(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057581
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】生産監視装置、生産監視プログラム、生産監視方法及び生産監視システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230417BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230417BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167121
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】512319232
【氏名又は名称】株式会社KMC
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 声喜
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA34
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB05
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB17
3C100BB33
3C100CC02
3C100DD03
3C100DD05
3C100DD22
3C100DD32
3C100DD33
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】作業者の個人差に拠らずに良好な生産結果を得る。
【解決手段】生産監視装置は、標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラから、前記設定値を収集し、前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサから、前記実際値を収集し、前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末から、前記作業者IDを収集する収集部と、前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する特定部と、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラから、前記設定値を収集し、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサから、前記実際値を収集し、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末から、前記作業者IDを収集する
収集部と、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する特定部と、
を具備する生産監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生産監視装置であって、
前記収集部は、さらに、前記生産機械の生産結果を収集し、
前記特定部は、さらに、前記生産結果を特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の生産結果を特定する
生産監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生産監視装置であって、
前記生産結果は、サイクルタイム及び/又は不良率を含む
生産監視装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の生産監視装置であって、
複数の異なる前記作業者IDにより識別される複数の異なる前記作業者が決定した前記設定値、前記実際値及び前記生産結果を比較して、最良の生産結果が得られたときの前記設定値及び前記実際値と前記設定値を決定した作業者を判断する比較分析部
をさらに具備する生産監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の生産監視装置であって、
前記最良の生産結果が得られたときの前記実際値と前記標準値とを比較し、前記実際値と前記標準値との差が閾値以上であると判断すると、前記実際値との差が前記閾値未満となるように新規な標準値を再設定する再設定部
をさらに具備する生産監視装置。
【請求項6】
請求項5に記載の生産監視装置であって、
前記再設定部は、時期及び/又は気象条件に応じて複数の異なる新規な標準値を再設定する
生産監視装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の生産監視装置であって、
前記生産機械は、本体と、前記本体に着脱可能な部品と、を含み、
前記部品は、前記本体に着脱可能な複数の個体の何れかであり、
前記複数の個体は、それぞれ、個体IDにより識別され、
前記収集部は、さらに、前記本体に装着された個体を識別する個体IDを収集し、
前記特定部は、前記個体IDを特定する日時、前記設定値を特定する日時及び前記実際値を特定する日時に基づき、前記個体IDにより識別される前記個体が装着されたときの前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定し、
前記再設定部は、前記個体IDにより識別される個々の個体毎に、複数の異なる新規な標準値を再設定する
生産監視装置。
【請求項8】
請求項7に記載の生産監視装置であって、
各個体は、それぞれ、光学的に読み取り可能であり前記個体IDに紐付けられた個体IDコードを有し、
前記作業者端末は、前記個体IDコードを光学的に読み取り、前記個体IDコードに紐付けられた前記個体IDを取得し、前記個体IDを前記生産監視装置に供給し、
前記収集部は、前記作業者端末が取得した前記個体IDコードを収集する
生産監視装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の生産監視装置であって、
前記作業者は、光学的に読み取り可能であり前記作業者IDに紐付けられた作業者IDコードを有し、
前記作業者端末は、前記作業者IDコードを光学的に読み取り、前記作業者IDコードに紐付けられた前記作業者IDを取得し、前記作業者IDを前記生産監視装置に供給し、
前記収集部は、前記作業者端末が取得した前記作業者IDコードを収集する
生産監視装置。
【請求項10】
生産監視装置のコンピュータを、
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラから、前記設定値を収集し、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサから、前記実際値を収集し、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末から、前記作業者IDを収集する
収集部と、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する特定部
として動作させる生産監視プログラム。
【請求項11】
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラから、前記設定値を収集し、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサから、前記実際値を収集し、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末から、前記作業者IDを収集し、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する
生産監視方法。
【請求項12】
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラと、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサと、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末と、
前記コントローラから前記設定値を収集し、前記センサから前記実際値を収集し、前記作業者端末から前記作業者IDを収集する収集部と、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する特定部と、
を有する生産監視装置と、
を具備する生産監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機やプレス機などの生産設備による生産を監視する生産監視装置、生産監視システム、生産監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインにおいては、生産される製品の品質特性に影響する生産時の温度、圧力などの計測データなどを生産プロセス中で収集し、これらの計測データを生産監視装置で集中的に管理することが行われている。
【0003】
特許文献1には、加工機が加工した一製品ごとに、複数種類の監視データのそれぞれのしきい値に基づき加工機のそれぞれの監視データを評価し、一製品ごとの評価結果に基づき加工機により加工された製品を分別する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、その
図28などを参照すれば、マッピングデータから、部品精度の情報を見ながら、金型メンテナンス時期、或いは金型部品の再製作、冷却水や金型温度の設定値、成形機の設定値(保圧、ノズル温度等)等の判断をリアルタイムに、かつ、適切に行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-046293号公報
【特許文献2】特開2018-073329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金型を使用した成形品の量産には、例えば、以下の様な課題がある。
【0007】
第1に、量産時の成形条件は、概ね標準成形条件が設定されているが、実際は現場の作業者に一任され、始業時のトライ成形の状況によって変更されている。したがって、そこに作業者のスキル差が生じて品質のばらつきが生じている。
【0008】
第2に、現場で変更される成形条件は、管理側では把握されておらず、標準成形条件が守られない状況で現場は運営されており、変更記録もなく成形不良の原因追及ができない。品質だけでなく、成形サイクルも変動し、製造原価のばらつきになっている。
【0009】
第3に、成形条件は現場作業者任せになっている状況で、最適な成形条件を現場作業者に提供できない。
【0010】
第4に、作業者が設定した成形条件であっても、成形機本体の作動が必ずしも設定値通り動作しているとは限らない。従って、最適成形条件支援には、作業者設定値と実際の成形機の稼働データの比較が必要で、その差分の調整を成形条件で行う必要がある。
【0011】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、作業者の個人差に拠らずに良好な生産結果を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態に係る生産監視装置は、
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラから、前記設定値を収集し、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサから、前記実際値を収集し、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末から、前記作業者IDを収集する
収集部と、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する特定部と、
を具備する。
【0013】
これにより、どの作業者がどのような設定値を設定したのか、この設定値を設定したときの実際値はどれだけ設定値から差があるのか、を管理者又は作業者等が特定することが出来る。
【0014】
前記収集部は、さらに、前記生産機械の生産結果を収集し、
前記特定部は、さらに、前記生産結果を特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の生産結果を特定してもよい。
【0015】
これにより、どの作業者がどのような設定値を設定したのか、この設定値を設定したときの実際値はどれだけ設定値から差があるのか、この場合にどのような生産結果が得られたか、を管理者又は作業者等が特定することが出来る。
【0016】
前記生産結果は、サイクルタイム及び/又は不良率を含んでもよい。
【0017】
これにより、成形不良、成形サイクル変動、製造原価のばらつき等の問題が発生した場合に、原因を追及することが可能となる。
【0018】
生産監視装置は、
複数の異なる前記作業者IDにより識別される複数の異なる前記作業者が決定した前記設定値、前記実際値及び前記生産結果を比較して、最良の生産結果が得られたときの前記設定値及び前記実際値と前記設定値を決定した作業者を判断する比較分析部
をさらに具備してもよい。
【0019】
これにより、どの作業者がどのような設定値を設定したときに最良の生産結果が得られたか、を管理者又は作業者等が特定することが出来る。これにより、良好な生産結果を得られなかった作業者を特定し、その作業者を指導及び支援することが可能となる。
【0020】
生産監視装置は、
前記最良の生産結果が得られたときの前記実際値と前記標準値とを比較し、前記実際値と前記標準値との差が閾値以上であると判断すると、前記実際値との差が前記閾値未満となるように新規な標準値を再設定する再設定部
をさらに具備してもよい。
【0021】
これにより、作業者は今後、最良の生産結果に基づき再設定された新規な標準値に基づき、設定値を決定することが出来、作業者の個人差(スキル差、熟練度)に拠らずに品質のばらつきを抑えて良好な生産結果を得ることを図れる。
【0022】
前記再設定部は、時期及び/又は気象条件に応じて複数の異なる新規な標準値を再設定してもよい。
【0023】
これにより、作業者が時期及び/又は気象条件を意識せずに最適な設定値を設定することが出来、作業者の個人差(スキル差、熟練度)に拠らずに品質のばらつきを抑えて良好な生産結果を得ることを図れる。
【0024】
前記生産機械は、本体と、前記本体に着脱可能な部品と、を含み、
前記部品は、前記本体に着脱可能な複数の個体の何れかであり、
前記複数の個体は、それぞれ、個体IDにより識別され、
前記収集部は、さらに、前記本体に装着された個体を識別する個体IDを収集し、
前記特定部は、前記個体IDを特定する日時、前記設定値を特定する日時及び前記実際値を特定する日時に基づき、前記個体IDにより識別される前記個体が装着されたときの前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定し、
前記再設定部は、前記個体IDにより識別される個々の個体毎に、複数の異なる新規な標準値を再設定する
してもよい。
【0025】
部品は、個体毎の使用状況に応じて摩耗する等して経年劣化し、個体毎にコンディションが異なる。また、個体毎の摩耗状態等のコンディションは通常測定されない。このため、部品の個体毎に異なる標準値を設定すれば、作業者が部品の個体差を意識せずに最適な設定値を設定することが出来、作業者の個人差(スキル差、熟練度)に拠らずに品質のばらつきを抑えて良好な生産結果を得ることを図れる。
【0026】
各個体は、それぞれ、光学的に読み取り可能であり前記個体IDに紐付けられた個体IDコードを有し、
前記作業者端末は、前記個体IDコードを光学的に読み取り、前記個体IDコードに紐付けられた前記個体IDを取得し、前記個体IDを前記生産監視装置に供給し、
前記収集部は、前記作業者端末が取得した前記個体IDコードを収集してもよい。
【0027】
これにより、生産監視装置の収集部は、作業者端末から、個体IDを取得し、個体IDを特定する日時を関連付けて個体IDを時系列的に記憶することができる。
【0028】
前記作業者は、光学的に読み取り可能であり前記作業者IDに紐付けられた作業者IDコードを有し、
前記作業者端末は、前記作業者IDコードを光学的に読み取り、前記作業者IDコードに紐付けられた前記作業者IDを取得し、前記作業者IDを前記生産監視装置に供給し、
前記収集部は、前記作業者端末が取得した前記作業者IDコードを収集してもよい。
【0029】
これにより、生産監視装置の収集部は、作業者端末から作業者IDを収集し、作業者IDを特定する日時を関連付けて作業者IDを時系列的に記憶することができる。
【0030】
本発明の一形態に係る生産監視プログラムは、
生産監視装置のコンピュータを、
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラから、前記設定値を収集し、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサから、前記実際値を収集し、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末から、前記作業者IDを収集する
収集部と、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する特定部
として動作させる。
【0031】
本発明の一形態に係る生産監視方法は、
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラから、前記設定値を収集し、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサから、前記実際値を収集し、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末から、前記作業者IDを収集し、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する。
【0032】
本発明の一形態に係る生産監視システムは、
標準値を基準として作業者が決定した設定値に基づき生産機械を制御するコントローラと、
前記設定値に基づき制御されて動作する前記生産機械の実際値を検出するセンサと、
前記設定値を決定した前記作業者を識別する作業者IDを取得する作業者端末と、
前記コントローラから前記設定値を収集し、前記センサから前記実際値を収集し、前記作業者端末から前記作業者IDを収集する収集部と、
前記設定値を特定する日時、前記実際値を特定する日時及び前記作業者IDを特定する日時に基づき、前記作業者IDにより識別される前記作業者が決定した前記設定値及び前記設定値に基づく前記実際値を特定する特定部と、
を有する生産監視装置と、
を具備する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、作業者の個人差に拠らずに良好な生産結果を得ることを図れる。
【0034】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生産監視システムを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0037】
1.生産監視システムの概要
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係る生産監視システムを模式的に示す。
【0039】
生産監視システム1は、生産機械10に設けられた複数のセンサ13と、コントローラ20と、作業者端末30と、生産監視装置40と、を有する。作業者端末30は、コントローラ20及び生産監視装置40と、無線通信可能に接続される。コントローラ20及び生産監視装置40は、無線通信可能に接続される。コントローラ20及び生産機械10は、有線又は無線通信可能に接続される。複数のセンサ13と生産監視装置40とは、有線又は無線通信可能に接続される。
【0040】
生産機械10は、工場等に設置され、プロダクトを連続的に生産する機械であり、例えば射出成形機である。以下、生産機械10が射出成形機である場合を主に説明する。生産機械10は、本体11と、本体11に着脱可能な部品12と、を含む。
【0041】
本体11は、成形機、温調器及び乾燥機等の設備を含む。成形機は、例えば、ホッパ、射出機構及び型締機構等の部位を含む。温調器は、加熱シリンダ及びヒータ等を含む。
【0042】
部品12は、例えば金型である。部品12は、本体11に着脱可能な複数の個体の何れかである。言い換えれば、部品12として同じ種類の金型であって異なる複数の個体が存在し、何れかの個体が部品12として本体11に装着される。部品12としての複数の個体は、それぞれ、個体IDにより識別される。具体的には、部品12としての各個体は、それぞれ、光学的に読み取り可能な個体IDコード14を有する。具体的には、部品12には、物理的な銘板が装着され、銘板には光学的に読み取り可能な個体IDコード14が記載される。個体IDコード14は、例えば、QR(登録商標)コード又はバーコード等である。個体IDコード14には、個体ID(シリアル番号等)が紐付けられている。
【0043】
生産機械10には、複数のセンサ13が設けられる。複数のセンサ13は、内蔵でもよいし、後付けでもよい。複数のセンサ13は、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12について、様々な管理項目の実際値を検出する。様々な管理項目は、例えば、予備乾燥温度及び時間、後部、中部及び前部等の様々な部位のシリンダ温度、ノズル温度、射出圧力、射出速度、スクリュー回転数及び金型温度等である。各センサ13は、検出した実際値を、コントローラ20及び/又はPLC(Programmable Logic Controller)(不図示)を介して又は介さずに、生産監視装置40に供給する。なお、「実際値」とは、コントローラ20から生産機械10に設定された「設定値」とは異なり、生産機械10が「設定値」に基づき制御されて動作するときにセンサ13により実際に検出される値、を意味する。
【0044】
生産機械10の作業者は、物理的なネームプレート50やIDカード等を装着し、ネームプレート50等には光学的に読み取り可能な作業者IDコード51が記載される。作業者IDコード51は、例えば、QR(登録商標)コード又はバーコード等である。作業者IDコード51には、作業者ID(シリアル番号等)が紐付けられている。
【0045】
作業者端末30は、生産機械10の作業者により使用される。作業者端末30は、表示装置及び入力装置(例えば、タッチパネル)、光学式読取装置(例えば、カメラ)を有するデバイスであり、例えば、タブレットコンピュータ又はスマートフォン等である。作業者端末30は、作業者により入力された、生産機械10に設定すべき設定値を、コントローラ20に供給する。
【0046】
コントローラ20は、生産機械10を制御する専用のコンピュータである。コントローラ20は、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12の上記様々な管理項目についての設定値を、作業者端末30から取得し、生産機械10に設定する。コントローラ20は、設定値を、PLC(不図示)を介して又は介さずに、生産監視装置40に供給する。
【0047】
生産監視装置40は、パーソナルコンピュータ又は専用のコンピュータである。生産監視装置40は、コントローラ20から生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12の様々な管理項目についての設定値を収集し、複数のセンサ13から実際値を収集し、情報処理する。
【0048】
2.生産監視システムの機能的構成
【0049】
【0050】
作業者端末30のコンピュータにおいて、CPUは、ROMに記録されたプログラムをRAMにロードして実行することにより、作業者ID取得部301、個体ID取得部302及び設定値入力部303として動作する。
【0051】
コントローラ20のコンピュータにおいて、CPUは、ROMに記録されたプログラムをRAMにロードして実行することにより、設定値制御部201及び生産結果取得部202として動作する。
【0052】
生産監視装置40のコンピュータにおいて、CPUは、ROMに記録されたプログラムをRAMにロードして実行することにより、収集部401、特定部402、比較分析部403及び再設定部404として動作する。生産監視装置40は、HDDやSSD等の大容量の不揮発性の記憶装置に設定されたDB410を有する。
【0053】
3.生産監視装置の動作フロー
【0054】
【0055】
作業開始時に、作業者は、作業者端末30の光学式読取装置311(カメラ)に、自身のネームプレート50に記載された作業者IDコード51を読み取らせる。作業者端末30の作業者ID取得部301は、ネットワークを介して、光学的に読み取った作業者IDコード51に紐付けられた、各作業者を識別する作業者IDを取得する。作業者端末30は、作業者IDを、生産監視装置40に供給する。
【0056】
生産監視装置40の収集部401は、作業者端末30から作業者ID411を収集し、作業者ID411を特定する日時を関連付けて作業者ID411をDB410(データベース)に時系列的に記憶する(ステップS101)。作業者ID411を特定する日時は、例えば、作業者端末30が作業者ID411を取得した日時又は生産監視装置40が作業者ID411を収集した日時でよい。
【0057】
さらに、作業者は、作業者端末30の光学式読取装置311(カメラ)に、生産機械10の本体11に装着された部品12である個体の銘板に設けられた個体IDコード14を読み取らせる。作業者端末30の個体ID取得部302は、ネットワークを介して、光学的に読み取った個体IDコード14に紐付けられた、各個体を識別する個体IDを取得する。作業者端末30は、個体IDを、生産監視装置40に供給する。
【0058】
生産監視装置40の収集部401は、作業者端末30から、個体ID412を収集し、個体ID412を特定する日時を関連付けて個体ID412をDB410に時系列的に記憶する(ステップS102)。個体ID412を特定する日時は、例えば、作業者端末30が個体ID412を取得した日時又は生産監視装置40が個体ID412を収集した日時でよい。
【0059】
続いて、作業者は、生産機械10をトライアルで稼働し、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12の様々な管理項目について、予め定められた標準値を基準とした上で、当日の金型、材料、成形機、温調器及び乾燥機等の設備状態や、環境温度、時期及び/又は気象条件等のコンディションに応じて設定値を決定する。作業者は、作業者端末30の設定値入力部303に、決定した設定値を入力する。作業者端末30の設定値入力部303は、設定値をコントローラ20に供給する。上述の様に、様々な管理項目は、例えば、予備乾燥温度及び時間、後部、中部及び前部等の様々な部位のシリンダ温度、ノズル温度、射出圧力、射出速度、スクリュー回転数及び金型温度等である。
【0060】
コントローラ20の設定値制御部201は、標準値を基準として作業者が決定した設定値を作業者端末30から取得し、設定値に基づき生産機械10を制御する。コントローラ20は、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12の様々な管理項目についての設定値を、PLC(不図示)を介して又は介さずに、生産監視装置40に供給する。コントローラ20は、設定値が変更される度に、最新の設定値を生産監視装置40に供給する。
【0061】
生産監視装置40の収集部401は、コントローラ20から、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12の様々な管理項目についての設定値413を収集し、設定値413を特定する日時を関連付けて設定値413をDB410に時系列的に記憶する(ステップS103)。設定値413を特定する日時は、例えば、コントローラ20が設定値413を設定若しくは供給した日時又は生産監視装置40が設定値413を収集した日時でよい。
【0062】
生産機械10は、コントローラ20により設定された、本体11の様々な部位及び部品12の様々な管理項目についての設定値に基づき制御されて動作する。
【0063】
複数のセンサ13は、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12について、様々な管理項目の実際値を定期的に検出する。複数のセンサ13は、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12の様々な管理項目についての実際値を、コントローラ20及び/又はPLC(不図示)を介して又は介さずに、生産監視装置40に供給する。
【0064】
生産監視装置40の収集部401は、複数のセンサ13から、生産機械10の本体11の様々な部位及び部品12の様々な管理項目についての実際値414を定期的に収集し、実際値414を特定する日時を関連付けて実際値414をDB410に時系列的に記憶する(ステップS104)。実際値414を特定する日時は、例えば、複数のセンサ13が実際値414を検出若しくは供給した日時又は生産監視装置40が実際値414を収集した日時でよい。
【0065】
生産監視装置40の収集部401は、さらに、生産機械10の生産結果415を収集し、生産結果415を特定する日時を関連付けて生産結果415をDB410に時系列的に記憶する(ステップS105)。生産結果415は、サイクルタイム及び/又は不良率を含む。収集部401は、生産機械10の生産結果415を、例えば、コントローラ20の生産結果取得部202から取得してもよいし、作業者を管理する立場の管理者又は作業者等から入力されることにより取得してもよい。生産結果415を特定する日時は、生産機械10が生産結果415を発生した日時である。言い換えれば、生産結果415を特定する日時は、例えば、生産機械10が稼働を終了した後に管理者又は作業者等が生産監視装置40に生産結果415を入力した日時ではなく、生産機械10がその生産結果415を発生した稼働中の日時である。
【0066】
生産監視装置40の特定部402は、作業者ID411を特定する日時、個体ID412を特定する日時、設定値413を特定する日時及び実際値414を特定する日時に基づき、個体ID412により識別される個体が装着されたときの、作業者ID411により識別される作業者が決定した設定値413及び設定値413に基づく実際値414を特定する。特定部402は、さらに、生産結果415を特定する日時に基づき、作業者ID411により識別される作業者が決定した設定値413に基づき制御されて動作する生産機械の生産結果415を特定する(ステップS106)。特定部402は、作業者が決定した設定値413及び設定値413に基づく実際値414と、生産結果415とを、例えば管理者又は作業者等が閲覧可能なディスプレイ421に出力してもよい。これにより、どの作業者が部品12としてどの個体を使用したときにどのような設定値413を設定したのか、この設定値413を設定したときの実際値414はどれだけ設定値413から差があるのか、この場合にどのような生産結果415が得られたか、を管理者又は作業者等が特定することが出来る。
【0067】
比較分析部403は、複数の異なる作業者ID411により識別される複数の異なる作業者が部品12の個体毎に決定した設定値413、実際値414及び生産結果415を比較して、最良の生産結果415が得られたときの設定値413及び実際値414と設定値413を決定した作業者を判断する(ステップS107)。比較分析部403は、最良の生産結果415が得られたときの設定値413及び実際値414と設定値413を決定した作業者を、例えば管理者又は作業者等が閲覧可能なディスプレイ421に出力してもよい。これにより、どの作業者が部品12としてどの個体を使用したときにどのような設定値413を設定したときに最良の生産結果415が得られたか、逆に好ましくない生産結果415が得られたか、さらには生産結果415の個人差を管理者又は作業者等が特定することが出来る。これにより、良好な生産結果を得られなかった作業者を特定し、その作業者を指導及び支援することが可能となる。
【0068】
再設定部404は、部品12として特定の個体が装着されたときに最良の生産結果415が得られたときの実際値414と標準値とを比較し、実際値414と標準値との差が閾値以上であると判断すると、実際値414との差が閾値未満となるように新規な標準値を再設定する(ステップS108)。「標準値」は、生産機械10が問題無く動作し、生産されるプロダクトの品質に問題が発生しないと想定されている数値範囲である。再設定部404は、再設定した新規な標準値を、コントローラ20及び作業者端末30に供給する。これにより、作業者は今後、最良の生産結果415に基づき再設定された新規な標準値に基づき、設定値を決定することが出来、作業者の個人差(スキル差、熟練度)に拠らずに品質のばらつきを抑えて良好な生産結果を得ることを図れる。
【0069】
例えば、既存の標準値が165°C(±10°C)である。作業者は、既存の標準値を基準としてその範囲内に該当する170°Cを設定値として設定する。生産機械10が設定値170°Cに基づき制御されて動作するとき、センサ13は、実際値として175°Cを検出する。この場合の生産結果415が最良であるとする。再設定部404は、実際値175°Cと標準値165°Cとの差が閾値±10°C以上であると判断する。再設定部404は、実際値175°Cとの差が閾値±10°C未満となるように新規な標準値を再設定する。例えば、再設定部404は、最良の生産結果415が得られた時の設定値170°Cに基づき、新規な標準値170°Cを再設定してもよい。
【0070】
また、再設定部404は、個体ID412により識別される個々の個体毎に、複数の異なる新規な標準値を再設定する。部品12である金型は、個体毎の使用状況に応じて摩耗する等して経年劣化し、個体毎にコンディションが異なる。また、個体毎の摩耗状態等のコンディションは通常測定されない。このため、部品12の個体毎に異なる標準値を設定すれば、作業者が部品12の個体差を意識せずに最適な設定値を設定することが出来、作業者の個人差(スキル差、熟練度)に拠らずに品質のばらつきを抑えて良好な生産結果を得ることを図れる。
【0071】
また、再設定部404は、時期(例えば、春夏秋冬の季節等)及び/又は気象条件(例えば、気温、湿度、気圧等)に応じて、本体11の1部位や、部品12の1個体に対して複数の異なる新規な標準値を再設定してもよい。時期及び/又は気象条件に応じて異なる標準値を設定すれば、作業者が時期及び/又は気象条件を意識せずに最適な設定値を設定することが出来、作業者の個人差(スキル差、熟練度)に拠らずに品質のばらつきを抑えて良好な生産結果を得ることを図れる。
【0072】
4.結語
【0073】
本実施形態によれば、現場で作業者が設定値を決定する必要がある状況で、最適な設定値を決定するための標準値を作業者に提供することができる。このため、作業者の個人差(スキル差、熟練度)、部品12の個体差、時期及び/又は気象条件に拠らずに品質のばらつきを抑えて良好な生産結果を得ることを図れる。
【0074】
また、生産装置10の実際値が設定値と一致しないことがある。設定値と実際値とを比較し、その差分に基づき、作業者が最適な設定値を決定することを支援するための、新規な標準値を再設定することが出来る。
【0075】
また、生産監視装置40は、設定値413が変更される度に、最新の設定値413を作業者ID411と組み合わせて時系列的に記憶することができる。このため、生産作業中に作業員が現場で設定値を変更したことを記録しておくことで、管理者はその行為を把握することができる。例えば、標準値の閾値範囲から逸脱する設定値がコントローラ20に設定された場合、コントローラ20が発光又は音声等によりアラートを出力してもよい。これにより、標準値の閾値範囲から逸脱する設定値で生産機械10が稼働してしまうという人為的なトラブルの発生を抑制することが出来る。変更記録があるため、成形不良、成形サイクル変動、製造原価のばらつき等の問題が発生した場合に、原因を追及することが可能となる。
【0076】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
1 生産監視システム
10 生産機械
11 本体
12 部品
13 センサ
14 個体IDコード
20 コントローラ
30 作業者端末
40 生産監視装置
401 収集部
402 特定部
403 比較分析部
404 再設定部
410 DB
413 設定値
414 実際値
415 生産結果
421 ディスプレイ
50 ネームプレート
51 作業者IDコード