(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057570
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、組成物、その製造方法、及び、洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/26 20060101AFI20230417BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20230417BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C08G65/26
C11D1/72
C11D1/722
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167103
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】山本 一裕
【テーマコード(参考)】
4H003
4J005
【Fターム(参考)】
4H003AC06
4H003DA01
4H003FA04
4H003FA06
4J005AA04
4J005AA11
4J005AA12
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
【課題】
洗浄度、もしくは、再汚染防止能が優れる疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、当該重合体を含む組成物、その製造方法、当該化合物を含有する洗剤組成物を提供する。
【解決手段】
芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素基、及び、炭素数1~30の炭化水素基による二種類の疎水基を有し、ポリアルキレンオキシドに由来する構造単位を有するアルキレンオキシド重合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される疎水基を有するアルキレンオキシド重合体。
【化1】
(一般式(1)中、
Arは芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素基であり、
R
1は炭素数1~30の炭化水素基を表し、
R
2は炭素数2~6の炭化水素基を表し、
R
3は水素原子または炭素数1~30の炭化水素基を表す。
X
1,X
2は、同一または異なって、直接結合、酸素原子または硫黄原子を表す。
但し、X
1基,X
2基は、同時に直接結合になることはない。
Y
1,Y
2は、同一または異なって、直接結合またはメチレン基を表す。
但し、Y
1基,Y
2基は、同時に直接結合になることはない。
nは1~200の整数である。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、及び、
【化2】
(一般式(1)中、
Arは芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素基であり、
R
1は炭素数1~30の炭化水素基を表し、
R
2は炭素数2~6の炭化水素基を表し、
R
3は水素原子または炭素数1~30の炭化水素基を表す。
X
1,X
2は、同一または異なって、直接結合、酸素原子または硫黄原子を表す。
但し、X
1基,X
2基は、同時に直接結合になることはない。
Y
1,Y
2は、同一または異なって、直接結合またはメチレン基を表す。
但し、Y
1基,Y
2基は、同時に直接結合になることはない。
nは1~200の整数である。)
下記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物を含む
【化3】
(一般式(2)中、
R
2は炭素数2~6の炭化水素基を表し、
R
4は水素原子、Ar、または、炭素数1~30の炭化水素基を表す。
nは1~200の整数である。)
組成物。
【請求項3】
前記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物が、
組成物の総量を100質量%とした場合に、1~20質量%含む
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を含む洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄度、もしくは、再汚染防止能が優れる疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、当該重合体を含む組成物、その製造方法、当該化合物を含有する洗剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高級アルコールやベンジルアルコール等の疎水基を有するアルコールにエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加反応させて得られる疎水基含有アルキレンオキシドが、各種の洗剤組成物に有用であることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、炭素数1~24であって、ヒドロキシル基またはカルボキシル基1個を含む有機化合物にスチレンオキサイドを付加重合させ、更に、その化合物1モルに対して1~45モルの割合で低級アルキレンオキサイドを付加重合させた界面活性剤の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者らは、これまでの検討により、疎水基を有するポリアルキレンオキシド重合体を洗剤組成物に用いることで、再汚染防止能が向上することを見出してきた。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の炭素数1~24であって、ヒドロキシル基またはカルボキシル基1個を含む有機化合物にスチレンオキサイドを付加重合させ、更に、その化合物1モルに対して1~45モルの割合で低級アルキレンオキサイドを付加重合させた界面活性剤は、洗浄度や再汚染防止能に改良の余地があるという課題があった。
【0007】
本開示は欺かる点に鑑みてなされたものであり、洗浄度、もしくは、再汚染防止能が優れる疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、当該重合体を含む組成物、その製造方法、当該化合物を含有する洗剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体は、芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素基、及び、炭素数1~30の炭化水素基による二種類の疎水基を有し、ポリアルキレンオキシドに由来する構造単位を有するアルキレンオキシド重合体である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、洗浄度、もしくは、再汚染防止能が優れる疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、当該重合体を含む組成物、その製造方法、当該化合物を含有する洗剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0011】
なお、これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味し、範囲を示す「A~B」は、A以上B以下であることを示す。また、本開示において、「(メタ)アクリレ-ト」は、「アクリレ-ト」または「メタクリレ-ト」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0012】
〔本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体〕
本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体は、下記一般式(1)で表すことができる。
【0013】
【化1】
(一般式(1)中、
Arは芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素基であり、
R
1は炭素数1~30の炭化水素基を表し、
R
2は炭素数2~6の炭化水素基を表し、
R
3は水素原子または炭素数1~30の炭化水素基を表す。
X
1,X
2は、同一または異なって、直接結合、酸素原子または硫黄原子を表す。
但し、X
1基,X
2基は、同時に直接結合になることはない。
Y
1,Y
2は、同一または異なって、直接結合またはメチレン基を表す。
但し、Y
1基,Y
2基は、同時に直接結合になることはない。
nは1~200の整数である。)
【0014】
一般式(1)中のAr基は、芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素基であれば特に限定はない。芳香環は、一つあるいは、複数有してもよい。例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン等の芳香環を有してもよい。これらの無置換、及び/又は、置換基を有した構造であってもよい。置換基は、炭素数1~14の飽和、及び/又は、不飽和の炭化水素基であってもよい。また、鎖状、及び/又は、分岐状の炭化水素基であってもよい。更に、一部が、ハロゲン等により置換されていてもよい。
Ar基は、芳香環を含む炭素数6~12の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6の炭化水素基である。
あるいは、別の表現として、ナフチル基、フェニル基であることが好ましい。より好ましくは、フェニル基である。
【0015】
一般式(1)中のR1基は、炭素数1~30の炭化水素基であれば、特に限定はない。R1基は、飽和、及び/又は、不飽和の炭化水素基であってもよい。また、鎖状、及び/又は、分岐状の炭化水素基であってもよい。更に、一部が、ハロゲン等により置換されていてもよい。
R1基としては、より好ましくは、炭素数6~24の炭化水素基であり、更に好ましくは、炭素数8~16の炭化水素基であり、最も好ましくは、炭素数10~14の炭化水素基である。
具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などが挙げられる。また、アルケニル基としては、例えば、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基などが挙げられる。なかでも、R1は、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基であることが好ましく、ドデシル基であることがより好ましい。
【0016】
一般式(1)中のR2基は、炭素数2~6の炭化水素基であれば、特に限定はない。R2基は、鎖状、及び/又は、分岐状の炭化水素基であってもよい。より好ましくは、炭素数2~4の炭化水素基であり、更に、好ましくは炭素数2~3の炭化水素基であり、最も好ましくは炭素数2の炭化水素基である。
具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。中でも、エチレン基、プロピレン基から選ばれる1種以上であると、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体に親水性を付与できるために好ましい。
同様に、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体に親水性を付与する観点から、R2基は、炭素数2の炭化水素基であるエチレン基であることが更に好ましい。
【0017】
一般式(1)中のR3基は、水素原子または炭素数1~30の炭化水素基であれば、特に限定はない。
R3基が、炭化水素基である場合、飽和、及び/又は、不飽和の炭化水素基であってもよい。また、鎖状、及び/又は、分岐状の炭化水素基であってもよい。更に、一部が、ハロゲン等により置換されていてもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、テキシル基、2-エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
R3基としては、より好ましくは、水素原子、炭素数1~4の炭化水素基から選ばれる1種以上であることが好ましい。更に、好ましくは、水素原子、及び/又は、メチル基であることが好ましい。
【0018】
一般式(1)中のX1基,X2基、同一または異なって、直接結合、酸素原子または硫黄原子であれば、特に限定はない。但し、X1基,X2基は、同時に直接結合になることはない。X1基,X2基は、好ましくは、それぞれ、酸素原子と直接結合の組み合わせである。
【0019】
一般式(1)中のY1基,Y2基、同一または異なって、直接結合またはメチレン基であれば特に限定はない。但し、Y1基,Y2基は、同時に直接結合になることはない。
【0020】
一般式(1)中のX1基,Y1基、Y2基、X2基が、それぞれ、酸素原子、メチレン基、直接結合、直接結合である場合、下記一般式(1-1)で表すことができる。
【0021】
【化2】
なお、一般式(1-1)中、Ar、R
1、R
2、R
3、nは、前記一般式(1)と同一である。
【0022】
また、一般式(1)中のX1基,Y1基、Y2基、X2基が、それぞれ、酸素原子、メチレン基、メチレン基、酸素原子である場合、下記一般式(1-2)で表すことができる。
【0023】
【化3】
なお、一般式(1-2)中、Ar、R
1、R
2、R
3、nは、前記一般式(1)と同一である。
【0024】
また、一般式(1)中のX1基,Y1基、Y2基、X2基が、それぞれ、直接結合、直接結合、メチレン基、酸素原子である場合、下記一般式(1-3)で表すことができる。
【0025】
【化4】
なお、一般式(1-3)中、Ar、R
1、R
2、R
3、nは、前記一般式(1)と同一である。
【0026】
一般式(1)中のnは1~200の整数であれば特に限定はない。好ましくは、1~100であり、更に好ましくは1~50である。
本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体の洗浄度、もしくは、再汚染防止能を確保する観点から、前述の範囲であることが好ましい。
【0027】
本開示のポリアルキレンオキシド含有化合物の理論分子量は、300~15,000であれば限定はない。好ましくは300~8,000であり、より好ましくは5,000~200,0000である。疎水基を有するアルキレンオキシド重合体の洗浄度、もしくは、再汚染防止能を確保する観点から、前述の範囲であることが好ましい。
【0028】
〔本開示の組成物〕
前記一般式(1)で表される疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、及び、
下記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物を含む、組成物であってもよい。
【0029】
【化5】
一般式(2)中、
R
2は炭素数2~6の炭化水素基を表し、
R
4は水素原子、Ar、または、炭素数1~30の炭化水素基を表す。
nは1~200の整数である。
【0030】
前記一般式(2)中のR2基、nは、前記一般式(1)と同一である。
また、前記一般式(2)中のR4基は、Ar、または、炭素数1~30の炭化水素基を表す。Arは、前記一般式(1)中のAr基と同一である。
更に、炭素数1~30の炭化水素基とは、前記一般式(1)中のR1基と同一である。
【0031】
前記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物が、本開示の組成物に含まれる場合、後述する製造方法(I)~(III)により、副生成物として含まれる前記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物の構造が異なる。構造が異なる置換基は、前記一般式(2)中のR4基である。
具体的には、後述する製造方法(I)、及び、製造方法(II)の場合、R4基は、水素原子、または、Ar基となる。また、製造方法(III)の場合、炭素数1~30の炭化水素基となる。
【0032】
本開示の組成物には、前記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物が、組成物の総量を100質量%とした場合に、20質量%以下含んでもよい。好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは4質量%である。
前記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物は、0質量%でも問題ないが、通常、0.1質量%以上含まれる。あるいは、0.5質量%以上含まれる。
前記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド化合物は、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を製造する際、後述する通り、未反応物として含まれることがある。
【0033】
〔本開示の製造方法〕
本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体の製造方法(I)としては、芳香環を有するアルコール化合物に下記一般式(3)で表されるエポキシ化合物を付加反応させた後、付加反応で生成した水酸基に、アルキレンオキシド化合物を付加反応させることで製造することができる。
【0034】
【化6】
R
1は、前記一般式(1)に記載のR
1基同一である。
【0035】
前記芳香族アルコールの具体例としては、フェノール、p-クロロフェノール、2,3,5-トリクロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタブロモフェノール、p-ブロモフェノール、o-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、p-ベンジルフェノール、p-フェノキシフェノール、o-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、p-エトキシフェノール、o-ブトキシフェノール、p-エチルフェノール、m-エチルフェノール、o-エチルフェノール、p-ブチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、デシルフェノール、p-ニトロフェノール、p-シアノフェノール、p-クレゾール、o-クレゾール、キシレノール、ジエチルフェノール、トリメチルフェノール、カテコール、ジヒドロキシビフェニル、レゾルシノール、ハイドロキノン、フロログルシノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール類;ベンジルアルコール、m-、p-ニトロベンジルアルコール、o-、m-、p-メチルベンジルアルコール、m-ヒドロキシベンジルアルコール、p-エチルベンジルアルコール、2,4-、3,4-、3,5-ジメチルベンジルアルコールを基質として利用しそれぞれのアルデヒド体を合成したが、o-ニトロベンジルアルコール、o-、p-ヒドロキシベンジルアルコール、2,5-ジメチルベンジルアルコール等のベンジルアルコール類;等が挙げられる。
好ましくはベンジルアルコール類であり、より好ましくはベンジルアルコールである。
【0036】
前記一般式(3)で表されるエポキシ化合物の具体例としては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシペンタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシヘプタデカン、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシノナデカン、1,2-エポキシエイコサン等のアルキル基を有するアルキレンオキシド化合物が挙げられる。好ましくは1,2-エポキシテトラデカンである。
【0037】
前記芳香族アルコールと前記一般式(3)で表されるエポキシ化合物を反応させる条件は、アルカリ触媒等を用いて、常法に従って反応することができる。例えば、反応温度は、50~200℃であることが好ましい。より好ましくは100~200℃である。反応時間は30分から5時間であることが好ましい。より好ましくは40分から3時間である。反応温度や反応時間が、上述の範囲であると、ほぼ定量的に反応が進み反応が向上するため、未反応の原料が少なくなるため、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体の洗浄度、もしくは、再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましい。
【0038】
また、製造方法(I)に於けるアルキレンオキシド化合物を付加反応させる反応条件は、常法に従って行うことができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の触媒を用いて、必要に応じて、オートクレーブ等の加圧反応器を用いて、常温から150℃程度の反応温度で行うことができる。後述する製造方法(II)及び製造方法(III)に於けるアルキレンオキシド化合物を付加反応させる反応条件も同様である。
【0039】
また、別の製造方法(II)としては、芳香環を有するアルコール化合物に下記一般式(4)で表されるグリシジルエーテル化合物を付加反応させた後、付加反応で生成した水酸基に、アルキレンオキシド化合物を付加反応させることで製造することができる。
なお、芳香環を有するアルコール化合物は、前記製造方法(I)で用いた化合物と同じである。
【0040】
【化7】
R
1は、前記一般式(1)に記載のR
1基同一である。
【0041】
前記一般式(4)で表されるグリシジルエーテル化合物の具体例としては、ブチルグリシジルエーテル、炭素数8~10のアルキルグリシジルエーテル、炭素数12~14のアルキルグリシジルエーテル等が挙げられる。メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル(ラウリルグリシジルエーテル)、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ノナデシルグリシジルエーテル及びイコシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
好ましくはドデシルグリシジルエーテル(ラウリルグリシジルエーテル)である。
【0042】
前記芳香族アルコールと前記一般式(4)で表されるグリシジルエーテル化合物を反応させる条件は、アルカリ触媒等を用いて、常法に従って反応することができる。例えば、反応温度は、50~200℃であることが好ましい。より好ましくは100~200℃である。反応時間は30分から5時間であることが好ましい。より好ましくは40分から3時間である。反応温度や反応時間が、上述の範囲であると、ほぼ定量的に反応が進み反応が向上するため、未反応の原料が少なくなるため、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体の洗浄度、もしくは、再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましい。
【0043】
また、別の製造方法(III)としては、炭素数1~30の炭化水素基を有するアルコール化合物に下記一般式(5)で表されるエポキシ化合物を付加反応させた後、付加反応で生成した水酸基に、アルキレンオキシド化合物を付加反応させることで製造することができる。
なお、炭素数1~30の炭化水素基は、前記一般式(1)のR1基と同じである。
【0044】
炭素数1~30の炭化水素基を有するアルコール化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール等の低級アルコール;炭素数8~24の脂肪族アルコールが挙げられる。
好ましくは炭素数8~24の脂肪族アルコールであり、更に好ましくは、炭素数10~18のの脂肪族アルコールであり、最も好ましくは、炭素数12~14の脂肪族アルコールである。
具体的には、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、イコシルアルコールなどが挙げられる。また、アルケニルアルコールとしては、例えば、ペンテノール、ヘキサナール、ヘプテナール、オクテナール、ノネナール、デシレンアルコール、ウンデシレンアルコール、ドデシレンアルコール、トリデシレンアルコール、テトラデシレンアルコール、ペンタデシレンアルコール、ヘキサデシレンアルコール、ヘプタデシレンアルコール、オクタデシレンアルコール、ノナデシレンアルコール、イコシレン基などが挙げられる。なかでも、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコールであることが好ましく、ドデシルアルコールであることがより好ましい。
【0045】
【化8】
一般式(5)中、Ar、Y
1、X
1は、前記一般式(1)に記載のAr基と同一である。
【0046】
前記一般式(5)で表される芳香環を有するエポキシ化合物の具体例としては、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0047】
前記炭素数1~30の炭化水素基を有するアルコール化合物に前記一般式(5)で表されるエポキシ化合物を反応させる条件は、アルカリ触媒等を用いて、常法に従って反応することができる。例えば、反応温度は、50~200℃であることが好ましい。より好ましくは100~200℃である。反応時間は30分から5時間であることが好ましい。より好ましくは40分から3時間である。反応温度や反応時間が、上述の範囲であると、ほぼ定量的に反応が進み反応が向上するため、未反応の原料が少なくなるため、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体の洗浄度、もしくは、再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましい。
【0048】
前記製造方法(I)~(III)には、アルコール化合物(前記芳香族アルコール、及び/又は、前記炭素数1~30の炭化水素基を有するアルコール化合物)とエポキシ化合物(前記一般式(3)~(5)で表される化合物)の反応工程があるが、反応率が必ずしも100%にならないため、未反応のアルコール化合物(前記芳香族アルコール、及び/又は、前記炭素数1~30の炭化水素基を有するアルコール化合物)と未反応のエポキシ化合物(前記一般式(3)~(5)で表される化合物)、あるいは、未反応のエポキシ化合物(前記一般式(3)~(5)で表される化合物)と反応系内に微量に存在する水やその他不純物と未反応の前記エポキシ化合物が反応した副生物が存在することがある。
【0049】
未反応のアルコール化合物(前記芳香族アルコール、及び/又は、前記炭素数1~30の炭化水素基を有するアルコール化合物)、及び/又は、未反応のエポキシ化合物(前記一般式(3)~(5)で表される化合物)は、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を含む組成物として、組成物の総量を100質量%とした場合に、組成物の総量を100質量%とした場合に、20質量%以下含んでもよい。好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは4質量%である。また、0質量%でも問題ないが、通常、0.1質量%以上含まれる。あるいは、0.5質量%以上含まれる。
【0050】
未反応のエポキシ化合物(前記一般式(3)~(5)で表される化合物)と反応系内に微量に存在する水やその他不純物と未反応の前記エポキシ化合物が反応した副生物は、
本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を含む組成物として、組成物の総量を100質量%とした場合に、1~15質量%含んでもよい。好ましくは1~12質量%であり、より好ましくは1~10質量%である。
【0051】
〔本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体の用途〕
本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体は、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤、分散剤、繊維処理剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、セメント添加剤、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー等に好適に用いることができる。中でも、洗剤用ビルダー、洗剤に好適に用いることができる。
【0052】
本開示は更に、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体、又は、本開示の製造方法により製造されてなる疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を必須成分とする洗剤用ビルダー、洗剤でもある。
【0053】
<洗剤用ビルダー、洗剤組成物>
本開示の洗剤用ビルダーは、洗浄中の衣類等に汚れが再付着するのを防止するための作用を発揮する。本開示の共重合体は、カルボキシル基の電荷反発の作用により、泥汚れを強力に分散し、また剥がれた泥汚れを分散させることで衣類に再付着することを防止することにより、白い衣類の白さをより高めることが出来、洗剤の付加価値を大幅に高めることが出来る。また粉末洗剤に用いられるゼオライトを分散させる能力が高く洗剤粉末を製造する際の分散剤としての効果も高い。
本開示の洗剤用ビルダーは、界面活性剤との相溶性に優れ、得られる洗剤が高濃縮の液体洗剤となる点から、液体洗剤用ビルダーとしても好適に用いることができる。界面活性剤との相溶性に優れることにより、液体洗剤に用いた場合の透明性が良好となり、濁りが原因として起こる液体洗剤の分離の問題を防ぐことができる。また、相溶性が優れることにより、高濃縮の液体洗剤とすることができ、液体洗剤の洗浄能力を向上することができる。本開示の洗剤用ビルダーは、液体洗剤に配合された際に優れた増粘効果を示すものである。従って、使用時の液ダレ等を抑制するため取扱い性に優れるものである。
【0054】
本開示の洗剤ビルダーは、再汚染防止能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質な剤性能で安定性に優れた洗剤ビルダーとすることができる。
【0055】
前記洗浄能力は、洗浄率によって判断することができる。洗浄率は、以下の方法により求めることができる。
【0056】
以下の方法により測定された値と下記式により洗浄率(%)を求める。
洗浄力(%)=
(洗浄後の人工汚染布の白色度-洗浄前の人工汚染布の白色度)÷(人工汚染布の元白布(EMPA221)の白色度-洗浄前の人工汚染布の白色度)×100
前記洗浄率に関し、疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を含む組成物により構成される洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤又は分散剤であって、洗浄率が、EMPA164を用いた場合に7.3%以上、又は、EMPA106を用いた場合に17.4%以上であるものもまた、本開示の1つである。このような疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を含む組成物、すなわち、洗剤用ビルダー、洗剤の中でも、これら2つの特性、すなわちEMPA164を用いた場合の洗浄率、及び、EMPA106を用いた場合の洗浄率の両方を満たすものが好ましい。また、EMPA164を用いた場合の洗浄率としては、7.4%以上であることが好ましい。EMPA106を用いた場合の洗浄率としては、17.5%以上であることが好ましい。より好ましくは、17.6%以上である。なお、上記洗浄率の測定に用いる人工汚染布EMPA164及び106とは、布に一定の汚れを付着させた汚れ試験用の標準試料であり、EMPA164は、綿の白布(EMPA221)に草の汚れを付着させたものであり、EMPA106は、綿の白布(EMPA221)にカーボンブラックと鉱油の汚れを付着させたものである。
【0057】
前記洗剤ビルダーにおける疎水基を有するアルキレンオキシド重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の洗剤ビルダーに用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本開示の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0058】
前記洗剤は、粉末洗剤であってもよいし、液体洗剤であってもよいが、疎水基を有するアルキレンオキシド重合体が液体洗剤との溶解性に優れる点から、液体洗剤が好ましい。上記洗剤には、疎水基を有するアルキレンオキシド重合体以外に、通常、洗剤に用いられる添加剤を用いることができる。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン-チオ尿素等のよごれ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0059】
前記洗剤に用いる場合、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体は、洗剤100質量%に対して0.1~20質量%添加することが好ましい。0.1質量%未満であると、洗剤の洗浄力が不充分になるおそれがあり、20質量%を超えると、不経済になるおそれがある。
【0060】
なお、前記洗剤は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。
【0061】
前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、これらの界面活性剤は1種又は2種以上を使用することができる。2種以上使用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを合わせた使用量は、全界面活性剤100質量%に対して50質量%以上が好ましい。より好ましくは、60質量%以上であり、更に好ましくは、70質量%以上であり、特に好ましくは、80質量%以上である。
【0062】
前記アニオン系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。上記アニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0063】
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。上記ノニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
前記カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。
前記両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。
上記カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0064】
前記界面活性剤の配合割合は、通常、液体洗剤100質量%に対して10~60質量%であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上、50質量%以下であり、更に好ましくは、20質量%以上、45質量%以下であり、特に好ましくは、25質量%以上、40質量%以下である。界面活性剤の配合割合が10質量%未満であると、充分な洗浄力を発揮できなくなるおそれがあり、60質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0065】
前記液体洗剤用ビルダーの配合割合は、通常、液体洗剤100質量%に対して0.1~20質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、15質量%以下であり、より好ましくは、0.3質量%以上、10質量%以下であり、更に好ましくは、0.4質量%以上、8質量%以下であり、特に好ましくは、0.5質量%以上、5質量%以下である。液体洗剤用ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがあり、20質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0066】
前記液体洗剤に含まれる水分量は、通常、液体洗剤100質量%に対して0.1~75質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、70質量%以下であり、更に好ましくは、0.5質量%以上、65質量%以下であり、特に好ましくは、0.7質量%以上、60質量%以下であり、より特に好ましくは、1質量%以上、55質量%以下であり、最も好ましくは、1.5質量%以上、50質量%以下である。
【0067】
前記液体洗剤は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましい。より好ましくは、150mg/L以下であり、更に好ましくは、120mg/L以下であり、特に好ましくは、100mg/L以下であり、最も好ましくは、50mg/L以下である。
【0068】
また、本開示の疎水基を有するアルキレンオキシド重合体を液体洗剤に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下が好ましい。より好ましくは、400mg/L以下であり、更に好ましくは、300mg/L以下であり、特に好ましくは、200mg/L以下であり、最も好ましくは、100mg/L以下である。カオリン濁度は、例えば、下記の方法により測定することができる。
【0069】
(カオリン濁度の測定方法)
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTurbidity(カオリン濁度 :mg/L)を測定する。
【0070】
本開示の洗剤に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。上記酵素の添加量は、洗剤100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
【0071】
前記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸、MGDA(メチルグリシンジ酢酸)、HIDS(ヒドロキシイミノジ酢酸)等が好適である。水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
【0072】
前記洗剤は、分散能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【実施例0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0074】
<複合汚れの洗浄力評価試験>
(1)5cm×5cmの人工汚染布PC-S―94(CFT社製)のLab表色系のL値、a値、b値を反射率計(分光式色差計、日本電色工業株式会社製、製品名:SE6000)を用いて測定した。
(2)塩化カルシウム二水和物56.8g、塩化マグネシウム六水和物26.1に純水を加えて、硬水母液(i)を調整した。
(3)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王製ネオペレックスG-25、以下LASともいう)11.6gに純水88.4gを加えて3%LAS水溶液(ii)を100g調製した。
(4)4000gの純水に硬水母液(i)を20g、3%LAS水溶液(ii)を54g加え、撹拌を実施し、洗浄液(iii)を調製した。
(5)すすぎのために4000gの純水に硬水母液(i)を20g加えて撹拌しすすぎ液(iv)を調製した。
(6)Tergot-o-meter(大栄科学社製、製品名:TM-4)内の各ポットに洗浄液(iii)1000gずつ加え、さらに評価サンプルの固形分1.5%水溶液を2.7mLずつ、各ポットにそれぞれ加え撹拌した。
(7)ポット内の温度を25℃に調温し、PC-S―94を3枚、浴比調整のための綿布Test fabrics社製5cm×5cmのStyle#460)50gを各ポットにそれぞれ入れ、撹拌後1分間漬け置きした。
(8)漬け置き後、150rpmで10分間撹拌した。
(9)各ポットから汚染布を取り出し、手で水を切り、すすぎ液(iv)1000gを各ポットに入れ25℃に調温し、150rpmで5分間撹拌した。
(10)(9)の操作をもう1回繰り返した。
(11)各ポットから汚染布を取り出し、手で水を切り、室温で乾燥させた後、上記分光色差計にて再度、汚染布のL値、a値、b値を反射率にて測定した。
(10)以上の測定結果から下式により洗浄度(洗浄力)を求めた。
L
before, L
afterはそれぞれ洗浄前後のL値、a
before, a
afterはそれぞれ洗浄前後のa値、b
before, b
afterはそれぞれ洗浄前後のb値を表す。
洗浄度の値が大きいほど、洗浄力が良好であることを意味する。
【0075】
<カーボンブラックの再汚染防止評価>
下記の洗浄工程、すすぎ工程、乾燥工程をこの順序で行う洗濯処理を3回繰り返し、布へのカーボンブラックの再汚染防止能を測定した。
洗浄工程:
被洗物として、下記の綿布2種類を用いた。
綿布(1):再汚染判定布として綿メリヤス(谷頭商店製)5cm×5cmを5枚用意した。
綿布(2):Testfabrics社より入手した綿布を綿布(1)と合わせて30gになるように用意した。
界面活性剤として、3%LAS水溶液と、各評価サンプルの固形分1.5%水溶液を用意した。
Tergot-o-meter(大栄科学社製、製品名:TM-4)内に、25℃の15°DH硬水(塩化カルシウム及び塩化マグネシウムで調製。Ca/Mg=3(質量比))900mL、上記3%LAS水溶液7.5gとカーボンブラック(以下CBともいう)0.05gを混合した汚染液、評価サンプル1.5%水溶液を0.498g、並びに綿布(1)及び(2)を投入した。その後撹拌速度120rpm、25℃で10分間洗浄を行った。
すすぎ工程:
洗浄工程後の被洗物と泥汚染布を、1.5分間脱水した後、25℃の15°DH硬水900mLを入れ、120rpm、25℃で3分間すすいだ。この操作(脱水およびすすぎ)を2回繰り返した。
乾燥工程:
すすぎ工程後の被洗物と泥汚染布を1.5分間脱水した後、綿布(1)のみ取り出し、綿布で挟み、アイロンで乾燥した。
上記洗濯処理を1~3回行った綿布(1)及び洗濯処理前の綿布(1)について、反射率計(分光式色差計、日本電色工業株式会社製、製品名:SE6000)を用い、反射率(Z値)を測定し、下記式より再汚染防止率を求めた。
再汚染防止率=(洗濯処理を1~3回行った後の綿布(1)のZ値)/(洗濯処理前の綿布(1)のZ値)×100
【0076】
<中間体(1)の合成例>
(1,2-エポキシテトラデカン-ベンジルアルコール)の合成
温度計、攪拌機及び窒素導入管を備えた容量300mLのガラス製四つ口ナスフラスコ反
応容器に、ベンジルアルコール(富士フィルム和光純薬製、以下、BnOHという。)49.7g(0.46mol)、水酸化カリウム2.58g(富士フィルム和光純薬製、以下、KOH)を仕込み、120℃で1時間100ml/minで窒素バブリングを実施した。窒素流量を50ml/minにした後、1,2-エポキシテトラデカン(東京化成工業製)を97.7g(0.46mol))を反応容器内に滴下ロートで60分かけて滴下し、窒素雰囲気下で3時間その温度を保持し、反応の粗生成物を得た。粗生成物を500ml分液漏斗に移し、150 gの純水を加えて分液を実施した。有機層を回収後、再度150gの純水を加えて、分液を実施した。その後、有機層を回収し、有機層に含まれる水をエバポレーションによって除去し、芳香環を有するアルキレンアルコール化合物(以下、中間体(1))を得た。
【0077】
<実施例1>
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えた容量1LのSUS製オートクレーブ
反応容器に、中間体(1)89.7g(0.28mоl)、触媒として水酸化カリウム
0.224g(4.00mmоl)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰
囲気下で130℃まで加熱した。その後、反応容器内を真空ポンプで1.8kPa
まで減圧状態にして、撹拌下で1時間脱水を行った。そして安全圧下で150±5℃を保
持したままエチレンオキシド(以下、EOという)160.4g(3.64mol)を2.5時間かけて反応器内に導入し、導入後さらに30分間その温度を保持した。その後、反応容器内からEO13モル付加物の中間体92.6gを抜き出した。再度、EOを62.0g(1.41mol)を1時間かけて反応容器内に導入し、さらに30分間その温度を保持した。その後、EO21モル付加物の中間体を59.5g抜き出した。再度、EOを22.2g(0.504mol)を30分間かけて反応容器内に導入し、さらに30分間その温度を保持した。その後、EO25モル付加物の中間体を87.9g抜き出した。再度、EOを41.8g(0.95mol)を20分間かけて反応容器内に導入し、さらに30分間その温度を保持したのち、室温まで冷却した。こうして中間体(1)に平均40モルのEOを付加したポリアルキレングリコール化合物(以下PAG化合物という)(1)を得た。
【0078】
実施例1で得られたPAG化合物(1)、比較例1として日本乳化剤株式会社製ニューコール2320(炭素数12~13の第1級アルコールに酸化エチレンを平均20モル付加した化合物であり、以下NC2320とも称する)、比較例2としてフェノールにEOを50モル付加した化合物(以下、Phenol-EO50とも称する)について、上記複合汚れの洗浄力評価試験の結果を表1に示した。
【0079】
また実施例1で得られたPAG化合物(1)、比較例3として1-ドデカノールにEOを25モル付加した化合物(以下、C12-EO25とも称する)について、上記再汚染防止評価の結果を表2に示した。実施例1のPAG化合物と比較例3のC12―EO25は同程度のHLBである。
【0080】
【0081】