(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057411
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】モータおよび電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166932
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸子
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA07
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC06
5H605EC01
5H605EC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイルと端子との接続作業における作業性を向上する。
【解決手段】モータは、ロータと、コイルを有したステータと、内部に上記ロータおよび上記ステータを収容したハウジングと、上記ハウジングに対して上記一方側に配置され、当該ハウジング側にケース底部を有し、上記引出部が通る第1貫通孔を当該ケース底部に有した絶縁ケースと、上記引出部に上記絶縁ケース内で接続される第1接続部と、このモータ外へと引き出されるリード線に上記絶縁ケース内で接続される第2接続部とを有し、上記ケース底部に沿って配備され、上記第1貫通孔がケース底部側に開いた開口に対して上記第1接続部が、当該開口の縁から他の縁まで亘った接続端子と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸で回転可能なロータと、
前記ロータに対向するように配置されたコア、および当該コアの一部に導線が巻き回され当該導線の一部である引出部が前記コアから、前記回転軸が延びた軸方向の一方側に引き出されたコイルを有したステータと、
内部に前記ロータおよび前記ステータを収容したハウジングと、
前記ハウジングに対して前記一方側に配置され、当該ハウジング側にケース底部を有し、前記引出部が通る第1貫通孔を当該ケース底部に有した絶縁ケースと、
前記引出部に接続される第1接続部と、このモータ外へと引き出されるリード線に接続される第2接続部とを有し、前記ケース底部に沿って前記絶縁ケース内に配備され、前記第1貫通孔がケース底部側に開いた開口に対して前記第1接続部が、当該開口の縁から他の縁まで亘った接続端子と、
を備えたモータ。
【請求項2】
前記第1接続部が、前記第2接続部から前記第1接続部へと向かう前記接続端子の長さ方向に前記開口を亘る請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1接続部が、前記第2接続部から前記第1接続部へと向かう長さ方向に交わる前記接続端子の幅方向に前記開口を亘る請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1接続部が、前記第2接続部から前記第1接続部へと向かう前記接続端子の長さ方向と、当該長さ方向に交わる前記接続端子の幅方向との双方に前記開口を亘る請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記開口が長径方向と短径方向とを有し、
前記第1接続部が前記長径方向に前記開口を亘る請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記開口が長径方向と短径方向とを有し、
前記第1接続部が前記短径方向に前記開口を亘る請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記開口が長径方向と短径方向とを有し、
前記第1接続部が前記長径方向と前記短径方向との双方に前記開口を亘る請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記開口が長径方向と短径方向とを有すると共に、当該長径方向が前記回転軸を周回する周回方向を向いた請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記第2接続部は、前記第2接続部から前記第1接続部へと向かう長さ方向に延びた形状を有し、
前記第1接続部は、前記長さ方向に交わる前記接続端子の幅方向のサイズが前記第2接続部よりも大きい請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項10】
前記コイルが前記引出部を複数本有し、前記引出部が前記第1貫通孔を複数本通り、
前記第1接続部は、複数本の前記引出部が個別に通る複数の第2貫通孔を有する請求項1から9のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項11】
前記絶縁ケースが前記ケース底部に、前記接続端子に向かって突き出した第1突出部を有し、
前記接続端子は、前記第1突出部が挿入される挿入部を有する請求項1から10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
前記挿入部は、前記第1突出部が貫通する第3貫通孔である請求項11に記載のモータ。
【請求項13】
前記絶縁ケースが前記ケース底部に、前記接続端子に沿って突き出した第2突出部を有する請求項11または12に記載のモータ。
【請求項14】
前記第2突出部は、前記接続端子に沿って延びる延伸面が前記第1突出部に対向した請求項13に記載のモータ。
【請求項15】
前記第2突出部は、前記接続端子に沿って延びる延伸面が前記第1突出部に対向しない請求項13に記載のモータ。
【請求項16】
前記第2突出部が、前記接続端子を挟んだ両側に備えられた請求項13から15のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のモータと、
前記モータによって駆動されるアクチュエート部と、
を備える電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転軸の一端側に樹脂などのケースが設けられた構造が知られる。ケースは、センサ基板や制御基板などの収容空間や、モータのコイルからリード線に至る電気的な接続経路の配設空間として用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、第1導電ピンまたは第2導電ピンが貫通する孔を備えた反負荷側端子台が配設され、反負荷側端子が反負荷側端子台に設けられた凹部に収納され、反負荷側端子が電源リード線で外部電源に接続された構造が示される。第1導電ピンおよび第2導電ピンは、反負荷側端子台の底を貫通して軸方向において反負荷側に突出する。そして、反負荷側端子台では、第1導電ピン、第2導電ピン、電源リード線、回路基板の駆動回路の電気的な結線が反負荷側端子を用いて行われる。第1導電ピンは、コイルの端部が複数回にわたって巻回されており、ハンダ付けによりコイルの端部と電気的接続がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータの組み立て工数の削減などのため、モータのコイルからリード線に至る電気接続構造の簡略化が求められる。このため、モータのコイルがリード線側の端子に対し直接にハンダ付けなどで接続される構造が考えられる。
【0006】
モータのコイルがリード線側の端子に対し直接に接続される構造の場合には、組立性の観点から、ケース内にコイルが引き込まれる箇所には、余裕を持った大きさの孔が必要となる。しかしながら、孔の上部におけるコイルと端子との接続は作業性が悪い。
そこで、本発明は、コイルと端子との接続作業における作業性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモータの一態様は、回転軸で回転可能なロータと、上記ロータに対向するように配置されたコア、および当該コアの一部に導線が巻き回され当該導線の一部である引出部が上記コアから、上記回転軸が延びた軸方向の一方側に引き出されたコイルを有したステータと、内部に上記ロータおよび上記ステータを収容したハウジングと、上記ハウジングに対して上記一方側に配置され、当該ハウジング側にケース底部を有し、上記引出部が通る第1貫通孔を当該ケース底部に有した絶縁ケースと、上記引出部に上記絶縁ケース内で接続される第1接続部と、このモータ外へと引き出されるリード線に上記絶縁ケース内で接続される第2接続部とを有し、上記ケース底部に沿って配備され、上記第1貫通孔がケース底部側に開いた開口に対して上記第1接続部が、当該開口の縁から他の縁まで亘った接続端子と、を備える。
また、本発明に係る電動アクチュエータの一態様は、上記モータと、モータによって駆動されるアクチュエート部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コイルと端子との接続作業における作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、オイルポンプの構造を概念的に示す図である。
【
図5】
図5は、金属端子とケース底開口との位置関係を示す図である。
【
図6】
図6は、導線接続部と導線の端部との接続作業における第1手順を示す図である。
【
図7】
図7は、導線接続部と導線の端部との接続作業における第2手順を示す図である。
【
図8】
図8は、導線接続部と導線の端部との接続作業における第3手順を示す図である。
【
図9】
図9は、金属端子の形状が異なる第1の変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、金属端子の形状が異なる第2の変形例である。
【
図11】
図11は、金属端子とケース底開口との配置関係などが異なる第3~第8の変形例を示す図である。
【
図12】
図12は、回り止め突起の構造が異なる第9の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示のモータおよび電動アクチュエータの実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
図1は、オイルポンプの構造を概念的に示す図である。
オイルポンプ100は、本発明の電動アクチュエータの一実施形態に相当する。
オイルポンプ100は、モータ部110と、センサ部120と、ポンプ部130とを備える。
モータ部110は、電力の供給を受けて回転駆動力を生む。
センサ部120は、モータ部110の回転を検知する。
ポンプ部130は、モータ部110によって駆動され、オイルの吸入吐出を行う。
【0011】
モータ部110とセンサ部120とを併せたものは、本発明のモータの一実施形態に相当し、ポンプ部130は、本発明にいうアクチュエート部の一例に相当する。
モータ部110は、モータハウジング111と、回転軸112と、ロータ113と、ステータ114とを備える。
【0012】
回転軸112は、モータ部110の回転駆動力を伝達する部材である。以下の説明では、方向の基準として回転軸112を用い、回転軸112に沿う方向を軸方向と称する場合がある。また、以下の説明では、図示の方向に関わらず、
図1における上方側を軸方向一方側と称し、
図1における下方側を軸方向他方側と称する場合がある。更に、以下の説明では、回転軸112の回転中心線に対して近接乖離する方向を径方向と称し、回転軸112に近い方を径方向内側と称し、回転軸112から遠い方を径方向外側と称する場合がある。更にまた、以下の説明では、回転軸112を周回する方向を周方向と称する場合がある。
【0013】
モータハウジング111は、モータ部110およびオイルポンプ100の全体を支える構造体であり、例えば板金のプレス加工によって形成される。モータハウジング111は、本発明にいうハウジングの一例に相当し、内部にロータ113およびステータ114を収容する。モータハウジング111は、一例として、軸方向に延びた筒部111aと、当該筒部111aの軸方向一方側に位置した底部111bとを有する。モータハウジング111の筒部111aの断面形状としては特に限定されない。筒部111aの断面形状は、例えば、円形や楕円形の丸形であってもよいし、正方形や長方形の角形であってもよいし、三角形や五角形などといった他の多角形であってもよい。
【0014】
ロータ113は、回転軸112に固定され、例えば永久磁石が組み込まれ、回転磁場の作用によって回転軸112と共に回転する。言い換えると、ロータ113は回転軸112で回転可能である。
【0015】
ステータ114は、ロータ113に対向するようにモータハウジング111内に配置され回転磁場を発生する。なお、本実施形態では、ステータ114がロータ113の径方向外側に配置されたインナーロータ型の構造が示されるが、本発明のモータは、ステータ114がロータ113の径方向内側に配置されたアウターロータ型の構造を有してもよい。
センサ部120は、基板ケース121とセンサ基板122を備える。
【0016】
基板ケース121は、本発明にいう絶縁ケースの一例に相当し、モータハウジング111に対し、軸方向一方側に配置される。基板ケース121は例えば樹脂製であり、モータハウジング111側にケース底部121aを有する。ケース底部121aには、モータハウジング111側から基板ケース121内部側に至る貫通孔121bが設けられる。
【0017】
基板ケース121には、ステータ114が有するコイルから引き出された導線の端部が導かれ、本実施形態では、基板ケース121が、モータ部110に対する配線の引き出しスペースとして用いられる。また、基板ケース121は、内部にセンサ基板122を収容して保持する。
【0018】
センサ基板122は一例として磁気センサを有し、例えば回転軸112の回転位置や回転速度を検出する。基板ケース121は、センサ基板122と共に、あるいはセンサ基板122に代えて、制御基板やインバータ基板を収容してもよい。なお、本発明にいう絶縁ケースは、内部に基板を収容しないケースであってもよい。
【0019】
ポンプ部130は、ポンプハウジング131と作動部132とを有する。モータハウジング111が底部111bを軸方向一方側に有するのに対し、ポンプ部130はモータハウジング111の軸方向他方側に配置される。
【0020】
ポンプハウジング131は作動部132を収容してモータハウジング111に固定される。ポンプハウジング131は回転軸112を回転自在に支持する。本実施形態では、ポンプハウジング131は例えば滑り軸受(図示せず)によって回転軸112を支持するが、ポンプハウジング131は玉軸受けや転軸受けで回転軸112を支持してもよい。また、本実施形態では、回転軸112がポンプ部130側の一端で支持されたいわゆる片支持構造が一例として採用されるが、回転軸112は、ポンプ部130側とセンサ部120側の両端で支持されてもよい。
作動部132は、回転軸112の駆動力によりポンプハウジング131内で回転することでオイルの吸入吐出を行う。
図2は、ステータの構造を示す図である。
【0021】
ステータ114は、ロータ113に対向するように配置されたコア141、および当該コア141の一部に導線が巻き回され当該導線の一部である端部143がコア141から軸方向一方側に引き出されたコイル142を有する。
【0022】
コイル142の導線が引き出された端部143は、柔軟であるため、重力に逆らった自立が困難であり、あるいは自立しても不安定である。本実施形態では一例として三相モータが採用されるので、コイル142は導線の端部143をUVWの各相に対応して合計で3組有する。導線の端部143は本発明にいう引出部の一例に相当する。本発明にいう引出部は導線の端部である必要はなく、例えば導線の途中部分がコア141から引き出されたものでもよい。
【0023】
ステータ114は、モータ部110の組立てに際し、モータハウジング111に対し、例えば軸方向他方側から挿入される。ステータ114の挿入に際して導線の端部143は挿入の前方に位置し、ステータ114の挿入に伴って導線の端部143がモータハウジング111の底部111b側へと向かう。そして、導線の端部143は、ケース底部121aの貫通孔121bを介してモータ部110側からセンサ部120側へと導かれる。
図3は、センサ部120の内部を示す図である。
【0024】
図3には、基板ケース121の軸方向一方側が開放された状態が示され、センサ部120は、基板ケース121に収容されたセンサ基板122と、基板ケース121のケース底部121aに沿って配備された金属端子123とを有し、基板ケース121は、導線の端部143が通る貫通孔121bをケース底部121aに有する。基板ケース121の貫通孔121bは、本発明にいう第1貫通孔の一例に相当する。貫通孔121bがケース底部121a側に開いた開口を以下、ケース底開口121fと称する。
【0025】
導線の端部143は各貫通孔121bを個別に通ってもよいが、本実施形態では、コイル142が導線の端部143を複数本(例えば6本)有し、導線の端部143が基板ケース121の1つの貫通孔121bを複数本(例えば2本)通る。つまり、基板ケース121内には、1つのケース底開口121fから複数(例えば2本)の導線の端部143が内部に突き出す。1つの貫通孔121bを複数本の導線の端部143が通る構造により、端部143が貫通孔121bを個別に通る構造に較べ、導線の端部143を貫通孔121bに通す作業の手間が軽減される。
基板ケース121内には、オイルポンプ100外へと引き出されるリード線124も配備される。
【0026】
金属端子123および貫通孔121bは、モータのUVW各相に対応した3組が設けられる。金属端子123は本発明にいう接続端子の一例に相当し、導線の端部143とリード線124とを相互に電気的に接続する。
図4は、金属端子123の構造を示す図である。
【0027】
金属端子123は、導線の端部143と接続される導線接続部123aとリード線124と接続されるリード線接続部123bとを有する。導線接続部123aは本発明にいう第1接続部の一例に相当し、リード線接続部123bは本発明にいう第2接続部の一例に相当する。本実施形態では、金属端子123が導線接続部123aとリード線接続部123bを各一端に有するが、本発明にいう接続端子は第1接続部および第2接続部を端部以外の部分に有してもよい。
【0028】
本実施形態の金属端子123では、導線接続部123aはハンダ付けによって導線の端部143と接続され、リード線接続部123bは圧着によってリード線124と接続される。また、導線接続部123aは、導線の複数(例えば2本)の端部143が個別に通る複数の導線貫通孔123cを有する。導線貫通孔123cは、本発明にいう第2貫通孔の一例に相当する。なお、導線接続部123aは、複数の導線貫通孔123cに替えて、導線の複数の端部143が纏めて通る1つのスリット等を有してもよい。また、導線貫通孔123cは、導線接続部123aの中央部に設けられてもよいし、一方に偏って設けられてもよい。
【0029】
リード線接続部123bは、リード線接続部123bから導線接続部123aへと向かう長さ方向に延びた形状を有し、リード線接続部123bは、長さ方向に延びた途中箇所に固定用貫通孔123dを有する。
【0030】
本実施形態では、導線接続部123aは、長さ方向に交わる金属端子123の幅方向Wのサイズがリード線接続部123bよりも大きい。なお、導線接続部123aは幅方向Wのサイズがリード線接続部123b以下でもよい。
図5は、金属端子123とケース底開口121fとの位置関係を示す図である。
【0031】
金属端子123はケース底部121aに沿って基板ケース121内に配備され、金属端子123の導線接続部123aは、ケース底開口121fに対して、当該ケース底開口121fの縁から他の縁まで亘る。
図5に示す例では、導線接続部123aがケース底開口121fを幅方向Wに亘るが、本発明にいう第1接続部が亘る方向は何れの方向でもよい。
【0032】
導線の端部143に接続される導線接続部123aがケース底開口121fを亘るので、亘る方向に関わらず、ハンダ付けなどの接続作業においてハンダごてなどが導線接続部123aに接触しても導線接続部123aのたわみや金属端子123の傾きなどが抑制されて作業性が向上する。また、金属端子123を介してリード線124と導線の端部143とが接続されるので部品数の削減も図られる。
【0033】
本実施形態では導線接続部123aが接続端子123の幅方向Wにケース底開口121fを亘る。つまり、導線接続部123aは幅方向Wに広がった形状を有し、幅方向Wについて、導線接続部123aのサイズがケース底開口121fのサイズよりも大きい。そして、導線接続部123aにおける幅方向Wの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置する。導線接続部123aの当該構造と当該配置により、特に幅方向Wにおける金属端子123の安定性が向上する。
【0034】
また、本実施形態では、導線接続部123aにおける幅方向Wのサイズがリード線接続部123bにおける幅方向Wのサイズよりも大きいため、金属端子123の安定性が更に増すと共に、接続作業時にハンダごてなどを当てるスペースが広くて作業性が向上する。なお、
図5に示す金属端子123の例では、導線接続部123aがリード線接続部123bに対し幅方向Wの両側(即ち
図5の上下両方)に突き出したいわゆるT字型の形状であるが、金属端子123は、導線接続部123aがリード線接続部123bに対し幅方向Wの片側に突き出したいわゆるL字型の形状であってもよい。
【0035】
ケース底開口121f(および基板ケース121の貫通孔121bの断面)は円形でもよいが、本実施形態では、ケース底開口121fが長径方向と短径方向とを有すると共に、当該長径方向が回転軸112を周回する周回方向Rを向く。ケース底開口121fの具体的な形状としては、楕円であってもよいし、長円であってもよい。基板ケース121に対するコイルやコアの組立誤差は周回方向Rに生じやすいため、ケース底開口121fの長径方向が周回方向Rを向くことにより、コイルやコアの組立誤差に対する余裕が得られる。
【0036】
金属端子123は、基板ケース121外で予めリード線接続部123bがリード線124に圧着され、基板ケース121内で導線接続部123aが導線の端部143とハンダ付けされる。
以下、導線接続部123aと導線の端部143との接続作業における作業手順について説明する。
【0037】
図6~
図8は、導線接続部123aと導線の端部143との接続作業手順を示す図である。
図6には、接続作業における第1手順が示され、
図7には、接続作業における第2手順が示され、
図8には、接続作業における第3手順が示される。なお、
図7および
図8では図示の便宜上、リード線124が省略されるが、実際にはリード線接続部123bにリード線124が接続済みである。
【0038】
接続作業の第1手順では、導線の端部143が貫通孔121bを介して基板ケース121内に挿入される。基板ケース121はケース底部121aに位置決め突起121cと回り止め突起121dを有する。
【0039】
接続作業の第2手順では、位置決め突起121cと回り止め突起121dの位置に合わせて金属端子123が配置される。即ち、導線接続部123aの導線貫通孔123cに導線の端部143が通され、固定用貫通孔123dに位置決め突起121cが通され、リード線接続部123bが2つの回り止め突起121dの間に挿入される。上述したように、導線の複数の端部143は導線接続部123aの複数の導線貫通孔123cに個別に通る。
【0040】
位置決め突起121cは金属端子123に向かって突き出し、金属端子123が有する固定用貫通孔123dには位置決め突起121cが挿入される。位置決め突起121cは、本発明にいう第1突出部の一例に相当する。なお、位置決め突起121cが挿入される本発明にいう挿入部としては、挿入方向に底を有した凹部が備えられてもよいが、本実施形態では、位置決め突起121cが貫通する固定用貫通孔123dが採用される。つまり、固定用貫通孔123dは、本発明にいう挿入部の一例に相当すると共に、本発明にいう第3貫通孔の一例にも相当する。位置決め突起121cによって金属端子123はケース底部121aに対して位置決めされる。
【0041】
回り止め突起121dは金属端子123に沿って突き出す。回り止め突起121dは、本発明にいう第2突出部の一例に相当する。
図6~
図8に示す例では、回り止め突起121dは、金属端子123に沿って延びる延伸面121eが位置決め突起121cに対向しない。つまり、金属端子123の回転中心となる位置決め突起121cから回り止め突起121dが離れて位置するので、延伸面121eが位置決め突起121cに対向する場合に較べて回り止めの精度が高い。さらに、
図6~
図8に示す例では、回り止め突起121dは、金属端子123を挟んだ両側に備えられるので、回り止め突起121dが片側に備えられる場合に較べて金属端子123の回り止め精度が高い。
金属端子123が回り止め突起121dによって回り止めされることにより導線接続部123aがケース底開口121f上に安定して位置する。
【0042】
接続作業の第3手順では、ハンダ150によって導線接続部123aに導線の端部143が接続される。即ち、導線の端部143は導線接続部123aに対し、電気的に接続されると共に物理的に固定される。導線の端部143が導線接続部123aの導線貫通孔123cに個別に通るので、ハンダ付けに際してハンダ150の付着位置や形状が安定する。その結果、接続の耐久性が向上すると共に電気特性のバラツキが抑制される。
【0043】
図6~
図8に示す例では、位置決め突起121cが固定用貫通孔123dを貫通するので、ハンダ付けによる接続の後、位置決め突起121cの、固定用貫通孔123dから突き出した部分が熱カシメによって変形され、金属端子123がケース底部121aに対して固定される。なお、位置決め突起121cの固定用貫通孔123dから突き出た部分の熱カシメは、導線接続部123aと導線の端部143とをハンダ付けによって接続する前でも問題ない。導線接続部123aと導線の端部143とをハンダ付けする前に、位置決め突起121cの固定用貫通孔123dから突き出た部分が熱カシメされると、金属端子123がケース底部121aから浮くことの抑制となり、導線接続部123aと導線の端部143とのハンダ付けが容易となる。
以下、上記実施形態に対する各種の変形例について説明する。
図9は、金属端子の形状が異なる第1の変形例を示す図である。
【0044】
図9に示す変形例の金属端子123_1では、導線接続部123aとリード線接続部123bの幅方向Wのサイズが同一である。導線接続部123aとリード線接続部123bとで段差がないため、金属端子123_1の製造が容易であり、歩留まりも高い。
【0045】
また、
図9に示す変形例の場合には、導線接続部123aが、金属端子123_1の長さ方向Lにケース底開口121fを亘る。つまり、導線接続部123aは長さ方向Lに延伸した形状を有し、長さ方向Lについて、導線接続部123aのサイズがケース底開口121fのサイズよりも大きい。そして、導線接続部123aにおける長さ方向Lの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置する。
図9に示す導線接続部123aの構造および配置により、特に長さ方向Lにおいて金属端子123_1の安定性が向上する。
図10は、金属端子の形状が異なる第2の変形例を示す図である。
【0046】
図10に示す変形例の金属端子123_2では、導線接続部123aのサイズが
図5の例よりも大きく、導線接続部123aは、長さ方向Lと幅方向Wとの双方にケース底開口121fを亘る。つまり、導線接続部123aは、長さ方向Lと幅方向Wとの双方に広がった形状を有し、長さ方向Lと幅方向Wとの双方について、導線接続部123aのサイズがケース底開口121fのサイズよりも大きい。そして、導線接続部123aにおける長さ方向Lの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置するとともに、導線接続部123aにおける幅方向Wの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置する。この結果、
図10に示す変形例では、長さ方向Lと幅方向Wの双方における金属端子123_2の安定性が向上する。
【0047】
図11は、金属端子とケース底開口121fとの配置関係などが異なる第3~第8の変形例を示す図である。
図11に示す何れの変形例でも、ケース底開口121fは長径方向LDと短径方向SDとを有する。
【0048】
第3の変形例の金属端子123_3は、導線接続部123aがリード線接続部123bよりも幅方向に広い。また、第3の変形例では導線接続部123aが短径方向SDにケース底開口121fを亘る。つまり、短径方向SDにおける導線接続部123aのサイズがケース底開口121fの短径よりも大きく、短径方向SDにおける導線接続部123aの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置する。
【0049】
第3の変形例では短径方向SDにおける金属端子123_3の安定性が向上し、金属端子123_3の小型化も図られる。なお、第3の変形例では、ケース底開口121fの短径方向SDが金属端子123_3の幅方向を向くので、金属端子123_3の向きを基準とすると、導線接続部123aは幅方向にケース底開口121fを亘る。
【0050】
第4の変形例の金属端子123_4は、導線接続部123aとリード線接続部123bの幅方向サイズが等しい。また、第4の変形例)でも第3の変形例と同様に、導線接続部123aが短径方向SDにケース底開口121fを亘り、短径方向SDにおける金属端子123_4の安定性が向上する。但し、第4の変形例では、ケース底開口121fの短径方向SDが金属端子123_4の長さ方向を向くので、金属端子123_4の向きを基準とすると、導線接続部123aは金属端子123_4の長さ方向にケース底開口121fを亘る。
【0051】
第5の変形例の金属端子123_5は、導線接続部123aがリード線接続部123bよりも幅方向に広い。また、第5の変形例では導線接続部123aが長径方向LDにケース底開口121fを亘る。つまり、長径方向LDにおける導線接続部123aのサイズがケース底開口121fの短径よりも大きく、長径方向LDにおける導線接続部123aの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置する。
【0052】
第5の変形例では長径方向LDにおける金属端子123_5の安定性が向上する。また、第5の変形例では、ケース底開口121fの長径方向LDが金属端子123_5の幅方向を向くので、金属端子123_5の向きを基準とすると、導線接続部123aは幅方向にケース底開口121fを亘る。
【0053】
第6の変形例の金属端子123_6は、導線接続部123aとリード線接続部123bの幅方向サイズが等しい。また、第6の変形例でも第5の変形例と同様に、導線接続部123aが長径方向LDにケース底開口121fを亘り、長径方向LDにおける金属端子123_6の安定性が向上する。但し、第6の変形例では、ケース底開口121fの長径方向LDが金属端子123_6の長さ方向を向くので、金属端子123_6の向きを基準とすると、導線接続部123aは金属端子123_6の長さ方向にケース底開口121fを亘る。
【0054】
第7の変形例の金属端子123_7は、導線接続部123aがリード線接続部123bよりも幅方向に広い。また、第7の変形例では導線接続部123aが長径方向LDと短径方向SDとの双方にケース底開口121fを亘る。つまり、導線接続部123aは、長径方向LDと短径方向SDとの双方に広がった形状を有し、長径方向LDと短径方向SDとの双方について、導線接続部123aのサイズがケース底開口121fのサイズよりも大きい。そして、長径方向LDにおける導線接続部123aの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置するとともに、短径方向SDにおける導線接続部123aの両端が、ケース底開口121fを挟んだ両側に位置する。
【0055】
第7の変形例では、長径方向LDと短径方向SDの双方における金属端子123_7の安定性が向上する。なお、第7の変形例では、ケース底開口121fの長径方向LDが金属端子123_7の幅方向を向く。
【0056】
第8の変形例の金属端子123_8は、導線接続部123aとリード線接続部123bの幅方向サイズが等しい。また、第8の変形例でも第7の変形例と同様に、導線接続部123aが長径方向LDと短径方向SDとの双方にケース底開口121fを亘る。但し、第8の変形例では、ケース底開口121fの長径方向LDが金属端子123_8の長さ方向を向く。
図12は、回り止め突起121dの構造が異なる第9の変形例を示す図である。
【0057】
第9の変形例では、回り止め突起121dが金属端子123の片側のみに設けられる。また、回り止め突起121dは、金属端子123に沿って延びる延伸面121eが位置決め突起121cに対向する。延伸面121eが位置決め突起121cに対向することで、片側のみの回り止め突起121dであっても、金属端子123の左右両方向の回転について回り止めが可能となる。従って、回り止め突起121dが金属端子123の両側に配置される構造と較べて回り止め突起121dの配置スペースが抑制される。
【0058】
なお、上記では、本発明のモータおよび電動アクチュエータにおける使用方法の一例としてオイルポンプが挙げられるが、本発明のモータおよび電動アクチュエータの使用方法は上記に限定されない。本発明のモータおよび電動アクチュエータは、パワーステアリング装置やコンプレッサなど広範囲に使用可能である。
【0059】
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
100 :オイルポンプ
110 :モータ部
111 :モータハウジング
111a :筒部
111b :底部
112 :回転軸
113 :ロータ
114 :ステータ
120 :センサ部
121 :基板ケース
121a :ケース底部
121b :貫通孔
121c :位置決め突起
121d :回り止め突起
121e :延伸面
121f :ケース底開口
122 :センサ基板
123,123_1,……,123_8 :金属端子
123a :導線接続部
123b :リード線接続部
123c :導線貫通孔
123d :固定用貫通孔
124 :リード線
130 :ポンプ部
131 :ポンプハウジング
132 :作動部
141 :コア
142 :コイル
143 :導線の端部