(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057506
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】長寿強靭化木材
(51)【国際特許分類】
B27K 3/18 20060101AFI20230414BHJP
B27K 3/02 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B27K3/18
B27K3/02 B
B27K3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021180625
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】521002224
【氏名又は名称】ウッドセル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512118510
【氏名又は名称】バイオ乾燥機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595161773
【氏名又は名称】伊藤 隼夫
(71)【出願人】
【識別番号】521481913
【氏名又は名称】JFイノベーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521481935
【氏名又は名称】福園 順子
(71)【出願人】
【識別番号】521481946
【氏名又は名称】丸山 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隼夫
(72)【発明者】
【氏名】福薗 順子
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA02
2B230AA03
2B230AA05
2B230AA07
2B230AA16
2B230BA01
2B230BA17
2B230CA02
2B230DA02
2B230EB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】木材の処理に、細胞を破壊する減圧、加圧工法をやめ、人に有害である化学薬品の採用もやめ、細胞を破壊しない工法により木の長寿命化と強靭化に向かうこと。
【解決手段】減圧、加圧の装置を使用しないで、細胞を破壊しないドブ漬け工法により、ドブ漬けプールの中に塩化カルシウム水溶液と木材を入れて、すべての細胞の中に薬液を注入する。塩化カルシウム水溶液の製造方法は、一般の建築(角材、平角材、板材、柱)の場合は、水100重量部、塩化カルシウム40重量部とする混合液とする。
【効果】塩化カルシウムをドブ漬け注入工法で木材に注入することで、防腐、防虫、防割、防曲、不燃の5つの機能を持つ木材を発明した。本発明により、200年以上の長寿命化と強靭化の新しい木材を作る新技術が完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化カルシウム(水溶液)を木材に注入することで、木の欠点である、腐れやすい、虫に食われやすい、割れやすい、曲がりやすい、燃えやすいを改め、防腐、防虫、防割、防曲、不燃の5つの新しい機能を持たせる木材。
【請求項2】
請求項1の塩化カルシウムの代わりに、吸湿性、潮解性、浸潤性の他の種の水溶性薬液を注入させる木材。
【請求項3】
請求項1,2に関して、減圧、加圧の装置を使用しないで、細胞を破壊しないドブ漬け工法により、ドブ漬けプールの中に塩化カルシウム水溶液と木材を入れて、すべての細胞の中に薬液を注入する木材。
【請求項4】
請求項1,2の塩化カルシウム水溶液の製造方法は、家具、木工品、木製装飾品などに対しては、水100重量部、塩化カルシウム30重量部の混合液とする。
【請求項5】
請求項1,2の塩化カルシウム水溶液の製造方法は、一般の建築(角材、平角材、板材、柱)の場合は、水100重量部、塩化カルシウム40重量部とする混合液とする。
【請求項6】
請求項1,2の塩化カルシウム水溶液の製造方法は、土木用(大径の丸太、大型角材、大型平角材)、火災予防用、社寺建築、鳥居などの伝統工法用、材の径が30センチ以上の場合は、水100重量部、塩化カルシウム50重量部とする混合薬液とする。
【請求項7】
請求項1,2の塩化カルシウム水溶液の製造方法は、土木用で、地震、津波、土砂災害、川の氾濫などの防止に使用する場合(材の径が40センチ以上)では、水100重量部、塩化カルシウム60重量部とする。
【請求項8】
ドブ漬け処理温度は、伐採前の生きた丸太の温度よりも少し高い35℃~38℃とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
木が持つ弱さには、カビ(真菌)が繁殖しやすい、虫(昆虫)に食われやすい、割れやすい、曲がりやすい、燃えやすい、の5つの特徴がある。
カビが繁殖しやすい、虫に食われやすい、には薬液を塗布か噴霧で処理する方法があるが、薬液が木の内部にまで注入されないので長期間における効果はない。また、加圧、減圧注入装置により防腐、防虫加工が施行される工法もあるが、加圧、減圧により細胞を著しく破壊させているため、破壊細胞の隙間から薬液が徐々に放出されてくるため、防腐、防虫の長期間の効果は薄い。
【0002】
割れやすい、曲がりやすいは、乾燥の出来具合、木の種類、木がもつ特性などによることが多い。よって、割れたものは仕方がない、曲がるものも木の特性だから仕方がない、と放置されることが通常の対応である。一度割れたり曲がったりした木材を元に戻すことは、ほぼ不可能である。
【0003】
燃えやすい、に対処するには、減圧加圧窯で薬液を注入するのが一般的である。しかし、減圧加圧装置が必要であり、装置は高額であるため不燃処理の普及は広がらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩化カルシウム水溶液を木に注入するだけで、木の5つの弱点である、腐りやすい、虫に食われやすい、曲がりやすい、割れやすい、燃えやすい、を、一つの木に対して、防腐、防虫、防曲、防割、不燃の5機能を持つ木にする新技術が課題である。
【0005】
薬液の注入に対して、従来の減圧、加圧などの細胞破壊工法を採用しないで、木の細胞全般に塩化カルシウムを注入させるドブ漬け注入技術を採用することが課題である。
【0006】
注入薬剤は塩化カルシウムだけとして、製品の使用目的に従って、水と塩化カルシウムの配合を調整するだけで、新技術の5機能を達成させることが課題である。
【0007】
ドブ漬け注入工法で、ドブ漬けプール内の温度を35℃~38℃に設定することで、細胞を破壊しないで、すべての細胞内に注入するのを可能とするのが課題である。
【0008】
ドブ漬け注入工法で、注入が容易と言われる柔らかい針葉樹にも、注入が困難と言われる硬い広葉樹にも、薄い木にも、分厚い木にも、小径木にも、大径木にも、角材にも、平角材にも、早生樹にも、手入れが良い植林木にも、木材市場には出ない間伐材や雑木にも、すべての細胞内に注入するのを可能とするのが課題である。
【0009】
種類にも用途にも問わず、材質を問わず、硬さを問わず、大きさを問わず、全ての木材に対して防腐、防虫、防曲、防割、不燃の機能を持たせる新技術が課題である。
【0010】
地球温暖化に伴う気候変動、豪雨災害、洪水や氾濫、津波、地震、土砂崩れなどに、本発明の技術が役立ち、人命を失わなくすることが課題である。
【0011】
塩化カルシウムは、カビ(真菌)と虫(昆虫)の駆除に対して、防菌、防虫の効果はないと言われているのが一般であるが、本発明では、化学薬品を使用しないで、減圧、加圧の物理的破壊工法を用いないで、生物学、細胞学の応用だけで極めて強い効果を立証することが課題である。
【課題を解決しようとする手段】
【0012】
薬液の注入には、細胞を破壊するいかなる機械や装置を使用しない。特に、減圧、加圧装置、及び高温処理を必要とする装置は、細胞を破壊させてしまい、長期的には機能を失うことになる。本発明では、細胞を一切破壊しないドブ漬けプールを使用するものとする。
【0013】
プール内の薬液の温度を35℃~38℃に調整する。木の伐採前の生の温度は35℃以下であることから、薬液の温度が木の温度よりも若干高い温度であれば、物理の法則により薬液は細胞の隅々にゆっくり移動ができるようになる。ただし、38℃を超えると、伐採後の木であっても、木の細胞は、破壊に繋がるので、38℃をドブ漬け設定温度の限界とする。
【0014】
発明者は、全ての木に対して、いかなるカビ(真菌)も、シロアリも含むいかなる虫(昆虫)も、木の中に発生したら、1日もしないうちに死んでしまう新技術、製品に加工された木は200年過ぎても割れない、曲がらない、自然災害であろうが放火であろうが決して燃えない、というこれらの新技術に対して、塩化カルシウムを注入することだけで、しかも、化学薬品を一切使用しないで、加圧、減圧工法による細胞破壊も起こさないで、200年以上の長寿化と、強靭化となり得る木材を完成した。
【0015】
建物の長寿化と強靭化を図るために、本発明の技術を考え出した。しかし、高価な技術であっては、普及に限界がある。
建物建造には、新築と改築がある。これらの双方の建造に対して、出来るだけコンクリートや金属を使用しないで、5つの機能(防腐、防虫、防割、防曲、不燃)を持った木材を使用して、土台に、構造材に、壁材に、床材に、家具に使用することで、安価な予算で新築も改築も可能とする新技術を完成した。
【0016】
有機物質に対して、物理工法を取り入れない代わりに、生物学と細胞学の工法を取り入れることとした。
【0017】
木の防腐、防虫処理には、JAS規格に従って、木材の細胞を、加圧減圧装置を使って破壊する物理の破壊工法を用いているのが従来の技術である。よって、破壊された細胞から薬液が数十年の間に徐々に放出するため、長期の防腐、防虫効果は得られない。
【0018】
木材用の防腐、防虫処理に使用されている薬液は、JAS規格の化学薬品であるが、JAS規格とは言え、人に有害な薬品であることから長寿化の強靭化木材には採用しない。
【0019】
木材の細胞は、プラスチックやコンクリートなどと異なり、有機材料であるから、真菌(カビ)や昆虫(害虫も含む)にとっては絶好な餌であり棲み処となり得る。これらの真菌や昆虫が木の中に棲み始めたら、当然、木の寿命は顕著に縮む。だから、真菌や昆虫が木の中に棲み始める前に、これらを殺滅する技術が木の中に発揮される必要がある。
【発明の効果】
【0020】
塩化カルシウム(水溶液)を木材に注入することで、木の欠点である、腐れやすい、虫に食われやすい、割れやすい、曲がりやすい、燃えやすいに対して、防腐、防虫、防割、防曲、難燃の5つの機能を1度に持たせることが出来た。
【0021】
細胞を破壊する減圧、加圧、真空の装置を使用しないで、細胞を破壊しないドブ漬け工法を採用し、ドブ漬けプールの中に薬液と木材を入れることだけで、すべての細胞の中に薬液を注入することが出来た。
【0022】
塩化カルシウム水溶液の製造方法は、一般の製品の場合は、水100重量部、塩化カルシウム30重量部とする混合液とすることで、目的は達成した。
【0023】
塩化カルシウム水溶液の製造方法は、一般の建築用の場合は、水100重量部、塩化カルシウム40重量部とする混合液とすることで目的は達成した。
【0024】
塩化カルシウム水溶液の製造方法は、一般の土木用の場合は、通常の丸太(径が25センチ前後)の場合では、水100重量部、塩化カルシウム50重量部とする混合液とすることで目的は達成した。
【0025】
塩化カルシウム水溶液の製造方法は、土木用で土砂災害防止等か、川の氾濫予防等の氾濫防止用に使用する場合(径が30センチ以上)では、水100重部、塩化カルシウム60重量部とする混合薬液とすることで、目的は達成した。
【0026】
ドブ漬け処理の温度は、人の体温と同等の35℃前後とすることで、目的は達成した。
【0027】
発明者は、木の処理に対して、物理工法を否定して、生物学、細胞学の工法のみを採用することで、すべてを解決し、発明の効果を得ることが出来た。
【0028】
カビ(真菌)やシロアリを含む虫(昆虫)により木が災害を受けた場合は防カビ剤や防虫剤を木に塗布したり、被害が大きい場合には減圧、加圧注入法によっての駆除法が一般である。
発明者は、細胞破壊による減圧、加圧注入法の薬液注入をやらずに、生物学や細胞学を用いた、人に無害な技術を発明し、成功した。
【0029】
発明者は、木に侵入するカビ(真菌)や白蟻を含んだ虫(昆虫)を駆除する方法として、生物学、細胞学を用いた。
まず、木材の細胞全体に塩化カルシウムをドブ漬け法により注入する。この処理木材にカビ(真菌)が侵入して木に張り付く。カビの体内の水は直ちに塩化カルシウムにより吸われてしまい、2~3時間でカビの全てが死滅する。同じように、虫(昆虫)も、早い場合は2~3時間で、遅くても12時間以内で、これらの虫の細胞内にある水が塩化カルシウムにより吸い出される。木の中の全ての虫は死滅する。