(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057439
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】ゴルフパター
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20230414BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230414BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230414BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20230414BHJP
【FI】
A63B53/04 H
A63B53/04 K
B33Y10/00
B33Y80/00
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166971
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】519158012
【氏名又は名称】伊福精密株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521445074
【氏名又は名称】エスティバンゴルフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】伊福 元彦
(72)【発明者】
【氏名】松谷 伸次
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA04
2C002CH05
2C002MM04
2C002PP05
(57)【要約】
【課題】パターヘッド重量の軽量化を実現できるだけでなく、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できると共に慣性モーメントと打感を自由に設計できるパターヘッドの提供。
【解決手段】シャフト接続部50とパターヘッドとがネック30を介して接続されると共に、金属3Dプリンタで造形されたゴルフパター1であり、パターヘッドは、ボールをヒットするフェイス面110と、フェイス面110を裏面から支持する所定の幅Mと、ヒールからトウまでの長さLを有するトップ部材100を備え、トップ部材100の内部に、フェイス面110のボールヒット部位に、円柱状のラティス構造31を設けてなり、フェイス面110の裏面でトップ部材100内部の表面に、ヘッド重量とフェイス面重心とネック取付位置から計算された位置に、リング状の補強部材120を形成し、リング状の補強部材120を介して、フェイス面110とバックフェイス面の内側をラティス構造31で一体化することを特徴とするゴルフパター。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト接続部とパターヘッドとがネックを介して接続されると共に、金属3Dプリンタで造形されたゴルフパターであり、
前記パターヘッドは、ボールをヒットするフェイス面と、該フェイス面を裏面から支持する所定の幅Mと、ヒールからトウまでの長さLを有するトップ部材を備え、
前記トップ部材の内部に、前記フェイス面のボールヒット部位に、円柱状のラティス構造を設けてなり、
前記フェイス面の裏面で前記トップ部材内部の表面に、ヘッド重量とフェイス面重心とネック取付位置から計算された位置に、リング状の補強部材を形成し、該リング状の補強部材を介して、前記フェイス面とバックフェイス面の内側をラティス構造で一体化することを特徴とするゴルフパター。
【請求項2】
前記ネックは、内部にラティス構造が設けられた筒状体であり、
前記ネック内部に設けられたラティス構造は、前記トップ部材の上部から下部に向かってほぼ垂直に、該トップ部材の底部近傍まで延出されていることを特徴とする請求項1記載のゴルフパター。
【請求項3】
前記リング状の補強構造体を介して前記フェイス面とバックフェイス裏面の内側を一体化してなるラティス構造は、円柱状の円形部分を前記フェイス面に平行になるように配置してなることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフパター。
【請求項4】
前記円柱状のラティス構造は、シャフト接続部の中心軸線と交差する部位のボールヒット部位に設けていることを特徴とする請求項3記載のゴルフパター。
【請求項5】
前記リング状の補強構造体は、打感改善構造を有するリング状のリブであることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のゴルフパター。
【請求項6】
前記トップ部材は、円柱状のラティス構造を設置している部位以外が空洞であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のゴルフパター。
【請求項7】
前記トップ部材のフェイス面から逆方向に延びているキャビティを有することを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のゴルフパター。
【請求項8】
前記トップ部材の表面に、樹脂系又は金属系のインサートを設けることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載のゴルフパター。
【請求項9】
マルエージング鋼又はマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2からなる金属粉末に、金属3Dプリンタを用いて、レーザーを照射し焼結して造形してなる請求項1~8の何れかに記載のゴルフパター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフパターに関し、詳しくは、パターヘッド重量の軽量化を実現できるだけでなく、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できると共に慣性モーメントと打感を自由に設計できるゴルフパターに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、ゴルフパターのトップ部材の内部の全体に、3Dプリンタによりラティス構造を構築したパターが開示され、従来型のパターよりも重量を大幅に削減しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】https://sekapri.com/mold/20210523-12634/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1のパターによれば、表面は金属で形成されているが、内部のラティス構造は、ナイロンで造形されており、これらを嵌め合わせることで、パター全体の軽量化を実現している。
したがって、ナイロンは、軽くて頑丈な樹脂であるため、軽量化は実現できる。
金属と樹脂による嵌め合わせであることにより、軽量化は実現できても、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できない欠点があり、慣性モーメントの設計も自由にできない欠点がある。
非特許文献1のパターでは、パターヘッドのトップ前面にラティス構造を構築し、自由な重心設計と慣性モーメント設計を実行できるトップ内部が空洞のパターは実現されてはいない。
【0005】
そこで、本発明の課題は、パターヘッド重量の軽量化を実現できるだけでなく、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できると共に慣性モーメントと打感を自由に設計できるパターヘッドを提供することにある。
【0006】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0008】
(請求項1)
シャフト接続部とパターヘッドとがネックを介して接続されると共に、金属3Dプリンタで造形されたゴルフパターであり、
前記パターヘッドは、ボールをヒットするフェイス面と、該フェイス面を裏面から支持する所定の幅Mと、ヒールからトウまでの長さLを有するトップ部材を備え、
前記トップ部材の内部に、前記フェイス面のボールヒット部位に、円柱状のラティス構造を設けてなり、
前記フェイス面の裏面で前記トップ部材内部の表面に、ヘッド重量とフェイス面重心とネック取付位置から計算された位置に、リング状の補強部材を形成し、該リング状の補強部材を介して、前記フェイス面とバックフェイス面の内側をラティス構造で一体化することを特徴とするゴルフパター。
(請求項2)
前記ネックは、内部にラティス構造が設けられた筒状体であり、
前記ネック内部に設けられたラティス構造は、前記トップ部材の上部から下部に向かってほぼ垂直に、該トップ部材の底部近傍まで延出されていることを特徴とする請求項1記載のゴルフパター。
(請求項3)
前記リング状の補強構造体を介して前記フェイス面とバックフェイス裏面の内側を一体化してなるラティス構造は、円柱状の円形部分を前記フェイス面に平行になるように配置してなることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフパター。
(請求項4)
前記円柱状のラティス構造は、シャフト接続部の中心軸線と交差する部位のボールヒット部位に設けていることを特徴とする請求項3記載のゴルフパター。
(請求項5)
前記リング状の補強構造体は、打感改善構造を有するリング状のリブであることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のゴルフパター。
(請求項6)
前記トップ部材は、円柱状のラティス構造を設置している部位以外が空洞であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のゴルフパター。
(請求項7)
前記トップ部材のフェイス面から逆方向に延びているキャビティを有することを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のゴルフパター。
(請求項8)
前記トップ部材の表面に、樹脂系又は金属系のインサートを設けることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載のゴルフパター。
(請求項9)
マルエージング鋼又はマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2からなる金属粉末に、金属3Dプリンタを用いて、レーザーを照射し焼結して造形してなる請求項1~8の何れかに記載のゴルフパター。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パターヘッド重量の軽量化を実現できるだけでなく、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できると共に慣性モーメントと打感を自由に設計できるパターヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のゴルフパターの一例を示す要部外観斜視図
【
図3】本発明のゴルフパターの一例を示す下面矢視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明のゴルフパターの一例を示す要部外観斜視図であり、
図2は、
図1の要部を説明するである。
図3は、本発明のゴルフパターの一例を示す下面矢視図、
図4は、
図3のの要部を説明するである。
【0013】
本発明におけるゴルフパター1は、
図1~
図4に示すように、パターヘッド10を備えている。パターヘッド10とシャフト接続部50は、ネック30を介して接続される。シャフト接続部50には、図示しない任意のシャフトが装着される。
【0014】
なお、ネックがなくて、シャフト接続部50が直接パターヘッド10に設けられている場合には、本発明では、シャフトの下部に仮想のネックを想定する。
【0015】
図1~
図4に示すパターヘッド10は、トップ部材100とトップ部材100から後方(奥行方向)に延びるキャビティ101とからなる形態のものが示されている。
キャビティ101の形態は、図示に限定されない。なお、本実施形態では、キャビティを有する態様が示されているが、キャビティがない態様もあり得る。
【0016】
トップ部材100は、ボールをヒットするフェイス面110を有する。トップ部材100の手前側はヒール100Aであり、先側はトウ100Bである。
また、トップ部材100は、所定の幅Mと、ヒール100Aからトウ100Bまでの長さLを有している(
図2参照)。
【0017】
キャビティ101は、内部が空洞に構成されていることが好ましいが、内部空洞に限定されるわけではない。キャビティ101の外表面は曲面状の窪み102が形成されていることも好ましい(
図1参照)。窪み102にはサイトライン103が複数本形成されている。ボールの打ち出し方向を決める場合に目安になるので便利である。
【0018】
また、キャビティ101を有する形態の場合には、重量バランスを考慮して、キャビティ101の両側側が中実にすることもできる。
更に、
図2に示すように、三角柱状のリブ105を複数設けることが好ましい。図示の例では5つの三角柱状のリブ105が設けられている例が示されているが、これに限定されず、軽量化と重量バランスを考慮して、個数は適宜設定できる。また、形状についても、軽量化と重量バランスを考慮して造形できる形状であれば、三角柱状に限定されない。
【0019】
次に、
図1~
図4及び
図5、
図6に基づいて、本発明の構成を具体的に説明する。
本発明において、ゴルフパター1は、金属3Dプリンタで造形される。好ましい態様としては、パウダーベッド方式の金属3Dプリンタを採用して、例えばマルエージング鋼又はマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2からなる金属粉末にレーザーを照射し、焼結して造形することができる。
マルエージング鋼の組成は、例えば、以下のような組成が好ましい例として挙げられる。
〔マルエージング鋼の組成〕
Cr<1wt%、
Co<9wt%、
Mo<4wt%、
Mn<1.8wt%、
Ni<17wt%、
Si<1wt%、
Al<4wt%、
Ti<4wt%、
Fe(balance)
【0020】
図5に示すように、ゴルフパター1のシャフト接続部50は、内部空洞の筒状体であり、ゴルフパターのシャフトが接続されることにより、ゴルフパターとなる。ネック30は、内部が断面略円形のラティス構造31が形成された筒状体である。
【0021】
ここで、ラティス構造は、金属3Dプリンタで造形された物体内部に形成された格子状の骨組みであり、非常に細かな格子状の構造体である。
本発明において、金属3Dプリンタで造形することにより、ラティス構造を筒体の内部に、筒体と一体に形成でき、軽量化と共に、作業工程の大幅な縮小が実現できる。
【0022】
ラティス構造31は、トップ部材100の上部から下部に向かってほぼ垂直にトップ部材100の底部106近傍まで延出されていることが好ましい。この底部近傍まで延出されていることにより軽量効果をより発揮できる。また、ネック内部にラティス構造を底部近傍まで設けることにより、パターヘッド全体の重量バランスを変更できるため、パターヘッドの重心位置を変更させることができる。つまり、ラティス構造を設けることにより、重心位置を自由に設計することができる。さらに、慣性モーメントの設計も自由にできる。
更に本発明において、ラティス構造が、トップ部材100の内部で底部まで延びていることにより、シャフトとヘッドとの結合力を高め、パター全体の剛性を高めることができる効果を発揮する。
【0023】
本態様においては、トップ部材100の内部に、フェイス面110のボールヒット部位に、幅方向に延びる円柱状のラティス構造107を設けている。
【0024】
かかるラティス構造107が形成されていることにより、軽量化を実現しつつ中実材と同様に打感を得ることができる。
【0025】
また、フェイス面110の裏面で、トップ部材100内部の表面の、ヘッド重量とフェイス面重心とネック取付位置から計算された位置に、リング状の補強部材120を複数形成されている。リング状の補強部材120の個数は、2~5個程度が好ましい。リング状の補強部材120は、リング状のリブであることが好ましい。
【0026】
本発明は、リング状の補強部材120を介して、フェイス面110とバックフェイス面111の内側を、ラティス構造107よって一体化し、円柱状の補強構造体108を形成する。この円柱状の補強構造体108の設置位置によって、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できると共に慣性モーメントや打感の設計も自由にできる。
これによって、
【0027】
補強構造体108を構成するラティス構造107は、
図5及び
図6に示すように、円柱状の円形部分を前記フェイス面に略平行になるように配置してなることが好ましい。ボールヒットの打感を向上させるためである。さらに、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できると共に慣性モーメントや打感の設計も自由にできる点でも効果がある。
【0028】
本実施形態において、補強構造体108は、トップ部材100の内部で、シャフト接続部50の中心軸線50Aと交差する部位のボールヒット部位に設けていることが好ましい。軽量化を実現しつつ中実材と同様に打感を得る効果を確実に発揮するためである。
【0029】
図6に示すように、トップ部材100は、円柱状のラティス構造107を設置している部位以外は、空洞であることが好ましい。軽量化を更に実現するためである。
【0030】
トップ部材100のフェイス面には、高さが略均一な凹凸面が形成されていることが好ましい。凹凸面を形成する方法としては、例えば、樹脂系又は金属系のインサートを設けてもよいし、金属3Dプリンタで造形してもよいし、切削加工を行ってもよい。
【0031】
本実施形態の補強構造体108の構成を
図7に基づいて説明する。
図7は、
図6に示す補強構造体108の拡大概略図である。
図7には、フェイス面110の裏面111には、リング状の補強部材120が4個設けられている例が示されている。リング状の補強部材120を、複数個設ける場合には、上述したように、2~5個程度設けることが好ましい。本実施形態においては、リング状の補強部材120を一つの部材で形成してもよい。
【0032】
図7に示すように、リング状の補強部材120において、最も外周の補強部材120から、中心に向かうにしたがって、フェイス面110の裏面112から、バックフェイス面111の裏面113の方向の高さHが高くなるように形成されていることが好ましい。リング状の補強部材120を、一つの部材として形成する場合にも、中心に向かうにしたがって、フェイス面110からバックフェイス面111に向かう方向に長くなるように形成することが好ましい。
【0033】
また、本実施形態においては、リング状のリブ120のうち、最も中心にあるリング状のリブ120aは、バックフェイス面111の裏面113まで延設されていることが好ましい。本実施形態においては、リング状のリブ120aは円筒状に形成され、リブ120aの円筒状の外側面と内側面に、ラティス構造107が形成される。
【0034】
本発明に係るパターヘッドは、リング状のリブ120を介して、フェイス面110の裏面112と、バックフェイス面111の裏面113とを円柱状のラティス構造107で一体化し、全体として略円柱状の補強構造体108を形成している。
【0035】
このように補強構造体108を形成することによって、ボールヒットの打感を向上させる打感改善構造として機能させることができる。
この補強構造体108を構成するリング状の補強部材120の設置位置、ラティス構造107の非常に細かな格子状の構造体の格子のサイズ等を適宜変更できる。これにより、リング状の補強部材120、及びラティス構造107によって構成される補強構造体108が設けられることで、打感の改善構造として機能し、これに加えて、補強構造体108の構造や設置位置を自由に変更できるため、パターヘッドの重心の設計を自由な場所に設定できると共に慣性モーメントや打感の設計も自由にできる。
【符号の説明】
【0036】
1 :ゴルフパター
10 :パターヘッド
30 :ネック
31 :ラティス構造
50 :シャフト接続部
50A :中心軸線
100 :トップ部材
100A :ヒール
100B :トウ
101 :キャビティ
102 :窪み
103 :サイトライン
104 :ソール
106 :底部
107 :ラティス構造
108 :補強構造体
110 :フェイス面
111 :バックフェイス面
112 :フェイス面の裏面
113 :バックフェイス面の裏面
120 :リング状の補強部材