(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057470
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】電源システム及び電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230414BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230414BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230414BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230414BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20230414BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H02J7/00 303E
H02J7/35 A
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/0656
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167023
(22)【出願日】2021-10-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年7月6日にウェブサイトにて公開(http://www.curmeprojects.com/)
(71)【出願人】
【識別番号】520356021
【氏名又は名称】川島 弘江
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 弘江
【テーマコード(参考)】
5G503
5H127
【Fターム(参考)】
5G503AA05
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503CC02
5G503GD03
5G503GD06
5H127AB27
5H127AB29
5H127AC01
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA22
5H127BA23
5H127BA60
5H127BB02
(57)【要約】
【課題】
負荷に安定した電力を供給することができる電源システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
燃料電池と、水素生成装置と、発電部と、電源部とを備え、発電部が、少なくとも水素生成装置と電源部へと電力を供給し、燃料電池が、水素生成装置により生成された水素を燃料とするものであり、電源部が、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えて負荷に供給するものであり、発電部が、再生可能エネルギーをもとに発電をするものである、電源システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、水素生成装置と、発電部と、電源部とを備え、
発電部が、少なくとも水素生成装置と電源部へと電力を供給し、
燃料電池が、水素生成装置により生成された水素を燃料とするものであり、
電源部が、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えて負荷に供給するものであり、
発電部が、再生可能エネルギーをもとに発電をするものである、電源システム。
【請求項2】
電源システムが、蓄電池を備え、
燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力との電力の切り替えの際に、一時的に蓄電池により電力を負荷に供給する、
請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
純水生成部を備え、水素生成装置が生成された純水をもとに水素を生成する、
請求項1又は2に記載の電源システム。
【請求項4】
水素生成装置により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵部を備え、
燃料電池が、水素貯蔵部に貯蔵された水素を燃料とする、
請求項1~3のいずれかに記載の電源システム。
【請求項5】
燃料電池と、水素生成装置と、発電部と、電源部とを備え、
発電部が、少なくとも水素生成装置と電源部へと電力を供給し、
燃料電池が、水素生成装置により生成された水素を燃料とする、電源システムの制御方法であって、
電源部が、
燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えて負荷に供給するものであり、
発電部が、再生可能エネルギーをもとに発電をするものである、
電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を備える電源システム及び電源システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力インフラ・システムとして、太陽光を利用した電池と蓄電池とを備えた自立型の電源システムが知られている(特許文献1及び2など)。特許文献1及び2に記載の自立型の電源システムは、太陽光による照射が十分である昼間に、太陽光にて発電した電力を負荷に供給しつつ、余剰の電力を蓄電池に充電し、夜間など太陽光による発電量が不足するときに、蓄電池から電力を負荷に供給している。
【0003】
このような蓄電池を利用する電源システムでは、夜間など太陽光による発電量が不足するときに、蓄電池による放電が過放電となり、負荷への安定した電力供給ができなくなるおそれがある。電源システムにおいては、負荷への安定的な電力の供給が維持されることが必須の課題であり、装置構成や制御方法など、さらなる改善が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-98827号公報
【特許文献2】特開2019-200839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、負荷に安定した電力を供給することができる電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、
[1]燃料電池と、水素生成装置と、発電部と、電源部とを備え、発電部が、少なくとも水素生成装置と電源部へと電力を供給し、燃料電池が、水素生成装置により生成された水素を燃料とするものであり、電源部が、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えて負荷に供給するものであり、発電部が、再生可能エネルギーをもとに発電をするものである、電源システム;
[2]電源システムが、蓄電池を備え、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力との電力の切り替えの際に、一時的に蓄電池により電力を負荷に供給する、前記[1]に記載の電源システム;
[3]純水生成部を備え、水素生成装置が生成された純水をもとに水素を生成する、前記[1]又は[2]に記載の電源システム;
[4]水素生成装置により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵部を備え、燃料電池が、水素貯蔵部に貯蔵された水素を燃料とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載の電源システム;
[5]燃料電池と、水素生成装置と、発電部と、電源部とを備え、発電部が、少なくとも水素生成装置と電源部へと電力を供給し、燃料電池が、水素生成装置により生成された水素を燃料とする、電源システムの制御方法であって、電源部が、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えて負荷に供給するものであり、発電部が、再生可能エネルギーをもとに発電をするものである、電源システムの制御方法;
により達成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷に安定した電力を供給することができる電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、電源システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、水素貯蔵部を説明するための概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、水素貯蔵部を説明するための概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、発電部から燃料電池への切り替え制御処理のフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、燃料電池から発電部への切り替え制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を用いて本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0010】
(電源システム)
図1は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、電源システムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、電源システム1は、燃料電池2と、水素生成装置3と、発電部4と、電源部5とを備える。
【0011】
(燃料電池)
燃料電池2は、水素及び酸素を燃料として発電する。燃料電池2において発電した電力は、電源部5から負荷に供給される。燃料電池2の燃料となる水素は、水素生成装置3により生成された気体状の水素が供給される。
【0012】
燃料電池2における発電量は、負荷に要される電力量により適宜設定すればよいが、例えば、3kW以上、好ましくは5kW以上、より好ましくは10kW以上、さらに好ましくは30kW以上の発電が可能な燃料電池2を採用することができる。
【0013】
(水素生成装置)
水素生成装置3は、水素ガスを生成し、生成した水素ガスを燃料電池の燃料として供給する。水素生成装置3は、純水生成部を備え、水素生成装置が生成された純水をもとに水素を生成することが好ましい。また、水素生成装置により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵部15を備えることが好ましい。
図1に示す態様において、純水生成部9には、原水供給部10、水ろ過装置11、純水生成装置12、純水貯水タンク13、給水口14が含まれる。
【0014】
純水生成部9における純水の生成工程について説明する。まず、原水供給部10から水ろ過装置11へ、原水が供給される。そして、水ろ過装置11から純水生成装置12にろ過された原水が送られ、純水生成装置12において純水が生成される。生成された純水は、純水生成装置12から水素生成装置3へ供給される。
【0015】
原水供給部10は、水ろ過装置11へ原水を供給するものである。原水には、工業用水、水道水、雨水、井戸水、海水、湖水、河川水などを用いることができる。原水供給部10は、電源システム1を設置する施設の周辺の環境などにより、適宜設計が可能である。
【0016】
原水供給部10は、水道水、河川などを原水供給部10として、原水供給部10から水ろ過装置11へ原水を直接供給してもよい。また、原水供給部10が貯水タンクを備え、貯水タンクに貯蔵された原水を水ろ過装置11へ供給する態様としてもよい。原水が、水道水など水ろ過装置11によるろ過を必要とせず、純水生成装置12に直接供することが可能な場合や、純水生成装置12がろ過機能を備える場合などは、水ろ過装置11の設置を省略した形態で電源システムを構成することが可能である。
【0017】
原水供給部10として貯水タンクを備える場合、災害時に水道水の供給が止まるなどの状況であっても、貯水タンクから原水を供給でき、純水生成装置12及び水素生成装置3の稼働を続けることができるので好ましい。貯水タンクの容量は適宜設定することができる。
【0018】
純水生成装置12は、原水を精製して純水を生成する。純水への精製方法は特に限定されず、例えば、蒸留、イオン交換樹脂、逆浸透膜、電気再生式脱塩装置(EDI装置)など、公知の方法を純水精製に採用することができる。純水生成装置12は、単独の純水精製部分からなってもよく、複数の純水精製部分からなってもよい。純水精製部分が複数ある場合は、純水精製部分の一部が、故障などにより使用できない場合や、長期使用による交換が必要な場合でも、他の純水精製部分を使用することで、純水生成装置12及び水素生成装置3の稼働を続けることができる。
【0019】
純水生成装置12において生成された純水は、水素生成装置3に供給される。例えば、純水貯水タンク13から給水口14を通じて、給水口14にて供給量を調整して水素生成装置3に供給することができる。給水口14は、純水貯水タンク13に備えてもよく、純水貯水タンク13にパイプなどの水を送るための管を設け、該管に開閉可能なバルブとして設けてもよい。
【0020】
水素生成装置3は、純水を電気分解することにより、気体状の水素を生成する。水素生成装置3は、単独の水素生成部からなってもよく、複数の水素生成部からなってもよい。水素生成部が複数ある場合は、水素生成部の一部が、故障などにより使用できない場合や、長期使用による交換が必要な場合でも、他の水素生成部を使用することで、水素生成装置3による水素の生成を続けることができる。
【0021】
生成された水素は、水素貯蔵部15に貯蔵され、燃料電池2に供給される。水素貯蔵部15は、特に限定されず、水素を貯蔵することができればよい。例えば、水素貯蔵部15は、高圧ガスタンクや、低圧ガスタンクの水素吸蔵合金タンクなどの貯蔵装置を含む。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、水素貯蔵部を説明するための概略図である。水素貯蔵部15は、圧力調整機構16と高圧ガスタンク17とを備える。
図2において、高圧ガスタンク17は、複数の高圧ガスタンクを連結管で接続しカードル17a、17b形式からなる。カードル17a、17b内の各高圧ガスタンクは、連結管により接続することで、一つの配管として外部と接続できる構造を有している。
【0023】
水素貯蔵部15は、水素生成装置3において生成された水素をカードル17a、17bの各高圧ガスタンクに貯蔵する際に、圧力調整機構16により、貯蔵する水素の圧力を調整する。圧力調整機構16は、貯蔵する水素の圧力を調整する機能を有し、例えば、水素圧縮器18を備える。また、圧力調整機構16は、水素貯蔵部15のガスタンクから貯蔵された水素を燃料電池2に供給する場合に、水素の圧力を調整するための機構として、減圧器19を備える。これらの水素の圧力を調整するための機構には、公知の、レギュレーターなどを用いることができる。
【0024】
図2に示すように、水素貯蔵部15にカードル17a、17bを用いることで、貯蔵量を多くすることができ、また、フォークリフトなどで輸送して、他の場所において水素ガスを補給することができる。カードルを用いない場合でも、複数のガスタンクを備えることで、水素ガスの貯蔵量を多くすることができ、燃料電池による発電時間をより長く維持することができる。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、水素貯蔵部を説明するための概略図である。
図3は、水素貯蔵部15が低圧ガスタンク20であって、複数のガスタンクを連結管で接続した例である。低圧ガスタンク20は、例えば、水素吸蔵合金タンクである。水素吸蔵合金タンクは、水素分子と接触することで水素化物として水素を保持する合金を充填した、水素を貯蔵するためのタンクである。低圧ガスタンク20は、高圧ガスタンクと比べて低気圧の10気圧以下の内部圧力で水素を貯蔵することができるため、安全性が高い。
【0026】
低圧ガスタンク20の場合も高圧ガスタンクの場合と同様に、水素貯蔵部15が貯蔵する水素の圧力を調整するための圧力調整機構16を備え、貯蔵する水素の圧力を調整する。
図3では、水素の圧力を調整するための機構として、水素圧調整器21を備える。また、水素貯蔵部15から貯蔵された水素を燃料電池2に供給する場合に、水素の圧力を調整するための機構として、減圧器19を備える。これらの圧力調整機構16には、公知のレギュレーターなどを用いることができる。
【0027】
本実施の形態において、水素生成装置3は、純水の電気分解により水素を生成するので、水素を生成する際に気体の酸素も生成する。水素生成装置3により生成された酸素は、水素と同様にタンク等に貯蔵する態様としてもよい。水素生成装置3及び水素生成装置3に備えられる純水生成部9、水素貯蔵部15などの各装置は、発電部4からの電力供給により稼働する。また、これらの各装置は非常時用の電源を備えるものであってもよい。
【0028】
(発電部)
発電部4は、再生可能エネルギーにより発電し、少なくとも水素生成装置3と電源部5へと電力を供給する機能を有する。再生可能エネルギーは、特に限定されず、利用する以上の速度で自然に再生するエネルギーであればよい。具体的には、再生可能エネルギーには、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、微生物発電などが含まれる。水素生成装置3を再生可能エネルギーによる発電部4で稼働させることで、本実施の形態の電源システムを、自立型の電源システムとして構成することができる。
【0029】
発電部4からの電力の供給量は、特に限定されず、負荷への所定の電力量と、水素生成装置3に含まれる各装置の稼働に必要な電力量とが供給されればよい。例えば、負荷への所定の電力量に加えて、純水生成装置12の稼働には500Wh、水素生成装置3の稼働には5.5~6.5kWhの電力が、再生可能エネルギーにより供給されることとしてもよい。
【0030】
再生可能エネルギーによる発電部4からの電力の供給量が、負荷への所定の電力量と、水素生成装置3に含まれる各装置の稼働に必要な電力量とを上回る場合は、余剰電力を水素生成装置3に供給し、水素生成装置3において生成した水素を水素貯蔵部15に貯蔵する。また、後述する電源システム1が備える蓄電池に蓄電してもよい。
【0031】
図1に示す電源システム1は、発電部4として太陽光パネル7と直流安定化装置8とを備える。直流安定化装置8は、太陽光パネル7で発電された電力を出力電圧が常に一定の値になるように制御する機能を有する。直流安定化装置8として、例えば、直流安定化電源装置を用いることができる。
【0032】
本実施の形態の電源システム1において、発電部4で発電された電力は、直接電源部5に供給され、負荷に供給されるが、一部の電力を蓄電するための蓄電池を備えてもよい。蓄電池は、後述する電源部5において、発電部4からの電力と燃料電池2からの電力とを切り替える時に、燃料電池2から電源部5への電力の供給までの電力を補う機能を果たす。例えば、瞬断を防ぐために用いられている公知の鉛蓄電池などの二次電池を用いることができる。蓄電池を備えることにより、出力電力の瞬断を軽減することができる。
【0033】
(電源部5)
電源部5は、発電部4及び燃料電池2において発電した電力を、負荷に供給するのに適した所定の電圧や、周波数に変換し、負荷に供給する機能を有する。また、電源部5は、発電部4からの電力と燃料電池2からの電力とを切り替えて負荷に供給する。発電部4からの電力と燃料電池2からの電力とを切り替えて供給することで、これらの電力を合成して供給する場合に比べて、装置構成や制御を容易なものとすることができる。
【0034】
発電部4で発電された電力と、燃料電池2により発電された電力の少なくとも一部は、蓄電されずに、直接電源部5に供給されて負荷に供給される。また、発電部4が太陽光パネル7による発電の場合、発電された直流電圧が電源部5に供給される。太陽光を利用した発電の際に一般的に設けられるパワーコンディショナーを設けず、電源部5において負荷に要される直流電圧又は交流電圧に変換する態様とすることで、システム全体の構成を簡易にすることができ、費用を抑えることができる。
【0035】
電源部5からの出力電圧を、所定の電圧や、周波数に変換するには公知の多出力電源システムを用いることができる。例えば、電源部5は、出力電圧を交流のAC100VやAC200Vに設定したり、単相と三相とを切り替えたり、また、直流のDC12Vや24Vに設定することができる。さらに、電源システム1を設置する地域によって、周波数を50Hzや60Hzに設定することが可能である。
【0036】
また、電源部5は蓄電池を備え、発電部4からの電力と燃料電池2からの電力とを切り替える時に、燃料電池2から電源部5への電力の供給までの電力を蓄電池で補う態様としてもよい。蓄電池としては、直流安定化装置8が備える場合と同様に、例えば、瞬断を防ぐために用いられている公知の鉛蓄電池などの二次電池を用いることができる。
【0037】
発電部4が蓄電池を備える場合は、電源部5の蓄電池の設置は省略してもよい。また、上記蓄電池に代えて、公知の無停電電源装置を用いることで、切り替え時の出力電圧の不足や、停電や、入力電源異常が発生した際に、電力を供給するようにしてもよい。蓄電池や無停電電源装置を備えることにより、出力電力の瞬断を軽減することができる。
【0038】
(制御装置)
本実施の形態の電源システム1は、燃料電池2と水素生成装置3と発電部4と電源部5の稼働状況を制御するための制御装置6を備える。制御装置6は、各装置とは独立して設けてもよいし、電源部5に内蔵して設けてもよい。制御装置6は、各装置等の稼働状況を制御するために、少なくとも、燃料電池2と、水素生成装置3と、発電部4と、電源部5の稼働状況を監視する機能を備える。
【0039】
具体的には、制御装置6は、燃料電池2における出力状況や、水素の消費量、水素生成装置3における水素の生成量、水素生成装置3が備える水素貯蔵部15における水素の貯蔵量や、発電部4における出力状況や、電源部5における負荷への電力供給量を監視する監視機能を備える。
【0040】
制御装置6は、各装置の稼働状況に応じて、電源部5が燃料電池2により発電された電力と、発電部4により供給された電力とを切り替えるように制御する。発電部4により供給された電力と、燃料電池2により発電された電力とを切り替える制御処理について、以下に詳述する。
【0041】
(発電部から燃料電池への切り替え制御処理)
図4は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、発電部から燃料電池への切り替え制御処理のフローチャートである。一例として、発電部4が太陽光パネル7により発電した電力を負荷に供給するように電源システム1が稼働し、電源部5が蓄電池を備える電源システム1における制御について説明する。
【0042】
制御装置6は、電源システム1の稼働中に、太陽光パネル7の出力情報を受信する(ステップS1)。太陽光パネル7の出力情報は、公知の方法により取得されるものであればよく、例えば、太陽光パネル7の動作をモニタするための電圧計、電流計にて検出される電圧値、電流値である。制御装置6は、受信した出力情報が所定の条件を満たすかを判定する(ステップS2)。
【0043】
太陽光パネル7の出力情報が所定の条件を満たす場合(ステップS2において、YES)は、制御装置6は、太陽光パネル7による発電した電力を燃料電池2による発電による電力に切り替えず、処理を終了する。すなわち、太陽光パネル7の出力情報が所定の条件を満たす場合(ステップS2において、YES)は、電源システム1は、太陽光パネル7の発電による電力の負荷への供給を継続する。負荷に供給される電力は、制御装置6の制御により、電源部5において負荷に適した所定の電圧等に変換される。
【0044】
ステップS2における太陽光パネル7の出力情報の所定の条件は、例えば、出力電流及び/又は出力電圧が閾値以上であることや、一定期間において、所定の電流値及び/又は電圧値よりも高い電流値及び/又は電圧値が継続して検出される場合や、所定の電流値及び/又は電圧値の所定の割合以上の値の電流値及び/又は電圧値が継続して検出される場合とすることができる。太陽光パネル7が複数設けられる場合は、複数の各々の出力電流及び/又は出力電圧を検出して、閾値以上であるかを判定してもよく、複数の出力を合計した出力電流及び/又は出力電圧が閾値以上であるかを判定してもよい。また、出力情報には、日照強度、パネル表面温度等、太陽光パネル7の稼働において計測される各種データを含んでもよく、この場合、所定の条件として、太陽光パネル7の予測発電量が閾値以上であるかとしてもよい。出力電流/出力電圧は、直流安定化装置8にて検出する構成も採用することができる。
【0045】
太陽光パネル7の出力情報が所定の条件を満たさない場合(ステップS2において、NO)は、制御装置6は、太陽光パネル7から負荷への電力供給を停止するとともに、蓄電池から負荷へ電力供給するように制御する(ステップS3)。太陽光パネル7から蓄電池への電力の切り替えは、例えば、リレー接点により太陽光パネル7の出力端子と電源部5との接続をオフ状態とし、蓄電池の出力端子と電源部5との接続をオン状態とすることで実行される。
【0046】
次いで、制御装置6は、水素生成装置3が稼働するとともに、水素貯蔵部15から燃料電池2へ水素を供給するように制御する(ステップS4)。水素貯蔵部15と燃料電池2とを接続する水素供給用配管に電子弁を備え、制御装置6の制御により、電子弁を開くことで水素が燃料電池2に供給される。供給される水素は、圧力調整機構16により所定の圧力に適宜調整される。ステップS4により、燃料電池2に水素が供給されると、燃料電池2の稼働が開始される。
【0047】
次に、制御装置6は、燃料電池2の発電電力が閾値以上であることを受信すると(ステップS5)、蓄電池から負荷への電力供給を停止するとともに、燃料電池2から負荷へ電力供給するよう制御し(ステップS6)、処理を終了する。燃料電池2の発電電力は、例えば、燃料電池2に供給された水素ガスの体積から算出される理論電圧値とすることができる。蓄電池から燃料電池2への電力の切り替えは、例えば、リレー接点により蓄電池の出力端子と電源部5との接続をオフ状態とし、燃料電池2の出力端子と電源部5との接続をオン状態とすることで実行される。
【0048】
(燃料電池から発電部への切り替え制御処理)
図5は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、燃料電池から発電部への切り替え制御処理のフローチャートである。まず、制御装置6は、太陽光パネル7の出力情報を受信する(ステップS11)。制御装置6は、受信した出力情報が所定の条件を満たすかを判定する(ステップS12)。
【0049】
太陽光パネル7の出力情報が所定の条件を満たさない場合(ステップS12において、NO)は、制御装置6は、燃料電池2による発電した電力を太陽光パネル7による発電による電力に切り替えず、処理を終了する。すなわち、太陽光パネル7の出力情報が所定の条件を満たさない場合(ステップS12において、NO)は、電源システム1は、燃料電池2の発電による電力の負荷への供給を継続する。負荷に供給される電力は、制御装置6の制御により、電源部5において負荷に適した所定の電圧等に変換される。
【0050】
ステップS12における所定の条件は、上記発電部から燃料電池への切り替え制御処理のステップS2における所定の条件として例示したものを採用することができる。より具体的には、太陽光パネル7の出力情報について、出力電流及び/又は出力電圧が閾値以上であることや、一定期間において、所定の電流値及び/又は電圧値よりも高い電流値及び/又は電圧値が継続して検出される場合や、所定の電流値及び/又は電圧値の所定の割合以上の値の電流値及び/又は電圧値が継続して検出される場合などである。太陽光パネル7が複数設けられる場合は、複数の各々の出力電流及び/又は出力電圧を検出して、閾値以上であるかを判定してもよく、複数の出力を合計した出力電流及び/又は出力電圧が閾値以上であるかを判定してもよい。また、出力情報には、日照強度、パネル表面温度等、太陽光パネル7の稼働において計測される各種データを含んでもよく、この場合、所定の条件として、太陽光パネル7の予測発電量が閾値以上であるかとしてもよい。出力電流/出力電圧は、直流安定化装置8にて検出する構成も採用することができる。ステップS2とステップS12の所定の条件として同一の条件を採用してもよく、異なる条件を採用してもよい。
【0051】
太陽光パネル7の出力情報が所定の条件を満たす場合(ステップS12において、YES)は、制御装置6は、燃料電池2から負荷への電力供給を停止するとともに、太陽光パネル7から負荷へ電力供給するよう制御する(ステップS13)。燃料電池2から太陽光パネル7への電力の切り替えは、例えば、リレー接点により燃料電池2の出力端子と電源部5との接続をオフ状態とし、太陽光パネル7の出力端子と電源部5との接続をオン状態とすることで実行される。
【0052】
次いで、制御装置6は、水素生成装置の稼働の停止、燃料電池への水素供給の停止をするよう制御し(ステップS14)、処理を終了する。水素貯蔵部15と燃料電池2とを接続する水素供給用配管に電子弁を備え、制御装置6の制御により、電子弁を閉じることで燃料電池2への水素供給が停止される。ステップS14により、燃料電池2への水素供給が停止されると、燃料電池2の稼働が停止される。
【0053】
制御装置6は、これらの切り替え制御処理を所定の間隔で繰り返し実行する。例えば、毎秒、30秒ごと、1分毎など、所定の間隔で太陽光パネル7の出力情報が検出されるように各ステップを実行する。このように、制御装置6が、太陽光パネル7の出力情報と燃料電池2による電力に基づき、電源部5に電力を切り替えて供給するように制御することで、安定した電力を負荷に供給することができる。
【0054】
上記の実施の形態のステップS2の説明において、ステップS1にて検出した太陽光パネル7の出力情報が所定の条件を満たす場合として、一定期間において、所定の電圧値/電流値よりも高い電圧値/電流値が継続して検出される場合を説明したが、例えば、監視する太陽光パネル7による電圧値/電流値が所定の値よりも低い値であることが一度でも検出されることを所定の条件を満たさない場合として、太陽光パネル7による発電を燃料電池2への発電へ切り替えるように各ステップを実行してもよい。
【0055】
上記の実施の形態において、制御装置6は、太陽光パネル7から負荷への電力供給を停止するとともに、蓄電池から負荷へ電力供給するように制御(ステップS3)した後に、水素生成装置3が稼働するとともに、水素貯蔵部15から燃料電池2へ水素を供給するように制御する(ステップS4)場合を説明したが、例えば、ステップS3とステップS4とを同時、又は、ステップS4がステップS3に先立って実行されるものとしてもよい。すなわち、ステップS1にて検出した太陽光パネル7の出力情報が、所定の条件を満たさないと判定されると、水素生成装置3が稼働するとともに、水素貯蔵部15から燃料電池2への水素供給を開始し、燃料電池2を稼働させて、燃料電池2による電力供給を待機状態としておいてもよい。この場合、制御装置6は、蓄電池による電力供給をせずに、発電部4と燃料電池2による電力供給とを切り替える態様で、負荷に電力を供給することもできる。
【0056】
上記の実施の形態のステップS4において、制御装置6は、水素生成装置3が稼働するとともに、水素貯蔵部15から燃料電池2へ水素を供給するように制御する場合を説明したが、ステップS1にて検出した太陽光パネル7の出力情報に基づく電力量が、負荷に供給する電力量よりも高い値である場合であっても、水素生成装置3の稼働に要される電力量が不足する場合は、水素生成装置3の稼働はせずに、水素貯蔵部15から燃料電池2へ水素を供給するように制御する。このような態様とすることで、夜間など太陽光パネル7による発電が見込めない時間帯であっても、電源システム1を安定的に稼働させることができる。
【0057】
上記の実施の形態において、ステップS1にて検出した太陽光パネル7の出力情報に基づく電力量が、負荷に供給する電力量よりも高い値である場合は、制御装置6は、余剰電力を水素生成装置3に供給し、水素貯蔵部15に水素を貯蔵するように制御する。また、余剰電力を、電源システム1が備える蓄電池に供給し、所定の蓄電量を満たすまで蓄電するようにしてもよい。
【0058】
上記の実施の形態において、制御装置6は、制御処理を所定の間隔で繰り返し実行するとしたが、この態様に限定されない。例えば、日の入り時刻の1時間前から日の出時刻の1時間後までは、太陽光パネル7による安定した電力供給が不足することが考えられるので、制御装置6は、上記制御処理を実行せずに、電源部5に燃料電池2から電力を供給するように制御することができる。この場合、制御装置6や水素貯蔵部15を稼働させるための蓄電池を備え、水素貯蔵部15から燃料電池2への水素供給が継続できる構成とすることが好ましい。
【0059】
上記の実施の形態において、制御装置6は通信機能を備える態様としてもよい。通信機能を備えることで、制御装置6の監視機能を外部のシステムによりモニタリングしたり、制御したりすることが可能となる。制御装置6の監視機能は、各装置の発電異常や水素供給異常などを検出した場合に、エラーを知らせる警報を鳴らしたり、外部システムに通知したりする機能を備えてもよい。
【0060】
本実施の形態の電源システムによれば、電源部が、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えて負荷に供給するので、夜間などにおいても安定した電力を供給することができる。また、発電部と燃料電池を電力源とするものであるので、二酸化炭素の排出がない、又は、二酸化炭素の排出を低減することができる。さらに、装置の稼働音を抑制したものとすることができる。
【0061】
本実施の形態の電源システムが蓄電池を備える場合は、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えてにおいて起こりうる出力電力の供給停止を、より効率的に抑制することができる。また、蓄電池による電力の供給が、燃料電池により発電された電力と、発電部により供給された電力とを切り替えにおいて実行されるので、一時的な供給をすることから蓄電池の過放電という問題が起こらない。
【0062】
本実施の形態の電源システムの水素生成装置が、純水生成部を備える場合は、工業用水、水道水、雨水、井戸水、海水、湖水、河川水などの原水を用いて純水を生成し、水素生成に利用することができるので、様々な天候や状況に応じて、燃料電池の燃料となる水素を供給することができる。
【0063】
本実施の形態の電源システムの水素生成装置が、生成された水素を貯蔵する水素貯蔵部を備える場合は、発電部による発電が確保できない場合に、燃料電池による発電を安定して継続することが可能となる。また、水素貯蔵量が十分に確保できる場合は、貯蔵した水素を他の場所において補給することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 電源システム、2 燃料電池、3 水素生成装置、4 発電部、
5 電源部、6 制御装置、7 太陽光パネル、8 直流安定化装置、9 純水生成部、
10 原水供給部、11 水ろ過装置、12 純水生成装置、13 純水貯水タンク、
14 給水口、15 水素貯蔵部、16 圧力調整機構、17a、17b カードル
18 水素圧縮器、19 減圧器、20 低圧ガスタンク、21 水素圧調整器