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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057537
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】切断砥石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/12 20060101AFI20230414BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
B24D5/12 Z
B24D3/00 330E
B24D3/00 310E
B24D3/00 320A
B24D3/00 330G
B24D3/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159897
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021166557
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593199415
【氏名又は名称】株式会社レヂトン
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英司
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 真之
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BA15
3C063BA32
3C063BB03
3C063BB06
3C063BB07
3C063BB09
3C063BC03
3C063BF10
3C063CC19
3C063EE31
3C063FF23
3C063FF30
(57)【要約】
【課題】切れ味が良い状態を維持できて被加工物の切断が効率的にできると共に、使用寿命が長い切断砥石及びその製造方法をより合理的に提供する。
【解決手段】砥粒が結合剤によって結合されて円板状に成型されていることで被加工物を切断するように設けられた切断砥石において、前記砥粒の少なくとも一部が、長柱状に設けられて太さに対する長さの比が1対3以上であることによってアスペクト比が3以上に設けられた長柱状砥粒11であり、該長柱状砥粒11の少なくとも一部が、放射状又は平行に整列されていることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成型と熱硬化によって、砥粒が結合剤によって結合されて円板状に形成されていることで被加工物を切断するように設けられた切断砥石において、
前記砥粒の少なくとも一部が、長柱状に設けられて太さに対する長さの比が1対3以上であることによってアスペクト比が3以上に設けられた長柱状砥粒であり、
該長柱状砥粒の少なくとも一部が、放射状又は平行に整列されていることを特徴とする切断砥石。
【請求項2】
前記円板状の切断砥石における外周縁の少なくとも一部で、前記長柱状砥粒が、放射状又は平行に整列されていることを特徴とする請求項1記載の切断砥石。
【請求項3】
前記円板状の切断砥石における厚さ方向の少なくとも一層の一部で、前記長柱状砥粒が、放射状又は平行に整列されていることを特徴とする請求項1記載の切断砥石。
【請求項4】
前記長柱状砥粒の少なくとも一部が、酸化アルミニウムを主成分とするアルミナ微粒子の集合体を焼成することで、長柱状のセラミック体に成形された長柱状セラミック砥粒であることを特徴とする請求項1記載の切断砥石。
【請求項5】
前記アスペクト比の範囲について、中心のアスペクト比が、4から25の範囲にあることを特徴とする請求項4記載の切断砥石。
【請求項6】
前記長柱状砥粒の太さの範囲について、中心の太さが、50μmから1500μmの範囲にあることを特徴とする請求項5記載の切断砥石。
【請求項7】
前記砥粒が、前記長柱状セラミック砥粒と、溶融アルミナを粉砕して設けられた溶融粉砕砥粒とが混合されたものであることを特徴とする請求項6記載の切断砥石。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の切断砥石を製造する切断砥石の製造方法であって、前記長柱状砥粒の整列が、平行又は放射状に凹凸が設けられた円盤状の整列用型に、長柱状砥粒を含む材料を投入して振動を与えることでなされることを特徴とする切断砥石の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の切断砥石の製造方法によって成型されたシート状の砥石中間材の複数枚を、積層してプレスすることで一体化し、次いで熱硬化させることで、所要の厚さの切断砥石を製造することを特徴とする切断砥石の製造方法。
【請求項10】
複数枚の前記シート状の砥石中間材のうち少なくとも2枚について相互に角度をずらして積層することを特徴とする請求項9記載の切断砥石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砥粒が結合剤によって結合されて円板状に成型されていることで被加工物を切断するように設けられた切断砥石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砥粒が結合剤によって結合されている切断砥石では、被加工物を研削して切断する切刃に相当する砥粒と、その砥粒を保持する結合剤と、削り屑(切り屑)を除去するために必要な隙間である気孔という要素を備えている。この切断砥石によれば、研削作用によって被加工物を切断する際に、砥粒自体が欠けて破損することによって次々に新鮮な刃先を出現させて切れ味を維持し、その砥粒が消耗して結合剤による保持ができなくなると脱落し、次の砥粒が出るという現象(自生作用)を繰り返し生じさせている。このような切断砥石では、切れ味が良く効率的に被加工物の切断ができると共に、その使用寿命の長いものが要望されている。
【0003】
従来の切断砥石では、取付穴を有し、砥石部の使用限界よりも小さな外径を有する円形の金属製コア部と、砥粒と該砥粒を結合するための樹脂結合剤とを含んで金属製コア部と同様の厚みを成し、金属製コア部の外周部に接着剤等で固着された円環状のレジノイド砥石部とで切断砥石を形成し、砥石が消耗すればそれを除去することにより、金属コア部を再使用できる(特許文献1)ものが提案されている。
【0004】
また、従来の切断砥石では、バインダーおよび研磨粗粒から成る研磨物品であって、該研磨粗粒の少なくとも10重量%が研磨粒子であり、該研磨粒子の各々が表面および裏面を有し、該表面が実質上裏面と同じ幾何学形状を有し、該両方の面が該粒子の厚さにより分離されており、該粒子の最短面寸法:厚さの比が少なくとも1:1、2:1又は5:1であり、該研磨粒子の幾何学形状が三角形、角形、又は円形である(特許文献2)研磨物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-071724号公報(第1頁)
【特許文献2】特表平7-509508号公報(請求項18~23)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
切断砥石及びその製造方法に関して解決しようとする問題点は、その切れ味や使用寿命を向上させるために、切断砥石の全体形状を改良したものや、切断砥石の構成要素である砥粒の形状を改良したものが提案されているが、砥粒の形状及びその砥粒の配置をより合理的に改良することで、切れ味が良い状態を維持できて使用寿命を長くできるものが提案されていないことにある。
【0007】
そこで本発明の目的は、切れ味が良い状態を維持できて被加工物の切断が効率的にできると共に、使用寿命が長い切断砥石及びその製造方法をより合理的に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る切断砥石の一形態によれば、プレス成型と熱硬化によって、砥粒が結合剤によって結合されて円板状に形成されていることで被加工物を切断するように設けられた切断砥石において、前記砥粒の少なくとも一部が、長柱状に設けられて太さに対する長さの比が1対3以上であることによってアスペクト比が3以上に設けられた長柱状砥粒であり、該長柱状砥粒の少なくとも一部が、放射状又は平行に整列されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る切断砥石の一形態によれば、前記円板状の切断砥石における外周縁の少なくとも一部で、前記長柱状砥粒が、放射状又は平行に整列されていることを特徴とすることができる。
本発明に係る切断砥石の一形態によれば、前記円板状の切断砥石における厚さ方向の少なくとも一層の一部で、前記長柱状砥粒が、放射状又は平行に整列されていることを特徴とすることができる。
【0010】
本発明に係る切断砥石の一形態によれば、前記長柱状砥粒の少なくとも一部が、酸化アルミニウムを主成分とするアルミナ微粒子の集合体を焼成することで、長柱状のセラミック体に成形された長柱状セラミック砥粒であることを特徴とすることができる。
本発明に係る切断砥石の一形態によれば、前記アスペクト比の範囲について、中心のアスペクト比が、4から25の範囲にあることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明に係る切断砥石の一形態によれば、前記長柱状砥粒の太さの範囲について、中心の太さが、50μmから1500μmの範囲にあることを特徴とすることができる。
本発明に係る切断砥石の一形態によれば、前記砥粒が、前記長柱状セラミック砥粒と、溶融アルミナを粉砕して設けられた溶融粉砕砥粒とが混合されたものであることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明に係る切断砥石の製造方法の一形態によれば、前記長柱状砥粒の整列が、平行又は放射状に凹凸が設けられた円盤状の整列用型に、長柱状砥粒を含む材料を投入して振動を与えることでなされることを特徴とすることができる。
本発明に係る切断砥石の製造方法の一形態によれば、前記の切断砥石の製造方法によって成型されたシート状の砥石中間材の複数枚を、積層してプレスすることで一体化し、次いで熱硬化させることで、所要の厚さの切断砥石を製造することを特徴とすることができる。
本発明に係る切断砥石の製造方法の一形態によれば、複数枚の前記シート状の砥石中間材のうち少なくとも2枚について相互に角度をずらして積層することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の切断砥石及びその製造方法によれば、切れ味が良い状態を維持できて被加工物の切断が効率的にできると共に、その使用寿命を長くできるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る切断砥石の形態例を示す平面図である。
図2図1の形態例の断面図である。
図3図1の形態例の円周縁部の拡大断面図である。
図4】本発明に係る切断砥石の形態例を示す平面図である。
図5】本発明に係る切断砥石の形態例を示す平面図である。
図6】本発明に係る切断砥石の形態例を示す平面図である。
図7】本発明に係る切断砥石の形態例を示す平面図である。
図8】本発明に係る切断砥石の形態例を示す平面図である。
図9】本発明に係る切断砥石の形態例を示す平面図である。
図10】本発明に係る切断砥石の形態例を示す断面図である。
図11】本発明に係る切断砥石の形態例を示す断面図である。
図12】本発明に係る切断砥石の形態例を示す断面図である。
図13】本発明に係る切断砥石の製造方法の形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る切断砥石及びその製造方法の形態例を、図面(図1~12)に基づいて詳細に説明する。この切断砥石は、プレス成型と熱硬化によって、長柱状砥粒11を含む砥粒が結合剤12によって結合されて円板状に形成されていることで被加工物を切断するように設けられたものである。なお、この切断砥石は、回転駆動工具に、取付穴40が嵌められることで固定されて使用される。
【0016】
本発明に係る切断砥石は、砥粒の少なくとも一部が、長柱状に設けられて太さに対する長さの比が1対3以上であることによってアスペクト比が3以上に設けられた長柱状砥粒11であり、長柱状砥粒11の少なくとも一部が、放射状又は平行に整列されているように設けられている。なお、本発明に係る長柱状砥粒11の形態とは、例えば、円柱状、角柱状或いは多角形柱状などの軸心に直交するように破断した際の断面形状が一定の形状(円形や多角形など)になるものであり、押出し成型によって成型された後に焼成されて製造されるものを例に挙げることができる。
【0017】
本発明に係る切断砥石によれば、長柱状砥粒11が、その長柱状の形状から、研削作用によって被加工物を切断する際に、順次適切に欠けて破損することによって次々に新鮮な刃先を出現させて切れ味が良い状態を維持できて被加工物の切断が効率的にできると共に、使用寿命を長くすることができる。なお、従来の溶融アルミナを粉砕して設けられた一般的な溶融粉砕砥粒では、そのアスペクト比の大部分が、通常は1~2の範囲にあり、長短の方向性が明確にあるものではなく、本発明のような効果を得ることはできなかった。
【0018】
すなわち、本発明に係る切断砥石は、回転することによって、その外周縁20が被加工物に接触し、研削によって、その被加工物の切断をするものである。そして、この切断砥石は、被加工物を切断するものであるため、厚さの薄い円板状に形成されたドーナツ状の円板砥石部10を備えており、長柱状砥粒11は、その円板砥石部10の中において、柱が倒れた状態に配されて結合剤によって結着された形態になっている。
【0019】
つまり、長柱状砥粒11は、円板砥石部10の平面30に対して、起立する方向ではなくて、ほぼ平行に沿う方向に配された状態になっている。このように長柱状砥粒11が円板砥石部10の平面に沿う状態に配されているため、長柱状砥粒11の長尺方向の端縁である端縁部11aが、切断砥石(円板砥石部10)の外周縁20に露出し易く、研削による切断がなされる際に適切に欠け易い形態になっている。
【0020】
これによれば、その長柱状砥粒11の端縁部11aが、順次欠けて破損することによって次々に新鮮な刃先に更新でき、その長柱状砥粒11の長尺方向に順次欠けていくことによって、結合剤12による結合から脱落しないで長期に亘って刃先を更新できる形態になっている。これによって、切れ味が良い状態を維持できて被加工物の切断が効率的にできると共に、使用寿命を長くすることができる。
【0021】
そして、本発明に係る切断砥石では、図4~12に示すように、長柱状砥粒11の少なくとも一部が、放射状又は平行に整列されている。そして、本形態例に係る切断砥石では、前記円板状の切断砥石における外周縁の少なくとも一部で、長柱状砥粒11が、放射状(図4~6参照)又は平行(図7~9参照)に整列されている。また、本形態例に係る切断砥石では、前記円板状の切断砥石における厚さ方向の少なくとも一層の一部で、長柱状砥粒11が、放射状又は平行に整列されている(図10~12参照)。
【0022】
これによれば、長柱状砥粒11の配置について方向性が生じ、長柱状砥粒11が、被加工物に対して可及的に直角に接触し、その被加工物に係る切断がなされる。すなわち、長柱状砥粒11に方向性が生じることで、長柱状砥粒11の軸心線(長手方向の線分)が、被加工物に対して接触する角度が、直角又はそれに可及的に近い状態になる。このため、その長柱状砥粒11の端縁部11aが、順次欠けて破損することによって次々に新鮮な刃先に更新するという作用が起こり易くなり、前述の効果がより生じ易くなる。つまり、本発明のように長柱状砥粒11を前述のように整列させることで、切れ味が良い状態をより適切に維持できて被加工物の切断がより効率的にできると共に、使用寿命をより長くすることができるという効果を得ることができる。なお、この効果は、長柱状砥粒11を切断砥石(円板砥石部10)の全面に整列した場合に最も高くなるが、一部について整列した場合にもその効果が生じることは勿論である。
【0023】
以下、図4~12に基づいて、長柱状砥粒11の整列形態の具体例について説明する。
図4に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)のほぼ全面について、円板砥石部10の中心を基点として放射状に可及的に整列されたものであり、最も効果的な形態になっている。
【0024】
図5に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)の外周縁の全周について、円板砥石部10の中心を基点として放射状に可及的に整列されたものである。これによれば、切断砥石として周速が速く最も効率的に切断作業を行うことができる部分に、長柱状砥粒11を効果的に配置できるメリットがある。
【0025】
図6に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)の外周縁の全周を除いた内周側の部分に、円板砥石部10の中心を基点として放射状に可及的に整列されたものである。これによれば、切断砥石として効率的に作業を行うことが徐々にできなくなる円板砥石部10の内周側の部分(形状的なデメリットがある部分)に、長柱状砥粒11を放射状に配置することになり、その形状的なデメリットを補ってその性能を維持できるメリットがある。
【0026】
図7に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)のほぼ全面について、平行に可及的に整列されたものである。そして、この図7の形態例は、図面上において、円板砥石部10の上下の部分では長柱状砥粒11の軸心線が上下方向に沿うように平行に配置され、円板砥石部10の左右の部分では長柱状砥粒11の軸心線が左右方向に沿うように平行に配置されており、二方向に整列された形態となっている。これによれば、長柱状砥粒11が放射状に配列された場合に準ずる効果を得ることができる。
【0027】
図8に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)のほぼ全面について、平行に且つ一方向に可及的に整列されたものである。この形態例によれば、図7の形態例に比べて、前述した切断効果は少し劣ることになるが、製造し易いというメリットがある。また、図9に記載の形態例は、図8に示すように長柱状砥粒11が配されると共に、従来のアスペクト比が小さい砥粒(例えば、溶融粉砕砥粒13)を混合した状態を示している。
【0028】
また、図10~12では、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)における厚さ方向に複数層(本形態例では、三層)に整列されている形態例を示しており、より多くの層で整列されることで、前述した切断効果を向上できる。
図10に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)における厚さ方向の三層で整列されている。
図11に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)における厚さ方向の三層のうち二層(本形態例では、厚さ方向の中間の層を除いた二層)で整列されている。
図12に記載の形態例は、長柱状砥粒11が、切断砥石(円板砥石部10)における厚さ方向の三層のうち厚さ方向の中間の層で整列されている。
【0029】
また、本発明に係る形態例では、長柱状砥粒11の少なくとも一部が、酸化アルミニウムを主成分とするアルミナ微粒子の集合体を焼成することで、長柱状のセラミック体に成形された長柱状セラミック砥粒であるように設けられている。この長柱状セラミック砥粒は、焼成して形成される砥粒としては、多角形で軸方向に薄い形態のものと比較して安価に製造できる形態になっている。なお、この長柱状砥粒11を形成するための原料としてのアルミナ微粒子は、その粒径の範囲について、中心の粒径が、50nmから100nmの範囲にあるものを用いることができる。
【0030】
これによれば、長柱状砥粒11の一種であって、より効果的な長柱状セラミック砥粒を適切に設けることができる。この長柱状セラミック砥粒によれば、前述のように研削による切断がなされる際に、順次より適切に欠けて破損でき、切断砥石切れ味が良い状態を維持できて被加工物の切断がより効率的にできると共に、使用寿命より長期化することができる。なお、従来の溶融アルミナを粉砕して設けられた溶融粉砕砥粒などであっても、そのアスペクト比が3以上の範囲にあり、長短の明らかな方向性があるものでは、本発明のような効果を得ることができるのは勿論である。
【0031】
また、砥粒の全体重量に対する長柱状砥粒11の混合率は、高いほど前述した効果が高まることになるが、少なくとも20%以上になると明らかな効果が生じ、50%以上になると顕著な効果を生じる。なお、長柱状砥粒11は、コストが高くなるため、費用対効果を考えると、その混合率が、一例として40~60%程度の範囲で最も優れた効果を発揮できる。
【0032】
さらに、本発明に係る形態例では、長柱状砥粒11の柱状の太さに対する長さの比であるアスペクト比の範囲について、中心のアスペクト比が、4から25の範囲にあることで、より性能を向上できる。
【0033】
すなわち、長柱状砥粒11の柱状の太さに対する長さの比であるアスペクト比が、大きいほど、前述したように、長柱状砥粒11の長尺方向に順次欠けていくことによって、脱落しないで長期に亘って刃先を更新できるため、使用寿命を長期化できるメリットがある。しかしながら、長柱状砥粒11は、アスペクト比が極端に大きくなると、円板状に成型される製造工程で圧力がかかるため長尺方向で折れやすく、また、絡みつき易くなり、均一に分散させることが難しくなることから、そのアスペクト比が適切な範囲にあることが好ましい。
【0034】
また、本発明に係る形態例では、長柱状砥粒11の太さの範囲について、中心の太さが、50μmから1500μmの範囲にあることで、より性能を向上できる。
【0035】
すなわち、本発明に係る切断砥石は回転して被加工物を切断するものであるため、円板砥石部10の厚さは、例えば1mmから5mm(1000μmから5000μm)程度に薄く設けられており、長柱状砥粒11は、その円板砥石部10の中において、柱が倒れた状態に配されて結合剤によって結着された形態になっている。このため、長柱状砥粒11の太さが50μmから1500μmの範囲にあることで、その長柱状砥粒11を厚さ方向に複数の層状に合理的に配することができ、研削による切断性能を高めることができる。
【0036】
また、本発明に係る形態例では、図9に示すように、砥粒が、長柱状砥粒11である長柱状セラミック砥粒と、溶融アルミナを粉砕して設けられた溶融粉砕砥粒とが混合されたものであることで、研削による切断性能が高く費用対効果が優れた切断砥石を構成できる。
【0037】
すなわち、長柱状セラミック砥粒を、溶融粉砕砥粒が介在することで効果的に分散させることができると共に、溶融粉砕砥粒が長柱状セラミック砥粒の粒子同士の間隙を好適に埋めることができ、研削による切断性能を向上でき、費用対効果に優れた切断砥石を構成できる。
【0038】
次に、本発明に適用される切断砥石の基本的な製造方法について説明する。なお、この切断砥石の製造方法は、従来の方法と実質的に同等の方法になっている。
先ず、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂)、熱可塑性樹脂などから成る粉末状及び液状の結合剤12の原料によって、少なくとも所要の分量の長柱状砥粒11を含む砥粒の表面をコーティングする。これによれば、砥粒に粉末状の結合剤の原料がまぶされた状態になり、熱硬化性樹脂が熱硬化した際に適切に気孔が形成されるようになっている。
【0039】
次に、その熱硬化性樹脂で表面がコーティングされた砥粒を、成形型に入れて所要の圧力をかけることで圧着状態として円板状に成型する。
そして、所要の温度(例えば180℃)で加熱して焼成することで、熱硬化性樹脂が、硬化することによって砥粒を固定する結合剤12になり、適度に気孔が設けられた状態で、切断砥石が完成される。
【0040】
次に、本発明に係る長柱状砥粒11を放射状や平行に整列させる切断砥石の製造方法について説明する。
前述したような長柱状砥粒11の整列は、振動を用いて行うことができると共に、凹凸が設けられた成形型を用いて行うことができる。また、この長柱状砥粒11の整列は、振動と前記成形型とを同時に用いて行うことができる。
【0041】
つまり、本発明に係る切断砥石の製造方法の一例によれば、長柱状砥粒11の整列が、例えば平行又は放射状に凹凸が設けられた円盤状の整列用型(金型)に、長柱状砥粒を含む材料が投入されて振動が与えられることでなされる。これによれば、少なくとも円盤状の金型の凹凸の面に接した一層については、長柱状砥粒11がその凹凸の凹部に入って安定するため、その長柱状砥粒11を確実に平行又は放射状に配列することができる。
【0042】
そして、本発明に係る切断砥石の製造方法の一例によれば、前記の切断砥石の製造方法によってプレス成型されたシート状の砥石中間材15の複数枚が、積層されてさらにプレスされることで圧着されて一体化され、次いで熱硬化されることで、所要の厚さの切断砥石を製造することができる。すなわち、例えば、熱硬化性樹脂で表面がコーティングされた長柱状砥粒11の直径に対応する厚さであって、前記金型の凹凸の面に接してプレス成型された一層によって構成されるシート状の砥石中間材15を一枚として、そのシート状の砥石中間材15の複数枚を重ねて貼り合わせる状態に積層し、所望の厚さの切断砥石を製造することができる。これによれば、各層の長柱状砥粒11が適切に配列された状態の切断砥石を形成でき、その切断砥石の切断性能を向上させることができる。
【0043】
また、本発明に係る切断砥石の製造方法の一例によれば、複数枚のシート状の砥石中間材15を積層する際に、少なくともその2枚について、各層を相互に角度をずらして積層することができる。すなわち、図13に示すように、下層から上層へ順に複数枚のシート状の砥石中間材15を貼り合わせるように重ねる際に、切断砥石の回転軸の中心を基準として、少なくとも隣り合って重なり合う2枚のシート状の砥石中間材15について、相互間の回転方向の角度をずらして積層することで、所望の厚さで長柱状砥粒11が合理的に配列された状態の切断砥石を形成することができる。
【0044】
より具体的には、長柱状砥粒11が放射状に整列される場合は、その放射状に配された長柱状砥粒11同士の間の1ピッチの半分を、シート状の砥石中間材15の層間でずらすことで、平面視で、一の層の長柱状砥粒11と長柱状砥粒11との間に、次の層の長柱状砥粒11を置く状態に配置することができ、切断性能を向上できる。また、図13のように長柱状砥粒11が平行に整列される場合は、シート状の砥石中間材15を積層する際に各層を例えば1°~90°の角度範囲でずらせば良く、切断性能を向上できる。
【0045】
次に、切断砥石の具体的な形態例として、以下に実施例(1~4)を示す。
[実施例1]
アスペクト比1:5を80%以上含む長柱状セラミック砥粒(粒度F60)を使用し、結合材としては液状フェノール樹脂及び粉末状フェノール樹脂を、無機充填材としてはクレオライトを採用した。このコーティングされた砥粒を、放射状に凹凸が設けられた円板状の金型に投入し、砥粒を放射状に配置した外径105mm、厚さ1.0mmの切断砥石を得た。
【0046】
[実施例2]
アスペクト比1:5を80%以上含む長柱状セラミック砥粒(粒度F60)を50%、アルミナ砥粒(粒度F60)を50%の比率にて使用し、結合材としては液状フェノール樹脂及び粉末状フェノール樹脂を、無機充填材としてはクレオライトを採用した。これらのコーティングされた砥粒を、放射状に凹凸が設けられた円板状の金型に投入し、砥粒を放射状に配置した外径105mm、厚さ1.0mmの切断砥石を得た。
【0047】
[実施例3]
アスペクト比1:5を80%以上含む長柱状セラミック砥粒(粒度F60)を使用し、結合材としては液状フェノール樹脂及び粉末状フェノール樹脂を、無機充填材としてはクレオライトを採用した。このコーティングされた砥粒を、放射状に凹凸が設けられた円板状の金型に投入し、砥粒を砥石平面と平行に配置した外径105mm、厚さ0.4mmのシート15を得た。このシート15を下に敷いたシートの砥粒と砥粒の間に次に置くシートの砥粒が来るようにずらし、4枚積層しプレスを行い、厚さ1.5mmの切断砥石を得た。
【0048】
[実施例4]
アスペクト比1:5を80%以上含む長柱状セラミック砥粒(粒度F60)を使用し、結合材としては液状フェノール樹脂及び粉末状フェノール樹脂を、無機充填材としてはクレオライトを採用した。このコーティングされた砥粒を、平行に凹凸が設けられた円板状の金型に投入し、砥粒を砥石平面と平行に配置した外径105mm、厚さ0.4mmのシート15を得た。このシート15を、例えば図4に示すように、隣り合う層間で45°ずらして4枚積層しプレスを行い、厚さ1.5mmの切断砥石を得た。
以上のいずれの実施例についても、切断性能を向上できる。
【0049】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0050】
10 円板砥石部
11 長柱状砥粒
11a 端縁部
12 結合剤
13 溶融粉砕砥粒
15 シート(シート状の砥石中間材)
20 外周縁
30 平面
40 取付穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図11
図12
図13