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特開2023-57552プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための装置及び方法、並びにプリント基板廃棄物を分別するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057552
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための装置及び方法、並びにプリント基板廃棄物を分別するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230414BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G06T7/00 350B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022163348
(22)【出願日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】21202008
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22150804
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】597159765
【氏名又は名称】フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー.
(71)【出願人】
【識別番号】507413044
【氏名又は名称】テヒニッシェ・ウニヴェルジテート・ダルムシュタット
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100174285
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮山 聰
(72)【発明者】
【氏名】フィルシング、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】エネン、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】リューガー、シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ライスナー、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ベナー、ヴラディスラフ
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲルゲザング、マルテ
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA03
5L096FA64
5L096HA11
5L096KA04
5L096MA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための装置及び方法並びにプリント基板廃棄物を分別するためのシステムを提供する。
【解決手段】デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像取得ユニット120及び材料価値スコア決定ユニット130を備え、プリント基板廃棄物200又はその部分210に材料価値スコア110を割り当てるための装置100であって、機械学習モジュールである材料価値スコア決定ユニット130は、プリント基板廃棄物200又はその部分210のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122をかけることによって材料価値スコア110を決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)に材料価値スコア(110)を割り当てるための装置(100)であって、
前記材料価値スコア(110)を決定するように構成され、前記プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)に基づいて前記決定を実行するように構成される、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100)であって、
前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)を機械学習モジュール(132)にかけることによって前記決定を実行するように構成される、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記機械学習モジュール(132)は、アノテーション済部品(612)のデータセットに基づいてトレーニングされ、前記アノテーション済部品(612)は、WPCB(200)の代表部品のアノテーションを表す、装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(100)であって、
前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)から前記プリント基板廃棄物(200)の部品(220)を検出するように構成される、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置(100)であって、
前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)から前記部品(220)のタイプ、重量及び/又はサイズを推定するように構成される、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(100)であって、
各々の部品(220)につき、各部品(220)に関連付けられたタイプ、重量及び/又はサイズに基づいて部品材料価値を決定するように構成される、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(100)であって、
前記部品材料価値(112)に基づいて前記材料価値スコア(110)の決定を実行するように構成される、装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(100)であって、
前記プリント基板廃棄物(200)の両側の面(230,240)を同時に分析することによって前記材料価値スコア(110)を入手するように構成される、装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(100)であって、
前記材料価値スコア(110)は、前記プリント基板廃棄物(200)からの回収対象の1つ又は2つ以上の所定の材料の含有量に依存する、装置。
【請求項10】
プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)に材料価値スコア(110)を割り当てる(310)ための方法(300)であって、
前記方法は、前記材料価値スコア(110)の決定(320)を備え、前記決定(320)は、前記プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)に基づいて実行される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法(300)であって、前記決定(320)は、前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)を機械学習プロセスにかけることによって実行される、方法。
【請求項12】
プリント基板廃棄物(200)を分別するためのシステム(400)であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の、割り当てるための装置(100)と、
複数のプリント基板廃棄物(200)を、前記割り当てるための装置(100)によって前記複数のプリント基板廃棄物(200)の各々に割り当てられた材料価値スコア(110)に従って、プリント基板廃棄物(200)についての2つ以上の等級(420)に分類するための分別装置(410)と、を備える、システム。
【請求項13】
プリント基板廃棄物(200)を分別するための方法(500)であって、
請求項10又は請求項11に記載の、割り当てるための方法(300)と、
複数のプリント基板廃棄物(200)を、前記割り当てるための方法(300)によって前記複数のプリント基板廃棄物(200)の各々に割り当てられた材料価値スコア(110)に従って、プリント基板廃棄物(200)についての2つ以上の等級(420)に分類すること(510)と、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による各実施形態は、プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための装置及び方法、並びにプリント基板廃棄物を分別するためのシステムであって、例えば機械学習の支援する部品検出方法をX線画像に対して適用して、例えば材料価値推定に基づいて再生利用を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器及び電子装置は毎日の生活において大きな役割を果たしている。しかし、循環型経済の目標を達成するために、電気・電子装置廃棄物(WEEE)の再生利用が重要となっている。
【0003】
現在、電気・電子装置廃棄物(WEEE)からプリント基板廃棄物(WPCB)を再生利用するプロセスにおいて、実際の冶金学的回収前に行なわれるWPCB全体の価値の概算は大まかなものでしかない。特に大バッチの価値については、いくつかのランダムなサンプルに基づき、そして人間の熟練担当者による目視検査に基づいて推測する他なく、時間がかかり且つ誤りも多い。WPCBの売り手も買い手もWPCBバッチの価値の合計が把握できないため、両者にとって価格設定が困難である。現時点では、十分な速さと精度でWPCBの価値を推定する商業的に利用可能なシステムは知られていない。
【0004】
PCB上の部品の検出[1]及びWPCBの価値推定[2]に関する初期の科学的刊行物が存在する。しかし、両者とも(W)PCBの視覚的画像に基づくものである。(W)PCBの両側に部品が実装されている場合、この手法で得られる情報は不十分なものに過ぎない。可視光に基づく画像を用いる限り片側しか同時に分析できないからである。また、集積回路のように外見の似た電子部品でも内部の材料が異なる場合もある。このような制約は、対象物を透過せずに表面画像を生成する(反射光画像生成)だけの類の放射を用いるあらゆる他の種類の画像に該当する。例えば、これに限定されないが、赤外線、紫外線及びテラヘルツである。
【0005】
従って、WPCBの価値の決定における速さと精度との間のより良い妥協案をもたらす概念を提供することが望まれている。
【0006】
上述の課題は、本願の独立請求項の主題によって達成される。
【0007】
本発明による更なる実施形態は、本願の従属請求項の主題によって規定される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一局面において、本願発明者は、プリント基板の再生利用を試みる際の一つの問題は、プリント基板廃棄物(WPCB)の価値が人間によって決定されることが多いという事実に由来することに気付いた。本願の第1の局面によると、上述の問題はWPCBを自動的に分析するように構成された装置を用いることで解決される。これにより誤りを最小限に抑えるとともに分析の速さを向上させることができる。更に、発明者は、それぞれのPCBに関連付けられた材料価値スコアを決定することが有利であることを見出した。この材料価値スコアによって、十分な有価材料、特に有価金属がWPCBから回収できるか否かを判断することが可能となる。これにより、再生利用の対象のWPCBの価値評価における精度を向上させることができる。
【0009】
従って、本願のこの局面によると、一実施形態は、プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための装置に関する。材料価値スコアは、例えばWPCB内又はWPCB上の1つ又は2つ以上の所定の材料の含有量に依存することとしても良い。材料価値スコアは、WPCBの金銭的価値を示すこととしても良い。1つ以上の所定の材料は、プリント基板廃棄物からの回収対象の1つ以上の材料であっても良い。所定の材料は、例えば当該装置の使用者によって予め規定されることとしても良い。こうして、WPCBから1つ以上の所定の材料を回収することがそのコストに見合うか否かを材料価値スコアから読み取ることが可能となる。1つ又は2つ以上の所定の材料の含有量は、WPCBにおける代表部品の元素分析に基づいて決定することとしても良い。元素分析は、誘導結合型プラズマ光学発光分光法(ICP―OES)を用いて実行することとしても良い。
【0010】
一実施形態によると、当該装置は、材料価値スコアを決定するように構成され、プリント基板廃棄物又はその部分のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像に基づいて決定を実行するように構成される。ここで、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像は、その派生画像、例えば基本材料分解画像、又は実効原子番号及び面密度に分解して得られた画像を含み得る。当該装置は、例えば、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像からWPCB上の部品を検出して、例えば部品タイプごとの部品数を決定することによって材料価値スコアの決定を実行するように構成しても良い。任意の形態として、当該装置は、WPCB上の部品のサイズ及び/又は重量をデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像から導き出すように構成しても良い。当該装置は、例えば、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像から得られた情報に基づき、WPCBに含まれる、又はWPCBから回収可能な所定の材料の量を算出し、算出された所定の材料の量に基づいて材料価値スコアを決定する。当該装置は、例えば、プリント基板廃棄物又はその部分のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像を取得するように構成されたデュアルエナジー又はスペクトラルX線ユニットを備え、或いは、当該装置は、外部のデュアルエナジー又はスペクトラルX線ユニットから前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像を受け取るように構成される。このようにデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像を用いているのは、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像にはWPCBの向きに関わらずWPCB上の部品が示されるという知見に基づく。その利点として、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像において、WPCBの表・裏両面の部品に関する情報が得られることが挙げられる。隠れる部品がなくなるため、WPCBにおける全ての部品を分析することによって再生利用対象のWPCBの評価精度を向上させることが可能となる。このように、WPCBの価値をより簡易且つ効率的に決定することができる。更に、発明者は、デュアルエナジー又はスペクトラルX線が粉塵や砂塵、土埃の多い環境下の用途で極めて堅牢な画像化技術であることを見出した。従って、砂塵や土埃が付着していてもWPCB上に配置された各部品を区別することが可能となる。これにより高い精度が得られるとともに、意味のある材料価値スコアをWPCBに割り当てることが可能となる。
【0011】
一実施形態によると、当該装置は、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像を機械学習モジュールにかけることによって決定を実行するように構成される。これは、機械学習モジュールによって高い部品検出性能が達成できるという考えに基づく。現在まで、自由にアクセス可能なアノテーション済PCB及びその各部品のX線画像データは存在しない。発明者は、例えば再生利用プロセスの対象の部品の価値に応じて、WPCBの再生利用の対象となる代表部品を選択してアノテーションをすることによって、効率的かつ正確な機械学習モジュールを達成できることを見出した。加えて、発明者は、機械学習モジュールを用いることでWPCBの価値の分析に必要な処理速度が達成できることに気付いた。
【0012】
一実施形態によると、当該装置は、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像からプリント基板廃棄物の部品、例えば集積回路(IC)、タンタルキャパシタ、ボールグリッドアレイ(BGA)、ピングリッドアレイ(PGA)、コネクタ等の電子部品を検出するように構成される。
【0013】
当該装置は、各々の部品タイプにつき、平均材料成分に関する情報を取得するように構成しても良い。例えば、外部装置が各々の部品タイプにつき複数の部品を分析して、1つ以上の材料につき、各部品タイプの複数の部品における各材料の平均含有量を決定することとしても良い。平均含有量は、各部品タイプの部品当たり又は部品の質量当たりの各材料の平均モル濃度又は平均質量で表しても良い。部品の材料の分析は、誘導結合型プラズマ光学発光分光法(ICP―OES)を用いて実行することができる。当該装置は、平均材料成分に関する情報として平均含有量に関する情報を外部装置から受け取ることができる。これに代えて、当該装置は、1つ以上の部品タイプにつき、平均材料成分に関する情報として各部品タイプの部品における1つ以上の材料の平均含有量を示すデータベースを備えることとしても良い。
【0014】
一実施形態によると、当該装置は、各々の部品タイプにつき、及びWPCBからの回収対象の各々の材料につき(例えば少なくとも1つの部品タイプ及び1つの材料につき)、次のステップによって材料価値スコアの決定を実行するように構成しても良い:各部品タイプの部品数を、各部品タイプの部品当たりの各材料の平均質量で乗算して各部品タイプにおける各材料の量・質量を得て、各材料の量・質量の価値を決定するステップ。
【0015】
加えて、当該装置は、全ての値の和を求めることで材料価値スコアを取得する、又は、各々の材料につき各材料に関連付けられた全ての値の和を求めることで材料価値スコアを取得するように構成しても良い。回収対象の材料は、当該装置の使用者によって予め規定されることとしても良い。従って、材料価値スコアは、関心の対象となる材料に依存する。WPCBの材料価値スコアは、決定のために選択された材料に依存することとしても良い。材料が2つ以上の場合、材料価値スコアは、2つ以上の材料の各々につき、個々の値、又は全ての値の和若しくは加重和である単一の値のいずれを示すこととしても良い。各材料の量・質量の価値の決定は、材料のレート・価格に依存することとしても良い。当該装置は、例えば、毎日材料のレート・価格を更新するように構成される。
【0016】
一実施形態によると、当該装置は、デュアルエナジー又は前記スペクトラルX線画像からWPCB全体の重量及び/又はサイズ、及び/又はその部品、例えば電子部品のタイプ、重量及び(任意の形態として)サイズを推定するように構成される。WPCB全体の重量及びサイズに関する情報によって、WPCBに存在する有価材料の含有量を決定することが可能となる。有価材料の含有量の決定の際、当該装置は、WPCB全体の重量及びサイズを、その部品のタイプ、重量及び(任意の形態として)サイズに関する情報と併せて考慮するように構成しても良い。特に、その部品の重量及び/又はサイズに関する情報は、有価材料の含有量の決定において有利である。
【0017】
一実施形態によると、当該装置は、各々の部品タイプにつき、及びWPCBからの回収対象の各々の材料につき(例えば少なくとも1つの部品タイプ及び1つの材料につき)、次のステップによって材料価値スコアの決定を実行するように構成しても良い:部品当たり、各部品の重量を、各部品タイプの質量当たりの各材料の平均質量で乗算して各部品についての各材料の部品特有の量・質量を得て、全ての部品に亘って各材料の部品特有の量・質量の和を求めて各材料の全体的な量・質量を得て、各材料の全体的な量・質量の価値を決定するステップ。
【0018】
これに加えて、当該装置は、全ての値の和を求めて材料価値スコアを取得する、又は、各々の材料につき、各材料に関連付けられた全ての値の和を求めて材料価値スコアを取得するように構成しても良い。回収対象の材料は、当該装置の使用者によって予め規定されることとしても良い。従って、材料価値スコアは、関心の対象となる材料に依存する。WPCBの材料価値スコアは、決定のために選択された材料に依存することとしても良い。材料が2つ以上の場合、材料価値スコアは、2つ以上の材料の各々につき、個々の値、又は全ての値の和である単一の値のいずれを示すこととしても良い。各材料の量・質量の価値の決定は、材料のレート・価格に依存することとしても良い。当該装置は、例えば、毎日材料のレート・価格を更新するように構成される。
【0019】
一実施形態によると、当該装置は、各々の部品、例えば電子部品につき、各部品(例えば電子部品)に関連付けられたタイプ、重量及び/又はサイズに基づいて部品材料価値を決定するように構成される。部品材料価値は、各部品における1つ又は2つ以上の所定の材料の含有量に依存する。1つ以上の所定の材料は、WPCBからの回収対象の材料であっても良い。部品材料価値は、各部品の金銭的価値を示すこととしても良い。部品又は部品における1つ以上の構成要素が再生利用プロセスの後続ステップのうちの1つの妨げとなる場合、材料価値はマイナスになることとしても良い。
【0020】
一実施形態によると、当該装置は、部品材料価値に基づいて材料価値スコアの決定を実行するように構成される。例えば、当該装置は、全ての部品材料価値の和を求めてWPCBの単一の値を入手するように構成される。
【0021】
一実施形態によると、当該装置は、プリント基板廃棄物の両側の面を同時に分析することによって材料価値スコアを取得するように構成される。こうして、両面型のWPCBを効率的に分析することが可能となり、下向きの部品、即ちコンベヤベルト又は支持パッドの方を向いた部品を見逃すことがなくなる。この特徴により、WPCBの各側を別個に評価する必要がなくなり、カメラの方を向いているか否かに関わらず全ての部品を検出することが可能になる。
【0022】
更なる実施形態は、プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための方法に関する。当該方法は、上述の装置と同じ考慮事項に基づく。その他、当該方法は、当該装置に関して記載した全ての特徴及び機能によって完成させることができる。
【0023】
更なる実施形態は、プリント基板廃棄物を分別するためのシステムに関する。当該システムは、プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための上述の装置を備え、加えて当該システムは、複数のプリント基板廃棄物を、上述の装置によって複数のプリント基板廃棄物の各々に割り当てられた材料価値スコアに従ってプリント基板廃棄物についての2つ以上の等級に分類するための分別装置を備える。
【0024】
更なる実施形態は、プリント基板廃棄物を分別するための方法に関する。当該方法は、プリント基板廃棄物又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための上述の方法を備え、加えて当該方法は、複数のプリント基板廃棄物を、上述の方法によって複数のプリント基板廃棄物の各々に割り当てられた材料価値スコアに従ってプリント基板廃棄物についての2つ以上の等級に分類するステップを備える。当該方法は、上述のシステムと同じ考慮事項に基づく。その他、当該方法は、当該システムに関して記載した全ての特徴及び機能によって完成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図面は必ずしも一律の縮尺に従うものではなく、一般的に本発明の原理を説明することを重視したものである。以下の記載においては、本発明の様々な実施形態について以下の図面を参照して説明する。
【0026】
図1図1は、WPCB又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための装置の模式図である。
図2図2は、WPCB又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための装置の詳細な模式図である。
図3図3は、WPCB又はその部分に材料価値スコアを割り当てるための方法のブロック図である。
図4図4は、WPCBを分別するためのシステムの模式図である。
図5図5は、WPCBを分別するための方法のブロック図である。
図6図6は、材料価値スコア決定用のモデルを決定するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[実施形態の詳細な説明]
以下の説明では、等しい要素又は同等の要素、或いは等しい機能又は同等の機能を有する要素は、異なる図に現れる場合でも等しい参照番号又は同等の参照番号を付す。
【0028】
以下の説明では、本発明の各実施形態のより完全な説明を行うために多数の詳細を記載する。しかし、当業者であれば、本発明の各実施形態がこれら特定の詳細なしに実施され得ることが明らかであろう。他方、本発明の各実施形態が分かりにくくなることを避けるために周知の構造及び装置は詳細に示す代わりにブロック図の形式で示す。また、本願明細書に記載のそれぞれ異なる実施形態の特徴は、別段の記載がない限り互いに組み合わせ可能である。
【0029】
図1は、WPCB200又はその部分210に材料価値スコア110、例えば110a又は110bを割り当てるための装置100を示す。材料価値スコア110aは、WPCB200を再生利用する際のWPCB全体の価値を示すものとすることができ、材料価値スコア110bは、WPCB200を再生利用する際のWPCBの部分210の価値を示すものとすることができる。材料価値スコア110は、WPCB200又は部分210から材料を回収することがそのコストに見合うか否かを示すものとすることができる。
【0030】
一実施形態によると、装置100は、WPCB200を複数の部分210に分割して、これらの部分の1つ以上に対して各部に個別の材料価値スコア110bを割り当てるように構成することができる。任意の形態として、装置100は、材料価値スコア110bが最も高い部分210にのみ各部に個別の材料価値スコア110bを割り当てるように構成しても良い。この場合、WPCB200のうちの最も材料を回収するコストに見合う部分210を効率的に指し示すことができる。
【0031】
一実施形態によると、装置100は、WPCB200全体についての材料価値スコア110aと、WPCB200における1つ以上の部分210についての材料価値スコア110bとの両方を示すように構成することができる。全体の材料価値スコア110aによって、WPCB200が廃棄物か、又は再生利用する価値のあるものかを決定することが可能となり、各部に個別の材料価値スコア110bによって、有価材料の回収において最も価値のある部分を区別することが可能となる。
【0032】
一実施形態によると、材料価値スコア110は、プリント基板廃棄物200からの回収対象の1つ又は2つ以上の所定の材料の含有量に依存する。換言すると、材料価値スコア110は、WPCB200にある1つ以上の所定の材料の量、例えばWPCB200の部品220にある1つ以上の所定の材料の量に依存することとしても良い。
【0033】
任意の形態として、装置100は、図2の装置に関して説明する特徴のいずれを備えても良い。
【0034】
図2は、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像取得ユニット120及び材料価値スコア決定ユニット130を備えた装置100を示す。
【0035】
デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像取得ユニット120は、WPCB200又はその部分210のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122を取得するように構成することができる。任意の形態として、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像取得ユニット120を装置100が備えるのではなく、外部のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像取得ユニット120から装置100がデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122を受け取るように構成しても良い。
【0036】
装置100は、プリント基板廃棄物200の両側の面230,240を同時に分析することで材料価値スコア110を取得するように構成される。視覚的画像又はNIR画像に基づく他の各手法とは対照的に、X線画像122は、WPCB200の向きに関わりなくWPCB200上の部品220を示す、即ち表面230及び裏面240上の部品220を同時に検出することができる。更に、砂塵・土埃又は粉塵の多い環境中での用途において、XRT120はより堅牢な画像化技術である。
【0037】
材料価値スコア決定ユニット130は、WPCB200又はその1つ以上の部分210についての材料価値スコア110を決定するように構成される。この決定は、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122(XRT)に基づいて実行される。
【0038】
任意の形態として、材料価値スコア決定ユニット130は、例えば機械学習モジュールである。
【0039】
任意の形態として、材料価値スコア決定ユニット130は、WPCB200の個々の部品220に関してデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122を分析するための画像分析ユニット131を含むことができる。例えば、画像分析ユニット131は、WPCB200上に配置された部品220の部品タイプに関する情報と、部品タイプ当たりの部品220の数に関する情報とを取得するように構成しても良い。任意の形態として、これに加えて、画像分析ユニット131は、部品220のサイズ及び/又は重量に関する情報を取得することとしても良い。
【0040】
材料価値スコア決定ユニット130は、例えば、各々の部品タイプにつき、例えば部品材料価値決定ユニット136を用いて、部品材料価値スコアを決定して複数の部品材料価値スコア112を得るように構成される。部品材料価値スコアは、各部品タイプの部品220の数を、各部品タイプに関連付けられた平均部品材料価値スコアで乗算することにより決定することができる。各平均部品材料価値スコアは、各部品タイプに割り当てられた予め規定された価値スコアとすることができる。部品材料価値決定ユニット136は、複数の平均部品材料価値スコアを示すとともに、各々の平均部品材料価値スコアにつき、その関連付けられた部品タイプを示すデータベースを備えても良い。これに代えて部品材料価値決定ユニット136は、各々の部品タイプにつき、各部品タイプに含まれる有価材料の市場価値の変動に基づいて該当する平均部品材料価値スコアを更新するように構成しても良い。装置100は、例えば複数の部品材料価値スコア112の和を求めることによって、複数の部品材料価値スコア112に基づく材料価値スコア110の決定を実行するように構成される。
【0041】
画像分析ユニット131は、例えば機械学習モジュールである。
【0042】
任意の形態として、装置100は、例えば部品検出ユニット132を用いてプリント基板廃棄物200の部品220をデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122から検出するように構成しても良い。これに加えて、装置100は、例えば部品特性決定ユニット133を用いて部品220のタイプ、重量及び/又はサイズ等の特性をデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122から推定するように構成しても良い。装置100は、各々の部品220につき、各部品220に関連付けられた1つ以上の特性に基づいて部品材料価値を決定するように構成しても良い。
【0043】
装置100は、或る部品タイプのサイズ又は重量当たりの、予め規定された材料の平均質量に関する情報を取得するように構成しても良い。任意の形態として、平均質量は、それぞれ異なる材料及び/又はそれぞれ異なる部品タイプについて取得可能としても良い。平均質量に関する情報と、WPCB200上の個々の部品220のサイズ及び/又は重量に関する情報とによって、装置100は、WPCB200に含まれる所定の材料の量を決定するように構成される。これに加えて、装置100は、WPCB200に含まれる所定の材料のレート・価格を取得し、所定の材料のレート・価格及び所定の材料の量に基づいて材料価値スコア110を決定するように構成しても良い。これは1つ以上の所定の材料について実行することができ、材料価値スコアは個々の材料の価値を示しても、又は全ての所定の材料を合わせた価値を示しても良い。
【0044】
同様に、装置100は、或る部品タイプの部品当たりの、予め規定された材料の平均質量に関する情報を入手するように構成しても良い。任意の形態として、平均質量は、それぞれ異なる材料について、且つ/又はそれぞれ異なる部品タイプについて取得可能とすることができる。平均質量に関する情報と、WPCB200上の個々の部品220の数に関する情報とによって、装置100は、WPCB200に含まれる所定の材料の量を決定するように構成される。これに加えて、装置100は、WPCB200に含まれる所定の材料のレート・価格を取得し、所定の材料のレート・価格及び所定の材料の量に基づいて材料価値スコア110を決定するように構成しても良い。これは1つ以上の所定の材料について実行することができ、材料価値スコアは個々の材料の価値を示しても、又は全ての所定の材料を合わせた価値を示しても良い。
【0045】
図3は、WPCB200又はその部分210への材料価値スコア110の割り当て310のための方法300のブロック図を示す。任意の形態として、方法300は、材料価値スコア110の決定320を備える。決定320は、WPCB220又はその部分210のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122に基づいて実行することができる。決定320は、デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122を機械学習プロセスにかけることで実行するのが有利であると考えられる。
【0046】
方法300は、図1及び/又は図2の装置100に関して説明した特徴及び/又は機能を含むことができる。
【0047】
図4は、プリント基板廃棄物200、例えば200~200を分別するためのシステム400を示す。システム400は、材料価値スコア110、例えば110~110をWPCB200又はその部分210に割り当てるための装置100を備える。これに加えて、システム400は、複数のプリント基板廃棄物200を、装置100により複数のプリント基板廃棄物200の各々に割り当てられた材料価値スコア110に従って、プリント基板廃棄物200についての2つ以上の等級420、例えば420~420に分類するための分別装置410を備える。
【0048】
例えば、第1の等級420は、廃棄物、即ち再生利用するコストに見合わないWPCB200を表し、第2の等級420は、有価WPCB200、即ち再生利用するコストに見合うWPCB200を表すものとすることができる。
【0049】
装置100は、図1及び/又は図2の装置100に関して説明した特徴及び/又は機能を備えることができる。
【0050】
図5は、プリント基板廃棄物200を分別するための方法500のブロック図を示す。方法500は、WPCB200又はその部分210に材料価値スコア110を割り当てるための方法300と、複数のプリント基板廃棄物200を、方法300によって複数のプリント基板廃棄物200の各々に割り当てられた材料価値スコア110に従って、プリント基板廃棄物200についての2つ以上の等級420に分類すること510とを含む。
【0051】
方法300は、図3の方法300に関して説明した特徴及び/又は機能を含むことができる。
【0052】
方法500は、図4の方法400に関して説明した特徴及び/又は機能を含むことができる。
【0053】
図4及び図5は、各々の個々のWPCB200の予測価値、即ち材料価値スコア110に基づいてWPCB200を自動分別するための分別システム400及び方法500を説明するものである。システム400は、コンベヤベルト又はシュート上のWPCB200からデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122(XRT)を取得するものとすることができる。これらの画像122を、前処理の後、例えば深層ニューラルネットワーク(又はその他好適な機械学習方法、例えば画像中の対象物を検出するための方法)に入力して、この深層ニューラルネットワークが部品220、例えばIC、BGA/PGA、タンタルキャパシタ、コネクタ等を検出することとしても良い。システム400は、部品220のタイプ、サイズ及び/又は重量等の特徴に基づいたモデルを用いてWPCB200上の各部品220の価値、即ち部品材料価値を算出する。検出された部品220のサイズ及び重量の両方をX線画像122から推定することとしても良い。
【0054】
このモデルから結果として得られたWPCB200の金銭的価値、即ち複数の部品材料価値112は、後の段階でこれらWPCB200の処理に用いられる個々の冶金学的プロセスに適合させたものとしても良い。更に、WPCB200の価値、即ち材料価値スコア110を予測するためのモデルは、システム400の使用者の実際のプロセス、即ち例えば実際の冶金学的プロセスにおける歩留まり、材料価値の現レート、又はプロセスで妨げとなって価値を低下させる部品に対して適合させたものとしても良い。使用者はWPCB200の予測価値又は価値含有量110についての閾値を設定することができ、その場合、この閾値を下回ればシステム400はWPCBを拒絶して分別排除する、例えばそのWPCBを等級420に分別する。ここでの価値含有量とは、単位質量当たり又は単位面積当たりの価値又は金銭的価値、例えばユーロ/kg又はユーロ/cmを意味する。
【0055】
図6は、材料価値スコア110を決定するための本願明細書に記載された装置100によって使用され得るモデルを決定するための方法600のプロセス図を示す。
【0056】
図6は、例えば、対象物検出用のモデル132のトレーニング、例えば深層学習モデル(DLモデル)のトレーニングを示す。機械学習においては、モデルのトレーニング及び評価に代表データベース(representative database)が不可欠である。従って、第1のステップは、そのような機械可読のデータベース及びラベルベースを現実世界のWPCB200のサンプルから生成することとしても良い。一実験において、発明者は、例えば個々のWPCB200から(例えばWPCBの数は104であり得る)、例えば、部品220(例えば代表部品(representative components))へのアノテーション610を行ってアノテーション済部品(annotated components)612を得た(例えばアノテーション済部品の数は1514であり得る)。例えば、トレーニングのために、WPCB200の部品220にアノテーション610を行い、アノテーションのデータセットやデータベース、即ちアノテーション済部品612を得る。更なるステップとして、WPCBのデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122の取得120に関するものがあり得る。WPCB200のX線画像122に基づいて、且つ同じWPCB200のアノテーション済部品612に基づいて対象物検出用のモデル132をトレーニングすることができる。トレーニング済のモデル132及び/又はトレーニング中のモデル132は、WPCB200の部品を特定、認識又は検出して検出部品614を得るように構成される。
【0057】
一実施形態によると、対象物検出用モデル132は、部品220のタイプ、重量及び/又はサイズ等の特性をデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122から推定するように構成しても良い。
【0058】
これに加えて、方法600は、WPCB200からそれぞれ異なる部品クラスの代表サンプルを準備及び排除するステップを含んでも良い。次に、これらのサンプル即ちWPCB200に対し、例えばICP―OES(誘導結合型プラズマ光学発光分光法。その他元素の含有量が得られるあらゆる方法が利用可能)による分析620を行い、1つ以上の所定の材料、例えば有価金属の含有量622を入手する。この情報、即ち代表部品220及び検出部品614における1つ以上の所定の材料の含有量622によって、モデル130の較正の基本となる真値が得られ、これにより全ての該当する部品、例えば検出部品614の実際の価値、そして最終的にWPCB200の価値110、例えば全ての該当する部品の価値の和又は加重和としてのそれを予測する。WPCB200の代表部品における1つ以上の所定の材料の元素含有量622を得る際、代表部品の元素分析620は適用ケース当たり一回だけ実行されることとしても良い。得られた元素含有量622を用いてモデル130を較正し、価値推定を行なうことができる。
【0059】
代表部品は、集積回路(IC)、タンタルキャパシタ、ボールグリッドアレイ(BGA)、ピングリッドアレイ(PGA)、及び/又はコネクタを含み得る。代表部品の選択は、WPCBからの回収対象の1つ以上の所定の材料に依存することとしても良い。代表部品は、また、再生利用における後続のプロセスステップの妨げとなって結果としてマイナスの価値をもたらす部品、例えば大きなアルミニウムヒートシンク又は有毒物質含有部品を含む場合もある。
【0060】
一実施形態によると、材料価値スコア110を決定するための本願明細書に記載の装置100は、WPCB200のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像122を入手し、対象物検出のためにトレーニングされたモデル132を用いて検出部品614を決定するように構成しても良い。これに加えて、装置100は、価値推定用のモデル130を用いて検出部品614に基づき材料価値スコア110を決定するように構成しても良い。
【0061】
ここから、該当する部品220を検出するように機械学習モデルをトレーニングすることができる。ICP―OESから、あらゆる部品クラスにおける有価材料の含有量が既知となる。X線画像122から推定された重量及び材料の現レートを用いて各部品における各材料の価値を推定することができる。従って、全ての部品の価値の和を求める、即ち複数の部品材料価値112の和を求めることによってWPCB200全体の価値110を算出することができる。後続の冶金学的プロセス及びその他使用者に固有のパラメータに応じて、材料の価値の加重和及び合計値の加重和を用いて(達成可能な利益という意味での)材料価値を予測することができる。実際の重みは、それぞれのプロセスを反映するように調節する必要がある。また、これらの重みは、プロセスにおける所与の材料の回収率を反映するものでも良い。部品によっては、後続のプロセスステップの妨げになる場合に割り当てられるマイナスの価値となることもある。
【0062】
深層学習方法によるWPCB200上の部品220を検出する本願に記載の手法において、発明者は、YOLO[3]及びEfficientDet[4]等の先行技術の対象物検出ネットワークを統合する好適な手法を見出した。データベースのトレーニング及び評価においては、発明者は機械学習における確立された評価スキームに従った。データを3つの個別のセット、即ちトレーニング用、検証用及びテスト用に分割する。検証用は、モデルのトレーニングプロセスを調節してその性能を検証するために用いるものである。この最終モデルが見いだされた後は、テストデータは独立の最終評価として用いられる。発明者が4つの部品クラス、即ちIC、タンタルキャパシタ、コネクタ及びBGA・PGAについての再現度及び精度の調和平均によるスコアを求めたところ、87.83%、82.54%、79.26%、88.89%となった。この部品検出性能と、化学的分析から得られた統計学的知見によると、個々のWEEEのWPCB200からの材料価値スコア110の予測において当該モデルは良好な結果を示している。
【0063】
その利点として、部品220の可視性に関わらず部品220を検出できることが挙げられる。即ち、PCB200が部品220の上(230)又は下(240)のいずれに配置されていても、又は両方に実装されていても、部品220はX線画像122に現れることができる。従って、X線に基づく手法は、画像化プロセス中のPCBの位置及び向きに依存しないため、明示的に位置付けする必要がなく、それでもなおPCB200上の全ての部品220を検出することができる。
【0064】
検出部品614に基づく価値110の評価は、使用者にとって重要な種類の材料等に優先順位を付けたり、材料の部品の回収率といった影響を組み込むことが柔軟にできるため有利である。
【0065】
装置の文脈でいくつかの局面を記載したが、これらの局面は対応する方法の記載をも表すものであり、ブロック又は装置は、方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応することは明らかである。同様に、方法ステップの文脈で記載した局面は、対応する装置の対応するブロック若しくは項目又は特徴の記載をも表す。
【0066】
特定の実現時の要件に応じて本発明の各実施形態はハードウェアで実現しても、又はソフトウェアで実現しても良い。この実現は、デジタル記憶媒体、例えばフロッピーディスク、DVD、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM又はフラッシュメモリであって、電子的に読み出し可能な制御信号を格納しており、プログラム可能なコンピュータシステムと協働する(又は協働可能である)ことにより該当する方法が実行されるようにするものを用いて実行することができる。
【0067】
本発明に従ういくつかの実施形態は、データキャリアであって、電子的に読み出し可能な制御信号を有しており、プログラム可能なコンピュータシステムと協働可能であることにより本願明細書に記載の方法の1つが実行されるようにするものを含む。
【0068】
一般的に、本発明の各実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実現することができ、当該プログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行される際に上述の方法の1つを実行するように動作する。当該プログラムコードは、例えば機械可読キャリアに格納することができる。
【0069】
他の実施形態は、本願明細書に記載の方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムであって、機械可読キャリアに格納されたものを含む。
【0070】
従って、換言すると、本発明の方法の一実施形態は、コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行される際に本願明細書に記載の方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するものである。
【0071】
従って、本発明の方法の更なる実施形態は、本願明細書に記載の方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを記録して含むデータキャリア(又はデジタル記憶媒体、又はコンピュータ可読媒体)である。
【0072】
更なる実施形態は、処理手段、例えばコンピュータ又はプログラム可能論理装置であって、本願明細書に記載の方法の1つを実行するように構成又は適合されたものを含む。
【0073】
更なる実施形態は、本願明細書に記載された方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムをインストールしたコンピュータを含む。
【0074】
実施形態によっては、プログラム可能論理装置(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて、本願明細書に記載の方法におけるいくつか又は全ての機能を実行しても良い。実施形態によっては、フィールドプログラマブルゲートアレイは、マイクロプロセッサと協働して、本願明細書に記載の方法の1つを実行しても良い。一般的に、当該方法は、どのようなハードウェア装置によって実行されても良い。
【0075】
上述の各実施形態は、単に本発明の原理を例示するものである。本願明細書に記載の構成及び詳細を変更及び変形したものが当業者には明らかであることが理解される。従って、本願明細書における各実施形態の記載及び説明として提示された特定の詳細によってではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【0076】
[参考文献]
[1] Mallaiyan Sathiaseelan, M. A., Paradis, O. P., Taheri, S., & Asadizanjani, N. (2021). Why Is Deep Learning Challenging for Printed Circuit Board (PCB) Component Recognition and How Can We Address It?. Cryptography, 5(1), 9.
[2] Silva, L. H. D. S., Junior, A. A., Azevedo, G. O., Oliveira, S. C., & Fernandes, B. J. (2021). Estimating Recycling Return of Integrated Circuits Using Computer Vision on Printed Circuit Boards. Applied Sciences, 11(6), 2808.
[3] Redmon, J., Divvala, S., Girshick, R., & Farhadi, A. (2016). You only look once: Unified, real-time object detection. In Proceedings of the IEEE conference on computer vision and pattern recognition (pp. 779-788).
[4] Tan, M., Pang, R., & Le, Q. V. (2020). Efficientdet: Scalable and efficient object detection. In Proceedings of the IEEE/CVF conference on computer vision and pattern recognition (pp. 10781-10790).
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)に材料価値スコア(110)を割り当てるための装置(100)であって、
前記材料価値スコア(110)を決定するように構成され、前記プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)に基づいて前記決定を実行するように構成される、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100)であって、
前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)を機械学習モジュール(132)にかけることによって前記決定を実行するように構成される、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記機械学習モジュール(132)は、アノテーション済部品(612)のデータセットに基づいてトレーニングされ、前記アノテーション済部品(612)は、WPCB(200)の代表部品のアノテーションを表す、装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(100)であって、
前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)から前記プリント基板廃棄物(200)の部品(220)を検出するように構成される、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置(100)であって、
前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)から前記部品(220)のタイプ、重量及び/又はサイズを推定するように構成される、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(100)であって、
各々の部品(220)につき、各部品(220)に関連付けられたタイプ、重量及び/又はサイズに基づいて部品材料価値を決定するように構成される、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(100)であって、
前記部品材料価値(112)に基づいて前記材料価値スコア(110)の決定を実行するように構成される、装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の装置(100)であって、
前記プリント基板廃棄物(200)の両側の面(230,240)を同時に分析することによって前記材料価値スコア(110)を入手するように構成される、装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の装置(100)であって、
前記材料価値スコア(110)は、前記プリント基板廃棄物(200)からの回収対象の1つ又は2つ以上の所定の材料の含有量に依存する、装置。
【請求項10】
プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)に材料価値スコア(110)を割り当てる(310)ための方法(300)であって、
前記方法は、前記材料価値スコア(110)の決定(320)を備え、前記決定(320)は、前記プリント基板廃棄物(200)又はその部分(210)のデュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)に基づいて実行される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法(300)であって、前記決定(320)は、前記デュアルエナジー又はスペクトラルX線画像(122)を機械学習プロセスにかけることによって実行される、方法。
【請求項12】
プリント基板廃棄物(200)を分別するためのシステム(400)であって、
請求項1からのいずれか一項に記載の、割り当てるための装置(100)と、
複数のプリント基板廃棄物(200)を、前記割り当てるための装置(100)によって前記複数のプリント基板廃棄物(200)の各々に割り当てられた材料価値スコア(110)に従って、プリント基板廃棄物(200)についての2つ以上の等級(420)に分類するための分別装置(410)と、を備える、システム。
【請求項13】
プリント基板廃棄物(200)を分別するための方法(500)であって、
請求項10又は請求項11に記載の、割り当てるための方法(300)と、
複数のプリント基板廃棄物(200)を、前記割り当てるための方法(300)によって前記複数のプリント基板廃棄物(200)の各々に割り当てられた材料価値スコア(110)に従って、プリント基板廃棄物(200)についての2つ以上の等級(420)に分類すること(510)と、を備える、方法。
【外国語明細書】