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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057365
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】便座シートおよび便座シートセット
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/16 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
A47K13/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166862
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】313000748
【氏名又は名称】道端 裕行
(72)【発明者】
【氏名】道端 裕行
(72)【発明者】
【氏名】道端 亮裕
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AE03
2D037AE08
2D037AE15
2D037AE35
(57)【要約】
【課題】便座の上に敷く便座シートにあって、ウオシュレットの洗浄水のよる濡れを抑制可能なものを提供すること。
【解決手段】
便座覆部2の中央開口部の奥側に、便座覆部2の中央開口部側への倒置を抑制した状態で便座覆部2に対して所定の高さを有して立体的に形成される便座当接部4を備えることで、ウオシュレット付の便座に、便座シート19を敷いて使用する際に、洗浄ノズルからの洗浄水による便座シート19の濡れを抑制することが可能となり、濡れた便座シート19が、使用者のお尻に付着し、使用者に不快な思いを与えるのを抑制することができる。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央開口部を有する便座を覆い、その中央を開口状態とした平面状の便座覆部と、前記便座覆部に配され、前記便座の中央開口部の奥側の側面に当接させるための便座当接部とを備え、前記便座覆部および便座当接部は、双方を平面状に重ねて折り畳み可能であるとともに、使用に際して折り畳みを拡げた際に、前記便座当接部は、前記便座の中央開口部側への倒置を抑制しつつ前記便座覆部に対して所定の高さを有して立体的に形成されてなる便座シート。
【請求項2】
前記便座当接部は、前記便座の中央開口部の奥側の側面に当接するための当接部と、前記当接部を前記便座覆部に固定するための固定部とを有し、前記固定部を前記便座覆部に固定した際の前記固定部と当接部との接線である取付け端部の両端間の最長距離を、前記便座当接部を前記便座覆部に固定せず一平面に拡げた際の前記取付け端部の両端間の最長距離より短くしてなる請求項1記載の便座シート。
【請求項3】
前記便座当接部は、帯状の当接部を有し、前記当接部を前記固定部で前記便座覆部に固定した際の前記両側の取付け端部の間の最長距離を、前記帯状の当接部の両側を固定せず、一平面に拡げた際の両端の最長距離より短くしてなる請求項2記載の便座シート。
【請求項4】
前記便座当接部は、一平面に拡げた際に「く」の字状となる形状を有し、その中央部を折り曲げつつ、その両端部を前記便座覆部に固定する際に、前記両側の取付け端部の間の最長距離を、前記当接部を一平面に拡げた際に前記固定部に接する両側の取付け端部の間の最長距離より短くしてなる請求項2記載の便座シート。
【請求項5】
前記便座当接部は、前記便座覆部の中央開口部の端から3cm以内に配置されてなる請求項1~4のいずれか1項に記載の便座シート。
【請求項6】
前記便座覆部および便座当接部は、水溶性の材料で形成されてなる請求項1~5のいずれか1項に記載の便座シート。
【請求項7】
前記便座覆部は、前記便座当接部と前記中央開口部と反対側の外周端との間に、前記便座と粘着するための粘着部を有してなる請求項1~6のいずれか1項に記載の便座シート。
【請求項8】
前記便座覆部は、前記便座当接部の中央開口部と反対側の外周端に二重折部を有してなる請求項1~7のいずれか1項に記載の便座シート。
【請求項9】
前記便座の上に取付け可能な咬み込み部を備え、前記咬み込み部は、請求項1~8のいずれか1項に記載の前記便座シートを取り外し自在に咬み可能としてなる便座シートセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ等で使用され、使用者の肌が、直接、便座に触れるのを抑制するために、便座の上に敷くシートに関するものであり、特に、ウオシュレット付のトイレにて、より効果を発揮するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座の上に敷くシートとして、特許文献1(図14に代表図を示す。)に記載されるように、便座の前方で、シートの位置合わせを行うものがある。しかしながら、当該方式にて、便座シートを便座上に敷いた場合、便座中央の開口部の奥側(使用者がトイレを使用する際に、便座に座った状態における背中側。以下、本明細書において同様。)において、便座シートが、便座よりも、前方に偏って敷かれる場合が生じ得る。
【0003】
以下、具体的に説明する。便座の下の便器の開口部の大きさは、日本国内だけで、少なくとも2種類ある。その便器の開口部は、小さいもので、その奥行き方向の長さが32cm、大きいもので38cm程度であり、それに応じて、使用者が座るために開閉自在に便器の上に置かれる便座の中央開口部の奥行き方向の長さも異なり、短いものと長いものでは、6~7cm程度、相違する。そのため、特許文献1に記載される方法で、便座の前方にて、便座シートの位置を合わせた場合、便座シートの中央開口部の奥側の位置が、便座の中央開口部の奥側の位置より、前方に偏る場合が生じ得る。より詳細に述べると、便座シートの中央開口部は、便座の長さが短い場合(便座が小さい場合)でも、便座の中央開口部の外周より内側をカバーできるようにするために、小さめの便座を想定して便座シートの中央開口部の大きさが設定されている。そのため、便座の大きなもの(便器の前後方向の開口部が長いもの)に対して、特許文献1に記載された方法により、便座の前方で便座シートの位置を合わせた場合、便座の中央開口部の奥側から、便座シートの開口部の奥側までの距離が、(便座が小さい場合でも、中央開口部の外周の内側をカバーできるように、2cm程度の余裕をもたせているため)、8cm程度となり得る。
【0004】
一方、洗浄ノズルによるウオシュレットの機能を有する便座も多い。当該便座では、洗浄ノズルから噴き出した洗浄水が、どこに当たるのかが問題となる。具体的には、便座の機種によって多少の相違があるが、洗浄ノズルの長さは約6~7cm ノズルの取付け角度は、水平面に対して、約43~45度であるため、お尻に洗浄水が当たる位置は、便座の中央開口部の奥側(洗浄ノズルが出てくる位置。以下、本明細書では同様。)から、水平方向で約7~8cm、手前となる。また、使用者の個人差を考慮して、洗浄位置を前後に調整する機能を有する便座もあり、洗浄位置を後ろ側(奥側)に調整した場合は、洗浄位置は、更に、水平方向で約2cm程度、便座の奥側に移動し得る。そのため、洗浄水の当たる位置は、便座の中央開口部の奥側からの水平方向の距離が、短い場合で、5~6cm程度となり得る。
【0005】
また、洗浄水の直径は、お尻に当たる時点では、約1cm程度に拡がり得る。しかも、洗浄水が、お尻に当たった後、周囲(洗浄水の勢いにもよるが、半径3~4cm程度)に跳ね返り、飛び散るため、洗浄水が及ぶ範囲は、さらに広がり、便座の中央開口部の奥側から、その前方2~3cmあたりまで、洗浄水が飛び散る可能性がある。特許文献1に記載された方法で便座シートを位置決めした場合、前述のように、便座の中央開口部の奥側から、便座シートの開口部の奥側までの距離が、長い場合は8cm程度となり得たので、図15の黒塗箇所で示すように、便座シートの後方が、その中央開口部の端面から内側5~6cmの範囲まで、濡れる場合が生じ得る。その結果、使用者のお尻に、濡れた便座シートが付着して、使用者を不快にさせる場合があった。
【0006】
また、引用文献2(図16に代表図を示す。)では、便座シートの内周、および外周に、切込を入れて、便座シートの周囲を、下方に垂れ下がるようにした便座シートが開示されている。しかしながら、単に、切込を入れただけでは、垂れ下がりの形状を維持する事は不安定となる。具体的には、切込を大きくし過ぎると、切込が便座上にも及び、便座の表面が切込部から露出して、使用者の肌に直接触れるおそれがあるため、便座シートの内周側の切込は、せいぜい2~3cm程度であり、その垂れ下がる紙の量は僅かである。特に、使い捨ての便座シートは、一般的に、軽量の水溶紙で作られているので、便座シートの位置合わせのために、当該切込部を便座の中央開口部から便座の奥側に移動した場合、単なる切込が入っているだけでは、切込によって垂れ下がっていた箇所が、便座の上に乗り上げてしまい、もはや垂れ下がることはできないので、位置合わせ用として利用することは困難な場合が多い。
なお、この文献では、便座シートの外周側に垂れ下がったシートの一部を、便座と便器の間に挟む旨が提示されているが、当該挟み込みにより、便座シートを位置合わせする事は可能となり得るものの、便座シートを挟むために、一旦、便座を持ち上げる必要がある。そのため、特に、公共のトイレ等で、便座シートを敷く場合に、便座を触る必要が生ずるので、便座シートを敷くに際して、衛生面での不安が生じ得る。
【0007】
また、特許文献3(図17に代表図を示す。)では、粘着部を用いて、便座シートを便座に仮固定するものが開示されている。しかしながら、当該従来技術では、便座の奥側のウオシュレット用の洗浄ノズルが出てくる位置に、便座シートの一部を大きく垂れ下げている。そのため、この状態で、洗浄ノズルを使用すれば、当該垂れ下げた部分に洗浄ノズルの洗浄水が当たるので、洗浄水が使用者のお尻に到達し難く、また、当該垂れ下がった部分から、徐々に便座シートの奥側が濡れていくので、使用者に不快な思いをさせるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2015-501672号公報
【特許文献2】実開昭61-40996号公報
【特許文献3】実開平7-33200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の便座シートの課題を踏まえ、ウオシュレット付の便座の上に、便座シートを敷く際に、洗浄ノズルの洗浄水による便座シートの濡れを抑制できる便座シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の便座シートは、便座後方の洗浄ノズルとの位置関係を考慮して、便座シートの中央開口部の奥側に、中央開口部側への傾倒を抑制可能としつつ、便座の奥側の壁に当接して位置合わせを可能とする便座当接部を設けたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、本発明の便座シートは、ウオシュレット付の便座の上に敷いて使用する際に、便座の大きさに拘らず、洗浄ノズルの洗浄水によって濡れるのを抑制することが可能となるので、濡れた便座シートが使用者のお尻に付着し、不快な思いをさせるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1の実施例の便座シートの外観図
図2図2は、同便座シートの主要部を示した図
図3図3は、同便座シートを用いてウオシュレットを使用した状態を示した図
図4図4は、同便座シートの粘着部を有する外観図
図5図5は、同便座シートの咬み込み部を有する外観図
図6図6は、同便座シートの咬み込み部の詳細を示した図
図7図7は、同便座シートの折り目を示した図
図8図8は、同便座シートの垂幕部を有する外観図
図9図9は、同便座シートを携帯用に折り畳む状態を示した図
図10図10は、同便座シートを更に折り畳んだ状態を示した図
図11図11は、同便座シートの二重折部を有する外観図
図12図12は、同便座シートの別の便座当接部の例を示した図
図13図13は、同便座シートの別の咬み込み部の例を示した図
図14図14は、従来の便座シートの外観を示した図
図15図15は、同便座シートを使用した際の課題を示した図
図16図16は、別の従来の便座シートの外観を示した図
図17図17は、更に別の従来の便座シートの外観を示した図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関わる便座シートは、中央開口部を有する便座を覆い、その中央を開口状態とした平面状の便座覆部と、前記便座覆部に配され、前記便座の中央開口部の奥側の壁に当接させるための便座当接部とを備え、前記便座覆部および便座当接部は、双方を平面状に重ねて折り畳み可能であるとともに、使用に際して折り畳みを拡げた際に、前記便座当接部は、前記便座の中央開口部側への倒置を抑制しつつ前記便座覆部に対して所定の高さを有して立体的に形成されてなるものである。
【実施例0014】
以下、本発明の第1の実施例について説明する。図1は、本実施例の便座シートの外観を示したものであり、便器20の上に、便座1が、その後方の軸(図示せず)を支軸として開閉自在に載置され、さらに、便座1の上に、便座シート19(以下、本明細書では、便座覆部2と便座当接部4を纏めて、「便座シート」と言う。)を敷いた状態を示している。なお、本実施例の便座シート19は、使い捨て用に、水溶性の不織布を用いることを想定しており、不透明なため、本来は、便座シート19の下部の便座1は見えないが、便座1と便座シート19の位置関係が分かり易いように、見えない箇所も点線で図示している。便座1は、その前方の外周を円弧状に、その後方の外周を直方体状に形成され、その中央はくり抜かれており、便座覆部2も、その中央を、便座1と同様にくり抜かれた状態で、便座1を全面的に覆うように敷かれている。この際、便座覆部2は、便座1の中央空間部に対して、その内側まで、余裕を持って覆うことができるように、その内周(言い換えれば、開口部の外周)2aは、便座1の内周1aより小さく設定されている。便座1の奥側の側面(以下、本明細書では、「奥壁」という。)の下部には、ウオシュレット用の洗浄ノズル(図1では図示せず。)を収納するノズル収納部5が形成されており、当該ノズル収納部5の便座1の中央開口部側の側面は、便座1の奥側の側面(奥壁3)と、ほぼ同一面か、機種によっては、便座の中央開口部と反対側に多少(5~10mmほど)奥まって配置されている。また、便座覆部2の中央開口部の奥側には、便座1の奥壁3に当接させるための便座当接部4が形成されている。
【0015】
図2に、便座当接部4の詳細を示す。図2(b)は、図2(a)の枠内を示す便座当接部4の周辺の拡大図であり、便座覆部2の中央開口部の奥側に、便座1と当接する当接部4aと当該当接部4aを便座覆部2に固定する固定部6(当接部4aと固定部6を纏めて、「便座当接部」という。)を設けた状態を示している。背景技術にて示した切込による垂れ下がりでは、前述のように、当該垂れ下がりが便座に当接した際に、容易に変形してしまうので、便座シートの位置決めに使う事は困難だったが、本実施例では、便座当接部4を便座1の中央開口部側に容易に傾倒しない状態で、便座覆部2の上に、所定の高さを有して、立体的に取付けられる(詳細は、後述する)。また、当該便座シート19は、外出先でも使用できるように、持ち運びされる場合が多いため、携帯用に折り畳む際には、便座当接部4は、便座覆部2上で立体的に留まる事はなく、便座覆部2と平行に重ねて折り畳み可能な構造としている。
【0016】
具体的には、本実施例では、便座当接部4は、帯状に形成され、その両端部を、便座覆部2に固定している。当接部4a(便座当接部4の固定部6を除いた箇所)は、便座覆部2に対して、所定の高さを有して、立体的に便座覆部2の上に形成される。実際の設計の一例を示すと、幅1cm程度の帯状の直方体(材質は、便座覆部2と同じ)を、便座覆部2の中央開口部の奥側(便座覆部2の中央開口部の端面から1cm程度奥側)の位置に、V字状に立設する。ここでは、V字状の上端部で、当接部4aが固定部6と接する箇所(以下、「取付け端部」という。)の両側の間の距離の長さを4cmとし、V字を形成する2辺の長さを各々3cmとしている。また、携帯用に折り畳む際には、図9(b)で示すように(図9の詳細説明は、後述する。)、V字状の中央部に折り目を設け、V字状が、より鋭角なV字(最終的には、V字を形成する2辺の内側が接する状態となる。)となるように折り畳む。折り畳んだ状態から、使用時に再び拡げた際には、両側の固定部6の取付け端部18の間の距離(4cm)より、V字状を形成する2辺の長さの合計(6cm)の方が長いので、折り畳んだ際に折り重なっていた当接部4aが、便座覆部2上で、再びV字状に立体的に起き上がる。
【0017】
便座シート19を、便座1の上に敷く際には、この便座当接部4を便座1の奥壁3に当接するように、位置合わせを行う。その際、便座当接部4は、固定部6で固定され、且つ、所定の幅を有して帯状に形成されるため、便座当接部4が奥壁3に当たった際に、便座1の中央開口部側に倒れにくく、位置合わせを容易としている。図2(c)は、図2(a)のAA断面を示したものであり、便座シート19の位置合わせの際、便座当接部4が、便座覆部2に対して、ほぼ垂直に立体的に取付けられた状態で、便座1の奥壁3に当接する様子を示している。
【0018】
図3は、便座1の奥壁3の下方のノズル収納部5に収納された洗浄ノズル7から、洗浄水が噴出される状態を示したものである。前述のように、機種によって多少の相違はあるが、洗浄ノズル7の長さは約6~7cm、ノズルの取付け角度は、水平面に対して、約43~45度であり、お尻に洗浄水が当たる位置は、水平方向で、便座の奥壁3の手前の約7~8cmの所となる。また、多くの機種では、個人差を考慮して、洗浄位置を前後に調整可能であり、洗浄位置を後ろ側(奥側)に調整した場合は、水平方向で、更に、約2cm程度、便座の後方側に移動し得るので、最終的に、お尻に洗浄水が当たる位置は、便座1の奥壁3から、水平方向で5~6cmの距離となり得る。
【0019】
更に、洗浄水の直径は、洗浄ノズル7の噴出孔から離れるにつれて、徐々に大きくなり、お尻に当たる時点では、直径が約1cm程度に拡がり得る。また、洗浄水が、お尻に当たった後、跳ね返るため、洗浄水が飛び散る範囲は、更に広がり、洗浄水の勢いによっても異なるが(多くの機種で、洗浄水の勢いを調整できる。)、洗浄水がお尻に当たった後、半径3~4
cm程度は、洗浄水が水平方向に飛び散る可能性がある。その結果、最終的に、便座1の奥壁3から、水平方向で2~3cmの距離まで、洗浄水が飛び散り得る。従って、便座当接部4の帯状の幅を1~2cm程度として、便座覆部2の中央開口部の端面から、その奥側3cm以内の位置(望ましくは1cm以内の位置)に取付けることで、便座シート19が、洗浄ノズル7による洗浄水で濡れるのを抑制することができる。
【0020】
また、機種によっては、便座1の後方(奥側)の上面が、前方に向けて傾斜しているものがある。その場合、その傾斜角度によっては、便座シート19の後方部(奥側)が、前方にずり落ちて、洗浄ノズル7の洗浄水で、便座シート19が濡れる場合が生じ得る。そのため、この場合は、図4に示すように、便座シート19の後方部(奥側)で、便座当接部4の2cmほど奥側の便座1側に、粘着部8を設け、便座シート19を便座1に仮固定することも有効となり得る。手順としては、便座当接部4を便座1の奥壁3に当てて位置決めした後、便座シート19の粘着部8が配された個所を、便座シート19の上から軽く押すことで、便座シート19の便座1側に付された粘着剤が、便座シート19を便座1に付着させ、便座シート19が前方にずれ下がるのを抑制することが可能となる。また、ここで使用される粘着剤は、弱い粘着力のものを使用するので、使用後に、軽く上方に引っ張ることで、便座シート19を便座1から剥すことも容易である。
【0021】
但し、使用者によっては、粘着部8の粘着剤の臭いや、粘着剤が便座1の側に転移した後の肌への悪影響を考慮して、粘着剤を用いたくない場合も生じ得る。そのため、図5に示すように、粘着剤を用いずに、便座1の後方に、咬み込み部9を配置して、便座シート19を仮固定する方法も効果的である。
具体的には、図6(a)の便座1の奥側の拡大図で示すように、使用者のお尻が当たり難い範囲を考慮して、便座1の奥側後方の角部付近に、咬み込み部9を取り付けている。本実施例では、咬み込み部9の上面には、便座シート19を咬み込むために、ゴム製のギザギザの切込部10が形成されている。当該切込部10を上から押すと、その三角状に尖がった先端が下方に折れ曲がり、押さえるのを止めると、ゴムの反発で元の形状に戻る構造としている。そのため、咬み込み部9の上に便座シート19を置いて、切込部10の上で便座シート19を軽く押すと、便座シート19は、一旦、切込部10のギザギザの三角状の先端とともに下方に押し込まれ、その後、手を離すことで、ゴムの反発によって、切込部10の三角状の先端が元の位置に戻るが、その際、便座シート19を挟んだ状態で、ギザギザの切込部10の隙間が狭くなる。そのため、図6(c)や図6(d)に示すように、便座シート19が、咬み込み部9のギザギザで形成する狭い隙間に仮固定された状態となる。
また、咬み込み部19を上から軽く押して、切込部10のギザギザの隙間を拡げつつ、便座シート19を上方に引っ張ることで、咬み込み状態を解除することができるので、使用後に、便座シート19を便座1から取り除くことも容易である。
【0022】
また、便座シートを携帯用に折り畳む際の折り畳み線の付け方によっても、便座シート19の便座1の上での移動を抑制し得る。具体的には、図7に示すように、便座シート19を折り畳む際に、便座1の中央開口部の左右に形成された亘り部11上に、上方に凸状となった折れ目12が位置するように折り畳むことで、便座シート19を拡げた際、当該縦の折り目12の両側の面で作る角度θaが、便座シート19の縦方向に山状となった形状を維持するための補強となり得る。その結果、便座1の奥側の傾斜部から亘り部11の平面部分に掛けて、縦方向に突っ張り易くなり、水平状に形成された亘り部11で便座シート19の中央から奥側部分を支え得るので、便座1の奥側からのずれ下がりを抑制し得る。また、折り目12は、便座1の亘り部11に凸状に配されるため、図7(b)に示すように、当該亘り部11での便座シート19の左右方向への横ずれも、同時に抑制し得る。
【0023】
また、図8は、便座シート19の前方部に、垂れ下がり箇所を設けたものである。背景技術にて説明したように、便座の大きさは、機種によって異なり得る。そのため、便座1の中央開口部の大小の相違に拘わらず、便座シート19が便座1の全面を覆うことができるように、便座シート19の中央開口部の大きさは、小さいサイズの便座1に合わせて設定され、その外周部の大きさは、大きいサイズの便座1に合わせて設定される場合が多い。
しかしながら、便座シート19の外周部の前側を大きな便座に合わせて長くすると、小さい便座に使用した際に、便座シート19の厚みや材質等によっては、その前方全体が大きく前に垂れ下がり得るので、粘着部8や咬み込み部9が無い場合などに、便座シート19が、奥側から手前に不用意に移動する場合が生じ得る。一方、便座1の前方部の形状は円弧状となっており、中央部の横幅よりも狭い事から、中央部と同じ横幅で覆う必要はない。そのため、例えば、便座シート19の前方を円弧状の垂幕部13として軽量化することで、便座シート19の前方へのずれ下がりによる移動を抑制し得る。
【0024】
また、図9は、便座シート19を持ち運び易いように、小さく折り畳む際の折り畳み方を示したものである。便座当接部4は、前述のように、便座覆部2を便座1上に敷いて使用する際に、便座1の奥壁3に当接するように、平面状の便座覆部2に対して、所定の高さを有して立体的に配置されるが、持ち運びの際には、便座覆部2と面一状に重ねて折り畳める事が望ましい。その際、前述のように、両端の固定部6の取付け端部18の間の最長距離は、当接部4aの2辺の長さの合計(当接部4aを便座覆部2に固定せず、一平面状に展開した時の取付け端部18間の最長距離)より短いため、図9(b)に示すように、両端の固定部6を、両当接部4aを挟んで向かい合わせるように、中央折り目16に沿って、折り畳むものとする。また、前述のように、便座1の亘り部11上に凸状に折り目12が位置するように、更に、縦方向(便座の奥側と手前側を結ぶ方向)に折り畳むものとする。
【0025】
図10は、図9の折り畳んだ状態から、更に、横方向に小さく折り畳む様子を示したものである。便座シート19を持ち運ぶ際に、図10(c)に示すように、携帯用のティッシュペーパーと同じ程度の大きさとすれば、更に持ち運びが便利となるので、そのサイズを考慮しつつ、横方向の折り目のサイズを設定する。この際、図10(b)に示すように、13(a)~13(d)と順に折り畳むことにより、便座シート19を使用する際に、その上端部14を持って下に振ることで、折りたたんだ状態から、容易に縦方向に拡げることができる。
【0026】
また、本実施例では、使用後に便器内に流せるように、便座シート19には、水溶性(水解性)の不織布等を用いているが、便器内に流した際の溶け易さを考慮して、かなり薄い水溶紙を用いる場合も多い。一方、便座シート19を、図9図10に示すように、折り畳んだ際に、便座当接部4のある個所だけ、重なり枚数が多くなり、少し膨らんだ状態となる。この状態で、多数の便座シート19を重ねて保管した場合、重ね数や重ね方によっては、便座当接部4の重なる個所の便座覆部2に、歪みや破れが生じ得る。これを改善するために、図11に示すように、使用者のお尻が、比較的、当たりにくい便座覆部2の便座当接部6側の上端に、横一面に幅2cm程度の帯状の二重折部17を設ける。当該二重折部17を、横一面に配することで、たとえば、図11(c)のように、縦方向に6面が重なるように折り畳んだ場合、二重折部17の折り重ね数が6面となり、便座当接部4の折り重ね数(4面)より多くなる。そのため、折り畳んだ状態では、当該二重折部17の箇所の方が、より膨らむので、便座当接部4の周辺の便座覆部2の歪み等を緩和することができる。また、二重折部17を有することで、便座覆部2の上端が補強されるため、便座シート19の左右の上端部14を持って、両側に、より強く引っ張った状態で、便座シート19を便座1の上に位置合わせすることが可能となり、更に、咬み込む部9に咬み込ませる際にも、破れ難くすることも可能となり得る。
【0027】
なお、本実施例では、便座当接部4として、帯状の当接部4aが、便座覆部2上で、三角状に立体的に形成される構造を示したが、これに限定されるものではなく、便座1の奥壁3に当接させる際に、便座1の中央開口部側に傾倒し難い構造であれば、例えば、図12に示すような構造でも良い。具体的には、便座覆部2に対して、垂直方向に扇状に立体的に形成された当接部4aが、便座1の中央開口部側に倒れないように、固定部6で固定されるものである。
この便座当接部4は、便座覆部2に固定せず、一平面状に展開した場合、図12(c)に示す形状となる。この便座当接部4を便座覆部2に取付ける際に、図12(d)に示すように、中央折り目16を挟んで、左右の取付け端部18の間の最長距離を、図12(c)で示す展開状態における取付け端部18の最長距離より小さくしつつ、固定部6を便座覆部2に取付ける。なお、当接部4aの中央の折り目を便座覆部2の中央折り目16に合わせて設置することで、携帯用に、便座シート19を折り畳む時に、当接部4aを便座覆部2に重ねて折り畳むことが、より容易となる。
【0028】
また、本実施例では、便座当接部4を、便座1の中央開口部の奥側の側面(奥壁3)に当接させて位置決めする方法を示したが、前述のように、奥壁3の下部には、洗浄ノズル7を収納するノズル収納部5が形成されており、図12(e)に示すように、ノズル収納部5の便座1の中央開口部側の側面は、奥壁3と、ほぼ同一面か、機種によっては、便座1の中央開口部と反対側に多少(5~10mmほど)奥まって配置されている。そのため、便座当接部4の形状を、仮に、側方から見て、「L」字状に形成し、奥壁3には、直接は当てずに、「L」字状の横線の先端に該当する箇所をノズル収納部5に当てて位置決めすることも可能である。このように、奥壁3とノズル収納部5の位置関係を考慮して、便座当接部4を、奥壁3に、直接当てずに、間接的に当接させて位置決めすることも可能となり得るが、この場合、便座当接部の「L」字状の縦線に該当する箇所が長くなり過ぎると、洗浄ノズル7が出てくる際に、当接部4aが洗浄ノズル7に当たって邪魔となり得るので、洗浄ノズル7が出てくる位置より短くする必要がある。
【0029】
また、本実施例では、咬み込み部9として、ゴム製のギザギザの切込部10を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、便座シート19を咬み込む構造を有していれば、例えば、図13に示すように、プラスチック製の開閉式の扉21を用いることも可能である。
具体的には、図13に示したものは、左右の扉21の合わせ部に、便座シート19を咬み込むための凹凸部を相互に設けるとともに、扉21が開いた後、これを自動的に元の位置に閉める為のバネ構造を有するものである。咬み込み部9の扉21の上で、便座シート19を軽く押し込むことで、左右の扉21が開き、その奥側に便座シート19の一部が入り込み、扉21がバネの力で元の位置に閉まる際に、扉21の奥側に便座シート19の一部を残した状態で、扉21の合わせ部の隙間が徐々に狭くなり、便座シート19を挟む(仮固定する)ことが可能となる。また、便座シート19を上方に軽く引きながら、両扉21を再び押すことで、左右の扉21の間の隙間を拡げ、便座シート19の凹凸部の引っ掛かりを外して、便座シート19の仮固定を解除することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の便座シートは、トイレの便座の上に敷くシートに適用し得る。
【符号の説明】
【0031】
1 便座
2 便座覆部
3 奥壁
4 便座当接部
5 ノズル収納部
6 固定部
7 洗浄ノズル
8 粘着部
9 咬み込み部
10 切込部
11 亘り部
12 折り目
13 垂幕部
14 上端部
16 中央折り目
17 二重折部
18 取付け端部
19 便座シート
20 便器
21 扉



図1
図2
図3
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