(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057596
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】有用物質の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
C10C 5/00 20060101AFI20230417BHJP
B27K 5/00 20060101ALI20230417BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C10C5/00
B27K5/00 A
C10B53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167146
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】514252430
【氏名又は名称】G-8 INTERNATIONAL TRADING 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】松井 三郎
【テーマコード(参考)】
2B230
4H012
【Fターム(参考)】
2B230AA30
2B230BA05
2B230EB06
2B230EB13
2B230EB30
2B230EB32
2B230EC02
4H012JA04
4H012JA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】木材を原料として、2種以上の有用物質を製造するための有用物質の製造方法および装置を提供する。
【解決手段】密閉容器12の処理空間S1内に、木材チップを投入する原料投入工程、120~200℃で、4~15atmの蒸気を導入し、原料を亜臨界水反応処理して、フルボ酸とフミン酸と木材のチップおよび/またはその固形物を含有する第1混合溶液を得る第1亜臨界水処理工程、処理空間から高圧蒸気を排出して、圧力を低下させる中間圧力低下工程、処理空間から、フルボ酸/フミン酸の原料となる液体のみを回収する液体回収工程、200~250℃で、15~30atmの蒸気を導入し、原料を亜臨界水反応により炭化処理して形成された炭化固形物と、この炭化に伴って生成された木酢酸を含有する第2混合溶液を得る第2亜臨界水処理工程、更に処理空間から木酢酸の原料液体のみを回収する液体回収工程、および固体炭化物回収工程を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料である木材チップを処理して少なくとも2種以上の有用物質を製造する有用物質の製造方法であって、
内部に閉鎖可能な処理空間を有する密閉容器と、前記密閉容器内に原料を供給するための供給部と、該密閉容器内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段と、前記密閉容器内から液体のみを排出するための開閉バルブおよび固形物を排出するための開閉機構を持つ排出口部と、前記密閉容器から高圧蒸気を排出するための蒸気排出バルブを持つ蒸気排出口とを備えた処理装置を準備する装置準備工程、
前記処理装置の密閉容器の処理空間内に、前記供給部から、主原料として木材チップを含有する原料を投入する原料投入工程、
温度が120~200℃で、圧力が4~15atmの蒸気を、前記原料が投入されている前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応処理して、フルボ酸とフミン酸と木材のチップおよび/またはその破片の固形物を含有する第1混合溶液を得る第1亜臨界水処理工程、
前記蒸気排出バルブを開いて、前記処理空間から高圧蒸気を排出して、該処理空間内の圧力を高圧から低下させる中間圧力低下工程、
前記開閉バルブを開いて、前記処理空間から、フルボ酸/フミン酸の原料となる液体のみを回収する第1液体回収工程、
前記蒸気排出バルブおよび開閉バルブを閉じる閉工程、
温度が200~250℃で、圧力が15~30atmの蒸気を、前記固形物が存在する前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応による炭化処理して形成された炭化固形物と、この炭化に伴って生成された木酢酸を含有する第2混合溶液を得る第2亜臨界水処理工程、
前記蒸気排出バルブを開いて、前記処理空間から高圧蒸気を排出して、該処理空間内の圧力を高圧から大気圧に低下させる最終圧力低下工程、
前記開閉バルブを開いて、前記処理空間から、木酢酸の原料となる液体のみを回収する第2液体回収工程、および
前記開閉機構を開いて、前記処理空間から、固体炭化物を回収する固体回収工程、
を備えていることを特徴とする有用物質の製造方法。
【請求項2】
前記第1亜臨界水処理工程において、最高温度保持時間を15~20分とした請求項1の有用物質の製造方法。
【請求項3】
前記第2亜臨界水処理工程において、最高温度保持時間を15~20分とした請求項1または2の有用物質の製造方法。
【請求項4】
前記木材が伐採材または廃材である請求項1~3のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項5】
前記伐採材が、広葉樹または針葉樹によるものである請求項4の有用物質の製造方法。
【請求項6】
前記広葉樹が白樺、柳、栗、ナラまたはブナである請求項5の有用物質の製造方法。
【請求項7】
前記針葉樹が、松、杉、ヒノキまたはあすなろである請求項5の有用物質の製造方法。
【請求項8】
前記廃材が無垢材または合板材である請求項4の有用物質の製造方法。
【請求項9】
前記処理工程が、1~8時間行われる請求項1~8のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項10】
前記主原料が広葉樹であり、前記処理工程において導入される蒸気の圧力が12~25atmである請求項5の有用物質の製造方法。
【請求項11】
前記主原料が針葉樹であり、前記処理工程において導入される蒸気の圧力が20~35atmである請求項5の有用物質の製造方法。
【請求項12】
容積割合で、原料を前記処理空間の90%以下導入する請求項1~11のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項13】
容積割合で、原料を前記処理空間の50~80%導入する請求項1~11のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項14】
前記処理工程における撹拌が、前記処理空間内に配置された回転する撹拌部材により行われる請求項1~13のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項15】
前記原料投入工程において、添加物として、アルカリ性溶液を添加する請求項1~14のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項16】
原料として、木本の葉部を含む請求項1~15のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項17】
前記処理装置が、前記蒸気排出口に連結された凝縮手段を備え、前記蒸気排出口から噴出された高圧蒸気から木材由来の揮発性有機化合物を、前記凝縮手段により凝縮して回収する請求項1~16のいずれかの有用物質の製造方法。
【請求項18】
原料である木材チップを処理して少なくとも2種以上の有用物質を製造する有用物質の製造装置であって、内部に閉鎖可能な処理空間を有する密閉容器と、前記密閉容器内に原料を供給するための供給部と、該密閉容器内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段と、前記密閉容器内から液体のみを排出するための開閉バルブおよび固形物を排出するための開閉機構を持つ排出口部と、前記密閉容器から高圧蒸気を排出するための蒸気排出バルブを持つ蒸気排出口と、前記蒸気排出口に連結され、前記蒸気排出口から噴出された高圧蒸気から木材由来の揮発性有機化合物を凝縮して回収する凝縮手段を備えた有用物質の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用物質の製造方法および製造装置に関し、特に、原料を木材とし、特に、フルボ酸/フミン酸および木酢酸である有用物質の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルボ酸/フミン酸等の腐植物質とは、生物の死後、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊した「化学構造が特定されない有機物(非生体有機物)」の総称と言われている。この腐植物質についても、機能性を示すものと、機能性を示さないものとがあることが経験的に知られており、これは、その自然界の有機物である生物体有機物が、土へ還ろうとするときの中間生成物が含まれるか否かの影響が大きいものと考えられる。この中間生成物を含むとき、すなわち機能性を示す腐植物質については、腐植前駆物質と呼ばれることがある。(非特許文献1)
【0003】
この腐植物質(または腐植前駆物質)に相当するものは、自然界に存在していたものであり、古くから腐植物質の認識の有無は不明だとしても、作物の生育や、病気・けがへの薬効等の効果を様々な形で利用されてきたものである。一方、近年、発達した化学物質等を積極的に利用しようとする近代的な農業や原料処理方法が広く用いられている。しかしながら、このような近代的な農業や原料処理とは別に、古くから活かされてきたこの腐植物質を用いることが改めて見直され始めており、人工的に製造されたフルボ酸を選択的に高濃度で含む溶液等も一部販売されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、フェノール又は/およびフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物を産出するように順養された土壌性通性嫌気性細菌等よりなる細菌群を利用する廃水の処理方法等に関する技術である。この「フェノール又は/およびフェノール露出基のある化合物を含む代謝産物」は、ケイ酸分等と反応することで腐植化の重縮合反応が惹起されるものであり、腐植物を利用する優れた廃水処理方法を開示しようとするものである。
【0005】
特許文献1や非特許文献1にみられるように、腐植前駆物質や腐植物質(腐植物)を利用する技術が検討されている。ここで腐植物には、その成分の腐植化度合(重縮合反応化度合)として、ヒュミンやフルボ酸、フミン酸等が含まれていることが知られている。そして、一般的な腐植物質において、フルボ酸とフミン酸との比率は2:8程度の重量比で含まれている。
【0006】
特許文献1に示されるように、有機性物質を含む廃水の処理工程において、この腐植物質に相当するものを使用するものはあるが、腐植物質におけるフルボ酸、フミン酸等も単純物質ではなく、いずれも複数の有機化合物の群として捉えられていることや、それぞれの分離が困難なことからも、具体的にどの物質がどのような効果を奏するかについては、十分には検討されてこなかった。しかしながら、市販されているフルボ酸を含む溶液は(微)生物活性液としての有効性等も期待されており、さらに農業用などのように大量にできるだけ安価な商品の提供が求められる用途などへの利用を図るためにはフルボ酸を選択的に高濃度で含む製品が求められている。
【0007】
そこで、特開2017-112947号公報(特許文献2)では、腐植物質のうちで(微)生物活性液としての利用が期待されるフルボ酸に関して、一般的な腐植物質の比率と比べて、フミン酸に対してフルボ酸を高比率で含有するフルボ酸高比率含有液の製造方法を提供することを目的として、下記の製造方法が提案された。
【0008】
上記特許文献2で提案されたフルボ酸含有液の製造方法は、有機性物質とフルボ酸馴養汚泥とを混合した有機性物質混合液を溶存酸素濃度を0.1mg-O/L以下として4時間以上培養することで、前記有機性物質混合液の有機物質を嫌気的培養により低減させ嫌気的培養液とする嫌気的培養工程と、前記嫌気的培養液の溶存酸素濃度を0.2mg-O/L以上として6時間以上培養することで、前記嫌気的培養液中にフルボ酸を増加させフルボ酸含有培養液を得る好気的培養工程と、前記好気的培養工程で培養されている培養完了前の培養液を前記嫌気的培養工程へ返送する好気的培養液返送工程と、前記好気的培養工程から得られるフルボ酸含有培養液から、フルボ酸含有液を得ることを特徴とする。
【0009】
本件出願人は、先に、上記の公開公報に記載されたもの等とは全く異なるフルボ酸溶液の製造方法を特許第6286605号公報で提案した。
【0010】
この特許公報で提案したフルボ酸の製造方法は、
内部に閉鎖可能な処理空間を有する密閉容器と、該密閉容器内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段と、開閉機構を有し、前記密閉容器内に原料を供給するための供給部と、開閉機構を有し、前記蒸気による原料の処理により生成された処理液を外部に排出するための排出部とを備えた処理装置を準備する装置準備工程、
前記処理装置の密閉容器の処理空間内に、前記供給部から、主原料として木材チップを含有する原料を投入する原料投入工程、
温度が120~250℃で、圧力が12~35atmの蒸気を、前記原料が投入されている前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応処理して、フルボ酸とフミン酸と木材のチップおよび/またはその破片の懸濁物を含有する混合溶液を得る処理工程、および、
取得した混合溶液から、フルボ酸を分離して、フルボ酸溶液を取得するフルボ酸溶液取得工程
を備えていることを特徴とするフルボ酸溶液の製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【0012】
【0013】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】内水護「自然と輪廻 土・自然・人間・社会 ベーシック文明論」18-28頁,漫画社,1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記特許公報に記載されたフルボ酸の製造方法によれば、純度の良いフルボ酸を効率良く製造することができる。しかしながら、木材には他の有用物質(木材由来の有用物質も含む)が複数含有されているが、従来は、フルボ酸抽出後の固形物を、動物飼育のための飼料として用いる以外は、それらの有効活用がされていなかった。
【0016】
そこで、本発明は、木材を原料として、2種以上の有用物質を製造するための有用物質の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、下記(1)~(18)の構成の本発明の有用物質の製造方法および製造装置により達成される。
(1)
原料である木材チップを処理して少なくとも2種以上の有用物質を製造する有用物質の製造方法であって、
内部に閉鎖可能な処理空間を有する密閉容器と、前記密閉容器内に原料を供給するための供給部と、該密閉容器内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段と、前記密閉容器内から液体のみを排出するための開閉バルブおよび固形物を排出するための開閉機構を持つ排出口部と、前記密閉容器から高圧蒸気を排出するための蒸気排出バルブを持つ蒸気排出口とを備えた処理装置を準備する装置準備工程、
前記処理装置の密閉容器の処理空間内に、前記供給部から、主原料として木材チップを含有する原料を投入する原料投入工程、
温度が120~200℃で、圧力が4~15atmの蒸気を、前記原料が投入されている前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応処理して、フルボ酸とフミン酸と木材のチップおよび/またはその破片の固形物を含有する第1混合溶液を得る第1亜臨界水処理工程、
前記蒸気排出バルブを開いて、前記処理空間から高圧蒸気を排出して、該処理空間内の圧力を高圧から低下させる中間圧力低下工程、
前記開閉バルブを開いて、前記処理空間から、フルボ酸/フミン酸の原料となる液体のみを回収する第1液体回収工程、
前記蒸気排出バルブおよび開閉バルブを閉じる閉工程、
温度が200~250℃で、圧力が15~30atmの蒸気を、前記固形物が存在する前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応による炭化処理して形成された炭化固形物と、この炭化に伴って生成された木酢酸を含有する第2混合溶液を得る第2亜臨界水処理工程、
前記蒸気排出バルブを開いて、前記処理空間から高圧蒸気を排出して、該処理空間内の圧力を高圧から大気圧に低下させる最終圧力低下工程、
前記開閉バルブを開いて、前記処理空間から、木酢酸の原料となる液体のみを回収する第2液体回収工程、および
前記開閉機構を開いて、前記処理空間から、固体炭化物を回収する固体回収工程、
を備えていることを特徴とする有用物質の製造方法。
(2)
前記第1亜臨界水処理工程において、最高温度保持時間を15~20分とした前記(1)の有用物質の製造方法。
(3)
前記第2亜臨界水処理工程において、最高温度保持時間を15~20分とした前記(1)または(2)の有用物質の製造方法。
(4)
前記木材が伐採材または廃材である前記(1)の有用物質の製造方法。
(5)
前記伐採材が、広葉樹または針葉樹によるものである前記(4)の有用物質の製造方法。
(6)
前記広葉樹が白樺、柳、栗、ナラまたはブナである前記(5)の有用物質の製造方法。
(7)
前記針葉樹が、松、杉、ヒノキまたはあすなろである前記(5)の有用物質の製造方法。
(8)
前記廃材が無垢材または合板材である前記(4)の有用物質の製造方法。
(9)
前記処理工程が、1~8時間行われる前記(1)~(8)のいずれかの有用物質の製造方法。
(10)
前記主原料が広葉樹であり、前記処理工程において導入される蒸気の圧力が12~25atmである前記(5)の有用物質の製造方法。
(11)
前記主原料が針葉樹であり、前記処理工程において導入される蒸気の圧力が20~35atmである前記(5)の有用物質の製造方法。
(12)
容積割合で、原料を前記処理空間の90%以下導入する前記(1)~(11)のいずれかの有用物質の製造方法。
(13)
容積割合で、原料を前記処理空間の50~80%導入する前記(1)~(11)のいずれかの有用物質の製造方法。
(14)
前記処理工程における撹拌が、前記処理空間内に配置された回転する撹拌部材により行われる前記(1)~(13)のいずれかの有用物質の製造方法。
(15)
前記原料投入工程において、添加物として、アルカリ性溶液を添加する前記(1)~(14)のいずれかの有用物質の製造方法。
(16)
原料として、木本の葉部を含む前記(1)~(15)のいずれかの有用物質の製造方法。
(17)
前記処理装置が、前記蒸気排出口に連結された凝縮手段を備え、前記蒸気排出口から噴出された高圧蒸気から木材由来の揮発性有機化合物を、前記凝縮手段により凝縮して回収する前記(1)~(16)のいずれかの有用物質の製造方法。
(18)
原料である木材チップを処理して少なくとも2種以上の有用物質を製造する有用物質の製造装置であって、内部に閉鎖可能な処理空間を有する密閉容器と、前記密閉容器内に原料を供給するための供給部と、該密閉容器内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段と、前記密閉容器内から液体のみを排出するための開閉バルブおよび固形物を排出するための開閉機構を持つ排出口部と、前記密閉容器から高圧蒸気を排出するための蒸気排出バルブを持つ蒸気排出口と、前記蒸気排出口に連結され、前記蒸気排出口から噴出された高圧蒸気から木材由来の揮発性有機化合物を凝縮して回収する凝縮手段を備えた有用物質の製造装置。
【発明の効果】
【0018】
上記したように、本発明によれば、主として木材チップを原料として、一連の工程で、少なくとも2種の有用物質を製造することができ、効率的でかつ経済性に極めて良好であるという利点がある。
また、本発明によれば、純度の高いフルボ酸溶液を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態による有用物質の製造装置の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の有用物質の製造方法における処理工程における処理圧力と処理温度の推移を示すずである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態による有用物質の製造装置10を説明する。
前記製造装置10は、内部に木材チップである原料を収容する処理空間である閉鎖空間S1を有する密閉容器12と、密閉容器12内に、亜臨界水である高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段14と、密閉容器12の底側に設けられ開閉機構26を有する排出口16と、排出口16からの直接排出操作のみで処理された原料と液体とを分離して回収する分離回収手段18と、を備えている。密閉容器12の形状は、例えば、矩形箱形、立体多角筒形、円筒形、樽型、ドラム型等その他任意形状でよいが、下面側に設けられている排出口16から重力を利用して排出されるような形状が好ましい。密閉容器の下面が排出口へ向けて下り傾斜に設けられていると好適である。
【0021】
分離回収手段18は、排出口16を介して該密閉容器12内部に連通する液体の回収部50と、密閉容器12内の液体のみを排出口16を介して自然流下により回収部50へ回収させる自然流下回収機構52と、を有することとしてもよい。排出口16付近で処理された固形分としての原料は密閉容器12内にそのまま残り、液体のみが重力を利用して回収部50へ自然流下することにより、原料と液体とを分離回収できる。回収部50の構成は、例えば、金属製タンクや立体多角形状の箱体、管状体等、液体を回収する閉鎖空間S2を有するものであれば任意のものでもよい。収容部を複数個形成してもよい。
【0022】
なお、上の例では、分離手段を処理装置に組み込んだ例について説明したが、処理装置自体には、分離手段を設けること無く、別体で設けてもよい。
また、自然流下回収機構52は、密閉容器12の排出口16と回収部50とを連通接続する液体回収流路54を含み、該液体回収流路54は排出口16との連通側から回収部50側に向けて、水平又は下り傾斜状に設けられたこととしてもよい。
【0023】
また、処理された原料の排出口16からの排出経路R1途中に開閉機構26が設けられ、開閉機構26よりも排出上流側に液体回収流路54の液体導入口58が連通接続されている。
【0024】
また、液体回収流路54には、密閉容器12内での原料の処理中には流路を遮断するとともに、処理後に液体のみを回収する際には流路を連通させるように連通状態を選択的に切り替える開閉バルブ60が設けられている。
【0025】
また、回収部50の閉鎖空間S2の底面が密閉容器12の排出口16の位置より低く設けられたこととしてもよい。
【0026】
前記密閉容器12は、左右中央部の底側に排出口16が設けられつつ、径が左右中央部から左右両端側に向けて次第に縮径された横倒し樽型形状に形成されているのが好ましく、この密閉容器12内部には撹拌部材30が設けられている。この撹拌手段30は、密閉容器12の水平中心軸と同軸に横長に設けられ、その両端に於いて回転自在に軸支された回転軸49と、この回転軸49に取り付けられ、同回転軸49の周方向に広がる撹拌羽根48と、を有し、撹拌羽根48の回転軸49から羽根先端までの長さは、図示したように、密閉容器12の横倒し樽型形状に対応して、回転軸49の長手方向の中央位置で大きく、両端側に行くにしたがって次第に小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0027】
また、蒸気噴出手段14は、回転軸49を中空管とし、該中空管の周面に複数個の蒸気噴出孔44を形成して構成された回転軸兼蒸気噴出管28を含むこととしてもよい。
【0028】
図示していないが、密閉容器12は、支持脚で地面からある程度の高さに配置されるように支持されていることが好ましい。密閉容器12は、例えば、耐熱耐圧性を有するように金属板を加工して形成され、その内部の閉鎖空間が約2m3以上の大きさで設けられていることが好ましい。密閉容器12には、中央上部に投入部20が、中央底部に排出部22がそれぞれ設けられており、それぞれ開閉機構24,26が設けられて、開閉可能となっている。なお、密閉容器12には、内部圧力が設定値よりも高くなると内部蒸気を開放させる、例えば設定圧を調整可能な安全弁(図示せず)が設けられている。また、安全弁に接続された排気用管の途中には、消音・消臭装置が設けられており、安全弁を介して排気される蒸気は消音消臭されて、外気側に排出される。
【0029】
前記排出口16の径は、例えば、300mm程度に設けられている。排出口16には、下方に突設された排出筒36が接続されて処理された原料の前記排出経路R1を形成している。排出口16を開閉する前記開閉機構26は、この排出筒36の該排出経路R1の途中に設けられている。すなわち、排出部22は、排出口16と、排出筒36と、開閉機構26と、を含む構成となっている。密閉容器12が横倒し樽型形状に形成されていることから、重力により内部の原料は排出口16が設けられている中央部に向けて左右から集まりやすく、開閉機構26を開くだけで簡便に処理済み原料を排出口16から排出させることができる。
【0030】
前記投入部20には、密閉容器12の上辺の中央部に投入口42が開口されており、投入口42には上方へ突設された投入筒43が取り付けられ、投入筒43内を開閉するように前記開閉機構24が設けられている。開閉機構24を介して、投入口42を開いて原料を密閉容器内に投入でき、処理時には閉鎖して密閉容器12内の閉鎖空間S1の閉鎖状態を維持する。
【0031】
蒸気噴出手段14は、密閉容器12内に高温高圧の蒸気を噴出するとともに、該密閉容器12内を高温高圧状態とし、原料を蒸気を用いて処理する。
図1に示すように、蒸気噴出手段14は、密閉容器12内に配置され周面側に多数の蒸気噴出孔44が形成された中空管からなる蒸気噴出管28と、ボイラー等の蒸気発生装置46と、蒸気発生装置46から蒸気噴出管28内に蒸気を供給する蒸気送管47と、を含む。前記蒸気発生装置46は、発生した蒸気の供給状態と供給停止状態を制御する蒸気供給制御バルブ46aを備え、この蒸気供給制御バルブ46aを閉じることにより、蒸気の供給を一時的に停止することができるようになっている。この蒸気供給制御バルブ46aは、前記蒸気送管47に設けてもよい。
蒸気噴出手段14から密閉容器12内に噴出される蒸気は、原料を適正に処理するため、亜臨界水の条件を満足する高温高圧に設定される。例えば、蒸気噴出管28から噴出される蒸気は、温度が120~250℃、圧力が4~30atm程度に設定されている。そして、密閉容器12内を、温度120~250℃、圧力4~30atm程度にするようになっている。蒸気噴出管28は、密閉容器12の上下方向略中央位置で横方向に長く配置され、密閉容器の両端壁12a、12bに設けられた軸受45を介して回転自在に軸支されている。すなわち、蒸気噴出管28は、横軸周りに回転しながら放射状に蒸気を噴出しつつ蒸気を原料に直接に当てるようになっている。なお、蒸気噴出管28は、モータ等の回転駆動装置(図示せず)からチェーン70等を介して回転駆動力を得て回転するようになっている。さらに、蒸気噴出管28には、撹拌手段を構成する撹拌羽根48が取り付けられており、蒸気噴出管28が撹拌手段の回転軸49を兼用している。すなわち、本実施形態では、蒸気噴出手段14は、撹拌手段の回転軸49を中空管とし、該中空管の周面に複数個の蒸気噴出孔を形成して構成された回転軸兼蒸気噴出管28を含む。なお、蒸気噴出手段は、この形態の構成に限らず、例えば、密閉容器内に差し込んだ管の先端から蒸気を噴出する構成、複数の蒸気噴出管を配置させた構成等、その他任意の構成でもよい。
【0032】
撹拌手段30は、密閉容器内で処理される原料を撹拌する手段であり、原料をむらなく、早期に処理できる。撹拌手段30は、上記の蒸気噴出管28からなる回転軸49と、該回転軸49に取り付けられ同回転軸の周方向に広がる部位を有する撹拌羽根48と、を含む。本実施形態では、撹拌羽根48は、回転軸49の軸方向略中央位置で互いに逆巻きに設けられた、右巻き螺旋羽根48aと、左巻き螺旋羽根48bと、で形成されている。上述のように、撹拌羽根48は、回転軸から羽根先端までの長さが左右中央部から両端側に向けて次第に縮径されるように設けられている。これにより密閉容器12の横倒し樽型形状に対応して原料を確実に撹拌できる。さらに、羽根先端と密閉容器12の内壁との間にある程度の隙間Hを形成するように設けられている。螺旋羽根48a、48bは、原料を中央部から両端壁側に向けて搬送しつつ、固形状の原料を破砕しながら原料を撹拌する。撹拌羽根48により両端壁12a、12b側に搬送された原料は、該端壁12a、12b側で後から搬送されてくる原料によって押送され、密閉容器12の内壁に沿いつつ隙間Hを介してから中央に戻るように搬送される。なお、撹拌手段30は、上記の構成のものに限らず、その他任意の構成でもよい。
【0033】
分離回収手段18は、排出口からの直接操作のみで、蒸気処理後の密閉容器12内の処理された原料と液体とを分離して回収する分離回収手段である。分離回収手段18は、
図1に示すように、排出口16を介して密閉容器12内部に連通する液体の回収部50と、排出口16を介して液体を自然流下により回収部50に回収させる自然流下回収機構52と、を有する。
【0034】
前記液体回収流路54はその液体導入口58を排出口16に連通接続させて、処理された原料の排出経路R1から分岐した液体の回収経路R2を形成している。本実施形態では、液体回収流路54は、例えば、その内径が6mm程度の金属製管で設けられている。液体回収流路54には、上述のように、流路の連通状態を選択的に切り替える開閉バルブ60が設けられている。開閉バルブ60は、密閉容器内での原料の処理中には流路を遮断するとともに、処理後に液体のみを分離回収する際には流路を連通させるように切り替えられる。これにより、原料と同時に原料中に含まれる水分や蒸気が液化して原料中の細菌や悪臭成分等を含んで状態の液体は、高温高圧の蒸気で処理させることができる。そして、処理後に分離回収される液体は、殺菌や、悪臭・有害成分の分解等された状態で回収することができ、分離回収した液体を二次処理する必要がなく、労力がかからず、時間短縮を図ることができる。
【0035】
前記密閉容器12の上部には、テルペン油等の揮発性有用物質回収機構30が設けられており、この揮発性有用物質回収機構30は、密閉容器12に設けられた高圧高温蒸気排出口19を介して密閉空間S1に連通した高温高圧蒸気排出管31、およびこの高温高圧蒸気排出管31の上流側に設けられた蒸気排出バルブ32、この蒸気排出バル32からの高温高圧蒸気を受け、これを冷却して前記高圧高温蒸気を凝縮し、木材由来の揮発性有機化合物を含有する液体を回収する凝縮手段34、および管路35を介して前記凝縮手段34からの液体が搬送されてくる貯蔵容器38を備えている。
【0036】
前記貯蔵容器38内に貯蔵される液体は、上記したように木材由来の揮発性有機化合物を含有する液体であり、必要に応じて、揮発性有機化合物を前記液体から抽出して商品とする。
【0037】
前記製造装置10は、中央演算回路等から構成されており、予め記憶した所定のプログラムに従い、前記開閉機構26,蒸気排出バルブ32、蒸気発生装置46、蒸気供給制御バルブ46aおよび開閉バルブ60等をの作動を制御する制御回路100を備えている。
【0038】
次に、以上説明した製造装置10を用いての本発明の実施の形態による有用物質の製造方法について説明する。
本発明の実施の形態による有用物質の製造方法は、前記のような処理装置を準備する装置準備工程、
前記処理装置の密閉容器の処理空間内に、前記供給部から、主原料として木材チップを含有する原料を投入する原料投入工程、
温度が120~200℃で、圧力が4~15atmの蒸気を、前記原料が投入されている前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応処理して、フルボ酸とフミン酸と木材のチップおよび/またはその破片の固形物を含有する第1混合溶液を得る第1亜臨界水処理工程、
前記蒸気排出バルブを開いて、前記処理空間から高圧蒸気を排出して、該処理空間内の圧力を高圧から低下させる中間圧力低下工程、
前記開閉バルブを開いて、前記処理空間から、フルボ酸/フミン酸の原料となる液体のみを回収する液体回収工程、
前記蒸気排出バルブおよび開閉バルブを閉じる閉工程、
温度が200~250℃で、圧力が15~30atmの蒸気を、前記固形物が存在する前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応による炭化処理して形成された炭化固形物と、この炭化に伴って生成された木酢酸を含有する第2混合溶液を得る第2亜臨界水処理工程、
前記蒸気排出バルブを開いて、前記処理空間から高圧蒸気を排出して、該処理空間内の圧力を高圧から大気圧に低下させる最終圧力低下工程、
前記開閉バルブを開いて、前記処理空間から、木酢酸の原料となる液体のみを回収する液体回収工程、および
前記開閉機構を開いて、前記処理空間から、固体炭化物を回収する固体回収工程、
を備えている。
なお、上記において、原料供給工程以降は、前記制御回路100により、所定のプログラムに沿って自動的に行われることが好ましい。
【0039】
以下、上記した各工程について詳細に説明する。
《装置準備工程》
図を参照しつつ、上で説明したような製造装置(処理装置)を準備する。
【0040】
《原料投入工程》
原料は、木材チップを主原料とする。チップのサイズは、長辺が50~150cm程度、短辺2が~5cm程度のものとするのが好ましい。副材もしくは添加物としては、より多くのフルボ酸を効率よく生成するために、アルカリ性溶液を添加することができる。アルカリ性溶液を添加する場合の蒸気の圧力、温度は、添加しない場合と同様であって良い。
【0041】
前記木材としては、一般に、伐採材または廃材を用いることができる。
前記伐採材といては、広葉樹および針葉樹のいずれであってもよい。
広葉樹としては、いずれの広葉樹であってもよいが、現在のところ、例えば、白樺、柳、栗、ナラまたはブナ等が好ましく使用できている。
前記針葉樹としては、現在のところ、例えば、松、杉、ヒノキまたはあすなろ等が好ましく使用できている。
なお、伐採材を用いる場合、皮等を取り除く必要はない。また、葉部や根部、あるいはヤシ殻のような果実の殻をそのまま、あるいはチップ状としたものを含んでいてよい。
【0042】
廃材としては、木造建築の家屋の解体の際に生じた木くず(角材、板材:無垢材、貼り合わせ材・合板材(ベニヤ板))等が挙げられる。このような木くずは、通常、チップとされるので、原料としてそのまま用いることができる。
上記の原料は、混合して用いても良い。例えば、通常の家庭において、伐採を行うと、いろいろな種類の樹木の伐採材が排出されるが、これらは、仕分けることなく、そのまま、全体を混合したままチップとし、原料としてもよい。勿論、その中に廃材チップを混合しても良い。
【0043】
以上説明したようなチップである原料を、処理空間に投入するが、原料の量は、密閉容器12の閉鎖空間S1すなわち処理空間の90%以下、特に、50~80%であることが好ましい。原料の投入量がこの範囲より低い場合には、処理効率が悪く、越える場合には、蒸気が原料に上手く作用できず、フルボ酸の生成が十分でなくなるおそれがある。
【0044】
《第1亜臨界水処理工程》
この工程においては、前記原料が投入されている処理空間内に高圧高温蒸気を導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応処理して、フルボ酸とフミン酸と木材のチップおよび/またはその破片の固形物を含有する第1混合溶液を得る。前記蒸気は、用いる原料の種類、状態によっても異なるが、原料か炭化しない、温度が120~200℃で、圧力が4~15atmとする。したがって、処理空間内を、温度が120~200℃で、圧力が4~15atmの処理温度、圧力とする。蒸気の導入量は、処理空間の容積、処理する原料の量にもよるが、余剰空間(処理空間から投入された原料の容積を減算した値の空間)に完全に充填される量とするのが好ましい。
【0045】
なお、前記伐採材として広葉樹を用いる場合、処理工程において供給される前記高圧高温蒸気は、温度が120~200℃で、圧力が4~15atmとするのが好ましい。
一方、前記伐採材として針葉樹を用いる場合、処理工程において供給される前記高圧高温蒸気は、温度が140~200℃で、圧力が5~15atmとするのが好ましい。
この処理工程では、上記のように、原料が投入された処理空間に蒸気を導入しつつ、前記原料を攪拌して、前記原料を亜臨界水反応により処理を行う。
処理工程の時間は、最高温度・最高圧力保持時間すなわち設定処理温度・圧力で、15~20分が好ましい。処理時間が上記の範囲より短い場合には、反応時間が十分でなく、すなわち、フルボ酸、フミン酸の生成が十分でなく、相当量のフルボ酸、フミン酸が原料中に残留してしまい、上記範囲を超えると、原料か炭化してしまい、溶液中に目的としない物質が混入してしまう。
この処理工程において、原料は、亜臨界水反応処理され、フルボ酸とフミン酸が、溶液中に含有される。この溶液は、また、木材チップおよび/またはその破片の懸濁物を含有する。すなわち、フルボ酸と、フミン酸と、木材チップおよび/またはその破片の懸濁物を含有する混合溶液が得られる。
この工程で取得した混合溶液中には、フルボ酸とフミン酸の総量(固形分量中)のうち、フルボ酸が、全体の3~12%含まれる。
【0046】
《中間圧力低下工程》
前記第1亜臨界水処理工程が終了した後、前記蒸気排出バルブ32を開いて、前記処理空間から高圧蒸気を一部排出して、該処理空間内の圧力を高圧から低下させる。この圧力低下は、次に行われる第1液体回収工程が安全かつ効率良く行えるようにするためのものであり、処理空間の圧力を、2~4atm程度に下げればよい。大気圧まで下げる必要はない。なお、この圧力低下等に伴って、温度も下がるが、極めて少なく、次の第1液体回収工程の温度低下も含めて数℃程度の低下である。温度の低下は、自然冷却分である。後に行われる第2亜臨界水処理工程を効率よく行うため、温度の低下はできるだけ、小さい方が望ましい。
なお、この工程で排出される蒸気は、前記凝縮手段34に導かれ、ここで凝縮されて、揮発性成分等の有用成分を含む液体と凝縮され、管路35を介して貯蔵容器38に回収される。
【0047】
《第1液体回収工程》
この工程では、前記開閉機構26を閉じたまま、開閉バルブ60を開いて、前記処理空間から、フルボ酸/フミン酸の原料となる液体(フルボ酸/フミン酸の混合溶液)を、液体回収流路54を介して回収部50に回収する。
前記混合溶液はそのまま用いてもよいが、この混合溶液からフミン酸とフルボ酸を分離処理して、フルボ酸溶液およびフミン酸溶液を取得する。この取得工程におけるフミン酸とフルボ酸を分離処理は、溶液のpH酸性にして、フミン酸を沈殿分離、あるいは濾過分離による。溶液のpHは、2~3とするのが好ましい。
このとき、固形分は、密閉容器12内に留まり、次の処理を待つ。
前記圧力低下工程およびこの第1液体回収工程は、前記蒸気供給制御バルブ46aを閉じ、密閉容器12への蒸気の供給を一時的に停止して行うことが好ましい。
【0048】
《閉工程》
ついで、前記蒸気排出バルブ32および開閉バルブ60を閉じる。
【0049】
《第2亜臨界水処理工程》
この第2亜臨界水処理工程では、前記処理空間内に残留している前記固形物を、前記第1亜臨界水処理工程で用いた蒸気よりは高温・高圧の蒸気で亜臨界水処理する。
ずなわち、温度が200~250℃で、圧力が15~30atmの蒸気を、前記処理空間内に導入しつつ、前記原料を撹拌しながら、原料を亜臨界水反応による炭化処理して形成された炭化固形物と、この炭化に伴って生成された木酢酸を含有する第2混合溶液を得る。
材料として、ヤシ殻を用いた場合には、よく知られているヤシ殻活性炭となり、特に好ましい有用物質となる。
【0050】
《最終圧力低下工程》
前工程である第2亜臨界水処理工程が完了した後、前記蒸気排出バルブ32を開いて、前記処理空間から高圧蒸気を排出して、該処理空間内の圧力を高圧から大気圧まで低下させる。
このとき、排出される圧力蒸気中に、有用物質の存在が見込まれる場合には、前記中間圧力低下工程後の場合と同様、排出される高圧蒸気を、凝縮手段34により液体とし、貯蔵容器38に回収してもよい。この場合の有用物質としては、テルペン油等がある。
なお、この圧力低下等に伴って、温度も下がるが、この温度の低下は、自然冷却によるものである。
【0051】
《第2液体回収工程》
前記開閉バルブ60を開いて、前記処理空間から、液体のみを回収する。この液体は、木酢酸をリッチに含有する木酢液で、精製等することなく、単に所定の希釈濃度に希釈して、殺菌液、作物の生育抑制剤、作物生長促進剤、消臭剤等として用いることができる。
【0052】
《固体回収工程》
この後、前記第開閉機構26を開いて、前記処理空間から、固体炭化物を回収する。
以上により、本発明の実施の形態による2種以上の有用物質の製造方法を終了する。以上の処理工程における処理圧力と処理温度の推移を
図2に示した。
【符号の説明】
【0053】
10 有機系廃棄物の処理装置
12 密閉容器
14 蒸気噴出手段
16 排出口
18 分離回収手段
26 開閉機構
30 撹拌手段
32 蒸気排出バルブ
50 回収部
52 自然流下回収機構
54 液体回収流路
58 液体導入口
60 開閉バルブ
100 制御回路