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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057410
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/48 20060101AFI20230414BHJP
   B66C 13/46 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B66C13/48 A
B66C13/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166931
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三輪 敏明
(72)【発明者】
【氏名】笹原 大介
(72)【発明者】
【氏名】森田 一義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】江沢 迪和
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA03
3F204DB06
(57)【要約】
【課題】搬送対象物を効率的に搬送することができる搬送システム及び搬送方法を提供する。
【解決手段】搬送システム10は、一対の脚部13a,13bと、脚部13a,13bに橋渡しされたガーダ15と、脚部13a,13bをX方向に移動させる走行装置と、ガーダ15に沿って揚重装置を移動させる横行装置とを有するクレーン11を備える。クレーン11は、把持装置20を昇降させる揚重装置と、揚重装置の下方を監視する位置センサ(L21,L22,L3)と、制御部とを備える。制御部は、位置センサ(L21,L22,L3)の計測情報に基づいてマスト部材の空間の高さを特定し、揚重装置により特定した空間の高さに応じて把持装置20の高さを調整して、把持装置20の掛止部をマスト部材の空間に挿入する。把持装置20は、揚重装置により上昇されることにより掛止部でマスト部材を引っ掛けて把持した後、水平方向に移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を把持する把持装置を昇降させて前記搬送対象物を搬送するクレーンを備えた搬送システムであって、
前記クレーンは、
前記把持装置を水平方向に移動させる移動装置と、
前記把持装置を揚重する揚重装置と、
前記揚重装置の下方を監視する位置センサと、
前記移動装置、前記揚重装置及び前記把持装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記位置センサの計測情報に基づいて前記搬送対象物の高さを特定し、
前記揚重装置により前記特定した高さに応じて前記把持装置の高さを調整して、前記把持装置を降下させて前記搬送対象物を把持し、
前記把持装置を、前記揚重装置により上昇した後、前記移動装置によって移動することにより、前記搬送対象物を搬送することを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
搬送対象物を把持する把持装置を昇降させて前記搬送対象物を搬送するクレーンを用いた搬送方法であって、
前記クレーンは、
前記把持装置を水平方向に移動させる移動装置と、
前記把持装置を揚重する揚重装置と、
前記揚重装置の下方を監視する位置センサと、
前記移動装置、前記揚重装置及び前記把持装置を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記位置センサの計測情報に基づいて前記搬送対象物の高さを特定し、
前記揚重装置により前記特定した高さに応じて前記把持装置の高さを調整して、前記把持装置を降下させて前記搬送対象物を把持し、
前記把持装置を、前記揚重装置により上昇した後、前記移動装置によって移動することにより、前記搬送対象物を搬送することを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する搬送システム及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、門型クレーンが搬送する搬送対象物の移動先を決定して自動的に走行させる制御を行なう自動運転システムが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載のコンテナヤードは、コンテナが蔵置される蔵置エリアと、蔵置エリアに沿って走行する門型クレーンと、この門型クレーンの移動先を決定して自動的に走行させる制御を行なう自動運転システムとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-109801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工事現場において使用する各種資機材をまとめて保管しておき、必要に応じて搬送することがある。例えば、タワークレーンを構成するマスト(支柱)は、不使用時には、複数個に分解されて、マスト部材としてまとめて保管される。そして、必要になった場合には、保管場所のマスト部材を、吊り上げて、トラック等で工事現場に搬送する。
【0005】
通常、このような資材の搬送時には、保管場所において作業員による玉掛け作業や介錯作業を行なう。特に、大きな資材を積み上げて保管している場合には、玉掛け作業や介錯作業を高所で行なう必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する搬送システムは、搬送対象物を把持する把持装置を昇降させて前記搬送対象物を搬送するクレーンを備えた搬送システムであって、前記クレーンは、前記把持装置を水平方向に移動させる移動装置と、前記把持装置を揚重する揚重装置と、前記揚重装置の下方を監視する位置センサと、前記移動装置、前記揚重装置及び前記把持装置を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記位置センサの計測情報に基づいて前記搬送対象物の高さを特定し、前記揚重装置により前記特定した高さに応じて前記把持装置の高さを調整して、前記把持装置を降下させて前記搬送対象物を把持し、前記把持装置を、前記揚重装置により上昇した後、前記移動装置によって移動することにより、前記搬送対象物を搬送する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送対象物を効率的に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における搬送システムの橋形クレーンの斜視図である。
図2】実施形態における把持装置の斜視図である。
図3】実施形態における把持装置の本体部を除いた平面図である。
図4】実施形態における搬送システムの制御部の構成を説明するブロック図である。
図5】実施形態における橋形クレーン、マスト部材及びトラックの位置関係を説明する説明図である。
図6】実施形態における把持装置の掛止部とマスト部材の把持位置との関係を説明した説明図である。
図7】実施形態における監視処理の処理手順を説明する流れ図である。
図8】実施形態における搬送処理の処理手順を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図8を用いて、搬送システム及び搬送方法を具体化した一実施形態を説明する。ここで、本実施形態の搬送システムは、タワークレーンのマスト(支柱)を構成するマスト部材を、集積領域からトラックの荷台に搬送する。
【0010】
図1に示すように、搬送システム10は、橋形(門型)クレーン11と、図4の後述する制御部50とを備える。
図1の橋形クレーン11は、離間した1対の走行レールR1の上に載置される。
橋形クレーン11は、後述する移動装置12の脚部13a,13b及びガーダ15と、クラブトロリ16とを備えている。
脚部13a,13bの下面には、複数の車輪14a,14bが設けられている。車輪14a,14bは、脚部13a,13bにそれぞれ設けられた図4の走行装置12aによって駆動され、走行レールR1上を回転する。走行装置12aは、図1の車輪14a,14bを同期して駆動させることにより脚部13a,13bをX方向に移動させる。
【0011】
脚部13a,13bには、X方向の両端部に、障害物センサL11,L12,L13,L14がそれぞれ設けられている。L11~L14は、2次元ライダ(2D-Lidar)であって、脚部13a,13bの取付位置における(鉛直軸を中心とした所定角度範囲における)水平方向を走査して、脚部13a,13bのX方向における障害物の有無を検知する。
【0012】
更に、脚部13aには、車両センサL15が設けられている。この車両センサL15は、2次元ライダであって、外側(脚部13bとは反対側)を水平方向に走査して、脚部13aの近傍に配置される図6のトラックT1の位置を特定する。
【0013】
一方、図1の脚部13bには、障害物センサL16が設けられている。この障害物センサL16は、脚部13a,13b間に集積されているマスト部材70の最上段に対応する高さに設けられている。障害物センサL16は、2次元ライダであって、最上段のマスト部材70の高さにおいて、鉛直軸回りの脚部13a側を含む水平方向を走査して、積載されたマスト部材70の最上段より上方における障害物の有無を検知する。
【0014】
ガーダ15は、脚部13a,13bの上部に渡るように配置されている。ガーダ15の延在方向における中央部には、両側面のそれぞれに、第1位置センサL21,L22が設けられている。第1位置センサL21,L22は、下方を監視する2次元ライダであって、水平軸回りの下側を含む鉛直方向(ガーダ15の延在方向に平行な垂直面内)を走査する。更に、ガーダ15の中央部には、第1位置センサL21,L22のそれぞれと並ぶように、検知カメラC1,C2がそれぞれ設けられている。
【0015】
ガーダ15の上には、クラブトロリ16が、ガーダ15の延在方向に移動可能に設けられている。クラブトロリ16は、ガーダ15に設けられた図4の横行装置12bの駆動によって移動する。クラブトロリ16は、揚重装置16aを内蔵している。この揚重装置16aは、ロープを巻き取り又は送り出して、ロープを介してフック(図示せず)に吊り下げた把持装置20を昇降させる巻上装置である。
【0016】
更に、図1に示すクラブトロリ16には、第2位置センサL3、下方監視カメラC5及びアンテナG1が設けられている。
第2位置センサL3は、2次元ライダであって、水平軸回りの下側を含む鉛直方向(ガーダ15の延在方向に直交する垂直面内)を走査する。この場合、第2位置センサL3は、第1位置センサL21,L22の走査方向と直交する方向を走査する。
【0017】
下方監視カメラC5は、ネットワークカメラであって、クラブトロリ16の下方を撮影する。そして、下方監視カメラC5によって撮影された画像を用いて、画像に含まれる把持装置20、把持装置20を吊り下げたフック、マスト部材70及びトラックT1の相対位置の検知、障害物の検知及びマスト部材70の旋回角度の確認を行なう。
【0018】
アンテナG1は、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)のアンテナである。このアンテナG1で受信した電波を用いて、クラブトロリ16の世界測地系による座標を特定する。
【0019】
(把持装置20の構成)
図2に示すように、把持装置20は、本体部21と、本体部21の下方に設けたフレーム部材とを備える。本体部21は、本実施形態では、スカイジャスタ(登録商標)等の吊荷の旋回角度を制御する旋回制御装置を内蔵している。
【0020】
図3に示すように、フレーム部材は、長手方向に延在する中心線CL1において線対称の構成を有する。フレーム部材は、基礎部材23,24、2本の固定部材25及び補強部材26,27を有する。基礎部材23,24は、中心線CL1と直交し、搬送対象のマスト部材70の幅より少し短い。基礎部材23,24は、断面が略正方形の筒部材である。固定部材25は、中心線CL1と平行に配置される。各固定部材25は、基礎部材23,24の端部同士を連結している。なお、補強部材26の上に、載置部材22を介して本体部21が載置固定される。
【0021】
各基礎部材23(24)の両端のそれぞれには、連結部材28(29)が嵌合している。各連結部材28,29は、基礎部材23,24の開口部からそれぞれ突出している。更に、2個の連結部材28(29)は、基礎部材23(24)の内部において、隙間をおいて並んでおり、少なくとも後述する掛止部35bの可動長さ分だけ、基礎部材23,24の内部で摺動可能である。
【0022】
連結部材28,29の先端の上面は、それぞれ、基礎部材31,32の両端部の下面に固定されている。基礎部材31,32は、中心線CL1と平行に配置され、断面が略正方形の筒部材である。各基礎部材31,32には、取付部材33,34がそれぞれ貫通している。取付部材33,34は、基礎部材31,32に嵌合し、基礎部材31,32に対して摺動可能に配置されている。各取付部材33,34の両端部には、爪部材35が設けられている。
【0023】
図2に示すように、各爪部材35は、円筒形状の棒部材である支持部35aと、この支持部35aの下端部に設けられた掛止部35bとを有する。支持部35aは、その上端部が取付部材33,34の端部に固定されている。掛止部35bは、板形状を有し、マスト部材70間に挿入される。
【0024】
図3に示すように、各掛止部35bは、中心線CL1側に、支持部35aから長さD1で延在する載置部を有する。長さD1は、後述するマスト部材70の補強板72の厚みよりも大きい。また、各掛止部35bの上面部には、ロードセル(図示せず)が設けられている。各ロードセルは、掛止部35bの上にマスト部材70の一部が載置した場合に、掛止部35bに加わる荷重を計測する。
【0025】
更に、補強部材27には、アクチュエータ41,42が固定されている。各アクチュエータ41,42は、フレーム部材の中央であって、ロッド41a,42aが基礎部材23,24と平行となるように配置される。各アクチュエータ41,42のロッド41a,42aの先端は、それぞれ基礎部材31,32の中央部に固定される。そして、各アクチュエータ41,42は、電動モータによってロッド41a,42aを伸縮させる。このロッド41a,42aの伸縮により、基礎部材31,32と中心線CL1との距離が変更される。
【0026】
更に、各基礎部材31,32の上面には、アクチュエータ46,47が、基礎部材31,32に沿うように、取付板45を介して固定されている。各アクチュエータ46,47は、フレーム部材の中央部より基礎部材23側に少し寄って配置され、電動モータによってロッド46a,47aを伸縮させる。
【0027】
ロッド46a,47aの先端は、基礎部材24側の爪部材35の近傍において、取付部材33,34にそれぞれ固定されている。そして、各アクチュエータ46,47のロッド46a,47aが伸縮すると、取付部材33,34に固定された爪部材35が基礎部材31,32に対して、中心線CL1の延在方向に相対移動する。
【0028】
更に、把持装置20には、レーザ距離計が設けられている。このレーザ距離計は、把持装置20から下方のマスト部材70までの距離や爪部材35の掛止部35bの内側(掛止部35b間)の距離を計測する。
【0029】
(搬送システム10の制御部50)
次に、図4を用いて、搬送システム10の制御部50の構成について説明する。
搬送システム10の制御部50は、制御管理部51と駆動制御部60とを備える。
制御管理部51は、画像取得部55、点群取得部56、計測値取得部57、認識部58及び判断部59を備える。
【0030】
画像取得部55は、検知カメラC1,C2及び下方監視カメラC5が撮影した画像を取得する。
点群取得部56は、各センサ(L11~L16,L21,L22,L3)が取得した点群データを取得する。
【0031】
計測値取得部57は、アンテナG1が受信した電波に基づいて計測した座標や、把持装置20のレーザ距離計の値、各掛止部35bに設けられたロードセルの値を取得する。
認識部58は、取得した画像や点群データを用いたパターン認識を行なって、マスト部材70、トラックT1及び障害物となる人物等の物体の認識を行なう。本実施形態では、認識部58は、搬送対象となるマスト部材70の種類に対応してマスト部材70の後述する側面の配置形状に関するデータを記憶している。
判断部59は、認識された物体に応じて制御判断を行ない、駆動制御部60に対して制御指示を行なう。
【0032】
駆動制御部60は、脚部13a,13bに設けた走行装置12a、ガーダ15に設けられた横行装置12b、クラブトロリ16に内蔵された揚重装置16aに接続されている。なお、把持装置20を水平方向に移動する移動装置12は、脚部13a,13b、走行装置12a、ガーダ15及び横行装置12bで構成される。
駆動制御部60は、更に、把持装置20のアクチュエータ41,42,46,47、本体部21の旋回制御装置に接続されている。
【0033】
駆動制御部60は、移動制御部61、昇降制御部62、掛止制御部63及び旋回制御部64を備える。
移動制御部61は、移動装置12の走行装置12a及び横行装置12bを駆動して、脚部13a,13b及びガーダ15をそれぞれ移動させることにより、クラブトロリ16に吊り上げられた把持装置20を水平面内において移動させる。
【0034】
昇降制御部62は、クラブトロリ16の揚重装置16aを駆動して、把持装置20の昇降(揚重)を制御する。
掛止制御部63は、アクチュエータ41,42を駆動して、掛止部35bをマスト部材70に挿入させる。
【0035】
旋回制御部64は、把持装置20とマスト部材70との向き、マスト部材70とトラックT1の荷台との向きを同じにするために、把持装置20の旋回角度を制御する。
また、制御部50は、遠隔操作部(図示せず)に無線等により接続されている。制御部50は、遠隔操作部を介して、搬送システム10の自動搬送の開始及び終了、緊急停止の再開等の作業者からの指示を取得する。
【0036】
(マスト部材70の搬送方法)
次に、図5図8を用いて、上述した搬送システム10を用いた搬送方法について説明する。
【0037】
図5に示すように、脚部13a,13bの間の集積領域MB1のマスト部材70を、トラックT1の荷台に搬送する方法について説明する。
ここでは、まず、搬送対象物であるマスト部材70の構成について説明する。
図6に示すマスト部材70は、全体で略直方体形状を有し、4つの主材71と複数の補強板72とを有する。主材71は、マスト部材70の長手方向に延在し、直方体形状を有し、長手方向と直交する平面の四つ角に配置される。補強板72は、板状の部材であって、同一面において主材71や他の補強板72を連結して補強する。このため、マスト部材70においては、補強板72と主材71との間や補強板72同士の間には、適宜、隙間(空間)が形成される。本実施形態のマスト部材70は、4つの側面における主材71及び補強板72が同じ配置で構成され、側面の配置形状が同じになっている。
【0038】
そして、図5の橋形クレーン11の脚部13a,13bの間に、複数のマスト部材70が積み上げられる集積領域MB1が設けられる。この集積領域MB1には、マスト部材70が、寝かした状態(主材71の延在方向を水平にした状態)で前後左右に並べられて、複数段(例えば3段)で積層されて置かれている。この場合、マスト部材70は、水平方向において隣接するマスト部材70と、把持装置20の爪部材35が挿入可能な間隔をおいて配置されている。
【0039】
(自動搬送処理)
自動搬送を行なう前に、搬送システム10の橋形クレーン11を、脚部13a,13bが集積領域MB1を跨ぐように配置する。この場合、搬送システム10の制御部50は、集積領域MB1の撮影画像を取得し、この撮影画像を解析することにより集積領域MB1に配置された各マスト部材70の位置情報を取得して、記憶部に記憶しておく。
【0040】
そして、搬送システム10の制御部50は、遠隔操作部を介して、自動搬送開始の指示を取得する。この場合、制御部50は、搬送対象のマスト部材70と搬送先(トラックT1の荷台等)の情報も取得する。
【0041】
自動搬送開始の指示を受信した制御部50は、障害物を監視する監視処理及び搬送処理を実行する。
次に、図7を用いて監視処理を説明する。
まず、制御部50の制御管理部51は、障害を検知したか否かの判定処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御管理部51の画像取得部55は、検知カメラC1,C2及び下方監視カメラC5の画像を取得する。更に、制御管理部51の点群取得部56は、障害物センサL11~L14,L16からの点群データを取得する。そして、制御管理部51の認識部58は、取得した画像及び点群データを用いて、パターン認識等を行なうことにより、障害物を検知する。
なお、障害物を検知しない場合(ステップS11において「NO」の場合)には、障害検知の判定処理(ステップS11)を、終了まで(ステップS14において「YES」まで)継続する。
【0042】
ここで、障害物を検知した場合(ステップS11において「YES」の場合)、制御部50の制御管理部51は、緊急停止処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、駆動制御部60の各制御部(61~64)に対して停止を指示する。そして、各制御部(61~64)は、駆動している装置(走行装置12a、横行装置12b、揚重装置16a、アクチュエータ41,42,46,47及び旋回制御装置)を停止する。
【0043】
その後、障害物の確認や除去等が行われると、作業者は、遠隔操作部を介して、自動搬送の再開を指示する。これにより、制御部50の制御管理部51は、停止解除処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、駆動制御部60の各制御部(61~64)を介して、ステップS12で停止させていた装置について駆動を再開する。
【0044】
以上の処理を、搬送システム10の制御部50が、自動搬送処理が終了と判断するまで(ステップS14において「YES」の場合まで)継続する。ここでは、制御部50は、後述するように、マスト部材70を取り外した把持装置20が上昇して待機位置に戻ったことにより、自動搬送処理の終了と判断する。
【0045】
(搬送処理)
次に、図8を用いて、搬送処理について説明する。
まず、制御部50の制御管理部51は、マスト部材の位置の取得処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御管理部51は、自動搬送開始の際に、記憶している集積領域MB1における各マスト部材70を、遠隔操作部の画面に表示する。そして、制御部50は、画面において自動搬送開始とともに作業者から指定されたマスト部材70を搬送対象物として特定し、このマスト部材70の位置情報を記憶部から取得する。
【0046】
次に、制御部50の制御管理部51は、マスト部材の位置への走行処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御管理部51の認識部58は、計測値取得部57が取得したアンテナG1が受信した電波を用いて算出した現在位置(クラブトロリ16の座標)を特定する。そして、判断部59は、特定した現在位置から、指定されたマスト部材70までのX方向及びY方向の距離を計算し、この距離分移動するように、駆動制御部60の移動制御部61に移動を指示する。移動制御部61は、供給されたX方向の距離分、脚部13a,13bが移動するように走行装置12aを駆動する。そして、移動制御部61は、供給されたY方向の距離分、クラブトロリ16が移動するように、ガーダ15の横行装置12bを駆動する。
【0047】
その後、制御部50の制御管理部51は、位置の微調整処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御管理部51の認識部58は、位置センサ(L21,L22,L3)から取得した点群データを用いて、マスト部材70までの距離(X方向及びY方向)を特定する。そして、制御管理部51の判断部59は、特定した距離分、走行装置12a及び横行装置12bを駆動して、クラブトロリ16を移動させる。
【0048】
次に、制御部50の制御管理部51は、マスト部材に対する旋回角度調整処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御管理部51の認識部58は、下方監視カメラC5から取得した画像から、画像内における把持装置20の基礎部材31,32及びその下方のマスト部材70を特定する。認識部58は、特定した基礎部材31,32の延在方向とマスト部材70の長手方向とが平行となる旋回角度を算出する。そして、判断部59は、駆動制御部60に、算出した旋回角度の回転指示を供給する。駆動制御部60の旋回制御部64は、本体部21の旋回制御装置を、旋回角度に応じて旋回させる。
【0049】
ここで、制御管理部51の認識部58は、画像取得部55が下方監視カメラC5から取得した撮影画像を用いて、把持装置20の長手方向と、その下方に位置するマスト部材70の長手方向とを特定する。そして、認識部58は、マスト部材70の長手方向に対して基礎部材31,32の延在方向が所定以内の角度にあるかを確認する。なお、所定以内の角度にない場合には、制御管理部51は、旋回制御部64を介して、本体部21の旋回制御装置を、再度、旋回させ、所定以内の角度となるように調整する。
【0050】
次に、制御部50の制御管理部51は、マスト部材の高さ直前までの巻下げ処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御管理部51の認識部58は、下方監視カメラC5から取得した画像における把持装置20とマスト部材70との相対的な大きさを特定する。そして、制御管理部51の判断部59は、駆動制御部60の昇降制御部62を介して、クラブトロリ16の揚重装置16aを駆動して、把持装置20を降下させる。この場合、制御管理部51の認識部58は、レーザ距離計の計測値を用いて、把持装置20がマスト部材70の最上面からの所定位置(上面から予め定めた高さ分高い位置)まで降下したか否かを判定する。そして、認識部58が最上面からの所定位置まで降下したと判断した場合には、制御管理部51の判断部59は、揚重装置16aの駆動を停止する。
【0051】
次に、制御部50の制御管理部51は、マスト部材の種類の特定処理を実行する(ステップS26)。具体的には、制御管理部51の認識部58は、各位置センサ(L21,L22,L3)から取得した点群データを用いて、マスト部材70の側面における主材71及び補強板72の配置を特定する。認識部58は、特定した側面の配置形状と、記憶している全種類のマスト部材の側面の配置形状とのパターンマッチングを行ない、下方に位置しているマスト部材70の種類を特定する。
【0052】
次に、制御部50の制御管理部51は、種類に応じた巻下げ処理を実行する(ステップS27)。具体的には、制御管理部51の計測値取得部57は、把持装置20のレーザ距離計が計測した距離を取得する。制御管理部51の判断部59は、種類を特定したマスト部材70の側面の配置形状から、掛止部35bを挿入するマスト部材70の位置(挿入箇所及び高さ)を特定する。そして、判断部59は、昇降制御部62を介して揚重装置16aを駆動することにより、把持装置20を降下させる。この場合、判断部59は、レーザ計測計から取得した距離に応じて、特定した挿入位置の高さまで降下させる。
例えば、図6に示すマスト部材70においては、最上部の位置する主材71の下面部の高さに、把持装置20の掛止部35bが位置するように、把持装置20を降下する。
【0053】
次に、制御部50の制御管理部51は、掛止部の位置の調整処理を実行する(ステップS28)。具体的には、まず、制御管理部51の判断部59は、爪部材35の掛止部35bがマスト部材70の中に挿入可能か否かを判断する。ここでは、判断部59は、把持装置20のレーザ距離計が計測した距離が掛止部35bの長さD1より小さい場合には、その位置にマスト部材70の主材71や補強板72が位置していることによりマスト部材70の中に挿入できないと判断する。
【0054】
ここで、掛止部35bがマスト部材70の中に挿入できないと判断した場合には、判断部59は、掛止制御部63を駆動し、アクチュエータ46,47を駆動して、掛止部35bを水平方向に移動させる。そして、判断部59は、レーザ距離計からの計測値によって、掛止部35bが挿入可能な距離まで何もないと判断した場合には、マスト部材70の中に挿入可能と判断する。
【0055】
次に、制御部50の制御管理部51は、掛止部の挿入処理を実行する(ステップS29)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、掛止制御部63を介してアクチュエータ41,42を駆動して、ロッド41a,42aを収縮する。これにより、把持装置20の連結部材28(29)同士が近接することにより、掛止部35bの内側端部が、マスト部材70の側面部の補強板72より内側に位置する。従って、掛止部35bがマスト部材70の中に挿入される。
【0056】
その後、制御部50の制御管理部51は、巻上げ処理を実行する(ステップS30)。具体的には、まず、制御管理部51の判断部59は、点群取得部56を介して障害物センサL16が障害物を検知していないことを確認する。そして、判断部59は、駆動制御部60の昇降制御部62を介して、クラブトロリ16の揚重装置16aを駆動して、把持装置20を上昇させる。この場合、爪部材35の掛止部35bにマスト部材70の補強板72が載置されると、制御管理部51の計測値取得部57は、各掛止部35bのロードセルから荷重値データを取得する。取得した荷重値データが「0」でない場合には、制御管理部51の判断部59は、各掛止部35bにおいてロードセルの荷重が加わっていると判断する。
【0057】
ここで、制御部50の制御管理部51は、掛止部35bのロードセルの荷重値が「0」を取得した場合、マスト部材70からの荷重が加わっていないと判断する。この場合、制御管理部51の判断部59は、揚重装置16aを駆動させることにより把持装置20を降下させ、マスト部材70を元の位置に戻す。そして、制御部50は、ステップS28以降の処理を再度、実行する。なお、ステップS28以降の処理を予め定めた所定回数、行なっても荷重が加わっていないと判断した場合には、ステップS26以降の処理を再度、実行してもよい。
【0058】
一方、各掛止部35bのロードセルの荷重が加わっていることが確認できた場合には、制御部50の制御管理部51は、駆動制御部60の昇降制御部62を介して、揚重装置16aを更に駆動して、把持装置20及びマスト部材70を上昇させる。この場合、障害物センサL16による障害物の検知がないことを確認しながら、マスト部材70を、その下面が集積領域MB1の最上段のマスト部材70より上方となる位置まで上昇させる。
【0059】
次に、制御部50の制御管理部51は、トラック位置の特定処理を実行する(ステップS31)。具体的には、制御管理部51の点群取得部56は、車両センサL15から取得した点群データに基づいて、搬送先と指定されたトラックT1の位置(X座標)を特定する。
【0060】
そして、制御部50の制御管理部51は、トラック位置までの走行処理を実行する(ステップS32)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、アンテナG1が受信した電波を用いて算出した現在位置から、特定したトラックT1までのX方向の距離を計算する。そして、判断部59は、駆動制御部60の移動制御部61を介して走行装置12aを駆動することにより、計算した距離に応じて脚部13a,13bを移動させる。
【0061】
次に、制御部50の制御管理部51は、横行処理を実行する(ステップS33)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、移動制御部61を介して横行装置12bを駆動し、クラブトロリ16を、脚部13aを超えて、ガーダ15のトラックT1側の端部までY方向に移動させる。
【0062】
次に、制御部50の制御管理部51は、巻下げ処理を実行する(ステップS34)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、駆動制御部60の昇降制御部62を介して、地上から予め定めた高さまで、把持装置20が把持したマスト部材70を降下する。この場合、地上から予め定めた高さは、載置予定のトラックT1の全種類で最も高い荷台よりも余裕高さ(例えば数m程度)分、高い位置である。
【0063】
次に、制御部50の制御管理部51は、トラックの荷台に対する旋回角度調整処理を実行する(ステップS35)。具体的には、制御管理部51の認識部58は、下方監視カメラC5から取得した画像内におけるマスト部材70の長手方向と、トラックT1の荷台の長手方向とが平行となる旋回角度を計算する。そして、認識部58は、駆動制御部60の旋回制御部64を介して、本体部21の旋回制御装置を、計算した旋回角度分、旋回させる。なお、この場合においても、所定以内の角度にない場合には、ステップS24と同様に、制御管理部51は、旋回制御部64を介して、本体部21の旋回制御装置を、再度、旋回させ、所定以内の角度となるように調整する。
【0064】
次に、制御部50の制御管理部51は、Y方向の位置の最終調整処理を実行する(ステップS36)。具体的には、制御管理部51の認識部58は、点群取得部56が取得した位置センサ(L21,L22,L3)からの点群データを用いて、トラックT1の荷台の位置を特定する。制御管理部51の判断部59は、特定した荷台と、把持装置20が把持しているマスト部材70との距離の差を算出する。そして、判断部59は、移動制御部61を介して横行装置12bを駆動し、クラブトロリ16を、算出した差分に対応する距離分、移動させる。これにより、トラックT1の荷台の上方に、把持装置20に把持されたマスト部材70が位置する。
【0065】
次に、制御部50の制御管理部51は、巻下げ処理を実行する(ステップS37)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、昇降制御部62を介して揚重装置16aを駆動することにより、把持装置20を降下させて、把持装置20が把持していたマスト部材70をトラックT1の荷台に載置する。ここで、マスト部材70がトラックT1の荷台に載置されると、マスト部材70の荷重はトラックT1に加わる。従って、制御管理部51の計測値取得部57は、各掛止部35bのロードセルから、「0」の荷重データを取得する。そして、制御管理部51の判断部59は、荷重データが「0」であることから各掛止部35bにおいてロードセルの荷重が加わっていないことを検知した場合には、昇降制御部62を介して揚重装置16aの駆動を停止する。
【0066】
次に、制御部50の制御管理部51は、掛止部の取り外し処理を実行する(ステップS38)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、掛止制御部63を介してアクチュエータ41,42を駆動して、ロッド41a,42aを伸長する。これにより、把持装置20の連結部材28(29)同士が離れることにより、掛止部35bの内側端部が、マスト部材70より外側に位置する。従って、掛止部35bがマスト部材70から取り外される。
【0067】
次に、制御部50の制御管理部51は、把持装置の上昇処理を実行する(ステップS39)。具体的には、制御管理部51の判断部59は、昇降制御部62を介して揚重装置16aを駆動することにより、把持装置20を上昇させる。これにより、トラックT1の周囲から把持装置20が除去される。そして、マスト部材70を荷台に載置したトラックT1は、マスト部材70を搬送する。
その後、制御部50の制御管理部51は、移動制御部61を介して走行装置12a及び横行装置12bを駆動して、上昇した把持装置20を予め定めた待機位置まで移動させる。
【0068】
(作用)
本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、掛止部35bの位置の調整処理を実行した後、把持装置20をマスト部材70に挿入して掛止する。これにより、制御部50は、マスト部材70を円滑に把持することができる。
【0069】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、種類に応じた巻下げ処理(ステップS27)、掛止部の位置の調整処理(ステップS28)及び掛止部の挿入処理を実行する(ステップS29)。これにより、掛止部35bの高さ及び位置を調整した上で、掛止部35bをマスト部材70に挿入するので、把持装置20はマスト部材70を円滑に把持することができる。従って、作業員による玉掛作業や介錯作業を行なわなくても、マスト部材70を安定して把持して効率的に搬送することができる。
【0070】
(2)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、マスト部材の種類の特定処理(ステップS26)を実行した後、種類に応じた巻下げ処理(ステップS27)を実行する。これにより、種類に応じてマスト部材70の側面の配置形状を特定することにより、掛止部35bを挿入する空間を特定することができるので、掛止部35bを挿入する位置(高さ)を的確に調整することができる。
【0071】
(3)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、各位置センサ(L21,L22,L3)から取得した点群データを用いて、マスト部材70の種類を特定する。これにより、2次元ライダからの情報を用いてマスト部材70を適切に特定することができる。
【0072】
(4)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、掛止部の挿入処理(ステップS29)及び巻上げ処理を実行する(ステップS30)。これにより、マスト部材70の空間に余裕を持って掛止部35bを挿入した後、掛止部35bを上昇させることにより、掛止部35bでマスト部材70の下面を把持することができる。
【0073】
(5)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、車両センサL15から取得した点群データに基づいてトラック位置の特定処理(ステップS31)を実行する。これにより、搬送先のトラックT1の位置を把握することができるので、マスト部材70を把持した把持装置20をトラックT1まで移動することができる。
【0074】
(6)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、Y方向の位置の最終調整処理を実行する(ステップS36)。これにより、トラックT1の荷台の位置とマスト部材70とのY方向の位置とを調整するので、マスト部材70を荷台に載置することができる。
【0075】
(7)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、マスト部材に対する旋回角度調整処理(ステップS24)及びトラックの荷台に対する旋回角度調整処理(ステップS35)を実行する。これにより、マスト部材70の長手方向と把持装置20の長手方向、マスト部材70の長手方向とトラックT1の荷台の長手方向とを平行となるように合わせるので、マスト部材70を安定して把持及び載置することができる。
【0076】
(8)本実施形態では、搬送システム10の制御部50は、監視処理において、検知カメラC1,C2及び下方監視カメラC5の画像、障害物センサL11~L14及び障害物センサL16からの点群データを用いて、障害物を検知する。そして、障害物を検知した場合(ステップS11において「YES」の場合)、制御部50は、駆動している装置(走行装置12a、横行装置12b、揚重装置16a、アクチュエータ41,42,46,47及び旋回制御装置)を停止する。これにより、把持装置20が移動する範囲で、障害物を検知した場合には、搬送動作を停止するので、安全にマスト部材70を搬送することができる。
【0077】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、搬送システム10の制御部50は、検知カメラC1,C2及び下方監視カメラC5の画像、障害物センサL11~L14,L16からの点群データを用いて、障害物を検知する。これに加えて、障害物の検知を、他の箇所に設けたカメラや2次元ライダからのデータを用いて行なってもよい。例えば、把持装置20の可動領域の外であって近接する建物から、可動領域を写すカメラや2次元ライダを用いて、障害物の検知を行なってもよい。
更に、障害物センサL11~L14、車両センサL15及び各位置センサ(L21,L22,L3)として2次元ライダを用いた。これらは、2次元ライダに限られず、画像や赤外線センサ等を用いて構成してもよい。また、これらの取付位置も、上述した位置に限定されず、目的の対象物の監視や検知が行なえれば、自由に変更可能である。
【0078】
・上記実施形態においては、搬送システム10の制御部50は、把持装置20の掛止部35bをマスト部材70に差し込む。この場合、制御部50は、マスト部材70や把持装置20の重心の位置を調整してもよい。具体的には、制御部50は、マスト部材70の重心の位置と把持装置の重心の位置が一致するように、把持装置20の本体部21を掛止部35bに対して相対移動させる。これにより、把持装置20を吊り上げた場合、マスト部材70を安定して吊り上げることができる。なお、この場合、制御部50は、吊り上げた際に掛止部35bのロードセルの荷重を取得し、これら荷重を用いて重心位置を調整してもよい。
【0079】
・上記実施形態の把持装置20においては、アクチュエータ41,42によって掛止部35bをマスト部材70に挿入したりマスト部材70から取り外したりした。掛止部35bをマスト部材70に挿入又は外すための係合機構部は、アクチュエータを用いた構成に限られない。例えば、ウォームギアを用いた機構等であってもよい。
また、把持装置20において、搬送対象物を把持する機構は、掛止部35bを差し込んで引っ掛けることにより把持する構成に限られない。例えば、押圧して把持する機構や柔軟性のあるワイヤ等を引っ掛けることにより把持する機構を用いてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、把持装置20は、支持部35aの下端部に設けた掛止部35bを備える。把持装置20が搬送対象物を掛止する爪部材35の構成は、これに限られず、例えば、支持部35aが伸縮可能な形状であってもよい。この場合には、支持部35aの長さを調整することにより、同じ基礎部材31,32に取り付けた掛止部35bを、マスト部材70の異なる高さに引っ掛けることができる。
【0081】
・上記実施形態では、搬送システム10は、マスト部材70を搬送した。搬送システム10が搬送する搬送対象物は、マスト部材70のような長尺物に限定されず、掛止部35bを係合できる部材であればよい。
【0082】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記移動装置は、一対の脚部と、前記一対の脚部に橋渡しされたガーダと、前記脚部を第1方向に移動させる走行装置と、前記ガーダに沿って、前記第1方向と直交する第2方向に前記揚重装置を移動させる横行装置とを備え、
前記位置センサは、前記ガーダに固定された第1位置センサと、前記揚重装置に固定された第2位置センサとを含み、
前記第1位置センサ及び前記第2位置センサは、それぞれ直交する水平軸の中心回りに走査を行なう2次元ライダであることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
(b)前記制御部は、前記把持装置を搬送先の直上まで移動させた後、前記位置センサの計測情報に基づいて前記搬送先に対する前記搬送対象物の水平方向の位置を調整し、前記把持装置を降下させて前記搬送対象物を前記搬送先に載置し、前記搬送対象物から前記掛止部を取り外すことを特徴とする請求項1又は前記(a)に記載の搬送システム。
【0083】
(c)前記クレーンは、前記把持装置の移動可能範囲内に障害物の侵入を検知する監視カメラを更に備えることを特徴とする請求項1、前記(a)又は前記(b)に記載の搬送システム。
(d)前記揚重装置及び前記把持装置の少なくとも1つに、下方を撮影するカメラを設け、前記制御部は、前記カメラからの画像を用いて、前記把持装置の下方に位置する前記搬送対象物の水平方向の位置を調整することを特徴とする請求項1、前記(a)~前記(c)の何れか1つに記載の搬送システム。
【符号の説明】
【0084】
C1,C2…検知カメラ、C5…下方監視カメラ、CL1…中心線、D1…長さ、G1…アンテナ、L11,L12,L13,L14,L16…障害物センサ、L15…車両センサ、L21,L22…第1位置センサ、L3…第2位置センサ、R1…走行レール、T1…トラック、10…搬送システム、11…橋形クレーン、12…移動装置、12a…走行装置、12b…横行装置、13a,13b…脚部、14a,14b…車輪、15…ガーダ、16…クラブトロリ、16a…揚重装置、20…把持装置、21…本体部、22…載置部材、23,24,31,32…基礎部材、25…固定部材、26,27…補強部材、28,29…連結部材、33,34…取付部材、35…爪部材、35a…支持部、35b…掛止部、41,42,46,47…アクチュエータ、41a,42a,46a,47a…ロッド、50…制御部、51…制御管理部、55…画像取得部、56…点群取得部、57…計測値取得部、58…認識部、59…判断部、60…駆動制御部、61…移動制御部、62…昇降制御部、63…掛止制御部、64…旋回制御部、70…搬送対象物としてのマスト部材、71…主材、72…補強板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8