(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057517
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】レーザ半導体素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
H01L23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033002
(22)【出願日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202111181037.5
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520166796
【氏名又は名称】鴻富泰精密電子(煙台)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江 ▲協▼志
(72)【発明者】
【氏名】阮 智▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】邱 崇哲
(72)【発明者】
【氏名】曾 ▲シャク▼▲鋒▼
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な封止性を有し、その長寿命化に有利であるレーザ半導体素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1と、レーザ結晶2と、導電部材3と、基板1に設けられ、且つ、基板1と共に収容キャビティを形成する第1本体5と、第2本体6と、を備えるレーザ半導体素子100であって、レーザ結晶2は、収容キャビティ内に収容され、導電部材3は、第1本体5に取り付けられ、且つ、レーザ結晶2と電気的に接続される。第2本体6は、収容キャビティを覆うように第1本体5に設けられた取付け枠61と、取付け枠61に設けられたレンズ62と、を含む。第1本体5、導電部材3及び取付け枠61は、いずれも鉄・ニッケル・コバルト合金である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、レーザ結晶と、導電部材と、第1本体と、第2本体とを備えるレーザ半導体素子であって、
前記第1本体は、前記基板に設けられ、且つ前記基板と共同で収容キャビティを形成し、
前記レーザ結晶は、前記収容キャビティ内に収容され、
前記導電部材は、前記第1本体に取り付けられ、且つ前記レーザ結晶と電気的に接続され、
前記第2本体は、前記収容キャビティを覆うように前記第1本体に設けられた取付け枠と、前記取付け枠に設けられたレンズとを含み、
前記第1本体、前記導電部材及び前記取付け枠は、いずれも鉄・ニッケル・コバルト合金であることを特徴とするレーザ半導体素子。
【請求項2】
前記導電部材と前記第1本体との間は第1封止材によって接続及びシールされ、前記レンズと前記取付け枠との間は、第2封止材によって接続及びシールされていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ半導体素子。
【請求項3】
前記第1封止材及び前記第2封止材は、いずれも封止樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ半導体素子。
【請求項4】
前記取付け枠は、前記第1本体にレーザ溶接により固定され、
前記取付け枠には、前記レンズが収容される凹溝が凹設されており、
前記凹溝の溝底には、透かし部が設けられており、
前記透かし部が前記取付け枠を貫いて設けられるため、前記レーザ結晶の励起光が前記透かし部を透過して前記レンズに照射されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ半導体素子。
【請求項5】
前記第1本体、前記導電部材及び前記取付け枠は、いずれも粉末冶金の方法により製造されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ半導体素子。
【請求項6】
前記導電部材は、対になって設けられ、且つそれぞれ前記第1本体の両側に位置し、
前記基板における前記レーザ結晶が1つである場合、前記レーザ結晶は一対の前記導電部材に対応し、前記レーザ結晶は前記第1本体の両側の前記導電部材と電気的に接続され、
前記レーザ結晶が複数である場合、前記レーザ結晶は、前記基板において結晶アレイを構成し、各列の前記レーザ結晶は、一対の前記導電部材に対応し、
同一列且つ隣接する2つの前記レーザ結晶同士の間が電気的に接続され、前記導電部材に隣接する前記レーザ結晶は、その隣の前記導電部材と電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ半導体素子。
【請求項7】
前記第2本体の上面に被覆されるパッケージ層をさらに備え、
前記パッケージ層には集光部が設けられており、前記集光部は、前記取付け枠から離間して設けられ、
前記集光部は、前記基板における前記レーザ結晶と同数存在しており、且つそれに対応する前記レーザ結晶によって生成される励起光の光路に設置されることを特徴とする請求項6に記載のレーザ半導体素子。
【請求項8】
レーザ半導体素子の製造方法であって、
基板の表面に、当該基板と共同で収容キャビティを画成し、且つ鉄・ニッケル・コバルト合金材からなる第1本体を取り付ける工程と、
鉄・ニッケル・コバルト合金材からなる導電部材を前記第1本体に装着する工程と、
前記収容キャビティ内にレーザ結晶を収容し、且つ前記レーザ結晶と前記導電部材とを電気的に接続する工程と、
鉄・ニッケル・コバルト合金材からなる取付け枠にレンズを取付けて第2本体を得る工程と、
前記収容キャビティを覆うように前記第1本体に前記第2本体を取り付けて、さらに前記レーザ半導体素子を得る工程と、
を含むことを特徴とするレーザ半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記取付け枠に凹溝を形成し、且つ前記凹溝内に透かし部を形成する工程と、
前記凹溝に前記レンズを前記透かし部から露出させつつ収容する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のレーザ半導体素子の製造方法。
【請求項10】
集光部が形成されたパッケージ層を提供する工程と、
前記取付け枠と前記パッケージ層との間に前記レンズが位置するように、前記パッケージ層を前記第2本体に被覆させて、前記集光部を前記取付け枠から離間させている工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のレーザ半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、レーザ半導体技術分野に関し、特にレーザ半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ半導体産業においては、銅、アルミニウム等の金属元素を含む合金材料をプレス方式によりダイシングし、その後、ダイシングして得られた合金材料をホットフィラメント溶融技術によって半導体基板に固定して、レーザ半導体素子のパッケージを完成させることがしばしば行われている。しかしながら、従来技術で製造されたレーザ半導体素子では、封止性がまだ不十分であり、レーザ半導体素子の寿命に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の主要な目的は、従来技術におけるレーザ半導体素子の気密性が悪いことに起因して寿命が短くなってしまうという問題を解決するためのレーザ半導体素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
レーザ半導体素子であって、基板と、レーザ結晶と、導電部材と、第1本体と、第2本体とを備え、
前記第1本体は、前記基板に設けられ、且つ前記基板と共同で収容キャビティを形成し、
前記レーザ結晶は、前記収容キャビティ内に収容され、
前記導電部材は、前記第1本体に取り付けられ、且つ前記レーザ結晶と電気的に接続され、
前記第2本体は、前記収容キャビティを覆うように前記第1本体に設けられた取付け枠と、前記取付け枠に設けられたレンズと、を含み、前記第1本体、前記導電部材及び前記取付け枠は、いずれも鉄・ニッケル・コバルト合金である。
【0005】
好ましくは、前記導電部材と前記第1本体との間は、第1封止材によって接続及びシールされ、前記レンズと前記取付け枠との間は、第2封止材によって接続及びシールされている。
【0006】
さらに、前記第1封止材及び前記第2封止材は、いずれも封止樹脂である。
【0007】
好ましくは、前記取付け枠は、前記第1本体にレーザ溶接により固定され、
前記取付け枠には、前記レンズが収容される凹溝が凹設されており、
前記凹溝の溝底には、透かし部が設けられており、
前記透かし部が前記取付け枠を貫いて設けられるため、前記レーザ結晶の励起光が前記透かし部を透過して前記レンズに照射される。
【0008】
好ましくは、前記第1本体、前記導電部材及び前記取付け枠は、いずれも粉末冶金の方法により製造される。
【0009】
好ましくは、前記導電部材は、対になって設けられ、一対の前記導電部材は、それぞれ前記第1本体の両側に位置し、
前記基板における前記レーザ結晶が1つである場合、前記レーザ結晶は一対の前記導電部材に対応し、前記レーザ結晶は前記第1本体の両側の前記導電部材と電気的に接続され、
前記レーザ結晶が複数である場合、前記レーザ結晶は、前記基板において結晶アレイを構成し、各列の前記レーザ結晶は、一対の前記導電部材に対応し、
同一列且つ隣接する2つの前記レーザ結晶同士の間が電気的に接続され、前記導電部材に隣接する前記レーザ結晶は、その隣の前記導電部材と電気的に接続される。
【0010】
さらに、前記第2本体に被覆されているパッケージ層をさらに備え、
前記パッケージ層には集光部が設けられており、前記集光部は、前記取付け枠から離間して設けられ、
前記集光部は、前記基板における前記レーザ結晶と同数存在しており、且つそれに対応する前記レーザ結晶によって生成される励起光の光路に設置される。
【0011】
レーザ半導体素子の製造方法であって、
基板の表面に、当該基板と共同で収容キャビティを画成し、且つ鉄・ニッケル・コバルト合金材からなる第1本体を取り付ける工程と、
鉄・ニッケル・コバルト合金材からなる導電部材を前記第1本体に装着する工程と、
前記収容キャビティ内にレーザ結晶を収容し、且つ前記レーザ結晶と前記導電部材とを電気的に接続する工程と、
鉄・ニッケル・コバルト合金材からなる取付け枠にレンズを取付けて第2本体第2本体を得る工程と、
前記収容キャビティを覆うように前記第1本体に前記第2本体を取り付けて、さらに前記レーザ半導体素子を得る工程と、を含む。
【0012】
好ましくは、前記レーザ半導体素子の製造方法は、前記取付け枠に凹溝を形成し、且つ前記凹溝内に透かし部を形成する工程と、前記凹溝に前記レンズを前記透かし部から露出させつつ収容する工程と、をさらに含む。
【0013】
好ましくは、前記レーザ半導体素子の製造方法は、集光部が形成されたパッケージ層を提供する工程と、前記取付け枠と前記パッケージ層との間に前記レンズが位置するように、前記パッケージ層を前記第2本体に被覆させて、前記集光部を前記取付け枠から離間させる工程と、をさらに含む。
【0014】
従来の技術に比べて、本願は以下の利点を有する。
1、本願は、低熱膨張係数の鉄・ニッケル・コバルト合金材料で第1本体、導電部材及び取付け枠を作製することにより、素子が優れた耐熱性を有し、熱膨張冷縮が起こりにくく、レーザ半導体素子の封止性が効果的に改善され、ひいてはレーザ半導体素子の長寿命化に有利である。
2、本願は、第1封止材、第2封止材を設けて素子間のシールを図り、さらにレーザ溶接方式を採用して溶接効果を改善し、溶接ビードのシール性を向上させるので、レーザ半導体素子のシール性をさらに向上させることができる。
3、本願は、熱膨張係数の差が小さい第1、2封止材及び鉄・ニッケル・コバルト合金材料を用いることにより、異なる素子の材質の熱膨張係数の差が大き過ぎることに起因する素子の位置ずれの問題を回避し、レーザ半導体素子の安定した良好な気密性能及び安全性能を確保することができる。
4、本願は、実際の需要に応じてレーザ結晶の数を設けることができ、レーザ結晶が1つだけ設けられる従来のレーザ半導体素子よりも、本願のレーザ半導体素子の方が高いレーザ強度を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本願の実施例や先行技術における技術的手段をより明確に説明するために、実施例や先行技術の記載において必要な図面を簡単に紹介すると、以下の記載における図面は本願の実施例に過ぎず、当業者にとって創造的な工夫を要せずに、提供される図面からも別の図面を得られることが明らかである。
【0016】
【
図1】本願実施例によるレーザ半導体素子の分解概略図である。
【
図2】
図1に示すレーザ半導体素子の組立て後の模式図である。
【
図3】
図2に示したレーザ半導体素子の別の角度での模式図である。
【
図4】
図1に示したレーザ半導体素子の製造フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本技術分野の当業者による本願発明の理解をより良くするために、以下、本願実施例に添付図面を用いて本願実施例に係る発明を明確かつ完全に述べることとし、当然のことながら、述べられた実施例は本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本願における実施例に基づいて、当業者は創造的な工夫なしに得られるすべての他の実施例が、本願の保護範囲内に属する。
【0018】
本願の明細書及び上記添付図面における「第1」及び「第2」等の用語は、特定の順序について記述するものではなく、異なる対象を区別するために用いられる。また、「含む」、及びその類似する用語は、網羅的に含まれることを意図しており、例えば、一連の工程またはモジュールを含むプロセス、方法、システム、製品、または装置は、リストアップされた工程またはモジュールに限定されるものではなく、リストアップされていない工程またはモジュールを含んでいてもよいし、これらプロセス、方法、製品、または装置に固有の他の工程またはモジュールを含んでいてもよい。
【0019】
図1に示すように、本願はレーザ半導体素子100を提供するが、例示的には、レーザダイオードに適用されてもよく、投影装置の光源部として投影装置に適用することができる。
図1に示すように、レーザ半導体素子100は、基板1と、レーザ結晶2と、導電部材3と、第1封止材4と、第1本体5と、第2本体6とを備えている。
【0020】
前述の基板1は、鉄、鉄合金または銅などの金属材料、またはAlN(即ち、窒化アルミニウム)、SiC(即ち、炭化ケイ素)またはSi3N4(即ち、窒化ケイ素)などのセラミックス材料、またはこれらの金属材料とセラミックス材料との組成物からなる。
【0021】
図1に示すように、前記レーザ結晶2は、励起光を受けるための結晶粒子21と、反射部材22とを含む。結晶粒子21は、導電部材3および他の結晶粒子21と電気的に接続される。反射部材22は、結晶粒子21の励起光の出射光路に設けられ、励起光を反射し、励起光の方向を変化させる役割を果たす。
【0022】
第1本体5は、半田付けにより基板1の1つの表面に固定されている。ここで、第1本体5は、鉄・ニッケル・コバルト合金である。本願の少なくとも1つの実施例においては、
図1及び
図4に示すように、第1本体5は、中空の四角枠体形状であり、且つ基板1の表面と共同で収容キャビティ8を形成している。レーザ結晶2は、収容キャビティ8内に収容される。もちろん、本実施形態では、第1本体5の外形を制限しない。第1本体5は、実際の必要に応じて中空の台体、円柱等の形状に設置されてもよい。
【0023】
本願の少なくとも1つの実施形態において、基板1は、レーザ結晶2の実際の高さ需要に応じて、平板状または階段状に設けられてもよい。例えば、
図1に示すように、基板1は、中央が高く、周縁が低い階段状に設けられていてもよく、レーザ結晶2は、基板1の中央に置かれるため、レーザ結晶2の高さがより高くなる。もちろん、基板1の中央部分と周辺エッジとの高さの差は、実際のニーズに応じて設けられてもよい。
【0024】
レーザ結晶2の数は、実際のニーズに応じて設けられればよく、1つ以上であってもよい。例えば、ある場合、
図1に示すように、レーザ結晶2の数は、複数である。複数のレーザ結晶2は、結晶アレイを構成する。
【0025】
導電部材3の材質としては、上記のレーザ半導体素子100のリードピンとして、レーザ結晶2に外部の正または負の電圧を印加し、レーザ結晶2が励起光を受光できるようにするために、鉄・ニッケル・コバルト合金材質を採用している。
【0026】
本願の少なくとも1つの実施形態において、導電部材3を第1本体5に容易に装着するために、第1本体5の対向する2つの側面にはそれぞれ複数の挿通孔51を有している。上記の第1本体5は、例えば
図1に示すように、その対向する両側に上記の挿通孔51が4個ずつ設けられているが、本願実施例においては、上記挿通孔51の数は制限されるものではない。導電部材3は、例えば長尺棒状に設けられ得るものであり、且つ挿通孔51の数と同じである。各導電部材3の一端が対応する1つの挿通孔51に挿通され、且つ収容キャビティ8において露出するとともに、各導電部材3の他端が第1本体5の外側に位置し、その後の使用時においてレーザ半導体素子100が外部回路と接続されるようになっている。
【0027】
本願の少なくとも1つの実施形態において、導電部材3と第1本体5との間は、第1封止材4によって接続されて封止されてもよい。第1封止材4は、封止樹脂によって製造されてもよい。封止樹脂は、例えば、低温ガラスであってもよく、低溶解温度(例えば、溶解温度が300~400℃程度)、耐高圧(例えば、約10-9Paの高圧に耐え得る)、封止効果を達成できるという利点がある。導電部材3は、その第1本体5に挿着するための一端には第1封止材4が被せられ、さらに第1本体5の挿通孔51内に挿入される。このように、導電部材3が第1封止材4を介して、対応する挿通孔51内に挿着された際に、第1封止材4は、導電部材3と第1本体5との間の隙間を埋め、且つ、第1封止材4が溶融した後に、導電部材3と第1本体5とに密着し、シール効果がさらに向上する。
【0028】
本願の少なくとも1つの実施形態において、導電部材3は対になって設けられている。一対の導電部材3は、それぞれ、第1本体5の両側に位置する。ここで、基板1におけるレーザ結晶2が1つである場合、レーザ結晶2は一対の導電部材3に対応し、レーザ結晶2と第1本体5の両側の導電部材3とは導線で電気的に接続される。レーザ結晶2が複数である場合、レーザ結晶2は、基板1において結晶アレイを構成する。各列のレーザ結晶2は、一対の導電部材3に対応する。同一列のレーザ結晶2同士の間が導線によって電気的に接続され、導電部材3に隣接するレーザ結晶2は、その隣の導電部材3と導線によって電気的に接続される。
【0029】
図2~
図3を併せて参照すると、第2本体6は、第1本体5に被せられる。
図1に示すように、第2本体6は、取付け枠61と、レンズ62と、第2封止材63とを備える。ここで、取付け枠61としては、鉄・ニッケル・コバルト合金が採用されている。本願の少なくとも1つの実施例においては、取付け枠61の外形は、限定されず第1本体5と係合して収容キャビティ8を覆うことができるものであれば、実際のニーズに応じて他の形状であってもよい。例えば、
図1に示すように、本実施例では、取付け枠61は、前記第1本体5の形状に合わせて、収容キャビティ8を完全に覆い隠すことができるように四角形の外形をしている。
【0030】
取付け枠61と第1本体5との間は、レーザ溶接により接続されている。従来、ヒートフィラメント融解技術の溶接面は平面でなければならなく、且つ一定の面積の大きさを保つ必要があるため、溶接要求が高く、溶接要求に至らないと溶接ビードのシール性に直接影響する。レーザ溶接方式を採用することにより、素子の外形が制限を受けることなく、溶接ビードの気密性、技術の適用性において、従来多用されているヒートフィラメント融解技術と比較して顕著なメリットがある。
【0031】
レンズ62は、取付け枠61の上方に重ねて設けられている。なお、取付け枠61は、その中心位置に、レンズ62とマッチングする形状の凹溝611が凹設されている。レンズ62は、凹溝611に収容され、凹溝611によって位置規制され、取付け枠61の上方に安定して取り付けられることが可能である。
【0032】
レーザ結晶2の励起光がレンズ62に照射されるように、凹溝611の溝底には透かし部612が設けられている。透かし部612は、レーザ結晶2の励起光が透かし部612を透過してレンズ62に照射されるように、取付け枠61を貫いて設けられている。即ち、結晶粒子21が発生した励起光は、反射部材22によって反射されると、レンズ62に直射可能である。励起光は、レンズ62を通過した後に外部に放出される。
【0033】
透かし部612は、少なくとも1つ設けられてもよい。即ち、透かし部612が1つしかない場合、基板1におけるレーザ結晶2の数は、少なくとも1つでもよい。基板1におけるレーザ結晶2の励起光は、同一の透かし部612から現れるレンズ部分に入射することになる。透かし部612が少なくとも2つである場合、レーザ結晶2の数は、透かし部612の数と同じであり、レーザ結晶2と透かし部612とがいずれもアレイ状に配置され、レーザ各レーザ結晶2がそれぞれ1つの透かし部612に対応する。レーザ結晶2ごとの励起光は、対応する透かし部612から現れるレンズ部分にそれぞれ入射する。
【0034】
レンズ62と取付け枠61との間は、第2封止材63により連結及び密封されている。幾つかの実施例では、レンズ62には光学レンズが採用され得る。第2封止材63は、第1封止材4と同一の材料、例えばいずれも封止樹脂を採用することができる。封止樹脂は、例えば、低温ガラスなどであってよい。第2封止材63をレンズ62の外周縁に被せ、さらに、第2封止材63を被せたレンズ62を取付け枠61内に載置することにより、第2封止材63が取付け枠61とレンズ62との間の隙間を埋めるように作用する。また、第2封止材63は、熱溶着後に、取付け枠61とレンズ62とを更に貼り合わせることができ、シール効果が一層高くなる。
【0035】
第1封止材4及び第2封止材63の材料としては、ともに封止樹脂が採用されており、封止樹脂が絶縁と封止作用を有するため、レーザ半導体素子100の気密性と安全性に有利である。
【0036】
一般的に用いられているレーザ半導体素子が採用する合金材料は、銅、アルミニウム等を含むため、一定の熱膨張係数を有する。そのため、レーザ半導体素子が湿度の大きい空気環境で使用される場合、金属材料は、自身の熱膨張性により、熱膨張冷縮が発生しやすく、封止性が保証されにくい。このように、しばらく使用した後、金属材料に熱膨張および冷収縮が起こりやすくなるだけでなく、その分、レーザ半導体素子の内部が接触する空気も熱膨張および冷収縮する。これにより、レーザ半導体素子の内部の空気が流れ、外界雰囲気の空気がレーザ半導体素子の中に持ち込まれ、外界雰囲気の空気中に水分、不純物等が含まれるため、レーザ半導体素子にダメージを与える可能性が高くなる。これに対して、本願では、第1本体5、導電部材3及び取付け枠61をいずれも低熱膨張係数の鉄・ニッケル・コバルト合金材料で作製することにより、レーザ半導体素子100に用いられる金属材料の熱膨張係数が大きく、素子の気密性に影響を及ぼすことが有効に回避される。
【0037】
従来の合金プレス等の方式では、通常、切断、打ち抜き等により所望の製品にする必要があり、合金の硬度が大きいため、金型の寿命への影響が避けられない。したがって、本願の少なくとも1つの実施形態においては、第1本体5、導電部材3及び取付け枠61を、粉末冶金で作製することにより、所望の形状に応じた形状の部品を直接作製することができ、より柔軟性に優れ、かつダイシングまたはプレスも不要であり、廃棄物の発生を避けることができる。
【0038】
また、レーザ半導体素子100の封止性能をより強くするために、
図1乃至
図3に示すように、レーザ半導体素子100は、パッケージ層7をさらに備えている。パッケージ層7は、第2本体6に被覆されていてもよい。パッケージ層7は、ガラス材料を用い、耐熱性、耐圧性及び封止性に優れ、UV接着剤等の接着剤により第2本体6に接着される。
【0039】
本願の少なくとも1つの実施形態では、パッケージ層7には集光部71が設けられており、集光部71は円弧状にすることができる。集光部71は、取付け枠61から離間して設けられている。この集光部71は、レンズ62を透過した励起光を集光し、レーザ半導体素子100の投影装置の光源部としての光強度を大きくすることができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、集光部71は、基板1におけるレーザ結晶2と同数存在している。各集光部71は、1つのレーザ結晶2に対応する。レーザ結晶2が1つである場合、集光部71は、レーザ結晶2によって生成される励起光の光路上に1つ配置されてもよい。レーザ結晶2が2つまたは複数である場合、集光部71は、結晶アレイに対応し、アレイを構成し、各集光部71は、それに対応するレーザ結晶2によって生成される励起光の光路にそれぞれ位置する。
【0041】
本願が提供するレーザ半導体素子100では、第1本体5、導電部材3及び取付け枠61はともに低熱膨張係数の鉄・ニッケル・コバルト合金を用い、第1封止材4及び第2封止材63としては、いずれも低熱膨張係数の封止樹脂が用いられ、取付け枠61と第1本体5との間をより密封性に優れたレーザ溶接方式により接続することにより、レーザ半導体素子100の気密性を効果的に向上させることができる。また、封止樹脂及び鉄・ニッケル・コバルト合金は、いずれも低熱膨張性を有し、互いの熱膨張係数の差が小さいため、異なる素子の材質の熱膨張係数差が大き過ぎることに起因する素子の位置ずれを回避できる。
【0042】
図4は、本願が提供するレーザ半導体素子100の製造方法のフローを示す図である。この方法は、上述のレーザ半導体素子100を製造するためのものであり、具体的には、以下の工程を備えている。
【0043】
S1工程では、基板1の表面に、当該基板1と共同で収容キャビティ8を画成する第1本体5を取り付ける。
【0044】
本願の少なくとも1つの実施形態において、第1本体5は、鉄・ニッケル・コバルト合金材料により製造され、四角形の枠体形状とすることができる。基板1は、鉄、鉄合金もしくは銅などの金属材料、またはA1N(即ち、窒化アルミニウム)、SiC(即ち、炭化ケイ素)もしくはSi3N4(即ち、窒化ケイ素)などのセラミックス材料、またはこれらの金属材料とセラミックス材料との組成物から作製でき、その形状は平板状または中間突起の階段状に設計することができる。
【0045】
工程S1において、まず、第1本体5と基板1との接触部に銀銅ソルダペーストを塗布した後、第1本体5と基板1とを銀ろう付炉の中に載置し、温度が900℃~1000℃、気圧が10-9Paの真空雰囲気下で1h~2h焼成することにより、第1本体5が基板1に銀銅ソルダペーストによりろう付けされる。この真空焼成プロセスでは、銀銅ソルダペーストが不純物により化学的に反応して発生するガスを低減し、ガスが逃げて気孔が形成されて、第1本体5と基板1との接合部、即ち溶接の気密性を損なうことが回避される。
【0046】
工程S2では、第一本体5の側面に導電部材3を取り付ける。
1つ本願の少なくとも1つの実施形態において、導電部材3は、例えば長尺ロッド状の鉄・ニッケル・コバルト合金材料からなり、レーザ半導体素子100のピンとして機能する。
【0047】
工程S2具体的な過程は、導電部材3における第1本体5と接続するための一端を第1封止材4で被覆し、この第1封止材4が被せられた導電部材3の一端を、第1本体5の対向する両側の挿通孔51に挿入する。この一端は、上記の収容キャビティ8において露出してレーザ、後にレーザ結晶2と電気的に接続する。導電部材3の他端は、第1本体5の外に位置して、後に外部回路と電気的に接続する。
【0048】
その後、導電部材3、第1封止材4及び第1本体5を900℃~1000℃の空気雰囲気中に放置して3h~4h焼成し、第1封止材4が溶融して冷却されるまで待つことにより、導電部材3と第1本体5との接続箇所を封止して、導電部材3を第1本体5に封止固定することができる。
【0049】
工程S3では、レーザ結晶2を収容キャビティ8内に収容し、且つレーザ結晶2と導電部材3とをワイヤで接続する。
【0050】
工程S3の具体的な過程は、まず、収容キャビティ8内の基板1の表面に、発光源としてレーザ結晶2の結晶粒子21を載置する。レーザ結晶2の反射部材22を対応する結晶粒子21が発する励起光の光路にそれぞれ設置されている。これにより、各結晶粒子21が励起光を受けた後、励起光が対応する反射部材22に適切に入射して、反射される。その後、回線接続を行う。基板1におけるレーザ結晶2の数が1つである場合、レーザ結晶2の結晶粒子21と、第1本体5の両側の導電部材3とはワイヤによって接続されている。
【0051】
基板1におけるレーザ結晶2の数が複数である場合、レーザ結晶2は基板1において結晶アレイを構成する。そのうち、同一列において2つずつ隣接するレーザ結晶2の結晶粒子21同士がワイヤで接続され、導電部材3に隣接するレーザ結晶2の結晶粒子21は隣接する導電部材3とワイヤで接続されている。
【0052】
工程S4では、レンズ62を取付け枠61に取り付けて、第2本体6を得る。
【0053】
本願の少なくとも1つの実施形態において、取付け枠61は、鉄・ニッケル・コバルト合金材料からなる。
【0054】
工程S4の具体的な過程は、取付け枠61に凹溝611を形成した後、凹溝611内に透かし部612を形成し、レンズ62の縁を第2封止材63で被覆した後、第2封止材63を被覆したレンズ62を凹溝611の中に収容するとともに、透かし部612から露出させる。次に、レンズ62、第2封止材63及び取付け枠61を共に400℃~500℃、10-9Paの真空雰囲気の中で1h~2h焼成し、第2封止材63が溶融して冷却されるまで待つだけで、取付け枠61とレンズ62との接続箇所が封止され、レンズ62の取付け枠61内への封止固定が図られる。
【0055】
工程S5では、収容キャビティ8を覆うように第2本体6を第1本体5に装着し、さらに、レーザ半導体素子100を得る。
【0056】
本願の少なくとも1つの実施形態において、取付け枠61の縁と第1本体5とをレーザ溶接により接続して、第2本体6を第1本体5に固定する。
【0057】
また、シール効果を高めるために、上記の工程を終えた後に、工程S6を更に増やしてもよい。
【0058】
具体的には、第2本体6の上方に、レンズ62が取付け枠61とパッケージ層7との間に位置するように、集光部71が設けられたパッケージ層7を覆う。ここで、集光部71は、取付け枠61から離反している。パッケージ層7は予め成形されており、実装時に、例えば、UV接着材などの接着剤によってパッケージ層7が前記第2本体6に固定されていればよい。パッケージ層7の実装後、レーザ結晶2の各々から発生した励起光は、レンズ62を透過した後、対応する集光部71によって集光され、その後のレーザ半導体素子100は、投影装置に適用される際に、より大きな光強度の光を提供することができる。
【0059】
なお、前述の各方法実施例については、簡単に記述するために、一連の動作の組み合わせとして表現することとしたが、当業者は、本願が記述された動作順序に制限されることなく、本願によって、ある工程が他の順序を採用するかまたは同時に行われることが理解すべきである。
【0060】
以上述べた実施例は、本願の技術案を説明するためにのみ使用され、それを制限するものではない。前述の実施例を参照して本願を詳細に説明しているにもかかわらず、当業者は、前述の各実施例に記載されている技術案を補正したり、その技術的特徴の一部を同等に置換したりすることが可能である。これらの補正又は置換は、対応する発明の本質を本願発明の範囲から逸脱させるものではない。
【符号の説明】
【0061】
100 レーザ半導体素子
1 基板
2 レーザ結晶
21 結晶粒子
22 反射部材
3 導電部材
4 第1封止材
5 第1本体
51 挿通孔
6 第2本体
61 取付け枠
611 凹溝
612 透かし部
62 レンズ
63 第2封止材
7 パッケージ層
71 集光部
8 収容キャビティ