(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057436
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】凝集固化補助剤、凝集固化補助剤の製造方法および凝集固化方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20230414BHJP
C02F 11/143 20190101ALI20230414BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20230414BHJP
【FI】
B01D21/01 102
C02F11/143 ZAB
C02F1/52 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166968
(22)【出願日】2021-10-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】508021255
【氏名又は名称】有限会社カワセツ
(74)【代理人】
【識別番号】100076082
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【弁理士】
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】川平 悟
(72)【発明者】
【氏名】川平 航大
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA03
4D015BB09
4D015BB13
4D015CA01
4D015CA11
4D015CA14
4D015DA05
4D015DA24
4D015DA25
4D015DA30
4D015DA36
4D015DC04
4D015EA14
4D015EA16
4D059AA01
4D059AA03
4D059BE01
4D059BE25
4D059BE55
4D059BE60
4D059BE62
4D059DA01
4D059DA03
4D059DA05
4D059DA17
4D059DA64
4D059EB05
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】廃液および/または汚泥に凝集固化剤が添加された際に生成される固化物(凝集物、脱水ケーキ)の含水率を一層低減して脱水性を高め、固化物に係る廃棄物を減容化するとともに、その廃棄物をたとえば堆肥原料などに利用した場合でも環境負荷を低減化することができる凝集固化補助剤、凝集固化補助剤の製造方法および凝集固化方法を提供する。
【解決手段】本発明の凝集固化補助剤は、バガス焼却灰を主剤(主成分)として処方製剤化される粉状無機系凝集固化補助剤である。また、本実施形態の凝集固化補助剤には、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合される。また、本発明の凝集固化補助剤は、廃液および/または汚泥に添加される前にその廃液および/または汚泥に混合添加されて使用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バガス焼却灰を主剤とし、
前記バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合され、
前記バガス焼却灰の含有量が65質量%以上に設定され、
廃液および/または汚泥に添加された状態で前記廃液および/または前記汚泥のpHが6から8の範囲になるように前記主剤と前記副剤との配合割合が調整されており、
凝集固化剤が前記廃液および/または前記汚泥に添加される前に前記廃液および/または前記汚泥に添加され使用される、
凝集固化補助剤。
【請求項2】
前記無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である、
請求項1に記載の凝集固化補助剤。
【請求項3】
有機粘結剤および水酸化カルシウムから選択される少なくとも1つ以上の材料がさらに混合される、
請求項1または2に記載の凝集固化補助剤。
【請求項4】
前記バガス焼却灰の含有量は95質量%以上に設定される、
請求項1~3のいずれか1つに記載の凝集固化補助剤。
【請求項5】
サトウキビの搾汁粕を焼却してバガス焼却灰を得る第1工程と、
前記第1工程で得られた前記バガス焼却灰を主剤として、前記バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤を副剤として混合する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、混合する際、前記バガス焼却灰の含有量を65質量%以上になるように設定するとともに、廃液および/または汚泥に添加された状態で前記廃液および/または前記汚泥のpHが6から8の範囲になるように前記主剤と前記副剤との配合割合を調整する、
凝集固化補助剤の製造方法。
【請求項6】
前記無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である、
請求項5に記載の凝集固化補助剤の製造方法。
【請求項7】
バガス焼却灰を主剤とし、前記バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合され、前記バガス焼却灰の含有量が65質量%以上に設定され、廃液および/または汚泥に添加された状態で前記廃液および/または前記汚泥のpHが6から8の範囲になるように前記主剤と前記副剤との配合割合が調整される凝集固化補助剤を用意する工程と、
当該凝集固化補助剤を、凝集固化剤が前記廃液および/または前記汚泥に添加される前に前記廃液および/または前記汚泥に添加する工程と、を含む、
凝集固化方法。
【請求項8】
前記無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である、
請求項7に記載の凝集固化方法。
【請求項9】
前記廃液および/または前記汚泥の100重量部に対し、前記凝集固化補助剤を5重量部以下で添加する、
請求項7または8に記載の凝集固化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液および/または汚泥に凝集固化剤が添加される前にこの廃液および/または汚泥に添加することにより廃液および/または汚泥の脱水性を高めることが可能な凝集固化補助剤、凝集固化補助剤の製造方法および凝集固化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼および港湾などでは、陸域からの生活系、畜産系、工業系および食品系から事前の処理能力を超えた汚水または汚泥が排出された場合、環境汚染に繋がる可能性がある。その環境汚染を未然に防止するため、たとえば畜産系、工業系および食品系などの工場設備などでは汚水または汚泥を排出する前に、その排出物に対し高分子系などの凝集固化剤(無機系凝集剤)を添加混合処理し、その処理により上澄み液およびリンデン性凝集物(固化物)に分離させる。この分離により上澄み液を環境基準値以下にして排出するとともに、固化物を分離回収してさらに脱水処理することで、汚水(すなわち廃液)または汚泥の浄化と減容化を実現する。
【0003】
つまり、従来の工場設備などでの廃液および汚泥に対する脱水処理では、凝集固化剤を廃液または汚泥に添加しその汚泥などを凝集させた上で、脱水機によって固化物は脱水ケーキとして脱水され、上澄み液はその脱離液として処理(排出)されることになる。
【0004】
従来の凝集固化剤としては、製紙スラッジ焼却灰および/または有機系焼却灰を主原料とし、この主原料に対し凝集固化補助剤としてのクリンカアッシュおよび無水石膏と、凝集剤としての無機系凝集剤、カチオン性高分子凝集剤粉末およびアニオン性高分子凝集剤粉末と、が配合される粉状組成物からなるものが知られる(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
また、その他の凝集固化剤としては、草木灰に、炭酸カルシウム、無機系凝集剤(軽焼ドロマイト、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、ポリシリカ鉄)、有機粘結剤(アルギン酸、多糖類、高分子凝集剤)および吸水性硬化剤(硫酸カルシウム)から選択される機能性材料を1以上添加し処方製剤化した粉状無機系凝集固化剤も知られる(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-106088号公報
【特許文献2】特開2017-213528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、
図13を参照して、従来の凝集固化方法について説明する。
図13は、従来の凝集固化方法を例示する模式工程図である。
【0008】
図13に示すように、工場の廃液または汚泥(WW)を所定の貯水槽(T)に移送して、この汚泥(WW)などがその貯水槽(T)に貯水された状態で、高分子系などの凝集固化剤(PA)が添加される。添加とともにあるいは添加後、貯水槽(T)の汚泥(WW)などは貯水槽(T)に配設される攪拌機(1)によって攪拌されながらその凝集固化剤(PA)によって凝集される。そして、その凝集によって凝集物(AG)(以下「固化物」ともいう。)が発生し、脱水機(2)によってその固化物(AG)は脱水ケーキ(DC)として脱水され、上澄み液(SL)はその脱離液として処理(排出)される。このとき、脱水ケーキ(DC)は産業廃棄物として処理されるが、その凝集固化対象が汚泥の場合、その脱水ケーキ(DC)における含水率はたとえば85%~87%程度である。
【0009】
しかしながら、上澄み液はそのまま自然環境に放出すればよいが、その一方、固化物は産業廃棄物として適切な処理を要する。近年、その固化物の量が増大しておりその脱水ケーキとしての固化物の廃棄処理が問題となっており、特に脱水ケーキの減容化の実現が強く要求されている。しかしながら、通常の凝集固化剤だけでは固化物の含水率を低減することは困難である。たとえば、凝集固化剤だけを使用して排出された脱水ケーキは汚泥の場合、含水率は85%~87%で廃棄処理されており、その含水率のさらなる低減化が求められている。この点、前記特許文献1および2は改善の余地があったといえる。
【0010】
本発明者らは、凝集固化剤による汚泥の固化物(凝集物、脱水ケーキ)の含水率改善(含水率の低減化)を目的として多角的に探索および研究をした結果、通常の凝集固化剤を補助するための補助剤(すなわち凝集固化補助剤)に着目した。その結果、本発明者らは通常(従来使用)の凝集固化剤だけよりも廃液および/または汚泥をさらに脱水し含水率を低減することが可能な凝集固化補助剤、その製造方法、およびそれを用いた凝集固化方法の構成を見いだして本発明を完成させた。
【0011】
つまり、本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであり、廃液および/または汚泥に凝集固化剤が添加された際に生成される固化物(凝集物、脱水ケーキ)の含水率を一層低減して脱水性を高め、固化物に係る廃棄物を減容化するとともに、その廃棄物をたとえば堆肥原料などに利用した場合でも環境負荷を低減化することができる凝集固化補助剤、凝集固化補助剤の製造方法および凝集固化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前述した目的は、後記の構成により達成される。
(1)バガス焼却灰を主剤とし、前記バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合され、前記バガス焼却灰の含有量が65質量%以上に設定され、廃液および/または汚泥に添加された状態で前記廃液および/または前記汚泥のpHが6から8の範囲になるように前記主剤と前記副剤との配合割合が調整されており、凝集固化剤が前記廃液および/または前記汚泥に添加される前に前記廃液および/または前記汚泥に添加され使用される、凝集固化補助剤。
(2)前記無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である、(1)に記載の凝集固化補助剤。
(3)有機粘結剤および水酸化カルシウムから選択される少なくとも1つ以上の材料がさらに混合される、(1)または(2)に記載の凝集固化補助剤。
(4)前記バガス焼却灰の含有量は95質量%以上に設定される、(1)~(3)のいずれか1つに記載の凝集固化補助剤。
(5)サトウキビの搾汁粕を焼却してバガス焼却灰を得る第1工程と、前記第1工程で得られた前記バガス焼却灰を主剤として、前記バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤を副剤として混合する第2工程と、を含み、前記第2工程では、混合する際、前記バガス焼却灰の含有量を65質量%以上になるように設定するとともに、廃液および/または汚泥に添加された状態で前記廃液および/または前記汚泥のpHが6から8の範囲になるように前記主剤と前記副剤との配合割合を調整する、凝集固化補助剤の製造方法。
(6)前記無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である、(5)に記載の凝集固化補助剤の製造方法。
(7)バガス焼却灰を主剤とし、前記バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合され、前記バガス焼却灰の含有量が65質量%以上に設定され、廃液および/または汚泥に添加された状態で前記廃液および/または前記汚泥のpHが6から8の範囲になるように前記主剤と前記副剤との配合割合が調整される凝集固化補助剤を用意する工程と、当該凝集固化補助剤を、凝集固化剤が前記廃液および/または前記汚泥に添加される前に前記廃液および/または前記汚泥に添加する工程と、を含む、凝集固化方法。
(8)前記無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である、(7)に記載の凝集固化方法。
(9)前記廃液および/または前記汚泥の100重量部に対し、前記凝集固化補助剤を5重量部以下で添加する、(7)または(8)に記載の凝集固化方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、たとえば工業系加工工場、食品系加工工場の廃液の凝集脱水処理、または下水処理場における汚泥脱水の際の脱水助剤として使用する。これにより、その廃液および/または汚泥に凝集固化剤が添加された際に生成される、固化物(凝集物)の含水率を一層低減することができる。その結果、廃液および/または汚泥に係る固化物の脱水性を高め、固化物に係る廃棄物を減容化することができる(たとえば汚泥の場合、含水率を50%~70%の範囲で調整することができる)。さらに、廃棄物としてその固形物をたとえば堆肥原料などに利用した場合でも環境負荷を低減化することができ、廃棄処分量およびその処分コストを削減することができる。
【0014】
また、本発明はバガス焼却灰を主剤(主成分)とする無機系の製剤である。これにより、その上澄み液(脱離液)の水質は環境基準値以下となり、環境汚染に影響なく自然環境に排出することができる。さらに、凝集固化補助剤をたとえば牛舎の牛糞尿に混合することで堆肥の原料として利用することができる。廃液および/または汚泥などに添加して使用する場合、その凝集固化の過程で生成される上澄み液は排出され、またその固化物は土木資材または農地などとして還元して再利用可能である。このようにして安全性の高い無機系の凝集固化補助剤により廃液および/または汚泥の処理に関して自然環境への負荷を低減することができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)またはその例(以下「実施例」ともいう。)を通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る凝集固化方法を例示する模式工程図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る凝集固化補助剤を汚泥に添加した場合において固化物の含水率を測定した結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の凝集固化補助剤を汚泥に添加する実際の様子を例示する写真である。
【
図4】
図4は、脱水工程において固化物が脱水されてその結果脱水ケーキとして排出される実際の様子を例示する写真である。
【
図5】
図5は、固化物の排出の結果、得られる脱水ケーキの実際の様子を例示する写真である。
【
図6】
図6は、汚泥が赤土濁水である場合、その汚泥に本発明に係る凝集固化補助剤を添加する実際の様子を例示する写真である。
【
図7】
図7は、
図6に示す添加後、30秒間攪拌させた実際の様子を例示する写真である。
【
図8】
図8は、
図7に示す攪拌後、汚泥が上澄み液と固化物に分離している実際の様子を例示する写真である。
【
図9】
図9は、
図8に示す攪拌後、汚泥が上澄み液と固化物とに完全に分離した、実際の様子を例示する写真である。
【
図10】
図10は、
図9に示す分離後、その固化物を容器の外部に取り出した、実際の様子を示す写真である。
【
図11】
図11は、汚泥が牛糞尿である場合、その汚泥に本発明に係る凝集固化補助剤を添加して分離させた実際の様子を例示する写真である。左側容器は牛糞尿原液(固形分濃度8.75%)であり、右側容器は添加撹拌後の糞尿固化状況である。
【
図12】
図12は、
図11の分離の結果得られた上澄み液と固化物の実際の様子を例示する写真である。左側容器は牛糞尿原液であり、中間容器は処理後のろ液であり、右側皿は取り出された固化物である。
【
図13】
図13は、従来の凝集固化方法を例示する模式工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る凝集固化補助剤、凝集固化補助剤の製造方法および凝集固化方法に関する実施形態について、以下に説明する。
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、すでによく知られた事項の詳細説明または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0018】
また、凝集固化剤および本発明に係る凝集固化補助剤によって生成される凝集物を「固化物」または「脱水ケーキ」とも呼び、これら用語は互いに同義または類似の関係とされる。
【0019】
[・本実施形態に係る凝集固化補助剤の構成について]
本実施形態に係る凝集固化補助剤の構成について説明する。
【0020】
本実施形態の凝集固化補助剤は、バガス焼却灰を主剤(主成分)として処方製剤化される粉状無機系凝集固化補助剤である。また、本実施形態の凝集固化補助剤には、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合される。具体的には、その副剤としては、多孔性珊瑚カルシウム(炭酸カルシウムの一例)、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、ソーダ灰などから選択される無機系凝集剤(pH調整剤)であり、さらにその無機系凝集剤の他、高分子凝集剤などの有機粘結剤(たとえばアルギン酸、多糖類、高分子凝集剤からなる粘結剤など)および消石灰(水酸化カルシウムの一例)などが混合されてもよい。本実施形態の凝集固化補助剤は、後述するように廃液および/または汚泥に添加される前に、その廃液および/または汚泥に混合添加されて使用される。
【0021】
前述の副剤は、前述のそれぞれの材料から選択される機能性材料の1つ以上を処方配合調剤化されればよく種々の材料を採用することが可能であるが、前述の主剤であるバガス焼却灰に対し添加混合されることでpHを中性(6~8の範囲)に調整するものである(後述参照)。すなわち、本実施形態の凝集固化補助剤は、その製造または使用の際、廃液および/または汚泥に添加された状態でその廃液および/または汚泥のpHが6から8の範囲になるように主剤と副剤との配合割合が調整される。
【0022】
そして、主剤(主成分)であるバガス焼却灰は、サトウキビの圧搾粕が焼却されて得られるものである。自然環境に対する負荷の点で環境安全性が確保される。たとえば工場などでの廃液、汚泥または濁水に対しこのバガス焼却灰を主剤とする凝集固化補助剤によって分離された上澄み液(脱離液)の水質は環境基準値以下である。そのため、その脱離液は自然環境を汚染することなく排出することが可能である。
【0023】
また、サトウキビの圧搾粕が焼却される際、そのサトウキビに含有されるセルロース成分が燃えて、その結果、多孔質状の灰となる。この灰がバガス焼却灰である。つまり、本実施形態の凝集固化補助剤は、多孔性構造を有しており、この多孔性構造に悪臭物質、有害物質(重金属物質も含む)または水中の色素分を取り込む(捕捉する)。そのため、有害物質の溶出を防止し、また廃液または汚泥などでの排出水の清澄度を高くすることが可能である。
【0024】
たとえば工場の廃液、汚泥または濁水に含有されるCOD(化学的酸素要求量)、BOD(生物化学的酸素要求量)または有害性重金属類などの有害物質は、前述した多孔性構造および後述する凝集性能によって凝集物に取り込まれ、上澄み液と分離される。上澄み液は環境基準値以下で河川などに排出することが可能であり、回収した凝集物は水切り後に団粒状に成型して強度を高め、またその凝集物は雨水などにより再泥化しない。くわえて、有害物質の溶出がなく脱水または水切りの際に発生する滲出(しんしゅつ)水にも有害物質は含まれない。
【0025】
そのバガス焼却灰の化学成分を表1に示す。
【0026】
【0027】
表1に示すようにバガス焼却灰には、活性アルカリ成分のカルシウム、活性二酸化ケイ素、および処方配合成分の無機系凝集剤アルミニウムが含有される。これら含有物は工場などの廃液、または汚泥、濁水の中で水和反応により針状結晶物となり、その結果、その汚泥などに含まれる懸濁物質または浮遊物質を捕捉して、固化物(凝集物)とする。このように、本実施形態の凝集固化補助剤は凝集性能を有しており、固化物の状態で従来の高分子系などの無機系凝集固化剤を添加混合することにより、さらに大きな固化物に成長させて、その汚泥物上澄み液と固化物とに分離する。
【0028】
また、凝集固化剤が添加される前に凝集固化補助剤が添加されて使用される際、そのときの凝集物の内部の針状結晶物、およびバガス焼却灰中の二酸化ケイ素とカルシウムによる複合網目状構造体によって凝集物(固化物)の強度が実現される。そのため、前述のように凝集固化剤によって成長された凝集物を脱水機(
図1参照)にかけた場合、大きな圧力がかかりその脱水効率を高めることが可能である。それにより、最終的な凝集物の含水率を大幅に改善することが可能である。
【0029】
なお、従来の高分子凝集剤のみの使用では、凝集物の強度が不足して脱水時の圧力を十分にかけることができず、たとえば汚泥の場合、その排出される、脱水ケーキとしての凝集物の含水率は85%~87%程度であり依然として高い数値を示したままである。この含水率は、本実施形態の凝集固化補助剤と併用した場合と比べて非常に高く望ましい数値ではない。
【0030】
つまり、本実施形態の凝集固化補助剤は無機系凝集固化補助剤に相当し、環境安全が確保され、かつ無機系の凝集性能、固化性能および脱水助剤性能を有する成分が処方製剤化されて製造される。たとえば、本実施形態の凝集固化補助剤を牛糞尿に添加混合して使用する際、バガス焼却灰が主成分であるため、分離回収された牛糞尿の凝集物は有害物質などを含んでおらず環境安全性を有しており、堆肥の原料として利用することが可能である。
【0031】
このように、本発明では、本発明者らはバガス焼却灰を産業廃棄物ではなく有用な未利用資源として捉えており、本発明に係る凝集固化補助剤の主剤として使用・処方される。
【0032】
ところで、本実施形態の凝集固化補助剤の主剤であるバガス焼却灰はアルカリ性が高く、製剤化する際にはpHを中性に調整する必要がある。pHが高い場合、工場廃液、汚泥または濁水に混合添加された際には、凝集物が細かくなり脱水工程または回収工程での作用効率が煩雑となり、さらに上澄み液もpHが高い状態で排出されることになり環境安全性を損なう可能性がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、pH調整剤として少なくとも硫酸アルミニウム(無機系凝集剤)が混合される。その混合比(配合割合)はたとえば汚泥などへの添加量に対してpH7程度の中和となるように決定される(後述参照)。
なお、本実施形態では、pHが中性であるとはpHが7を中心として6から8である範囲にあることを意味する。また、pH調整剤としての無機系凝集剤として、炭酸カルシウム(珊瑚カルシウム)および炭酸ナトリウム(ソーダ灰)のうち少なくとも1つをさらに選択して添加混合してもよい。
【0034】
たとえば、本実施形態の凝集固化補助剤を濁水に使用した場合、添加混合し分離回収した凝集物は固化強度が発現した団粒状固化物になり雨水による再泥化もなく、またその滲出水は透明で有害物質を含有せず、pHは中性である。そして、その固化物は適度な保水性および透水性を有するため、植生が良好であり既存土壌との混合性が良好である。さらに、バガス焼却灰に微量含有されるカリウムは植物の成長を促進し、路床材または埋め戻し材料などの土木資材としても利用可能である。
【0035】
また、pH調整剤としての無機系凝集剤は、炭酸カルシウムの他、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムも含め、これら材料のうち少なくとも1つ以上をくわえて製剤化することが可能である。
【0036】
本実施形態の凝集固化補助剤は、廃液または汚泥などの有機物の吸着・吸水量を増加させる多孔性補助剤として、珪藻土、ベントナイト、活性炭、多孔性シリカなどをさらに添加混合してもよい。また、保水性、通気性の向上には、砂、腐葉土、鹿沼土、赤玉土、バーミキュライト、パーライトなども添加混合してもよい。
【0037】
また、本実施形態の凝集固化補助剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、有機粘結性バインダー(粘結剤、有機粘結剤)のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロールなどのセルロース誘導体、またはリン酸化デンプンなどのデンプン誘導体、または寒天、カラギーナン、アルギン酸ソーダなどの海藻類、またはニカワ、カゼイン、ゼラチンなどの動物性タンパク、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの合成高分子なども添加混合してもよい。また、有機粘結剤の組成は、その他の、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、アルギンソーダ、多糖類なども適宜使用することも可能である。さらに、必要に応じて公知の消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤などもさらに添加混合してもよい。
【0038】
[・配合の処方例について]
本実施形態の凝集固化補助剤の配合割合に係る処方例について説明する。
【0039】
前述のように、本実施形態の凝集固化補助剤は、主剤(主成分)をサトウキビの搾り滓(かす)であるバガスの焼却灰とし、副剤を配合して製剤化されたものである。副剤は、pH調整剤としての無機系凝集剤(炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料)、炭酸カルシウム(たとえば珊瑚カルシウム)、さらには高分子凝集剤などの粘結材、水酸化ナトリウム(たとえば消石灰)などが配合されたものとされる。
【0040】
本実施形態では副剤の配合量は主剤のバガス焼却灰と比べ少量とされ、バガス焼却灰100重量部に対して0.5~35重量部程度であり前述の材料のうち1つ以上が混合されて処方製剤化(製造)される。換言すれば、本実施形態ではバガス焼却灰の含有量は65質量%以上に設定されており、特に脱水助剤機能を強化する場合にはより好適には95質量%以上に設定されることになる(後述参照)。
【0041】
つまり、本実施形態の凝集固化補助剤の製造工程において、バガス焼却灰を主剤としてpH調整剤としての無機系凝集剤を副剤として混合する際、ガス焼却灰の含有量は65質量%以上(脱水助剤機能を強化する場合には95質量%以上)になるように設定され、かつ廃液などに添加された状態でその廃液のpHが中和の範囲となるように主剤と副剤との配合割合が調整されることになる。
【0042】
また、pHの調整だけではなく、本実施形態の凝集固化補助剤の用途に合わせて主剤と副剤との配合割合を適宜変更し処方製剤することで、その用途のそれぞれで最適な効果を実現することが可能となる。
【0043】
次にその用途のそれぞれに対応した配合割合に係る具体的な処方例について、表2を参照して説明する。表2には、複数の処方例(第1~第3の処方例)が例示される。
なお、処方例はこれら第1~第3の処方例に限定されず、用途のそれぞれに対応して所定の規定の範囲内(たとえばpHの調整など)で任意に選択することが可能となる。
【0044】
【0045】
表2に示すように、第1の処方例では、凝集固化補助剤はバガス焼却灰が95~99.5重量部であり、かつ硫酸アルミニウムが0.5~5重量部で混合して製剤化される。この配合割合により、凝集固化補助剤はその脱水助剤機能が強化される。
【0046】
第2の処方例では、凝集固化補助剤はバガス焼却灰が70~85重量部であり、かつ硫酸アルミニウムが0.5~5重量部、ソーダ灰が3~7重量部、有機粘結剤2~6.5重量部で混合して製剤化される。この配合割合により、凝集固化補助剤はその凝集機能が強化される。
【0047】
第3の処方例では、バガス焼却灰が65~80重量部であり、かつ硫酸アルミニウムが0.5~5重量部、有機粘結剤が2~7重量部、消石灰9~14重量部で混合されて製剤化される。この配合により、凝集固化補助剤はその牛糞尿固化機能が強化される(後述参照)。
【0048】
[・本実施形態の凝集固化補助剤の使用方法について]
図1を参照して、本実施形態の凝集固化補助剤の使用方法について説明する。
図1は、本実施形態の凝集固化方法を例示する模式工程図である。
【0049】
図1に示すように、工場または下水処理場などの設備からの廃液または汚泥(WW)を所定の貯水槽(T)に移送して、この汚泥(WW)などがその貯水槽(T)に貯水される。その貯水された状態で、高分子系などの凝集固化剤(PA)を添加する前に本実施形態の凝集固化補助剤(AA)を添加する。この添加とともにあるいは添加後、貯水槽(T)の汚泥(WW)を、貯水槽(T)に配設される攪拌機(1)により攪拌する。
【0050】
ここで、前述のように、バガス焼却灰には、活性アルカリ成分のカルシウム、活性二酸化ケイ素、および処方配合成分の無機系凝集剤アルミニウムが含有される。これら含有物は工場などの廃液、または汚泥、濁水(WW)の中で水和反応により針状結晶物となり、その結果、その汚泥(WW)などに含まれる懸濁物質または浮遊物質を捕捉して、固化物(凝集物、AG)とする。
【0051】
そして、さらに別の貯水槽(T)に移送するかあるいは同一の貯水槽(T)で前述の凝集固化剤(PA)を添加混合する。この添加とともにあるいは添加後、貯水槽(T)の廃液または汚泥(WW)を攪拌してさらに大きな固化物(AG)に成長させ、その汚泥物(WW)を上澄み液(SL)と固化物(AG)とに分離する。
【0052】
このようにして、本実施形態の凝集固化補助剤(AA)、および従来の高分子系などの凝集固化剤(PA)によって廃液または汚泥(WW)は効果的に凝集される。そして、その凝集物(固化物、AG))は脱水機(2)によって脱水ケーキ(DC)として脱水され、上澄み液(SL)はその脱離液として処理(排出)される。
【0053】
このとき、本実施形態によれば、その凝集固化対象が汚泥の場合、その脱水ケーキ(DC)の含水率は50%~70%程度であり従来の凝集固化剤(PA)のみの場合と比べて水分がより多く抜けられており減容化が実現される。
【0054】
[・・工場系廃水処理での使用例について]
本実施形態の凝集固化補助剤に係る工場系または食品系での使用例について説明する。
【0055】
工業系または食品系の加工工場のそれぞれでは、その加工の際に排出される廃液をそのまま放流することは法律的に許可されない(厳格に規制されている)。そのため、工場のそれぞれで適切に処理し産業廃棄物として廃棄する必要がある。
【0056】
たとえば、従来、工場の廃液に凝集剤を添加混合し、その凝集物に対し脱水機を使用して脱水ケーキとして排出し産業廃棄物として処分する。このとき、現状では脱水ケーキの含水率が高く水分を多く含んでいるため、廃棄処分量は多くなりその分処分コストも高くなっていた。
【0057】
そこで、本実施形態の凝集固化補助剤を廃液に添加混合し、従来の凝集固化剤で凝集処理後に脱水機で脱水することで前述のように脱水ケーキの含水率を抑制することができ、水分が少ない分、産業廃棄物の減容化を実現することが可能となる。つまり、本実施形態の凝集固化補助剤を工場廃液凝集脱水処理工程の脱水助剤として使用することができ、その結果、産業廃棄物の分量およびその処分コストを削減することが可能となる。
【0058】
[・・生活系廃水処理の下水処理場での使用例について]
本実施形態の凝集固化補助剤に係る下水処理場の汚泥処理での使用例について説明する。
【0059】
下水処理場の汚泥は、従来、固形分濃度約2%の汚泥に対し、たとえば高分子系の従来の脱水助剤を添加し脱水機を使用して脱水する。この脱水により汚泥の脱水ケーキでの含水率は85%~87%となり、この含水率の状態で脱水ケーキは廃棄処分される。
【0060】
しかしながら、近年、廃棄処分量の減量、処分コストの削減が求められており、脱水ケーキの含水率を抑制して、廃棄される脱水ケーキを減容化する必要がある。
【0061】
そこで、本実施形態の凝集固化補助剤を汚泥の脱水工程で使用することにより汚泥の脱水性を高め、脱水後の脱水ケーキの含水率を低く抑制することが可能となる。脱水前の汚泥に本実施形態の凝集固化補助剤を添加混合し、その後、従来の、たとえば高分子系脱水助剤を添加し脱水機によって処理する。それにより、脱水ケーキの含水率を効果的に抑制することが可能となる。その結果、脱水ケーキの減容化が可能になり廃棄処分量および処分コストの削減を実現することが可能となる。
【0062】
[本実施形態の利点]
以上説明したように本実施形態の凝集固化補助剤によれば、バガス焼却灰を主剤とし、バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合され、バガス焼却灰の含有量が65質量%以上に設定され、廃液および/または汚泥に添加された状態で廃液および/または汚泥のpHが6から8の範囲になるように主剤と副剤との配合割合が調整されており、凝集固化剤が廃液および/または汚泥に添加される前に廃液および/または汚泥に添加され使用される。
【0063】
また、本実施形態の凝集固化補助剤によれば、無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である。
【0064】
また、本実施形態の凝集固化補助剤によれば、有機粘結剤および水酸化カルシウムから選択される少なくとも1つ以上の材料がさらに混合される。
【0065】
また、本実施形態の凝集固化補助剤によれば、バガス焼却灰の含有量は95質量%以上に設定される。
【0066】
また、本実施形態の凝集固化補助剤の製造方法によれば、サトウキビの搾汁粕を焼却してバガス焼却灰を得る第1工程と、第1工程で得られたバガス焼却灰を主剤として、バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤を副剤として混合する第2工程と、を含み、第2工程では、混合する際、バガス焼却灰の含有量を65質量%以上になるように設定するとともに、廃液および/または汚泥に添加された状態で廃液および/または汚泥のpHが6から8の範囲になるように主剤と副剤との配合割合を調整する。
【0067】
また、本実施形態の凝集固化補助剤の製造方法によれば、無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である。
【0068】
また、本実施形態の凝集固化方法によれば、バガス焼却灰を主剤とし、バガス焼却灰に対し、pH調整剤としての無機系凝集剤が副剤として混合され、バガス焼却灰の含有量が65質量%以上に設定され、廃液および/または汚泥に添加された状態で廃液および/または汚泥のpHが6から8の範囲になるように主剤と副剤との配合割合が調整される凝集固化補助剤を用意する工程と、当該凝集固化補助剤を、凝集固化剤が廃液および/または汚泥に添加される前に廃液および/または汚泥に添加する工程と、を含む。
【0069】
また、本実施形態の凝集固化方法によれば、無機系凝集剤は、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよび炭酸ナトリウムから選択される少なくとも1つ以上の材料である。
【0070】
また、本実施形態の凝集固化方法によれば、廃液および/または汚泥の100重量部に対し、凝集固化補助剤を5重量部以下で添加する。
【0071】
このため、たとえば工業系加工工場、食品系加工工場の廃液の凝集脱水処理、または下水処理場における汚泥脱水の際の脱水助剤として使用する。これにより、その廃液および/または汚泥に凝集固化剤が添加された際に生成される固化物(凝集物)の含水率を一層低減することができる。その結果、廃液および/または汚泥に係る固化物の脱水性を高め、固化物に係る廃棄物を減容化することができる(たとえば汚泥の場合、含水率を50%~70%の範囲で調整することができる)。さらに、廃棄物としてその固形物をたとえば堆肥原料などに利用した場合でも環境負荷を低減化することができ、廃棄処分量およびその処分コストを削減することができる。
【0072】
また、本発明はバガス焼却灰を主剤(主成分)とする無機系の製剤である。これにより、その上澄み液(脱離液)の水質は環境基準値以下となり、環境汚染に影響なく自然環境に排出することができる。さらに、本発明に係る凝集固化補助剤をたとえば牛舎の牛糞尿に混合することで堆肥の原料として利用することができる。廃液および/または汚泥などに添加して使用する場合、その凝集固化の過程で生成される上澄み液は排出され、またその固化物は土木資材または農地などとして還元して再利用可能である。このようにして安全性の高い無機系の凝集固化補助剤により廃液および/または汚泥の処理に関して自然環境への負荷を低減することができる。
【0073】
次に実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明の内容はこの実施例の説明によって特許請求の範囲に記載の主題が限定されることは意図されない。
【実施例0074】
本実施例では、本発明に係る具体例として複数の試験を挙げ本発明についてより詳細に説明する。
【0075】
[・pH調整試験について]
前述のようにバガス焼却灰だけはpHでアルカリ性が高いため、製剤の際にはpHを中性に調整する。本実施例ではpH調整剤として硫酸アルミニウムを添加混合した。その混合比率(配合割合)についてpH調整試験を行った。バガス焼却灰および硫酸アルミニウムの混合比率を複数変更したものを用意し、その混合物(つまり、本発明の凝集固化補助剤)を汚泥に添加し、汚泥のpHを測定して最適な比率を決定した。また、汚泥に対する添加量も変更してそのときのpHの変化も確認した。その試験結果を表3および表4に示す。
【0076】
なお、表3では、前述の混合物を水に添加混合し、そのときのpHを測定した値が示される。表4では、バガス焼却灰および硫酸アルミニウムの配合割合を複数変更した混合物を汚泥に添加混合し、そのときの、そのときのpHを測定した値が示される。
【0077】
【0078】
【0079】
表3および表4に示される試験結果などに基づいて、たとえば汚泥への添加量に対してそのpHが中性になるように凝集固化補助剤の配合割合(混合比)が調整され決定される。
【0080】
[・下水処理場での使用試験について]
下水処理場の汚泥に対し本発明の凝集固化補助剤を使用した使用試験を行った。本試験では、本発明の凝集固化補助剤を汚泥量に対し1%~5%の範囲で添加混合し、それぞれでの脱水ケーキとしての汚泥の固化物(凝集物)の含水率を測定比較した。その試験結果を表5および
図2に示す。
図2は、本発明に係る凝集固化補助剤を汚泥に添加した場合において固化物の含水率を測定した結果を示すグラフである。
【0081】
また、本試験での様子を
図3~
図5に示す。
図3は、本発明の凝集固化補助剤を汚泥に添加する実際の様子を例示する写真である。
図4は、脱水工程において固化物が脱水されてその結果脱水ケーキとして排出される実際の様子を例示する写真である。
図5は、固化物の排出の結果、得られる脱水ケーキの実際の様子を例示する写真である。
【0082】
【0083】
表5、
図1および
図3~
図5に示すように、本発明に係る凝集固化補助剤を通常の凝集固化剤が添加される前に汚泥などに添加することで固化物の含水率を効率的に低減させ、その結果、産業廃棄物の処理量の減容化を実現することができることがわかる。また、汚泥の質量に対しその添加量を変更することで固化物の含水率を調整することができることもわかる。
【0084】
[・赤土濁水に対する使用試験について]
赤土濁水に対し本発明の凝集固化補助剤を使用した使用試験を行った。その試験の様子を
図6~
図10に示す。
図6は、汚泥が赤土濁水である場合、その汚泥に本発明に係る凝集固化補助剤を添加する実際の様子を例示する写真である。
図7は、
図6に示す添加後、30秒間攪拌させた実際の様子を例示する写真である。
図8は、
図7に示す攪拌後、汚泥が上澄み液と固化物に分離している実際の様子を例示する写真である。
図9は、
図8に示す攪拌後、汚泥が上澄み液と固化物とに完全に分離した、実際の様子を例示する写真である。
図10は、
図9に示す分離後、その固化物を容器の外部に取り出した、実際の様子を示す写真である。
なお、沖縄では降雨または台風などの天候で赤土が河川および海へ濁水として流出する場合があり、その赤土濁水はサンゴの生育を阻害するなど環境負荷が大きく環境問題となっている。赤土濁水の効率的な処理が求められている。
【0085】
図6~
図10に示すように、本発明に係る凝集固化補助剤を赤土濁水に適用することでその赤土濁水を浄化することが可能である。その浄化により、分離された上澄み液は環境基準値以下であり環境安全を有するので、河川または海にそのまま放流することが可能である。
【0086】
また、分離された凝集物は脱水後に固化強度が発現するとともに雨水で膨潤崩壊せず再溶解しない固化物に形成される。この固化物は、植生が良好、既存土壌との混合性が良好であるためたとえば土木資材としての利用も検討可能である。この土木資材は、たとえば赤土流出元に敷き均(なら)すことで植生により再流出を防止することが可能となる。
【0087】
[・牛糞尿に対する使用試験について]
牛舎の牛糞尿に対して本発明の凝集固化補助剤を使用した使用試験を行った。その試験の様子を
図11および
図12に示す。
図11は、汚泥が牛糞尿である場合、その汚泥に本発明に係る凝集固化補助剤を添加して分離させた実際の様子を例示する写真である。左側容器は牛糞尿原液(固形分濃度8.75%)であり、右側容器は添加撹拌後の糞尿固化状況である。
図12は、
図11の分離の結果得られた上澄み液と固化物の実際の様子を例示する写真である。左側容器は牛糞尿原液であり、中間容器は処理後のろ液であり、右側皿は取り出された固化物である。
【0088】
図11および
図12に示すように、牛舎の牛糞尿に対し、本発明に係る凝集固化補助剤を添加混合して適用することで汚泥状の糞尿を上澄み液(ろ液)および固化物に分離することが可能である。処理後の糞尿の固化物は静置後3時間で約20%のろ液が滲出する。このとき、圧搾など圧力を加えることにより約65%のろ液をさらに脱水することが可能である。ろ液は環境基準値以下であるためそのまま排出可能である。固化物は堆肥の原料として利用可能である。また、固化物に分離可能であることからその運搬も容易になるという利点も有する。バガス焼却灰を主剤とする凝集固化補助剤を用いて処理された糞尿であるため有害物質を含んでおらず、環境的に安全安心な農業用資材として利用することが可能である。
本発明は、廃液および/または汚泥に凝集固化剤が添加された際に生成される固化物(凝集物、脱水ケーキ)の含水率を一層低減して脱水性を高め、固化物に係る廃棄物を減容化するとともに、その廃棄物をたとえば堆肥原料などに利用した場合でも環境負荷を低減化することができる凝集固化補助剤、凝集固化補助剤の製造方法および凝集固化方法として有用である。