(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057534
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】剥離コーティング剤、剥離フィルムおよび剥離フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20230414BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20230414BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230414BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230414BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20230414BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20230414BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20230414BHJP
【FI】
C09D133/00
B05D5/00 A
B05D3/00 C
B05D7/24 302P
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303E
C09D161/28
C09D183/06
C09J7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158561
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021167020
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】大島 純治
(72)【発明者】
【氏名】島野 紘一
(72)【発明者】
【氏名】横山 真希
【テーマコード(参考)】
4D075
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075BB20Z
4D075BB21Z
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA07
4D075CA47
4D075CA48
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4D075EC54
4J004DB03
4J004EA01
4J038CG001
4J038CG141
4J038DA162
4J038DL032
4J038GA03
4J038KA03
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4J038MA14
4J038NA05
4J038NA10
4J038PA19
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】厚み方向におけるフィルムの一方面に塗布されて乾燥して剥離層が形成され、かかる剥離層が厚み方向におけるフィルムの他方面に接触したときに、剥離層の成分の一部がフィルムの他方面に移行することを抑制できる剥離コーティング剤、剥離フィルムおよび剥離フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】剥離コーティング剤は、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端変性シリコーンオイルとを含有する。剥離フィルム1は、基材フィルム2と、剥離コーティング剤の塗膜30からなる剥離層3とを、厚み方向の一方側に向かって順に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、
メラミン樹脂と、
片末端がヒドロキシル基で変性された片末端変性シリコーンオイルとを含有する、剥離コーティング剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基含有アクリル樹脂および前記メラミン樹脂の合計100質量部に対する前記片末端変性シリコーンオイルの含有割合は、0.03質量部以上、5.0質量部以下である、請求項1に記載の剥離コーティング剤。
【請求項3】
前記片末端変性シリコーンオイルは、片末端に位置するケイ素がカルビノール基および/またはジオールで変性されている、請求項1に記載の剥離コーティング剤。
【請求項4】
前記片末端変性シリコーンオイルは、片末端に位置するケイ素がカルビノール基で変性されている、請求項1に記載の剥離コーティング剤。
【請求項5】
前記メラミン樹脂は、メチル型メラミン樹脂およびメチロール型メラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の剥離コーティング剤。
【請求項6】
前記メラミン樹脂における単核体の含有量は、60質量%以上、90質量%以下である、請求項1に記載の剥離コーティング剤。
【請求項7】
基材フィルムと、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の剥離コーティング剤の塗膜からなる剥離層とを、厚み方向の一方側に向かって順に備える、剥離フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の剥離フィルムの製造方法であって、
前記剥離コーティング剤を、前記厚み方向における前記基材フィルムの一方面に塗布して前記剥離層を形成することにより、前記剥離フィルムを製造する工程と、
前記剥離フィルムを、前記厚み方向における前記剥離層の一方面と、前記厚み方向における前記基材フィルムの他方面とが接触するように、配置する工程とを備える、剥離フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記剥離フィルムは、長尺であり、
前記剥離フィルムを配置する工程では、前記剥離フィルムをロール体として巻き取る、
請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記剥離フィルムを製造する工程では、前記剥離コーティング剤の塗膜を、130℃未満で、4秒以上、100秒以下、加熱する、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離コーティング剤、剥離フィルムおよび剥離フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
剥離フィルム用樹脂組成物は、基材フィルムの表面に塗布され、基材フィルムの表面に剥離特性を付与することが知られている。つまり、剥離フィルム用樹脂組成物の塗布膜が剥離層として基材フィルムの表面に配置される。これによって、基材フィルムと、剥離層とを厚み方向の一方側に順に配置される剥離フィルムが得られる。
【0003】
例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、両末端がヒドロキシル基で変性された両末端変性シリコーンオイルとを含む剥離フィルム用樹脂組成物が提案されている(下記特許文献1参照。)。
【0004】
剥離フィルムにおける基材フィルムの裏面には、機能層が配置される。機能層は、粘着層を含む。剥離層と、基材フィルムと、機能層(粘着層)とを備える機能フィルム(粘着フィルム)が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工業製造上の理由から、剥離フィルムは、長尺であって、ロール体で巻き取られる。その際、剥離層は、基材フィルムの裏面に接触する。特許文献1では、剥離層の成分の一部(剥離フィルム用樹脂組成物の一部)が、基材フィルムの裏面に移行し、そのため、機能層を基材フィルムの裏面に均一に配置できないという不具合がある。
【0007】
本発明は、厚み方向におけるフィルムの一方面に塗布されて乾燥して剥離層が形成され、かかる剥離層が厚み方向におけるフィルムの他方面に接触したときに、剥離層の成分の一部がフィルムの他方面に移行することを抑制できる剥離コーティング剤、剥離フィルムおよび剥離フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端がヒドロキシル基で変性された片末端変性シリコーンオイルとを含有する、剥離コーティング剤を含む。
【0009】
本発明(2)は、前記ヒドロキシル基含有アクリル樹脂および前記メラミン樹脂の合計100質量部に対する前記片末端変性シリコーンオイルの含有割合は、0.03質量部以上、5.0質量部以下である、(1)に記載の剥離コーティング剤を含む。
【0010】
本発明(3)は、前記片末端変性シリコーンオイルは、片末端に位置するケイ素がカルビノール基および/またはジオールで変性されている、(1)または(2)に記載の剥離コーティング剤を含む。
【0011】
本発明(4)は、前記片末端変性シリコーンオイルは、片末端に位置するケイ素がカルビノール基で変性されている、(1)から(3)のいずれか一項に記載の剥離コーティング剤を含む。
【0012】
本発明(5)は、前記メラミン樹脂は、メチル型メラミン樹脂およびメチロール型メラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである、(1)から(4)のいずれか一項に記載の剥離コーティング剤を含む。
【0013】
本発明(6)は、前記メラミン樹脂における単核体の含有量は、60質量%以上、90質量%以下である、(1)から(5)のいずれか一項に記載の剥離コーティング剤を含む。
【0014】
本発明(7)は、基材フィルムと、(1)から(6)のいずれか一項に記載の剥離コーティング剤の塗膜からなる剥離層とを、厚み方向の一方側に向かって順に備える、剥離フィルムを含む。
【0015】
本発明(8)は、(7)に記載の剥離フィルムの製造方法であって、前記剥離コーティング剤を、前記厚み方向における前記基材フィルムの一方面に塗布して前記剥離層を形成することにより、前記剥離フィルムを製造する工程と、前記剥離フィルムを、前記厚み方向における前記剥離層の一方面と、前記厚み方向における前記基材フィルムの他方面とが接触するように、配置する工程とを備える、剥離フィルムの製造方法を含む。
【0016】
本発明(9)は、前記剥離フィルムは、長尺であり、前記剥離フィルムを配置する工程では、前記剥離フィルムをロール体として巻き取る、(8)に記載の剥離フィルムの製造方法を含む。
【0017】
本発明(10)は、前記剥離フィルムを製造する工程では、前記剥離コーティング剤の塗膜を、130℃未満で、4秒以上、100秒以下、加熱する、(8)または(9)に記載の剥離フィルムの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の剥離フィルムの製造方法において、本発明の剥離コーティング剤が、厚み方向におけるフィルムの一方面に塗布されて乾燥して剥離層が形成されて、本発明の剥離フィルムが製造され、かかる剥離層が厚み方向における基材フィルムの他方面に接触したときに、剥離層の成分の一部が基材フィルムの他方面に移行することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の剥離フィルムの一実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の剥離フィルムの他方面に機能層を塗布する態様である。
【
図3】
図3Aから
図3Cは、実施例の裏移り性試験を説明する図である。
図3Aが、2枚の剥離フィルムを準備する態様である。
図3Bが、積層体を作製する態様である。
図3Cが、一方の剥離フィルムを他方の剥離フィルムから引き剥がし、一方の剥離フィルムの他方面に機能層を配置する態様である。
【
図4】
図4は、実施例1の塗膜の平面写真の画像処理図を示す。
【
図5】
図5は、実施例12の塗膜の平面写真の画像処理図を示す。
【
図6】
図6は、比較例1の塗膜の平面写真の電画像処理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1. 剥離コーティング剤
剥離コーティング剤は、例えば、塗布され乾燥されて、硬化して剥離層を形成可能な熱硬化性組成物である。本発明の剥離コーティング剤は、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端変性シリコーンオイルとを含有する。
【0021】
1.1 ヒドロキシル基含有アクリル樹脂
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂は、ヒドロキシル基を含有する。ヒドロキシル基含有アクリル樹脂におけるヒドロキシル価は、例えば、100mgKOH/g以上、好ましくは、125mgKOH/g以上、より好ましくは、150mgKOH/g以上、さらに好ましくは、160mgKOH/g以上である。ヒドロキシル基含有アクリル樹脂におけるヒドロキシル価は、例えば、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、200mgKOH/g以下である。
【0022】
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂におけるヒドロキシル価が上記した下限以上であれば、低温、且つ短時間での乾燥が可能となり、生産性の向上が期待できる。ヒドロキシル基含有アクリル樹脂におけるヒドロキシル価が上記した上限以下であれば、剥離コーティング剤を調製した後のポットライフを長くできる。なお、本実施形態では、ポットライフは、1液である剥離コーティングの各成分を混合した後の寿命を意味する。なお、変形例で説明する2液である剥離コーティング剤の場合には、A液とB液とを混合した後の寿命を意味する。
【0023】
ヒドロキシル価は、中和滴定法(JIS-K0070K)に準拠した方法により測定される。ヒドロキシル基含有アクリル樹脂が市販品(後述)であれば、カタログ値がヒドロキシル価として採用される。また、後述するモノマー成分の組成から理論値としてヒドロキシル価が求められる。
【0024】
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、5,000以上、100,000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として求められる。
【0025】
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂は、市販品を用いることができる。また、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂は、以下の方法で調製することができる。
【0026】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有するモノマー成分を配合し、かかるモノマー成分を重合する。
【0027】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、ヒドロキシル基含有メタクリレート、および、ヒドロキシル基含有アクリレートを含む。「(メタ)」の用法は、以下同様である。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートは、限定されない。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキルの炭素数は、例えば、2以上6以下である。具体的には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、および、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートは、限定されない。アルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシル基を含有しない。アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキルの炭素数は、例えば、1以上12以下である。具体的には、アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、および、ドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
モノマー成分は、必要により、主成分と共重合可能なビニルモノマーを含有する。ビニルモノマーは、限定されない。ビニルモノマーとしては、例えば、芳香族ビニルモノマーが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、および、ビニルトルエンが挙げられる。
【0030】
モノマー成分におけるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの配合割合は、例えば、25質量%以上、50質量%以下である。モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの配合割合は、例えば、20質量%以上、45質量%以下である。モノマー成分における共重合性可能なビニルモノマーの配合割合は、例えば、10質量%以上、40質量%以下である。
【0031】
モノマー成分を、公知の重合開始剤の存在下、重合する。重合方法は、限定されない。重合方法としては、例えば、溶液重合が挙げられる。溶液重合では、有機溶媒が用いられる。
【0032】
剥離コーティング剤(固形分)におけるヒドロキシル基含有アクリル樹脂の含有割合は、例えば、35質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、75質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0033】
1.2 メラミン樹脂
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの縮合樹脂である。メラミンは、官能基を有する。メラミン樹脂は、単核体および多核体を含有する。単核体は、下記式(1)で示されるメラミン骨格を1つ有する構造である。多核体は、上記のメラミン骨格を複数有する構造である。
【0034】
【0035】
メラミン樹脂における単核体の含有量は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上、とりわけ好ましくは、77質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下である。メラミン樹脂における単核体の含有量が上記した下限以上であれば、塗膜(後述)を低温(好適には、100℃未満)で硬化可能である。メラミン樹脂における単核体の含有量が上記した上限以下であれば、製造時のハンドリング性を確保できる。
【0036】
メラミン樹脂における単核体の含有量は、単核体および多核体の合計に対する単核体の百分率である。メラミン樹脂における単核体の含有量は、メラミン樹脂が市販品であれば、カタログ値が採用される。また、メラミン樹脂における単核体の含有量は、例えば、GPCにより測定できる。GPCでは、単核体の標準品を用いて検量線を作成して、上記した検量線を用いて単核体の含有量が測定される。
【0037】
メラミン樹脂の種類は、メラミン樹脂が有する官能基およびその数によって、分類される。官能基としては、例えば、メチロール基(-CH2OH)、メトキシメチルエーテル基(-CH2OCH3)、および、イミノ基(>NH)が挙げられる。メラミン樹脂としては、例えば、メチロール型メラミン樹脂、メトキシメチルエーテル型メラミン樹脂、および、イミノ型メラミン樹脂が挙げられる。
【0038】
メチロール型メラミン樹脂は、官能基としてメチロール基を有する。メトキシメチルエーテル型メラミン樹脂は、官能基としてメトキシメチルエーテル基を有する。なお、メトキシメチルエーテル型メラミン樹脂は、メトキシメチルエーテル基の終末端がメチルであることから、メチル型メラミン樹脂と称呼される。また、メチル型メラミン樹脂は、上記したメラミン骨格の外側に位置する3つの窒素原子のそれぞれに対して2つのメトキシメチルエーテル基が結合したフルエーテルメチル型メラミン樹脂を含む。フルエーテルメチル型メラミン樹脂は、1つの単核体に対して6つのメトキシメチルエーテル基を有する。
イミノ型メラミン樹脂は、官能基としてイミノ基を有する。
【0039】
メラミン樹脂として、低温で、短時間で乾燥(硬化)する観点から、好ましくは、メチロール型メラミン樹脂、および、メチル型メラミン樹脂が挙げられ、より好ましくは、より一層良好な軽剥離性を確保する観点から、メチル型メラミン樹脂が挙げられる。軽剥離性は、粘着体を剥離層から引き剥がすときに、小さな力で剥離できる性質である。粘着体は、粘着テープを含む。
【0040】
メラミン樹脂は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、サイメルシリーズ(オルネクスジャパン社製)、ニカラックシリーズ(三和ケミカル社製)、ユーバンシリーズ(三井化学社製)、および、アミディアシリーズ(DIC社製)が挙げられる。
【0041】
剥離コーティング剤(固形分)におけるメラミン樹脂の含有割合は、例えば、35質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、75質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。ヒドロキシル基含有アクリル樹脂100質量部に対するメラミン樹脂の含有割合は、例えば、75質量部以上、好ましくは、90質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下、好ましくは、110質量部以下である。
【0042】
1.3 片末端変性シリコーンオイル
片末端変性シリコーンオイルは、片末端がヒドロキシル基で変性されたシリコーンオイル(オルガノシロキン)である。片末端変性シリコーンオイルとしては、例えば、カルビノール変性シリコーンオイル、および、ジオール変性シリコーンオイルが挙げられる。カルビノール変性シリコーンオイルは、片末端に位置するケイ素がカルビノール基で変性されたシリコーンオイルである。カルビノール基は、C-OHである。ジオール変性シリコーンオイルは、片末端に位置するケイ素が、アルキルジオール(-R1-R0(R2OH)2)で変性されたシリコーンオイルである。
【0043】
片末端変性シリコーンオイルとして、例えば、カルビノール変性シリコーンオイル、ジオール変性シリコーンオイルが挙げられ、好ましくは、軽剥離性の観点から、カルビノール変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0044】
片末端変性シリコーンオイルの動粘度は、限定されない。25℃における片末端変性シリコーンオイルの動粘度は、例えば、10mm2/s以上であり、また、例えば、1,000mm2/s以下である。25℃におけるカルビノール変性シリコーンオイルの動粘度は、例えば、10mm2/s以上、好ましくは、20mm2/s以上、より好ましくは、30mm2/s以上であり、また、例えば、100mm2/s以下、好ましくは、80mm2/s以下である。25℃におけるジオール変性シリコーンオイルの動粘度は、例えば、50mm2/s以上、好ましくは、100mm2/s以上であり、また、例えば、750mm2/s以下、好ましくは、600mm2/s以下である。
【0045】
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂およびメラミン樹脂の合計100質量部に対する片末端変性シリコーンオイルの含有割合は、例えば、0.03質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.15質量部以上、さらに好ましくは、0.2質量部以上、とりわけ好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、3.0質量部以下、さらに好ましくは、1.0質量部以下、とりわけ好ましくは、0.6質量部以下である。ヒドロキシル基含有アクリル樹脂およびメラミン樹脂の合計100質量部に対する片末端変性シリコーンオイルの含有割合が上記した下限以上であれば、軽剥離性に優れる。ヒドロキシル基含有アクリル樹脂およびメラミン樹脂の合計100質量部に対する片末端変性シリコーンオイルの含有割合が上記した上限以下であれば、基材フィルム(後述)の一方面に形成された剥離層が、基材フィルムの他方面に接触したときに、剥離層の成分の一部が基材フィルムの他方面に移行することをより一層確実に抑制できる。
【0046】
剥離コーティング剤を調製するには、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端変性シリコーンオイルとを配合する。
【0047】
剥離コーティング剤は、さらに酸触媒を含有してもよい。酸触媒は、限定されない。酸触媒としては、例えば、有機酸、および、無機酸が挙げられる。有機酸は、限定されない。有機酸としては、例えば、有機カルボン酸、有機スルホン酸、および、有機リン酸が挙げられる。有機カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、酢酸、および、ギ酸が挙げられる。有機スルホン酸としては、例えば、芳香族スルホン酸、および、脂肪族スルホン酸が挙げられる。芳香族スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、および、ナフタレンスルホン酸が挙げられる。
【0048】
脂肪族スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、および、ヘキサンスルホン酸が挙げられる。有機リン酸としては、例えば、メチルアシッドホスフェート、および、フェニルアシッドホスフェートが挙げられる。無機酸は、限定されない。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、および、硝酸が挙げられる。
【0049】
酸触媒として、好ましくは、有機酸、より好ましくは、有機スルホン酸、さらに好ましくは、芳香族スルホン酸が挙げられる。
【0050】
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂およびメラミン樹脂の合計100質量部に対する酸触媒の含有割合は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0051】
また、剥離コーティング剤は、さらに有機溶媒を配合して、コーティング液として調製できる。25℃における有機溶媒の蒸気圧は、例えば、1kPa以上、好ましくは、3kPa以上、より好ましくは、5kPa以上であり、また、100kPa以下である。有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、および、アルコール系溶媒が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、および、メチルイソブチルケトンが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、および、酢酸ブチルが挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、および、イソプロピルアルコール(イソプロパノール、IPA)が挙げられる。コーティング液における固形分濃度は、限定されない。コーティング液における固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、50質量%以下である。
【0052】
なお、剥離コーティング剤は、上記した成分の他に、添加剤を適宜の割合で含有してもよい。添加剤としては、例えば、消泡剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、顔料、染料、滑剤、レベリング剤、および、導電剤が挙げられる。
【0053】
2. 剥離フィルム
次に、剥離フィルムの一実施形態を、
図1を参照して説明する。
【0054】
図1に示すように、本実施形態では、剥離フィルム1は、例えば、長尺である。剥離フィルム1の長尺方向は、厚み方向に直交する。剥離フィルム1は、基材フィルム2と、剥離層3とを、厚み方向の一方側に向かって順に備える。好ましくは、剥離フィルム1は、基材フィルム2と、剥離層3とのみを備える。
【0055】
2.1 基材フィルム2
本実施形態では、基材フィルム2は、長尺である。基材フィルム2は、厚み方向における剥離フィルム1の他方面を形成する。基材フィルム2は、限定されない。基材フィルム2は、例えば、可撓性を有する。基材フィルム2としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルム(シクロオレフィンポリマーフィルムを含む)、ナイロンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ABS樹脂フィルム、AS樹脂フィルム、および、ノルボルネン樹脂フィルムが挙げられる。基材フィルム2として、例えば、金属箔が挙げられる。さらに、基材フィルム2としては、例えば、紙が挙げられる。基材フィルム2として、好ましくは、プラスチックフィルムが挙げられ、より好ましくは、ポリエステルフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、および、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとして、好ましくは、PETフィルムが挙げられる。基材フィルム2の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0056】
剥離層3は、厚み方向における剥離フィルム1の一方面を形成する。剥離層3は、厚み方向における基材フィルム2の一方面に配置されている。剥離層3は、厚み方向における基材フィルム2の一方面に接触している。剥離層3は、上記した剥離コーティング剤の塗膜30からなる。剥離層3の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10.0μm以下、好ましくは、5.0μm以下である。また、剥離層3の目付量は、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.5g/m2以上であり、また、例えば、10g/m2以下、好ましくは、5g/m2以下である。
【0057】
3. 剥離フィルム1の製造方法
剥離フィルム1の製造方法は、剥離層3を基材フィルム2に形成する工程と、剥離フィルム1を巻き取る工程とを備える。
【0058】
3.1 剥離層3を形成する工程
剥離層3を形成する工程では、剥離コーティング剤を、厚み方向における基材フィルム2の一方面に塗布および乾燥する。剥離コーティング剤の塗布方法は、限定されない。剥離コーティング剤の塗布方法としては、例えば、グラビアコータ、ナイフコータ、バーコータ、ドットコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、および、スプレーが挙げられる。剥離コーティング剤の塗布によって、厚み方向における基材フィルム2の一方面に、塗膜30が形成される。
【0059】
続いて、塗膜30を乾燥させる。具体的には、塗膜30を加熱する。加熱温度は、例えば、130℃未満、好ましくは、100℃未満、より好ましくは、98℃以下、より好ましくは、95℃以下であり、また、例えば、60℃以上、好ましくは、75℃以上である。加熱温度が上記した上限を下回れば、剥離フィルム1の製造における負荷を低減できる。加熱時間は、例えば、4秒以上、好ましくは、20秒以上、より好ましくは、30秒以上であり、また、例えば、300秒以下、好ましくは、100秒以下である。加熱時間が上記した下限以上であれば、剥離フィルム1の製造における負荷を低減しつつ、製造効率に優れる。
【0060】
塗膜30を加熱して乾燥させることによって、必要により配合される有機溶媒が除去されるとともに、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端変性シリコーンオイルとは、必要により配合される酸触媒の存在下、反応する(熱硬化する)。これによって、塗膜30が熱硬化して、剥離層3が形成される。これによって、基材フィルム2と剥離層3とが厚み方向の一方側に向かって順に配置された剥離フィルム1が製造される。
【0061】
3.2 剥離フィルム1をロール体5として巻き取る工程
剥離フィルム1を巻き取る工程では、上記した長尺の剥離フィルム1をロール体5に巻き取る。具体的には、ロール体5は、長尺方向に巻き取られるように配置される。
図1の拡大図で示すように、ロール体5において厚み方向における剥離層3の一方面と、厚み方向における基材フィルム2の他方面とが接触する。
【0062】
4. 剥離フィルム1の使用
剥離フィルム1を使用するには、
図2に示すように、例えば、ロール体5から剥離フィルム1を繰り出し、次いで、厚み方向における剥離フィルム1の他方面に機能層4を配置する。機能層4としては、例えば、粘着層、および、塗料層が挙げられる。塗料層は、例えば、印刷層(またはプリント層)を含む。
【0063】
これによって、機能層4と、基材フィルム2と、剥離層3とを厚み方向の一方側に向かって順に備える機能フィルム6が得られる。機能層4が粘着層であれば、機能フィルム6は、粘着フィルム60として製造される。
【0064】
5. 作用効果
この剥離コーティング剤は、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端がヒドロキシル基で変性された片末端変性シリコーンオイルとを含有する。そして、
図1に示すように、この剥離コーティング剤が、長尺の基材フィルム2の一方面に塗布されて乾燥して剥離層3が形成され、基材フィルム2と剥離層3とを厚み方向の一方側に向かって順に備える剥離フィルム1がロール体5として巻き取られると、剥離層3が厚み方向における基材フィルム2の他方面に接触する。このときに、剥離層3の成分の一部(剥離成分)が基材フィルム2の他方面に移行することを抑制できる。上記した移行は、裏移りと称呼される。但し、本実施形態における裏移りは、基材フィルム2の一方面に配置された剥離層3の成分の一部が、当該基材フィルム2を厚み方向の他方側に向かって進行(浸潤)して、当該基材フィルム2の他方面に移動する態様を含まない。本実施形態では、上記した裏移りが抑制されるので、剥離フィルム1をロール体5として巻き取った後に、ロール体5から繰り出された基材フィルム2の他方面に、機能層4を、均一に配置できる。そのため、
図2に示すように、信頼性に優れる機能フィルム6を製造することができる。
【0065】
一方、特許文献1のように、剥離コーティング剤が両末端変性シリコーンオイルを含有する場合には、上記した裏移りを抑制できず、そのため、機能層4を厚み方向における基材フィルム2の他方面に均一に配置できない。例えば、機能層4をコーティング液の塗布により形成するときには、裏移りした成分(剥離成分)によって、コーティング液のはじきを生じ、欠損部分を生じる。
【0066】
6. 変形例
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態および変形例を適宜組み合わせることができる。
【0067】
図3Aに示すように、複数の剥離フィルム1A,1Bを枚葉方式で製造することができる。この場合には、
図3Bに示すように、枚葉で複数の剥離フィルム1A,1Bを厚み方向に積層する。例えば、剥離フィルム1Aの上側に剥離フィルム1Bを積み重ねる。2枚の剥離フィルム1A、1Bを備える積層体7を作製する。この際、積層体7において、厚み方向における剥離層3Aの一方面と、厚み方向における基材フィルム2Bの他方面とが接触する。
【0068】
図3Cに示すように、その後、剥離フィルム1Bを、剥離フィルム1Aの剥離層3Aから剥離する。その後、剥離フィルム1Bの基材フィルム2Bの他方面に、機能層4Bを、例えば、塗布によって配置する。
【0069】
6.1 変形例の作用効果
図3Bにおいて、剥離フィルム1Aにおける剥離層3Aの成分の一部が、剥離フィルム1Bにおける基材フィルム2Bの他方面に移行することを抑制できる。つまり、剥離層3Aの成分の基材フィルム2Bへの裏移りを抑制できる。そのため、
図3Cに示すように、機能層4Bを、厚み方向における基材フィルム2の他方面に均一に配置できる。
【0070】
7.他の変形例
一実施形態の剥離コーティング剤は、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端変性シリコーンオイルと、必要により酸触媒とを含有する1液タイプである。変形例では、2液タイプを挙げることができる。2液タイプの剥離コーティング剤は、A液と、B液とを別々に含む。A液は、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、片末端変性シリコーンオイルとを含む。B液は、例えば、酸触媒を含む。
【実施例0071】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0072】
各実施例および各比較例で用いる成分の詳細を次に記載する。
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂:後述する調製例1,ヒドロキシル価=173mgKOH/g
サイメル300:フルエーテルメチル型メラミン樹脂、単核体含有量:80~84質量%、オルネクスジャパン社製
サイメル303FL:フルエーテルメチル型メラミン樹脂、単核体含有量:68~75質量%、オルネクスジャパン社製
サイメル370N:メチロール型メラミン樹脂、単核体含有量:35~40質量%、オルネクスジャパン社製
サイキャット4040:p-トルエンスルホン酸、酸触媒、固形分40%品、オルネクスジャパン社製
X-22-170DX:片末端カルビノール変性シリコーンオイル、25℃における動粘度:65mm2/s、信越化学工業社製
X-22-170BX:片末端カルビノール変性シリコーンオイル、25℃における動粘度:40mm2/s、信越化学工業社製
X-22-176DX:片末端ジオール変性シリコーンオイル、25℃における動粘度:130mm2/s、信越化学工業社製
X-22-176F:片末端ジオール変性シリコーンオイル、25℃における動粘度:500mm2/s、信越化学工業社製
KF-6003:両末端カルビノール変性シリコーンオイル、25℃における動粘度:110mm2/s、信越化学工業社製
X-22-173DX:片末端エポキシ変性シリコーンオイル、25℃における動粘度:60mm2/s、信越化学工業社製
イソプロパノール:25℃における蒸気圧6kPa
【0073】
調製例1
(ヒドロキシル基含有アクリル樹脂の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置を備えたガラス製反応装置に、酢酸ブチル80.0質量部を仕込み、90~100℃に加熱後、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40.0質量部、メチルメタクリレート25.0質量部、スチレン25.0質量部、ブチルアクリレート10.0質量部、ナイパーBW(重合開始剤、25質量%水含有)4.0質量部および酢酸ブチル20.0質量部の混合物を窒素通気下に4時間かけて滴下した。続いて、90~100℃で2時間重合後、ナイパーBW0.2質量部をさらに加え、2時間重合し、ヒドロキシ基含有アクリル樹脂の50質量%酢酸ブチル溶液を得た。ヒドロキシ基含有アクリル樹脂のヒドロキシル価(理論値)は173mgKOH/g(56100×(40.0/130)/100)であった。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、30,000であった。なお、上記括弧書きの式中、40は、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの配合割合であり、130は、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの分子量であり、100は、モノマー成分の合計の配合割合を意味する。
【0074】
実施例1
(剥離コーティング剤の製造)
調製例1のヒドロキシル基含有アクリル樹脂100.00質量部(固形分として50.00質量部)と、フルエーテルメチル型メラミン樹脂(サイメル300)50.00質量部と、片末端カルビノール変性シリコーンオイル(X-22-170DX)0.60質量部と、p-トルエンスルホン酸(サイキャット4040)4.00質量部(固形分として1.60質量部)と、イソプロパノールとを、固形分濃度が40質量%となるように、配合して、剥離コーティング剤を調製した。配合処方を表1に示す。表1に記載の数値は、固形分の配合割合である。表2も同様である。
【0075】
実施例1-a
(剥離フィルム1の製造)
実施例1の剥離コーティング剤を、厚み38μmのPETフィルムからなる基材フィルム2の一方面に、乾燥後の塗膜30(剥離層3)の目付量が2.0g/m2となるように、塗布した。その後、塗膜30を、120℃、60秒間加熱して、剥離層3を形成した。
これによって、基材フィルム2と、剥離層3とを厚み方向の一方側に向かって順に備える剥離フィルム1を製造した。
【0076】
実施例1-b
(剥離フィルム1の製造)
実施例1-aと同様に、剥離フィルム1を製造した。但し、加熱温度を、90℃に変更した。
【0077】
実施例2から実施例12、比較例1および比較例2
(剥離コーティング剤および剥離フィルム1の製造)
実施例1と同様にして剥離コーティング剤を調製し、実施例1-aと同様にして剥離フィルム1を製造した。但し、剥離コーティング剤の配合処方を表1および表2の記載の通りに変更した。
【0078】
実施例13
(剥離フィルム1の製造)
実施例9と同様に、剥離フィルム1を製造した。但し、加熱温度を、100℃に変更した。
【0079】
実施例14
(剥離フィルム1の製造)
実施例10と同様に、剥離フィルム1を製造した。但し、加熱温度を、100℃に変更した。
【0080】
<評価>
実施例1-aから実施例14、比較例1および比較例2の剥離フィルム1について、以下の点を評価した。その結果を表1および表2に記載する(実施例13および14は後述)。
【0081】
1. 裏移り性
図3Aに示すように、1枚の剥離フィルム1を10cm×10cmの大きさに切断して、2枚の剥離フィルム1A、1Bを準備した。
図3Bに示すように、剥離フィルム1Aの上側に剥離フィルム1Bを積み重ねて、積層体7を作製した。積層体7の上面および下面を万力で挟んで、積層体7に圧力をかけて、2日間静置した。
【0082】
図3Cに示すように、剥離フィルム1Bを、剥離フィルム1Aの剥離層3Aから剥離した。その後、剥離フィルム1Bの基材フィルム2Bの他方面に、テスト塗料4Bを塗布した。テスト塗料は、IPA38質量部、ポリエステルポリオール(分散剤、クラレポリオールP-510)4.0質量部、および、染料0.4質量部を含有する。テスト塗料からなる塗膜を目視で観察し、下記の基準で裏移り性を評価した。
【0083】
○:基材フィルム2Bの他方面において、テスト塗料のはじきが観察されなかった(
図4参照)。
△:基材フィルム2Bの他方面の一部で、テスト塗料のはじきがわずかに観察された(
図5参照)。
○~△:上記○と上記△の中間程度のはじきが観察された。
×:基材フィルム2Bの他方面の全体において、テスト塗料のはじきが観察された(
図6参照)。
【0084】
実施例1の塗膜の平面写真の画像処理図を
図4に示す。実施例12の塗膜の平面写真の画像処理図を
図5に示す。比較例1の塗膜の平面写真の電画像処理図を
図6に示す。
【0085】
2. 剥離性
図3Cに示すように、剥離フィルム1Bにおける剥離層3Bの一方面に、幅25mmの粘着テープ(No.31B、日東電工社製)8を貼付した後、粘着テープ8を剥離層3Bから剥離するときの剥離荷重を測定した。剥離速度は、300mm/分であった。
【0086】
【0087】
【0088】
実施例13の裏移り性の評価が○であり、剥離荷重が5.7(g/25mm)であった。実施例14の裏移り性の評価が○~△であり、剥離荷重が5.0(g/25mm)であった。