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特開2023-57542訓練を受けたニューラルネットワークを使用する心電図信号における干渉の抑制
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  • 特開-訓練を受けたニューラルネットワークを使用する心電図信号における干渉の抑制 図1
  • 特開-訓練を受けたニューラルネットワークを使用する心電図信号における干渉の抑制 図2A
  • 特開-訓練を受けたニューラルネットワークを使用する心電図信号における干渉の抑制 図2B
  • 特開-訓練を受けたニューラルネットワークを使用する心電図信号における干渉の抑制 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057542
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】訓練を受けたニューラルネットワークを使用する心電図信号における干渉の抑制
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20230414BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20230414BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/367
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022162212
(22)【出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】63/254,323
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/898,676
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127CC01
4C127KK03
(57)【要約】
【課題】心電図信号における干渉を抑制する方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】方法は、患者の心臓において取得され、干渉によって歪められた第1の心電図(ECG)信号を受信することを含む。第1のECG信号の取得と同時に干渉を感知する1つ以上の外部信号が、心臓外部の1つ以上の情報源から受信される。訓練を受けたニューラルネットワーク(NN)を、第1のECG信号及び1つ以上の外部信号に適用することによって、干渉が第1のECG信号に対して抑制される第2のECG信号が生成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
(i)患者の心臓において取得され、干渉によって歪められている第1の心電図(ECG)信号、及び(ii)前記心臓外部の1つ以上の情報源から受信され、前記第1のECG信号の取得と同時に前記干渉を感知する1つ以上の外部信号を受信するよう構成されている、インターフェースと、
訓練を受けたニューラルネットワーク(NN)を、前記第1のECG信号及び前記1つ以上の外部信号に適用することによって、前記干渉が前記第1のECG信号に対して抑制される第2のECG信号を生成するよう構成されている、プロセッサとを備える、前記システム。
【請求項2】
前記干渉が、1つ以上のスペクトル線、及び前記1つ以上のスペクトル線の1つ以上の高調波を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、(i)前記干渉によって歪められていない1つ以上の訓練ECG信号、並びに(ii)1つ以上の個々のスペクトル線及び1つ以上の個々の高調波をそれぞれ有する、1つ以上の訓練干渉信号を使用して、前記NNを訓練するよう構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、少なくとも5つの層を有するオートエンコーダ人工NNを訓練するよう構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記スペクトル線の前記少なくとも1つが、出力信号の交流電流(AC)を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
患者の心臓において取得され、干渉によって歪められた第1の心電図(ECG)信号を受信することと、
前記第1のECG信号の取得と同時に前記干渉を感知する1つ以上の外部信号を前記心臓外部の1つ以上の情報源から受信することと、
訓練を受けたニューラルネットワーク(NN)を、前記第1のECG信号及び前記1つ以上の外部信号に適用することによって、前記干渉が前記第1のECG信号に対して抑制される第2のECG信号を生成することと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記干渉が、1つ以上のスペクトル線、及び前記1つ以上のスペクトル線の1つ以上の高調波を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記干渉によって歪められていない1つ以上の訓練ECG信号、並びに(ii)1つ以上の個々のスペクトル線及び1つ以上の個々の高調波をそれぞれ有する、1つ以上の訓練干渉信号を使用して、前記NNを訓練することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記NNを訓練することが、少なくとも5つの層を有するオートエンコーダ人工NNを訓練することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記スペクトル線の前記少なくとも1つが、出力信号の交流電流(AC)を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月11日出願の米国仮特許出願第63/254,323号の利益を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、医療装置に関し、特に心電図信号における干渉を抑制する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
患者の器官の器官から取得した信号の質を改善するための、ニューラルネットワークの応用などのさまざまな技法が、当分野において公知である。
【0004】
例えば、米国特許出願公開第2020/0214597号は、いくつかの対象に由来する高周波(HF)QRS信号(又は、導かれた値若しくは特徴)のサンプリング、及び例えば、(i)サンプル全体の同じ対象にとって十分に類似しているが、(ii)異なる対象間で十分に異なる特徴又は値を見出して特定することを可能にする深層学習畳み込みニューラルネットワークの使用を記載している。同様に、シグネチャを見出すことであって、これらのシグネチャが偏差閾値内にあるよう、特定の期間にわたり十分に安定なシグネチャを見出し、次いで、偏差閾値を確立するために使用される期間と少なくとも同じ頻度で特定されるべきすべての対象をモニタリングすることが開示されている。
【0005】
インド特許出願第IN201841015767(A)号は、マルチレート信号処理、ANFISアルゴリズム、移動平均フィルタリング及びウェーブレット脱ノイズ技法の統合である、質の低い腹部ECGからの胎児ECGの抽出を記載している。この発明は2つの段階で実施され、初期段階では、母体構成要素の大部分が特定及び除去されるマルチレート処理技法が使用される。第2の段階では、残りの母体構成要素が、ハイブリッド学習技法を用いるANFISアルゴリズムによって特定され、次いで除去される。抽出された信号は、更に後処理されて、ベースラインワンダーノイズ及び他のノイズ構成要素を除去して、ノイズのない(clean)胎児ECGを得る。
【0006】
米国特許出願公開第2020/0260980号は、人工知能を使用する自己学習型動的心電図検査分析方法を記載している。この方法は、データを事前処理すること、深層学習法に基づいて、心臓活動特徴検出、干渉信号検出及び心臓活動分類を実行すること、信号の質評価及び主な組合せを実行すること、心臓活動を検査すること、心電図事象及びパラメータに関する解析計算を実行すること、次いで報告データを自動的に出力することを含む。この方法は、迅速かつ包括的な動的心電図検査プロセスのための自動解析方法、及び自動解析結果の変更情報の記録を実現すると同時に、継続的な訓練を行うために、変更データを収集してこれを深層学習モデルにフィードバックし、これによって、自動解析方法の精度を継続的に改善して強化する。同様に、人工知能を使用する、自己学習型動的心電図検査分析装置が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、患者の心臓において取得され、干渉によって歪められた第1の心電図(ECG)信号を受信することを含む、方法を提供する。第1のECG信号の取得と同時に干渉を感知する1つ以上の外部信号が、心臓外部の1つ以上の情報源から受信される。訓練を受けたニューラルネットワーク(NN)を、第1のECG信号及び1つ以上の外部信号に適用することによって、干渉が第1のECG信号に対して抑制される第2のECG信号が生成される。
【0008】
一部の実施形態では、干渉は、1つ以上のスペクトル線、及び1つ以上のスペクトル線の1つ以上の高調波を含む。他の実施形態では、本方法は、(i)干渉によって歪められていない1つ以上の訓練ECG信号、並びに(ii)1つ以上の個々のスペクトル線及び1つ以上の個々の高調波をそれぞれ有する、1つ以上の訓練干渉信号を使用し、NNを訓練することを含む。
【0009】
実施形態では、NNを訓練することは、少なくとも5つの層を有するオートエンコーダ人工NNを訓練することを含む。別の実施形態では、スペクトル線の少なくとも1つは、出力信号の交流電流(AC)を含む。
【0010】
本発明の実施形態によれば、インターフェース及びプロセッサを含むシステムが更に提供される。インターフェースは、以下:(i)患者の心臓において取得され、干渉によって歪められている第1の心電図(ECG)信号、及び(ii)心臓外部の1つ以上の情報源から受信される1つ以上の外部信号を受信して、第1のECG信号の取得と同時に干渉を感知するよう構成されている。プロセッサは、訓練を受けたニューラルネットワーク(NN)を、第1のECG信号及び1つ以上の外部信号に適用することによって、干渉が第1のECG信号に対して抑制される第2のECG信号を生成するよう構成されている。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による、カテーテルベースの追跡及びアブレーションシステムの概略描画図である。
図2A】本発明の実施形態による、歪められたECG信号における干渉を抑制するための、ニューラルネットワーク(NN)の訓練を例示する、概略ブロック図である。
図2B】本発明の実施形態による、患者の心臓から受信した歪められたECG信号に対して干渉が抑制されたECG信号を生成するために、訓練を受けたNNの適用を例示する概略ブロック図である。
図3】本発明の実施形態による、患者の心臓から受信した歪められたリアルタイムECG信号における干渉を抑制する方法を概略的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概説
電気生理学的(EP)マッピングを含む手順などの医療手順の間に、患者の心臓から取得した心電図(ECG)信号は、患者の心臓外部の1つ以上の情報源から受信した他の信号からの干渉によって歪められるおそれがある。このような信号の情報源の一例は、約50Hz又は60Hzの周波数を有する電力グリッドのスペクトル線、及びこれらのスペクトル線の少なくとも1つの1つ以上の高調波を含むことができる。
【0014】
原理的に、干渉の少なくとも一部を抑制し、歪められていないECG信号を生成するため、さまざまなタイプのアルゴリズム又は他の技法を使用することが可能である。しかし、このような技法における干渉の抑制は、長い時間を必要とすることがあり、歪められていないECG信号の生成は、リアルタイムで、例えば、ECG信号を取得する際に実施されなければならない。更に、歪められていないECG信号を医師にリアルタイムで、例えば、医療手順の実施と同時に提示することが重要である。
【0015】
本明細書のこれ以降に記載されている本発明の実施形態は、患者の心臓から取得した歪められたECG信号の質を改善するための技法であって、質の改善が、リアルタイムで、例えば、歪められたECG信号の受信から1秒未満以内に行われる、技法を提供する。一部の場合、歪みは、上記のとおり、電力グリッド信号のスペクトル線、及びその個々の高調波によって引き起こされることがある。
【0016】
一部の実施形態では、電力グリッド信号のスペクトル線及び高調波を抑制することによる、ECG信号の質を改善するためのシステムは、インターフェース及びプロセッサを備える。
【0017】
一部の実施形態では、プロセッサは、少なくとも5つの層、通常、約10の層を有するオートエンコーダ人工NNなどの、ニューラルネットワーク(NN)のモデルを収容するよう構成されており、NNモデルの例が、以下の図2Aに記載されている。
【0018】
一部の実施形態では、プロセッサは、上述の出力信号の干渉によって歪められていない1つ以上の訓練ECG信号を使用して、NNを訓練するよう構成されている。訓練ECG信号は、例えば、普通のECG信号において歪みを抑制することによって、又は例えば特定の心臓疾患に関する、関心特徴を有する合成ECG信号を生成することによって、前もって準備されていてもよい。
【0019】
一部の実施形態では、プロセッサは、訓練ECG信号に加え、1つ以上の個々のスペクトル線及び1つ以上の個々の高調波をそれぞれ有する、1つ以上の訓練干渉信号を使用して、NNを訓練するよう構成されている。例えば、訓練干渉信号のスペクトル線及び高調波は、欧州-アジア又は北米においてそれぞれ使用されている、配電網の出力信号、例えば、約50Hz又は60Hzに典型的な、1つ以上の周波数を有することができる。訓練を完了した後、プロセッサは、ソフトウェアに、又はハードウェアに、又はそれらの好適な組合せ物に実装することができる訓練を受けたNNを有する。
【0020】
一部の実施形態では、NNの訓練後及びEPマッピングの間に、インターフェースは、患者の心臓において取得されるECG信号であって、本明細書において、第1のECG信号とも称される、ECG信号を受信するよう構成されている。一部の場合、第1のECG信号は、電力グリッド信号のスペクトル線及び高調波によって引き起こされる干渉により歪められている。
【0021】
一部の実施形態では、インターフェースはまた、第1のECG信号の取得と同時(例えば、EPマッピングの間)に、干渉を感知する、1つ以上の外部信号を心臓外部の1つ以上の情報源から受信するよう構成されていてもよい。
【0022】
一部の実施形態では、プロセッサは、第1のECG信号に対して干渉が抑制されている第2のECG信号を生成するため、訓練を受けたNNを第1のECG信号及び1つ以上の外部信号に適用するよう構成されている。プロセッサは、訓練を受けたNNを第1のECG信号に適用することによって、リアルタイムで(例えば、第1のECG信号を受信した後、1秒未満以内)、第2のECG信号を生成することができることに留意すべきである。更に、プロセッサは、EPマッピングを実施しながら(第1のECG信号の提示の代わり、又はこれに加えて)、医師に第2のECG信号を直ちに提示するよう構成されている。
【0023】
他の実施形態では、上記の技法は、変更すべきこところは変更し、患者の心臓又は患者の任意の他の器官において取得したECG信号以外の信号の質を改善するために適用することができる。
【0024】
本開示技法は、電気解剖学的(EA)マッピングの精度を改善し、したがって、EAマッピングに基づく医療手順の効率及び質を改善する。
【0025】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、カテーテル系の追跡及びアブレーションシステム20の概略描画図である。
【0026】
一部の実施形態では、システム20は、本実施例では心臓カテーテルであるカテーテル22及び制御コンソール24を備える。本明細書に記載されている実施形態では、カテーテル22は、心臓26内の電気解剖学的信号の感知などの任意の好適な治療目的及び/又は診断目的に使用されてもよい。
【0027】
一部の実施形態では、コンソール24は、カテーテル22を介して信号を受信し、かつ本明細書に記載されているシステム20のその他の構成要素を制御する、好適なフロントエンド回路及びインターフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ34を備える。コンソール24は、プロセッサ34から心臓26のマップ27を受信して、マップ27を表示するように構成されているユーザディスプレイ35を更に備える。
【0028】
一部の実施形態では、マップ27は、任意の好適な技法を使用して生成された任意の好適なタイプの三次元(3D)解剖学的マップを含むことができる。例えば、解剖学的マップは、好適な医療用撮像システムを使用することによって生成された解剖学的画像を使用して、又はBiosense Webster Inc.(Irvine、Calif.)により供給されているCARTO(商標)システムにおいて利用可能な高速解剖学的マッピング(fast anatomical mapping、FAM)と称される技術を使用して、又は任意の他の好適な技法を使用して、又は上記の任意の好適な組合せを使用して生成されてもよい。
【0029】
これより、挿入図23を参照する。一部の実施形態では、アブレーション手技を実施する前に、医師30は、心臓26の対象とする組織の電気解剖学的(EA)マッピングを実行するよう、テーブル29上に横たわる患者28の脈管系からカテーテル22を挿入する。EAマッピングの間、医師30は、本明細書に記載されているとおり、心臓26の組織内で取得された1つ以上の心電図(ECG)信号を感知するためのカテーテル22を制御する。
【0030】
一部の実施形態では、カテーテル22は、複数の感知電極(図示せず)を有する遠位端アセンブリ40を備える。例えば、遠位端アセンブリ40は、(i)複数のスプラインを有するバスケット型カテーテルであって、各スプラインが複数の感知電極を有する、バスケット型カテーテル、(ii)バルーンの表面上に配設された複数の感知電極を有するバルーンカテーテル、又は(iii)複数の感知電極を有するフォーカルカテーテル(図1の例に示されている)を備えることができる。
【0031】
一部の実施形態では、各感知電極は、心臓26の組織におけるECG信号などの電気生理学的(EP)信号の感知に応答して、感知されたECG信号を示す1つ以上の信号を生成するように構成されている。
【0032】
一部の実施形態では、EAマッピングを実行するためにECG信号をプロセッサ34に転送するよう、カテーテル22の近位端は、とりわけ、本明細書においてインターフェース38と称されるインターフェース回路に、又はプロセッサ34のインターフェース回路に接続されている。一部の実施形態では、EAマッピングの間に、遠位端アセンブリ40の感知電極によって生成される信号は、数千個のデータ点、例えば、約50,000個又は更に多いデータ点を含むことができ、これらのデータ点は、コンソール24のメモリ(図示せず)内に記憶されていてもよい。プロセッサ34は、データ点に基づいて、心臓26の表面上を伝わる電気信号を示す、本明細書においてベクトルとも称される、波数ベクトルをマップ27上に提示するよう構成されている。
【0033】
本開示の文脈において及び特許請求の範囲において、任意の数値や数値の範囲について用いられる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。
【0034】
一部の場合、取得されたECG信号のうちの1つ以上は、心臓26の外部の1つ以上の情報源から望ましくないことに受信されるおそれのある干渉によって歪められていることがある。例えば、電力グリッド43の交流電流(AC)出力信号は、約60Hz(北米及び日本のグリッドに使用されている)又は50Hz(欧州、大部分のアジアの国々、及び他の大陸のグリッドにおいて使用されている)という典型的な周波数を有しており、1つ以上の個々の高調波は、取得したECG信号を望ましくないことに妨害するおそれがある。出力信号は、心臓26の外部で発生し、ケーブル42を介して、システム20に、例えば、インターフェース38に導かれるので、本明細書において、「外部信号」と称される。このような外部信号は、遠位端アセンブリ40の電極によって感知されたECG信号の取得と同時に感知され得る。例えば、外部信号は、ケーブル42及びカテーテル22を介して、プロセッサ34に転送されてインターフェース38に入り、したがって、ECG信号を歪めるおそれがある。干渉を抑制するための技法は、以下の図2A図2B及び図3に詳細に開示されている。
【0035】
他の実施形態では、カテーテル22は、遠位端アセンブリ40に連結されている1つ以上のアブレーション電極(図示せず)を備えてもよい。アブレーション電極は、心臓26に対象とする組織のEAマッピングの分析に基づいて判定される、心臓26の標的位置において組織をアブレーションするように構成されている。アブレーション計画を判定した後、医師30は、例えば、カテーテル22を操作するためのマニピュレータ32を使用することによって、心臓26内の標的位置のすぐ近くに遠位端アセンブリ40をナビゲートする。その後、医師30は、アブレーション電極のうちの1つ以上を標的組織と接触させて置き、組織に1つ以上のアブレーション信号を適用する。追加的又は代替的に、医師30は、前述のアブレーション計画を実行するために、心臓26の組織をアブレーションするための任意の異なる種類の好適なカテーテルを使用することができる。
【0036】
一部の実施形態では、心腔内の遠位端アセンブリ40の位置は、遠位端アセンブリ40に連結されている磁気位置追跡システムの位置センサ(図示せず)を使用して測定される。本実施例では、コンソール24は、駆動回路41を備えており、これは、テーブル29に横たわっている患者28の外部の既知の位置、例えば、患者の胴体の下に配置された磁場発生装置36を駆動するように構成されている。位置センサは、遠位端に連結されており、磁界発生装置36からの感知された外部磁界に応答して位置信号を発生するように構成されている。位置信号は、位置追跡システムの座標系におけるカテーテル22の遠位端の位置を示す。
【0037】
本位置感知方法は、さまざまな医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine、Calif)により製造されているCARTO(商標)システムに実施されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、これらの開示はすべて、参照により本明細書に組み込まれている。
【0038】
一部の実施形態では、位置追跡システムの座標系は、システム20及びマップ27の座標系と位置合わせされており、その結果、プロセッサ34は、解剖学的又はEAマップ(例えば、マップ27)の上に遠位端アセンブリ40の位置を表示するよう構成されている。
【0039】
一部の実施形態では、プロセッサ34は、通常、汎用コンピュータを備えており、この汎用コンピュータは、本明細書に記載されている機能を実行するソフトウェアにプログラムされている。このソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一過性有形媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0040】
システム20のこの特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を例示し、このようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施形態の適用を実証するために、実施例として示されている。しかし、本発明の実施形態は、この特定の種類の例となるシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載されている原理は、その他の種類の医療システムにも同様に適用されてもよい。
【0041】
ECG信号における干渉を抑制するためのニューラルネットワークの訓練
図2Aは、本発明の実施形態による、歪められたECG信号における干渉を抑制するための、本明細書において、NNモデル55とも称される、ニューラルネットワーク(NN)の訓練を例示する、概略ブロック図である。
【0042】
図2A及び図2Bの例では、NNモデル55は、プロセッサ34又は任意の他の好適な種類の処理デバイスにおいて処理される、ソフトウェアに実装されている。他の実施形態では、NNモデル55は、例えばプロセッサ34のモジュールとして、ハードウェアに、又はプロセッサ34と信号を交換するよう構成されている別の電子デバイス(図示せず)に少なくとも一部が実装されていてもよい。
【0043】
一部の実施形態では、NNモデル55は、以下に限定されないが、オートエンコーダ人工NN、例えば正則化オートエンコーダ、コンクリートオートエンコーダ、変動オートエンコーダ(VAE)、又は干渉を抑制する(例えば、脱ノイズ)ために使用される他の好適なタイプのNNなどの任意の好適なタイプのNNを備えることができる。例えば、NNモデル55は、約10層(又は任意の他の好適な数の層、例えば、少なくとも5つの層)を有することができ、Alex Krizhevsky(Toronto、カナダ)によって供給されるAlexNet NNのアークテクチャ、又はGoogleの子会社であるGoogle AI(Mountain View、California、米国)によって供給されるテンソルフローオープンソース機械学習プラットフォーム、又は任意の他の好適なタイプのNNアーキテクチャに基づくことができる。
【0044】
一部の実施形態では、プロセッサ34は、例えば、インターフェース38を介して、上の図1に記載されている干渉などのさまざまなタイプの干渉によって歪められていない1つ以上の訓練ECG信号を受信するよう構成されている。図2Aの例では、訓練ECG信号はまた、ノイズのないECG信号(clean ECG signal:CES)33と、本明細書において称され示されている。
【0045】
一部の実施形態では、CES33は、2.5秒のブロックに配置されたデータを有する前述のCARTO(商標)システムから受信された歪められていないECG信号を含むことができる。例えば、遠位端アセンブリ40の感知電極からの信号は、約1kHzの周波数でサンプリングされてもよく、こうして、ノイズのないECG信号33はそれぞれ、NNモデル55を訓練するために使用される約2,500個の点を含む。更に又は代替的に、1つ以上のCES33は、他の情報源、又は任意の好適なモデルを使用することにより生成される合成CESから受信された、任意の他の好適なノイズのないECG信号を含むことができる。
【0046】
一部の実施形態では、NNモデル55を訓練する間、プロセッサ34は、例えば、インターフェース38を介して、1つ以上の訓練干渉信号(training interference signal:TIS)44を受信するよう構成されており、各訓練干渉信号44は、1つ以上のスペクトル線(例えば、上の図1に記載されている、電力グリッド43から受信された50Hz又は60Hz)、及び各スペクトル線の1つ以上の個々の高調波を有する。TIS44は、電力グリッド43からサンプルを受信した1つ以上の出力信号、又は他の好適なスペクトル線及びその高調波を有する他の信号(サンプリングされた及び/又は合成的に生成された)を含むことができることに留意されたい。
【0047】
一部の実施形態では、プロセッサ34は、CES33及びTIS44の十分なサンプル(例えば、約100000のサンプル、又は任意の他の好適な数のサンプル)を使用してNNモデル55を訓練した後、訓練を受けたNN66を出力するよう構成されている。
【0048】
本実施例では、訓練を受けたNN66は、ソフトウェアに実装されていることに留意されたい。他の実施形態では、例えば、NNモデル55の少なくとも一部が、ハードウェアに実装されている場合、訓練を受けたNN66の少なくとも一部も、ハードウェアに実装されている。
【0049】
ECG信号における干渉を抑制するためのニューラルネットワークの適用
図2Bは、本発明の実施形態による、心臓26において感知された歪められたECG信号における干渉を抑制するため、訓練を受けたNN66の適用を例示する概略ブロック図である。
【0050】
一部の実施形態では、EAマッピングの間に、プロセッサ34は、心臓26に接触して置かれた遠位端アセンブリ40の感知電極から、インターフェース38を介して(例えば、インターフェース38を介して)、上の図1及び図2Aに記載されている干渉によって通常、歪められたリアルタイムECG信号(real-time ECG signal:RTES)77を受信するよう構成されている。
【0051】
一部の実施形態では、プロセッサ34は、心臓26の外部の1つ以上の情報源(例えば、ケーブル42及びインターフェース38を介して受信された電力グリッド43)から、本明細書において、リアルタイムスペクトル線及び高調波とも称される、1つ以上のリアルタイム外部信号(real-time external signal:RTEX)88を受信するよう構成されている。本開示の文脈において、用語「リアルタイム」とは、例えば、ECG信号が、遠位端アセンブリ40の感知電極によって心臓26において感知されるときの、EAマッピング手順の時間間隔を指す。
【0052】
一部の実施形態では、プロセッサ34は、EAマッピング手順の間に、患者28の心臓26から受信された歪められたECG信号である、RTES77に対して干渉が抑制されたECG信号である、ノイズのないリアルタイムECG信号(real-time clean ECG signal:RTCES)99を生成するために、訓練を受けたNN66を適用するよう構成されている。言い換えると、心臓26から受信されたECG信号は、「線ノイズ」干渉によって、例えば、電力グリッド43から受信された出力信号の干渉によって歪められている。訓練を受けたニューラルネットワーク66は、線ノイズを除去する(例えば、差し引く)ため、及び少なくとも「線ノイズ」干渉が除去されたRTCES99などの、「一層ノイズのない」ECG信号を発生するため、歪められたECG信号に適用される。
【0053】
一部の実施形態では、取得したECG信号に訓練を受けたNN66を適用する場合、心臓26から取得した信号の「ノイズをなくす」プロセス(例えば、RTES77)は、直ちに行われ(例えば、1秒未満以内)、その結果、プロセッサ34は、対応する「ノイズのない」ECG信号、例えばRTCES99を医師30に表示することができる。心臓26から取得した信号(例えば、RTES77)の特性は、対応する「ノイズのない」ECG信号(例えば、RTCES99)に保持され、歪みを引き起こす干渉しか除去されていないことに留意されたい。
【0054】
図3は、本発明の実施形態による、患者28の心臓26から受信した歪められたリアルタイムECG信号77における干渉を抑制する方法を概略的に例示するフローチャートである。
【0055】
本方法は、ニューラルネットワークにおいて、訓練工程100から始まり、訓練NNモデル55は、例えば、プロセッサ34において、CES33、並びにTIS44などのスペクトル線及び個々の高調波を有する訓練干渉信号などの歪められていないECG信号を使用する。工程100は、上記の図2Aに記載されているとおり、訓練を受けたNN66を取得して終了される。
【0056】
ECG感知工程102では、上の図2Bに記載されているとおり、EAマッピングを実施するため、カテーテル22の遠位端アセンブリ40を心臓26に挿入し、RTES77などの、干渉によって歪められた、プロセッサ34によって受信される第1のECG信号を取得するため、遠位端アセンブリ40の感知電極を使用する。
【0057】
外部信号受信工程104では、プロセッサ34は、心臓26の外部の1つ以上の情報源から、第1のECG信号(例えば、RTES77)の取得と同時に感知される干渉を含む外部信号(例えば、RTEX88)を受信する。本実施例では、RTEX88は、上の図1及び図2Bに記載されているとおり、ケーブル42及びインターフェース38を介して受信された電力グリッド43から受信された信号に基づく。
【0058】
本方法を完了するノイズのないECG信号の生成工程106では、プロセッサ34は、上の図2Bに記載されているとおり、RTES77における干渉が抑制されている第2のECG信号(例えば、RTCES99)を生成するため、第1のECG信号(例えば、RTES77)及び外部信号(例えば、RTEX88)に、訓練を受けたNN66を適用する。
【0059】
本明細書に記載されている実施形態は、主に、患者の心臓において感知されたECG信号の質の改善に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、脳波図(EEG)手順などの他の用途において使用することもできる。
【0060】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に記載されているさまざまな特徴の組合せ及び部分的組合せの両方、並びに前述の記載を一読すると当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) 患者の心臓において取得され、干渉によって歪められた第1の心電図(ECG)信号を受信することと、
前記第1のECG信号の取得と同時に前記干渉を感知する1つ以上の外部信号を前記心臓外部の1つ以上の情報源から受信することと、
訓練を受けたニューラルネットワーク(NN)を、前記第1のECG信号及び前記1つ以上の外部信号に適用することによって、前記干渉が前記第1のECG信号に対して抑制される第2のECG信号を生成することと、
を含む、方法。
(2) 前記干渉が、1つ以上のスペクトル線、及び前記1つ以上のスペクトル線の1つ以上の高調波を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) (i)前記干渉によって歪められていない1つ以上の訓練ECG信号、並びに(ii)1つ以上の個々のスペクトル線及び1つ以上の個々の高調波をそれぞれ有する、1つ以上の訓練干渉信号を使用して、前記NNを訓練することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記NNを訓練することが、少なくとも5つの層を有するオートエンコーダ人工NNを訓練することを含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記スペクトル線の前記少なくとも1つが、出力信号の交流電流(AC)を含む、実施態様2に記載の方法。
【0062】
(6) システムであって、
(i)患者の心臓において取得され、干渉によって歪められている第1の心電図(ECG)信号、及び(ii)前記心臓外部の1つ以上の情報源から受信され、前記第1のECG信号の取得と同時に前記干渉を感知する1つ以上の外部信号を受信するよう構成されている、インターフェースと、
訓練を受けたニューラルネットワーク(NN)を、前記第1のECG信号及び前記1つ以上の外部信号に適用することによって、前記干渉が前記第1のECG信号に対して抑制される第2のECG信号を生成するよう構成されている、プロセッサとを備える、前記システム。
(7) 前記干渉が、1つ以上のスペクトル線、及び前記1つ以上のスペクトル線の1つ以上の高調波を含む、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、(i)前記干渉によって歪められていない1つ以上の訓練ECG信号、並びに(ii)1つ以上の個々のスペクトル線及び1つ以上の個々の高調波をそれぞれ有する、1つ以上の訓練干渉信号を使用して、前記NNを訓練するよう構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、少なくとも5つの層を有するオートエンコーダ人工NNを訓練するよう構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(10) 前記スペクトル線の前記少なくとも1つが、出力信号の交流電流(AC)を含む、実施態様7に記載のシステム。
図1
図2A
図2B
図3
【外国語明細書】