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特開2023-5743電子デバイスの製造方法、及び支持体付き電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005743
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子デバイスの製造方法、及び支持体付き電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20230111BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230111BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20230111BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G09F9/00 342
G02F1/13 101
C03C27/06
G02F1/1333 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107890
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】岡 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】南 貴博
【テーマコード(参考)】
2H088
2H190
4G061
5G435
【Fターム(参考)】
2H088FA17
2H088FA30
2H088HA01
2H088MA20
2H190JA09
2H190JB02
4G061AA13
4G061BA03
4G061CA02
4G061CB02
4G061CB07
4G061CC01
4G061CC03
4G061CD02
4G061CD12
4G061DA09
4G061DA14
5G435AA17
5G435BB05
5G435BB12
5G435CC09
5G435KK02
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】支持体付き電子デバイスから支持体を容易に剥離する。
【解決手段】第一支持体2、第一ガラスフィルム1、電子デバイス要素14、第二ガラスフィルム4及び第二支持体5をこの順に備える支持体付き電子デバイス15を準備する準備工程S1と、支持体付き電子デバイス15から第一支持体2を剥離する第一剥離工程S41と、支持体付き電子デバイス15から第二支持体5を剥離する第二剥離工程S42と、を含む。第一支持体2は、第二支持体5から食み出す食み出し部17を有する。第一剥離工程S41では、食み出し部17に外力を付与して、第一支持体2と第一ガラスフィルム1との間に剥離起点部Sを形成する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一支持体と、第一ガラスフィルムと、電子デバイス要素と、第二ガラスフィルムと、第二支持体とを、この順に備える支持体付き電子デバイスを準備する準備工程と、
前記支持体付き電子デバイスから前記第一支持体を剥離する第一剥離工程と、
前記支持体付き電子デバイスから前記第二支持体を剥離する第二剥離工程と、を含む電子デバイスの製造方法であって、
前記準備工程で準備する前記支持体付き電子デバイスにおいて、前記第一支持体は、前記第二支持体から食み出す食み出し部を有し、
前記第一剥離工程では、前記食み出し部に外力を付与して、前記第一支持体と前記第一ガラスフィルムとの間に剥離起点部を形成することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第二支持体は、その端縁部に切り欠き部を有し、
前記食み出し部は、前記切り欠き部から前記第一支持体が食み出すことにより形成されている請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第一支持体及び前記第二支持体のそれぞれが、矩形状であり、
前記切り欠き部は、前記第一支持体の少なくとも一つのコーナー部に形成され、
前記食み出し部は、前記切り欠き部から前記第二支持体の対応するコーナー部が食み出すことにより形成されている請求項2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記切り欠き部の形状は、直線状である請求項3に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第一支持体及び前記第二支持体のそれぞれが、矩形状であり、
前記食み出し部は、前記第一支持体の少なくとも一辺が前記第二支持体の対応する辺から食み出すことにより形成されている請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記食み出し部は、前記第一支持体の少なくとも交差する二辺が前記第二支持体の対応する辺から食み出すことにより形成されている請求項5に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第一支持体及び前記第二支持体が、ガラス製である請求項1~6のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
第一支持体と、電子デバイスと、第二支持体とを、この順に備える支持体付き電子デバイスであって、
前記電子デバイスは、第一ガラスフィルムと、電子デバイス要素と、第二ガラスフィルムとを、この順に備え、
前記第一支持体は、前記電子デバイスの前記第一ガラスフィルム側に配置され、
前記第二支持体は、前記電子デバイスの前記第二ガラスフィルム側に配置され、
前記第一支持体は、前記第二支持体から食み出す食み出し部を有することを特徴とする支持体付き電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの製造方法、及びその製造方法に用いられる支持体付き電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、軽量、低消費電力等の利点から液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のパネルディスプレイが普及している。例えば、液晶ディスプレイは、一対のガラスフィルムの間に液晶層などの電子デバイス要素を備えた電子デバイスであり、有機ELディスプレイは、一対のガラスフィルムの間に有機EL素子などの電子デバイス要素を備えた電子デバイスである。
【0003】
このような電子デバイスの製造工程では、ガラスフィルムの取り扱い性を向上させるために、ガラスフィルムを支持体に積層した積層体を利用する場合がある(例えば、特許文献1の段落0073を参照)。
【0004】
詳細には、電子デバイスの製造工程では、まず、第一ガラスフィルム(一対のガラスフィルムの一方)を第一支持体に積層した第一積層体と、第二ガラスフィルム(一対のガラスフィルムの他方)を第二支持体に積層した第二積層体とをそれぞれ作製する。次に、第一積層体の第一ガラスフィルム及び第二積層体の第二ガラスフィルムに対して、電子デバイス要素を形成するための各種工程(例えば、アレイ工程やカラーフィルタ工程等)を実施する。その後、第一積層体の第一ガラスフィルムと第二積層体の第二ガラスフィルムとを貼り合わせ、第一ガラスフィルムと第二ガラスフィルムとの間に電子デバイス要素を配置する。この状態では、電子デバイスの表裏両側に支持体が配置された支持体付き電子デバイスとなるため、然る後、支持体付き電子デバイスから第一支持体及び第二支持体をそれぞれ剥離する。これにより、第一ガラスフィルム、電子デバイス要素、及び第二ガラスフィルムを、この順に備える電子デバイスが製造される。
【0005】
特許文献1には、支持体付き電子デバイスから支持体を剥離する方法として、電子デバイスから食み出した支持体の端縁部に外力付与部(係止部)によって、支持体が曲がるような外力を付与し、ガラスフィルムと支持体との間に剥離起点部(隙間)を形成することが開示されている。なお、このように剥離起点部を形成した後は、剥離起点部を起点として剥離を進展させることで、ガラスフィルムと支持体とを容易に分離できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-3147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図18に示すように、従来の支持体付き電子デバイス101の場合、電子デバイス102(厳密には、第一ガラスフィルム103)から食み出した第一支持体104の端縁部の上面104aと、電子デバイス102(厳密には、第二ガラスフィルム105)から食み出した第二支持体106の端縁部の下面106aとが、隙間107を介して積層方向(上下方向)に対向する。しかしながら、この隙間107の積層方向寸法は、電子デバイス102の薄型化に伴って非常に小さいのが一般的である。
【0008】
一方、特許文献1に開示の剥離方法では、例えば、下側の第一支持体104の端縁部の上面104aに外力付与部(係止部)を押し当てて外力を付与する場合に、上側の第二支持体106の端縁部が邪魔になるという問題が生じ得る。つまり、上側の第二支持体106の端縁部が、下側の第一支持体104の端縁部を覆うように突出しているため、第一支持体104の端縁部の上面104aに外力付与部を押し当てることが非常に難しい。この問題は、上述のように、第一支持体104の端縁部と第二支持体106の端縁部の隙間107が小さくなるに連れて特に顕著になる。その結果、第一ガラスフィルム103と第一支持体104との間に剥離起点部を形成できずに、第一ガラスフィルム103から第一支持体104を容易に剥離できないという問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、支持体付き電子デバイスから支持体を容易に剥離することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、第一支持体と、第一ガラスフィルムと、電子デバイス要素と、第二ガラスフィルムと、第二支持体とを、この順に備える支持体付き電子デバイスを準備する準備工程と、支持体付き電子デバイスから第一支持体を剥離する第一剥離工程と、支持体付き電子デバイスから第二支持体を剥離する第二剥離工程と、を含む電子デバイスの製造方法であって、準備工程で準備する支持体付き電子デバイスにおいて、第一支持体は、第二支持体から食み出す食み出し部を有し、第一剥離工程では、食み出し部に外力を付与して、第一支持体と第一ガラスフィルムとの間に剥離起点部を形成することを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、電子デバイスの表裏両側に支持体が配置されている支持体付き電子デバイスの場合でも、第二支持体から食み出した第一支持体の食み出し部を利用して、第一支持体に剥離起点部を形成するための外力を簡単かつ確実に付与できる。つまり、第一支持体に外力を付与する際に、第二支持体の端縁部が邪魔にならない。その結果、第一支持体と第一ガラスフィルムとの間に剥離起点部を容易に形成できる。したがって、この剥離起点部を起点として、第一ガラスフィルムから第一支持体を容易に剥離することが可能となる。
【0012】
(2) 上記(1)の構成において、第二支持体は、その端縁部に切り欠き部を有し、食み出し部は、切り欠き部から第一支持体が食み出すことにより形成されていてもよい。
【0013】
このようにすれば、第二支持体の切り欠き部を通じて、第一支持体の食み出し部に簡単に外力を付与することができる。加えて、第一支持体及び第二支持体として、略同じサイズのものを使用することもできるため、支持体の生産や管理が容易になるという利点がある。
【0014】
(3) 上記(2)の構成において、第一支持体及び第二支持体のそれぞれが、矩形状であり、切り欠き部は、第一支持体の少なくとも一つのコーナー部に形成され、食み出し部は、切り欠き部から第二支持体の対応するコーナー部が食み出すことにより形成されていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、第一支持体のコーナー部に食み出し部が形成される。そのため、第二支持体の切り欠き部を利用して第一支持体の食み出し部に外力を付与すれば、第一支持体のコーナー部に剥離起点部を形成することができる。また、第一支持体のコーナー部であれば、剥離起点部を起点として剥離を進展させやすい。したがって、第一ガラスフィルムから第一支持体を剥離しやすくなる。
【0016】
(4) 上記(3)の構成において、切り欠き部の形状は、直線状であることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、切り欠き部の加工が容易になる。また、第一支持体のコーナー部における食み出し部の面積を大きくできるため、第一支持体のコーナー部に外力を付与しやすくなる。
【0018】
(5) 上記(1)の構成において、第一支持体及び第二支持体のそれぞれが、矩形状であり、食み出し部は、第一支持体の少なくとも一辺が第二支持体の対応する辺から食み出すことにより形成されていてもよい。
【0019】
このようにすれば、第一支持体のコーナー部が食み出し部に含まれる。そのため、上述した同様の理由により、第一ガラスフィルムから第一支持体を剥離しやすくなる。また、例えば、第一支持体のサイズを第二支持体のサイズよりも大きくするだけで、食み出し部を容易に形成できる。
【0020】
(6) 上記(5)の構成において、食み出し部は、第一支持体の少なくとも交差する二辺が第二支持体の対応する辺から食み出すことにより形成されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、第一支持体のコーナー部における食み出し部の面積を大きくできるため、第一支持体のコーナー部に外力を付与しやすくなる。
【0022】
(7) 上記(1)~(6)の構成において、第一支持体及び第二支持体が、ガラス製であることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、第一支持体と第一ガラスフィルムとの密着力が向上すると共に、第二支持体と第二ガラスフィルムとの密着力が向上する。そのため、本発明の製造方法がより有用となる。
【0024】
(8) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、第一支持体と、電子デバイスと、第二支持体とを、この順に備える支持体付き電子デバイスであって、電子デバイスは、第一ガラスフィルムと、電子デバイス要素と、第二ガラスフィルムとを、この順に備え、第一支持体は、電子デバイスの第一ガラスフィルム側に配置され、第二支持体は、電子デバイスの前記第二ガラスフィルム側に配置され、第一支持体は、第二支持体から食み出す食み出し部を有することを特徴とする。
【0025】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、支持体付き電子デバイスから支持体を容易に剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図2】(a)及び(b)は、第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の積層体形成工程を示す平面図である。
図3】(a)は図2(a)のA-A断面図、(b)は図2(b)のB-B断面図である。
図4】(a)及び(b)は、第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の処理工程を示す平面図である。
図5】第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の支持体付き電子デバイス形成工程を示す平面図である。
図6図5のC-C断面図である。
図7】剥離装置を示す平面図である。
図8】外力付与部を構成する係止部の斜視図である。
図9】第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の第一剥離工程(第一剥離起点部形成工程)を示す要部断面図である。
図10】第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の第一剥離工程(第一剥離起点部形成工程)を示す要部断面図である。
図11】第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の第一剥離工程(第一剥離起点部形成工程)を示す要部斜視図である。
図12】第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の第一剥離工程(第一剥離進展工程)を示す要部断面図である。
図13】第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法の第二剥離工程(第二剥離起点部形成工程)を示す要部断面図である。
図14】(a)及び(b)は、本発明の第二実施形態に係る積層体を示す平面図である。
図15】第二実施形態に係る支持体付き電子デバイスを示す平面図である。
図16】第三実施形態に係る支持体付き電子デバイスを示す平面図である。
図17】第四実施形態に係る支持体付き電子デバイスを示す平面図である。
図18】従来の支持体付き電子デバイスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る電子デバイスの製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0029】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る電子デバイスの製造方法を、図1図13を参照して説明する。なお、本実施形態では、電子デバイスの一例として、液晶ディスプレイ等に含まれる液晶パネルを例示する。また、製造方法の説明の中で、支持体付き電子デバイスについても説明する。
【0030】
図1に示すように、本製造方法は、積層体形成工程S1と、処理工程S2と、支持体付き電子デバイス形成工程S3と、剥離工程S4とを、この順に備える。なお、本実施形態では、積層体形成工程S1、処理工程S2及び支持体付き電子デバイス形成工程S3が、支持体付き電子デバイスを準備する準備工程に含まれる。ただし、準備工程は、支持体付き電子デバイスが準備できる限り、その構成は特に限定されない。
【0031】
(1)積層体形成工程S1
図2(a),(b)及び図3(a),(b)に示すように、積層体形成工程S1は、第一ガラスフィルム1と第一支持体2とを積層して第一積層体3を得る第一積層工程S11と、第二ガラスフィルム4と第二支持体5とを積層して第二積層体6を得る第二積層工程S12とを含む。
【0032】
ここで、以下の説明では、第一ガラスフィルム1のうち、第一支持体2側を第一主表面(図3(a)の下面)1a、第一支持体2とは反対側を第二主表面(図3(a)の上面)1bとする。また、第一支持体2のうち、第一ガラスフィルム1側を第一主表面(図3(a)の上面)2a、第一ガラスフィルム1とは反対側を第二主表面(図3(a)の下面)2bとする。同様に、以下の説明では、第二ガラスフィルム4のうち、第二支持体5側を第一主表面(図3(b)の下面)4a、第二支持体5とは反対側を第二主表面(図3(b)の上面)4bとする。また、第二支持体5のうち、第二ガラスフィルム4側を第一主表面(図3(b)の上面)5a、第二ガラスフィルム4とは反対側を第二主表面(図3(b)の下面)5bとする。
【0033】
第一及び第二ガラスフィルム1,4、並びに、第一及び第二支持体2,5は、矩形状の板状体である。本実施形態では、第一及び第二ガラスフィルム1,4は、互いに同じサイズ(縦横寸法)であり、第一及び第二支持体2,5は、互いに同じサイズ(縦横寸法)である。また、第一及び第二支持体2,5のサイズは、第一及び第二ガラスフィルム1,4のサイズよりも大きい。
【0034】
第一及び第二ガラスフィルム1,4の厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。なお、取り扱い性を考慮すると、第一及び第二ガラスフィルム1,4の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。
【0035】
第一及び第二ガラスフィルム1,4は、例えばケイ酸塩ガラス、シリカガラスなどで形成され、好ましくはホウ珪酸ガラスで形成され、より好ましくは無アルカリガラスで形成される。
【0036】
なお、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスを指し、具体的には、アルカリ成分が3000ppm以下のガラスを指す。アルカリ成分は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下である。
【0037】
第一及び第二支持体2,5の厚みは、好ましくは400μm以上、より好ましくは500μm以上である。第一及び第二支持体2,5を曲げることを考慮すると、第一及び第二支持体2,5の厚みは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは700μm以下である。
【0038】
第一及び第二支持体2,5は、本実施形態では板状ガラスであって、第一及び第二ガラスフィルム1,4と同様に、ケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス等、公知のガラスで形成される。第一及び第二ガラスフィルム1,4、並びに、第一及び第二支持体2,5は、処理工程S2等における加熱時の膨張差を抑制する観点から、同一種類のガラス(特に、無アルカリガラス)で形成することが好ましい。
【0039】
第一及び第二ガラスフィルム1,4、並びに、第一及び第二支持体2,5は、本実施形態では、オーバーフローダウンドロー法により成形される。なお、成形方法としては、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法や、フロート法などを用いることもできる。ただし、平滑な表面を得る観点からは、成形方法としてオーバーフローダウンドロー法を用いることが好ましい。
【0040】
第一積層体3において、第一支持体2と第一ガラスフィルム1とは、接着剤などの他部材を介在させることなく直接密着している。同様に、第二積層体6において、第二支持体5と第二ガラスフィルム4とは、接着剤などの他部材を介在させることなく直接密着している。
【0041】
第一ガラスフィルム1の第一主表面1aと、第一支持体2の第一主表面2aの表面粗さRaは、好ましくは2.0nm以下、より好ましくは1.0nm以下、さらに好ましくは0.2nm以下である。このようにすれば、接着剤を用いなくても、第一ガラスフィルム1と第一支持体2とを位置ずれが生じない程度に密着できる。同様の理由により、第二ガラスフィルム4の第一主表面4aと、第二支持体5の第一主表面5aのそれぞれの表面粗さRaは、好ましくは2.0nm以下、より好ましくは1.0nm以下、さらに好ましくは0.2nm以下である。ここで、表面粗さRaは、JIS R 1683:2014に準拠した算術平均粗さであり、原子間力顕微鏡により測定される(以下、同様)。
【0042】
一方、第一ガラスフィルム1の第二主表面1bと、第二ガラスフィルム4の第二主表面4bの表面粗さRaは、特に限定されるものでない。ただし、これらの主表面1b,4bは、処理工程S2において成膜等の処理を施す対象面となるため、その表面粗さRaは、好ましくは2.0nm以下、より好ましくは1.0nm以下、さらに好ましくは0.2nm以下である。
【0043】
本実施形態では、図2(a)に示すように、第一積層体3の全周縁(四辺全て)において、第一支持体2の端縁部8が第一ガラスフィルム1から食み出している。これにより、第一支持体2のコーナー部7を含む額縁状の領域が、第一ガラスフィルム1から食み出している。同様に、図2(b)に示すように、第二積層体6の全周縁において、第二支持体5の端縁部10が第二ガラスフィルム4から食み出している。これにより、第二支持体5のコーナー部9を含む額縁状の領域が、第二ガラスフィルム4から食み出している。なお、第一積層体3の四辺全てにおいて、第一ガラスフィルム1の辺と、その辺から食み出す第一支持体2の辺とは、実質的に平行である。同様に、第二積層体6の四辺全てにおいて、第二ガラスフィルム4の辺と、その辺から食み出す第二支持体5の辺とは、実質的に平行である。
【0044】
第一支持体2の端縁部8の第一ガラスフィルム1からの食み出し量と、第二支持体5の端縁部10の第二ガラスフィルム4からの食み出し量は、例えば0.5mm以上10mm以下であり、好ましくは0.5mm以上1.0mm以下である。
【0045】
図2(b)及び図3(b)に示すように、第二支持体5は、その端縁部10に切り欠き部11を有する。本実施形態では、切り欠き部11は、第二ガラスフィルム4から食み出した第二支持体5の一つのコーナー部9に形成されている。一方、図2(a)及び図3(a)に示すように、第一支持体2は、第二支持体5の切り欠き部11に対応する位置(コーナー部7)において、ガラスが切除されることなく残されている。つまり、第一支持体2の端縁部8は、第二支持体5の切り欠き部11に対応する位置において、ガラスの残存面積が第二支持体5よりも大きい。
【0046】
本実施形態では、第二支持体5の切り欠き部11は、コーナー部9で交差(直交)する第二支持体5の二辺に対して共に傾斜した直線状である。つまり、切り欠き部11により、第二支持体5の三角形状の角部が切除された状態となっている。この切り欠き部11は、品種、縦横方向及び表裏などを判別するためのオリエンテーションフラット(オリフラ)部として利用することもできる。なお、切り欠き部11の形状は、直線状に限定されるものではなく、曲線状や凹状(ノッチ状)などであってもよい。
【0047】
(2)処理工程S2
図4(a),(b)に示すように、処理工程S2は、第一積層体3の第一ガラスフィルム1の第二主表面1bに第一要素12を形成する第一処理工程S21と、第二積層体6の第二ガラスフィルム4の第二主表面4bに第二要素13を形成する第二処理工程S22とを含む。第一要素12は例えばカラーフィルタ等を含み、第二要素13は例えばTFTアレイ等を含む。また、第一要素12及び第二要素13の少なくとも一方は、液晶層あるいは液晶層を形成するための区画空間(液晶を封入するための空間)を含む。なお、図面上、第一要素12及び第二要素13は、シート状に簡略化しているが、第一要素12及び第二要素13の形状や形成範囲は特に限定されない。
【0048】
本実施形態では、第一処理工程S21及び第二処理工程S22は、加熱を伴う。この加熱に起因して、第一ガラスフィルム1と第一支持体2との間に新たな結合が形成され、第一処理工程S21の前に比べて、第一ガラスフィルム1と第一支持体2との密着力が高まる。同様の理由により、第二処理工程S22の前に比べて、第二ガラスフィルム4と第二支持体5との密着力も高まる。
【0049】
(3)支持体付き電子デバイス形成工程S3
図5及び図6に示すように、支持体付き電子デバイス形成工程S3では、第一要素12及び第二要素13が互いに対面するように、第一積層体3と第二積層体6とを積層する。この状態で、第一積層体3の第一ガラスフィルム1と第二積層体6の第二ガラスフィルム4とを接合し、第一ガラスフィルム1と第二ガラスフィルム4との間に、第一要素12と第二要素13とを含む電子デバイス要素14を配置する。
【0050】
第一ガラスフィルム1と第二ガラスフィルム4との接合部(図示省略)は、例えば、電子デバイス要素14の気密性を確保するために、電子デバイス要素14の形成範囲を取り囲むように形成される。第一ガラスフィルム1と第二ガラスフィルム4との接合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー接合により直接接合する方法や、ガラスフリットやスペーサ等の他部材を介して接合する方法などを用いることができる。
【0051】
このような支持体付電子デバイス形成工程S3により、第一支持体2、第一ガラスフィルム1、電子デバイス要素14、第二ガラスフィルム4及び第二支持体5を、この順に備える支持体付き電子デバイス15が得られる。このうち、第一ガラスフィルム1、電子デバイス要素14及び第二ガラスフィルム4が、電子デバイス16に相当する。
【0052】
支持体付き電子デバイス15において、第一支持体2の端縁部8は、第二支持体5の端縁部10から食み出す食み出し部17を有する。本実施形態では、食み出し部17は、第二支持体5の切り欠き部11から第一支持体2のコーナー部7が食み出すことにより形成されている。なお、電子デバイス16のコーナー部18(厳密には第一ガラスフィルム1及び第二ガラスフィルム4のコーナー部)は、第二支持体5の切り欠き部11から食み出していない。
【0053】
食み出し部17の切り欠き部11からの食み出し量は、例えば0.5mm以上10mm以下であり、好ましくは0.5mm以上1.0mm以下である。ここで、食み出し量は、辺方向に沿った食み出し部17の長さを意味する。
【0054】
第一支持体2と第二支持体5の隙間、換言すると、電子デバイス16の厚みは、例えば40μm以上2000μm以下であり、好ましくは300μm以上1000μm以下である。
【0055】
(4)剥離工程S4
図7図13に示すように、剥離工程S4は、支持体付き電子デバイス15から第一支持体2を剥離する第一剥離工程S41(図7図12参照)と、支持体付き電子デバイス15から第二支持体5を剥離する第二剥離工程S42(図13参照)とを含む。本実施形態では、第一剥離工程S41の後に第二剥離工程S42が行われる。なお、図11では、支持体付き電子デバイス15のうち、電子デバイス要素14、第二ガラスフィルム4及び第二支持体5の図示を省略している。
【0056】
第一剥離工程S41は、第一支持体2と第一ガラスフィルム1との間に剥離起点部Sを形成する剥離起点部形成工程(図7図11参照)と、剥離起点部Sを起点として、第一支持体2と第一ガラスフィルム1との間の剥離を進展させる剥離進展工程(図12参照)とを含む。本実施形態では、剥離装置21を用いて、第一剥離工程S41を行う場合を例示する。
【0057】
図7に示すように、剥離装置21は、支持体付き電子デバイス15を保持する保持台22と、支持体付き電子デバイス15に含まれる第一支持体2の食み出し部17に外力を付与する外力付与部23とを備える。
【0058】
保持台22は、支持体付き電子デバイス15を平坦状態で保持可能とするものである。本実施形態では、保持台22は、第一支持体2の第二主表面2bを載置する載置面24を有する。なお、載置面24は、第一支持体2の第二主表面2bを吸着する吸着機構(例えば、複数の吸着孔)を備えていてもよい。
【0059】
外力付与部23は、保持台22の一つのコーナー部25に設けられる。本実施形態では、外力付与部23は、昇降部26と、昇降部26の上面26aに設けられた係止部27とを有する。
【0060】
昇降部26は、保持台22のコーナー部25を構成するもので、載置面24の法線方向(上下方向)に沿って昇降可能である。なお、下降前の初期状態では、昇降部26の上面26aは、載置面24と面一に配置される。
【0061】
係止部27は、昇降部26の下降に伴い、載置面24上に載置された第一支持体2の食み出し部17と係止可能である。
【0062】
係止部27は、第一支持体2のコーナー部7を構成する2辺と等距離分ずつ当接するように構成されている。また、本実施形態では、図8に示すように、係止部27は、傾斜面27aを有している。この傾斜面27aは、第一支持体2を曲げた際の食み出し部17の曲率(半径)を調整するためのものである(図10参照)。つまり、傾斜面27aの傾斜角度及び昇降部26の下降量を調整することで、第一支持体2の食み出し部17の曲率(半径)の大きさを制御できる。
【0063】
図9に示すように、剥離装置21は、第二支持体5の第二主表面5bを吸着可能な複数の吸着部材28をさらに備える。各吸着部材28は、先端に設けられた蛇腹状の吸着部29を有する。
【0064】
次に、以上のように構成された剥離装置21を用いた第一剥離工程S41を説明する。
【0065】
図7に示すように、第一剥離工程S41の剥離起点部形成工程では、まず、支持体付き電子デバイス15を剥離装置21の載置面24上に載置する。この際、第一支持体2の食み出し部17(コーナー部7)は、保持台22のうち外力付与部23が設けられるコーナー部25に合わせて載置する。この状態で、図9に示すように、第一支持体2の食み出し部17は係止部27の側面と当接する。これにより、支持体付き電子デバイス15が所定位置に配置される。
【0066】
支持体付き電子デバイス15の配置後、昇降部26を下降させて、係止部27を第一支持体2の食み出し部17の第一主表面2aに押し当てる。この際、第一支持体2の食み出し部17は、第二支持体5の切り欠き部11によって、第二支持体5から食み出している。換言すれば、第二支持体5は、係止部27と接触しない位置まで内側に退避している。したがって、係止部27を第一支持体2の食み出し部17に簡単かつ確実に押し当てることができる。
【0067】
そして、図10及び図11に示すように、係止部27を押し当てた後も引き続き昇降部26を下降させることで、第一支持体2には、係止部27との接点において下向きの外力Fが付与される。これにより、第一支持体2が第一ガラスフィルム1から離反する向きに曲がる。その結果、第一ガラスフィルム1の第一主表面1aと第一支持体2の第一主表面2aとの間に、剥離起点部(隙間)Sが形成される。
【0068】
なお、図9及び図10に示すように、剥離起点部形成工程において、吸着部材28により第二支持体5の第二主表面5bを吸着してもよい。このようにすれば、食み出し部17に外力Fを付与した際に、第一ガラスフィルム1が第一支持体2と共に下方に曲がろうとするのを抑制できるため、剥離起点部Sを形成しやすくなる。なお、剥離起点部形成工程において、吸着部材28で第二支持体5の第二主表面5bを吸着しない場合、吸着部材28の吸着部29は、第二支持体5の第二主表面5bから離反していてもよい。
【0069】
図12に示すように、第一剥離工程S41の剥離進展工程では、複数の吸着部材28により、第二支持体5の第二主表面5bを吸着しながら第二支持体5を上昇させる。第二支持体5の上昇は、吸着部材28の吸着部29を収縮させたり、吸着部材28自体を上昇させたりすることにより行う。この際、第一支持体2の第一主表面2aと第一ガラスフィルム1の第一主表面1aとの間には剥離起点部Sが既に形成されているため、第二支持体5の第一主表面5aと第二ガラスフィルム4の第一主表面4aとの密着力は、第一支持体2の第一主表面2aと第一ガラスフィルム1の第一主表面1aとの密着力よりも強くなっている。そのため、吸着部材28によって第二支持体5を上昇させると、第二ガラスフィルム4は、第二支持体5に追従するように曲がる。そして、電子デバイス16に含まれる第一ガラスフィルム1と第二ガラスフィルム4とは互いに接合されているので、第一ガラスフィルム1も、第二支持体5に追従するように曲がる。その結果、第一ガラスフィルム1の第一主表面1aが第一支持体2の第一主表面2aから離反する方向に引き剥がし力Gが付与される。この引き剥がし力Gにより、剥離起点部Sを起点として、第一支持体2の第一主表面2aと第一ガラスフィルム1の第一主表面1aとの間の剥離が平面方向(例えば図中のX方向)に進展する。そして、剥離領域を全域に拡大することで、第一支持体2と第一ガラスフィルム1とを完全に分離することができる。
【0070】
なお、吸着部材28によって引き剥がし力Gを付与する際も、剥離起点部Sが再密着するのを抑制するために、外力付与部23によって食み出し部17に外力Fを付与し続けることが好ましい(図12参照)。ただし、吸着部材28によって引き剥がし力Gを付与する前に、外力付与部23によって食み出し部17による外力Fの付与を解除してもよい。また、吸着部材28によって剥離領域をある程度の領域(例えば、第一ガラスフィルム1の一辺に沿った領域)まで拡大した後は、別の手段(例えば、別の吸着部材)を用いて、剥離領域をさらに拡大するようにしてもよい。
【0071】
上記のような第一剥離工程S41を経て第一支持体2を剥離した後、第二剥離工程S42を行う。第二剥離工程S42は、第二支持体5と第二ガラスフィルム4との間に剥離起点部を形成する剥離起点部形成工程と、剥離起点部を起点として、第二支持体5と第二ガラスフィルム4との間の剥離を進展させる剥離進展工程とを含む。なお、本実施形態では、第二剥離工程S42においても、剥離装置21を用いる場合を例示する。
【0072】
図13に示すように、第二剥離工程S42の剥離起点部形成工程では、第一支持体2が剥離された支持体付き電子デバイスを上下反転させ、剥離装置21の載置面24上に載置する。つまり、載置面24には、第二支持体5の第二主表面5bを載置する。そして、この状態で、第一剥離工程S41と同様の動作を繰り返し行うことにより、第二支持体5と第二ガラスフィルム4とを完全に分離する。これにより、第一支持体2及び第二支持体5が取り外された、電子デバイス16を得ることができる。
【0073】
なお、本実施形態では、図13に示すように、第二剥離工程S42の剥離起点部形成工程及び/又は剥離進展工程において、吸着部材28の吸着部29が第一ガラスフィルム1の第一主表面1aに接触する場合を例示している。この場合、第一ガラスフィルム1の第一主表面1aに吸着部29の吸着跡が残るおそれがある。そのため、第二剥離工程S42の終了後に、電子デバイス16を洗浄する洗浄工程を行うことが好ましい。また、本実施形態では、第二剥離工程S42で切り欠き部11を有するコーナー部9に剥離起点部を形成するが、切り欠き部11を有さないコーナー部9に剥離起点部を形成してもよい。
【0074】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態では、支持体付き電子デバイス15の変形例を例示する。本実施形態では、第一積層体3と第二積層体6における相違点を説明した後、支持体付き電子デバイス15における相違点を説明する。
【0075】
図14(a)に示すように、本実施形態に係る第一積層体3では、第一支持体2が、4つのコーナー部7のそれぞれにコーナーカット部31(面取り部)を有する。一方、図14(b)に示すように、本実施形態に係る第二積層体6では、第二支持体5が、1つのコーナー部9にオリフラ部(切り欠き部)11を有し、残りの3つのコーナー部9のそれぞれにコーナーカット部32を有する。各コーナーカット部31,32及びオリフラ部11は、角部を研削加工等により除去することにより形成される。オリフラ部11では、他の角部よりも、角部の除去面積が大きくなっている。
【0076】
図15に示すように、本実施形態に係る支持体付き電子デバイス15は、上記の第一積層体3と第二積層体6とを積層して得られる。つまり、支持体付き電子デバイス15では、第二支持体5のオリフラ部11から第一支持体2の一つのコーナーカット部31を含むコーナー部7が食み出すことにより、食み出し部17が形成される。したがって、食み出し部17に外力を付与することで、剥離起点部Sを容易に形成できる。
【0077】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態では、支持体付き電子デバイス15の変形例を例示する。
【0078】
図16に示すように、本実施形態に係る支持体付き電子デバイス15では、第一支持体2の一辺の全域が、第二支持体5の対応する一辺から食み出すことにより、食み出し部17が形成されている。つまり、食み出し部17は、第二支持体5の一辺に沿った矩形状の領域となる。この場合も、食み出し部17に第一支持体2のコーナー部7が含まれる。したがって、食み出し部17に含まれる第一支持体2のコーナー部7に外力を付与することで、剥離起点部Sを容易に形成できる。
【0079】
<第四実施形態>
本発明の第四実施形態では、支持体付き電子デバイス15の変形例を例示する。
【0080】
図17に示すように、本実施形態に係る支持体付き電子デバイス15では、第一支持体2の少なくとも交差する二辺の全域が、第二支持体5の対応する辺から食み出すことにより食み出し部17が形成されている。図示例では、第一支持体2の四辺全てが、第二支持体5から食み出すことにより食み出し部17が形成されている。つまり、食み出し部17は、第二支持体5の各辺に沿った額縁状の領域となる。この場合も、食み出し部17に第一支持体2のコーナー部7が含まれる。しかも、第一支持体2のコーナー部7における食み出し部17の面積(露出面積)を大きくしやすい。したがって、第一支持体2のコーナー部7に外力を付与しやすく、剥離起点部Sをより容易に形成できる。
【0081】
以上、本発明の実施形態に係るガラス物品の製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。
【0082】
上記の実施形態では、吸着部材を用いて剥離進展工程を行う場合を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、剥離進展工程において、剥離起点部の隙間にシート状部材を挿入したり、剥離起点部の隙間にエア等の流体を吹き付けるたりすることにより、剥離を進展させてもよい。
【0083】
上記の実施形態では、剥離起点部を支持体のコーナー部に形成する場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、剥離起点部は、第一支持体の辺の中間部に形成してもよい。この場合、第一支持体に外力を付与するための食み出し部も第一支持体の辺の中間部に形成される。つまり、例えば、第二支持体の切り欠き部を用いて、第一支持体の食み出し部を形成する場合、切り欠き部も第二支持体の辺の中間部に形成される。換言すれば、本発明において、食み出し部の位置は、第一支持体のコーナー部に限定されず、第二支持体の切り欠き部の位置は、第二支持体のコーナー部に限定されない。
【0084】
上記の実施形態では、支持体付き電子デバイスの全周縁(四辺全て)で、支持体がガラスフィルムから食み出す場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、支持体付き電子デバイスの三辺ないし一辺で、支持体がガラスフィルムから食み出ていてもよい。この場合、食み出ていない側の辺では、ガラスフィルムの端面と支持体の端面とが一致していることが好ましい。
【0085】
上記の実施形態では、ガラスフィルムのガラス面と、支持体(板状ガラス)のガラス面とを直接密着させる場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されてない。例えば、支持体として、非ガラス材層が形成された基材を用い、ガラスフィルムのガラス面と、基材の非ガラス材層とを密着させてもよい。この場合、基材は、例えば、板状ガラスなどから形成され、非ガラス材層は、例えば、アクリル粘着層、シリコーン薄膜層、無機薄膜層(ITO、酸化物、金属、カーボン)などから形成される。
【0086】
上記の実施形態では、ガラスフィルム及び支持体が、共に矩形状である場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。ガラスフィルム及び/又は支持体は、円形、楕円、三角形あるいは五角形以上の多角形などであってもよい。
【0087】
上記の実施形態では、剥離工程において、第一支持体を剥離する第一剥離工程の後に、第二支持体を剥離する第二剥離工程を行う場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、支持体付き電子デバイスを縦姿勢(好ましくは鉛直姿勢)で保持した状態で、第一剥離工程と第二剥離工程とを同時に行ってもよい。この場合、例えば、第二支持体から食み出す第一支持体の食み出し部と、第一支持体から食み出す第二支持体の食み出し部とを、互いに重複しない異なる位置に形成することが好ましい。このようにすれば、剥離起点部を形成するための外力を、第一支持体と第二支持体とに同時に付与しやすくなる。
【0088】
上記の実施形態では、電子デバイスが、液晶パネル(液晶ディスプレイ)である場合を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、本発明は、有機ELディスプレイや、液晶素子又は有機EL素子からなる照明装置、車載用のレーザー走査装置、ミラーモニター装置、半導体パッケージデバイス、その他の各種電子デバイスに適用できる。すなわち、本発明における電子デバイス要素は液晶層等に限られず、有機ペーストの印刷層、偏光材料、半導体素子、その他液状物や固形物であってよい。
【符号の説明】
【0089】
1 第一ガラスフィルム
2 第一支持体
4 第二ガラスフィルム
5 第二支持体
11 切り欠き部(オリフラ部)
14 電子デバイス要素
15 支持体付き電子デバイス
16 電子デバイス
17 食み出し部
21 剥離装置
22 保持台
23 外力付与部
24 載置面
26 昇降部
27 係止部
28 吸着部材
29 吸着部
F 外力
G 引き剥がし力
S 剥離起点部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図18