(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057500
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】管端部材および管構造物
(51)【国際特許分類】
F16L 55/163 20060101AFI20230414BHJP
F16L 55/1645 20060101ALI20230414BHJP
B29C 63/34 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
F16L55/163
F16L55/1645
B29C63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167078
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
【テーマコード(参考)】
3H025
4F211
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB05
3H025EB21
3H025EC15
3H025ED02
4F211AD12
4F211AG08
4F211AH11
4F211AH43
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
4F211SJ22
4F211SP12
(57)【要約】
【課題】施工性のよい管端部材およびその管端部材を有する管構造物を提供する。
【解決手段】既設管EPLとライニング管LPの二重構造の二重管WPの端部に設置される管端部材10であって、既設管EPLの管端における内周面EPLiと外周面EPLoの間の既設管厚み面EPL2と、ライニング管LPの管端における内周面LPiと外周面LPoの間のライニング管厚み面LP2の両方に跨って延在した中空円盤状のフランジ部111を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側管と内側管の二重構造の管の端部に設置される管端部材であって、
前記外側管の管端における外周面と内周面の間の外側管厚み面と、前記内側管の管端における内周面と外周面の間の内側管厚み面の両方に跨って延在した中空円盤状のフランジ部を備えていることを特徴とする管端部材。
【請求項2】
前記フランジ部に連続して形成され、前記内側管の内周面における端部全周を覆う円筒部を備えていることを特徴とする請求項1記載の管端部材。
【請求項3】
埋設された既設管と、
前記既設管の内周面を裏打ちしたライニング管と、
前記ライニング管の端部に配置された管端部材とを備えた管構造物であって、
前記管端部材は、前記既設管の管端における外周面と内周面の間の既設管厚み面と、前記ライニング管の管端における内周面と外周面の間のライニング管厚み面の両方に跨って延在した中空円盤状のフランジ部を有するものであることを特徴とする管構造物。
【請求項4】
前記管端部材は、前記フランジ部に連続して形成され、前記ライニング管の内周面における端部全周を覆う円筒部を有するものであることを特徴とする請求項3記載の管構造物。
【請求項5】
前記既設管の端部と別管の端部を連結する筒状の継手部材を備え、
前記継手部材は、該継手部材の内周面から内側に向かって環状に突出した環状突部を有するものであり、
前記フランジ部は、前記環状突部によって前記既設管厚み面および前記ライニング管厚み面のうち少なくとも一方に押し付けられたものであることを特徴とする請求項3または4記載の管構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外側管と内側管の二重構造の管の端部に設置される管端部材およびその管端部材を備えた管構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水配管、農業用水配管、上水道管、ガス管等の既設管では、老朽化したり管壁が損傷した場合に、管壁の内周面を裏打ちするように、既設管の内側にライニング管が設けられることがある(例えば、特許文献1等参照)。この場合、既設管とライニング管の間に僅かに発生する隙間に、ライニング管内を流れる圧力流体が侵入し、既設管を腐食させる恐れがある。このため、従来より、管端部材を設置し、その隙間に圧力流体が侵入することを防止している。
【0003】
図1は、従来の管端部材の設置方法を示す断面図である。
【0004】
図1には、既設管である外側管91と、その外側管91の内周面を裏打ちしたライニング管である内側管92の断面の上側部分のみが示されている。この
図1では、外側管91の管端911は図の左側に示されており、左側が管端側になり、右側が奥側になる。
図1(a)に示すように、内側管92は、外側管91の内周面91i側に配置されている。内側管92は、外側管91内で膨らませて外側管91の内周面に押し付けながら硬化させることで成形される。内側管92の成形(硬化)が完了した時点では、通常、外側管91の管端911よりも内側管92の管端921の方が管端側に突出している。そこで、まずは
図1(b)に示すように、内側管92の管端921の位置が外側管91の管端911の位置と概略一致するように、内側管92の突出部分を電動のこぎり等で切り取る。その後、
図1(c)に示すように、内側管92の管端921が、外側管91の管端911よりも50cm程度奥側に位置するように、内側管92の管端921側部分をグラインダーで削り取るか、電動カッターで切り込みを入れて外側管91から剥ぎ取る。
【0005】
内側管92の管端921側部分を削り終わったら、ゴム製の円筒状のパッキン部材931を、外側管91の内周面91iにおける端部から内側管92の内周面92iにおける端部にかけて貼り付ける。パッキン部材931は、外側管91の内周面91i全周と内側管92の内周面92i全周に貼り付けられているが、
図1(c)にはパッキン部材931も断面の上側部分のみが示されている。同様に、内側管92の管端921側部分は全周が削り取られているが、
図1(c)には内側管92の断面の上側部分のみが示されている。
図1(c)に示すパッキン部材931は、円筒状のパッキン部材931の管端側の端9311を、外側管91の管端911の位置に一致させるようにして貼り付けられている。
【0006】
パッキン部材931は、人の手によって貼り付けられただけであり、外側管91と内側管92の間のシール性は不十分である。そこでパッキン部材931の押圧のために拡径バンド932が用いられる。拡径バンド932は、ステンレス製のC字状のものであり、奥側から管端側に向けて順に取り付けられる。拡径バンド932を内側から嵌め込むにあたっては、C字状の拡径バンド932を不図示の拡径工具で押し拡げた状態で、C字状の隙間にその隙間を塞ぐ固定プレート(不図示)を挿入する。固定プレートを挿入することで、拡径バンド932は、拡径工具を取り外しても押し拡げられた状態を維持しパッキン部材931を外側に向けて押圧する。C字状の隙間を塞ぐ固定プレートは、管端側から奥側に向けてハンマーで叩きながら挿入する。このハンマーで叩く衝撃に伴って、拡径バンド932とともにパッキン部材931は奥側にどうしてもずれてしまうのが実情である(
図1(d)中の矢印参照)。しかも、奥側から順に複数の拡径バンド932を嵌め込んでいくと、拡径バンド932を新たに嵌め込む度にパッキン部材931は奥側にずれてしまう。
【0007】
図1(d)は、4箇所に拡径バンド932を嵌め込み、管端部材93の設置が完了した様子を示す図である。
図1(d)に示す状態では、パッキン部材931が奥側にずれてしまったことにより、外側管91の内周面91iにおける管端911から15cm程度の部分が露出してしまっている。
【0008】
図1(e)は、外側管91の外周面91oに継手部材95の一端側が接続した様子を示している。
図1(e)に示す継手部材95の他端側には別の管が接続し、内周面91i側に内側管92が設けられた外側管91に、圧力流体が流れるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、内側管92の管端921側部分を外側管91から削り取る又は剥ぎ取る作業は、作業者が内側管92の内部にグラインダーや電動カッター等の工具を差し込みながら外側管91を傷つけないように慎重に行う煩雑な作業であり、施工性が悪いという問題があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、施工性のよい管端部材およびその管端部材を有する管構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決する本発明の管端部材は、
外側管と内側管の二重構造の管の端部に設置される管端部材であって、
前記外側管の管端における外周面と内周面の間の外側管厚み面と、前記内側管の管端における内周面と外周面の間の内側管厚み面の両方に跨って延在した中空円盤状のフランジ部を備えていることを特徴とする。
【0013】
この管端部材によれば、前記外側管の管端と前記内側管の管端の間の僅かな隙間はフランジ部によって塞げるので、その隙間に二重構造の管内を流れる圧力流体が侵入することを防止できる。従って、前記内側管の管端側部分を削り取ったり剥ぎ取ったりする必要がなくなり、この管端部材の設置に付随する煩雑な作業が削減できて施工性が高まる。
【0014】
なお、本発明の管端部材は、外側管が既設管、内側管がライニング管の二重構造の管に使用される以外にも、新品の外側管と、裏打ちされたものに限らない新品の内側管といった構成の二重構造の管にも使用可能である。
【0015】
この管端部材は、伸長性を有するものであったり、弾性変形するものであることが好ましい。
【0016】
また、上記管端部材において、
前記フランジ部に連続して形成され、前記内側管の内周面における端部全周を覆う円筒部を備えてもよい。
【0017】
前記円筒部を前記内側管の内周面に差し込むことで、前記フランジ部が前記外側管厚み面と前記内側管厚み面の両方に跨って延在するように配置できるので、この管端部材の施工性がより高まる。その上、前記円筒部が存在することで、前記フランジ部と前記内側管厚み面の間に圧力流体が入り込みにくくなるので、この管端部材によるシール性も高まる。
【0018】
ここで、前記円筒部と前記フランジ部は一体成型されたものであってもよく、別体で成形されたものを連結したものであってもよい。また、前記円筒部は、前記内側管の内周面における端部全周に押し付けられたものであってもよい。さらに、前記内側管厚み面は、前記外側管の延在方向において、前記外側管厚み面と概ね一致した位置に配置された面であってもよい。
【0019】
さらに、前記円筒部を前記内側管の内周面に向けて押圧する押圧部材を備えていてもよい。そして、前記押圧部材は、前記内側管の内周面に向けて前記円筒部を押圧する力が奥側に押されながら増加するものであってもよい。
【0020】
上記目的を解決する本発明の管構造物は、
埋設された既設管と、
前記既設管の内周面を裏打ちしたライニング管と、
前記ライニング管の端部に配置された管端部材とを備えた管構造物であって、
前記管端部材は、前記既設管の管端における外周面と内周面の間の既設管厚み面と、前記ライニング管の管端における内周面と外周面の間のライニング管厚み面の両方に跨って延在した中空円盤状のフランジ部を有するものであることを特徴とする。
【0021】
この管構造物は、本発明の管端部材を有するものであり、前記ライニング管の管端側部分を削り取ったり剥ぎ取ったりせずに施工可能なものであるので施工性がよい。なお、前記既設管は、内圧管として使用されていたものであってもよい。
【0022】
また、上記管構造物において、
前記管端部材は、前記フランジ部に連続して形成され、前記ライニング管の内周面における端部全周を覆う円筒部を有するものであってもよい。
【0023】
この管構造物の施工の際に、前記円筒部を前記ライニング管の内周面に差し込むことで、前記フランジ部が所定の位置に配置されるので、この管端部材の施工性がより高まる。その上、前記円筒部が存在することで、前記フランジ部と前記ライニング管厚み面の間に圧力流体が入り込みにくくなるので、シール性も高まる。
【0024】
ここで、前記円筒部は、前記ライニング管の内周面における端部全周に押し付けられたものであってもよい。前記管端部材は、前記円筒部を前記ライニング管の内周面に向けて押圧する押圧部材を有していてもよい。そして、前記押圧部材は、前記ライニング管の内周面に向けて前記円筒部を押圧する力が奥側に押されながら増加するものであってもよい。
【0025】
また、上記管構造物において、
前記既設管の端部と別管の端部を連結する筒状の継手部材を備え、
前記継手部材は、該継手部材の内周面から内側に向かって環状に突出した環状突部を有するものであり、
前記フランジ部は、前記環状突部によって前記既設管厚み面および前記ライニング管厚み面のうち少なくとも一方に押し付けられたものであってもよい。
【0026】
すなわち、前記フランジ部は、前記既設管厚み面および前記ライニング管厚み面のうち少なくとも一方と前記環状突部との間に挟み込まれたものであってもよい。前記フランジ部が前記環状突部によって押しつけられることで前記管端部材によるシール性が高まる。
【0027】
なお、前記既設管厚み面と前記フランジ部との間に止水材または接着剤が充填されていてもよい。また、前記ライニング管厚み面と前記フランジ部との間に止水材または接着剤が充填されていてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、施工性のよい管端部材およびその管端部材を有する管構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】従来の管端部材の設置方法を示す断面図である。
【
図2】管構造物を構築する現場を模式的に示した平面図である。
【
図3】(a)は管構造物構築方法を示すフローチャートであり、(b)は(a)に示す管端部材の設置工程(ステップS80)を詳細に示したフローチャートである。
【
図4】
図3(a)に示すライニング管加熱(ステップS60)を実行している様子を模式的に示す断面図である。
【
図5】本実施形態の管端部材を設置する様子を示す断面図である。
【
図6】二重管の外周面に継手部材を設置する様子を示す断面図である。
【
図7】(a)は、管端部材および管構造物の第1変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図であり、(b)は、管構造物の第2変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図である。
【
図8】(a)は、管構造物の第3変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図であり、(b)は、管構造物の第4変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。この実施形態では、内圧管として使用され老朽化した老朽管の一部分を裏打ちして新設管と接続することで管構造物を構築する例を用いて説明する。
【0031】
図2は、管構造物を構築する現場を模式的に示した平面図である。
【0032】
この
図2には、上下方向に広い道路R1が通り、左右方向に狭い道路R2が通った、交差点IS周辺の現場が示されている。広い道路R1は交通量が多く、通行止めや車線規制を行うことが困難な道路である。一方、狭い道路R2は交通量が少なく、通行止めを行うことが容易な道路である。
【0033】
老朽化した老朽管EPは、狭い道路R2の下をその道路R2に沿って延在している。このため、交差点ISでは、広い道路R1の下を横切るように延在している。
図2では、左側を上流側とし、右側を下流側とする。
【0034】
図3(a)は、管構造物構築方法を示すフローチャートである。
【0035】
図3(a)に示す管構造物構築方法では、まず、老朽管EPの代わりになる新設管を埋設する(ステップS10)。
図2に示す現場では、狭い道路R2を通行止めにし、老朽管EPと並ぶように新設管を埋設する。狭い道路R2の、交差点ISよりも上流側の部分では、上流側新設管NP1を埋設し、交差点ISよりも下流側の部分では、下流側新設管NP2を埋設する。
図2では、上流側新設管NP1を埋設した箇所には土が戻されており、下流側新設管NP2を埋設した箇所にも土が戻されている。この
図2においては、埋設されている管は二点鎖線で示している。
【0036】
広い道路R1は通行止めや車線規制を行うことが困難であることから、交差点IS内で新設管を新たに埋設する作業を行うことができず、既設管を掘り出すことなく埋めたままの状態で、その既設管の内周面に新たなライニング管を設けることを行う。ライニング管は、既設管内に、反転挿入によって通される場合もあれば引き込むことによって通される場合もある。ライニング管を既設管内に通す場合の入口側を発進側と称し、出口側を到達側と称する。交差点ISに対する上流側および下流側のいずれか一方側が発進側になり、他方側が到達側になる。以下の説明では、交差点ISに対する上流側を発進側にし、交差点ISに対する下流側を到達側にする。
【0037】
ステップS10に続くステップS20では、交差点ISから上流側にずれた位置に発進側の縦穴VH1を掘削するとともに交差点ISから下流側にずれた位置に到達側の縦穴VH2を掘削する。なお、発進側の縦穴VH1と到達側の縦穴VH2はどちらを先に掘削してもよいし、同時に掘削してもよい。また、ステップS10とステップS20はどちらを先に実施してもよいし、同時に実施してもよい。
図2には、縦穴VH1,VH2の縁を長破線で示している。上流側の縦穴VH1を設けたことで、上流側新設管NP1の下流端部が掘り起こされているとともに、老朽管EPのうち、交差点ISよりも上流側の部分も掘り起こされている。また、下流側の縦穴VH2を設けたことで、下流側新設管NP2の上流端部が掘り起こされているとともに、老朽管EPのうち、交差点ISよりも下流側の部分も掘り起こされている。
【0038】
続くステップS30では、縦穴VH1,VH2によって掘り起こされた老朽管EPを縦穴VH1,VH2それぞれで切断し、老朽管EPの一部を除去する。以下、老朽管EPの一部を除去することで両端が分断された老朽管EPの一部分を既設管EPLと称する。既設管EPLは、交差点ISの地中に埋設され縦穴VH1と縦穴VH2それぞれに開口した端部が配置されている。
図2ではクロスハッチングを施した部分が除去された部分になる。このステップS30では、ライニング管を設ける既設管EPLを切り出す工程になり、発進側の端部と到達側の端部が形成されたことになる。既設管EPLよりも上流側には、上流側老朽管EP1が埋設されたままであり、既設管EPLよりも下側には、下流側老朽管EP2が埋設されたままである。上流側老朽管EP1も下流側老朽管EP2も、除去されずに埋設されたまま存置される。
【0039】
ステップS40では、既設管EPL内にライニング管を引き込む。
【0040】
ここでライニング管について詳述する。ライニング管は、未硬化の硬化性樹脂(例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等)を含浸した筒状のものであり、以下の手順によって工場で予め用意される。本実施形態では、熱硬化性樹脂が含浸されたライニング管を例にして説明する。なお、光硬化性樹脂が含浸されたライニング管は、後述するステップS60において熱の供給に代えて光を照射する点が異なる以外は熱硬化性樹脂を含浸したライニング管と同様の手順で形成される。まず、外側フィルム層が外側に位置しその外側フィルム層の内側に基材層が位置した筒状のベースホースと、伸長層が外側に位置しその伸長層の内側に基材層が位置した筒状のキャリブレーションホースを別々に用意し、それぞれの基材層に熱硬化性樹脂を含浸する。次いで、熱硬化性樹脂が含浸されたベースホースの内側にキャリブレーションホースを工場内で反転挿入する。反転挿入では、基材層が内側に位置するキャリブレーションホースをその基材層が外側にくるようにめくり返しながら、キャリブレーションホースをベースホースの内側に挿入する。キャリブレーションホースは、ベースホースの一端側からベースホースの内側に入れ込まれ、空気又は水の力によって工場内で反転挿入される。キャリブレーションホースは、ベースホースよりも厚みが薄いものであるため、反転挿入は容易に行われる。キャリブレーションホースを反転挿入することで、ベースホースの基材層とキャリブレーションホースの基材層が接触し、ベースホースとキャリブレーションホースという2つの筒状の部材が一体になったライニング管が完成する。ライニング管の最外側面は外側フィルム層によって構成されるとともにその最内側面は伸長層によって構成され、外側フィルム層と伸長層の間に、熱硬化性樹脂を含浸した基材層が配置される。その後、伸長層の内側に、ライニング管を加熱するための蒸気を供給するための蒸気供給チューブを挿入しておく。完成したライニング管は偏平にし、つづら折りにして折り畳んだ状態あるいは巻き取った状態で低温保管可能である。ライニング管は、折り畳んだ状態あるいは巻き取った状態のまま保冷車によって施工現場に運搬され、ステップS40で使用される。
【0041】
ステップS40では、到達側の縦穴VH2内に不図示のウインチを設置する。続いて、滑車を介してウインチに巻かれている引込ワイヤの後端を、既設管EPLの、到達側端部から発進側端部に挿通させ、既設管EPL内に引込ワイヤを貫通させる。
【0042】
ライニング管の先頭部分を結束ワイヤで結束し、その結束ワイヤと既設管EPLの発進側端部まで貫通した引込ワイヤの後端を接続する。到達側の縦穴VH2内に設置した不図示のウインチで、引込ワイヤを巻き取り、ライニング管を、既設管EPLの発進側端部から既設管EPL内に引き込む。ライニング管の、結束ワイヤで結束した先頭部分が、既設管EPLの到達側端部から出るまで引込ワイヤを巻き取ったらウインチを停止して引き込みを完了する。
【0043】
ステップS50では、ライニング管から結束ワイヤを取り外し、既設管EPLを貫通したライニング管の両側の開口端それぞれを密閉状態にする。ライニング管の内部には、蒸気供給チューブが、発進側端部から到達側端部まで通っている。ステップS50では、ライニング管内に蒸気供給チューブから常温のエアーを供給し、ライニング管を膨らませ、ライニング管を拡径させる。ライニング管が十分に膨らむと、ライニング管の外側フィルム層が既設管EPLの内周面に押し付けられる。
【0044】
図4は、
図3(a)に示すライニング管加熱(ステップS60)を実行している様子を模式的に示す断面図であり、図の左側が発進側になり右側が到達側になる。この
図4には、広い道路を通って交差点ISを行き来する車両V1,V2が示されている。また、狭い道路R2に車両が進入することを防止するための三角コーンTCも示されている。
【0045】
また、
図4には、既設管EPLに複数のひび割れC1~C4が生じた様子が示されている。
【0046】
加えて、
図4には、既設管EPLを貫通した状態で拡径されたライニング管LPも示されている。このライニング管LPの中心部分には、蒸気供給チューブ36が通っている。
図4に示す蒸気供給チューブ36には、延在方向に沿って1mおきに直径1cm程度の丸孔362が設けられ、到達側の端部には、幅が数cmであり長さが10cm~20cm程度のスリット孔361が設けられている。さらに、ライニング管LPの、発進側端部には発進側治具34が配置されており、到達側端部には到達側治具35が配置されている。発進側治具34は、栓部材341と、発進側締付部材342と、チューブ締付部材343を備えている。栓部材341は、蒸気供給口3411と蒸気排出口3412を有する。この栓部材341は、発進側締付部材342によってライニング管LPの発進側の開口端に固定されており、蒸気供給口3411と蒸気排出口3412を除いて、ライニング管LPの発進側の開口を閉塞するものである。蒸気供給口3411には、蒸気供給チューブ36がチューブ締付部材343によって固定されている。到達側治具35は、締結ドラム351と到達側締付部材352を備えている。締結ドラム351は、円筒形状の剛体である。ライニング管LPの到達側端部と蒸気供給チューブ36の到達側端部は、剛体である締結ドラム351の外周面に到達側締付部材352によって締め付けられ、ライニング管LPの到達側の開口も蒸気供給チューブ36の到達側の開口も密閉されている。なお、ライニング管LPとして、到達側端部が事前に閉塞されたものを用いてもよい。同様に、蒸気供給チューブ36として、到達側端部が事前に閉塞されたものを用いてもよい。
【0047】
図4に示す発進側の縦穴VH1の入口近傍には、ボイラー31、コンプレッサー32、ミキシング装置33および排気装置38が設置されている。ボイラー31からは、例えば100℃を超えて加熱された過熱蒸気が送り出される。なお、ボイラー31から送り出される蒸気は、飽和蒸気であってもよい。コンプレッサー32は、外気(空気)を圧縮して送り出すものである。ボイラー31から送り出された過熱蒸気とコンプレッサー32から送り出された外気は、ともにミキシング装置33に供給されて混合される。以下、ミキシング装置33で混合されて送り出される、過熱蒸気と外気の混ざり合った気体を、加熱用蒸気と称する。ボイラー31とミキシング装置33をつなぐ配管には蒸気バルブ311が設けられており、コンプレッサー32とミキシング装置33をつなぐ配管には空気バルブ321が設けられている。蒸気バルブ311と空気バルブ321を操作して絞り量を調整することで、ミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気の温度を調整したり、その加熱用蒸気の流量を調整することができる。排気装置38は、消音部381と排気ダクト382を有する。
【0048】
ミキシング装置33からは供給用ホースSHが延在している。この供給用ホースSHは、栓部材341の蒸気供給口3411に接続している。また、栓部材341の蒸気排出口3412からは排気用ホースCHが延在している。この排気用ホースCHは、消音部381に接続している。排気用ホースCHの途中には、排気用ホースCH内を流れる流体の流量を調整するための排気バルブCH1が設けられている。上述したライニング管拡径工程(ステップS50)では、この排気バルブCH1と蒸気バルブ311は閉めた状態にし、空気バルブ321は開いた状態にして、コンプレッサー32を稼動し、ライニング管LPの内部に外気(空気)を供給する。
【0049】
ライニング管加熱工程(ステップS60)では、加熱用蒸気(例えば、80℃から100℃の蒸気)が用いられる。拡径された状態のライニング管LPの内部には、蒸気供給チューブ36に設けられたスリット孔361と丸孔362から加熱用蒸気が吹き出し、ライニング管LPは、既設管EPLの内周面に押し付けられた状態が維持されるとともに加熱用蒸気によって加熱される。その結果、ライニング管LPに含浸されていた熱硬化性樹脂の硬化が開始される。
【0050】
なお、ライニング管LPの到達側端部には、ドレン排出管37が差し込まれている。
図4では、図示の都合上、ドレン排出管37がライニング管LPの上側部分に差し込まれている様に描かれているが、実際にはドレン排出管37は、ライニング管LPの下端部分に差し込まれている。加熱用蒸気は、ある程度の熱をライニング管LPに奪われることで、ライニング管LPの内部では一部がドレンに変化する。ドレン排出管37にはバルブ371が設けられた配管が接続している。そのバルブ371を開けることで、ライニング管LPの内部で生じたドレンは、ライニング管LPの外部に排出される。
【0051】
ライニング管LPの到達側で蒸気供給チューブ36から供給された加熱用蒸気は、発進側の栓部材341における蒸気排出口3412に向かってライニング管LP内を流れ徐々に温度が低下していき、その蒸気排出口3412から排気用ホースCHを通って消音部381に送り込まれる。消音部381は、排気用ホースCHの断面積よりも広い断面積の内部空間を有するとともに消音材も配置されている。加熱用蒸気にはボイラー31の炊き出し音等の音波がのっており、また、大気放出音も生じる。消音部381は、これらの音を消音するものである。消音部381を通過した加熱用蒸気は排気ダクト382から大気中に排気される。
【0052】
ステップS60では、ライニング管LPの到達側の端部および発進側の端部それぞれにおいて、ライニング管LP自身の温度を測定している。熱硬化性樹脂の硬化発熱によってライニング管LPの端部それぞれの温度は、一旦は上昇するが、その後、温度低下を開始する。ライニング管LPの温度が、温度上昇から温度低下に転じほぼ一定の温度に落ちついたことで、熱硬化性樹脂の硬化は十分なレベルまで完了している。この状態から、硬化を完了させる加熱用蒸気よりも高い温度の加熱用蒸気(例えば、100℃~105℃)を供給する。こうすることで、熱硬化性樹脂の強度を高めることができる。強度を高めるための加熱用蒸気による加熱時間は予め実験によって求めておき、その加熱時間が経過するとステップS60は終了になる。
【0053】
以上説明したライニング管加熱工程(ステップS60)によれば、ライニング管LPが既設管EPLの内周面に押し付けられた状態で、含浸されている熱硬化性樹脂が硬化するとともに強度を増し、既設管EPLの内周面の内側にライニング管LPによる新たな自立管路が形成される。既設管EPLは外側管の一例に相当し、新たな自立管路として形成されライニング管LPは内側管の一例に相当する。
【0054】
その後、ボイラー31を停止して蒸気バルブ311を閉じることで、加熱用蒸気に代えて外気(常温の空気)を供給し、硬化したライニング管LPを冷却する。
【0055】
図3に示すステップS70では、管口の切断を行い、ライニング管LPの両端を開口する。
図4に示すライニング管LPは、既設管EPLよりも、発進側にしても到達側にしても突出しているが、このステップS70では、硬化したライニング管LPの両端それぞれの突出した部分を、ライニング管LPの端部の位置が既設管EPLの端部の位置に一致するように切断する。この結果、埋設され内圧管として使用されていた既設管EPLの内周面を裏打ちし、管端が既設管EPLと概略一致したライニング管LPが完成する。ステップS40~ステップS70は、ライニング管形成工程の一例に相当する。
【0056】
続いて、管端部材の設置工程(ステップS80)を実行する。
【0057】
図3(b)は、同図(a)に示す管端部材の設置工程(ステップS80)を詳細に示したフローチャートである。また、
図5は、本実施形態の管端部材を設置する様子を示す断面図である。この
図5でも、
図1と同じく、図の左側が管端側になり、図の右側が奥側になる。
【0058】
管端部材10は、パッキン部材11と拡径バンド12とを有する。設置工程では、まずパッキン部材11を設置する(ステップS81)。
【0059】
図5(a)には、ステップS70によって端部が切断されたライニング管LPと、既設管EPLそれぞれの断面の上側部分のみが示されている。既設管EPLの管壁の厚みは、既設管の径に応じて変わってくるが、例えば、5mm以上10mm以下である。ライニング管LPの管壁の厚みも、既設管の径に応じて変わってくるが、例えば、10mm以上20mm以下である。
【0060】
また、
図5(a)では、ライニング管LP(内側管に相当)と既設管EPL(外側管に相当)からなる二重管WPの下に、本実施形態のパッキン部材11の断面の上側部分のみが示されている。この二重管WPは、二重構造の管の一例に相当する。パッキン部材11の厚みは5mm程度であるが、
図5では、各部材の厚みの相対的な関係を無視して示している。
図5(a)に示すパッキン部材11は、ゴム製であって、伸長性と可撓性を有する。パッキン部材11は、円筒部110とフランジ部111を有する。円筒部110とフランジ部111とは一体成形されている。
【0061】
図5(b1)には、外側管厚み面である既設管厚み面EPL2と内側管厚み面であるライニング管厚み面LP2からライニング管LPの内周面LPiにおける端部全周にかけてパッキン部材11が接着剤によって貼り付けられた様子が示されている。なお、既設管厚み面EPL2とは、既設管EPLの管端EPL1における、内周面EPLiと外周面EPLoの間の面である。また、ライニング管厚み面LP2とは、ライニング管LPの管端LP1における、内周面LPiと外周面LPoの間の面である。パッキン部材11におけるフランジ部111は、中空円盤状をしており、既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2の両方に跨って延在し、既設管EPLの管端EPL1とライニング管LPの管端LP1との間を覆っている。このフランジ部111は、既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2に貼り付けられている。既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2に貼り付けられていることで、既設管EPLの管端EPL1とライニング管LPの管端LP1との僅かな隙間に水が浸入することを防止する効果が高まる。また、フランジ部111は、奥側に移動する力がパッキン部材11に加わったときには既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2に係止する係止部として作用する。フランジ部111が係止部として作用する際、既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2にフランジ部111が貼り付けられていることで係止力を高めることができる。ただし、フランジ部111は、既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2に貼り付られていなくてもよい。なお、フランジ部111は、円筒部110と同じゴム製であるが、フランジ部111を円筒部110よりも伸長性が劣るもの(例えば、剛体が内包されたもの)にすることで係止力をより高めることができる。
【0062】
円筒部110は、フランジ部111に連続して形成され、ライニング管LPの内周面LPiにおける端部全周を覆っている。この円筒部110は、
図5(b1)に示すように、ライニング管LPの内周面LPiにおける端部全周にかけて貼り付けられている。なお、パッキン部材11を貼り付ける際には、パッキン部材11に接着剤を塗布して貼り付けてもよく、既設管厚み面EPL2、ライニング管厚み面LP2およびライニング管LPの内周面LPiに接着剤を塗布してパッキン部材11を貼り付けてもよい。また、それら両方に接着剤を塗布してパッキン部材11を、既設管厚み面EPL2、ライニング管厚み面LP2およびライニング管LPの内周面LPiに貼り付けてもよい。
【0063】
図5(b1)に示すフランジ部111は、ライニング管LPの内周面LPiにおける端縁で外側に向けて折れ曲がり、ライニング管厚み面LP2と既設管厚み面EPL2の合計厚さ分だけ延在したものである。したがって、フランジ部111の折れ曲がった先端1111は、既設管EPLの外周面EPLoに一致している。フランジ部111は、ライニング管厚み面LP2よりも外側に延在していればよいが、ライニング管厚み面LP2と既設管厚み面EPL2の合計厚さ分以上に延在することで、既設管EPLの管端EPL1とライニング管LPの管端LP1との間に水が浸入することを防止する効果を高めることができる。なお、外側とは、既設管EPLの中心軸側を内側とした場合の径方向外側のことをいう。
【0064】
図5(b1)を用いた説明では、ステップS70において、ライニング管LPの端部の位置と既設管EPLの端部の位置が一致するようにライニング管LP端部の突出した部分を切断できた場合のパッキン部材設置工程を説明した。しかしながら、実際にはライニング管LP端部の突出した部分を切断したときにライニング管LPの管端LP1の位置と既設管EPLの管端LP1の位置が多少ずれてしまうことがある。ただし、ずれた場合でも、既設管EPLの端部に対するライニング管LP端部の突出量は数mm程度である。
【0065】
ライニング管LPの端部の位置と既設管EPLの端部の位置にずれた部分がある場合の、そのずれた部分の処理方法を
図5(b2)を用いて説明する。ずれた部分がある場合、パッキン部材11を貼り付ける前または貼り付けた後にそのずれた部分にコーキング材CAを充填する。このコーキング材CAは、止水材の一例に相当する。なお、コーキング材CAに代えて、止水効果のある接着剤を用いてもよい。その場合、その接着剤が、止水材の一例に相当する。このコーキング材CAを充填した場合も、パッキン部材11におけるフランジ部111は、既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2の両方に跨って延在している。すなわち、フランジ部111が既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2の両方に跨って延在するとは、フランジ部111と既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2の間にコーキング材や接着剤などの少量の介在物が存在する場合も含む概念である。
【0066】
図3に示す管端部材の設置工程(ステップS80)では、パッキン部材11が既設管EPLおよびライニング管LPの端部に設置されると、拡径バンド12の嵌め込みが行われる(ステップS82)。
【0067】
本実施形態の拡径バンド12も、
図1を用いて説明した拡径バンド932と同じく、ステンレス製のC字状のものである。この拡径バンド12は、押圧部材の一例に相当する。
図5(c)では、パッキン部材11の円筒部110に拡径バンド12が内側から嵌め込まれている。拡径バンド12を内側から嵌め込むにあたっては、C字状の拡径バンド12を不図示の拡径工具で押し拡げた状態で、C字状の隙間にその隙間を塞ぐ固定プレート(不図示)を挿入する。固定プレートを挿入することで、拡径バンド12は、拡径工具を取り外しても押し拡げられた状態を維持しパッキン部材11の円筒部110を外側に向けて押圧する。C字状の隙間を塞ぐ固定プレートは、管端側から奥側に向けてハンマーで叩きながら挿入する。拡径バンド12は、不図示の拡径工具で押し拡げられた状態であるが、固定プレートの挿入によってさらに押し拡げられる。固定プレートをハンマーで叩く衝撃が加わっても、本実施形態のパッキン部材11は、フランジ部111が既設管厚み面EPL2およびライニング管厚み面LP2に係止されているため、パッキン部材11全体が奥側にずれてしまうことが防止されている。なお、円筒部110に複数の拡径バンド12を嵌め込んでもよい。こうして、パッキン部材11の円筒部110はライニング管LPの内周面LPiにおける端部全周に押し付けられる。そして、管端部材10は、既設管EPLおよびライニング管LPの端部に配置される。
【0068】
図5(c)は、拡径バンド12を嵌め込み、管端部材10の設置工程が終了した様子を示す図である。
図5(c)に示すパッキン部材11は、フランジ部111が既設管厚み面EPL2およびライニング管厚み面LP2に係止されており、既設管厚み面EPL2およびライニング管厚み面LP2並びにそれらの間の僅かな隙間もフランジ部111によって覆われている。ただし、フランジ部111の外径を少し小さくしてライニング管厚み面LP2、上述の僅かな隙間および既設管厚み面EPL2の内側部分は覆うが、既設管厚み面EPL2の外側部分は露出するように構成していてもよい。また、ライニング管LPの内周面LPiにおける端部は全周が円筒部110によって覆われ、露出している部分はない。
【0069】
なお、円筒部110は軸心方向(延在方向)全長で径が等しい円筒度の高い円筒形状をしたものであってもよく、奥側に向かうほどほんの少しだけ径が小さくなっていく円錐台形状をしたものであってもよい。後者の円筒部110の方が、パッキン部材11をライニング管LPの内側に容易に挿入することができる。なお、円筒部110は、径が等しい部分と径が漸次小さくなる部分が組み合わさって全体として見れば管端側(手前側)よりも奥側の方が径が小さくなったものであってもよい。
【0070】
図2では、切り出された既設管EPLの内周面側に点線で示すようにライニング管LPが設置されている。ライニング管LPと既設管EPLからなる二重管WPの両端部それぞれには、
図3(b)を用いて説明した管端部材の設置工程によって、管端部材10が設置されているが、この
図2では図示省略されている。
【0071】
図3(a)に示す管構造物構築方法では、管端部材10が設置された二重管WPと新設管NPの接続工程(ステップS90)が実施される。
【0072】
このステップS90では、管端部材10が設置された二重管WPの両端それぞれに継手部材20(
図6(c)参照)を設置する。また、
図2に示す発進側の縦穴VH1を掘削することで掘り起こされた、上流側新設管NP1の下流端部にも継手部材を設置する。さらに、到達側の縦穴VH2を掘削することで掘り起こされた、下流側新設管NP2の上流端部にも継手部材を設置する。続いて、二重管WPの発進側の継手部材と、上流側新設管NP1の下流端部に設置された継手部材との間に、鋳鉄製の上流側接続管CP1(
図2参照)を設置する。また、二重管WPの到達側の継手部材と、下流側新設管NP2の上流端部に設置された継手部材との間に、鋳鉄製の下流側接続管CP2(
図2参照)も設置する。二重管WPと新設管NPの接続工程(ステップS90)が完了すると、
図2に示す、上流側新設管NP1、上流側接続管CP1、二重管WP、下流側接続管CP2および下流側新設管NP2がつながった管構造物PSが構築される。管構造物PSが構築されると、発進側の縦穴VH1も到達側の縦穴VH2も埋められ、狭い道路R2には舗装が施される。
【0073】
図6は、二重管の外周面に継手部材を設置する様子を示す断面図である。この
図6でも、左側が管端側になり、右側が奥側になる。
【0074】
図6(a)に示すように、既設管EPLの外周面EPLoには、外側に向けて突出した外周リブEPL3が周方向に延在している。
【0075】
継手部材20の設置工程では、
図6(b)に示すように、まず既設管EPLの外周面EPLoに設けられた外周リブEPL3の奥側に、半割れ固定フランジFR1を取り付ける。半割れ固定フランジFR1は、既設管EPLの外周面EPLoを外側から挟み込むように1/2円弧に分割されたフランジである。さらに、既設管EPLの外周面EPLoにおける管端EPL1側には、ルーズフランジFR2を外嵌めする。そして、ルーズフランジFR2および半割れ固定フランジFR1それぞれに形成された貫通孔にネジ棒26を通す。ネジ棒26を通す前に、ルーズフランジFR2および半割れ固定フランジFR1の間にナット272を取り付けておく。ネジ棒26は、周方向に間隔をあけて各フランジの全周にわたって複数配置されている。また、上述した貫通孔にネジ棒26を通した後、半割れ固定フランジFR1の奥側にナット273を取り付ける。さらに、既設管EPLの外周面EPLoにおける、ルーズフランジFR2の管端側に2つのOリング25を外嵌めする。なお、フランジ部111に既設管EPLの外周面EPLoよりも外側に突出した部分があり、その突出した部分がルーズフランジFR2、Oリング25または後述する継手部材20の外嵌めを阻害するようであれば、適宜その部分を除去してもよい。
【0076】
その後、継手部材20を取り付ける。
図6(c)には、既設管EPLの外周面EPLoに継手部材20が取り付けられた状態が示されている。
【0077】
継手部材20の取り付けは、まず2つのOリング25を挟んでルーズフランジFR2に継手部材20が対向するように、継手部材20を既設管EPLの外周面EPLoに外嵌めする。継手部材20は、筒状をした鋳鉄製のものであり、一端には第1フランジ21が設けられ、他端には第2フランジ22が設けられている。また、継手部材20は、その内周面20iから内側に向かって環状に突出した環状突部24を有している。さらに、継手部材20の内周面20iであって環状突部24よりも管端側には、
図2に示した上流側接続管CP1や下流側接続管CP2といった接続管の先端を受け止める段部23が周方向に形成されている。この接続管は、別管の一例に相当する。継手部材20は、既設管EPLの端部と接続管の端部を連結するためのものである。
【0078】
継手部材20を外周面EPLoに外嵌めしたら、ルーズフランジFR2および半割れ固定フランジFR1を貫通しているネジ棒26を第1フランジ21に形成された貫通孔にも貫通させる。そして、第1フランジ21の管端側にナット271を取り付ける。そして、ナット271を締め込むことで継手部材20が奥側に押されて二重管WPに継手部材20が設置される。ここで、ナット271を締め込んでいくと、環状突部24によりパッキン部材11のフランジ部111が既設管厚み面EPL2およびライニング管厚み面LP2に押し付けられて圧縮される。また、第1フランジ21により2つのOリング25はルーズフランジFR2に押し付けられて圧縮される。これらが圧縮されたら、継手部材20のが設置が完了する。なお、フランジ部111が先に押し付けられ始めてOリング25を押し付けることができない場合は、ナット272を回してルーズフランジFR2を管端側に移動させてOリング25を圧縮すればよい。逆にOリング25が先に押し付けられ始めてフランジ部111を押し付けることができない場合は、ナット272を回してルーズフランジFR2を奥側に移動させてから再度ナット271を締め込んでいけばよい。
【0079】
継手部材20の内周面20iに形成された段部23には、接続管の先端が突き当たる。そして、継手部材20の第2フランジ22と接続管の外周面に設けられたフランジを連結することで、継手部材20に接続管が接続される。
【0080】
以上説明した管端部材10および管構造物PSによれば、ライニング管LPの管端LP1側部分を削り取ったり剥ぎ取ったりすることなく管端部材10を設置できるので、管端部材10の設置が容易で施工性がよい。そして、既設管EPLの管端EPL1とライニング管LPの管端LP1の間の僅かな隙間はフランジ部111によって塞げるので、その隙間にライニング管L内を流れる圧力流体が侵入することを防止できる。また、パッキン部材11の円筒部110はライニング管LPに押し付けるだけでよく既設管EPLに押し付ける必要がないため、拡径バンド12は1~2本等の少数で足りる。これにより、管端部材10の部品コストと拡径バンド12の設置工数が削減できる。また、円筒部110をライニング管LPの内周面LPiに差し込むことで、フランジ部111が既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2の両方に跨って延在するように配置できるので、管端部材10を所定位置に容易に設置できる。その上、ライニング管LPの内周面LPiにおける端部全周が円筒部110によって覆われるので、フランジ部111とライニング管厚み面LP2の間に圧力流体が入り込みにくく、管端部材10によるシール性が高まる。また、円筒部110に拡径バンド12を嵌め込むことで、ライニング管LPの内周面LPiと円筒部110の間からライニング管厚み面LP2側に圧力流体がより入り込みにくくなり、管端部材10によるシール性が高まる。またさらに、拡径バンド12によってパッキン部材11を強固に二重管WPに固定できる。加えて、継手部材20の環状突部24によって、パッキン部材11のフランジ部111が既設管厚み面EPL2およびライニング管厚み面LP2に押し付けられているので、管構造物PSにおける管端部材10によるシール性が高まる。
【0081】
また、上述したように、
図1に記載した従来の管端部材93では、拡径バンド932を嵌め込んでいくと、パッキン部材931は奥側にずれてしまう。外側管91が鋳鉄製等の鉄製である場合には、内周面91iの露出した端部に生じた錆が圧力流体に混入し、圧力流体を使用する側で不具合が生じる場合がある。また、外側管91が、鉄製でなくても、老朽化したり損傷している場合には、露出した部分の管壁の一部が剥がれ落ちて圧力流体に混入し、これもまた圧力流体を使用する側で不具合が生じる場合がある。これに対し、本実施形態の管端部材10および管構造物PSによれば、円筒部110を奥側にずらそうとうする力が加えられても、フランジ部111が既設管厚み面EPL2とライニング管厚み面LP2)に引っ掛かるので奥側にずれることはなく、既設管EPLの内周面EPLiの端部が露出することがなくなる。また、上述したように拡径バンド12の数が少なくてすむので、管端部材93設置時に円筒部110を奥側にずらそうとする力も小さくなり、管端部材93はよりずれにくい。さらに、万一管端部材93が奥側にずれてしまったとしても、既設管EPLの内周面EPLiは、端部までライニング管LPに覆われているので既設管EPLに由来する錆やごみが圧力流体に混入してしまう虞はない。
【0082】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素にはこれまで用いた符号と同じ符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0083】
図7(a)は、管端部材および管構造物の第1変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図である。なお、
図7と後に説明する
図8では、管構造物PSは、その一部のみが図示されている。
【0084】
図7(a)に示すように、この第1変形例の管端部材10および管構造物PSは、円筒部110が設けられていない点が
図2~6に示した先の実施形態と異なる。すなわち、この第1変形例のパッキン部材11は、フランジ部111のみで構成されている。
【0085】
この第1変形例でも、先の実施形態における管端部材10および管構造物PSと同様の効果を奏する。また、パッキン部材11を安価に構成できる。さらに、拡径バンド12を用いていないので、管端部材10の部品コストと拡径バンド12の設置工数が削減できる。ただし、管構造物PSにおける管端部材10によるシール性や耐久性は先の実施形態の方が高い。
【0086】
図7(b)は、管構造物の第2変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図である。
【0087】
図7(b)に示すように、この第2変形例の管構造物PSは、ルーズフランジFR2およびOリング25が省略されている点が、先の実施形態と異なる。
【0088】
この第2変形例でも、先の実施形態における管端部材10および管構造物PSと同様の効果を奏する。また、ルーズフランジFR2およびOリング25を省略しているので、これらの部品コストと設置工数が削減できる。ただし、圧力水に対するシール性はOリング25を備えた先の実施形態の方が高い。なお、継手部材20の内周面20iに環状凹部を形成し、その環状凹部にOリングを嵌め込んで二重管WPに継手部材20を取り付けることでシール性を高めてもよい。
【0089】
図8(a)は、管構造物の第3変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図である。
【0090】
図8(a)に示すように、この第3変形例の管構造物PSは、環状突部24の突出長が短い点が、先の実施形態と異なる。第3変形例の環状突部24は、既設管EPLの厚みと同程度または既設管EPLの厚みよりも若干短い突出長をしている。このため、フランジ部111は、環状突部24によって既設管厚み面EPL2(
図5(a)参照)に押し付けられており、ライニング管厚み面LP2(
図5(a)参照)には押し付けられていない。
【0091】
この第3変形例でも、先の実施形態における管端部材10および管構造物PSと同様の効果を奏する。
【0092】
図8(b)は、管構造物の第4変形例を示す、
図6(c)と同様の断面図である。
【0093】
図8(b)に示すように、この第4変形例の管構造物PSは、環状突部24が断面L字状に形成されている点が、先の実施形態と異なる。第4変形例の環状突部24の突出端には、奥側に向かって突出し、ライニング管LPの厚みと同程度またはライニング管LPの厚みよりも若干短い薄い厚みをした張出部241が形成されている。この張出部241は、ライニング管厚み面LP2(
図5(a)参照)に対向する位置に設けられている。このため、フランジ部111は、環状突部24の張出部241によってライニング管厚み面LP2に押し付けられており、既設管厚み面EPL2(
図5(a)参照)には押し付けられていない。
【0094】
この第4変形例でも、先の実施形態における管端部材10および管構造物PSと同様の効果を奏する。
【0095】
本発明は、これまでに説明した実施の形態や変形例に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、管端部材10は、外側管が既設管、内側管がライニング管に限った構成の二重管に使用する以外にも、新品の外側管と、裏打ちされたものに限らない新品の内側管といった構成の二重管にも使用可能である。一例としては、外側管が剛性を確保するための管であり、内側管が圧力流体に侵食されない材質の管で構成された二重管の、外側管と内側管の間に僅かに発生する隙間をシールするための管端部材であってもよい。また、接着剤などによってフランジ部111とライニング管厚み面LP2または既設管厚み面EPL2との十分な接着強度が得られる場合には、環状突部24を省略してもよい。加えて、接着剤などによって円筒部110とライニング管LPの内周面LPiとの十分な接着強度が得られる場合には、拡径バンド12を省略してもよい。
【0096】
また、以上説明した実施の形態の記載や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、実施の形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
10 管端部材
11 パッキン部材
110 円筒部
111 フランジ部
12 拡径バンド
20 継手部材
24 環状突部
EPL 既設管(外側管)
EPLi 内周面
EPLo 外周面
EPL2 既設管厚み面
LP ライニング管(内側管)
LPi 内周面
LPo 外周面
LP2 ライニング管厚み面
WP 二重管
PS 管構造物