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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057481
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】情報提供システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230414BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20230414BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230414BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/13
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167040
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】荻島 由彦
(72)【発明者】
【氏名】田上 英明
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳憲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義典
(72)【発明者】
【氏名】畑崎 由季子
(72)【発明者】
【氏名】春日 慎治
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BB02
3D241BB31
3D241CD10
3D241CE02
5H181AA01
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】インフラ側から安全運転のための情報提供を的確に行える情報提供システムを提供すること。
【解決手段】情報提供システム100は、自動運転車両VEと通信して将来位置情報を受け取る通信部30と、自動運転車両VEの走行予定範囲を監視する監視部としてのセンサー部10と、通信部30で受け取った将来位置情報とセンサー部10における監視結果とに応じて仮想停止線VLの位置を設定する設定部とを備え、通信部30は、設定部により設定された仮想停止線VLの位置情報を、自動運転車両VEに対して送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両と通信して将来位置情報を受け取る通信部と、
前記自動運転車両の走行予定範囲を監視する監視部と、
前記通信部で受け取った前記将来位置情報と前記監視部における監視結果とに応じて仮想停止線の位置を設定する設定部と
を備え、
前記通信部は、前記設定部により設定された前記仮想停止線の位置情報を、前記自動運転車両に対して送信する、情報提供システム。
【請求項2】
前記通信部は、前記自動運転車両との通信を継続的に行い、
前記設定部は、新たに取得した情報に応じて、前記仮想停止線の位置設定を更新する、請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記監視部により監視された前記走行予定範囲における車両の通過経路を記録した履歴に基づき前記仮想停止線の位置設定を行う、請求項1及び2のいずれか一項に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記仮想停止線で停止している前記自動運転車両が発進可能となる出発可能時刻を、前記走行予定範囲の状況に基づき算出する算出部を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記監視部により監視された前記走行予定範囲の状況から前記自動運転車両の停止を要しないと判定される場合、前記設定部は、前記仮想停止線を設けず、前記通信部は、前記走行予定範囲において停止を要しない旨の情報を、前記自動運転車両に対して送信する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記監視部は、前記自動運転車両の走行車線の対向車線を監視し、
前記設定部は、前記自動運転車両が前記対向車線を横切ることを含む前記将来位置情報に対応して、前記仮想停止線の位置設定を行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の情報提供システム。
【請求項7】
前記監視部は、前記走行予定範囲として、交差点と、前記交差点に設けられた横断歩道とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記設定部は、前記交差点に設置されている信号灯器の灯色情報に基づき前記仮想停止線に関する判断を行う、請求項7に記載の情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動運転車両による自動運転に際して、道路に沿って設けられた設備側(路側)から運転に関する情報の提供を行う情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動運転車両の制御装置として、自動運転車両側でのセンシング等に基づいて、発信タイミングや停止位置等の判断や動作処理を行う技術が知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1,2では、例えば周囲の交通状況の把握に際して、自動運転車両側で取得可能な情報に基づいて判断等を行うものとなるため、危険等の判定の能力が自動運転車両の性能に依存することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-175798号公報
【特許文献2】特開2018-197964号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、インフラ側から安全運転のための情報提供を的確に行える情報提供システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための情報提供システムは、自動運転車両と通信して将来位置情報を受け取る通信部と、自動運転車両の走行予定範囲を監視する監視部と、通信部で受け取った将来位置情報と監視部における監視結果とに応じて仮想停止線の位置を設定する設定部とを備え、通信部は、設定部により設定された仮想停止線の位置情報を、自動運転車両に対して送信する。
【0007】
上記情報提供システムでは、インフラ側において、自動運転車両から受け取った将来位置情報とインフラ側での監視結果とに応じて仮想停止線の位置を設定し、設定された仮想停止線の位置情報を、自動運転車両に対して送信することで、交通状況の把握に際して、自動運転車両の性能に依存せず、インフラ側から的確な停止位置の情報を提供できる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、通信部は、自動運転車両との通信を継続的に行い、設定部は、新たに取得した情報に応じて、仮想停止線の位置設定を更新する。この場合、交通の状況変化に応じて最適な仮想停止線の位置設定が可能になる。
【0009】
本発明の別の側面では、設定部は、監視部により監視された走行予定範囲における車両の通過経路を記録した履歴に基づき仮想停止線の位置設定を行う。この場合、車両の通過状況に応じた仮想停止線の位置設定が可能になる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、仮想停止線で停止している自動運転車両が発進可能となる出発可能時刻を、走行予定範囲の状況に基づき算出する算出部を備える。この場合、仮想停止線で停止している自動運転車両に対して、的確な出発タイミングを示すことができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、監視部により監視された走行予定範囲の状況から自動運転車両の停止を要しないと判定される場合、設定部は、仮想停止線を設けず、通信部は、走行予定範囲において停止を要しない旨の情報を、自動運転車両に対して送信する。この場合、交通状況をより円滑なものにできる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、監視部は、自動運転車両の走行車線の対向車線を監視し、設定部は、自動運転車両が対向車線を横切ることを含む将来位置情報に対応して、仮想停止線の位置設定を行う。この場合、自動運転車両に対して、自律走行により安全に対向車線を横切るために必要な各種情報を提供できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、監視部は、走行予定範囲として、交差点と、交差点に設けられた横断歩道とを含む。この場合、交差点や横断歩道の状況を踏まえた判断に基づき仮想停止線の位置設定を的確に行える。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、設定部は、交差点に設置されている信号灯器の灯色情報に基づき仮想停止線に関する判断を行う。この場合、信号灯器の切替タイミングを踏まえた仮想停止線の位置設定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る情報提供システムを設けた交差点における一動作例について概要説明をするための概念図である。
図2】情報提供システムの一構成例について示すブロック図である。
図3】(A)及び(B)は、通信内容について概要の一例を示すデータ図である。
図4】(A)~(D)は、将来位置情報について説明するための概念図である。
図5】仮想停止線を設定する設定部の一構成例について示すブロック図である。
図6】(A)及び(B)は、車両の通過経路の履歴記録について説明するための概念図である。
図7】情報提供システムを設けた交差点における他の一動作例について概要説明をするための概念図である。
図8】情報提供システムにおける一連の動作を説明するためのフローチャートである。
図9】情報提供システムの概要を示す概念図である。
図10】第2実施形態に係る情報提供システムを設けた交差点における一動作例について概要説明をするための概念図である。
図11】情報提供システムの一構成例について示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、第1実施形態に係る情報提供システムについて、一例を説明する。図1は、本実施形態に係る情報提供システム100を導入した交差点CSについて概要説明をするための概念図であり、図2は、情報提供システム100の一構成例について示すブロック図である。ここでは、情報提供システム100により、交差点CSを通過する自動運転車両(ここでは、自動運転車両VEとしている。)に対して、運転支援のための情報提供が路側からなされる場合について、一例を説明する。
【0017】
図1では、情報提供システム100による支援の対象となる自動運転車両VEをハッチングで示しており、自動運転車両VEが、矢印AA1に示すように、走行予定範囲すなわち向かう先となっている範囲のうち交差点CSにおいて右折をしようとする場合について、一動作例を示している。これに対して、図1の一例では、自動運転車両VEが走行する車線の対向車線から、対向車GMが、白抜きの矢印BB1に示すように、同じ交差点CSに向かっており、この場合、対向車GMがこのまま直進する予定であると、自動運転車両VEは、交差点CS内において、停止(一時停止)をする必要がある。この際、自動運転車両VEは、情報提供システム100から仮想停止線VLの位置情報、すなわち自分がどこで停止をすべきかについての情報を受け取るものとなっている。
【0018】
仮想停止線VLは、情報提供側であるインフラ側によって設定された位置を線分として示すものであるが、実際に路面上に引かれているものではなく、位置データである。仮想停止線VLの位置データ(位置情報)は、必要に応じて、路側から自動運転車両VEに対して提供される。特に、本実施形態では、インフラ側において、必要に応じて仮想停止線VLの位置を設定した上で、設定された仮想停止線VLの位置情報を、自動運転車両VEに対して送信する態様となっている。以上のように、情報提供システム100では、自動運転車両VEの右折に際して、停止(一旦停止)が必要な場合に、仮想停止線VLの情報を提供することで、安全に交差点CS内で停止させるようにしている。
【0019】
情報提供システム100において上記のような情報提供を行うための前提として、ここでの一例では、まず、自動運転車両VEは、交差点CSを通過するに際して、情報提供システム100を構成する路側装置である運転支援装置SSに対して、自身に関する情報を発信する。以下、このような発信情報として、自動運転車両VEの走行予定ルートに関して示す将来位置情報が使用される場合について説明する。なお、将来位置情報の詳細については、一例を後述する。また、ここでは、最初の将来位置情報の発信が、自動運転車両VEから運転支援装置SSに対してなされることで、自動運転車両VEと運転支援装置SSとの間で通信が開始され、また、これを契機として、情報提供システム100は、支援の対象となるべき自動運転車両VEを把握するものとする。最初の将来位置情報の発信後は、自動運転車両VEが交差点CSの通過を完了するまで、自動運転車両VEと運転支援装置SSとの間での通信が継続的に行われる。
【0020】
情報提供システム100は、上記のように、交差点CSを監視すべく、交差点CSあるいはその近傍に設置された路側装置である運転支援装置SSを主体として構成される。より具体的には、運転支援装置SSが、交差点CSあるいはその周辺を含み、かつ、結果的に自動運転車両VEの走行予定範囲も含むものとなっている検出領域DDについて監視を行うとともに、自動運転車両VEと通信して自動運転車両VEに関する情報を自動運転車両VE自身から得る。これにより、運転支援装置SSは、交差点CSにおける進行可否等の各種判定を行う判定装置JDとして機能する。以上のように、運転支援装置SSを中心として、各部が協働することで、情報提供システム100としての機能が成立している。ただし、以上のような構成において、各種情報処理を行う運転支援装置SSのみをもって情報提供システム100と捉えることもできる。
【0021】
図1及び図2に示すように、情報提供システム100において、運転支援装置SS(判定装置JD)は、上記態様となるべく、例えばセンサー部10と、通信部30と、主制御部50とを備える。つまり、運転支援装置SSは、センサー部10において検出領域DDについて監視を行い、通信部30を介して自動運転車両VEと通信し、取得した各種情報について、主制御部50において処理を行うとともに、判定装置JDとして各種判定を行う。また、判定結果については、通信部30を介して自動運転車両VEに対して送信する。
【0022】
以下、図2として示すブロック図を参照して、上記態様に関するより詳しい一例を説明する。
【0023】
まず、情報提供システム100のうち、センサー部10は、カメラ部11と、測距部12とで構成され、監視の対象となる所定範囲としての検出領域DDに存在する移動体MB(例えば図1の対向車GM)や障害物等を検知する監視部である。図1に示した一例のように、自動運転車両VEが交差点CSを右折しようとする場合、監視部としてのセンサー部10は、自動運転車両VEの走行車線の対向車線を監視する。ここで、移動体MBについては、既述の対向車GM等の車両のほか、自転車や歩行者等が想定され、支援の対象となる自動運転車両VEも含まれる。カメラ部(インフラカメラ)11は、交差点CS(図1参照)について監視すべく、撮像を行って画像データを生成する。また、測距部12については、例えばLiDARのほか、ミリ波センサーや、レーダーを採用することが考えられ、測距を行って測距データを生成することで、移動体MBの位置等を取得可能にする。なお、図1図2では、1つのセンサー部10のみ示しているが、交差点CSについて隈なく監視を行うべく、複数のカメラ等を場内に設置する構成にできる。また、自動運転車両VEの進行方向によって検出領域DDのうち監視すべき範囲が変更される場合には、これに応じて、使用するカメラ等を適宜選択する等も可能である。ここで、センサー部10により取得される検知結果であり、検出領域DDに存在する移動体MBに関する画像データや測距データ等の各種情報を、物標情報とする。すなわち、物標情報には、検出領域DDに存在する歩行者や各種車両等の動作状況や、障害物の存在等についての情報が含まれている。
【0024】
情報提供システム100のうち、通信部30は、自動運転車両VEと無線通信を行うための無線部である。ここで、通信相手である自動運転車両VEについては、判定装置JDである運転支援装置SSに対して、判定を行うためのデータとして、自己の将来位置を示す将来位置情報を送信するものとなっている。より具体的に説明すると、まず、自動運転車両VEは、自動運転を行うための各種制御を行うべく、各種回路機構等で構成される自動運転制御部AOを有しており、特に、自動運転制御部AOにおいて、将来位置情報生成部FGを有している。将来位置情報生成部FGは、自動運転車両VE自身についての将来位置情報を生成する。将来位置情報は、現在位置や現在位置に基づく今後の進路予定の情報等で構成されている。この将来位置情報には、自動運転車両VEの現在位置(現在時刻における位置)や、これに基づき作成される将来位置(到達予測時刻を含む)のほか、これらの各時刻(予定時刻)における速度や方位(方位角)等の情報が含まれている。つまり、将来位置情報には、自動運転車両VEの交差点CS(例えば交差点CSの中心位置を示す代表点)の位置への到達予測時刻や、交差点CSの通過所要時間等が含まれており、通信部30は、自動運転車両VEの通信部(無線部)TTを介して自動運転車両VEから将来位置情報を受け付ける。
【0025】
なお、上記のように、自動運転車両VEの将来位置情報生成部FGにおいて、到達予測時刻の情報が作成される場合、自動運転車両VEの交差点CSへの到達予測時刻は、間接的に、自動運転車両VEに固有の走行性能の情報を含む個体特性情報に基づき算出されるものとなる。
【0026】
情報提供システム100のうち、主制御部50は、例えば各種回路機構等で構成され、図示の一例では、センサー制御部51と、判定ユニット52とを有する、あるいはこれらとして機能するものとする。
【0027】
センサー制御部51は、監視部であるセンサー部10を構成する各部の動作を制御するとともに、センサー部10において取得される物標情報を、判定ユニット52に対して出力する。
【0028】
判定ユニット52は、他の車両等との衝突のおそれがあるかないか、延いては仮想停止線VLを要するか否かについて予測する衝突予測部(予測部)52aや、仮想停止線VLから発進すべき時刻を算出する算出部52bに加え、特に、本実施形態では、仮想停止線VLの位置を設定するための仮想停止線設定部(設定部)LSを有する。
【0029】
衝突予測部(予測部)52aは、通信部30で受け付けた自動運転車両VEの交差点CSへの到達予測時刻や、センサー部10による検知結果としての物標情報等に基づき衝突予測を行う。典型的には、図1に示すように、交差点CSにおいて右折しようとする場合であれば、物標情報としての対向車(一般車両)GMの走行状況の情報や、横断歩道等に存在する歩行者の情報等に基づいて、自動運転車両VEの他のものとの衝突予測を行う。衝突予測をした結果、衝突のおそれがあると判定された場合には、予測結果として、仮想停止線VLにおいて停止(一時停止)することを推奨するあるいは指令する信号を生成すべき旨の判定をする。なお、衝突予測の結果については、状況に応じて時々刻々変化し得るものであり、例えば、対向車GMが運転支援装置SS(判定装置JD)との通信を行わないものであり、対向車GMの将来位置情報が存在しない場合には、センサー部10での検知結果に基づいて、対向車GMの動向を予測することになる。図示の状況では、対向車GMの速度等から対向車GMが交差点を直進するものとして判断した場合を示しており、これに伴い衝突可能性ありと判定していたものが、その後、予測に反して対向車GMが進路を変更したり、減速あるいは停止したりすれば、判定内容は変更される可能性がある。
【0030】
仮想停止線設定部(設定部)LSは、上記のように、衝突予測部(予測部)52aにおいて、衝突のおそれがあると判定された場合に、自動運転車両VE対して送信すべき仮想停止線VLの位置を設定する。ここでは、自動運転車両VEが右折する、すなわち将来位置情報には対向車線を横切ることが情報として含まれており、このような将来位置情報に対応して、仮想停止線VLの位置設定が行われる。より具体的には、例えば図中破線で囲って示すように、想定通過領域ILが、対向車線における対向車(一般車両)GMの走行範囲として設けられており、仮想停止線VLは、想定通過領域ILの直近手前の位置に設定されている。なお、想定通過領域ILの設定を行うための仮想停止線設定部(設定部)LSの構成や、想定通過領域ILの設定手法については、図5及び図6を参照して詳しい一例を後述する。以上の場合、仮想停止線設定部(設定部)LSは、通信部30で受け取った将来位置情報と、監視部であるセンサー部10における監視結果を衝突予測部(予測部)52aにおいて利用することとに応じて、仮想停止線VLの位置を設定するものとなっている。また、通信部30は、上記のようにして、仮想停止線設定部(設定部)LSにより設定された仮想停止線VLの位置情報を、自動運転車両VEに対して送信する。
【0031】
算出部52bは、仮想停止線VLで停止している自動運転車両VEが、仮想停止線VLから発進可能となる出発可能時刻を算出する。出発可能時刻の算出について、典型的には、先に説明した衝突予測部(予測部)52aによる衝突予測の場合と同様に、交差点CSにおいて右折する際における対向車の走行状況の情報や、歩行者等の占める空間的範囲(クリアランスを含む)等を勘案して出発可能時刻を算出することが考えられる。さらに、信号灯器SGの切替タイミングの情報についても勘案することが考えられる。また、この場合、自動運転車両VEの側で算出される到達予測時刻等の将来位置情報を利用していることで、運転支援装置SS(判定装置JD)は、間接的に、自動運転車両VEの性能(その日の天候や、積載量等を含む)に応じつつ、インフラ側で統一化された基準に沿って、自動運転車両VEが仮想停止線VLの位置から交差点CSを通過する(抜け出す)までの時間にマージンを加味した時間を勘案して出発可能とするか否かを判定するものとなっている。なお、出発可能時刻(出発可能時間)については、例えば定められた時刻(何時何分何秒から何時何分何秒までの間出発可能)で示したり、時間の長さ(現在を起点として何秒後から何秒後までの間出発可能)で示したりすることが想定される。
【0032】
通信部30は、以上のようにして、算出部52bにおいて算出された出発可能時刻の情報を、自動運転車両VEに対して送信する。この際、通信部30は、出発可能時刻の情報に併せて、センサー部10による検知結果に基づく物標情報としての対向車の走行状況の情報、自動運転車両VEに対して送信する態様とすることもできる。なお、情報提供システム100は、自動運転車両VEが交差点CSの通過を完了するまで、上記のような通信動作を継続する。
【0033】
図3(A)及び図3(B)は、上記のような態様における車両側と路側との間での通信内容について、概要を一例として示すデータ図であり、図3(A)は、車両側から路側に対して送信される情報であり、図3(B)は、路側から車両側に対して送信される情報であり、IDにより特定をしている。つまり、路側については、判定ユニットIDが定められており、車両側については、自動運転車両VEを特定するための車両IDが採用されている。
【0034】
まず、図3(A)に示すように、また、既述のように、車両側からは、各種IDや作成日時に加え、自動運転車両VEの位置情報(現在位置)及び将来位置情報が、路側に対して送信される。なお、図示の一例では、位置情報(現在位置)については、現時点(送信時点)での自動運転車両VEが存在する地点を示す緯度、経度に加え、自動運転車両VEの速度(走行速度)や方位(方位角)の情報が含まれている。これに対して、将来位置情報については、位置情報(現在位置)の場合と同様の情報に加えて、位置情報(現在位置)からのオフセット(距離)についての情報がさらに付加されている。将来位置情報については、現在時刻から一定時間経過ごと(例えば1秒経過ごと)の予測値が複数個(n個)含まれている。つまり、路側の設備は、例えばn秒後までの自動運転車両VEの進行予定ルートを把握できることになる。
【0035】
一方、図3(B)に示すように、また、既述のように、路側すなわち運転支援装置SS(判定装置JD)側からは、各種IDや作成日時に加え、仮想停止線VLの情報や、出発可能時刻の情報、さらには、衝突の可能性がある場合の衝突要因についての情報(衝突要因情報)といったものが、車両側に対して送信される。仮想停止線VLに関しては、その位置を線(線分)として示すべく、両端の位置を示す始点と終点の座標(緯度、経度)の情報が提供される。出発可能時刻については、文字通り時刻の情報を提供することも考えられるが、例えば出発開始可能となった時点でその旨を伝達する、という態様、つまり出発可能信号を自動運転車両VEに向けて発信するという態様についても、出発可能時刻に相当する情報の提供と捉えることもできる。衝突要因情報については、衝突の可能性のある一般車両GMや歩行者PEの数や位置等の情報等とすることが想定される。
【0036】
なお、以上のような運転支援装置SSによる自動運転車両VEへの情報の提供については、あくまで自動運転車両VEに対する運転支援のためのものである、と捉えることができる。つまり、路側から提供された情報は、自動運転車両VEに対する強制的なものであるとは限らず、最終的にどのように運転を行うかについての決定は、自動運転車両VE自身に委ねられるものとしてよい。
【0037】
以下、図4を参照して将来位置情報とその変遷について概念的に説明する。図4(A)~図4(D)は、点FPと線LLとにより、自動運転車両VEから運転支援装置SSに対して送信される将来位置情報について概念的に示している。具体的には、自動運転車両VEが描かれている位置は、現在位置を示し、複数の点FPは、一定時間経過ごとの自動運転車両VEの将来位置を示している。また、線LLは、現在位置から各点FPを繋いでおり、自動運転車両VEの予定走行経路を示している。また、この場合、各点FP間における線LLの部分の長さが、自動運転車両VEの速度を示すものとなる。
【0038】
図4(A)~図4(D)のうち、図4(A)は、運転支援装置SSへ送信する最初の将来位置情報について示している。送信された最初の将来位置情報に対して、運転支援装置SS(設定部LS)からの応答として、図4(B)に示すように、仮想停止線VLの情報が提供されると、自動運転車両VEは、図4(C)に示すように、仮想停止線VLの位置で停止するように、新たな将来位置情報を作成して、運転支援装置SSに送信する。ただし、本実施形態では、後述するように、仮想停止線VLの位置は必要に応じて都度設定がなされる、つまり、仮想停止線VLの位置は、変更されうる。したがって、仮想停止線VLが提供された場合、これが必要に応じて変更されつつ、自動運転車両VEは、最終的に、確定した仮想停止線VLの位置で停止することになる。最終的に仮想停止線VLで停止した自動運転車両VEは、運転支援装置SSから出発可能時刻についての情報を待ち、これを取得することで、図4(D)に示すように、仮想停止線VLから発信する内容を示す新たな将来位置情報を作成して、運転支援装置SSに送信する。
【0039】
以上のように、本実施形態では、上記のうち、例えば図4(C)に示す仮想停止線VLの位置が、交通状況の変化等に応じて都度更新される。これに伴い、作成される将来位置情報も都度更新されることになる。言い換えると、仮想停止線VLの位置が、場合によっては動的に変化しつつ、最終的な自動運転車両VEの停止位置が確定するものとなっている。
【0040】
ここで、仮想停止線設定部(設定部)LSによる仮想停止線VLの位置設定については、種々の要素が考えられるが、一例としては、監視部であるセンサー部10による監視の結果、対向車GMの状況が変わって、衝突予測が変更される場合が想定される。また、交差点CSに至るまでの交通状況が変わったり、交差点CS事態の状況が変わったりする場合も考えられる。これらのほかに、本実施形態では、特に、仮想停止線VLの位置が動的に変化する態様の一つとして、仮想停止線設定部(設定部)LSにおいて学習がなされ、その学習の結果が反映される場合の一例を想定する。
【0041】
学習についても、種々の態様が考えられるが、ここでの一例では、仮想停止線設定部(設定部)LSが、交差点CSを通過する車両の通過経路を記録し、記録した履歴に基づいて、仮想停止線VLの位置設定を行う場合について説明する。
【0042】
以下、図5及び図6を参照して、仮想停止線設定部(設定部)LSの構成や、想定通過領域ILの設定手法について、詳しい一例を説明する。
【0043】
図5は、仮想停止線VLを設定する仮想停止線設定部(設定部)LSの一構成例について示すブロック図である。また、図6(A)及び図6(B)は、車両の通過経路の履歴記録について説明するための概念図であり、ここでは、図1の態様に沿うものとして、自動運転車両VEが右折に際して横切る対向車線の所定範囲について、予め車両の通過経路の履歴を記録しておきこれを利用する場合の一例を示している。
【0044】
まず、図5に示すように、仮想停止線設定部(設定部)LSは、各種回路基板等で構成され、演算処理を行うものとして、学習部STと、データ更新部DRとを備える。また、仮想停止線設定部(設定部)LSは、交差点CS及びその周辺についての地形に関するデータで構成される地形データGDと、学習を行うための材料となるデータで構成される学習データSDと、学習の結果算出された仮想停止線の位置データが格納された仮想停止線位置データPDとを格納する。
【0045】
学習部STは、地形データGDと学習データSDとに基づき、仮想停止線の位置を設定する。ここでの一例では、車両の通過経路の履歴として、監視部であるセンサー部10を利用して、交差点CS及びその周辺道路について所定時間(例えば5分間)の露光画像を取得し、取得した画像データを学習データSDとする。この場合、例えば図6(A)から図6(B)に示すような状況に変化することが想定される。具体的に説明すると、まず、図6(A)は、路面等が通常の状態において、対向車線を通過(直進)する対向車GMが走行をした場合における上記露光画像中の走行経路の様子を矢印CC1で模式的に示している。つまり、複数の矢印CC1は、複数の対向車GMの通過軌跡を示しており、これらの集合体が、対向車GM全体としての通過範囲を示すものとなっている。これに対して、学習部STは、自動運転車両VE(図1等参照)が交差点CSを右折する際に矢印CC1を横切る範囲すなわちクロスポイントとなりうる範囲を含み、さらに、これにマージンを踏まえた範囲として、想定通過領域IL1を想定通過領域ILの一例として設定する。さらに、学習部STは、想定通過領域IL1に基づいて、仮想停止線VL1を仮想停止線VLの一例として設定する。なお、設定された仮想停止線VL1は、仮想停止線位置データPDとして格納される。
【0046】
以上に対して、例えば図6(B)に例示するように、路面のうち対向車線上において、何らかの障害物OB(例えば雨天により発生した水たまり等)が存在している状態においては、これを避けるべく、図示のように、対向車GMの走行範囲が全体として道路中央寄りに変更されると考えられる。つまり、矢印CC1で示す走行経路の範囲が変化する。これに伴って、学習部STにおいて、新たな想定通過領域IL2が想定通過領域ILの一例として設定され、想定通過領域IL2に基づいて、新たな仮想停止線VL2が仮想停止線VLの一例として設定される。この場合、図6(B)に示すように、新たな仮想停止線VL2は、破線の仮想停止線VL1の位置よりも、交差点CSにおいて中央寄りとなる。
【0047】
図5に戻って、データ更新部DRは、上述のような学習材料としての学習データSDを都度更新する。すなわち、監視部であるセンサー部10からの各種データに基づき、一定時間経過するごとに上記露光画像あるいはこれに相当する新たなデータを作成していくことで、学習データSDを更新する。学習部STは、データ更新部DRにおけるデータ更新ごとに、上記学習を行うことができる。言い換えると、仮想停止線設定部(設定部)LSは、新たに取得した情報に応じて、仮想停止線VLの位置設定を更新する態様となっている。
【0048】
以上のような構成とすることで、例えば仮想停止線VLの動的な設定変更が可能となる。なお、上記学習部ST等による仮想停止線設定部(設定部)LSの構成は一例であり、例えば人工知能その他を利用した種々の学習態様を、適用することも考えられる。
【0049】
図7は、情報提供システム100を設けた交差点CSにおける他の一動作例について概要説明をするための概念図であり、図1に対応する図である。図1に示す一例では、自動運転車両VEが、交差点CSにおいて右折をしようとする場合について、一動作例を示していたのに対して、図7に示す一例では、自動運転車両VEが左折をしようとする場合について示している。この場合、仮想停止線VLの位置やこれに対応する想定通過領域ILの位置が、図1の場合と異なっている。具体的には、左折の場合、例えば左折先の横断歩道を歩行する歩行者PE等が、監視部たるセンサー部10での監視によって着目すべき移動体MBとなり、当該横断歩道等を含む範囲が想定通過領域ILとなる。また、これに応じて、判定ユニット52における例えば仮想停止線VLの位置設定等の各種演算処理に適用される基準も、図1等を参照して説明した場合と異なるものとなるが、停止後に出発可能時刻の算出を行うこと等については、上記に示した場合と同様である。なお、上記のうち、仮想停止線VLの位置に関して、見方を変えると、仮想停止線VLは、自動運転車両VEが交差点CSに進入して右折するか左折するかに対応して、個別に設けられており、これに応じて、自動運転車両VEに対して送信される仮想停止線VLの設定手法も異なるものとしてもよい。例えばこの場合、仮想停止線VLの位置は、横断歩道よりも手前であることを前提としつつ、歩行者PEの歩く範囲等の傾向を学習し、これに応じて仮想停止線VLの設定変更を行うようにすることが考えられる。
【0050】
以下、図8として示すフローチャートを参照して、情報提供システム100における各部とそれらの一連の動作について、一例を説明する。なお、ここでは、交差点CSにおいて右折か左折をする車両であって、かつ、運転支援装置SS(判定装置JD)と必要なデータの通信が可能となっている自動運転車両VEが、情報提供システム100による運転支援を受ける対象となるものとする。また、先の一例と同様、運転支援対象と運転支援装置SS(判定装置JD)との通信は、運転支援対象である自動運転車両VEが交差点CSの通過を完了するまで継続的になされるものとする。すなわち、一定の間隔で(例えば1秒ごとに)、運転支援対象となるべき自動運転車両VEから運転支援装置SS(判定装置JD)に対して将来位置情報の送信が行われ、これが交差点CSを通過するまで続いているものとする。
【0051】
まず、路側装置である運転支援装置SSは、運転支援の対象となる車両の存在を確認する、すなわち、車両検出を行う(ステップS101)。より具体的には、運転支援装置SSの主制御部50は、ステップS101として、運転支援対象となるべき自動運転車両VEから、通信開始のためのトリガーとなる最初の将来位置情報を受信(取得)したか否かの確認動作を、確認がなされる(ステップS101:Yes)まで継続する。
【0052】
ステップS101において、最初の将来位置情報の取得が確認されると(ステップS101:Yes)、運転支援装置SSの主制御部50は、その将来位置情報から支援対象車両であるか否か、すなわち運転支援の対象となるか否かを判断する(ステップS102)。ここでの一例では、将来位置情報から当該自動運転車両VEが、交差点CSにおいて右折又は左折する予定であるか否かを将来位置情報から確認することで、運転支援の対象となるか否かが決定される。
【0053】
ステップS102において、当該自動運転車両VEが、運転支援の対象とならないと判定された場合(ステップS102:No)、主制御部50は、特段の処理を行うことなく、当該自動運転車両VEに対する一連の動作を終了し、ステップS101からの動作に戻る、すなわち、新たな車両の検出を開始する。
【0054】
一方、ステップS102において、当該自動運転車両VEが、運転支援の対象となると判定された場合(ステップS102:Yes)、主制御部50は、センサー部10から取得した検知結果としての物標情報を参照し(ステップS103)、衝突予測部(予測部)52aとして、物標情報と自動運転車両VEからの将来位置情報とに基づき、衝突予測を行う(ステップS104)。
【0055】
次に、主制御部50は、ステップS104の衝突予測の結果に基づき、自動運転車両VEを停止させる必要があるか否かについて判定する(ステップS105)。すなわち、主制御部50は、仮想停止線VLの位置設定が必要であるか否かを判定する。
【0056】
ステップS105において、自動運転車両VEの停止を要しないと判定された場合(ステップS105:No)、すなわち、自動運転車両VEが交差点CSで停止することなく希望通りに右折又は左折して通過できると判定された場合、主制御部50は、仮想停止線設定部(設定部)LSとして、仮想停止線VLを設けないものとし、通信部30を介して走行予定範囲である交差点CSにおいて停止を要しない旨の情報を、自動運転車両VEに対して送信する(ステップSSa)。
【0057】
その後、主制御部50は、算出部52bにおいて算出された出発可能時刻、あるいはこれに対応する出発可能信号を、自動運転車両VEに対して送信し(ステップS201)、さらに、自動運転車両VEが右折(又は左折)を完了したか否か、すなわち交差点CSを通過したか否かの確認を続け(ステップS202)、確認がなされると(ステップS202:Yes)、当該自動運転車両VEに対する一連の動作を終了し、ステップS101からの動作に戻る、すなわち、新たな車両の検出を開始する。
【0058】
一方、ステップS105において、自動運転車両VEの停止が必要と判定された場合(ステップS105:Yes)、主制御部50は、仮想停止線設定部(設定部)LSとして、仮想停止線VLの位置設定を行うととともに(ステップS106)、設定した仮想停止線VLの位置情報を自動運転車両VEに送信する(ステップS107)。
【0059】
その後、主制御部50は、同一の自動運転車両VEから新たな将来位置情報の取得があったか否かを確認し(ステップS108)、確認がなされた場合(ステップS108:Yes)、将来位置情報を更新し(ステップS109)、確認がなされない場合(ステップS108:No)、現状の将来位置情報を維持する。この上で、主制御部50は、再度、物標情報を参照し(ステップS110)、衝突予測を行って(ステップS111)、自動運転車両VEを停止させる必要があるか否かについて判定する(ステップS112)。
【0060】
ステップS112において、自動運転車両VEの停止が不要と判定された場合(ステップS112:No)、主制御部50は、ステップS201からの動作を開始し、当該自動運転車両VEの交差点CSの通過完了を確認して、ステップS101からの動作を再開する。
【0061】
一方、ステップS112において、自動運転車両VEの停止が引き続き必要と判定された場合(ステップS112)、主制御部50は、停止位置の変更すなわち仮想停止線VLの設定変更が必要であるか否かを判定する(ステップS113)。
【0062】
ステップS113において、停止位置の変更が必要であると判定された場合(ステップS113:Yes)、主制御部50は、仮想停止線VLの設定変更を行うとともに(ステップS114)、変更後の仮想停止線VLの位置情報を自動運転車両VEに送信する(ステップS115)。
【0063】
ステップS113において、停止位置の変更が必要ないと判定された(ステップS113:No)後、あるいは、ステップS115において自動運転車両VEに送信がなされた後、つまり仮想停止線VLの設定事項が確定した後、主制御部50は、依然として自動運転車両VEとの通信を継続しつつ、ステップS108からの動作を再度繰り返し、最終的に自動運転車両VEが交差点CSの通過を完了するまで上記一連の動作がなされる。
【0064】
図9は、上述した情報提供システム100の構成や動作についての概要を示す概念図である。図示のように、また、既述のように、上述した情報提供システム100では、自動運転車両VEの走行予定範囲SRであり、また、交差点CSを含む検出領域DDについて、監視部としてのセンサー部10で物標情報を取得しつつ、走行予定範囲SRとしての検出領域DDに進入する自動運転車両VEと通信して自動運転車両VEの将来位置情報を取得することで、自動運転車両VEの挙動や、交差点CS及びその周囲の交通状況を把握している。これにより、情報提供システム100は、検出領域DDを通過する自動運転車両VEに対して運転支援を行うことが可能となる。特に、本実施形態では、情報提供システム100は、監視部としてのセンサー部10による検知結果(物標情報)や、通信部30を介して取得した自動運転車両VEからの将来位置情報等を勘案して、自動運転車両VEの進行の可否等についての情報としての仮想停止線VLの位置情報について、設定部LSにおいて設定を行った上で自動運転車両VEに提供している。さらに、上記態様では、情報提供システム100は、停止後の出発可能を定める基準等についても設けている。
【0065】
一般に、道路形態については、場所ごとの形状や状況等はそれぞれ異なるため、例えば、仮に、自動運転車両VE側だけで上記のような判定を全て行う場合、その場における最適な挙動を選択するのは困難になると考えられる。これに対して、本実施形態では、情報提供システム100を採用した設置場所ごとに最適化された基準に基づく挙動の選択を、路側から車側に対して提供することが可能となる。これにより、例えば自動運転車両VEごとに異なるセンシングの優劣等の影響にかかわらず、円滑な運転が可能となる。また、特に、本実施形態では、仮想停止線VLの位置を、種々の状況変化に応じて設定変更できるようにすることで、さらに安全で円滑な通行制御が可能となる。なお、自動運転車両VEの走行予定範囲SRについては、既述のように、交差点CSや、これに付随的に設けられた、あるいはこれの近傍に存在する横断歩道が含まれるものとなっている。上記態様では、交差点CSや横断歩道のように、衝突事故の発生が比較的高いと考えられる場所において、的確な車両停止判断ができるものともなっている。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る情報提供システム100は、自動運転車両VEと通信して将来位置情報を受け取る通信部30と、自動運転車両VEの走行予定範囲を監視する監視部としてのセンサー部10と、通信部30で受け取った将来位置情報とセンサー部10における監視結果とに応じて仮想停止線VLの位置を設定する設定部LSとを備え、通信部30は、設定部LSにより設定された仮想停止線VLの位置情報を、自動運転車両VEに対して送信する。上記情報提供システム100では、インフラ側において、自動運転車両VEから受け取った将来位置情報とインフラ側での監視結果とに応じて仮想停止線VLの位置を設定し、設定された仮想停止線VLの位置情報を、自動運転車両VEに対して送信することで、交通状況の把握に際して、自動運転車両VEの性能に依存せず、インフラ側から的確な停止位置の情報を提供できる。
【0067】
〔第2実施形態〕
以下、図10等を参照して、第2実施形態に係る情報提供システムについて一例を説明する。図10は、本実施形態に係る情報提供システム100を設けた交差点CSにおける一動作例について概要説明をするための概念図であり、図1等に対応する図である。また、図11は、情報提供システムの一構成例について示すブロック図であり、図2に対応する図である。
【0068】
第1実施形態では、交差点CSにおいて信号機の設置に関して特に言及していなかった。これに対して、本実施形態では、信号機が設置されている交差点CSについて示している点において、第1実施形態の場合と異なっている。また、交差点CSにおける横断歩道の位置も若干異なっており、情報提供システム100は、当該横断歩道の通過完了までをもって交差点CSの通過完了と取り扱う態様であるものとする。なお、これらの点を除き、第1実施形態の場合と同様であるので、情報提供システム100の全体構成等については、説明を省略し、必要に応じて上記対応関係にある図等の他の図を適宜援用するものとする。
【0069】
図示のように、本実施形態では、信号機TLを構成する4つの信号灯器SGと信号制御機SCとを備え、運転支援装置SS(判定装置JD)は、信号制御機SCに接続されている。より具体的には、運転支援装置SS(判定装置JD)は、信号制御機SCに近接して設けられ、これと例えば有線接続されることで、信号機の制御に関して必要な情報(灯色情報等)の取得が可能となっている。なお、接続に関しては、有線接続に限らず、無線接続であってもよい。
【0070】
信号制御機SCは、交差点CSに設けられた信号灯器SGの全て(図1の例では、4つの信号灯器SG)について統括的制御を行っている。運転支援装置SS(判定装置JD)は、判定装置JDとして機能するに際して、必要に応じて、信号制御機SCを介して信号灯器SGについての情報を取得することで、進行可否等の各種判定に利用できる。より具体的な一例を説明すると、図11に示すように、灯色情報等の信号灯器SGの切替タイミングに関する情報を、主制御部50の判定ユニット52(特に予測部52a)が信号制御機SCから取得することで、衝突判定に際して、センサー部10からの物標情報や、自動運転車両VEからの将来位置情報に加えて、信号灯器SGの灯色情報を加味する態様とすることが考えられる。これに伴い、設定部LSは、交差点CSに設置されている信号灯器SGの灯色情報に基づき仮想停止線VLに関する判断を行うものとなる。
【0071】
この場合、例えば図10に示すように、運転支援対象の自動運転車両VEが交差点CSを右折しようとしているのに対して、矢印BB1に示すように、対向車線の少し遠方に直進する対向車GMが確認されているような場合に、例えば事前に取得している灯色情報から、対向車GMが交差点CSに到達する前に対向車線の信号灯器SGが赤になり対向車GMが手前で停止することになるのが分かっていれば、情報提供システム100(予測部52a)は、対向車GMを衝突のおそれがあるものから除外できる。つまり、この場合、設定部LSについて、対向車GMの存在に基づく仮想停止線VLの位置設定や仮想停止線VLの位置情報の送信はなされないことになる。
【0072】
一方、図示の一例のように、右折しようとする先の横断歩道において、歩行者PEが確認される場合も考えられる。図示の状態では、当該横断歩道が交差点CSの中心から若干離れており、当該横断歩道を含む想定通過領域ILに対応する仮想停止線VLの位置に自動運転車両VEが停止できる空間SPが確保可能であるものとする。この場合、情報提供システム100は、交差点CSを右折した先の仮想停止線VLの位置で停止するように、自動運転車両VEに対して情報を提供することができる。なお、この場合、自動運転車両VEの車両サイズについても併せて検知しておくことで、自動運転車両VEが停止できる空間SPが確保可能であるか否かを予め判定しておくことができる。つまり、この場合、設定部LSについて、横断歩道を含む想定通過領域ILに応じた仮想停止線VLの位置設定や仮想停止線VLの位置情報の送信がなされることになる。
【0073】
本実施形態においても、インフラ側において、自動運転車両VEから受け取った将来位置情報とインフラ側での監視結果とに応じて仮想停止線VLの位置を設定し、設定された仮想停止線VLの位置情報を、自動運転車両VEに対して送信することで、交通状況の把握に際して、自動運転車両VEの性能に依存せず、インフラ側から的確な停止位置の情報を提供できる。特に、本実施形態では、信号機TLが存在する交差点CSにおいて、灯色情報を加味した判断が可能になる。
【0074】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0075】
まず、上記のうち、情報提供システム100を導入する箇所を、交差点CSとしているが、これに限らず、種々の箇所において情報提供システム100を導入することが可能である。例えば、検出領域DDとして、車線の合流点や、車線変更区間を含むような箇所において、本願を適用することも可能である。
【0076】
また、交差点CSの形状等については、一例であり、これに限らず、種々の形状や構造となっている場合において適用可能である。
【0077】
また、仮想停止線設定部(設定部)LSにおける仮想停止線VLの位置設定についても、上記以外にも、種々の態様が可能であり、例えば手動による位置設定を受け付け可能な態様としてもよい。例えば、最初に情報提供システム100を導入する際の初期設定や、一時的な交通規制への対応、さらには、交差点CSあるいはその周辺の道路状況や形状の変化に伴う設定の変更等に対応可能とすることが考えられる。
【0078】
また、情報提供システム100を構成するものとしては、上記以外にも種々の態様が考えられ、例えば、第2実施形態として例示した信号灯器SGにおいて、監視用のセンサー部が設けられている場合には、これをセンサー部10として援用する態様としてもよい。
【0079】
また、上記では、例えば図1等に示す対向車GMを一般車両すなわち情報提供システム100との通信を行わないものとして説明したが、対向車GMが情報提供システム100との通信を行い、自己の将来位置情報を送信するものである場合には、当該将来位置情報を利用して、衝突判定やこれに伴う仮想停止線VLの位置設定を行うものとしてもよい。
【0080】
また、例えば仮想停止線VLや想定通過領域IL等については、雨や雪等の天候の状態を加味して、さらにバッファー量等が調整されるものとしてもよい。すなわち、天候に応じて、仮想停止線VLの位置設定が変更されるものとしてもよい。
【0081】
また、上記では、情報提供システム100を構成する運転支援装置SS(判定装置JD)等を、現場付近すなわち交差点CSの付近に設置するものとしているが、これに限らず、例えば各種情報処理やデータ管理を担う箇所等については、遠隔した場所に管理センター(管理サーバ)等として設けたり、あるいは、クラウド上において、各種処理やデータ保管を行ったりすることも考えられる。例えば仮想停止線VLの位置データ等を、遠隔地にある管理センター(管理サーバ)やクラウド上において保管等をする態様とすることができる。
【0082】
また、上記一例では、センサー部10は、カメラ部11と、測距部12とで構成されるものとしているが、センサー部10の構成については、これに限らず、例えばカメラ部11と、測距部12とのうち、どちらか1つでセンサー部10が構成されているものとしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…センサー部(監視部)、11…カメラ部、12…測距部、30…通信部、50…主制御部、51…センサー制御部、52…判定ユニット、52a…衝突予測部(予測部)、52b…算出部、100…情報提供システム、AA1,BB1,CC1…矢印、AO…自動運転制御部、CS…交差点、DD…検出領域、DR…データ更新部、FG…将来位置情報生成部、FP…点、GD…地形データ、GM…対向車(一般車両)、ID…判定ユニット、ID…車両、IL,IL1,IL2…想定通過領域、JD…判定装置、LL…線、LS…仮想停止線設定部(設定部)、LS…設定部、MB…移動体、OB…障害物、PD…仮想停止線位置データ、PE…歩行者、SC…信号制御機、SD…学習データ、SG…信号灯器、SP…空間、SR…走行予定範囲、SS…運転支援装置、ST…学習部、TL…信号機、TT…通信部(無線部)、VE…自動運転車両、VL,VL1,VL2…仮想停止線
図1
図2
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図5
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