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特開2023-57584電動弁装置、情報処理装置および情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057584
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】電動弁装置、情報処理装置および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20230417BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F16K37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167129
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】志水 亮介
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 智宏
【テーマコード(参考)】
3H062
3H065
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF07
3H062HH04
3H062HH08
3H065AA01
3H065BA02
3H065BB18
(57)【要約】
【課題】 電動弁において、原点検出を行わなくても弁体の絶対位置を検出可能な技術を提供する。
【解決手段】 電動弁2は、ロータ60と一体的に回転しつつ弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能なセンサマグネット106と、ロータ60の回転運動を弁体34の軸線運動に変換するねじ送り機構109と、センサマグネット106の磁力線を検出し、ロータ60の回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、センサマグネット106の軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する磁気センサ119と、を含む。情報処理装置4は、第2信号に基づき、弁体34が予め設定された原点に位置する状態からのロータ60の開弁方向への回転回数を特定する回転特定部と、特定された回転回数と第1信号に対応する回転角度とに基づき、弁体34の原点からの変位である絶対位置を判定する弁開度判定部と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動弁および情報処理装置を備える電動弁装置であって、
前記電動弁は、
流体通路を有するボディと、
前記流体通路に設けられた弁部の開度を調整する弁体と、
前記弁体を駆動するロータと、
前記ロータと一体的に回転しつつ前記弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能なセンサマグネットと、
前記ロータの回転運動を前記弁体の軸線運動に変換するねじ送り機構と、
前記センサマグネットの磁力線を検出し、前記ロータの回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、前記センサマグネットの軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する磁気センサと、
を含み、
前記情報処理装置は、
前記第2信号に基づき、前記弁体が予め設定された原点に位置する状態からの前記ロータの開弁方向への回転回数を特定する回転特定部と、
特定された回転回数と前記第1信号に対応する回転角度とに基づき、前記弁体の前記原点からの変位である絶対位置を判定する弁開度判定部と、
を含むことを特徴とする電動弁装置。
【請求項2】
前記回転特定部は、前記磁気センサにより検出される磁束密度の大きさと前記ロータの回転回数との対応関係を示す第1判定基準を保持し、前記第2信号に基づく磁束密度の大きさを用いて前記第1判定基準を参照することで前記ロータの回転回数を特定し、
前記弁開度判定部は、各回転回数における前記ロータの回転角度と前記絶対位置との対応関係を示す第2判定基準とを保持し、特定された回転回数と前記第1信号に基づく回転角度とを用いて前記第2判定基準を参照することで前記絶対位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の電動弁装置。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記絶対位置に関する情報を外部装置に出力する出力部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁装置。
【請求項4】
前記センサマグネットが前記ロータと同軸状に配置され、
前記磁気センサは、前記ロータの軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電動弁装置。
【請求項5】
前記センサマグネットと隣接するように磁性体からなるヨークが配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電動弁装置。
【請求項6】
前記センサマグネットは、軸線方向の両面に極性が互いに反転するよう着磁がなされ、各面が回転方向に複数の磁極を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電動弁装置。
【請求項7】
流体通路を有するボディと、
前記流体通路に設けられた弁部の開度を調整する弁体と、
前記弁体を駆動するロータと、
前記ロータと一体的に回転しつつ前記弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能なセンサマグネットと、
前記ロータの回転運動を前記弁体の軸線運動に変換するねじ送り機構と、
前記センサマグネットの磁力線を検出し、前記ロータの回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、前記センサマグネットの軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する磁気センサと、
を備える電動弁に適用される情報処理装置であって、
前記磁気センサから出力された信号を取得する信号取得部と、
前記第2信号に基づき、前記弁体が予め設定された原点に位置する状態からの前記ロータの開弁方向への回転回数を特定する回転特定部と、
特定された回転回数と前記第1信号に対応する回転角度とに基づき、前記弁体の前記原点からの変位である絶対位置を判定する弁開度判定部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
流体通路を有するボディと、
前記流体通路に設けられた弁部の開度を調整する弁体と、
前記弁体を駆動するロータと、
前記ロータと一体的に回転しつつ前記弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能なセンサマグネットと、
前記ロータの回転運動を前記弁体の軸線運動に変換するねじ送り機構と、
前記センサマグネットの磁力線を検出し、前記ロータの回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、前記センサマグネットの軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する磁気センサと、
を備える電動弁に接続されたコンピュータに、
前記磁気センサから出力された信号を取得する機能と、
前記第2信号に基づき、前記弁体が予め設定された原点に位置する状態からの前記ロータの開弁方向への回転回数を特定する機能と、
特定された回転回数と前記第1信号に対応する回転角度とに基づき、前記弁体の前記原点からの変位である絶対位置を判定する機能と、
を発揮させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動弁装置に関し、特に弁体の絶対位置を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。冷凍サイクルには、膨張装置としての膨張弁など、冷媒の流れを制御するために各種制御弁が設けられている。近年の電気自動車等の普及に伴い、駆動部としてモータを備える電動弁が広く採用されつつある。
【0003】
このような電動弁として、弁開度を検出するための磁気センサを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。ロータとともに回転する作動ロッドの一端に弁体が設けられ、他端にマグネット(センサマグネット)が設けられている。そのセンサマグネットと軸線方向に対向するように磁気センサが設けられる。ロータの回転運動は、ねじ送り機構により弁体の軸線運動に変換される。ロータの回転に伴う磁束の変化を磁気センサで捉えることによりセンサマグネットの回転角度ひいては弁体の軸線方向位置を検出でき、弁開度を算出することができる。
【0004】
この弁体の軸線方向位置は、予め定める原点からの変位である絶対位置として把握される。この原点は、具体的には閉弁時にストッパによりロータの回転が規制されるときの位置であって、弁開度を制御する際の基準となる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-135908号公報
【特許文献2】特開2020-204344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動弁の制御部は、弁開度の制御を行うにあたって弁体の絶対位置を把握し続ける必要がある。このため、その絶対位置は逐次記憶更新されることとなるが、電動弁の電断時にはその記憶は消去される。このため、電動弁の起動ごとにロータを閉弁方向に回転させて原点検出を行うためのイニシャル処理を行わなければならない。この点で、電動弁の制御開始までに時間を要するといった問題があった。
【0007】
本発明の目的の一つは、電動弁において原点検出を行わなくても弁体の絶対位置を検出可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、電動弁および情報処理装置を備える電動弁装置である。電動弁は、流体通路を有するボディと、流体通路に設けられた弁部の開度を調整する弁体と、弁体を駆動するロータと、ロータと一体的に回転しつつ弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能なセンサマグネットと、ロータの回転運動を弁体の軸線運動に変換するねじ送り機構と、センサマグネットの磁力線を検出し、ロータの回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、センサマグネットの軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する磁気センサと、を含む。情報処理装置は、第2信号に基づき、弁体が予め設定された原点に位置する状態からのロータの開弁方向への回転回数を特定する回転特定部と、特定された回転回数と第1信号に対応する回転角度とに基づき、弁体の原点からの変位である絶対位置を判定する弁開度判定部と、を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、電動弁に適用される情報処理装置である。電動弁は、流体通路を有するボディと、流体通路に設けられた弁部の開度を調整する弁体と、弁体を駆動するロータと、ロータと一体的に回転しつつ弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能なセンサマグネットと、ロータの回転運動を弁体の軸線運動に変換するねじ送り機構と、センサマグネットの磁力線を検出し、ロータの回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、センサマグネットの軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する磁気センサと、を備える。情報処理装置は、磁気センサから出力された信号を取得する信号取得部と、第2信号に基づき、弁体が予め設定された原点に位置する状態からのロータの開弁方向への回転回数を特定する回転特定部と、特定された回転回数と第1信号に対応する回転角度とに基づき、弁体の原点からの変位である絶対位置を判定する弁開度判定部と、を備える。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、電動弁に適用される情報処理プログラムである。電動弁は、流体通路を有するボディと、流体通路に設けられた弁部の開度を調整する弁体と、弁体を駆動するロータと、ロータと一体的に回転しつつ弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能なセンサマグネットと、ロータの回転運動を弁体の軸線運動に変換するねじ送り機構と、センサマグネットの磁力線を検出し、ロータの回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、センサマグネットの軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する磁気センサと、を備える。情報処理プログラムは、その電動弁に接続されたコンピュータに、磁気センサから出力された信号を取得する機能と、第2信号に基づき、弁体が予め設定された原点に位置する状態からのロータの開弁方向への回転回数を特定する機能と、特定された回転回数と第1信号に対応する回転角度とに基づき、弁体の原点からの変位である絶対位置を判定する機能と、を発揮させる。
【0011】
これらの態様によると、磁気センサから出力された第2信号に基づいて、弁体が原点に位置した状態からのロータの回転回数が把握される。その回転回数と弁体の軸線方向位置との間には対応関係があるため、その回転回数に基づいて弁体のおおよその位置を特定できる。さらに、磁気センサから出力された第1信号に基づいて、各回転回数におけるロータの回転角度が把握される。回転角度と各回転回数における弁体の軸線方向位置との間には対応関係があるため、その回転角度に基づいて弁体の詳細な位置を特定できる。すなわち、これらの態様によれば、原点検出を行わなくても、ロータの回転回数と回転角度とに基づいて弁体の絶対位置を特定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動弁において原点検出を行わなくても弁体の絶対位置を検出可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る電動弁の構造を表す断面図である。
図2】バルブユニットの構造を表す断面図である。
図3】ロータの構成を表す図である。
図4】センサマグネットから発生する磁力線と磁気センサとの関係を示す模式図である。
図5】センサマグネットの平面図である。
図6】ロータの回転角度とセンサ出力値との関係を示す図である。
図7】弁体のストロークとセンサ出力値との関係を示す図である。
図8】角度値とステップとの関係を示す図である。
図9】情報処理装置の機能ブロック図である。
図10】回転回数特定テーブルを模式的に表す図である。
図11】絶対位置判定処理の処理過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る電動弁の構造を表す断面図である。
電動弁装置1は、車両制御システムの一部であるエアコンシステムに適用される。電動弁装置1は、冷凍サイクルに設置される電動弁2と、電動弁2の開度の検出および制御を行う情報処理装置4とを一体に組み付けて構成される。
【0016】
冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張弁、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電動弁2は、その膨張弁として機能する。情報処理装置4は、LIN(Local Interconnect Network)通信などの通信ラインを介してエアコンシステムの電子制御装置(Electronic Control Unit:以下、「エアコンECU」ともいう)と接続される。エアコンECUは、情報処理装置4からみた「外部装置」の一つである。
【0017】
電動弁2は、バルブユニット100と通路ボディ200とを組み付けて構成される。バルブユニット100は、ロータユニット90とステータユニット92とを含む。ロータユニット90とステータユニット92のそれぞれが、通路ボディ200に固定される。ステータユニット92は、接続部材101を介して通路ボディ200に固定される。接続部材101は、ステータユニット92に固着される金属プレート103と、金属プレート103を通路ボディ200に固定するためのねじ105を含む。
【0018】
通路ボディ200は、例えばアルミニウム合金などの金属からなり、概略角柱形状をなしている。通路ボディ200の側部には、導入ポート202、導出ポート204、導入ポート206および導出ポート208が設けられている。導入ポート202には凝縮器側から延びる配管が接続され、導出ポート204には蒸発器の入口につながる配管が接続される。導入ポート206には蒸発器の出口につながる配管が接続され、導出ポート208には圧縮機側へ延びる配管が接続される。
【0019】
通路ボディ200には、導入ポート202と導出ポート204とをつなぐ第1通路210と、導入ポート206と導出ポート208とをつなぐ第2通路212が形成されている。第1通路210および第2通路212は「流体通路」として機能する。第1通路210と第2通路212は、隔壁214により上下に離隔されている。通路ボディ200の上部には、取付孔216が上方に向けて開口している。取付孔216は、第1通路210と連通している。取付孔216の開口端近傍には、雌ねじ部218が形成されている。
【0020】
バルブユニット100は、弁部を収容するバルブボディ5を有する。バルブボディ5の外周面には、雌ねじ部218と螺合可能な雄ねじ部10が形成されている。バルブユニット100を通路ボディ200に組み付ける際には、シールリング20(Oリング)を取り付けたバルブボディ5を取付孔216に挿入する。雄ねじ部10と雌ねじ部218とを螺合させ、バルブボディ5を通路ボディ200に締結させる。
【0021】
通路ボディ200の上面には、取付孔216をとり囲むように環状のシール収容部222(環状溝)が設けられており、シールリング220(Oリング)が嵌着されている。バルブボディ5を通路ボディ200に締結させたとき、通路ボディ200の上面とバルブボディ5との間にシールリング220が介装される。シールリング220は、通路ボディ200の内部から外部への冷媒の漏れを規制する。シールリング20は、弁部の上流側通路と下流側通路との間をシールする。
【0022】
図2は、バルブユニット100の構造を表す断面図である。
バルブユニット100は、ロータユニット90とステータユニット92とを同軸状に組み付けて構成される。ロータユニット90とステータユニット92とは直接的には固定されておらず、それぞれが通路ボディ200に固定されることで間接的に固定される。
【0023】
ロータユニット90がバルブボディ5を有する。バルブボディ5は、ハウジング部材6とバルブシート部材8とを同軸状に組み付けて構成される。ハウジング部材6およびバルブシート部材8は、ともにステンレス鋼(以下「SUS」と表記する)からなる。バルブシート部材8には弁座24が設けられるため、耐摩耗性に優れた材質が選定されている。ハウジング部材6はバルブシート部材8よりも溶接性に優れ、バルブシート部材8はハウジング部材6よりも加工性に優れている。
【0024】
ハウジング部材6は、大径部7と小径部9を一体に有し、外径が下方に向けて小さくなる段付円筒状をなす。大径部7の上端部の外径がやや縮径され、段差による係止部52が構成されている。大径部7の外周面には、環状溝からなるシール収容部80が形成され、シールリング82(Oリング)が嵌着されている。小径部9の外周面に雄ねじ部10が形成されている。図1にも示したように、小径部9の取付孔216への螺入により大径部7が通路ボディ200に軸線方向に当接することにより、バルブボディ5の取付孔216への挿入量が規制される。
【0025】
ハウジング部材6の下部には、円穴状の凹状嵌合部16が設けられている。バルブシート部材8は有底円筒状をなし、その上部が凹状嵌合部16に挿通されている。すなわち、バルブシート部材8は、小径部9に対して内挿される挿通部11と、小径部9から露出する露出部13とを有する。露出部13の外周面に環状の凹部15が設けられている。小径部9の先端部が凹部15に向けて半径方向内向きに加締められることで、バルブシート部材8がハウジング部材6に固定されている。
【0026】
バルブシート部材8の下部外周面には環状溝からなるシール収容部18が形成され、シールリング20が嵌着されている。バルブシート部材8の底部を軸線方向に貫通するように弁孔22が設けられ、その弁孔22の上端開口部に弁座24が形成されている。
【0027】
バルブシート部材8の側部に入口ポート26が設けられ、下部に出口ポート28が設けられている。入口ポート26が導入ポート202に連通し、出口ポート28が導出ポート204に連通する(図1参照)。バルブシート部材8には入口ポート26と出口ポート28とを連通させる内部通路が形成されている。ハウジング部材6およびバルブシート部材8の内方に弁室30が形成されている。入口ポート26と出口ポート28とは、弁室30を介して連通している。
【0028】
バルブボディ5の内方には、ロータユニット90のロータ60から延びる作動ロッド32が挿通されている。作動ロッド32は、弁室30を貫通する。作動ロッド32は、非磁性金属からなる棒材を切削加工して得られ、その下部にニードル状の弁体34が一体に設けられている。弁体34が弁室30側から弁座24に着脱して弁部を開閉する。
【0029】
ハウジング部材6の上部中央には、ガイド部材36が立設されている。ガイド部材36は、非磁性金属からなる管材を段付円筒状に切削加工して得られ、その軸線方向中央部の外周面に雄ねじ38が形成されている。ハウジング部材6の上部には、円穴状の凹状嵌合部35が設けられている。ガイド部材36の下端部が大径となっており、その大径部40が凹状嵌合部35の上部中央に挿入され、加締め接合により同軸状に固定されている。ガイド部材36は、その内周面により作動ロッド32を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ60の回転軸62を回転摺動可能に支持する。回転軸62は非磁性金属からなる。
【0030】
ロータユニット90のロータ60と、ステータユニット92のステータ64とは、二相ステッピングモータを構成する。ロータユニット90は、有底円筒状のキャン66を有し、そのキャン66の内方にロータ60を配置する。キャン66の外方にステータ64が配置されている。キャン66は、弁体34およびその駆動機構が配置される空間を覆うとともにロータ60を内包する有底円筒状の部材であり、冷媒の圧力が作用する内方の圧力空間(内部空間)と作用しない外方の非圧力空間(外部空間)とを画定する。
【0031】
キャン66は、非磁性金属(例えばSUS)からなり、その下部がハウジング部材6の上端部に外挿されるようにして同軸状に組み付けられている。キャン66は、その下端が係止部52に係止されることによりその挿入量が規制される。キャン66の下端とハウジング部材6との境界に沿って溶接(全周溶接)が施されることにより、バルブボディ5とキャン66との固定および気密性(シール)が実現されている。バルブボディ5とキャン66とに囲まれた空間が、上記圧力空間を形成している。
【0032】
ステータ64は、コイル68が巻回されたボビン70を、複数の極歯を有するヨーク72に組み付けて構成される。ステータ64は、ケース76に内包されている。ケース76は、耐食性を有する樹脂材の射出成形(「インサート成形」又は「モールド成形」ともいう)により得られる。ステータ64は、その射出成形によるモールド樹脂によって被覆されている。ケース76は、そのモールド樹脂からなる。ステータユニット92は、ステータ64とケース76との一体部品(本実施形態ではモールド成形品)である。
【0033】
ステータユニット92は、中空構造を有し、ステータ64がキャン66を同軸状に挿通しつつロータユニット90に組み付けられている。ハウジング部材6における係止部52のやや下方の外周面にシール収容部80が形成され、シールリング82が嵌着されている。大径部7の外周面とケース76の内周面との間にシールリング82が介装される。
【0034】
キャン66は、大径部7の上端部、つまり小径部9とは反対側に組み付けられている。そして、キャン66と大径部7との溶接部が、ケース76の内方においてシールリング82に対して小径部9とは反対側に位置する。すなわち、その溶接部が第2シール構造よりもケース76の軸線方向内方に位置するため、外部から侵入する水分に触れることもなく、その腐食が防止される。
【0035】
ロータ60は、回転軸62に組み付けられた円筒状のロータコア102と、ロータコア102の外周面に設けられたロータマグネット104と、ロータコア102の上端面に設けられたセンサマグネット106を備える。センサマグネット106は円環状の永久磁石であり、ロータコア102に同軸状に組み付けられている。すなわち、センサマグネット106は、ロータ60と同軸状に配置される。ロータマグネット104は、その周方向に複数極に磁化(着磁)されている。センサマグネット106も複数極に磁化(着磁)されている。ロータコア102は、ヨークとして機能する磁性体であり、ロータマグネット104およびセンサマグネット106に当接するように設けられることで、各マグネットの磁力を強化する。
【0036】
回転軸62は、有底円筒状の円筒軸であり、その開口端を下にしてガイド部材36に外挿されている。回転軸62の下部内周面に雌ねじ108が形成され、ガイド部材36の雄ねじ38と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構109によって、ロータ60の回転運動が作動ロッド32の軸線運動に変換される。それにより弁体34が軸線方向、つまり弁部の開閉方向に移動(昇降)する。
【0037】
作動ロッド32の上部が縮径され、その縮径部110が回転軸62の底部112を貫通している。縮径部110の先端部には環状のストッパ114が固定されている。一方、縮径部110の基端と底部112との間には、作動ロッド32を下方(つまり閉弁方向)に付勢するスプリング116が介装されている。このような構成により、開弁時には、ストッパ114が底部112に係止される態様で作動ロッド32がロータ60と一体変位する。一方、閉弁時には、弁体34が弁座24から受ける反力によりスプリング116が押し縮められる。このときのスプリング116の弾性反力により弁体34を弁座24に押し付けることができ、弁体34の着座性能(弁閉性能)を高められる。
【0038】
ステータユニット92は、キャン66の外側に回路基板118を有する。回路基板118は、情報処理装置4を構成し、ケース76の内方に固定されている。回路基板118の下面にデータ処理部や通信部として機能する各種回路が実装されている。具体的には、モータを駆動するための駆動回路、駆動回路に制御信号を出力する制御回路(マイクロコンピュータ)、制御回路が外部装置と通信するための通信回路、各回路およびモータ(コイル)に電力を供給するための電源回路等が実装されている。ケース76の上端は、樹脂製の蓋体77により閉止されている。ケース76における蓋体77の下方の空間に回路基板118が配設されている。
【0039】
回路基板118におけるセンサマグネット106との対向面には、磁気センサ119が設けられている。磁気センサ119は、キャン66の底部端壁を介してセンサマグネット106と軸線方向に対向する。磁気センサ119は、ロータ60の軸線上に配置されている。ロータ60の回転に伴ってセンサマグネット106による磁束が変化する。磁気センサ119は、センサマグネット106の磁力線を検出し、その磁束の変化を捉えることでロータ60の変位量(ロータ60の回転角度および軸線方向の移動量)を検出する。データ処理部は、そのロータ60の変位量に基づいて弁体34の軸線方向位置ひいては弁開度を算出する。
【0040】
ボビン70からはコイル68につながる端子120が延出し、回路基板118に接続されている。回路基板118からは電源端子、グランド端子および通信端子(これらを総称して「接続端子122」ともいう)が延出し、それぞれケース76の側壁を貫通して外部に引き出されている。ケース76の側部にコネクタ部124が一体に設けられ、そのコネクタ部124の内方に接続端子122が配置されている。
【0041】
ロータ60の下方にはストッパ91が設けられる。特許文献2に示すようにストッパ91の構成は既知である。弁体34が閉弁方向に動作するとき、ガイド部材36に形成された係止部(図示略)にストッパ91が当接することにより、ロータ60の弁閉方向への回転が完全に規制される。以下、このときのロータ60の位置、言い換えれば、ストッパ91が突部と当接するときの弁体34の位置を「原点」とよぶ。
【0042】
次に、ロータ60におけるマグネットの構成について詳細に説明する。
図3は、ロータ60の構成を表す図である。(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は平面図、(D)は(C)のB-B矢視断面図である。図中の「N」はN極、「S」はS極を示す。なお、図3(A)~(C)においては説明の便宜上、回転軸62の表記を省略している。
【0043】
ロータ60は、ロータコア102の外周面に沿ってロータマグネット104を有し、ロータコア102の軸端部にセンサマグネット106が配設されている(図3(A),(D))。ロータマグネット104は円筒状をなし、外周面24極着磁とされている(図3(B),(C))。一方、センサマグネット106は環状をなし、上下二層の両面4極着磁(片面2極の両面着磁)とされている。すなわち、センサマグネット106は、その上層106aと下層106bがそれぞれ2極となるように着磁され、その上下両面で磁極の極性が反転されている。このような構成により、磁力の強化が図られている。
【0044】
ロータコア102は、円筒状の磁性金属(磁性体)からなる。ロータコア102の軸線方向中央には、その外周面に沿って環状溝140が形成されている(図3(D))。ロータマグネット104の内周面がその環状溝140に嵌合している。すなわち、環状溝140は、ロータコア102からのロータマグネット104の脱落を防止する脱落防止構造として機能する。
【0045】
回転軸62は、その上部に外径がやや縮小された縮径部63を有する。ロータコア102の軸端部142(上端開口部)は、その縮径部63と相補形状となるよう内径がやや縮小されており、ロータコア102を回転軸62に組み付ける際の軸線方向のストッパを構成している。
【0046】
センサマグネット106は、回転軸62の縮径部63に外挿されつつ、ロータコア102の上面に組み付けられている。センサマグネット106は、このように磁性体(本実施形態ではロータコア102)の上に配置されることで、その磁力を大きくすることができる。回転軸62の上端部にワッシャ65が同軸状に挿通された状態でその上端部が加締められることで、ロータコア102の軸端部142とワッシャ65との間にセンサマグネット106が保持される。
【0047】
次に、弁体の原点からの変位である絶対位置の検出方法について説明する。
図4は、センサマグネット106から発生する磁力線と磁気センサ119との関係を示す模式図である。本図は、磁気センサ119およびセンサマグネット106を側方から見た状態を示す。
【0048】
センサマグネット106は、上述のように、軸線方向の両面に極性が互いに反転するよう着磁がなされ、各面が回転方向に複数の磁極を有することで、磁力の強化がなされている。さらに、センサマグネット106と下面に隣接するようにロータコア102が配置されることによってもその磁力が強化されている。
【0049】
センサマグネット106のN極からS極に向けて磁力線が発生する(二点鎖線矢印参照)。磁気センサ119は、センサマグネット106の上方に位置してその磁力線を検出し、ロータ60の回転角度に応じた第1信号を出力するとともに、センサマグネット106の軸線方向への移動に伴って変化する磁束密度の大きさに応じた第2信号を出力する。
【0050】
図5は、センサマグネット106の平面図である。
ステータ64のコイル68に通電することにより、ロータ60に回転駆動力が付与される。ロータ60の回転に連動して作動ロッド32ひいては弁体34が開弁方向又は閉弁方向に移動する。そのロータ60の回転に連動してセンサマグネット106も回転する。そのセンサマグネット106の回転にともなって、センサマグネット106の磁界方向MAも変化する。図示のようにXY座標系を設定したとき、磁界方向MAがX軸となす角度をθとする。磁気センサ119は、特許文献1の角度センサに示す既知の方法にて、センサマグネット106の回転角度θを検出する。
【0051】
図6は、ロータ60の回転角度とセンサ出力値との関係を示す図である。本図の横軸はロータ60の回転角度を示し、縦軸は磁気センサ119の出力値(「第1センサ値」という)を示す。第1センサ値は、さらに磁気センサ119により「下限値DA~上限値TA」の範囲で正規化される。下限値DA、上限値TAは任意に設定可能である。磁気センサ119は、ロータ60の回転角度(つまりセンサマグネット106の回転角度)に対応してノコギリ型の波形にて第1センサ値を出力する。この第1センサ値が「第1信号」に対応する。すなわち、このセンサ値に基づいてロータ60の回転角度を判定できる。以下、第1センサ値を上記範囲にて正規化した値を「角度値」ともよぶ。
【0052】
図7は、弁体34のストロークとセンサ出力値との関係を示す図である。本図の横軸は弁体34の原点から開弁方向へのストローク(変位量)を示し、縦軸は磁束密度に関する磁気センサ119の出力値(「第2センサ値」という)を示す。図示のように、弁体34のストロークが大きくなるほど、つまりセンサマグネット106が磁気センサ119に近づくほど第2センサ値が大きくなる。このことは、磁束密度の大きさ(絶対値)と弁体34のストロークとの間に相関があること、すなわち、第2センサ値とロータ60の回転回数との間に相関があることを意味する。
【0053】
図8は、角度値とステップとの関係を示す図である。
本実施形態において、弁体34を原点(閉弁状態)から最大リフト位置(弁部の全開状態)まで移動させるとき、ロータ60は合計4回転する。制御回路が二相のコイル68に供給する駆動電流を変化させることにより、各コイル68の磁界方向を変化させることでロータ60を回転させる。制御回路は、ロータ60をu1度単位で回転させる。この単位回転量を「ステップ」とよぶ。
【0054】
1回転あたりのステップ数をSM(=360/u1)とすると、図中のSM1=SM、SM2=2SM、SM3=3SM、SM4=4SMとなり、制御回路は弁体34の動作範囲においてロータ60に合計SM4ステップ分の回転を指示することになる。ロータ60の4回転に対応して、角度値はDA~TAの間で4回変化する。言い換えれば、原点からのロータ60の回転回数としてN0(0~1回転)、N1(1~2回転)、N2(2~3回転)、N3(3~4回転)のそれぞれにおいて、角度値がDA~TAの間で変化する。
【0055】
ロータ60の回転回数については、上述のように、磁気センサ119により検出される磁束密度の大きさ(第2センサ値)に基づいて判定できる。第2センサ値が「第2信号」に対応する。ロータ60の回転回数が増加するにつれてセンサマグネット106が磁気センサ119に近づくため、磁気センサ119が検出する磁束密度が大きくなる。このため、センサマグネット106の軸線方向への移動に伴って磁気センサ119が出力する信号(第2信号)に基づいて、ロータ60の回転回数が大まかにみてN0~N4のいずれの範囲にあるかを判定できる。
【0056】
図示のように、ロータ60の回転回数と回転角度(角度値)から、原点からのステップ数が一意に定まる。そのステップ数は弁体34の絶対位置に対応する。すなわち、ロータ60の回転回数と回転角度に基づき、弁体34の絶対位置を判定できる。
【0057】
なお、図8に示される角度値とロータ60の回転角度との関係、回転回数ごとの角度値とステップ(つまり弁体34の絶対位置)との関係については、「基準情報(制御マップ)」として電動弁2の製造時に設定されるが、適宜更新してもよい。制御回路は、原点を基準としてステップ数を指定することにより、弁体34の移動量、つまり電動弁2の弁開度を制御する。
【0058】
図9は、情報処理装置4の機能ブロック図である。
情報処理装置4の各構成要素は、回路基板118上における制御回路(マイクロコンピュータ)、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェア(制御回路)と、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバおよびアプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0059】
情報処理装置4は、データ処理部152、通信部154、データ格納部156およびロータインタフェース部158を含む。
通信部154は、接続端子122を介して外部装置(エアコンECU)に対するインタフェースとして機能する。ロータインタフェース部158は、ロータ60の回転に関して機能する磁気センサ119およびコイル68に対するインタフェースとして機能する。データ格納部156は、基準情報(制御マップ)を記憶する。データ処理部152は、通信部154やロータインタフェース部158から取得された各種データおよびデータ格納部156に記憶されたデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部152は、通信部154、ロータインタフェース部158およびデータ格納部156のインタフェースとしても機能する。
【0060】
通信部154は、外部装置からデータおよびコマンドを受信する受信部160と、外部装置にデータを送信する送信部162を含む。
【0061】
ロータインタフェース部158は、回転指示部164および信号取得部166を含む。回転指示部164は、励磁パターンに応じて、各コイル68に駆動電流を出力する。信号取得部166は、磁気センサ119から出力された第1信号および第2信号を取得する。
【0062】
データ処理部152は、回転特定部168、弁開度判定部170および回転制御部172を含む。回転特定部168は、磁気センサ119から出力された第2信号に基づき、弁体34が原点に位置する状態からのロータ60の開弁方向への回転回数を特定する。また、回転特定部168は、磁気センサ119から出力された第1信号に基づき、ロータ60の回転角度を特定する。
【0063】
弁開度判定部170は、特定されたロータ60の回転回数と回転角度とに基づき、弁体34の原点からの変位である絶対位置を判定する。回転制御部172は、弁体34の絶対位置に対応する弁開度(「実弁開度」ともいう)と、目標とする弁開度(「目標弁開度」ともいう)とに基づいて励磁パターンを設定し、回転指示部164から出力する駆動電流を制御する。すなわち、情報処理装置4は、「弁開度検出装置」として機能するとともに「電動弁制御装置」として機能する。
【0064】
回転特定部168は、ロータ60の回転回数を特定するために参照する回転回数特定テーブルを保持する。弁開度判定部170は、弁体34の絶対位置を特定するために参照する絶対位置特定テーブルを保持する。回転回数特定テーブルが「第1判定基準」に対応し、絶対位置特定テーブルが「第2判定基準」に対応する。これらのテーブルは、データ格納部156に記憶されている。データ格納部156には、これら回転回数や絶対位置を特定するための情報処理プログラムが格納されている。なお、この情報処理プログラム等は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。
【0065】
図10は、回転回数特定テーブルを模式的に表す図である。
回転回数特定テーブル180には、磁気センサ119により検出される磁束密度Bの範囲とロータ60の回転回数Nとの対応関係が設定されている。具体的には、B=25~30(mT)に対してN=N0(0~1回転)、B=30~40(mT)に対してN=N1(1~2回転)、B=40~60(mT)に対してN=N2(2~3回転)、B=60~90(mT)に対してN=N3(3~4回転)とされている。このように、回転回数Nは範囲値(おおよその値)として設定される。回転特定部168は、第2信号から得られる磁束密度Bの値を用いて回転回数特定テーブル180を参照し、ロータ60の回転回数Nを特定する。
【0066】
一方、絶対位置特定テーブルについては図示を省略するが、図8に関連して説明した基準情報(制御マップ)に対応するものでよい。すなわち、図8におけるステップ値が弁体34の絶対位置と対応し、角度値がロータ60の回転角度θと対応する。このため、絶対位置特定テーブルには、回転回数Nおとび回転角度θと絶対位置との対応関係が設定されている。弁開度判定部170は、第1信号に基づいて特定される回転角度θと、第2信号に基づいて特定される回転回数Nとを用いて絶対位置特定テーブルを参照し、弁体34の絶対位置を特定する。
【0067】
データ処理部152は、外部装置からの要求があった場合には、弁体34の絶対位置に関する情報を送信部162から送信させる。送信部162は「出力部」として機能する。
【0068】
図11は、絶対位置判定処理の処理過程を示すフローチャートである。
本処理は、電動弁2の起動時(電源投入時)および外部装置からの指令等を契機に実行される。
【0069】
信号取得部166が、磁気センサ119からのセンサ情報(第1信号および第2信号)を取得する(S10)。回転特定部168は、第1信号に基づいて回転角度θを特定する一方(S12)、第2信号に基づいてロータ60の回転回数Nを特定する(S14)。弁開度判定部170は、これら回転角度θおよび回転回数Nを用いて絶対位置特定テーブルを参照し、弁体34の絶対位置を特定し(S16)、その絶対位置情報を出力する(S18)。外部装置(エアコンECU)から要求があった場合には、データ処理部152は、この絶対位置情報を送信部162に送信させる。
【0070】
回転制御部172は、この絶対位置情報を用いて弁開度の制御を実行する。すなわち、回転制御部172は、絶対位置に対応する実弁開度と目標弁開度とに基づき、その目標弁開度を実現するための制御量(モータの駆動ステップ数)を設定し、これを実現するための制御指令(励磁パターン)を出力する。回転指示部164は、その励磁パターンに応じて、各コイル68に駆動電流を出力する。それにより、ロータ60が高分解能にて回転する。このとき、弁体34が弁座24から離間した開弁状態であれば、スプリング116の付勢力によりストッパ114が回転軸62に当接し、作動ロッド32ひいては弁体34が、ロータ60と一体に動作する。
【0071】
ロータ60は、ガイド部材36との間のねじ送り機構109により上下方向に動作する。弁体34が弁部の開閉方向に並進し、弁部の開度が設定開度に調整される。このねじ送り機構109は、ロータ60の軸線周りの回転運動を作動ロッド32の軸線運動(直進運動)に変換し、弁体34を弁部の開閉方向に駆動する。電動弁2が膨張弁として機能するとき、弁部は小開度に制御される。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、磁気センサ119から出力される第1信号および第2信号に基づいて現在のロータ60の回転回数と回転角度を特定でき、その両者に基づいて弁体34の絶対位置、つまり弁開度を判定できる。すなわち、原点検出を行わなくても弁体の絶対位置を検出できる。このため、電動弁2による弁開度制御を速やかに開始することができる。
【0073】
本実施形態では特に、センサマグネット106を両面着磁とし、さらにヨークを隣接配置することで磁力の強化がなされる。このため、弁開度が小さいときなど、センサマグネット106と磁気センサ119とが大きく離間するような状態にあったとしても、磁気センサ119にて磁束密度の変化を良好に検出でき、回転回数を正確に特定できる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0075】
上記実施形態では、ロータコア102の上面にセンサマグネット106を当接させるように配置する構成を例示した。変形例においては、ロータコア102の内周面又は外周面に当接するようにセンサマグネット106を組み付けてもよい。すなわち、センサマグネット106の周囲に隣接するように磁性体(ヨーク)を配置することで、センサマグネット106の磁力を強化でき、磁気センサ119による軸線方向の変位検出を容易にすることができる。センサマグネット106は、ロータ60と同軸状に配置されなくてもよい。磁気センサ119は、ロータ60の軸線からオフセットした位置に配置されてもよい。
【0076】
上記実施形態では、センサマグネット106がロータ60に組み付けられ、ロータ60と一体に軸線方向に変位する構成を例示した。変形例においては、センサマグネットを作動ロッドに固定してもよい。弁体は、作動ロッドと一体に設けられる。そして、ロータは軸線方向に変位せず、作動ロッドがロータと相対変位するように軸線方向に変位してもよい。例えば、作動ロッドをロータ対してキー溝等で回転方向にのみ接続し、ねじ送り機構で軸線方向に作動できるようにしてもよい。
【0077】
このような構成によれば、ロータが軸線方向に移動しなくても、作動ロッドに固定されたセンサマグネットが上下動することで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、弁部の開度に応じてセンサマグネットが軸線方向に移動できればよい。センサマグネットが、ロータと一体的に回転しつつ弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能であればよい。なお、上記実施形態では、閉弁時に弁体が弁座に着座した後、センサマグネットがロータと共にわずかに軸線方向に変位するが、センサマグネットの作動全体からみれば、弁部の開度に応じて軸線方向に移動可能であることは言うまでもない。
【0078】
上記実施形態では、「第1判定基準」および「第2判定基準」をテーブルにて実現し、情報処理プログラムの実行過程でこれらを参照する構成を例示した。変形例においては、情報処理プログラムそのものにこれらを定義してもよい。
【0079】
上記実施形態では、電動弁2として、弁体34が弁座24に着脱して弁部を開閉する構成を例示した。変形例においては、弁体が弁孔に挿抜されて弁部を開閉するスプール弁としてもよい。弁体は、弁孔に接離して弁部を開閉し、また弁部の開度を調整するものでよい。ここで、「接離」とは接近又は離間することを意味し、弁座に着脱する場合と弁孔に挿抜される場合の双方を含む。スプール弁とする場合、ストッパによりロータの回転が停止されるときの弁体の位置を原点としてよい。また、閉弁状態においても流体の漏洩を許容する所定のクリアランスが形成されるものでもよい。
【0080】
上記実施形態では、極歯を有するヨークを含むステータとした。変形例においては、積層コアを含むステータなどでもよい。
【0081】
上記実施形態では、ステータユニット92を二相ステッピングモータとしたが、三相ステッピングモータとして構成してもよい。
【0082】
上記実施形態では、上記電動弁を膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁として構成してもよい。
【0083】
上記実施形態の電動弁は、冷媒として代替フロン(HFC-134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルにコンデンサに代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。
【0084】
上記実施形態では、上記電動弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用する例を示したが、車両用に限らず電動膨張弁を搭載する空調装置に適用可能である。また、給湯装置の湯水や油圧制御装置の作動液(作動油)など冷媒以外の流体の流れを制御する電動弁として構成してもよい。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 電動弁装置、2 電動弁、4 情報処理装置、5 バルブボディ、22 弁孔、24 弁座、26 入口ポート、28 出口ポート、30 弁室、32 作動ロッド、34 弁体、36 ガイド部材、60 ロータ、62 回転軸、64 ステータ、66 キャン、68 コイル、90 ロータユニット、91 ストッパ、92 ステータユニット、100 バルブユニット、102 ロータコア、104 ロータマグネット、106 センサマグネット、109 ねじ送り機構、118 回路基板、119 磁気センサ、152 データ処理部、154 通信部、156 データ格納部、158 ロータインタフェース部、164 回転指示部、166 信号取得部、168 回転特定部、170 弁開度判定部、172 回転制御部、180 回転回数特定テーブル、200 通路ボディ、210 第1通路、212 第2通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11