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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057412
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20230414BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
F04C15/00 E
F04C2/10 341D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166933
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】呉 楠
(72)【発明者】
【氏名】グエン ティ タン タム
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB03
3H041CC02
3H041CC13
3H041CC19
3H041DD01
3H041DD11
3H041DD38
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC02
3H044CC12
3H044CC18
3H044DD01
3H044DD11
3H044DD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポンプハウジングの肉厚増加を抑制しつつ流体の漏洩を防ぐことができる電動ポンプを提供する。
【解決手段】ポンプハウジングが、ポンプ作動部に対向し、駆動軸から遠ざかる径方向に、ポンプハウジングの外面まで広がった本体部と、駆動軸を取り囲んで本体部から他方側へと突出した、径方向のサイズが本体部よりも小さい突出部132bと、突出部に対して他方側に位置し、ポンプ作動部側からモータ部側への、駆動軸に沿った流体の漏洩を防ぐシール部材161を収容した収容部と、少なくとも突出部内を通り、収容部から本体部へと延びた第1流路と、少なくとも本体部内を通り、第1流路からポンプハウジングの径方向外面へと延びた第2流路と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な駆動軸を有し、当該駆動軸を回転駆動させるモータ部と、
前記モータ部に対し、前記駆動軸に沿った軸方向の一方側に位置し、前記駆動軸の駆動力によって回転することで流体を吸入側から吐出側へと送るポンプ作動部と、
前記ポンプ作動部と前記モータ部との間に位置し、前記ポンプ作動部の、少なくとも前記一方側に対する他方側を覆ったポンプハウジングと、を備え、
前記ポンプハウジングが、
前記ポンプ作動部に対向し、前記駆動軸から遠ざかる径方向に、前記ポンプハウジングの外面まで広がった本体部と、
前記駆動軸を取り囲んで前記本体部から前記他方側へと突出した、前記径方向のサイズが前記本体部よりも小さい突出部と、
前記突出部に対して前記他方側に位置し、前記ポンプ作動部側から前記モータ部側への、前記駆動軸に沿った前記流体の漏洩を防ぐシール部材を収容した収容部と、
少なくとも前記突出部内を通り、前記収容部から前記本体部へと延びた第1流路と、
少なくとも前記本体部内を通り、前記第1流路から前記ポンプハウジングの前記径方向外面へと延びた第2流路と、
を備えた電動ポンプ。
【請求項2】
前記第2流路は、前記ポンプハウジングの前記外面に開いた開口部から当該ポンプハウジング内部の最奥部まで延び、当該最奥部と当該開口部との間で前記第1流路に繋がる請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記第2流路の内径は、前記ポンプハウジングの内部側より前記外面側の方が広い請求項1または2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記第2流路は、前記径方向に沿って延びる請求項1から3のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記ポンプハウジングが、前記収容部と前記ポンプ部との間で前記駆動軸を回転自在に支持した軸支持部を備えた請求項1から4のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記第1流路は、前記収容部側よりも前記本体部側の方が前記径方向の外側に位置する請求項5に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記軸支持部が、前記駆動軸を取り巻いた環状の流体溜まりを有する請求項5または6に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記本体部が、前記ポンプ作動部に対向した箇所に、当該ポンプ作動部の回転方向に沿って延びた溝を有し、
前記第2流路は前記本体部内で前記溝を避けて通り、当該第2流路の少なくとも一部が当該溝の前記他方側に凹んだ最深部よりも浅い位置を通る請求項1から7のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
前記第2流路は、前記第1流路の延長と交差する箇所が前記最深部よりも浅い位置である請求項8に記載の電動ポンプ。
【請求項10】
前記第2流路は、前記第1流路との接続箇所が前記最深部よりも浅い位置である請求項8又は9に記載の電動ポンプ。
【請求項11】
前記第2流路が、前記駆動軸に直交した方向に沿って延びた請求項8から10のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項12】
前記本体部が、前記ポンプ作動部に対向した箇所に、当該ポンプ作動部の回転方向に沿って延びた第1溝と、当該第1溝に対して前記回転方向に分離して当該回転方向に沿って延びた第2溝と、を有し、
前記第2流路は、前記軸方向から見て前記第1溝と前記第2溝との間を通る請求項1から11のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項13】
前記第1溝は、前記回転方向の一方側が他方側よりも浅く、
前記第2溝は、前記回転方向の前記他方側が前記一方側よりも浅く、
前記第2流路は、前記軸方向から見て、前記第1溝の前記一方側と前記第2溝の前記他方側との間を通る請求項12に記載の電動ポンプ。
【請求項14】
前記第2流路の少なくとも一部は、前記軸方向の位置が、前記軸支持部における当該軸方向の範囲内に在る請求項5に記載の電動ポンプ。
【請求項15】
前記第1流路における前記第2流路との接続箇所は、前記径方向の位置が、前記シール部材における当該径方向の外縁よりも外側に在る請求項1から14のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの駆動軸(回転軸)にポンプロータが固定された電動ポンプが在る。この電動ポンプでは、吸入吐出される流体の一部が駆動軸の通る貫通孔からモータ側に漏洩することを防ぐためにシール部材が設けられる。
【0003】
例えば特許文献1には、オイルを給送するオイルポンプが示され、ポンプハウジングのモータロータ側の端面には、回転軸の軸方向に沿って円筒状に突出する円筒部が形成される。この円筒部の内周面と回転軸の外周面との間には、オイルシールが介装される。オイルシールは、円筒部の内周面と回転軸の外周面との間を封止し、これにより、ポンプ室側の空間とモータケースの内部空間とが液密に区画される。ポンプハウジングにおいて、回転軸を支持した軸支持孔と回転軸との間のクリアランスには、ポンプ室内に吸入されたオイルの一部が流れ込み、軸支持孔の潤滑油として作用する。軸支持孔のポンプロータ側の端部には切り欠き溝が形成され、切り欠き溝内にオイルが保持されるため、正圧側においても軸受クリアランス内のオイルが不足することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-062483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、切り欠き溝から軸受クリアランス内に供給されてオイルシールに達したオイルは、オイルシールの内側からポンプ側に繋がった油路でポンプ側に戻ると考えられる。
【0006】
ところで、自動車のトランスミッションなどのオイル供給先に対するオイル供給では、機械式ポンプが主ポンプとして用いられ、電動ポンプが補助ポンプとして用いられる場合がある。また、主ポンプとしての機械式ポンプは補助ポンプの電動ポンプと比べて圧力が大きいため、機械式ポンプの圧力で電動ポンプ側のオイルが逆流しないように逆止弁を油路回路上に設けることがある。
【0007】
逆止弁は、オイル供給先を含めた装置全体のレイアウト上、電動ポンプの吸入側に設けられる場合があるが、電動ポンプが停止し、機械式ポンプだけが駆動している状況では、機械式ポンプの吐出圧によって、電動ポンプの吐出口から電動ポンプ内部へ圧力がかかることになる。電動ポンプの吐出口から内部へと加わった圧力は、電動ポンプの吸入側に逆止弁があることによって行き場を失い、その圧力によってオイルがオイルシールを超えてモータ側に漏洩してしまう虞がある。
【0008】
これに対して、オイルシールの内側から電動ポンプの外側へ通す油路を設けることで、電動ポンプの吐出口から圧力が掛かった場合でもオイルの漏洩を防ぐ構成が考えられる。
【0009】
しかしながら、オイルシールの近辺から径方向に電動ポンプ外まで油路を延ばすと、ポンプハウジングの肉厚が厚くなり、ダイカスト(ダイキャスト)などによるポンプハウジングの形成時に巣やヒケが発生し易くなる。
そこで、本発明は、ポンプハウジングの肉厚増加を抑制しつつ流体の漏洩を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電動ポンプの一態様は、回転自在な駆動軸を有し、当該駆動軸を回転駆動させるモータ部と、上記モータ部に対し、上記駆動軸に沿った軸方向の一方側に位置し、上記駆動軸の駆動力によって回転することで流体を吸入側から吐出側へと送るポンプ作動部と、上記ポンプ作動部と上記モータ部との間に位置し、上記ポンプ作動部の、少なくとも上記一方側に対する他方側を覆ったポンプハウジングと、を備え、上記ポンプハウジングが、上記ポンプ作動部に対向し、上記駆動軸から遠ざかる径方向に、上記ポンプハウジングの外面まで広がった本体部と、上記駆動軸を取り囲んで上記本体部から上記他方側へと突出した、上記径方向のサイズが上記本体部よりも小さい突出部と、上記突出部に対して上記他方側に位置し、上記ポンプ作動部側から上記モータ部側への、上記駆動軸に沿った上記流体の漏洩を防ぐシール部材を収容した収容部と、少なくとも上記突出部内を通り、上記収容部から上記本体部へと延びた第1流路と、少なくとも上記本体部内を通り、上記第1流路から上記ポンプハウジングの上記径方向外面へと延びた第2流路と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動ポンプによれば、ポンプハウジングの肉厚増加を抑制しつつ流体の漏洩を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、オイルポンプの構造を示す模式図である。
図2図2は、ポンプ部とモータ部の具体的な外観を示す図である。
図3図3は、ポンプハウジングの軸方向一方側の外観を示す図である。
図4図4は、ポンプハウジングの軸方向他方側の外観を示す図である。
図5図5は、ポンプ部の動作を説明する図である。
図6図6は、ポンプハウジングの内部構造を示す断面図である。
図7図7は、油路とポートとの位置関係を立体的に示した斜視図である。
図8図8は、油路とポートを、横油路の開口部側から最奥部側に向かう方向に見た正面図である。
図9図9は、油路とポートを、軸方向にモータ部側から見た平面図である。
図10図10は、ポートの投影位置が示された、図6と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電動ポンプの実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
図1は、オイルポンプの構造を示す模式図である。
【0014】
オイルポンプ100は、本発明の電動ポンプの一実施形態に相当する。オイルポンプ100は、例えば自動車のトランスミッションなどにオイルを供給し、ギヤ切り替えなどの駆動力となる油圧を発生させる。
オイルポンプ100は、モータ部110と、センサ部120と、ポンプ部130とを備える。
モータ部110は、電力の供給を受けて回転駆動力を生む。モータ部110は、本発明にいうモータ部の一例に相当する。
センサ部120は、モータ部110の回転を検知する。
ポンプ部130は、モータ部110によって駆動され、オイルの吸入吐出を行う。
モータ部110は、モータケース111と、回転軸112と、ロータ113と、ステータ114とを備える。
モータケース111は、モータ部110およびオイルポンプ100の全体を支える構造体であり、例えば板金のプレス加工によって形成される。
【0015】
回転軸112は、モータ部110の回転駆動力を伝達する部材であり、本発明にいう駆動軸の一例に相当する。言い換えると、モータ部110は、回転自在な回転軸112を有し、回転軸112を回転駆動させる。
【0016】
以下の説明では、方向の基準として回転軸112を用い、回転軸112に沿う方向を軸方向と称する場合がある。また、以下の説明では、図示の方向に関わらず、図1における下方側を軸方向一方側と称し、図1における上方側を軸方向他方側と称する場合がある。更に、以下の説明では、回転軸112に近接乖離する方向を径方向と称し、回転軸112に近い方を径方向内側と称し、回転軸112から遠い方を径方向外側と称する場合がある。更にまた、以下の説明では、回転軸112を周回する方向を周方向と称する場合がある。
ロータ113は、回転軸112に固定され、例えば永久磁石が組み込まれ、回転磁場の作用によって回転軸112と共に回転する。
【0017】
ステータ114は、ロータ113に対向してモータケース111内に配置され回転磁場を発生する。なお、本実施形態では、ステータ114がロータ113の径方向外側に配置されたインナーロータ型の構造が示されるが、本発明のモータは、ステータ114がロータ113の径方向内側に配置されたアウターロータ型の構造を有してもよい。
センサ部120は、基板ケース121とセンサ基板122を備える。
基板ケース121は例えば樹脂によって形成される。基板ケース121には、ステータ114が有するコイルから引き出された導線が導かれる。
センサ基板122は例えば磁気センサを有し、例えば回転軸112の回転位置や回転速度を検出する。
ポンプ部130は、ポンプ作動部131と、ポンプハウジング132と、ポンプカバー133とを有する。
【0018】
ポンプ作動部131は、本発明にいうポンプ作動部の一例に相当し、回転軸112の駆動力によりポンプハウジング132内で回転することでオイルの吸入吐出を行う。言い換えると、ポンプ作動部131は、モータ部110に対し、回転軸112に沿った軸方向の一方側に位置し、回転軸112の駆動力によって回転することで流体(ここの例ではオイル)を吸入側から吐出側へと送る。
【0019】
ポンプハウジング132は、本発明にいうポンプハウジングの一例に相当し、ポンプ作動部131とモータ部110との間に位置し、ポンプ作動部131を収容してモータケース111に固定される。ポンプハウジング132は、ポンプ作動部131の、少なくとも軸方向一方側に対する軸方向他方側を覆う。本実施形態の場合は、ポンプハウジング132がポンプ作動部131の軸方向他方側を覆うとともに、ポンプ作動部131の周囲も覆う。回転軸112はポンプハウジング132を貫通してポンプ作動部131に達し、本実施形態では、回転軸112がポンプハウジング132によって回転自在に支持される。
ポンプカバー133は、ポンプ作動部131の軸方向一方側を覆う。なお、ポンプ作動部131はポンプカバー133側に収容されてもよい。
ポンプハウジング132は、本体部132aと突出部132bと環部132cとポンプ収容部132dとを有する。
【0020】
本体部132aは、ポンプハウジング132の土台となる部分であり、ポンプ作動部131に対向した中央部分からポンプハウジング132の径方向外面まで広がる。つまり、本体部132aは、ポンプ作動部131に対向し、回転軸112から遠ざかる径方向に、ポンプハウジング132の外面まで広がる。本体部132aは本発明にいう本体部の一例に相当する。
【0021】
突出部132bは、本体部132aの中央部分からモータ部110側へと突き出し、回転軸112の支持構造を軸方向に延ばす。つまり、突出部132bは、回転軸112を取り囲んで本体部132aから軸方向他方側へと突出し、径方向のサイズが本体部132aよりも小さい。突出部132bは本発明にいう突出部の一例に相当する。
【0022】
環部132cは、本体部132aの径方向外縁に沿って環状に延び、本体部132a側からモータ部110側へと突き出す。環部132cは、モータケース111の開口に嵌まり込む。
【0023】
ポンプ収容部132dは内部にポンプ作動部131を収容する。ポンプ収容部132dの内面のうち、軸方向一方側を向いた面は本体部132aの外面を兼ねている。
図2は、ポンプ部130とモータ部110の具体的な外観を示す図である。但し、図2ではポンプ部130のポンプカバー133が外された状態が示される。
上述したように、ポンプ部130のポンプハウジング132は、内部にポンプ作動部131を収容し、モータ部110のモータケース111に固定される。
【0024】
ポンプ作動部131は、回転軸112に固定されて回転軸112と共に回転するインナーロータ131aと、インナーロータ131aに噛み合って回転するアウターロータ131bとを有する。
【0025】
図3および図4は、ポンプハウジング132の詳細な外観を示す図である。図3には、ポンプハウジング132の軸方向一方側が示され、図4には、ポンプハウジング132の軸方向他方側が示される。
【0026】
ポンプハウジング132の軸方向一方側にはポンプ収容部132dが設けられ、ポンプ収容部132dには本体部132aの外面が露出してポンプ作動部131と対向する。そして、本体部132aは、ポンプ作動部131に対向した箇所(即ちポンプ収容部の内部)に、ポンプ作動部131の回転方向に沿って延びた溝(以下、この溝をポートと称する)141,142を有する。具体的には、ポンプハウジング132には弧状の2つのポート141,142が設けられる。つまり、本体部132aが、ポンプ作動部131に対向した箇所に、ポンプ作動部131の回転方向に沿って延びた第1ポート141と、第1ポート141に対して回転方向に分離して回転方向に沿って延びた第2ポート142と、を有する。
【0027】
ポンプハウジング132の中央部には、回転軸112が貫通する貫通孔148が設けられ、第2ポート142には、回転軸112へとオイルを導く導入溝149が繋がる。
【0028】
ポンプハウジング132の軸方向他方側には上述した突出部132bと環部132cが突き出す。また、突出部132bと環部132cとの間は複数のリブ144で繋がれて補強される。突出部132bと環部132cとリブ144で囲まれた内側は、軸方向一方側へと凹んだ凹部145となる。凹部145が十分に大きく形成されることでポンプハウジング132の肉厚が抑制され、ダイカスト(ダイキャスト)などによるポンプハウジング132の形成時にも巣やヒケが防がれる。
【0029】
環部132cの外周には、ポンプハウジング132とモータケース111との間をシールするOリング162が備えられ、突出部132bの軸方向他方側には、ポンプハウジング132と回転軸112との間をシールするシール部材161(図6参照)を収容するシール部材収容部143が設けられる。つまり、シール部材収容部143は、突出部132bに対して軸方向他方側に位置し、ポンプ作動部131側からモータ部110側への、回転軸112に沿った流体(オイル)の漏洩を防ぐシール部材161を収容する。
ここで、ポンプ部130の動作について説明する。
図5は、ポンプ部130の動作を説明する図である。
【0030】
ポンプ部130のポンプ作動部131は、回転軸112に固定されたインナーロータ131aと、インナーロータ131aに噛み合ったアウターロータ131bとを有する。
ポンプハウジング132に設けられた第1ポート141および第2ポート142はポンプ作動部131側に向いて開口する。
【0031】
インナーロータ131aが回転軸112とともに回転駆動されることにより、アウターロータ131bはインナーロータ131aの回転中心とは異なる位置の回転中心周りに回転する。インナーロータ131aとアウターロータ131bとで回転中心の位置が異なることにより、インナーロータ131aとアウターロータ131bとの間には、オイルが入る部屋131cが生じる。オイルの部屋131cは、ポンプロータ131の回転に伴って移動し、例えば図5に示す左回りの回転であれば、オイルの部屋131cも左回りに移動する。その結果、第1ポート141側から第2ポート142側へとオイルが送られて、オイルの吸入と吐出が実現する。ポンプ部130の吸入口と吐出口は図示を省略するが、ポンプカバー133側に設けられる。また、ポンプカバー133は、第1ポート141および第2ポート142と同様に、ポンプ作動部131の回転方向に沿って弧状に延びた2つのポートを有し、これら2つのポートのうち一方のポートが吸入口に繋がり、他方のポートは吐出口に繋がる。
【0032】
ポンプハウジング132に設けられた第1ポート141および第2ポート142は、ポンプ部130の動作にとって必須ではないが、ポンプハウジング132に第1ポート141および第2ポート142が設けられることにより、オイルの吸入と吐出における効率が向上する。
【0033】
以下の説明では、回転軸112およびポンプ作動部131が回転する方向を基準として、図5に示す左回りの方向を、回転方向一方側と称し、逆の右回りの方向を回転方向他方側と称する場合がある。
【0034】
オイルの供給先からオイルポンプ100の内部へ圧力がかかる場合、ポンプ作動部131側から回転軸112に沿ってシール部材収容部143内へとオイルが流れ込む。そこで、モータ部110側へのオイル漏れを防ぐために、ポンプハウジング132内には、シール部材収容部143内からポンプハウジング132外へとオイルを排出する油路が備えられる。
図6は、ポンプハウジング132の内部構造を示す断面図である。
【0035】
上述したように、突出部132bの軸方向他方側にシール部材収容部143が設けられ、シール部材収容部143内にはシール部材161が収容され、ポンプハウジング132と回転軸112との間をシールする。また、Oリング162は、環部132cとモータケース111との間に設けられて、ポンプハウジング132とモータケース111との間をシールする。
【0036】
ポンプハウジング132の中央部には、シール部材収容部143とポンプ作動部131との間で回転軸112を回転自在に支持した軸支持部155が設けられる。軸支持部155は、軸方向に分かれた2段の滑り軸受153を有し、2段の滑り軸受153の間には、回転軸112を取り巻いた環状のオイル溜まり154を有する。なお、本実施形態では、ポンプハウジング132の軸支持部155に滑り軸受け153が一体化された構造が採用されるが、滑り軸受け153は、軸支持部155の箇所に、ポンプハウジング132とは別部材である滑り軸受け単品が組み付けられた構造であってもよい。
【0037】
軸支持部155は、本発明にいう軸支持部の一例に相当し、オイル溜まり154は、本発明にいう流体溜まりの一例に相当する。軸支持部155は、滑り軸受153に替えて、玉軸受けや転軸受けを有してもよい。また、軸支持部155は、滑り軸受153を1段だけ有してもよい。ポンプハウジング132が軸支持部155で回転軸112を支持した構造によってオイルポンプ100の小型化が図られる。軸支持部155がオイル溜まり154を有することで、オイル溜まり154に溜まったオイルが軸支持部155と回転軸112との間の潤滑性を保つ。
【0038】
ポンプハウジング132の内部には、主に突出部132b内を通る縦油路151と、主に本体部132a内を通る横油路152とが設けられる。縦油路151は、本発明にいう第1油路の一例に相当し、横油路152は、本発明にいう第2油路の一例に相当する。縦油路151と横油路152が繋がった油路によりシール部材収容部143からポンプハウジング132の外部へとオイルが抜けるため、オイルの供給先からオイルポンプ100の内部へ圧力がかかる場合でも、モータ部110側へのオイル漏洩が防がれる。
【0039】
縦油路151は、軸方向他方側の一端がシール部材収容部143に繋がり、軸方向一方側の一端が横油路152に繋がる。言い換えると、縦油路151は、少なくとも突出部132b内を通り、シール部材収容部143から本体部132aへと延びる。
【0040】
横油路152は、径方向内側の一端に近い箇所で縦油路151に繋がり、径方向外側の一端は、ポンプハウジング132の径方向外面132eまで延びる。言い換えると、横油路152は、少なくとも本体部132a内を通り、縦油路151からポンプハウジング132の径方向外面132eへと延びる。
【0041】
縦油路151と横油路152が繋がる油路構造により、図4に示す凹部145が形成可能となり、シール部材収容部143から油路が径方向に延びた場合に較べ、ポンプハウジング132の肉厚が抑制される。また、本実施形態では横油路152が径方向に沿って延びるので、横油路152が径方向に対して傾いた場合に較べ、ポンプハウジング132の本体部132aの肉厚が抑制される。
【0042】
横油路152は、径方向内側の一端に最奥部152bを有し、径方向外側の一端に開口部152aを有する。横油路152の開口部152aは、Oリング162よりも軸方向一方側(即ちポンプ作動部131側)に位置し、モータ部110側へのオイル漏洩が防がれる。
【0043】
横油路152の最奥部152bは、別の観点で見ると、開口部152a側からポンプハウジング132の内部側へ、横油路152を辿って最も奥に入った箇所である。また、最奥部152bは、回転軸112に最も近い横油路152の部分と観念してもよい。
【0044】
横油路152は、開口部152aから最奥部152bまで延び、最奥部152bの近辺で横油路152が縦油路151に繋がる。つまり、横油路152は、ポンプハウジング132の径方向外面132eに開いた開口部152aからポンプハウジング132内部の最奥部152bまで延び、最奥部152bと開口部152aとの間で縦油路151に繋がる。横油路152が最奥部で縦油路151に繋がる場合に較べ、縦油路151に側から横油路152側へのオイルの流れが円滑化する。
【0045】
横油路152は、径方向外側に向かうにつれて広がっている。即ち、横油路152の内径(即ち、油路の中心を挟んで互いに対向した内壁面の相互間距離)は、ポンプハウジング132の内部側より径方向外面132e側の方が広い。横油路152が外側に向けて広がることにより、内部側と外面側とで内径が均等である場合に較べ、内部側から外面側へのオイルの流れが円滑化する。
【0046】
横油路152の少なくとも一部は、軸方向の位置が、軸支持部155における軸方向の範囲内に在ることが望ましく、本実施形態では横油路152の全体が、軸方向の範囲として軸支持部155の範囲内に収まっている。これにより、ポンプ部130が軸方向について小型化する。
【0047】
縦油路151は、軸方向に沿って延びるが、軸方向に対してやや傾き、横油路152側が回転軸112から離れる。即ち、縦油路151は、シール部材収容部143側よりも本体部132a側の方が径方向の外側に位置する。この結果、縦油路151が軸方向に沿って延びる場合に較べ、縦油路151と軸支持部155との距離が離れるので軸支持部155の剛性が高い。
【0048】
以下、ポンプハウジング132内における縦油路151および横油路152の配置を詳細に説明する。以下の説明では主に、油路151,152とポート141,142との相対位置関係に着目する。
【0049】
図7は、油路151,152とポート141,142との位置関係を立体的に示した斜視図である。図8は、油路151,152とポート141,142を、横油路152の開口部152a側から最奥部152b側に向かう方向に見た正面図である。図9は、油路151,152とポート141,142を、軸方向にモータ部110側から見た平面図である。図10は、ポート141,142の投影位置が示された、図6と同様の断面図である。
【0050】
図7および図8において、図の下方側が軸方向一方側であり、図の上方側が軸方向他方側である。また、図9において、図の奥側が軸方向一方側であり、図の手前側が軸方向他方側である。
【0051】
縦油路151および横油路152は、第1ポート141と第2ポート142を避けるように設けられる。第1ポート141と第2ポート142は、弧状に延びた一端側に深部141a,142aを有し、他端側に浅部141b,142bを有する。図9に示すように、第1ポート141では浅部141bが深部141aに対して回転方向の一方側R1に位置し、第2ポート142では浅部142bが深部142aに対して回転方向の他方側R2に位置する。即ち、第1ポート141は、回転方向の一方側R1が他方側R2よりも浅く、第2ポート142は、回転方向の他方側R2が一方側R1よりも浅い。
【0052】
本実施形態においては、第1ポート141および第2ポート142は、深部141a,142aで深さ(即ちポンプ作動部131側から軸方向他方側に凹んだ距離)が一定であり、深部141a,142aが、第1ポート141および第2ポート142の最深部である。図10には、第1ポート141および第2ポート142における最深部の位置Dが示され、図8の正面図からも分かるように、横油路152の少なくとも一部(本実施形態では全部)がポート141,142の軸方向他方側に凹んだ最深部よりも浅い位置を通る。横油路152がこのような位置を通ることで、ポンプハウジング132やポンプ部130が軸方向について小型化する。
【0053】
より詳細には、横油路152は、縦油路151の延長と交差する交差箇所152dが最深部よりも浅い位置であることが望ましく、あるいは、横油路152は、縦油路151との接続箇所152cが最深部よりも浅い位置であることが望ましい。これにより、横油路152の奥側で深さ(軸方向の位置)がポート141,142と重なるのでポンプハウジング132やポンプ部130における軸方向の小型化がより確実に図られる。また、本実施形態では、これらの望ましい位置関係に加えて、横油路152が、回転軸112に直交した方向に沿って延びるので、横油路152の軸方向サイズが抑制され、本体部132aにおける軸方向の肉厚増加が抑制される。
【0054】
図8および図9に示されるように、横油路152は、第1ポート141と第2ポート142との間を通る。横油路152は、特に、軸方向から見て第1ポート141と第2ポート142との間を通ることが望ましく、ポンプハウジング132やポンプ部130が軸方向について小型化する。また、図8に示されるように、横油路152は、軸方向から見て、第1ポート141の一方側R1(つまり浅部141b)と第2ポート142の他方側R2(つまり浅部142b)との間を通る。横油路152が浅部141b,142b同士の間を通ることで、横油路152とポート141,142との間の肉厚が保たれる。
【0055】
図10には、シール部材161の外径位置Rも示され、縦油路151と横油路152とは、シール部材161の外径位置Rよりも径方向外側で繋がる。即ち、横油路152における縦油路151との接続箇所152cは、径方向の位置が、シール部材161における径方向の外縁よりも外側に在る。これにより、ポンプハウジング132の肉厚増加が抑制されると共に軸支持部155の剛性向上が図られる。
【0056】
なお、ここでは、本発明の電動ポンプにおける使用方法の一例としてオイルポンプが挙げられるが、本発明の電動ポンプの使用方法は上記に限定されない。本発明の電動ポンプは、水や空気などを吸入吐出するポンプにも使用可能である。
【0057】
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
100 :オイルポンプ
110 :モータ部
111 :モータケース
112 :回転軸
113 :ロータ
114 :ステータ
120 :センサ部
121 :基板ケース
122 :センサ基板
130 :ポンプ部
131 :ポンプ作動部
131a :インナーロータ
131b :アウターロータ
131c :オイルの部屋
132 :ポンプハウジング
132a :本体部
132b :突出部
132c :環部
132d :ポンプ収容部
132e :径方向外面
133 :ポンプカバー
141 :第1ポート
142 :第2ポート
141a,142a :深部
141b,142b :浅部
143 :シール部材収容部
144 :リブ
145 :凹部
148 :貫通孔
149 :導入溝
151 :縦油路
152 :横油路
152a :開口部
152b :最奥部
153 :滑り軸受
154 :オイル溜まり
155 :軸支持部
161 :シール部材
162 :Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10