(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057440
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】コイル、磁気特性測定装置および磁気特性測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20230414BHJP
G01R 33/12 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
G01R33/02 B
G01R33/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166973
(22)【出願日】2021-10-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「高速スイッチング電源用パワーインダクタ開発のための高周波磁気測定装置の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳原 英人
(72)【発明者】
【氏名】磯部 高範
(72)【発明者】
【氏名】萬年 智介
(72)【発明者】
【氏名】喜多 英治
(72)【発明者】
【氏名】森 賢太郎
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AC09
2G017AD04
2G017BA03
2G017BA15
2G017CA04
2G017CA06
2G017CB02
2G017CC02
(57)【要約】
【課題】径や巻き数といった構成の自由度が高いコイルを提供すること、および内径の小さい励磁コイルにも適用可能な、磁性材料の磁気特性装置ならびに磁性材料の磁気特性測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】このコイルは、フレキシブル基板上に導線パターンが形成されており、前記フレキシブル基板の一部が巻回されてなる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板上に導線パターンが形成されており、
前記フレキシブル基板の一部が巻回されてなる、コイル。
【請求項2】
前記フレキシブル基板は、第1方向に延びる軸部と、前記軸部と交差する方向に広がる旗部と、を備え、
前記導線パターンは、前記軸部に設けられ、前記第1方向に延在する延在部と、前記旗部に設けられ、前記第1方向に並ぶ第1部分および第2部分と、前記第1方向に延び、前記第1部分と前記第2部分とを接続する接続部と、を有し、
前記旗部が前記第1方向の周りに巻回されてなる、請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記第1部分および前記第2部分が平行であり、
前記第1方向と交差する第2方向において、前記延在部からの前記第1部分の長さおよび前記延在部からの前記第2部分の長さは、同じである、請求項2に記載のコイル。
【請求項4】
前記フレキシブル基板の第1面には、前記導線パターンが形成されており、
前記フレキシブル基板の前記第1面の裏面には、前記導線パターンと直列に接続し、前記第1方向に延びるパターンからなる裏面導線パターンが形成されている、請求項2または3に記載のコイル。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のコイルをピックアップコイルとして備える磁気特性測定装置であって、
中空の軸部を有し、前記第1方向に高周波磁界を発生させる、励磁コイルを含む磁界発生装置さらに備え、
前記第1方向において、前記第1部分または前記第2部分と重なる位置に設置された磁性材料の磁気特性を測定する、磁気特性測定装置。
【請求項6】
前記励磁コイルは、フレキシブル基板上に設けられた励磁コイル用導線パターンが、軸方向を囲むように同一方向に複数回巻回されてなるコイルであり、
前記励磁コイルは、前記励磁コイル用導線パターンが1周ごとにコンデンサと直列接続された直流共振回路を構成しており、
前記励磁コイルに対して電力を供給する電源装置を制御するとともに、前記励磁コイルを流れる電流および前記ピックアップコイルの出力電圧に基づいて、前記磁性材料の磁気特性を演算する制御演算部をさらに備える、請求項5に記載の磁気特性測定装置。
【請求項7】
請求項2~4のいずれか一項に記載のコイルをピックアップコイルとして用いる磁気特性測定方法であって、
中空の軸部を有する励磁コイルを用いて前記第1方向に高周波磁界を発生させ、
前記第1方向において、前記第1部分または前記第2部分と重なる位置に磁性材料を設置した前記ピックアップコイルを前記中空の軸部に挿入し、高周波磁界が印加された磁性材料の磁気特性をピックアップコイルにより測定する、磁気特性測定方法。
【請求項8】
前記励磁コイルとして、フレキシブル基板上に設けられた励磁コイル用導線パターンが、軸方向を囲むように同一方向に複数回巻回されてなるコイルを用い、
前記励磁コイル用導線パターンが1周する毎にコンデンサと直列接続することで直列共振回路を構成するコイルを用い、
前記励磁コイルに対して供給する電力を制御するとともに、前記励磁コイルを流れる電流および前記ピックアップコイルの出力電圧に基づいて、前記磁性材料の磁気特性を演算する、請求項7に記載の磁気特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル、磁気特性測定装置および磁気特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁体部と、絶縁体部に埋設され、複数のコイル導体層が電気的に接続されたコイルを有する積層コイル部品が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、磁気抵抗素子、ホール素子、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子、超電導素子等の感磁素子を利用した種々な磁気センサの開発が進められている。従来、この種の磁気センサとして、板状の感磁素子に対してコイルを渦巻き状に導体を形成したピックアップコイルが知られている(特許文献2)。
【0004】
ピックアップコイルを用いることで、BHループトレーサとは異なり、測定対象の磁性材料をリング形状や井桁形状に変形する必要がなく、測定対象の磁気特性を簡便に測定することができると知られている。
【0005】
例えば、中空の軸部に8の字状に電線を巻くことで、ピックアップコイルを形成し、ピックアップコイルの一方の軸部の内部に測定対象の磁性材料を収容し、磁界発生コイルに交番電流を流した際に磁界検出コイルの検出結果から磁場の強度を導出するとともにピックアップコイルの検出結果から磁化を導出し、磁性材料の磁気特性を測定する、磁性材料の磁気特性測定方法が知られている(特許文献3)。特許文献3に開示された磁気特性測定方法は、8の字状に巻かれたピックアップコイルを用いており、互いに異なる向きに巻かれた8の字状のピックアップコイルが磁性材料以外の磁束変化を除去し、磁性材料のみの磁気特性を抽出する精度を高めるために巻き数を増やすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-108324号公報
【特許文献2】特開2001-191481号公報
【特許文献3】特開2018-173331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に開示されたピックアップコイルおよび積層コイル部品では、コイルの径や巻き数といった構成を変更することが難しく、周辺構造を考慮した最適条件が見出されていない研究分野において、有効とは言えない。
【0008】
特許文献3に開示された磁気特性の測定方法では、ピックアップコイルの8の字状構造や、巻き数により、外径が大きくなってしまい、内径の小さい励磁コイルを備える磁気特性測定装置への適用が難しい場合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であって、径や巻き数といった構成の自由度が高いコイルを提供すること、および内径の小さい励磁コイルにも適用可能な、磁性材料の磁気特性を測定する、磁気特性装置ならびに磁気特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の第一の態様に係るコイルは、フレキシブル基板上に導線パターンが形成されており、前記フレキシブル基板の一部が巻回されてなる。
【0011】
(2)上記態様に係るコイルにおいて、前記フレキシブル基板は、第1方向に延びる軸部と、前記軸部と交差する方向に広がる旗部と、を備え、前記導線パターンは、前記軸部に設けられ、前記第1方向に延在する延在部と、前記旗部に設けられ、前記第1方向に並ぶ第1部分および第2部分と、前記第1方向に延び、前記第1部分と前記第2部分とを接続する接続部と、を有し、前記旗部が前記第1方向の周りに巻回されてなっていてもよい。
【0012】
(3)上記態様に係るコイルにおいて、前記第1部分および前記第2部分が平行であり、前記第1方向と交差する第2方向において、前記延在部からの前記第1部分の長さおよび前記延在部からの前記第2部分の長さは、同じであってもよい。
【0013】
(4)上記態様に係るコイルにおいて、前記フレキシブル基板の第1面には、前記導線パターンが形成されていてもよく、前記フレキシブル基板の前記第1面の裏面には、前記導線パターンと直列に接続し、前記第1方向に延びるパターンからなる裏面導線パターンが形成されていてもよい。
【0014】
(5)本発明の第二の態様に係る磁気特性測定装置は、第一の態様に係るコイルをピックアップコイルとして備える磁気特性測定装置であって、中空の軸部を有し、前記第1方向に高周波磁界を発生させる、励磁コイルを含む磁界発生装置さらに備え、前記第1方向において、前記第1部分または前記第2部分と重なる位置に設置された磁性材料の磁気特性を測定する。
【0015】
(6)上記態様に係る磁気特性測定装置において、前記励磁コイルは、フレキシブル基板上に設けられた励磁コイル用導線パターンが、軸方向を囲むように同一方向に複数回巻回されてなるコイルであり、前記励磁コイルは、前記励磁コイル用導線パターンが1周ごとにコンデンサと直列に接続された直流共振回路を構成しており、前記励磁コイルに対して電力を供給する電源装置を制御するとともに、前記励磁コイルを流れる電流および前記ピックアップコイルの出力電圧に基づいて、前記磁性材料の磁気特性を演算する制御演算部をさらに備えてもよい。
【0016】
(7)本発明の第三の態様に係る磁気特性測定方法は、第一の態様に係るコイルをピックアップコイルとして用いる磁気特性測定方法であって、中空の軸部を有する励磁コイルを用いて前記第1方向に高周波磁界を発生させ、前記第1方向において、前記第1部分または前記第2部分と重なる位置に磁性材料を設置した前記ピックアップコイルを前記中空の軸部に挿入し、高周波磁界が印加された磁性材料の磁気特性をピックアップコイルにより測定する。
【0017】
(8)上記態様に係る磁気特性測定方法において、前記励磁コイルとして、フレキシブル基板上に設けられた励磁コイル用導線パターンが、軸方向を囲むように同一方向に複数回巻回されてなるコイルを用い、前記励磁コイル用導線パターンが1周する毎にコンデンサと直列接続することで直列共振回路を構成するコイルを用い、前記励磁コイルに対して供給する電力を制御するとともに、前記励磁コイルを流れる電流および前記ピックアップコイルの出力電圧に基づいて、前記磁性材料の磁気特性を演算してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、径や巻き数といった構成の自由度が高いコイルを提供すること、および内径の小さい励磁コイルにも適用可能な、磁性材料の磁気特性を測定する、磁気特性装置ならびに磁気特性測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイルの斜視図である。
【
図2】
図1のコイルを巻回する前の状態を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るピックアップコイルの斜視図である。
【
図4】
図3のピックアップコイルを巻回する前の状態を示す平面図である。
【
図5】
図3のピックアップコイルを巻回する前の状態を示す平面図であり、
図4とは異なる面を示す平面図である。
【
図6】
図3のピックアップコイルに対し、磁性材料を設置する方法の例を説明するための斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る磁気特性測定装置の概略図である。
【
図8】
図7の磁気特性測定装置が備える磁界発生装置を説明するための回路図である。
【
図9】
図7の磁気特性測定装置における磁界発生装置の励磁コイルを巻回する前の状態を示す平面図である。
【
図10】
図7の磁気特性測定装置が備える制御演算部の動作の一例を説明するための機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。このため、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっている場合がある。
【0021】
[コイル]
図1は、本実施形態に係るコイル100の斜視図であり、
図2は、
図1に示すコイル100を巻回する前の状態を示す平面図であり、コイル100を展開した展開図である。本実施形態にかかるコイル100は、フレキシブル基板20上に導線パターン10が形成されており、フレキシブル基板20の一部が巻回されてなる。
図2は、フレキシブル基板20の第1面を示す。
【0022】
図1は、
図2に示すフレキシブル基板20がx方向に複数回巻回されてなる。
図2には、フレキシブル基板20上に導線パターン10として、第1部P1、第2部P2、および第3部P3を有する。第1部P1、第2部P2および第3部P3は、電気的に直列に接続する。第1部P1および第3部P3は、y方向に延びる部分である。第2部P2は、x方向を基準として-y方向に傾斜した方向に延びる。フレキシブル基板20には、例えば線状の目印24(24a,24b)が所定の間隔で設けられており、目印24a,24bが重なるように巻回される。フレキシブル基板20を巻回する際の巻き数は、1以上の任意の数であり、複数であってもよい。例えば、フレキシブル基板20をx方向に巻回し、目印24aおよび目印24bが1周目で重なるようにしてもよく、2周以上の任意の数だけ巻回して重なるようにしてもよい。また、コイル100は、第1面を内側にして巻回することで形成されてもよく、第1面を外側にして巻回することで形成されてもよい。
【0023】
図2に示されるコイルは、導線パターン10がx方向に巻回されることで、第2部P2がコイル部C2となる。軸方向から平面視して、コイル部C2の形状は、例えば円、楕円、オーバル、卵型、多角形等任意の形状であり、対称性の観点から円形であることが好ましい。
【0024】
フレキシブル基板20は、例えばポリイミド、ポリエステル、液晶ポリマー等の可撓性材料からなる。フレキシブル基板20は、巻回可能であって、導線パターンを形成することができる基板であれば、任意に選択することができる。このようなフレキシブル基板は、曲げやすく、復元力も小さいため、長寿命なコイルを形成できる。外径の小さいコイルを製造する場合、フレキシブル基板20の厚みは薄いことが好ましく、強度と両立する観点から、例えば10μm~100μm程度の厚みであることが好ましい。
【0025】
目印24は、フレキシブル基板20上に複数個形成されていてもよい。目印24がフレキシブル基板20上に複数個形成されている場合、基準となる目印をどの目印と重なるようにするか選択することでコイルの巻き数を選択できるように、目印24がコイルの巻き数に対応した間隔で設けられていることが好ましい。巻回されたフレキシブル基板20は、例えばエポキシ系接着剤により固定することができる。
【0026】
本実施形態に係るコイルは、フレキシブル基板20上に導線パターン10が形成されており、フレキシブル基板20の巻回の仕方を調整することにより、径や巻き数といった構成の自由度が高いコイルを提供することができる。例えば、同じ導線パターン10が形成されたフレキシブル基板20を用いる場合であっても、目印24の間でフレキシブル基板20を1周巻回させて固定するか、或いは1.5周や2周巻回させて固定するかによって、得られるコイルの巻き数および内径が異なり、コイルの巻き数および内径を調整できる。また、フレキシブル基板20が巻回された状態で固定されたコイルであっても、フレキシブル基板20を展開し、再度巻回することで、当初とは異なる巻き数および内径のコイルを形成することも可能である。本実施形態に係るコイルは、詳細を後述するピックアップコイルおよび励磁コイルに適用することが可能である。
【0027】
[ピックアップコイル]
図3は、本実施形態に係るピックアップコイル100aの斜視図である。
図4は、
図3のピックアップコイル100aを巻回する前の状態を示す、第1面の平面図であり、ピックアップコイル100aを展開した図である。
図5は、
図3に示すピックアップコイル100aを巻回する前の状態を示す、第2面の平面図であり、ピックアップコイル100aを展開した図である。
【0028】
ピックアップコイル100aは、フレキシブル基板20A上に導線パターン10Aが形成され、フレキシブル基板20Aの一部が巻回されてなる。ピックアップコイル100aにおいて、フレキシブル基板20Aは、第1方向に延びる軸部22と、軸部22と交差する方向に広がる旗部23と、を備える。またピックアップコイル100aにおいて、導線パターン10Aは、軸部22に設けられ、第1方向に延在する延在部11と、旗部23に設けられた、第1部分12と、第2部分14と、第1部分12および第2部分14を接続する接続部13と、を有する。ピックアップコイル100aは、旗部23が第1方向の周りに巻回されることで、第1部分12および第2部分14が第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cを形成となる。
【0029】
図3に示すピックアップコイル100aは、旗部23を第1方向の周りに1周半巻回した例である。
図3において、第1方向に並び、符号12C,14Cで示す構成は、導線パターン10Aのうち、第1方向に並ぶ第1部分12,第2部分14が第1方向の周りに巻回されてなる構成であって、それぞれ軸方向に対する回転方向が逆の第1コイル部12C、第2コイル部14Cである。
【0030】
フレキシブル基板20Aは、例えば、
図4に示すように、第1方向における端部に位置する取手部21と、取手部21から第1方向に延びる軸部22と、軸部22と交差する方向に延びる旗部23と、を備える。
旗部23は、軸部22に対し、第1方向における任意の位置に設けられる。旗部23は、例えば、軸部22の第1方向における中央近傍に設けられていてもよく、取手部21と反対側の端部に設けられていてもよい。ピックアップコイル100aは、取手部21が保持され、第1方向において取手部21と反対側から磁界発生装置に挿入される。そのため、実用性の観点から、旗部23は、第1方向において取手部21と離れた位置に設けられることが好ましい。
【0031】
また旗部23の形状は、軸部22と交差する方向に広がる形状であれば、任意の形状にすることができ、軸部22に平行な辺と軸部22に垂直な辺とで外形を構成された矩形であることが好ましい。旗部23がこのような形状であり、且つ導線パターン10Aの第1部分12および第2部分14が第1方向に対し垂直に延びる場合、旗部23を第1方向と垂直な方向に巻回することで、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cが第1方向に対し垂直な構成になり、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cが平行で、且つ第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cが第1方向に対して垂直な構成になる。
【0032】
図4に示すように、フレキシブル基板20Aの第1面上には、例えば、導線パターン10Aに加え、電極パッド30およびビア40が設けられる。電極パッド30は、例えば、軸部22の取手部21に設けられる。電極パッド30は、例えば、導電性材料で構成された電極であり、外部回路と接続する。ビア40は、例えば、軸部22上であって、且つ第1方向において、電極パッド30と反対側の端部近傍に設けられる。ビア40は、フレキシブル基板20Aを面内方向と垂直な方向に貫通する孔である。
【0033】
導線パターン10Aは、フレキシブル基板20Aの第1面において、例えば電極パッド30からビア40に繋がるように設けられている。導線パターン10Aの端部は、例えば電極パッド30と重なる。導線パターン10Aは、例えば、延在部11と、第1部分12と、接続部13と、第2部分14と、ビア接続部15と、を有する。導線パターン10Aにおいて、延在部11、第1部分12,接続部13,第2部分14及びビア接続部15は、パターンニングなどにより、電気的に直列となるように、形成された部材であり、一体となっていることが好ましい。
【0034】
延在部11は、第1方向に延在し、端部の一方が電極パッド30aと接続する。
第1部分12は、端部の一方が延在部11と接続し、第1方向と交差する方向に延びる。接続部13は、上述の通り、第1部分12と第2部分14とを接続する部分であり、例えば第1方向に延びる。第2部分14は、接続部13と接続する部分であり、第1方向と交差する方向に延びる。ビア接続部15は、第2部分14と接続する部分であり、例えば第1方向に延びる。
【0035】
第1部分12および第2部分14は、平行に設けられていることが好ましい。第1部分12および第2部分14が平行であると、第1部分12および第2部分14が巻回されてなる第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cのそれぞれが、平行になる。第1部分および第2部分14が平行であることで、第1コイル部12Cが第2コイル部14Cの交差磁場の影響を受けることが抑制され、第2コイル部14Cが第1コイル部12Cの影響を受けることが抑制される。
【0036】
また、第1部分12および第2部分14が平行に設けられ、且つ第1方向と交差する第2方向において、延在部11からの第1部分12の長さ及び延在部11からの第2部分14の長さが略同等であることが好ましく、同等であることがより好ましい。ここで、本実施形態において、略同等とは、|(延在部11から第1部分12までの第2方向における長さ)/(延在部11から第2部分14までの第2方向における長さ)|の大きさが0.9~1.1であることをいう。ピックアップコイルの第1部分12および第2部分14がこのような構成であることで、後述する励磁コイル内の測定エリアに挿入した際、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cを貫く磁束密度を同等にすることができ、磁界発生装置50による磁界の影響をキャンセルし、測定試料の磁気特性のみを検出することができる。
【0037】
尚、測定対象としての磁性材料は、後述する通り、第1方向において、第1コイル部12Cまたは第2コイル部14Cと重なるように設けられる。測定対象が、第1方向において、第1コイル部12Cと重なるように設けられた場合、測定対象の磁化を第2コイル部14Cが検知しない程度に、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cが離間して設けられていることが好ましい。すなわち、接続部13の長さは、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cのうち、測定対象が配置されていないコイル部において、測定対象の磁化を検出しない程度に充分な長さであることが好ましい。
【0038】
具体的には、測定対象の磁化の外部への影響が測定対象の第1方向における長さに依存するため、接続部13の長さは、測定対象の第1方向における長さに応じて決定されることが好ましい。
【0039】
第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cのうち、測定対象が配置されていない側のコイル部が測定対象の磁化を検出しないようにする観点から、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cの第1方向における間隔となる接続部13の長さは、例えば測定対象の第1方向における長さ以上であり、測定対象の第1方向における長さの1.7倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。接続部13の長さをこのように設計することで、測定対象が配置されていない方のコイル部と比べ、測定対象が配置されている方のコイル部において、測定対象の磁化を十分強く検知できる。例えば、接続部13の長さが2mmのとき、測定対象のz方向長さは、例えば2mm以下であり、1.2mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましい。
【0040】
一方、磁界発生装置により発生される磁界は、第1方向において必ずしも均一ではない。第1コイル部12Cを貫く磁束密度と第2コイル部14Cを貫く磁束密度が同じでなければ、第1コイル部12Cで生じる誘導起電力と第2コイル部14Cで生じる誘導起電力にばらつく恐れがあり、磁界発生装置により発生された磁界による第1コイル部12Cと第2コイル部14Cとの誘電起電力の大きさの違いは、測定試料の磁気特性の測定誤差の原因になり得る。そのため、第1コイル部12Cが設けられる位置と第2コイル部14Cが設けられる位置での磁界発生装置により発生された磁界の大きさのばらつきを抑制することが好ましく、この観点から、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cは、第1方向に近接して配置されることが好ましい。
【0041】
接続部13の長さがこのような長さであることで、磁界発生装置により発生される磁界に対して第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cで生じる誘導起電力の大きさを均等にすることができる。また、接続部13の長さの測定対象の第1方向長さに対する比率が所定の値以上であることで、第1コイル部12Cと第2コイル部14Cとのうち、第1方向において測定試料と重ならない方のコイル部が測定対象の磁化を拾うことをより抑制できる。従って、接続部13の長さがこのような長さであることで、測定対象の磁気特性を高精度に測定することができる。
【0042】
ここで、測定対象の第1方向における長さとは、ピックアップコイル100aに設置されたときの測定対象の第1方向における長さをいう。このような接続部13の長さは、例えば、励磁コイル50のコイルの20周分の厚みである。
【0043】
導線パターン10Aは、面内方向と垂直な方向に貫通するビアに設けられた導電部16を介して、詳細を後述する裏面導線パターン10´と接続される。端部の一方が電極パッド30b重なる。
図5は、フレキシブル基板20Aの第2面の平面図であり、ピックアップコイル100aを展開した図である。ここで、フレキシブル基板20Aの第2面は、第1面の裏面である。
図5に示すように、フレキシブル基板20Aの第2面上にも導線パターンが設けられている。第2面において、フレキシブル基板20A上には、取手部21に設けられた電極パッド30bと、ビア40に設けられた導電部16と電極パッド30bとをつなぐ裏面導線パターン10A´と、が設けられている。裏面導線パターン10A´は、導電部16を介して導線パターン10Aと電気的に直列に接続している。導電部16は、ビア40のうち、導線パターン10Aと裏面導線パターン10A´とを直列につなぐように設けられていればよく、ビア40を埋めるように設けられていてもよく、ビア40の内周面の一部に設けられていてもよい。
電極パッド30bは、例えば第1面に設けられた電極パッド30aの裏側に設けられており、第1面に設けられた電極パッド30aとは独立した電極パッドである。電極パッド30aおよび30bには、それぞれ別々に外部の導線(不図示)が接続される。
【0044】
裏面導線パターン10A´は、ビア40と電極パッド30bとをつなぐ。裏面導線パターン10A´は、例えば、軸部22上に配置され、第1方向に延びる直線状のパターンからなることが好ましく、面内方向に垂直な方向から平面視して、第1面に設けられた導線パターン10Aの延在部11と重なるように設けられていることが好ましい。裏面導線パターン10A´がこのような配置であると、第1方向に磁界が発生する空間に対し、第1方向と垂直に第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cを配置し、測定試料の磁気特性を測定する際、導線パターン10A、10A´のうち、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14C以外の部分は、第1方向に平行な配置になるため、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14C以外の部分における交差磁場の発生を抑制できる。従って、導線パターン10A、10A´がこのようなパターン形状であることで、測定対象の磁気特性を高精度に測定することができる。
【0045】
図6は、ピックアップコイル100aに測定対象Zを配置する方法を説明するための図である。ピックアップコイル100aは、
図6に模式図を示すように、測定対象Zが設置される。具体的には、測定対象は、第1方向において、第1部分12または第2部分14と重なる位置に配置され、旗部23がx方向に1周以上巻回されることで、ピックアップコイル100aに設置される。旗部23を巻回する数は、外径を小さくする観点では、少ないことが好ましい。
図6においては、測定対象Zが、第1方向において第1部分12と重なり、第1コイル部12Cに囲まれる例を示した。しかしながら、本実施形態は、この例に限定されず、測定対象Zは、第1方向において第2部分14と重なり、第2コイル部14Cに囲まれる構成であってもよい。
【0046】
ピックアップコイル100aを磁界発生装置の測定エリアに挿入すると、測定対象Zが磁化されるとともに、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cを貫く磁束密度が変化し、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cに誘導起電力が生じる。第1コイル部12Cに生じた誘導起電力により流れ得る電流の向きと、第2コイル部14Cに生じた誘導起電力により流れ得る電流の向きと、は逆方向である。例えば、第1コイル部12Cに右回りに電流を流すように誘導起電力が発生する場合、第2コイル部14Cに左回りに電流を流すように発生する。磁界発生装置が発生させる磁束の磁束密度であって、第1コイル部12C及び第2コイル部14Cを貫く磁束密度は略同等であり、そのため、第1コイル部12Cに生じる誘導起電力と第2コイル部14Cに生じる誘導起電力とは同じ大きさである。従って、磁界発生装置の測定エリアに挿入されることで第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cに生じた誘導起電力は、キャンセルされる。
【0047】
また、測定対象Zは、磁界発生装置による磁界を受け、磁化される。そのため、測定対象Zが磁化されることにより、
図6に模式図を示す構成において、測定対象Zを囲む第1コイル部12Cを貫く磁束密度は変化する。従って、測定対象Zが磁化された大きさに応じた誘導起電力が第1コイル部12Cに生じる。本実施形態のピックアップコイル100aでは、この誘導起電力の大きさおよび磁界発生装置から発生された磁界の大きさを測定することで、測定対象Zの磁気特性を高精度に測定できる。
【0048】
本実施形態に係るピックアップコイル100aは、例えば、フレキシブル基板を加工する加工工程と、フレキシブル基板にビアを設ける開口工程と、フレキシブル基板上に導線パターンを形成するパターニング工程と、フレキシブル基板の表裏の導線パターンを繋ぐ接続工程と、導線パターンと重なるように絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、フレキシブル基板に電極パッドを設ける電極形成工程と、導線パターンが設けられたフレキシブル基板の一部を巻回する巻回工程と、を有する製造方法により、製造される。
【0049】
加工工程では、例えばレーザー加工により、フレキシブル基板を所望の形状に加工する。開口工程では、例えば、ドリルマシン等を用いて、フレキシブル基板の所望の位置に穴あけ加工を行うことができる。パターニング工程では、パターニングにより、導線パターンを設けることができる。具体的には、先ず表面に銅箔等の導電膜が設けられたフレキシブル基板の表面にフォトレジストを塗布し、導線パターンに対応させてフォトマスクを設け、露光および現像する、といった手順でパターニングを行う。接続工程では、フレキシブル基板のビアにメッキ加工等を行い、ビアにフレキシブル基板の表裏の導線パターンを接続する導電部を設ける。絶縁層形成工程は、少なくとも導線パターンと重なる部分に絶縁層を形成する。絶縁層形成工程は、電極パッドを設ける部分を除き、フレキシブル基板の表面全体に絶縁層を形成してもよい。電極形成工程は、導線パターンの端部同士をつなぐ、電気的に直列な導線パターンを設けることができる。電極形成工程では、フレキシブル基板の導線パターンの端部にメッキ加工等により、電極パッドを形成する。巻回工程では、導線パターンが設けられたフレキシブル基板の少なくとも一部を巻回する工程である。巻回工程では、第1コイル部および第2コイル部が同じ巻き数となるように1周以上の任意の回数だけ巻回する。
【0050】
[磁気測定装置]
図7は、本発明の一実施形態にかかる磁気特性測定装置200を模式的に示す図である。本実施形態に係る磁気特性測定装置200は、上記実施形態に係るピックアップコイル100aを備える磁気特性測定装置であって、中空の軸部51を有し、第1方向に高周波磁界を発生させる励磁コイル52を含む磁界発生装置50をさらに備え、第1方向において、第1部分12または第2部分14と重なる位置に設置された磁性材料の磁気特性を測定する。
【0051】
図7に示されるように、本実施形態に係る磁気特性測定装置200は、例えば電源装置1、磁界発生装置50、電圧計61,電流計62、デジタルオシロスコープ63および制御演算部7を備える。電源装置1は、例えば1MHz以上50MHz以下のインバータ電源を適用することができる。電源装置1が有するインバータ電源の数は、1つ以上の任意の数であり、2つであってもよい。電源装置1が出力する周波数や電力等は、制御演算部7により制御される。
【0052】
制御演算部7は、例えば、所定のプログラムが動作するコンピュータにより構成され、コンピュータ本体71、ディスプレイ72、キーボード73およびマウス74等を備える。制御演算部(コンピュータ)7は、ピックアップコイル100aによる電圧を検出する電圧計61の出力を、デジタルオシロスコープ63を介して受け取り、測定対象Zの磁気特性を測定する。なお、励磁コイル52は、例えば極小ソレノイドとして構成することにより、測定対象Zを高周波・高磁場で測定することが可能であり、且つ少量の測定試料で短時間に磁気特性を測定することができる。励磁コイル52は、例えば、内径が1mm以上5mm以下程度に設計することができる。
【0053】
磁界発生装置50に含まれる励磁コイル52は、1巻きごとに異なる符号が付される複数のコイル52la、52lb、52lc、52ld、・・・を有する。励磁コイル52は、例えば100巻き、或いは、それ以上の巻き数である。励磁コイル52において、中空の軸部51は、励磁コイル52の外形で構成されており、第1方向に軸方向を有する。励磁コイル52の軸部51の径方向内側には、測定対象Zの磁気特性を測定するための測定エリアが設けられている。第1方向において、励磁コイル52の中央近傍であって、かつ第1方向に垂直な面方向において、測定エリアのほぼ中央の位置は、励磁コイル52の軸中心近傍であり、励磁コイル52により例示される磁界(磁場)が安定している。測定対象Zは、第1方向において、励磁コイル52の中央近傍であり、且つ第1方向に垂直な面方向において、測定エリアのほぼ中央の位置に、配置され、ピックアップコイル100aによる、磁気特性の測定が行われる。
【0054】
ここで、磁界発生装置50に設けられた測定エリアは、例えば、直径が約2mm、深さが約2mm程度の円筒形状に設計される。本実施形態において、測定対象Zは、BHループトレーサに用いられる測定試料と比べ、非常に僅少な量で充分である。測定対象Zは、粒状やブロック状といった任意の形状にすることができ、測定に要する手間や時間を大幅に低減することができる。
【0055】
本実施形態に係る磁気特性測定装置200は、高い周波数(共振周波数:例えば、数MHz~数十MHz)で強い磁場(最大磁束密度:例えば、数テスラ(T))を印加した状態において、測定対象Zの磁気特性を測定することができる。そのため、例えば、次世代の半導体デバイスを適用した動作周波数における新たな磁性材料の磁気特性に対応することが可能である。
【0056】
ここで、励磁コイル52は、直列共振回路(直列LC共振回路)として構成され、例えば、中空の軸部の内部に形成される測定エリアに対して、安定した周波数(共振周波数)の磁場(磁界)を発生させるためのものである。また、ピックアップコイル100aは、励磁コイル52による磁場中における測定対象Zの磁気特性を測定するためのものである。
【0057】
励磁コイル52は、例えば、
図9に示すようにフレキシブル基板20B上に設けられた励磁コイル用導線パターン10Bが、軸方向を囲むように同一方向に複数回巻回されてなるコイルである。また、励磁コイル52は、例えば励磁コイル用導線パターンが1周ごとにコンデンサと直列接続された直列共振回路を構成している。
【0058】
このような励磁コイル52は、例えば、巻き数に対応する数のコイル52l(52la、52lb、52lc、52ld、・・・)およびコンデンサ52c(52ca、52cb、52cc、52cd、・・・)を直列に接続した直列LC共振回路として構成される。すなわち、一巻き目のコイル52laおよびコンデンサ52ca、二巻き目のコイル52lbおよびコンデンサ52ca、・・・、k巻き目のコイル52lkおよびコンデンサ52ckにより、
図8に示すようなLC直列共振回路が構成される。
【0059】
励磁コイル52は、例えば、上記実施形態に係るコイル100と同様に、フレキシブル基板上に導線パターンが形成され、フレキシブル基板が巻回されてなる。具体的には、磁界発生装置50は、
図9に示されるように、フレキシブル基板20B上に、導線パターン10Bが設けられ、所望の巻き数のコイルが形成されるようにx方向に複数回巻回されてなる。
図9においては、巻き数が4回の励磁コイル52が設けられる場合の導線パターン10Bを示したが、この例に限らず、所望の巻き数となるように、x方向における長さが十分であり、所望の数のコンデンサを含む導線パターンが形成される。
【0060】
図9において、符号52la、52lb、52lc、52ld、・・・)で示される構成は、フレキシブル基板20Bがx方向に複数回巻回されることで
図7に示すコイル52la、52lb、52lc、52ld、・・・になる構成である。同様に、
図9において、符号52ca、52cb、52cc、52cd、・・・で示される構成は、フレキシブル基板20Bがx方向に複数回巻回された磁界発生装置50におけるコンデンサ52c(52ca、52cb、52cc、52cd、・・・である。このように、フレキシブル基板20Bは、コンデンサ52ca、52cb、52cc、52cd、・・・がコイル1巻きごとに一つずつ設けられるように巻回される。導線パターン10Bが設けられたフレキシブル基板20Bを巻回された励磁コイル52を用いる場合、励磁コイル52に備えられるコンデンサは、フレキシブル基板20Bの巻回しやすさを阻害しないために、小型のチップコンデンサを用いることが好ましい。
【0061】
励磁コイル52は、このように、導線パターン10Bが設けられたフレキシブル基板20Bが巻回されてなる構成であるため、中空の軸部51の内径が数mm程度の非常に小さい構成も実現可能である。また、フレキシブル基板の巻回の仕方を変更することで、励磁コイル52の内径や巻き数を変更することも可能である。
【0062】
導線パターン10Bのy方向における長さは、励磁コイル52における第1方向の長さが所望の長さになるように形成される。
【0063】
測定対象Zは、粒状やブロック状であれば、フレキシブル基板20Aのうち、第1部分12または第2部分14と重なるように配置し、フレキシブル基板20Aの旗部23を巻回することで、ピックアップコイル100aの第1方向において、第1コイル部12Cまたは第2コイル部14Cと重なる位置に設けられる。測定対象Zが粉状であれば、例えば円筒状や球状の測定容器内に測定試料を収容し、該測定容器を、フレキシブル基板20Aのうち、第1部分12または第2部分14と重なるように配置し、フレキシブル基板を巻回することで、ピックアップコイル100aの第1方向において、第1コイル部12Cまたは第2コイル部14Cと重なる位置に設けられる。
【0064】
図10は、
図7に示す制御演算部の動作の一例を説明するための機能ブロック図である。
図10に示されるように、制御演算部7は、例えば、電源装置の制御機能711、共進周波数の検出機能712、印加磁界の演算機能713、印加磁界の誘導起電力検出機能714、磁界の演算機能715、保磁力の検出機能716,飽和磁界の検出機能717およびその他の機能718を有する。
【0065】
このような制御演算部7において、電源装置の制御機能711は、例えば電源装置1の出力電圧および周波数等を制御する機能である。
【0066】
共振周波数の検出機能712は、例えば、励磁コイル52を流れる電流を検出する電流計62の出力を、デジタルオシロスコープ63を介して受け取り、励磁コイル52により発生される磁界の共振周波数を検出する機能である。
【0067】
印加磁界の演算機能713は、測定エリアに印加される印加磁界を演算する機能である。印加磁界の演算機能713は、磁界発生装置50の励磁コイル52に印加された電流および電圧を基に発生する磁界の大きさを演算することが可能である。
【0068】
印加磁界の誘導起電力検出機能714は、ピックアップコイル100aによる電圧(誘導起電力)を検出する電圧計61の出力を、デジタルオシロスコープ63を介して受け取り、測定対象Zによる誘導起電力を検出する機能である。
【0069】
磁化の演算機能715は、電流計62による励磁コイル52を流れる電流およびピックアップコイル100aの出力電圧に基いて、測定対象Zの磁化(M)を演算する機能である。
【0070】
飽和磁化の検出機能717、測定対象Zの保磁力(Hc)を検出する保磁力検出機能716、並びに、測定対象Zの飽和磁化(Ms)を検出する機能である。
【0071】
制御演算部7は、さらに、制御演算部7は、測定対象Zの他の様々な磁気特性等のその他の機能718も有する。
【0072】
なお、前述したように、制御演算部7(コンピュータ)は、コンピュータ本体71の他に、例えば、データや指示を入力するためのキーボード73およびマウス74、並びに、演算された出力データ(ヒステリシス曲線等のデータ)を表示するディスプレイ72を備えるが、知られている様々な変形および変更を適用することができるのはいうまでもない。
【0073】
また、本実施形態に係る磁気特性測定装置は、請求の範囲に記載された範囲内で適宜変更が可能である。例えば、磁界発生装置50に設けられた測定エリアの大きさは、測定対象の大きさ等に応じて任意に選択される。
【0074】
本実施形態に係る磁気特性測定装置では、第1コイル部12C及び第2コイル部14Cに対し、逆方向に電流を流すように誘導起電力が生じるため、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cを貫く磁束による第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cの誘導起電力がキャンセルされ、測定対象Zの磁気特性のみを検出し、測定対象Zの磁気特性を高精度に測定することができる。
【0075】
[磁気特性測定方法]
本発明の一実施形態に係る磁気特性測定方法は、上記実施形態に係るコイルをピックアップコイルとして用いる磁気特性測定方法であって、中空の軸部を有する励磁コイルを用いて第1方向に高周波磁界を発生させ、第1方向において、第1部分12または第2部分14と重なる位置に測定対象Zを設置したピックアップコイル100aを中空の軸部に挿入し、高周波磁界が印加された測定対象Zの磁気特性をピックアップコイルにより測定する。本実施形態の磁気特性測定方法は、励磁コイルとして、例えば上記実施形態に係る励磁コイル52を用いることができる。
【0076】
本実施形態に係る磁気特性測定方法は、例えば、励磁コイルとして、上記実施形態に係る励磁コイル52のような、フレキシブル基板上に設けられた励磁コイル用導線パターンが、軸方向を囲むように同一方向に複数回巻回されてなるコイルを用い、励磁コイル用導線パターンが1周する毎にコンデンサと直列接続することで直列共振回路を構成するコイルを用い、励磁コイルに対して供給する電力を制御するとともに、励磁コイルを流れる電流およびピックアップコイル100aの出力電圧に基づいて、測定対象Zの磁気特性を演算する。
【0077】
尚、本実施形態に係る磁気特性測定方法では、ピックアップコイル100aを磁界発生装置の測定エリアに挿入すると、測定対象Zが磁化されるとともに、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cを貫く磁束密度が変化し、第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cに誘導起電力が生じる。第1コイル部12Cに生じた誘導起電力の向きと、第2コイル部14Cに生じた誘導起電力の向きと、は、逆方向である。例えば、第1コイル部12Cに対して右回りに電流を流すように誘導起電力が発生する場合、第2コイル部14Cに対して左回りに電流を流すように誘導起電力が発生する。磁界発生装置が発生させる磁束の磁束密度であって、第1コイル部12C及び第2コイル部14Cを貫く磁束密度は略同等であり、そのため、第1コイル部12Cに生じる誘導起電力と第2コイル部14Cに生じる誘導起電力とは同じ大きさである。そのため、磁界発生装置の測定エリアに挿入されることで第1コイル部12Cおよび第2コイル部14Cに生じた誘導起電力は、キャンセルされる。従って、本実施形態に係る磁気特性測定方法では、測定対象の磁気特性を高精度に測定することができる。
【0078】
本実施形態に係る磁気特性測定方法では、径や巻き数といった構成の自由度が高いピックアップコイルを用いるため、内径の小さい励磁コイルに対しても適用することが容易である。また、本実施形態に係る磁気特性測定方法は、ピックアップコイルとして、フレキシブル基板上に導線パターンが形成されたピックアップコイルを用いるため、径や巻き数を変更することが容易である。
【符号の説明】
【0079】
100:コイル、100A:コイル(ピックアップコイル)、10,10A,10B:導線パターン、11:延在部、12:第1部分、12C:第1コイル部、13:接続部、14:第2部分、14C:第2コイル部、15:ビア接続部、20、20A、20B:フレキシブル基板、21:取手部、22:軸部、23:旗部、30:電極パッド、40:ビア、50:磁界発生装置、51:中空の軸部、52:励磁コイル、Z:測定対象