(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005754
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】免震構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20230111BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
F16F15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107916
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智大
(72)【発明者】
【氏名】青山 優也
(72)【発明者】
【氏名】湯川 正貴
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC06
2E139AC10
2E139AC22
2E139CA10
2E139CC02
3J048AA07
3J048AB01
3J048AD05
3J048CB22
3J048DA02
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】引張材を長くすることなく固有周期を長周期化することが可能な免震構造を提供することである。
【解決手段】下部構造物2と上部構造物3との間に設けられる免震構造1、100、200であって、上部構造物2に固定された上側構造10と、下部構造物3に固定された下側接合材21と、上側構造10と下側構造20の間に設けられる第一中間構造30と、を備え、第一中間構造30は、上端部の第一中間構造上端部30aと、下端部の第一中間構造下端部30bと、第一中間構造上端部30aと第一中間構造下端部30bとを連結する第一中間構造連結部30cと、を有し、上側構造10の上側構造下端部10bと第一中間構造上端部30aとの間に設けられる第一引張材40と、下側構造20の下側構造上端部20bと第一中間構造下端部30bとの間に設けられる第二引張材50と、を有することを特徴とする免震構造1、100、200。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物と上部構造物との間に設けられる免震構造であって、
前記上部構造物に固定された上側構造と、
前記下部構造物に固定された下側構造と、
前記上側構造と前記下側構造の間に設けられる第一中間構造と、を備え、
前記第一中間構造は、前記第一中間構造の上端部の第一中間構造上端部と、前記第一中間構造の下端部の第一中間構造下端部と、前記第一中間構造上端部と前記第一中間構造下端部とを連結する第一中間構造連結部と、を有し、
前記上側構造の下端部の上側構造下端部と、前記第一中間構造上端部との間に設けられる第一引張材と、
前記下側構造の上端部の下側構造上端部と、前記第一中間構造下端部との間に設けられる第二引張材と、
を有することを特徴とする免震構造。
【請求項2】
前記第一中間構造と、前記下側構造との間に設けられる第二中間構造を備え、
前記第二中間構造の下端部の第二中間構造下端部は、前記下側構造上端部と前記第二引張材で連結され、
前記第二中間構造の上端部の第二中間構造上端部は、前記第一中間構造下端部と第三引張材で連結されている請求項1に記載の免震構造。
【請求項3】
前記上側構造及び前記下側構造を、それぞれ3つ備え、
前記第一中間構造の前記第一中間構造上端部及び前記第一中間構造下端部を、それぞれ3つ備え、
それぞれの前記上側構造の前記上側構造下端部と、対応する前記第一中間構造上端部との間に設けられる3つの前記第一引張材を備え、
それぞれの前記下側構造の前記下側構造上端部と、対応する前記第一中間構造下端部との間に設けられる3つの前記第二引張材を備える、請求項1または2に記載の免震構造。
【請求項4】
前記上部構造物から垂下して前記第一中間構造を吊り下げ保持する、傾き防止用吊り材を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の免震構造。
【請求項5】
前記上側構造と前記下側構造の間に設けられ、前記上部構造物の振動を減衰する減衰装置を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部構造物と上部構造物との間に設けられる免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物などの構造物において、地震の際に地面から伝達される振動を低減するために、基礎などの下部構造物と上部構造物との間に免震構造を設けるようにしたものが知られている。
【0003】
このような免震構造として、従来、下部構造物に固定された複数の斜めバーと、上部構造物に固定された複数の逆斜めバーと、斜めバーの上端に設けられた上部ケーシングと逆斜めバーの下端に設けられて上部ケーシングよりも下方に配置された下部ケーシングとに連結された引張材(連結部材)とを有し、下部構造物に対して上部構造物を引張材により単振り子式に支持するようにした構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
免震構造は、一般的に、固有周期を長くすることで免震性能を高めることができる。上記従来の免震構造では、引張材によって構成される振り子の長さによって固有周期が決まるので、より高い免震性能を得るためには引張材をより長くする必要がある。
【0006】
しかし、上記従来の免震構造において引張材を長くするためには、下部構造物と上部構造物との間の上下方向のスペースを大きくする必要がある。そのため、建築物の1階床高さを高くしたり、基礎の底盤の位置をより深くしたりする必要があり、その分、免震構造を設置するためのコストが増加してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、引張材を長くすることなく固有周期を長周期化することが可能な免震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の免震構造は、下部構造物と上部構造物との間に設けられる免震構造であって、前記上部構造物に固定された上側構造と、前記下部構造物に固定された下側構造と、前記上側構造と前記下側構造の間に設けられる第一中間構造と、を備え、前記第一中間構造は、前記第一中間構造の上端部の第一中間構造上端部と、前記第一中間構造の下端部の第一中間構造下端部と、前記第一中間構造上端部と前記第一中間構造下端部とを連結する第一中間構造連結部と、を有し、前記上側構造の下端部の上側構造下端部と、前記第一中間構造上端部との間に設けられる第一引張材と、前記下側構造の上端部の下側構造上端部と、前記第一中間構造下端部との間に設けられる第二引張材と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の免震構造は、上記構成において、前記第一中間構造と、前記下側構造との間に設けられる第二中間構造を備え、前記第二中間構造の下端部の第二中間構造下端部は、前記下側構造上端部と前記第二引張材で連結され、前記第二中間構造の上端部の第二中間構造上端部は、前記第一中間構造下端部と第三引張材で連結されているのが好ましい。
【0010】
本発明の免震構造は、上記構成において、前記上側構造及び前記下側構造を、それぞれ3つ備え、前記第一中間構造の前記第一中間構造上端部及び前記第一中間構造下端部を、それぞれ3つ備え、それぞれの前記上側構造の前記上側構造下端部と、対応する前記第一中間構造上端部との間に設けられる3つの前記第一引張材を備え、それぞれの前記下側構造の前記下側構造上端部と、対応する前記第一中間構造下端部との間に設けられる3つの前記第二引張材を備えるのが好ましい。
【0011】
本発明の免震構造は、上記構成において、前記上部構造物から垂下して前記第一中間構造を吊り下げ保持する、傾き防止用吊り材を有するのが好ましい。
【0012】
本発明の免震構造は、上記構成において、前記上側構造と前記下側構造の間に設けられ、前記上部構造物の振動を減衰する減衰装置を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、引張材を長くすることなく固有周期を長周期化することが可能な免震構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る免震構造の構成を模式的に示した正面図である。
【
図2】(a)、(b)は、それぞれ下側構造の変形例を示す図である。
【
図3】
図1に示す免震構造の、免震動作を行っている状態を示した正面図である。
【
図4】上側構造と前記下側構造の間に2つの中間構造を設けた変形例の免震構造の構成を模式的に示した正面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る免震構造の構成を模式的に示した斜視図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る免震構造の構成を模式的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る免震構造について、図面を参照しつつ詳細に例示説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態である免震構造1は、下部構造物2と上部構造物3との間に設けられる。免震構造1は、地面から下部構造物2を介して上部構造物3に伝達される水平方向の振動を低減することができる。
【0017】
免震構造1は、下部構造物2と上部構造物3との間に、複数配置することもできる。複数の免震構造1を下部構造物2と上部構造物3との間に配置する際の配置パターンや配置数は、適宜変更可能である。
【0018】
下部構造物2は、地面に直接または間接に固着した構造物である。上部構造物3は、下部構造物2の上方に構築された構造物である。本実施の形態では、下部構造物2は建築物の基礎であり、上部構造物3は例えばビルディング、倉庫、木造の建物などの建築物である。
【0019】
なお、下部構造物2は、地面に固着した構造物であれば、建築物の基礎に限らず、例えば建築物の下層階を構成する部分などの他の構造物であってもよい。下部構造物2を建築物の下層階を構成する部分とした場合には、上部構造物3は建築物の上層階を構成する部分である。
【0020】
免震構造1は、上側構造10、下側構造20、第一中間構造30、第一引張材40及び第二引張材50を備えている。
【0021】
上側構造10は、上部構造物3に固定されている。上側構造10は、例えば、上下方向に延びる柱状に構成された柱部10aと、柱部10aの下端部に水平方向に梁状に突出して設けられた上側構造下端部10bとを備え、柱部10aの上端において上部構造物3の下面に固定された構成とすることができる。上側構造10は、例えば鋼材等により、上部構造物3の自重や積載荷重、地震荷重、風荷重等を含む、上側構造10に伝達される荷重の組み合わせを支持可能な所定の剛性を有するように構成される。
【0022】
上側構造10は、下端部に上側構造下端部10bを備えて上部構造物3に固定される構成であれば、1本の柱部10aの下端に上側構造下端部10bが片持ちされたL字形状に限らず、下側構造20と同様に、例えば
図2(a)に示す門型を倒立姿勢とした構成、
図2(b)に示すトラス構造を倒立姿勢とした構成とするなど、その形状ないし構成は種々変更可能である。
【0023】
下側構造20は、下部構造物2に固定されている。下側構造20は、例えば、上下方向に延びる柱状に構成された柱部20aと、柱部20aの上端部に水平方向に梁状に突出して設けられた下側構造上端部20bとを備え、柱部20aの下端において下部構造物2の上面に固定された構成とすることができる。下側構造20は、例えば鋼材等により、上部構造物3と免震構造1の自重や積載荷重、地震荷重、風荷重等を含む、下側構造20に伝達される荷重の組み合わせを支持可能な所定の剛性を有するように構成される。
【0024】
下側構造上端部20bは、上側構造下端部10bよりも高い位置に配置されるのが好ましい。
【0025】
下側構造20は、上端部に下側構造上端部20bを備えて下部構造物2に固定される構成であれば、1本の柱部20aの上端に下側構造上端部20bが片持ちされた逆L字形状に限らず、例えば
図2(a)に示すように、互いに平行に並ぶ一対の柱部20aの上端を下側構造上端部20bで連結した門型の構成、
図2(b)に示すように、3本の傾斜する柱部20aの上端を下側構造上端部20bで接合したトラス構造とするなど、その形状ないし構成は種々変更可能である。
【0026】
第一中間構造30は、上側構造10と下側構造20との間に設けられている。第一中間構造30は、例えば、第一中間構造30の上端部に水平方向に梁状に突出して設けられた第一中間構造上端部30aと、第一中間構造30の下端部に第一中間構造上端部30aとは異なる向きに水平方向に梁状に突出して設けられたの第一中間構造下端部30bと、第一中間構造上端部30aと第一中間構造下端部30bとを連結する柱状の第一中間構造連結部30cと、を有する構成とすることができる。第一中間構造30は、例えば鋼材等により、上部構造物3と上側構造10の自重や積載荷重、地震荷重、風荷重等を含む、第一中間構造30に伝達される荷重の組み合わせを支持可能な所定の剛性を有するように構成される。
【0027】
第一中間構造30は、上端部の第一中間構造上端部30aと、下端部の第一中間構造下端部30bと、第一中間構造上端部30aと第一中間構造下端部30bとを連結する第一中間構造連結部30cと、を有する構成であれば、その形状ないし構成は種々変更可能である。
【0028】
第一引張材40は、上側構造10の下端部の上側構造下端部10bと、第一中間構造30の第一中間構造上端部30aとの間に設けられている。第一引張材40は、上部構造物3と上側構造10の自重や積載荷重、地震荷重、風荷重等を含む、第一引張材40に伝達される荷重の組み合わせを支持可能な引張強度を有するように構成される。より具体的には、第一引張材40は、例えば、鋼材等により上下方向(鉛直方向に沿って)延びる棒状に形成され、その下端において上側構造下端部10bにピン接合により連結されるとともに上端において第一中間構造上端部30aにピン接合により連結されている。これにより、第一引張材40は、上側構造下端部10b及び第一中間構造上端部30aのそれぞれに対して、水平方向の何れの方向に向けても傾動可能(回動可能)となっている。
【0029】
第一引張材40の、上側構造下端部10b及び第一中間構造上端部30aのそれぞれに対する連結構造は、ピン接合に限らず、例えばユニバーサルジョイントを用いた連結構造やリング部材を用いた連結構造など、引張荷重を伝達でき且つ第一引張材40を上側構造下端部10b及び第一中間構造上端部30aのそれぞれに対して傾動可能(回動可能)とするものであれば、他の構造であってもよい。また、第一引張材40は、鋼材製の棒材に限らず、ワイヤー、チェーン等であってもよい。
【0030】
第二引張材50は、下側構造20の上端部の下側構造上端部20bと、第一中間構造30の第一中間構造下端部30bとの間に設けられている。第二引張材50は、上部構造物3、上側構造10、第一引張材40、第一中間構造30の自重や積載荷重、地震荷重、風荷重等を含む、第二引張材50に伝達される荷重の組み合わせを支持可能な引張り強度を有するように構成される。より具体的には、第二引張材50は、例えば、鋼材等により上下方向(鉛直方向に沿って)延びる棒状に形成され、その上端において下側構造上端部20bにピン接合により連結されるとともに下端において第一中間構造下端部30bにピン接合により連結されている。これにより、第二引張材50は、下側構造上端部20b及び第一中間構造下端部30bのそれぞれに対して、水平方向の何れの方向に向けても傾動可能(回動可能)となっている。
【0031】
第二引張材50の、下側構造上端部20b及び第一中間構造下端部30bのそれぞれに対する連結構造は、ピン接合に限らず、例えばユニバーサルジョイントを用いた連結構造やリング部材を用いた連結構造など、引張荷重を伝達でき且つ第二引張材50を下側構造上端部20b及び第一中間構造下端部30bのそれぞれに対して傾動可能(回動可能)とするものであれば、他の構造であってもよい。また、第二引張材50は、鋼材製の棒材に限らず、ワイヤー、チェーン等であってもよい。
【0032】
第一中間構造30には、下部構造物2ないし上部構造物3に対して第一中間構造30が傾くことを防止するための傾き防止構造が適宜設けられる。当該傾き防止構造の具体的な構成は後述する。
【0033】
上記構成の免震構造1は、上側構造10が、上側構造10の上側構造下端部10bと第一中間構造30の第一中間構造上端部30aとの間に設けられた第一引張材40により振り子式に吊り下げ保持されるとともに、第一中間構造30が、下側構造20の下側構造上端部20bと第一中間構造30の第一中間構造下端部30bとの間に設けられた第二引張材50により振り子式に吊り下げ保持される構成となっている。これにより、
図3に示すように、地震などによって下部構造物2が上部構造物3に対して水平方向に振動すると、上記構成の免震構造1は、当該振動により、第一引張材40及び第二引張材50が振り子のように振動方向に傾動することで免震動作して、当該振動が上部構造物3に伝達されることを抑制する。
【0034】
上記構成を有する本実施形態の免震構造1は、免震動作の際に、第一引張材40及び第二引張材50の両方が、それぞれ振り子のように傾動する構成となっているので、水平方向の振動に対する固有周期は、第一引張材40の長さと第二引張材50の長さを合計した長さを有する単振り子の固有周期に相当するものとなる。したがって、本実施形態の免震構造1では、引張材を長くすることなく、免震動作の際の固有周期を長周期化することができる。
【0035】
また、上記構成を有する本実施形態の免震構造1では、引張材を長くすることなく免震動作の際の固有周期を長周期化することができるので、下部構造物2と上部構造物3との間の上下方向のスペースを拡大するために、建築物の1階床高さを高くしたり、基礎の底盤の位置をより深くしたりすることを不要として、免震構造1を設置するためのコストを低減することができる。
【0036】
このように、本実施形態の免震構造1によれば、設置コストを高めることなく、固有周期を長周期化して免震構造1の免震性能を高めることができる。
【0037】
図4に示すように、免震構造1は、第一中間構造30と下側構造20との間に、第二中間構造31を設けた構成とすることができる。
【0038】
第二中間構造31は、第一中間構造30と同様に、例えば、第二中間構造31の上端部に水平方向に梁状に突出して設けられた第二中間構造上端部31aと、第二中間構造31の下端部に第二中間構造上端部31aとは異なる向きに水平方向に梁状に突出して設けられたの第二中間構造下端部31bと、第二中間構造上端部31cと第二中間構造下端部31bとを連結する柱状の第二中間構造連結部と31cと、を有する構成とすることができる。第二中間構造31は、例えば鋼材等により、上部構造物3、上部構造10、第一引張材40、第一中間構造30、第三引張材60の自重や積載荷重、地震荷重、風荷重等を含む、第二中間構造31に伝達される荷重の組み合わせを支持可能な所定の剛性を有するように構成される。
【0039】
第二中間構造31は、上端部の第二中間構造上端部31aと、下端部の第二中間構造下端部31bと、第二中間構造上端部31cと第二中間構造下端部31bとを連結する第二中間構造連結部と31cと、を有する構成であれば、その形状ないし構成は種々変更可能である。
【0040】
第二中間構造31の下端部の第二中間構造下端部31bは、下側構造上端部20bと第二引張材50で連結されている。より具体的には、第二引張材50は、その上端において下側構造20の下側構造上端部20bにピン接合により連結されるとともに、その下端において第二中間構造31の第二中間構造下端部31bにピン接合により連結されている。これにより、第二引張材50は、下側構造上端部20b及び第二中間構造下端部31bのそれぞれに対して、水平方向の何れの方向に向けても傾動可能(回動可能)となっている。
【0041】
一方、第二中間構造31の上端部の第二中間構造上端部31aは、第一中間構造30の第一中間構造下端部30bと第三引張材60で連結されている。第三引張材60は、上部構造物3、上部構造10、第一引張材40、第一中間構造30の自重や積載荷重、地震荷重、風荷重等を含む、第三引張材60に伝達される荷重の組み合わせを支持可能な引張強度を有する、棒材、ワイヤー、チェーン等により構成される。第三引張材60は、その上端において第二中間構造31の第二中間構造上端部31cにピン接合により連結されるとともに、その下端において第一中間構造30の第一中間構造下端部30bにピン接合により連結されている。これにより、第三引張材60は、第二中間構造上端部31c及び第一中間構造下端部30bのそれぞれに対して、水平方向の何れの方向に向けても傾動可能(回動可能)となっている。なお、第三引張材60は、第二引張材50と同一の長さでもよく、第二引張材50と相違する長さでもよい。
【0042】
このように、免震構造1を、第一中間構造30と下側構造20との間に設けられる第二中間構造31を備え、第二中間構造31の下端部の第二中間構造下端部31bを下側構造上端部20bと第二引張材50で連結し、第二中間構造31の上端部の第二中間構造上端部31aを第一中間構造下端部30bと第三引張材60で連結した構成とすることで、地震などにより下部構造物2が上部構造物3に対して水平方向に振動する際に、当該振動によって上側構造10と下側構造20との間で振り子のように振動する引張材の数を増やして、免震構造1の免震動作の際の固有周期をさらに長周期化することができる。これにより、引張材を長くすることなく免震動作の際の固有周期をさらに長周期化することができるので、設置コストを高めることなく、免震構造1の免震動作の際の固有周期をさらに長周期化して免震構造1の免震性能をさらに高めることができる。
【0043】
免震構造1は、第一中間構造30と下側構造20との間に、第二中間構造31及び第三引張材60に加えて、第二中間構造31及び第三引張材60と同様の構成を有する複数の中間構造及び引張材を設けた構成とすることもできる。
【0044】
上記構成を有する本実施形態の免震構造1の、水平方向の振動に対する固有周期T1は、上側構造10と下側構造20との間に設けられた複数本の引張材(例えば第一引張材40、第二引張材50及び第三引張材60)の長さを全て合計した長さを有する単振り子の固有周期に相当するものとなる。例えば、上側構造10と下側構造20との間に設けられたn本(n=2、3、4・・・)の引張材の長さが全て同一の長さLである場合、固有周期T1は以下の(式1)で求められる。
【0045】
[数式]
T1=2π×(nL/g)1/2=2π×(n)1/2×(L/g)1/2 (式1)
【0046】
これに対し、下部構造物2と上部構造物3との間を、長さLの1本の引張材で単振り子式に支持するようにした比較例の免震構造の、水平方向の振動に対する固有周期T2は、以下の(式2)で求められる。
【0047】
[数式]
T2=2π×(L/g)1/2 (式2)
【0048】
このように、上記構成を有する本実施形態の免震構造1は、下部構造物2と上部構造物3との間を長さLの複数本の引張材で振り子式に支持する構成となるので、下部構造物2と上部構造物3との間を長さLの1本の引張材で単振り子式に支持する比較例の免震構造の固有周期T2に対して、固有周期T1を(n)
1/2倍とすることができる。例えば、
図1に示すように、上側構造10と下側構造20の間に、第一中間構造30のみを設けて引張材を2本(n=2)とした場合には、実質的な振り子による吊り長さを2倍として固有周期T2に対して固有周期T1を約1.414倍とすることができる。また、
図4に示すように、上側構造10と下側構造20の間に、第一中間構造30及び第二中間構造31を設けて引張材を3本(n=3)とした場合には、実質的な振り子による吊り長さを3倍として固有周期T2に対して固有周期T1を約1.732倍とすることができる。さらに、上側構造10と下側構造20の間に、第一中間構造30及び第二中間構造31に加えてさらに同様の中間構造を設けて引張材を4本(n=4)とした場合には、実質的な振り子による吊り長さを4倍として固有周期T2に対して固有周期T1を2倍とすることができる。このように、上側構造10と下側構造20の間に設けられる中間構造の数を増やすことで固有周期T1を長周期化することができる。
【0049】
上記構成を有する本実施形態の免震構造1では、第一引張材40の下端よりも第二引張材50の上端が上方に位置する構成とするのが好ましい。このような構成により、免震構造1の高さ寸法を比較例のものと同等のものとすることができる。これにより、免震構造1を、比較例のものよりも長い固有周期T1を有するものとしつつ、建築物の1階床高さを高くしたり、基礎の底盤の位置をより深くしたりすることなく、比較例のものと同等の上下方向スペースに配置することが可能な、低コストで高い免震性能を得られるものとすることができる。
【0050】
上記構成を有する本実施形態の免震構造1は、上記した比較例の免震構造と同一の固有周期を有する構成とした場合には、上側構造10と下側構造20の間に設けられるそれぞれの引張材(例えば第一引張材40、第二引張材50及び第三引張材60)の吊り長さを、上記した比較例の免震構造の1本の引張材の吊り長さよりも短くすることができる。これにより、本実施形態の免震構造1の高さ寸法を、同一の固有周期を有する比較例の免震構造の高さ寸法よりも低くして、下部構造物2と上部構造物3との間のより上下方向寸法が小さいスペースに免震構造1を配置することができる。
【0051】
図5は、本発明の他の実施形態に係る免震構造100の構成を模式的に示した斜視図である。なお、
図5においては、前述した部材に対応する部材に同一の符号を付してある。
【0052】
図5に示す他の実施形態に係る免震構造100として示すように、本発明の免震構造100は、上側構造10及び下側構造20が、それぞれ3つ設けられ、第一中間構造30が、それぞれの下側構造20の下側構造上端部20bと第一中間構造下端部30bとの間に設けられた3本の第二引張材50により吊り下げ保持されるとともに、それぞれの上側構造10が、第一中間構造30の3つの第一中間構造上端部30aと上側構造下端部10bとの間に設けられた3本の第一引張材40により吊り下げ保持された構成とすることもできる。
【0053】
図示する場合では、免震構造100では、第一中間構造30の第一中間構造下端部30bは三角の板状に形成され、その3つの頂点の近傍部分の上面に、それぞれ上方に向けて延びる第一中間構造連結部30cの下端が固定されている。
【0054】
3つの上側構造10は、それぞれ第一中間構造30の対応する第一中間構造上端部30aに隣接して配置されている。第一中間構造30は3つの第一中間構造上端部30aを備えており、それぞれの第一中間構造上端部30aから第一引張材40が垂下している。これら3本の第一引張材40の下端には、それぞれ対応する上側構造10の上側構造下端部10bが連結されている。3本の第一引張材40の長さは、全て同一である。
【0055】
なお、三角の板状の第一中間構造下端部30bに貫通孔を設け、上側構造10の上側構造下端部10bを、貫通孔を通して第一中間構造下端部30bの下方側に配置した構成としてもよい。
【0056】
3つの下側構造20は、それぞれ第一中間構造下端部30bの対応する頂点の近傍に配置されている。それぞれの下側構造20の下側構造上端部20bからは第二引張材50が垂下しており、これらの第二引張材50の下端は、第一中間構造下端部30bの対応する頂点の近傍部分に連結されている。3本の第二引張材50の長さは、全て同一である。
【0057】
このような構成により、第一中間構造30が、面を構成するように配置された3点において同一長さの3本の第二引張材50に吊り下げ保持されるとともに、上側構造10が、面を構成するように配置された3点において同一長さの3本の第一引張材40に吊り下げ保持されるようにして、上側構造10及び第一中間構造30が、下部構造物2ないし上部構造物3に対して傾くことを防止することができる。
【0058】
図5に示す傾き防止のための構成は、
図4に示すように、第一中間構造30と下側構造20との間に第二中間構造31が設けられた構成にも適用することができる。
【0059】
図6は、本発明のさらに他の実施形態に係る免震構造200の構成を模式的に示した正面図であり、
図7は、
図6に示す免震構造200の平面図である。なお、
図6、
図7においては、前述した部材に対応する部材に同一の符号を付してある。
【0060】
図6、
図7にさらに他の実施形態として示すように、本発明の免震構造200は、上部構造物3から垂下して第一中間構造30を吊り下げ保持する、傾き防止用吊り材40を有する構成とすることができる。
【0061】
図6、
図7に示す免震構造200は、上側構造10と下側構造20との間に、第一中間構造30のみが設けられるとともに、1つの上側構造10と3つの下側構造20とが設けられた構成となっている。
【0062】
上側構造10は、
図2(b)に示すトラス構造を倒立させた構成を有している。すなわち、上側構造10は、下端において互いに接合された3つの柱部10aを有し、これらの柱部10aの上端において上部構造物3の下面に固定されている。上側構造10の3つの柱部10aが互いに接合された下端は上側構造下端部10bとなっている。
【0063】
下側構造20は3つ設けられており、それぞれ
図2(b)に示すトラス構造を有している。すなわち、それぞれの下側構造20は、上端において互いに接合された3つの柱部20aを有し、これらの柱部20aの下端において上部構造物3の下面に固定されている。それぞれの下側構造20の3つの柱部20aの互いに接合された上端は下側構造上端部20bとなっており、これらの下側構造上端部20bからそれぞれ第二引張材50が垂下されている。
【0064】
第一中間構造30は、上端において互いに接合された3つの第一中間構造連結部30cと、それぞれ隣り合う第一中間構造連結部30cの下端を連結するトラス状に組まれた3つの梁状の第一中間構造下端部30bとを有している。互いに接合された3つの第一中間構造連結部30cの上端が第一中間構造上端部30aとなっている。
【0065】
下側構造20の下側構造上端部20bから垂下する3本の第二引張材50の下端は、それぞれ第一中間構造30の対応する第一中間構造下端部30bと第一中間構造連結部30cとの連結部分に連結されている。また、第一中間構造30の第一中間構造上端部30aからは1本の第一引張材40が垂下しており、第一引張材40の下端は上側構造10の上側構造下端部10bに連結されている。
【0066】
このような構成の免震構造200においては、上部構造物3から3本の傾き防止用吊り材70が垂下している。これらの傾き防止用吊り材70の下端は、それぞれ第一中間構造30の対応する第一中間構造連結部30cに連結されている。これらの傾き防止用吊り材70の長さは互いに同一である。
【0067】
このような構成により、第一中間構造30が、面を構成するように配置された3点において同一長さの3本の傾き防止用吊り材70により上部構造物3に吊り下げ保持されるようにして、第一中間構造30が、下部構造物2ないし上部構造物3に対して傾くことを防止することができる。
【0068】
免震構造1、100、200は、下部構造物2と上部構造物3との間に、上部構造物3の振動を減衰するための減衰装置80を有する構成とすることができる。例えば、
図6、
図7に示す免震構造200においては、第一引張材40の下端と下部構造物2との間に、2つのオイルダンパーが減衰装置80として設けられている。これらの減衰装置80は、それぞれ作動方向が水平方向に平行であるとともに互いに直交するように配置されており、下部構造物2に対する上部構造物3の水平方向の振動を減衰することができる。2つの減衰装置80は、互いに作動方向を直交させて配置されているので、水平方向の振動であれば、その振動の方向が360度の何れの方向であっても、2つの減衰装置80の協働によって第一中間構造30の水平方向の振動を減衰することができる。
【0069】
なお、減衰装置80は、オイルダンパーに限らず、振動を減衰することが可能なものであれば、種々の構成のものを用いることができる。また、減衰装置80は、第一引張材40の下端と下部構造物2との間に限らず、上部構造物3の水平方向の振動を減衰することができれば、例えば、上部構造物3と第二引張材50の上端との間などの他の部分に設けることもできる。さらに、減衰装置80を鉛直方向に機能するように取り付けることで、鉛直振動を減衰することも可能である。
【0070】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0071】
1 免震構造
2 下部構造物
3 上部構造物
10 上側構造
10a 柱部
10b 上側構造下端部
20 下側構造
20a 柱部
20b 下側構造上端部
30 第一中間構造
30a 第一中間構造上端部
30b 第一中間構造下端部
30c 第一中間構造連結部
31 第二中間構造
31a 第二中間構造上端部
31b 第二中間構造下端部
31c 第二中間構造連結部
40 第一引張材
50 第二引張材
60 第三引張材
70 傾き防止用吊り材
80 減衰装置
100 免震構造
200 免震構造