離に対する橋梁高)を算出する。そして、橋梁通過判定部16は、「(4-1)川岸距離によらず予測間隔が一定となる場合」のセクションにおいて説明した方法により船舶最高点高を算出し、船舶最高点高と川岸距離に応じた橋梁高とに基づき、川岸距離ごとの予測間隔を算出する。そして、橋梁通過判定部16は、予測間隔が予測間隔閾値Th以上となる川岸距離の範囲を、橋梁通過可能範囲であると判定する。
【0082】
なお、桁下部32Aのアーチのカーブが急峻な場合、予測間隔が予測間隔閾値Th以上となる範囲であっても、船舶の舷側部分が橋梁30Aに接近してしまう場合がある。以上を勘案し、好適には、橋梁通過判定部16は、船舶の横幅を考慮して橋梁通過可能範囲を決定するとよい。具体的には、橋梁通過判定部16は、予測間隔が予測間隔閾値Th以上となる川岸距離の範囲を船舶の横幅に基づき縮小した範囲を、橋梁通過可能範囲として決定する。
【0083】
図8は、船舶の横幅を考慮した橋梁通過可能範囲の決定方法の概要を示す図である。ここで、図中の「Wr」は、船舶の横幅を考慮せずに橋梁通過可能範囲を決定した場合の右岸から橋梁通過可能範囲の右端位置までの距離を示し、「Wr」は、船舶の横幅を考慮して橋梁通過可能範囲を決定した場合の右岸から橋梁通過可能範囲の右端位置までの距離を示す。「Ws」は船舶の横幅を表している。また、船舶の横幅を考慮せずに決定した橋梁通過可能範囲の右端位置に存在する船舶を破線により示し、船舶の横幅を考慮して決定した橋梁通過可能範囲の右端位置に存在する船舶を実線により示している。なお、以後において、橋梁通過可能範囲は、橋梁下を船舶が安全に通過可能な船舶の中心位置の川幅方向における範囲を示すものとする。
【0084】
ここで、破線により示される船舶の位置では、予測間隔が予測間隔閾値Th以上となるものの、桁下部32Aのアーチのカーブが急峻であることに起因して、船舶の舷側部分が桁下部32Aに接触している。このように、船舶の横幅を考慮せずに橋梁通過可能範囲を決定した場合、船舶の舷側部分が接近してしまう場合がある。
【0085】
以上を勘案し、橋梁通過判定部16は、予測間隔が予測間隔閾値Th以上となる範囲の両側を船舶の横幅Wsの1/2の長さだけ縮小した橋梁通過可能範囲を決定する。言い換えると、橋梁通過判定部16は、予測間隔が予測間隔閾値Th以上となる範囲の両端を、川幅方向にWs/2だけ内側にシフトさせた範囲を、橋梁通過可能範囲として定める。その結果、船舶の横幅を考慮して決定した橋梁通過可能範囲の右岸から右端位置までの距離Wrは、船舶の横幅を考慮せずに決定した橋梁通過可能範囲の右岸から右端位置までの距離WrよりもWs/2だけ長くなる。
【0086】
この場合、橋梁通過判定部16は、仮に船舶の右舷(即ち最右側位置)又は左舷(即ち最左側位置)に船舶最高点が存在する場合であっても、当該船舶最高点での予測間隔が予測間隔閾値Th以上となる。よって、この場合、船舶最高点の場所が船体のどの位置にあったとしても、船舶と橋梁との接触を好適に回避することができ、橋梁と船舶の舷との接触を確実に防止できる。
【0087】
船舶の横幅を考慮した橋梁通過可能範囲の決定方法について、図9を参照して補足説明する。図9は、予測間隔と川岸距離(ここでは右岸からの距離とする)とを夫々軸とする2次元座標系において橋梁30Aの橋梁高を表した図である。なお、船舶は基本的に右側通行のため、ここでは川岸距離として右岸からの距離を採用している。ここで、プロット点「P1」~「P12」は、橋梁30Aに該当するボクセル(図7では矩形枠35A)のボクセルデータVDの平均ベクトル(z座標値を含む)に基づく位置を表し、グラフG1は、プロット点P1~P12を補間することで生成された曲線である。プロット点P1は、右岸上の橋脚部の位置を示し、プロット点P12は、左岸上の橋脚部の位置を示している。また、「Wb」は、右岸から左岸までの距離(即ち川幅)を示す。
【0088】
まず、橋梁通過判定部16は、橋梁30Aに該当するボクセルのボクセルデータVDの位置情報に基づくプロット点P1~P12を線形補間することで、橋梁30Aの下部(即ち桁下部32A)の位置を上述の2次元座標系において連続的に表したグラフG1を生成する。なお、補間方法は、線形補間に限らず、任意の補間手法(例えば、スプライン補間や多項式近似)であってもよい。
【0089】
そして、橋梁通過判定部16は、グラフG1において、予測間隔が予測間隔閾値Th以上となる範囲を抽出する。ここでは、橋梁通過判定部16は、右岸からの距離「Wr」を右端位置とし、右岸からの距離「Wl」を左端とする範囲を抽出する。そして、橋梁通過判定部16は、船幅Wsを用い、右岸からの距離「Wr」となる位置を橋梁通過可能範囲の右端位置とし、右岸からの距離「Wl」となる位置を橋梁通過可能範囲の左端位置とした橋梁通過可能範囲を決定する。この場合、距離Wrと距離Wlは夫々以下により表される。
Wr=Wr+Ws/2
Wl=Wl-Ws/2
【0090】
そして、橋梁通過可能範囲の幅「Wp」は、以下のように表される。
Wp=Wl-Wr
【0091】
また、出力制御部17は、橋梁通過判定部16から通知される橋梁通過可能範囲の幅Wpに基づき、船舶が橋梁を通過可能であるか否か判定してもよい。例えば、出力制御部17は、幅Wpが船幅Wsの2倍以上となる場合(即ち「Wp≧2Ws」が成立する場合)、船舶が橋梁を通過可能であると判定し、幅Wpが船幅Wsの2倍未満となる場合(即ち「Wp<2Ws」が成立する場合)、船舶が橋梁30Aを通過できないと判定する。なお、ここでは一例として幅Wpが線幅Wsの2倍であることを橋梁通過可否の判定基準にしているが、これは安全に通過するためのマージンであり、船舶に応じて設定されてもよい。そして、出力制御部17は、船舶が橋梁を通過可能であると判定した場合、船舶が対象の橋梁を通過することを前提とした出力を行う。この出力の具体例については「(5)出力制御部の処理」のセクションにて説明する。一方、出力制御部17は、船舶が橋梁を通過可能でないと判定した場合、例えば、川幅が広く他船の居ない状況において引き返すことを促す情報、又は、ルートを変更することを促す情報などを表示装置19に表示させる。
【0092】
(4-3)機能ブロック
図10は、橋梁通過判定部16の機能ブロックの一例である。橋梁通過判定部16は、機能的には、橋梁高算出部61と、船舶最高点高算出部62と、予測間隔算出部63と、閾値決定部64と、橋梁通過可能範囲決定部65とを有する。
【0093】
橋梁高算出部61は、地図DB10から通行予定の橋梁に該当するボクセルのボクセルデータVDを抽出し、抽出したボクセルデータVDに基づき、河川距離に応じた橋梁高を算出する。この場合、橋梁高算出部61は、補間処理により、河川距離と橋梁高との関係を連続的に表したデータを生成する。船舶最高点高算出部62は、自己位置推定部15が実行する自己位置推定の推定結果が示す船舶基準高と、最高点情報IHが示す船舶基準位置から最高点までの高さ方向の幅とに基づき、船舶最高点高を算出する。
【0094】
予測間隔算出部63は、橋梁高算出部61が算出した、河川距離に応じた橋梁高と、船舶最高点高算出部62が算出した船舶最高点高とに基づき、河川距離に応じた予測間隔を算出する。閾値決定部64は、予測間隔閾値Thを決定する。
【0095】
橋梁通過可能範囲決定部65は、予測間隔算出部63が算出した、河川距離に応じた予測間隔と、閾値決定部64が決定した予測間隔閾値Thとに基づき、対象の橋梁に対する橋梁通過可能範囲を決定する。そして、橋梁通過可能範囲決定部65は、決定した橋梁通過可能範囲に関する情報を出力制御部17に供給する。
【0096】
(5)出力制御部の処理
次に、出力制御部17の処理の具体例(第1具体例、第2具体例)について説明する。
【0097】
第1具体例では、出力制御部17は、橋梁通過判定部16が決定した橋梁通過可能範囲に基づき、船舶が対象の橋梁を通過前に横移動すべき距離を算出し、算出した距離を操船制御システムに通知する。
【0098】
この場合、まず、出力制御部17は、ライダ3が出力する点群データに基づき、右岸又は左岸のうち船体が近い岸から船体中心までの距離(「川岸・船舶距離」とも呼ぶ。)を算出する。
【0099】
図11(A)は、船舶が右岸及び左岸のうち右岸に近い場合の船舶周辺の上面図である。ここで、「Dr」は、右岸から船舶中心までの川岸・船舶距離を表す。この場合、出力制御部17は、ライダ3が出力する点群データから川岸を被計測点とするデータ(「川岸計測データ」とも呼ぶ。)を抽出し、川岸計測データから距離Drを算出する。なお、この場合、例えば、出力制御部17は、船舶右側に設置されたライダ3が出力する点群データに対して公知のエッジ検出技術等を適用することで右岸のエッジを検出し、当該エッジと船体中心との距離を距離Drとして算出する。この場合、出力制御部17は、高さ方向の次元を削減した2次元座標系において上述のエッジ検出及び距離Drの算出を行ってもよい。
【0100】
次に、出力制御部17は、川岸・船舶距離と次に通過する橋梁の橋梁通過可能範囲とを比較し、船舶が橋梁通過可能範囲内に存在しないと判定した場合に、船舶が横方向(川幅方向)において移動すべき距離「Ty」を算出し、算出した距離を操船制御システムに通知する。この場合、操船制御システムに通知される情報(即ち距離Tyに関する情報)は、「船舶の移動に関する情報」の一例である。
【0101】
図11(B)は、橋梁30Aを通過前の船舶周辺の上面図である。ここでは、図9の例に従い算出した右岸からの距離Wl及び距離Wrが距離Dr及び距離Tyと共に明示されている。
【0102】
この例では、距離Drが距離Wrよりも短いため、船体中心が橋梁通過可能範囲の右端位置よりも右岸側に存在し、船舶は橋梁通過可能範囲内に存在していない。よって、出力制御部17は、船舶が左側に移動すべき距離Ty(=Wr-Dr)を、操船制御システムに通知する。これにより、出力制御部17は、橋梁30Aの通過時に船舶が橋梁通過可能範囲内に存在するように船舶の操船制御を好適に支援することができる。
【0103】
船舶が右岸及び左岸のうち左岸に近い場合の第1具体例について引き続き説明する。
【0104】
図12(A)は、船舶が右岸及び左岸のうち左岸に近い場合の船舶周辺の上面図である。ここで、「Dl」は、船体中心から左岸までの川岸・船舶距離を表す。この場合、出力制御部17は、船舶左側に設置されたライダ3が出力する点群データから抽出した川岸計測データに基づき、距離Dlを算出する。そして、出力制御部17は、川幅Wbから距離Dlを減算することで、右岸までの距離Dr(=Wb-Dl)を算出する。このように、船舶が左岸に近い場合には、出力制御部17は、左岸までの距離Dlを川幅Wbから減算することで距離Drを求めても良い。なお、川幅Wbは、例えば、地図DB10に予め記憶されている。
【0105】
図12(B)は、橋梁30Aを通過前の船舶周辺の上面図である。ここでは、図9の例に従い算出した右岸からの距離Wl及び距離Wrが距離Drと共に明示されている。
【0106】
この例では、距離Drが距離Wlよりも短く、かつ、距離Wrよりも長いため、船体中心が橋梁通過可能範囲内に存在している。一方、距離Drと距離Wlとの差がマージン量「My」に相当する距離しかない。従って、この場合、出力制御部17は、マージン量Myに関する情報を操船制御システムに送信する。このように、好適には、出力制御部17は、橋梁通過可能範囲の右端又は左端に対する船舶の川幅方向におけるマージン量が所定の閾値以下となる場合、閾値以下となるマージン量に関する情報(右岸又は左岸のいずれに船舶が近いかの情報を含む)を操船制御システムに送信する。これにより、出力制御部17は、操船制御システムに対し、船舶が橋梁を安全に通過するために必要な情報を好適に提供することができる。
【0107】
第2具体例では、出力制御部17は、橋梁通過可能範囲を地図上に表示する制御を行う。図13は、第2具体例における表示装置19の表示画面を示す。この例では、出力制御部17は、自己位置推定部15が出力する自己位置推定結果と、地図DB10とに基づき、河川地図と自船位置を表示装置19に表示させている。このとき、出力制御部17は、次に通過予定の橋梁の表示領域上に、橋梁通過可能範囲を表す橋梁通過可能領域95を重ねて表示する。この場合、出力制御部17は、橋梁通過可能領域95を目立つ色に着色することで強調表示する。なお、出力制御部17は、縁取り効果等の種々の方法により橋梁通過可能領域95を強調表示してもよい。これにより、出力制御部17は、船舶の操縦者等に橋梁通過可能範囲を明確に認識させることができる。
【0108】
さらに、出力制御部17は、橋梁通過可能領域95が示す橋梁通過可能範囲に対して船舶中心位置が右岸側に外れていることから、距離Tyに相当する「3m」だけ船舶を左側に移動することを促す表示オブジェクト96を、表示装置19に赤色で表示させている。また、出力制御部17は、距離Tyが大きいほど表示オブジェクト96のフォントと矢印のサイズを大きくし、移動の重要性を表現する。表示オブジェクト96は、「船舶の移動に関する情報」の一例である。このように、出力制御部17は、船舶が橋梁通過可能範囲外に存在する場合に、船舶が橋梁通過可能範囲に入るように、取るべき舵の向きと横移動すべき距離を表示する。また、出力制御部17は、船舶が橋梁通過可能範囲内であっても、距離Myに相当するマージンが所定の閾値より少なかった場合は、例えば青色で小さめの表示オブジェクト96を表示する。これにより、出力制御部17は、橋梁通過に必要な操船情報を船舶の操縦者等に好適に提供することができる。
【0109】
(6)処理フロー
図14は、本実施例において情報処理装置1が実行するフローチャートの一例である。情報処理装置1は、フローチャートの処理を、例えば運航ルートに基づく船舶の運航中において、船舶が通過予定の橋梁が存在する場合に、船舶が次に通過する橋梁を対象として実行する。
【0110】
まず、橋梁通過判定部16は、通行予定の橋梁に該当するボクセルのボクセルデータVDに基づき、川岸距離に応じた橋梁高(即ち川岸距離ごとの橋梁高)を算出する(ステップS11)。次に、橋梁通過判定部16は、自己位置推定部15が実行する自己位置推定の推定結果に基づき、船舶基準高を特定する(ステップS12)。そして、橋梁通過判定部16は、ステップS12で特定した船舶基準高と、最高点情報IHとに基づき、船舶最高点高を算出する(ステップS13)。
【0111】
そして、橋梁通過判定部16は、ステップS11において算出した橋梁高と、ステップS13において算出した船舶最高点高とに基づき、川岸距離ごとの予測間隔を算出する(ステップS14)。そして、橋梁通過判定部16は、ステップS14において算出した予測間隔に基づき、予測間隔閾値Thと船舶の横幅を考慮して、橋梁通過可能範囲を決定する(ステップS15)。また、橋梁通過判定部16は、対象の橋梁への船舶の通過可否の判定を行ってもよい。
【0112】
そして、出力制御部17は、橋梁通過可能範囲に基づく出力を行う(ステップS16)。この場合、出力制御部17は、「(5)出力制御部の処理」のセクションにて説明した第1具体例に基づき、操船制御システムに船舶が移動すべき方向及び距離を示す情報などを送信してもよく、第2具体例に基づき、橋梁通過可能範囲等に関する情報を表示装置19に表示させてもよい。
【0113】
(7)変形例
ボクセルデータVDは、図4に示すように、平均ベクトルと共分散行列とを含むデータ構造に限定されない。例えば、ボクセルデータVDは、平均ベクトルと共分散行列を算出する際に用いられる点群データをそのまま含んでいてもよい。
【0114】
また、ボクセルデータVDを用いた自己位置推定手法は、NDTスキャンマッチングに限られない。例えば、情報処理装置1は、ICP(Iterative Closest Point)に基づき、ボクセルデータVDとライダ3の点群データとの照合(マッチング)により自己位置推定を行ってもよい。
【0115】
また、情報処理装置1は、NDTスキャンマッチングなどの高精度位置推定を行わなくともよい。この場合、情報処理装置1は、GPS受信機5が出力する情報に基づき、船舶の位置を推定してもよい。
【0116】
以上説明したように、本実施例に係る情報処理装置1のコントローラ13は、船舶が通過予定の橋梁の川岸からの距離に応じた高さを示す橋梁高を取得し、船舶の最高点の高さである船舶最高点高を取得する。そして、コントローラ13は、橋梁高と、船舶最高点高とに基づき、橋梁下において船舶が通過可能な範囲を示す橋梁通過可能範囲を決定する。そして、コントローラ13は、橋梁通過可能範囲に関する情報を出力する。これにより、情報処理装置1は、船舶が通過予定の橋梁に対する橋梁通過可能範囲を的確に把握し、船舶の運航に好適に活用することができる。
【0117】
なお、上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータであるコントローラ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0118】
以上、実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0119】
1 情報処理装置
2 センサ群
3 ライダ
4 速度センサ
5 GPS受信機
6 IMU
10 地図DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14