(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057363
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】セグメント
(51)【国際特許分類】
E21D 11/08 20060101AFI20230414BHJP
E21D 11/14 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166860
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】小西 智樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155BB01
2D155CA01
2D155EB05
2D155EB10
2D155GC04
2D155KA00
2D155KB04
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】セグメントの耐荷性能を向上させると共に、製作にかかるコストを削減することを目的とする。
【解決手段】セグメント1は、内周側が開口した箱型に形成された円弧状の鋼枠2と、鋼枠2の内側に打設されたコンクリート3と、を備え、鋼枠2は、外周側に設けられると共に、周方向に延びたスキンプレート4と、スキンプレート4の幅方向両側に設けられた一対の主桁5と、スキンプレート4の周方向両側に設けられた一対の継手板と、幅方向に延び、一対の主桁5同士を接続するリブ7と、一対の継手板に設けられた継手部材と、を備え、継手部材は、コンクリート3に埋設されるアンカー材11を備え、リブ7は、アンカー材11が挿入され、当該挿入されたアンカー材11を拘束する第1孔部31と、アンカー材11が挿入されずにコンクリート3を拘束する第2孔部32と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側が開口した箱型に形成された円弧状の鋼枠と、
前記鋼枠の内側に打設されたコンクリートと、を備え、
前記鋼枠は、
外周側に設けられると共に、周方向に延びたスキンプレートと、
前記スキンプレートの幅方向両側に設けられた一対の主桁と、
前記スキンプレートの周方向両側に設けられた一対の継手板と、
幅方向に延び、前記一対の主桁同士を接続するリブと、
前記一対の継手板に設けられた継手部材と、を備え、
前記継手部材は、前記コンクリートに埋設されるアンカー材を備え、
前記リブは、前記アンカー材が挿入され、当該挿入された前記アンカー材を拘束する第1孔部と、前記アンカー材が挿入されずに前記コンクリートを拘束する第2孔部と、を備える、ことを特徴とするセグメント。
【請求項2】
前記第1孔部と前記第2孔部は、同一の形状を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のセグメント。
【請求項3】
前記第1孔部と前記第2孔部は、丸孔もしくは長孔の形状を有している、ことを特徴とする請求項2に記載のセグメント。
【請求項4】
前記第1孔部は、幅方向に離間して設けられており、
前記第2孔部の少なくとも一つは、幅方向において前記第1孔部の間に設けられている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項5】
前記第2孔部の少なくとも一つは、厚み方向において前記第1孔部と異なる位置に設けられている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項6】
前記第2孔部の少なくとも一つは、厚み方向において前記第1孔部よりも前記鋼枠の開口側に設けられている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項7】
前記第1孔部に挿入された前記アンカー材を、前記リブに固定する固定部を有する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工法としては、シールドマシンによって地盤を掘削しながら、その後方において円弧状のセグメントを周方向及び軸方向に順次据え付けて円筒状のトンネル壁体(筒状壁体)を構築するシールド工法が一般的である。
【0003】
セグメントは、コンクリート製とスチール製とに大きく分けられるが、前者のコンクリート製のセグメントは圧縮に強く、後者のスチール製のセグメントは引っ張りに強いという特性がある。このようなコンクリート製及びスチール製のセグメントの利点を兼ね備えたセグメント(合成セグメント)が、例えば下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に合成セグメントは、内周面を除く5面を覆う鋼枠と、鋼枠の内部に充填されたコンクリートと、を備えている。このセグメントは、圧縮に強いコンクリートと引張に強い鋼材によって成立される合成構造により、高い耐荷性能を有している。しかしながら、近年、セグメントに対して更に高い耐荷性能およびトンネルの薄肉化が要求されている。
【0006】
合成セグメントは、鋼枠とコンクリートとを一体化させることで高い耐荷性能を発揮する。鋼枠とコンクリートの一体化を促進させる方法として、例えば、スタッドジベル等の定着部材を用いて鋼枠にコンクリートを拘束する方法があるが、使用する鋼材量が増えてしまい、経済性において不利であった。
【0007】
また、合成セグメントは、周方向の両側の一対の継手板に、セグメントを連結する継手部材を備える。この継手部材の引き抜き耐力を向上させるために、継手部材にアンカー材を取り付ける場合があるが、この継手部材が引っ張られ、コンクリートの中でアンカー材が動いてしまうと、コンクリートにひび割れを発生させることがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、セグメントの耐荷性能を向上させると共に、製作にかかるコストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るセグメントは、内周側が開口した箱型に形成された円弧状の鋼枠と、前記鋼枠の内側に打設されたコンクリートと、を備え、前記鋼枠は、外周側に設けられると共に、周方向に延びたスキンプレートと、前記スキンプレートの幅方向両側に設けられた一対の主桁と、前記スキンプレートの周方向両側に設けられた一対の継手板と、幅方向に延び、前記一対の主桁同士を接続するリブと、前記一対の継手板に設けられた継手部材と、を備え、前記継手部材は、前記コンクリートに埋設されるアンカー材を備え、前記リブは、前記アンカー材が挿入され、当該挿入された前記アンカー材を拘束する第1孔部と、前記アンカー材が挿入されずに前記コンクリートを拘束する第2孔部と、を備える。
【0010】
上記セグメントにおいて、前記第1孔部と前記第2孔部は、同一の形状を有してもよい。
【0011】
上記セグメントにおいて、前記第1孔部と前記第2孔部は、丸孔もしくは長孔の形状を有してもよい。
【0012】
上記セグメントにおいて、前記第1孔部は、幅方向に離間して設けられており、前記第2孔部の少なくとも一つは、幅方向において前記第1孔部の間に設けられていてもよい。
【0013】
上記セグメントにおいて、前記第2孔部の少なくとも一つは、厚み方向において前記第1孔部と異なる位置に設けられていてもよい。
【0014】
上記セグメントにおいて、前記第2孔部の少なくとも一つは、厚み方向において前記第1孔部よりも前記鋼枠の開口側に設けられていてもよい。
【0015】
上記セグメントにおいて、前記第1孔部に挿入された前記アンカー材を、前記リブに固定する固定部を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セグメントの耐荷性能を向上させると共に、製作にかかるコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセグメントで構築されたトンネルを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るセグメントの周方向の一端部側を厚み方向に破断した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るリブの変形例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るリブの変形例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るリブの変形例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る第1孔部及び第2孔部の変形例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る第1孔部及び第2孔部の変形例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る第1孔部及び第2孔部の変形例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る第1孔部及び第2孔部の変形例を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る固定部の変形例を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る固定部の変形例を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る固定部の変形例を示す図である。
【
図14】アンカー材の挙動と、コンクリートのひび割れの関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るセグメント1で構築されたトンネル100を示す斜視図である。
図1に示すように、セグメント1は、掘削穴内に構築されるトンネル100の一部をなす円弧状をなしており、掘削穴内の周方向及び軸方向に連結されることにより該掘削穴内にトンネル100を構築する筒状壁体101を形成している。
【0020】
筒状壁体101の内周側には、表層覆工体102が構築されている。また、筒状壁体101の外周側には、筒状壁体101と掘削穴との隙間に充填される裏込め材103が配設されている。
【0021】
以下では、セグメント1を用いてトンネル100を構築した場合におけるトンネル100の周方向をセグメント1の周方向、トンネル100の軸方向をセグメント1の幅方向、トンネル100の径方向をセグメント1の厚み方向と称する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係るセグメント1の周方向の一端部側を厚み方向に破断した断面図である。
図3は、
図2に示す矢視III-III図である。
図2及び
図3に示すように、セグメント1は、内周面を除く5面を覆う鋼枠2と、鋼枠2の内部に充填されたコンクリート3と、を備える合成セグメントである。
【0023】
セグメント1は、内周側(
図2及び
図3において紙面下側)が開口した箱型に形成された円弧状の鋼枠2と、鋼枠2の内側に打設されたコンクリート3と、を備えている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、鋼枠2は、外周側に設けられたスキンプレート4と、このスキンプレート4の側部に配設された一対の主桁5と、スキンプレート4の端部に配設された一対の継手板6(なお、
図2ではセグメント1の周方向の一端部側の継手板6のみを図示している)とを有している。
【0025】
また、一対の主桁5同士の間には、複数のリブ7が設けられている。
なお、これらスキンプレート4、一対の主桁5、一対の継手板6、及びリブ7の接続は、溶接によってなされている。
【0026】
スキンプレート4は、トンネル構築時に掘削穴の壁面と接触する部材であって、周方向に沿って湾曲する湾曲板状をなしている。
【0027】
一対の主桁5は、このスキンプレート4の幅方向両端から厚み方向内側(内周側)に向かって延設するように互いに平行をなして配置されており、スキンプレート4と同様に周方向に沿った湾曲した形状をなしている。この一対の主桁5には、セグメント1同士を幅方向に連結する図示しない継手部材が設けられている。
【0028】
一対の継手板6は、スキンプレート4の周方向両端から厚み方向内側(内周側)に向かって延設された矩形板状をなしており、上述した一対の主桁5の間にわたって配置されている。この一対の継手板6には、セグメント1同士を周方向に連結する継手部材10が設けられている。なお、本実施形態の継手部材10は、不図示であるが一枚の継手板6に対して幅方向に離間して一対で設けられている。なお、継手部材10の数、配置は、セグメント1の仕様に応じて適宜変更され得る。例えば、継手部材10は、厚み方向において継手板6に2段で配置されてもよい。
【0029】
図2に示す継手部材10は、継手板6から周方向外側に突出する雄型継手金具である。本実施形態の継手部材10は、継手板6の板面に対し略垂直に設けられている。なお、
図2に示すセグメント1は、A型セグメントであるが、筒状壁体101の円筒部の最後に軸方向に楔状に挿入されるK型セグメントや、K型セグメントの周方向両側に配置されるB型セグメントの場合には、継手部材10と継手板6は垂直にならない場合もある。また、継手部材10は、連結する相手側のセグメント1が雄型継手金具である場合、その雄型継手金具を受け入れる雌型継手金具であってもよい。
【0030】
なお、継手部材10としては、例えば、特許第5097734号公報に示されるような、平鋼板状の雄型継手金具、またはその雄型継手金具を受け入れる雌型継手金具であってもよい。なお、特許第5097734号公報に示されるようなスライド式の継手構造においても、継手部材10と継手板6とが垂直にならならず、傾けて取り付ける場合がある。
【0031】
継手部材10は、コンクリート3に埋設されるアンカー材11を備えている。アンカー材11は、例えば、鉄筋により形成されている。なお、アンカー材11を構成する材料は、鉄筋に限定されるものではなく、例えば、板材や筒材、鋼の撚り線、ボルト等であってもよい。アンカー材11は、継手部材10に固定されている。なお、アンカー材11の固定方法は特に限定されるものではなく、例えば、溶接や治具を介して固定してもよい。本実施形態では、一つの継手部材10に対して、1本のアンカー材11が設けられているが、アンカー材11の本数や配置は限定されるものではない。
【0032】
リブ7は、
図3に示すように、幅方向に延在して両端がそれぞれ一対の主桁5に固定された略板状をなしており、板面を周方向に向けた状態で配設されている。このリブ7は、スキンプレート4との間に隙間が形成されるように一対の主桁5の間に配設されている。
【0033】
図2に示すように、リブ7とスキンプレート4との隙間には、周方向に延びる周方向鉄筋21が配設されている。また、リブ7より内周側にも、周方向に延びる周方向鉄筋21が配設されている。
【0034】
また、リブ7と継手板6との隙間には、幅方向に延びる幅方向鉄筋22が配設されている。幅方向鉄筋22は、リブ7の外周側と内周側に配設されたそれぞれの周方向鉄筋21と交差すると共にそれらを囲うように配設されている。なお、
図2では、一部しか図示していないが、幅方向鉄筋22は、例えば、特許第5732215号公報、特許第59609424号公報のようにセグメント1の周方向の全周に亘り配置されている。なお、幅方向鉄筋22は、U字状に曲げられ、リブ7の外周側と内周側に配設された周方向鉄筋21のいずれか一方と交差し、且つ、その両端がリブ7にも交差するように曲げられた3次元形状であっても構わない。
【0035】
図3に示すように、リブ7には、アンカー材11が挿入され、当該挿入されたアンカー材11を拘束する第1孔部31と、アンカー材11が挿入されずにコンクリート3を拘束する第2孔部32と、を備えている。第1孔部31及び第2孔部32は、リブ7の周方向を向く板面を貫通して形成されている。
【0036】
本実施形態の第1孔部31と第2孔部32は、同一の形状を有する。なお、第1孔部31と第2孔部32は、異なる形状、異なるサイズであっても構わない。本実施形態の第1孔部31と第2孔部32は、丸孔の形状を有する。この丸孔の内径は、少なくともアンカー材11の外径よりも大きく形成されている。なお、丸孔の内径が大きすぎると、アンカー材11の拘束力が緩まるため、アンカー材11の外径を考慮して丸孔の内径を決定するとよい。
【0037】
第1孔部31は、幅方向に離間して一対で設けられている。また、第2孔部32は、幅方向において第1孔部31の間に一つ設けられている。つまり、本実施形態のリブ7には、幅方向に間隔をあけて3つの孔部が設けられ、幅方向両側の2つの孔部(第1孔部31)にアンカー材11が挿入され、幅方向中央の1つの孔部(第2孔部32)には、アンカー材11が挿入されずにコンクリート3が充填されている。なお、孔部の数や配置は、後述する変形例に示すように、適宜変更され得る。また、孔部の数や配置は、セグメント1のサイズによって適宜変更され得るため、後述する変形例に限定されないことは言うまでもない。例えば、第1孔部31及び第2孔部32は、丸孔でも長孔でもよく、多段になってもよく、整列していなくてもよい。
【0038】
なお、リブ7は、
図4~
図6に示すような構成であってもよい。
図4~
図6は、本発明の一実施形態に係るリブ7の変形例を示す図である。
【0039】
図4に示すリブ7は、厚み方向に延びる第1部分7aと、第1部分7aから屈曲し周方向の片側に延びる第2部分7bと、を有するL字状に形成されている。
図5に示すリブ7は、厚み方向に延びる第1部分7aと、第1部分7aの端部に接合され第1部分7aから周方向両側に延びる第3部分7cと、を有するT字状に形成されている。
図6に示すリブ7は、スキンプレート4と溶接により接合された接合部7dを有している。なお、
図4に示すL字状のリブ7や、
図5に示すT字状のリブ7においても、スキンプレート4と溶接により接合された接合部7dを有してもよい。
【0040】
また、第1孔部31及び第2孔部32は、
図7~
図10に示すような構成であってもよい。
図7~
図10は、本発明の一実施形態に係る第1孔部31及び第2孔部32の変形例を示す図である。
【0041】
図7に示す第1孔部31及び第2孔部32は、厚み方向に延びる長孔の形状を有している。
図8に示す第1孔部31及び第2孔部32は、幅方向に延びる長孔の形状を有している。
なお、
図7及び
図8に示す第1孔部31及び第2孔部32は、厚み方向で位置が異なるように千鳥状に配置されていてもよい。
【0042】
図9に示す第1孔部31及び第2孔部32は、リブ7に厚み方向に離間して2段で設けられている。具体的に、リブ7には、外周側の1段目において、幅方向に間隔をあけて3つの孔部が設けられ、幅方向両側の2つの孔部が第1孔部31となり、その幅方向中央の1つの孔部が第2孔部32となっている。さらに、リブ7には、内周側の2段目においても、幅方向において1段目と同じ間隔で3つの孔部が設けられ、それら3つの孔部が第2孔部32となっている。
【0043】
図10に示す第1孔部31及び第2孔部32は、リブ7に厚み方向に離間して2段で千鳥状に設けられている。具体的に、リブ7には、外周側の1段目において、幅方向に間隔をあけて3つの孔部が設けられ、幅方向両側の2つの孔部が第1孔部31となり、その幅方向中央の1つの孔部が第2孔部32となっている。さらに、リブ7には、内周側の2段目において、1段目の第1孔部31と第2孔部32との間及び当該第2孔部32ともう一つの第1孔部31との間に配置されるように2つの孔部が設けられ、それら2つの孔部が第2孔部32となっている。
【0044】
また、セグメント1は、
図11~
図13に示すような、アンカー材11をリブ7に固定する固定部30を備えていてもよい。
図11~
図13は、本発明の一実施形態に係る固定部30の変形例を示す図である。
【0045】
図11に示す固定部30は、アンカー材11の周面に設けられた雄ネジ部12と、第1孔部31に設けられ雄ネジ部12が螺合する雌ネジ部31aと、を有している。
図12に示す固定部30は、アンカー材11の周面に設けられた雄ネジ部12と、第1孔部31を通過した雄ネジ部12に装着されたテーパワッシャー15と、テーパワッシャー15を介してリブ7の継手部材10とは反対側の板面に着座するナット13と、を有している。
図13に示す固定部30は、第1孔部31に挿入されたアンカー材11をリブ7に溶接により接合する接合部14を有している。なお、
図13においてアンカー材11は、リブ7に直接溶接されているが、部材を介してリブ7に溶接されていてもよい。
【0046】
続いて、アンカー材11の挙動と、コンクリート3のひび割れの関係について、
図14を参照して説明する。
図14は、アンカー材11の挙動と、コンクリート3のひび割れの関係を説明する説明図である。
【0047】
図14に示すように、セグメント1とセグメント1との継手部分にクリアランスがある場合、周方向で連結される継手部材10には、角折れした状態で荷重に抵抗することとなる。この状態で継手部材10が引っ張られると、角折れした継手部材10が真っすぐになろうとし、アンカー材11が
図14において点線で示すように挙動する。このように、
図14に示すようにアンカー材11が挙動すると、コンクリート3が径方向内側に隆起しようとし、その結果、コンクリート3にひび割れが発生する場合がある。
【0048】
これに対し、本実施形態のセグメント1は、
図2に示すように、リブ7に第1孔部31を設け、この第1孔部31に継手部材10のアンカー材11を挿入しているため、アンカー材11を拘束することができる。したがって、
図14に示すようなアンカー材11の挙動が制限され、アンカー材11の挙動によるコンクリート3の径方向内側への隆起が抑制されるため、コンクリート3のひび割れが発生しないようにすることができる。
【0049】
さらに、本実施形態のセグメント1は、
図3に示すように、リブ7にアンカー材11が挿入されずにコンクリート3を拘束する第2孔部32を設けている。鋼枠2の構造の一部として一般的に備えられるリブ7に第2孔部32を設けることで、使用する鋼材量を増やさずにコンクリート3との一体化を促進させることができる。また、
図2に示すように、継手部材10から離れたリブ7にも孔部を設けることで、当該リブ7においてもコンクリート3のずれ止め効果が得られる。
【0050】
このように、上述した本実施形態のセグメント1は、内周側が開口した箱型に形成された円弧状の鋼枠2と、鋼枠2の内側に打設されたコンクリート3と、を備え、鋼枠2は、外周側に設けられると共に、周方向に延びたスキンプレート4と、スキンプレート4の幅方向両側に設けられた一対の主桁5と、スキンプレート4の周方向両側に設けられた一対の継手板6と、幅方向に延び、一対の主桁5同士を接続するリブ7と、一対の継手板6に設けられた継手部材10と、を備え、継手部材10は、コンクリート3に埋設されるアンカー材11を備え、リブ7は、アンカー材11が挿入され、当該挿入されたアンカー材11を拘束する第1孔部31と、アンカー材11が挿入されずにコンクリート3を拘束する第2孔部32と、を備える。この構成によれば、セグメント1の耐荷性能を向上させると共に、製作にかかるコストを削減することができる。
【0051】
また、本実施形態において、第1孔部31と第2孔部32は、同一の形状を有する。この構成によれば、第1孔部31及び第2孔部32を同じ工程で製作できるため、経済的に優位になる。
【0052】
また、本実施形態において、第1孔部31と第2孔部32は、丸孔もしくは長孔の形状を有する。第1孔部31と第2孔部32が、丸孔の形状の場合、アンカー材11の拘束力を高めることができる。また、第1孔部31と第2孔部32が、長孔の形状の場合、コンクリート3で充填される部分が増えるため、コンクリート3のずれ止め効果を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態において、第1孔部31は、幅方向に離間して設けられており、第2孔部32の少なくとも一つは、幅方向において第1孔部31の間に設けられている。この構成によれば、幅方向両側でアンカー材11の挙動を抑制しつつ、コンクリート3のずれ止めを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態において、第2孔部32の少なくとも一つは、厚み方向において第1孔部31と異なる位置に設けられている(
図9及び
図10参照)。この構成によれば、コンクリート3を厚み方向において少なくとも2段で拘束できるため、コンクリート3のずれ止め効果を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態において、第2孔部32の少なくとも一つは、厚み方向において第1孔部31よりも鋼枠2の開口側に設けられている(
図9参照)。この構成によれば、仮に、
図14に示すように、アンカー材11が内径側に移動しようとしても、その近傍に配置された第2孔部32においてコンクリート3が拘束されているため、コンクリート3の隆起に起因するひび割れを効果的に抑制できる。
【0056】
また、本実施形態において、第1孔部31に挿入されたアンカー材11を、リブ7に固定する固定部30を有する(
図11~
図13参照)。この構成によれば、アンカー材11の拘束力を高めることができる。
【0057】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、上述した各実施形態及び各変形例の構成の組み合わせや置換は適宜可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…セグメント、2…鋼枠、3…コンクリート、4…スキンプレート、5…主桁、6…継手板、7…リブ、7a…第1部分、7b…第2部分、7c…第3部分、7d…接合部、10…継手部材、11…アンカー材、12…雄ネジ部、13…ナット、14…接合部、21…周方向鉄筋、22…幅方向鉄筋、30…固定部、31…第1孔部、31a…雌ネジ部、32…第2孔部