(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057538
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】測量用ターゲット
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160120
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021166988
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】須田 生史
(72)【発明者】
【氏名】金田 潤太
(57)【要約】
【課題】測量機の自動視準の視準光束を満たす状態を可能とし、測定対象物を連続的に捕捉を可能とする測量用ターゲットを提供する。
【解決手段】測量対象物に設けられ、測量機の自動視準機能より入射した光を入射方向に反射する測量用ターゲットであって、方形の平板状に形成され、一面側に前記測量対象物に向けて取り付けられる取付面と、他面側に前記光が照射される照射面とを備え、取付面は、平面状とされ、照射面は、取付面を形成し、直交する一つの辺々にx軸及びy軸と、x軸及びy軸に直交するz軸を設定したときに、z軸に対して法線が傾斜する傾斜平面部を備え、傾斜平面部が再帰反射性を有する構成とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量対象物に設けられ、測量機の自動視準機能より入射した光を入射方向に反射する測量用ターゲットであって、
方形の平板状に形成され、一面側に前記測量対象物に向けて取り付けられる取付面と、
他面側に前記光が照射される照射面とを備え、
前記取付面は、平面状とされ、
前記照射面は、
前記取付面を形成し、直交する一つの辺々にx軸及びy軸と、x軸及びy軸に直交するz軸を設定したときに、
前記z軸に対して法線が傾斜する傾斜平面部を備え、
前記傾斜平面部が再帰反射性を有することを特徴とする測量用ターゲット。
【請求項2】
前記照射面は、x軸及びy軸に沿って同数で区画され、区画毎に前記傾斜平面部を備えることを特徴とする請求項1に記載の測量用ターゲット。
【請求項3】
前記照射面は、前記z軸に対して傾斜する法線が、互いに異なる方向に傾斜する複数の傾斜平面部を有することを特徴とする請求項2に記載の測量用ターゲット。
【請求項4】
各区画に設けられた前記傾斜平面部の中心が、一つの平面上に位置するように形成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の測量用ターゲット。
【請求項5】
前記複数の傾斜平面部のうち、法線が同一方向に傾斜する傾斜平面部は、前記照射面の中心について点対称、又は、前記照射面の中心を通過するx軸に平行な直線、若しくはy軸に平行な直線を対称線として前記区画に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の測量用ターゲット。
【請求項6】
前記取付面及び前記傾斜平面部は、樹脂を素材として一体的に構成され、
前記傾斜平面部に再帰反射性を有するシートを貼付して構成された請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の測量用ターゲット。
【請求項7】
前記取付面は、前記測定対象物に固定するための固定手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の測量用ターゲット。
【請求項8】
前記照射面は、前記傾斜平面部に平板状の再帰反射性を有する反射材を貼付して構成された請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の測量用ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量用ターゲットに関し、特に、測量機の自動視準に好適な測量用ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
測地測量、土木工事測量及び建築測量では、測定対象物の目標位置に、反射度の大きい反射シートや三角プリズム等の標的(ターゲット)を配置し、自動視準機能を有する測量機によりターゲットから反射された光を自動的に捕捉することでなされている。反射された光の強度は、目標物に対する視準線と、反射シートの反射面又はプリズム面とのなす角度により左右される。例えば、自動視準可能な角度は、反射シートでは約±20°、三角プリズムで約±20°の範囲がそれぞれ限界とされている。このため、近年では、特許文献1に開示されるような、全方向、360°の角度において自動視準可能な三角プリズムを主体とするターゲット装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動視準可能な三角プリズムを主体とするターゲット装置は、非常に高価であり、破損しやすい構造となっており、取り扱いに注意が必要とされる。また、反射シートや三角プリズムは、前述のように自動視準可能な範囲に制限があるため、自動視準機能を生かすには、測量機械の位置を都度変更する必要が生じていた。測量機械の位置を変更する都度、測量機械の運搬、組み立て、整準操作などの作業が発生し、測定対象物の連続的な捕捉を阻害している。
本発明は、上記問題を解決するために、測量機の自動視準の視準光束を満たす状態を可能とし、測定対象物を連続的に捕捉を可能とする測量用ターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための測量用ターゲットの構成として、測量対象物に設けられ、測量機の自動視準機能より入射した光を入射方向に反射する測量用ターゲットであって、方形の平板状に形成され、一面側に前記測量対象物に向けて取り付けられる取付面と、他面側に前記光が照射される照射面とを備え、取付面は、平面状とされ、照射面は、取付面を形成し、直交する一つの辺々にx軸及びy軸と、x軸及びy軸に直交するz軸を設定したときに、z軸に対して法線が傾斜する傾斜平面部を備え、傾斜平面部が再帰反射性を有する構成とした。
本構成によれば、傾斜平面部を測量機に向けて測定対象物に取り付けることにより、測量機の位置の変更を少なくし、測定対象物の連続的な捕捉を可能とすることができる。
また、照射面は、x軸及びy軸に沿って同数で区画され、区画毎に傾斜平面部を備えることにより、1つのターゲットによって、設置できる方向角の範囲及び仰伏角の範囲を広げることが可能とされる。その結果、測量機の自動視準により捕捉可能な範囲が広がり、自動視準による連続的な測量を可能とすることができる。
また、照射面は、z軸に対して傾斜する法線が、互いに異なる方向に傾斜する複数の傾斜平面部を有することにより、複数の方向角や仰伏角に対応することができる。
また、各区画に設けられた前記傾斜平面部の中心が、一つの平面上に位置するように形成されたことにより、照射面部における凹凸状態を平均化することができ、一つ箇所からの測量において、ターゲットを設置できる方向角の範囲及び仰伏角の範囲を広げることができ、多くの測量位置について連続的な測量が可能とされる。
また、複数の傾斜平面部のうち、法線が同一方向に傾斜する傾斜平面部は、照射面の中心について点対称、又は、前記照射面の中心を通過するx軸に平行な直線、若しくはy軸に平行な直線を対称線として区画に設けられていることにより、測量点を精度良く特定することができる。
また、取付面及び傾斜平面部が、樹脂を素材として一体的に構成され、傾斜平面部に再帰反射性を有するシートを貼付して構成されたことにより、安価で軽くすることができる。
また、取付面が、測定対象物に固定するための固定手段を備えることにより、測量用ターゲットの設置作業を容易にすることができる。
また、照射面は、前記傾斜平面部に平板状の再帰反射性を有する反射材を貼付して構成されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本実施形態に係るターゲットの一例を示す斜視図である。
【
図3】3つの測定対象物を測量する場合の平面図である。
【
図4】
図3に示す測定対象物において測定位置に仰伏角が生じる場合の測量を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るターゲットの他の実施形態を示す図である。
【
図6】
図4に示した3つの測定対象物において、それぞれ上下方向に3箇所の計9箇所を測量する場合の斜視図である。
【
図12】ターゲットの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【0008】
図1は、測量の様子を示す概略図である。1は、測量用ターゲット(以下、単にターゲットという)、2は、従来の反射シート、4は、測量機(以下、測量機という)、6は、測定対象物である。以下の説明では、測量機4は、自動視準機能を有しているものとして説明する。
ターゲット1は、測定対象物6とされる柱や、鉄骨等の構造物に取り付けられ、測量機4の自動視準機能により検出可能に設けられる。
【0009】
図2は、本実施形態に係るターゲット1の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、ターゲット1は、平面視において正方形状の板状に形成され、例えば、基板8と、反射体14とで構成することができる。基板8は、例えば、樹脂材、ポリエチレン材等を素材とし、例えば、3Dプリンター等を用いて形成することができる。これにより、ターゲット1を安価に、かつ軽量に製造することができる。基板8は、測定対象物6に取り付けるための取付部10、測量機4からの光が照射される照射面部12とが設けられる。
【0010】
取付部10は、例えば、平面状に形成され、両面テープやマグネット、接着剤等の固定手段を介して測定対象物6に取り付け可能とされる。固定手段に両面テープやマグネットを用いる場合、ターゲット1が、取付部10に両面テープやマグネットを予め備えておくことにより、ターゲット1の設置作業を容易にすることができる。
【0011】
図2に示すように、照射面部12は、取付部10の平面を基準平面とした場合、この基準平面の法線N1に対し、法線N2が傾斜する傾斜平面13として構成される。傾斜平面13は、取付部10をなす正方形状の一つの直交する辺々に座標軸、x軸及びy軸、x軸及びy軸と直交するz軸(基準平面の法線N1)を設定したときに、法線N2がy軸周りにのみ回転するように形成される。即ち、照射面部12は、取付部10に設定したx軸又はy軸に対し、一方向に傾斜するように構成されている。
【0012】
反射体14は、傾斜平面13に設けられる。反射体14は、再帰反射構造を有し、入射した光を入射方向に反射可能に構成される。即ち、反射体14は、光源から受けた光をそのまま光源にはね返すように構成される。反射体14には、例えば、従来の測量時に使用されるシート状に形成された反射材が貼り付けられている。反射体14は、傾斜平面の法線N2方向を主たる反射方向とし、所定範囲での入射角に対して再帰反射を許容する。
なお、以下の説明では、傾斜平面13は、反射体14と一体で傾斜平面部を構成するものとし、この部位について単に傾斜平面13等として示す。
【0013】
図3は、測量の一例として、3つの測定対象物6A~6Cを測量する場合の平面図である。なお、ここで説明する測量では、方向角のみによりなされるものとし、各測定対象物6A~6Cに対して仰伏角(上下方向や単に上下等という場合がある)について測量機4の自動視準可能な範囲にターゲット1が取り付けられているものとする。
【0014】
図3において、測定対象物6Aは測量機4に対して正対とされる位置にあり、測定対象物6Bは測量機4に対して左側、測定対象物6Cは測量機4に対して右側の、反射シートや三角プリズムでは自動視準不可能な範囲に位置している。
【0015】
このような場合、測定対象物6Aには、従来の反射シートや三角プリズムを用いることができる。一方、測定対象物6B;6Cには、従来の反射シートや三角プリズムを用いることができない。そこで、
図2に示すように構成されたターゲット1を測定対象物6B;6Cに取り付けることで、測量機4を移動させることなく、測定対象物6A~6Cの連続的な捕捉が可能とされる。
【0016】
ターゲット1は、取付部10に設定したx軸又はy軸が水平または垂直となるように測定対象物6B;6Cに取り付けられる。そして、測量機4から見て左側に位置する測定対象物6Bに、傾斜平面13が測量機4を向くようにターゲット1を取り付け、右側に位置する測定対象物6Cに傾斜平面13が測量機4を向くように取り付ければ良い。このとき、ターゲット1の取付部10に対する傾斜平面13の傾斜する角度(取付部10の法線N1に対して照射面部12の法線N2が傾斜する角度)は、測量機4の自動視準機能により測量機4から出射される光が、照射面部12に自動視準可能な光束を反射する範囲に含まれるように設定されていれば良い。
【0017】
図4は、
図3に示す測定対象物6Aにおいて測定位置に仰伏角が生じる場合の測量を示す図である。
図2に示すターゲット1は、測定する位置が自動視準可能な範囲を上下(仰伏角)方向に超えた位置に設定された場合にも適用することができる。この場合、
図4に示すように、測量機4に正対する測定対象物6Aにおいて、測定位置が上方の場合には、傾斜平面13が下を向くように測定対象物6Aに取り付け、測定位置が下方の場合には傾斜平面13が上を向くように測定対象物6Aに取り付ければ良い。
【0018】
図5は、ターゲット1の他の実施形態を示す図である。
図2では、照射面部12の全体を、一方向に傾斜する傾斜平面13として構成し、この傾斜平面13にシート状の反射体14を備えるように構成したがこれに限定されない。ターゲット1は、例えば、
図5に示すように、照射面部12が二方向に傾斜する傾斜平面13として構成しても良い。二方向に傾斜するとは、測量時に、仰伏角(上下)に加え、方向角(左右方向や単に左右等という場合がある)についても対応可能に構成することを言う。ターゲット1は、x軸又はy軸が、上下方向或いは左右方向となるように設置される。
【0019】
図5(a)に示すように、照射面部12は、例えば、取付部10の平面を基準平面とした場合、この基準平面の法線N1に対し、法線N3が2方向について傾斜する傾斜平面20として形成されている。詳細には、傾斜平面20は、取付部10の法線N1に対し、x軸及びy軸周りに法線N3が所定角度回転し、基準平面に対して交差するように形成しても良い。
【0020】
また、
図5(b)に示すように、傾斜平面22は、
図5(a)に示した法線N3のy軸周りについての回転方向と、逆向きに回転した法線N4となるように形成しても良い。
【0021】
図6は、
図3に示した3つの測定対象物6A~6Cにおいて、それぞれ上下方向に3箇所の計9箇所を測量する場合の斜視図である。なお、以下の説明では、
図2及び
図5(a),(b)に示したターゲット1を区別するために、
図2に示すターゲット1を1-1、
図5(a)に示すターゲット1を1-2、
図5(b)に示すターゲット1を1-3等として符号を付した。
【0022】
この場合、まず、測量機4に正対する測定対象物6Aの上下方向中央の測定位置に、従来の反射シートを取り付ける。
さらに、ターゲット1-1を、測量機4に正対する測定対象物6Aの上側及び下側の測定位置に、測量機4から見て左側に位置する測定対象物6Bの上下方向中央の測定位置に、測量機4から見て右側に位置する測定対象物6Cの上下方向中央の測定位置に、照射面部12が測量機4を向くように取り付ける。
また、ターゲット1-2を、測量機4から見て左側に位置する測定対象物6Bの上側の測定位置、測量機4から見て右側に位置する測定対象物6Cの下側の測定位置に、照射面部12が測量機4を向くように取り付ける。
また、ターゲット1-3を、測量機4から見て左側に位置する測定対象物6Bの下側の測定位置、測量機4から見て右側に位置する測定対象物6Cの上側の測定位置に、照射面部12が測量機4を向くように取り付ける。
このとき、ターゲット1-1、1-2、1-3の取付部10に対する照射面部12の取付部10に対して傾斜する角度は、測量機4の自動視準機能により測量機4から出射される光が、照射面部12に自動視準可能な光束を反射する範囲の角度を有するように設定されていれば良い。
【0023】
このように、測量機4が、一つ位置から複数の測定位置を自動的に視準できるように、取付部10に対して照射面部12の傾斜する角度及び方向が異なる複数のターゲット1(1-1、1-2、1-3)を用いることで、測量機4の位置を動かすことなく、連続的な測量を可能とすることができる。
【0024】
上記実施形態では、一つのターゲット1の照射面部12を一つの傾斜平面により形成するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、前述のように、取付部10に対して照射面部12の傾斜する角度及び方向が異なる複数のターゲット1(1-1、1-2、1-3)を、一つに纏めても良い。
【0025】
この場合、例えば、一つのターゲットの照射面部12をx軸方向、y軸方向に均等な間隔で同じ数で区画するようにすると良い。
【0026】
図7は、ターゲット1の他の実施形態を示す図である。詳細には、
図7(a)は、ターゲット1をx軸方向、y軸方向に2区画し、
図5に示すターゲット1-2,1-3のそれぞれについて照射面部12の中心O周りに点対称に配置されるように、
図5(a)に示すターゲット1-2の傾斜平面20を左上と右下に、
図5(b)に示すターゲット1-3の傾斜平面22を左下と右上に形成して構成したものである。また、
図7(b)は、
図5に示すターゲット1-2,1-3のそれぞれが照射面部12の中心Oを通るx軸と平行な直線と線対称に配置されるように、
図5に示すターゲット1-2,1-3が左右に配置されるように、ターゲット1-2の傾斜平面20を左上と左下に、
図5(b)に示すターゲット1-3の傾斜平面22を右上と右下に形成して構成したものである。また、
図7(c)は、
図5に示すターゲット1-2,1-3のそれぞれが照射面部12の中心Oを通るy軸と平行な直線と線対称に配置されるように、
図5に示すターゲット1-2,1-3が上下に配置されるように、ターゲット1-2の傾斜平面20を左上と右上に、
図5(b)に示すターゲット1-3の傾斜平面22を左下と右下に形成して構成したものである。
これにより、
図6に示す測量において、測定対象物6Bの上側の測定位置に取り付けたターゲット1-2と、測定対象物6Cの上側の測定位置に取り付けたターゲット1-3を共通化することができる。
自動視準により、紙面右下側からターゲット1に照射された光は傾斜平面20;20により反射され、紙面左下側から照射された光は傾斜平面22;22により反射される。傾斜平面20;20は、中心Oを挟んで点対象の位置にあるため、この傾斜平面20;20から反射し、測量機4に入射した光(光束)の中心を測量機4の自動視準の機能によって分析することにより、ターゲット1のうちのどこを測定したのか、即ち、測量点をターゲット1の中心Oとすることができる。
同様に、傾斜平面22;22についても、測量点をターゲット1の中心Oとすることができる。
【0027】
図8は、ターゲット1の他の実施形態を示す図である。
また、
図6に示す測量において、測定対象物6Bの上側の測定位置及び測定対象物6Cの下側の測定位置に取り付けたターゲット1-2と、測定対象物6Bの下側の測定位置及び測定対象物6Cの上側の測定位置に取り付けたターゲット1-3とを一つのターゲット1で構成しても良い。測定対象物6Bの上側の測定位置及び測定対象物6Cの下側の測定位置に取り付けたターゲット1-2は、z軸周りに180°回転して配置した関係にある。また、測定対象物6Bの下側の測定位置及び測定対象物6Cの上側の測定位置に取り付けたターゲット1-3は、z軸周りに180°回転して配置した関係にある。
このため、これらの関係を一つに纏めるには、測定対象物6B及び6Cに取り付けられたターゲット1-2及びターゲット1-3の傾斜平面のすべての向きを包含するように、ターゲット1を構成すれば良い。
【0028】
以下の説明では、傾斜平面の向きを特定するために、測定対象物6Bの上側の測定位置に取り付けたターゲット1-2の傾斜平面20の向きと同じ向きの傾斜平面を傾斜平面20Aとし、測定対象物6Cの下側の測定位置に取り付けたターゲット1-2の傾斜平面の向きと同じ向きの傾斜平面を傾斜平面20Bとし、測定対象物6Bの下側の測定位置に取り付けたターゲット1-3の傾斜平面22の向きと同じ向きの傾斜平面を傾斜平面22Aとし、測定対象物6Cの上側の測定位置に取り付けたターゲット1-3の傾斜平面の向きと同じ向きの傾斜平面を傾斜平面22Bとして示す。
【0029】
図8に示すターゲット1は、照射面部12をx軸方向及びy軸方向にそれぞれ均等な間隔で4つに区画したものである。各区画には、互いに法線の傾斜する方向が異なる傾斜平面20A;20B;22A;22B及び平面部30を備えるように構成されている。平面部30は、傾斜平面20A;20B;22A;22Bと同様に反射体14が設けられ、従来の反射シートと同様に機能する。
【0030】
傾斜平面20Aは、照射面部12の中心O側の左上の区画と、右下の区画に設けられ、傾斜平面22Aは、照射面部12の中心O側の左下の区画と、右上の区画に設けられ、傾斜平面20Bは、照射面部12の外側の右上の区画と、左下の区画に設けられ、傾斜平面22Bは、照射面部12の外側の左上の区画と、右下の区画に設けられている。また、平面部30は、それらの区画の間に設けられている。
【0031】
このようにターゲット1を構成することにより、
図6に示す測量において、測定対象物6Bの上側の測定位置、及び測定対象物6Cの下側に取り付けたターゲット1-2と、測定対象物6Bの下側の測定位置、及び測定対象物6Cの上側の測定位置に取り付けたターゲット1-3を共通化することができるとともに、平面部30を備えたことにより、測量機4に正対するターゲット2とを共通化することができる。
【0032】
紙面右下側から照射された光は、傾斜平面20A;20Aにより反射され、紙面左下側から照射された光は、傾斜平面22A;22Aにより反射される。また、紙面左上側から照射された光は、傾斜平面20B;20Bにより反射され、紙面右上側から照射された光は、傾斜平面22B;22Bにより反射される。そして、正対して照射された光は、複数の平面部30により反射される。
【0033】
傾斜平面20A;20A、傾斜平面20B;20B、傾斜平面22A;22A、傾斜平面22B;22Bは、それぞれ照射面部12の中心Oと点対称の関係にあり、複数の平面部30は、照射面部12の中心Oを通過するx軸に平行な直線、若しくはy軸に平行な直線を対称線として線対称の関係にあることから、測量機4に入射した光の中心を、測量機4において分析することにより、測量点がどこであるのかを特定することができる。その結果精度良く測量することができる。
【0034】
図8に示すように、複数の傾斜平面及び平面部で照射面部12を構成する場合、各傾斜平面20A;20B;22A;22B、及び平面部30の中心cが、同一平面上に位置するようにターゲット1に設けるとよい。即ち、取付部10から各傾斜平面20A;20B;22A;22B、及び平面部30の中心cまでの厚み(最短距離)が一定となるように、各傾斜平面20A;20B;22A;22B、及び平面部30を設けると良い。
【0035】
このように、ターゲット1において各傾斜平面20A;20B;22A;22B、及び平面部30を形成することにより、照射面部12における凹凸状態を平均化することができ、一つ箇所からの測量において、ターゲット1を設置できる方向角の範囲及び仰伏角の範囲を広げることができ、多くの測量位置について連続的な測量が可能とされる。
【0036】
なお、上記実施形態では、照射面部12をx軸、y軸方向に2つや4つに区画し、各区画に法線が異なる方向に延長する傾斜平面や平面を設けたが、照射面部12を区画する数は、2つや4つに限定されず、それ以上の偶数や、3以上の奇数の同数で区画しても良い。
【0037】
図9は、ターゲット1の他の実施形態を示す図である。
図9に示すターゲット1は、照射面部12をx軸方向及びy軸方向にそれぞれ均等な間隔で5つ(奇数)で区画したものである。各区画には、互いに法線の傾斜する方向が異なる5種類の傾斜平面24;26A;26B;28A;28Bを備えるように構成されている。傾斜平面24は、伏角のみが設定され、傾斜平面26Aは、右下を向くように方向角及び伏角が設定され、傾斜平面28Aは、傾斜平面26Aよりも右下を向く方向角及び伏角が大きく設定され、傾斜平面26Bは、左下を向くように方向角及び伏角が設定され、傾斜平面28Bは、傾斜平面26Bよりも左下を向く方向角及び伏角が大きく設定されたものである。
【0038】
図9に示すように、ターゲット1は、傾斜平面24が照射面部12の中央に形成され、傾斜平面26Aが傾斜平面24のx軸方向及びy軸方向に隣接して4箇所に形成され、傾斜平面26Bが傾斜平面24の対角上において隣接するように4箇所に形成されている。また、傾斜平面28Bがターゲット1の4隅及びそのx軸、若しくはy軸方向に沿う中間の8箇所に形成され、傾斜平面28Aが傾斜平面28Bの間を埋めるようにターゲット1の外周の8箇所に形成されている。
【0039】
傾斜平面26A;26B;28A;28Bは、それぞれx軸及びy軸に対称となるように形成されている。
このように傾斜平面26A;26B;28A;28Bを配置することにより、測量点の位置精度を向上させることができる。例えば、傾斜平面26Aは、傾斜平面24のx軸方向及びy軸方向に隣接して4箇所に形成されていることから、その配置の図芯が照射面部12の中心Oとされる。また、傾斜平面26Bは、傾斜平面24の対角上において隣接するように4箇所に形成されていることから、その配置の図芯が照射面部12の中心Oとされる。また、傾斜平面28Bは、ターゲット1の4隅及びそのx軸、若しくはy軸方向に沿う中間の8箇所に形成されていることからその配置の図芯が照射面部12の中心Oとされる。また、傾斜平面28Aは、傾斜平面28Bの間を埋めるようにターゲット1の外周の8箇所に形成されていることから、その配置の図芯が照射面部12の中心Oとされる。
【0040】
ターゲット1は、照射面部12の区画数を多くすることにより、各区画に取付部10の法線(z軸)に対して傾斜する傾斜平面の法線が、互いに異なる方向に傾斜する複数の傾斜平面部を設定することができるので、ターゲットの種類を少なくできるとともに、1つのターゲットによって、設置できる方向角の範囲及び仰伏角の範囲を広げることが可能となる。その結果、測量機の自動視準により捕捉可能な範囲が広がり、自動視準による連続的な測量を可能とすることができる。
【0041】
また、各区画に形成される複数の傾斜平面のうち、法線が同一方向に傾斜する傾斜平面を照射面部12の中心Oについて点対称、又は、照射面部12の中心Oを通過するx軸に平行な直線、若しくは照射面部12の中心Oを通過するy軸に平行な直線を対称線として区画に設けることにより、ターゲット1における中心、即ち、測量点が得られるので、正確に測量することができる。
【0042】
また、取付部10に対する傾斜平面の傾斜する角度は、適宜設定すれば良く、例えば、x軸周りに0°以上90°より小さく、y軸周りに0°以上90°より小さな範囲で、x軸やy軸の軸周りに個別、x軸やy軸の軸周りを組み合わせて設定すれば良い。
【0043】
また、上記説明では、照射面部12、即ち、測量用ターゲット1を正方形としたが、長方形等の方形としても良い。
【0044】
また、照射面部12を区画するにあたり、その区画線が照射面部12を通るx軸と平行な直線や照射面部12を通るy軸と平行な直線に一致していなくても良い。
【0045】
図10は、反射体14の他の形態を示す図である。
上記実施形態では、反射体14について再帰反射構造を有するシート状の反射材として説明したがこれに限定されるものではない。例えば、反射体14は、
図10に示すように平板状に構成されたものであっても良い。なお、平板状とは、例えば、前述のシート状のものよりも厚みが厚く、シート状のように自重によるたわみの生じないものを意味する。また、
図10に示す反射体14の構造は、一例であって再帰反射を可能とするものであれば限定されない。以下、再帰反射について平板状の反射体14を用いて説明する。
【0046】
図10に示すように、反射体14は、ベース部材40と反射部材44とで構成することができる。
ベース部材40は、平板矩形状に形成された基板40Aと、該基板40Aの外周を囲むように立ち上がる枠40Bを有するように形成されている。
【0047】
反射部材44は、一方の面が平面、他方の面が再帰反射構造を構成する凹凸面の矩形の板状に形成された反射部44Aと、反射部44Aの外周を囲むように一方の面に沿って外側に延長するフランジ部44Bとを有するように形成されている。反射部材44は、ベース部材40と重ね、組み合わせることで反射体14として一体化可能に構成される。
【0048】
図11は、反射体14の構造を示す断面拡大図である。
図11に示すように、反射部材44は、例えば、反射部44がベース部材40の枠40B内に収容可能な寸法とされ、フランジ部44Bが枠40B上に接触することにより反射部材44の凹凸面と、ベース部材40の基板40Aとの間に空気層42が形成されるように構成される。なお、空気層42は、屈折率の小さい層として構成されていれば良い。
【0049】
反射部44Aを構成する再帰反射構造は、所謂プリズム構造として形成され、側面が互いに直角に交差する三角錐を、底面が一つの平面上に隙間なく敷き詰められるように緻密に配列することにより形成される。
【0050】
配列された一つ一つの三角錐は、プリズムとして機能し、底面側から入射した光(入射光)を、3つの側面の内面で順次反射することで光源に向けた反射(再帰反射)が可能とされる。三角錐の側面の内面が再帰反射面44aとして機能する。以下、三角錐をプリズムという。
【0051】
なお、
図11に示すようなプリズム構造を有する反射材では、プリズムの大きさが大きくなると入射及び反射の経路のずれδが大きくなり、小さければ経路のずれδが小さくなる。一方、プリズムの大きさは、大きくなると反射光量が高くなり、小さくなると反射光量が低くなる。
したがって、反射部材44は、測量に必要とされる精度や、反射光量に応じて反射部44Aを構成するプリズムの大きさを適宜設定すれば良い。
【0052】
なお、ここで説明した反射光量の高低については、
図11に示した構造の再帰反射構造体の場合であって、再帰反射構造体が他の構造で構成されている場合にはこの限りではない。
反射体14の再帰反射構造は、特に限定されないが、例えば、
図11に示すような三角錐プリズム構造や、ガラスビーズ構造のものを挙げることができる。
【0053】
反射体14は、例えば、ガードレールや自転車のペダル用等として製造された再帰反射構造を有する反射材から測量精度に応じて反射体14として選び、
図9に示す基板8の傾斜平面部に、反射体14のベース層40側を向けて張り付けることにより、
図12に示すような測量用ターゲットを安価かつ容易に構成することができる。
【0054】
なお、反射体14は、再帰反射するものであれば、三角錐によるプリズム構造に限定されず、他の多角錘を用いたプリズム構造やビーズ構造など他の構造のものであっても良いことは言うまでもない。また、反射体14の形態は、シート状や平板状、柔軟性を有する素材で構成されたものや硬質素材で構成されたものであっても良い。
【0055】
以上説明したように、測量用ターゲットが、測量対象物に設けられ、測量機の自動視準機能より入射した光を入射方向に反射する測量用ターゲットであって、方形の平板状に形成され、一面側に前記測量対象物に向けて取り付けられる取付面と、他面側に光が照射される照射面とを備え、取付面は、平面状とされ、照射面は、取付面を形成し、直交する一つの辺々にx軸及びy軸と、x軸及びy軸に直交するz軸を設定したときに、z軸に対して法線が傾斜する傾斜平面部を備え、傾斜平面部が再帰反射性を有する構成としたことにより、傾斜平面部を測量機に向けて測定対象物に取り付けることで、測量機の位置の変更を少なくし、測定対象物の連続的な捕捉を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 測量用ターゲット、8 基板、10 取付部(取付面)、
13;20;22 傾斜平面(傾斜平面部)、14 反射体。