(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057445
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】織機
(51)【国際特許分類】
D03D 49/00 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
D03D49/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166982
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】林 倫也
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050CC09
(57)【要約】
【課題】各サイドフレーム内に設けられた軸受を介して支持されて一対の前記サイドフレームに架設される回転軸であって、各前記サイドフレームに支持される中実の軸状の軸部と前記両軸部間に位置する中空のパイプ状の主体部とから成る回転軸を備えた織機において、その回転軸の振動を可及的に抑えることができる構成を提供する。
【解決手段】その織機は、前記回転軸の軸線方向に関し前記サイドフレーム間における前記両軸部の存在範囲の少なくとも一方に設けられる軸受構造体であって、前記軸部が嵌挿される転がり軸受と前記転がり軸受を支持する支持体とを含む軸受構造体を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各サイドフレーム内に設けられた軸受を介して支持されて一対の前記サイドフレームに架設される回転軸であって、各前記サイドフレームに支持される中実の軸状の軸部と前記両軸部間に位置する中空のパイプ状の主体部とから成る回転軸を備えた織機において、
前記回転軸の軸線方向に関し前記サイドフレーム間における前記両軸部の存在範囲の少なくとも一方に設けられる軸受構造体であって、前記軸部が嵌挿される転がり軸受と前記転がり軸受を支持する支持体とを含む軸受構造体を備える
ことを特徴とする織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各サイドフレーム内に設けられた軸受を介して支持されて一対の前記サイドフレームに架設される回転軸であって、各前記サイドフレームに支持される中実の軸状の軸部と前記両軸部間に位置する中空のパイプ状の主体部とから成る回転軸を備えた織機に関する。
【背景技術】
【0002】
織機において、回転軸である主軸は、織機フレームにおける一対のサイドフレームに架設されるかたちで設けられている。なお、その各サイドフレームに対する主軸の支持は、例えば、サイドフレーム内において軸受を介して支持された支持軸が織機フレームの内側へ向けて突出するように設けられ、その支持軸に連結されることで、主軸が支持軸及び軸受を介してサイドフレームに対し支持される、といったかたちで行われている。また、その主軸としては、その全体が中実に形成されたものも存在するが、軽量化を目的として、大部分を占める主体的な部分である主体部が中空のパイプ状の部材として形成され、その主体部以外の両端の部分である軸部が中実の軸状の部材として形成されたものも知られている。
【0003】
また、織機におけるサイドフレームに架設される回転軸としては、前記のような主軸以外にも、例えば、クランク式の開口装置における開口シャフトが存在する。そして、その開口シャフトにも、前記した主軸のように、中空の主体部と中実の軸部とで構成されたものがある。
【0004】
なお、前記した主軸や開口シャフトといった回転軸を備える織機の構成が、例えば、特許文献1、2に開示されている。その特許文献1には、織機に備えられた主軸が開示されており、その主軸は、その両端部において各サイドフレーム(織機フレーム)に支持されている。さらに、その特許文献1に開示された織機は、主軸をその中間の位置においても支えるように設けられた軸支装置(中受け部材)を備えている。そして、その軸支装置は、軸受を含んでおり、その軸受を介して主軸を支えるように構成されている。また、特許文献2には、織機に備えられた開口シャフトが開示されており、その特許文献2に開示された織機も、特許文献1に開示された織機と同様に、開口シャフトをその中間位置で支える軸支装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-291380号公報
【特許文献2】実公平7-26374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した軸支装置は、前記のように回転軸をその中間位置で支えるように設けられるものであることから、回転軸が前記のような中空の主体部を含むように構成されている場合には、その主体部を支えるかたちで設けられることとなる。その場合、その主体部が前記のように中空のパイプ状の部材であることから、その軸支装置は、一般的には、軸受として滑り軸受(軸受メタル)を採用したものとされる。そして、そのような滑り軸受を用いた軸支装置においては、通常は、その滑り軸受と回転軸との間に僅かな隙間が存在する状態となっている。
【0007】
なお、織機においては、その運転中(製織中)に、筬打ち運動や開口運動等に起因して、回転軸を支持するサイドフレームを含む織機フレーム全体が振動する。そして、その振動に起因して回転軸も振動してしまう。そこで、前記した軸支装置は、その回転軸の振動を抑えることを目的として設けられている。しかし、その軸支装置においては、前記のように滑り軸受と回転軸との間に隙間が存在するため、回転軸は、その隙間の範囲においては振動することとなる。
【0008】
また、織機においては、その運転中の織機の回転数との関係で回転軸が共振する共振現象が発生し、それにより、回転軸がより激しく振動する状態となる場合がある。より詳しくは、前記のように織機フレームは運転中において全体的に振動するが、その振動は織機の回転数に応じたものとなっている。そして、その回転数に応じた織機フレームの振動と、回転軸を支持する部分を含む回転軸の系の固有振動数との関係で、前記共振現象が発生し、回転軸が激しく振動する状態となる場合がある。
【0009】
但し、その回転軸の系の固有振動数について、前記のように回転軸に対し前記中間位置に軸支装置が設けられているが、その軸受と回転軸との間には前記のような隙間が存在するため、回転軸の実質的な支持は、サイドフレームに対し支持される両端の支持部分での支持のみとなっている。したがって、そのような支持部分を含む回転軸の系の固有振動数は、その軸支装置の存在に影響を受けない(軸支装置が設けられていない場合と同じ)ものとなっている。
【0010】
そして、前記のように織機フレーム(サイドフレーム)が振動することに伴って回転軸が振動するのに加え、前記共振現象が発生すると、その回転軸の振動が増長されてよりいっそう激しいものとなり、回転軸や、その回転軸を支持するためにサイドフレーム内に設けられている軸受が破損するといった問題が生じる場合がある。
【0011】
以上のような実情を鑑み、本発明は、前記のように中空の主体部と中実の軸部とで構成された回転軸を備えた織機において、その回転軸の振動を可及的に抑えることができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、各サイドフレーム内に設けられた軸受を介して支持されて一対の前記サイドフレームに架設される回転軸であって、各前記サイドフレームに支持される中実の軸状の軸部と前記両軸部間に位置する中空のパイプ状の主体部とから成る回転軸を備えた織機を前提とする。
【0013】
その上で、前記の目的を達成すべく、本発明による織機は、前記回転軸の軸線方向に関し前記サイドフレーム間における前記両軸部の存在範囲の少なくとも一方に設けられる軸受構造体であって、前記軸部が嵌挿される転がり軸受と前記転がり軸受を支持する支持体とを含む軸受構造体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による織機によれば、回転軸は、サイドフレームに対する両端での支持に加え、回転軸における中実の軸部に対し外嵌される(隙間が無い状態で嵌め合わされる)転がり軸受を軸受として採用した軸受構造体によっても支持された状態となっている。したがって、その回転軸の系は、その軸受構造体をも含むかたちとなっている。また、本発明においては、その軸受構造体は、軸部に対し嵌装されていれば良く(軸部の存在範囲に設けられていれば良く)、その位置は、その軸部の存在範囲において任意に設定可能である。そして、その回転軸の系の固有振動数は、その軸受構造体の位置に応じて変化することとなる。言い換えれば、その軸受構造体の位置によって、その回転軸の系の固有振動数が決定されることとなる。
【0015】
なお、織機を製造、販売する上で、回転数を含むその織機の運転条件は、予めユーザから提供されており、その織機を設計する以前に把握されているのが一般的である。したがって、その把握されている織機の運転条件に基づき、回転軸の系について、前記共振現象が発生する固有振動数を求めることが可能となっている。その上で、本発明の織機においては、前記のように軸受構造体の位置を回転軸における軸部の存在範囲において任意に設定可能であることから、その求めた前記共振現象が発生する固有振動数を踏まえ、回転軸の系の固有振動数がそれに一致しないように軸受構造体の位置を設定することが可能である。そして、そのように軸受構造体の位置を設定することで、製織中における前記共振現象の発生を防ぐことができ、回転軸が激しく振動することに起因する回転軸や軸受の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明が前提とする織機の一例を示す織機の概略正面図。
【
図2】本発明による織機に備えられる軸受構造体の一例を示す軸受構造体の正面図。
【
図3】
図2で示す織機のA-A線断面図(軸受構造体の側面図)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、
図1~3に基づき、本発明による織機の一実施例を説明する。
【0018】
織機1において、フレーム2は、一対のサイドフレーム3、3を主体とし、その両サイドフレーム3、3が複数の梁材で連結された構成となっている。なお、その各サイドフレーム3は、内部に空間を有する筐体形状に形成されている。そして、両サイドフレーム3、3は、その幅方向(織機1の織幅方向)において対向した状態で、前記のように複数の梁材で連結されている。また、その梁材について、
図1~3に示す梁材4は、所謂フロントトップステーであり、織機1の前後方向における巻取ロール(図示略)側において、上下方向に関しその巻取ロールよりも上方の位置に設けられている。
【0019】
また、織機1において、主軸5は、前記した一対のサイドフレーム3、3に架設されるかたちで設けられている。その主軸5は、各サイドフレーム3に対し支持される中実の軸状の軸部5a、5cと、両軸部5a、5c間に位置する中空のパイプ状の主体部5bとで構成されている。このように、織機1は、本発明で言う回転軸としての主軸5を備えている。なお、その主軸5における各軸部5a、5cにおいて、主体部5b側の端部5a1、5c1は、主体部5bの外径に合わせて、その端部5a1、5c1以外の部分の直径よりも大径のフランジ状の部分(フランジ部)となるように形成されている。そして、その主軸5は、前記前後方向に関し、フロントトップステー4に対し前記巻取ロール側とは反対側の近傍であって、上下方向に関し、フロントトップステー4の下方に位置するように設けられている。
【0020】
なお、本実施例において、主軸5は、各サイドフレーム3に対し支持された支持軸8にカップリング部材10を介して連結されることで、前記のようにサイドフレーム3、3に架設された状態とされている。したがって、各サイドフレーム3には、前記前後方向及び上下方向における前記した主軸5の位置に合わせた位置において、支持軸8が設けられている。
【0021】
その支持軸8は、サイドフレーム3の前記織幅方向における寸法よりも長い軸長を有しており、各サイドフレーム3において、サイドフレーム3から織機1の内側へ向けて突出するように設けられている。但し、支持軸8は、サイドフレーム3における両側壁3a、3aに対し軸受9を介して支持されており、サイドフレーム3に対し回転可能に設けられた状態となっている。
【0022】
因みに、織機1は、駆動源としての原動モータを含む駆動機構(図示略)を備えている。また、その駆動機構は、一対のサイドフレーム3、3における一方のサイドフレーム3の側に設けられている。その上で、本実施例では、その駆動機構は、
図1における右側のサイドフレーム3の側に設けられているものとする。そして、その右側のサイドフレーム3に支持されている支持軸8(一方の支持軸8a)が前記駆動機構に連結されて回転駆動され、それにより主軸5が回転駆動される。
【0023】
また、織機1は、筬12を揺動駆動するためのロッキングシャフト13を含む筬打ち装置11を備えている。そのロッキングシャフト13は、主軸5と同様に、両サイドフレーム3、3に架設されるかたちで設けられている。また、ロッキングシャフト13は、前記前後方向に関し主軸5の位置と略同じ位置で、上下方向に関し主軸5の上方に位置するように設けられている。さらに、ロッキングシャフト13は、前記のように両サイドフレーム3、3に架設された状態で、その中間位置においても、軸支装置14によって支持されている。
【0024】
なお、その軸支装置14は、図示の例では、ロッキングシャフト13をその両端部の間における2箇所で支持するように、2つ設けられている。そして、各軸支装置14は、フロントトップステー4に対し固定された支持プレート15に支持されている。より詳しくは、その支持プレート15は、フロントトップステー4における下面に固定されており、前記織幅方向に関しフロントトップステー4の略全長に亘って存在すると共に、前記前後方向に関しフロントトップステー4からロッキングシャフト13(主軸5)に亘って存在するかたちで設けられている。そして、各軸支装置14は、その支持プレート15における上面に載置された状態で、支持プレート15に取り付けられ(支持され)ている。
【0025】
以上のような織機1において、本発明では、その織機は、回転軸の軸線方向に関しサイドフレーム3、3間におけるその両軸部の存在範囲の少なくとも一方に設けられる軸受構造体を備えている。また、その軸受構造体は、回転軸の軸部が嵌挿される転がり軸受と、その転がり軸受を支持する支持体とを含んでいる。その上で、本実施例の軸受構造体20は、回転軸である主軸5を支持するために設けられているものとする。さらに、その軸受構造体20は、主軸5における両軸部5a、5cのうちの前記一方の支持軸8a(原動側のサイドフレーム3側の支持部8)に連結された軸部(一方の軸部)5aを支持するように設けられているものとする。そのような本実施例の軸受構造体20について、以下で詳細に説明する。
【0026】
図2、3に示すように、軸受構造体20は、前記一方の軸部5aが嵌挿される転がり軸受21と、その転がり軸受21を支持する支持体22とで構成されている。また、その支持体22は、転がり軸受21を保持する保持部24と、その保持部24を支持プレート15に対し支持された状態とするための支持部23とで構成されている。
【0027】
その支持体22について、保持部24は、板状であって、端面が略正方形状を成す部材となっている。但し、その保持部24には、転がり軸受21がその板厚方向に嵌装されるよう、板厚方向に貫通する貫通孔24aが形成されている。また、支持部23は、支持プレート15に取り付けられる部分である取付部23aと、保持部24が取り付けられる部分である被取付部23bとで構成されており、その取付部23aと被取付部23bとが一体的に形成されたものとなっている。
【0028】
その支持部23について、取付部23aは、板状であって、その板厚方向に見て略T字形を成すように形成されている。具体的には、取付部23aは、支持プレート15に取り付けられる部分である基部23a1と、その基部23a1に対し直交する方向に延在するように設けられた部分である延在部23a2とで構成されている。
【0029】
より詳しくは、その基部23a1は、直方体状を成すように形成されている。但し、その基部23a1における4つの側面は、その長辺の長さが短辺の長さに対し十分に長い矩形状を成している。そして、その基部23a1には、取付部23a(支持部23)を支持プレート15に取り付けるためのネジ部材26を挿通するための貫通孔23dが、その基部23a1の前記長辺の方向(長手方向)における両端部のそれぞれに形成されている。なお、その各貫通孔23dは、基部23a1における平行を成す2つの側面に開口すると共に、その両側面に対し直交する方向に貫通するように形成されている。そして、その貫通孔23dが開口する両側面の一方が、支持プレート15に取り付けられる際に支持プレート15に当接した状態とされる取付面となる。
【0030】
また、延在部23a2は、基部23a1と同様に直方体状を成すように形成されている。そして、その延在部23a2は、前記長手方向における基部23a1の略中央部(前記両端部の間の部分)において、前記取付面とは反対側の側面から貫通孔23dの貫通方向と平行に延在するように形成されている。また、その延在部23a2のその延在方向における長さは、貫通孔23dの貫通方向(延在部23a2の延在方向)における基部23a1の寸法との合計が保持部24における側面の長辺の長さと略一致するようなものとなっている。
【0031】
また、被取付部23bは、板状であって、端面が矩形状を成すように形成されている。そして、被取付部23bは、その端面が延在部23a2の前記延在方向と平行を成すと共に取付部23aの板厚方向と平行を成すように形成されている。但し、その被取付部23bの前記長手方向における位置は、その被取付部23bが延在部23a2の存在範囲内に存在するような位置となっている。さらに、被取付部23bは、前記延在方向に関し、取付部23aと略同じ寸法を有しており、取付部23aの存在範囲に亘って存在するように形成されている。なお、取付部23aの板厚方向における被取付部23bの寸法は、保持部24の板厚よりも若干大きくなっている。その上で、その被取付部23bには、保持部24が取り付けられるためのネジ部材25が挿通される貫通孔23cが、その板厚方向に貫通するようにして、前記延在方向に間隔を置いて2つ形成されている。
【0032】
そして、前記のような保持部24及び支持部23から成る支持体22において、その保持部24(貫通孔24a)には、転がり軸受21が嵌装されている。その上で、保持部24は、その板厚方向を支持部23における取付部23aの板厚方向と一致させるかたちで、支持部23における被取付部23bに対し取り付けられている。また、その取り付けは、その被取付部23bにおける各貫通孔23cに挿通されたネジ部材25が保持部24に螺挿されるかたちで行われている。
【0033】
そして、そのように保持部24が支持部23に取り付けられた状態(取付け状態)では、保持部24は、前記延在方向に関し、その位置を被取付部23bの位置と合わせた状態となっている。また、その取付け状態では、取付部23aの板厚方向に見て、保持部24に嵌装された転がり軸受21における内輪が全体として露出した状態(取付部23aと重複しない状態)となっている。言い換えれば、支持部23において、前記延在方向における基部23a1の寸法、及び前記長手方向における延在部23a2に対する被取付部23bの位置は、そのように転がり軸受21における内輪の露出状態が実現され得るようなものとなっている。
【0034】
さらに、前記取付け状態では、前記延在方向に関し、支持部23の基部23a1における前記取付面から転がり軸受21(内輪)の中心の位置までの寸法は、織機1において架設された状態とされる主軸5の軸心から支持プレート15までの距離と一致する大きさとなっている。より詳しくは、織機1においては、主軸5は、前述のように支持軸8に連結された状態でサイドフレーム3、3に架設されており、その位置は、その軸心が支持軸8の軸心と一致する位置となっている。したがって、支持部23は、前記延在方向に関し、前記取付面から転がり軸受21の中心位置までの寸法が、織機1上での上下方向における支持軸8の軸心から支持プレート15までの距離と一致する大きさとなるように形成されている。
【0035】
そして、以上のように構成された支持体22における保持部24に嵌装された転がり軸受21に対し、主軸5における前記一方の軸部5aが嵌挿される。また、そのように前記一方の軸部5aが転がり軸受21に嵌挿された状態においては、その軸部5aにおけるフランジ部5a1と転がり軸受21とが当接した状態とされている。
【0036】
なお、一般的に転がり軸受は、径が大きいものほど、アキシャル方向及びラジアル方向の荷重に強く、支持する軸の振動を抑えるのに有効であるとされている。そこで、本実施例においても、主軸5の振動をより抑えるためにより大きい転がり軸受を採用すべく、主軸5における前記一方の軸部5aは、その転がり軸受21に嵌挿される部分であってフランジ部5a1に隣接する部分(嵌挿部)5a2が、その先端側の部分(カップリング部材10で支持軸8aに連結される部分)5a3の直径よりも大径に形成されている。
【0037】
そして、支持体22は、後述する前記織幅方向における位置(取付け位置)で、その支持部23の取付部23aにおいて支持プレート15における下面に対し取り付けられている。すなわち、その支持体22及び前記のように主軸5の前記一方の軸部5aが嵌挿される転がり軸受21を含む軸受構造体20は、前記取付け位置において、支持プレート15の下面に対し取り付けられている。なお、その取り付けは、その取付部23aの基部23a1における各貫通孔23dに挿通されたネジ部材26が支持プレート15に螺挿されるかたちで行われている。
【0038】
そして、そのように軸受構造体20が支持プレート15に取り付けられることで、主軸5は、前記取付け位置においては、軸受構造体20によって支持された状態となる。その上で、主軸5は、その各軸部5a、5cにおいて前記のように各サイドフレーム3に対し支持された支持軸8に対しカップリング部材10を介して連結され、一対のサイドフレーム3、3に架設された状態とされる。それにより、主軸5は、その両端部(各軸部5a、5cの端部)においてサイドフレーム3に支持されると共に、両端部間であって前記一方の軸部5aにおける嵌挿部5a2においても軸受構造体20によって支持された状態となっている。
【0039】
なお、その軸受構造体20による前記織幅方向における支持位置(前記取付け位置)について、その前記取付け位置は、その軸受構造体20を含む主軸5の系の固有振動数と主軸5の共振現象が発生する固有振動数とが異なる(一致しない)ような位置に設定されている。但し、前記のように本実施例では、軸受構造体20は、転がり軸受21に主軸5の前記一方の軸部5aが嵌挿された状態において、その転がり軸受21が前記一方の軸部5aにおけるフランジ部5a1に当接した状態とされる。したがって、前記取付け位置は、主軸5における各構成部分(主体部5b、各軸部5a、5c、前記一方の軸部5aにおけるフランジ部5a1等)のその軸線方向の寸法によって決まることとなる。そこで、主軸5は、前記取付け位置が、その系の固有振動数と前記共振現象が発生する固有振動数とが異なるような位置になるように構成されている。
【0040】
そして、そのように設けられた軸受構造体20により主軸5が支持されるように構成された織機1によれば、製織中において前記共振現象が発生することが無いため、その前記共振現象に起因する主軸5の激しい振動が発生することが無く、その激しい振動によって主軸5や主軸5を支持するために各サイドフレーム3内に設けられた軸受9が破損することが防止される。
【0041】
なお、軸受構造体20は、前述のように両端部において支持される主軸5をその両端部間においても追加的に支持するように設けられるものであることから、前記のような前記共振現象の発生を防止する(その前記共振現象に起因する主軸5の激しい振動を防止する)ことに加え、その追加的な支持による振動を抑える効果(振動抑制効果)をも奏するものとなっている。その上で、本実施例では、前述のように軸受構造体20の転がり軸受21に嵌挿される軸部5aにおいて嵌挿部5a2を前記先端側の部分5a3よりも直径が大きくなるように形成し、転がり軸受21としてより径が大きい軸受を採用している。それにより、その構成は、より大きい前記振動抑制効果が得られるものとなっている。
【0042】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(6)のように変形させた態様(変形例)でも実施することができる。
【0043】
(1)軸受構造体における支持体について、前記実施例では、支持体22は、転がり軸受21を保持する板状の保持部24及びその板状の保持部24を支持プレート15に対し支持された状態とするための支持部23で構成されると共に、その支持部23が取付部23aと被取付部23bとで構成されたものとなっている。しかし、本発明における軸受構造体において、支持体が保持部と支持部とで構成されるものであっても、支持部は、前記実施例のように構成されたものに限らず、保持部を支持プレート15に対し支持された状態とすることができるものであれば、どのような形状に形成されたものであっても良い。
【0044】
また、前記実施例では、支持体22は、保持部24と支持部23とがそれぞれ別部材で形成され、両部材が組み合わされて構成されたものとなっている。しかし、本支持体は、そのように保持部に相当する部分と支持部に相当する部分とを含むように構成される場合であっても、その両者が別部材で構成されたものには限らず、保持部と支持部とが単一の部材の部分であるように一体に形成されて構成されたものであっても良い。
【0045】
なお、そのように支持体を単一の部材で構成する場合については、例えば、その支持体は、L字形に屈曲させた板材として構成することも可能である。より詳しくは、そのL字形の板材について、その屈曲部よりも一端側の部分に転がり軸受21が嵌装される貫通孔を形成してその一端側の部分を保持部に相当する部分にすると共に、その屈曲部よりも他端側の部分を支持プレート15に取り付けられる支持部に相当する部分となるように構成することで、その板材を支持体とすることが可能となる。
【0046】
(2)軸受構造体が取り付けられる織機上の部分について、前記実施例では、支持体22は、一対のサイドフレーム3、3を連結する複数の梁材の1つであるフロントトップステー4に固定された支持プレート15に対し取り付けられている。しかし、本発明の織機において、軸受構造体は、そのように支持プレート15に取り付けられるかたちで設けられるのには限られない。
【0047】
例えば、フロントトップステー4に支持プレートが取り付けられている場合であっても、その支持プレートの存在範囲や軸受構造体の前記織幅方向における位置等によっては、軸受構造体は、フロントトップステー4に対し直接的に取り付けられるかたちで設けられるようにしても良い。また、織機がフレームにおける複数の梁材を連結する補助フレームを備えるように構成されている場合には、軸受構造体は、その補助フレームに取り付けられるかたちで設けられていても良い。
【0048】
さらに、軸受構造体は、サイドフレーム3に取り付けられるかたちで設けられていても良い。なお、その場合には、軸受構造体における支持体(支持部)は、サイドフレーム3の内側の側面に対し取り付けられる部分を有すると共に、その部分でサイドフレーム3に対し取り付けられた状態で前記織幅方向に関し軸受構造体による主軸の支持位置(転がり軸受が配置される位置)まで延在するように構成されたものとされる。
【0049】
(3)軸受構造体の前記織幅方向における位置について、前記実施例では、軸受構造体20は、主軸5における前記一方の軸部(原動側のサイドフレーム3側の支持軸8aに対し連結される軸部)5aにおいて主軸5を支持するように設けられている。すなわち、軸受構造体は、回転軸における両軸部の一方であって原動側の軸部において回転軸を支持するように設けられている。しかし、本発明の織機において、軸受構造体は、そのように原動側の軸部で回転軸を支持するように設けられるのには限られず、その原動側とは反対の側の軸部で回転軸を支持するように設けられていても良い。また、軸受構造体は、そのように回転軸における両軸部のうち一方のみで回転軸を支持するように設けられるのにも限られず、その両軸部のそれぞれで回転軸を支持するように設けられていても良い。
【0050】
なお、軸受構造体が回転軸における原動側とは反対の側の軸部あるいは両軸部で回転軸を支持するように設けられるいずれの場合においても、その軸部に対する軸受構造体の前記織幅方向における位置は、その軸受構造体を含む回転軸の系の固有振動数がその回転軸の共振現象を発生させる固有振動数と異なるという条件(共振防止条件)を満たすような位置に設定される。
【0051】
また、織機においては、回転軸が架設される一対のサイドフレームは、原動側のサイドフレームの方が反対側のサイドフレームよりも大きく振動する傾向がある。したがって、回転軸も、その両端部のうちの原動側のサイドフレームに支持される側の端部の方がより大きく振動することとなる。そこで、回転軸における両軸部のうちの少なくとも原動側の軸部を支持するように軸受構造体を設けることで、前述した軸受構造体による前記振動抑制効果により、回転軸の振動をより効果的に抑えることができる。
【0052】
(4)軸受構造体と回転軸との組合せ状態について、前記実施例では、軸受構造体20と回転軸5とは、軸受構造体20における転がり軸受21とその転がり軸受21に嵌挿された軸部5aにおけるフランジ部5a1とを当接させた状態で組み合わされている。しかし、本発明において、両者の前記組合せ状態は、そのようなかたちには限られない。すなわち、軸受構造体と回転軸とは、転がり軸受と軸部のフランジ部とが前記織幅方向において離間する(軸部におけるフランジ部から離間した位置で軸受構造体が回転軸を支持する)ように組み合わされていても良い。さらには、軸受構造体と回転軸とは、軸受構造体が軸部におけるフランジ部で回転軸を支持する(軸部におけるフランジ部が転がり軸受に嵌挿される)ように組み合わされていても良い。
【0053】
なお、前記のように前記織幅方向における軸受構造体の位置は、前記共振防止条件を満たすような位置に設定される。そして、その回転軸の系の固有振動数を決定する要素には、回転軸に対する軸受構造体の支持位置(回転軸上のどの位置で軸受構造体が回転軸を支持するか)や、回転軸における各構成部分(主体部、軸部)のその軸線方向の寸法やその直径等によって決まる回転軸の重量等が含まれる。さらに、前述のように、その回転軸の共振現象(その共振現象を発生させる固有振動数)には、ユーザが求める織機の前記運転条件における回転数も関係する。
【0054】
したがって、例えば、主軸の構成及びその主軸の支持構成が前記実施例のものと同じであっても、ユーザが求める織機の前記運転条件が大きく異なる場合には、軸受構造体の位置は前記実施例とは異なる位置となるが、本発明では、そのように軸受構造体が設けられるものであっても良い。さらに、本発明においては、回転軸自体の構成(各構成部分の前記軸線方向における寸法関係等)は特に限定されるものでは無いため、前記共振防止条件を満たした上で、前記実施例とは異なる前記組合せ状態となるように回転軸が構成されていても良い。
【0055】
また、前記実施例では、回転軸5の軸部5aは、フランジ部5a1を除く部分における転がり軸受21に嵌挿される嵌挿部5a2とそれよりも先端側の部分5a3とで直径が異なる(嵌挿部5a2の方が大きい)ように形成されているが、その両部分の直径が同じであるように形成されていても良い。なお、その場合において、そのフランジ部を除く部分は、全体として、前記実施例の嵌挿部5a2と直径が同じであるように形成されていても良いし、先端側の部分5a3と直径が同じであるように形成されていても良い。
【0056】
(5)本発明が適用される織機について、前記実施例では、織機1は、各サイドフレーム3に対し支持軸8がそのサイドフレーム3内の軸受9、9を介して支持されると共にその各支持軸8に対し回転軸としての主軸5が連結されることで、その主軸5が一対のサイドフレーム3、3に架設されるように構成されたものとなっている。しかし、本発明が適用される織機は、そのように支持軸を介して間接的にサイドフレームに支持されるかたちで回転軸が一対のサイドフレームに架設されるように構成されたものには限られず、回転軸がサイドフレームに対し直接的に支持されて回転軸が一対のサイドフレームに架設されるように構成されたものであっても良い。
【0057】
(6)本発明における回転軸について、前記実施例では、主軸5を本発明で言う回転軸とし、その主軸5の軸部5aが軸受構造体20の転がり軸受21に嵌挿されるように主軸5及び軸受構造体20が設けられている。しかし、本発明は、主軸を回転軸とするのには限られず、例えば、開口装置がクランク式の開口装置である場合には、その開口装置における開口シャフトを回転軸としたものであっても良い。そして、その場合、軸受構造体は、例えば、一対のサイドフレームを連結する複数の梁材の1つであるフロントボトムステー(フロントトップステー4の下方に設けられた梁材)に対し取り付けられるかたちで設けられるようにすれば良い。
【0058】
また、本発明は、以上で説明した実施例及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 織機
2 フレーム
3 サイドフレーム
3a 側壁
4 フロントトップステー
5 主軸(回転軸)
5a、5c 軸部
5a1、5c1 フランジ部
5a2 嵌挿部
5a3 先端側の部分
5b 主体部
8 支持軸
9 軸受
10 カップリング部材
11 筬打ち装置
12 筬
13 ロッキングシャフト
14 軸支装置
15 支持プレート
20 軸受構造体
21 転がり軸受
22 支持体
23 支持部
23a 取付部
23a1 基部
23a2 延在部
23b 被取付部
23c 貫通孔
23d 貫通孔
24 保持部
24a 貫通孔
25 ネジ部材
26 ネジ部材