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特開2023-57612資機材管理システムおよび通信アンテナの設置位置決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057612
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】資機材管理システムおよび通信アンテナの設置位置決定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/087 20230101AFI20230417BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20230417BHJP
   B66B 9/06 20060101ALI20230417BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
B66B11/02 Z
B66B9/06 E
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167178
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中島 康弘
【テーマコード(参考)】
3C100
3F301
3F306
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA47
3C100BB05
3C100BB24
3C100BB25
3C100CC02
3C100CC14
3C100DD07
3C100DD14
3C100DD22
3C100DD33
3C100EE18
3F301AA13
3F306CB60
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】資機材の管理を容易に行うことのできる資機材管理システムおよび通信アンテナの設置位置決定方法を提供する。
【解決手段】資機材管理システム20は、複数の資機材11の各々に取り付けられるとともに取付対象となる資機材11の識別情報が組み込まれた電子タグである資機材電子タグ13と、建設工事用のエレベータのかご12の内面に取り付けられ、資機材電子タグ13との間で無線通信可能な通信アンテナ21と、を備える。通信アンテナ21は、かご12の側壁面12aに、かご12の床面12bに向けて電波を照射するように設置されている。これにより、通信アンテナ21と資機材電子タグ13との間の無線通信を確実に行うことができる。その結果、資機材11の位置をリアルタイムで把握することができることから、資機材11の管理を容易に行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設工事で用いられる資機材を管理する資機材管理システムであって、
前記複数の資機材の各々に取り付けられるとともに取付対象となる資機材の識別情報が組み込まれた電子タグと、
建設工事用のエレベータのかごの内面に取り付けられ、前記電子タグとの間で無線通信可能な通信アンテナと、を備え、
前記通信アンテナは、前記かごの床面に向けて電波を照射するように設置されている
資機材管理システム。
【請求項2】
各階層に対応する識別情報が組み込まれた階層用電子タグを備え、
前記階層用電子タグは、各階層に設けられた搬出入扉に取り付けられ、前記かごが到着した階層において前記通信アンテナとの無線通信により当該階層の識別情報が読み込み可能に構成されている
請求項1に記載の資機材管理システム。
【請求項3】
前記通信アンテナは、電波誘導型のアンテナである
請求項1または2に記載の資機材管理システム。
【請求項4】
前記通信アンテナは、前記かごの側壁面の下端側に設置されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の資機材管理システム。
【請求項5】
前記かごは、四角箱型であり、
前記通信アンテナは、前記かごの4つのコーナー部のそれぞれに設置されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の資機材管理システム。
【請求項6】
前記通信アンテナを介して前記電子タグとの間で情報の読み込みを行うためのリーダを備え、
前記リーダは、前記かごの外側に設置されている
請求項1~5のいずれか一項に記載の資機材管理システム。
【請求項7】
建設工事用のエレベータのかご内に設置された通信アンテナを用いて、前記かご内に搬入された資機材に予め取り付けられた電子タグから当該資機材の識別情報を取得し、資機材の管理を行う請求項1~6のいずれか一項に記載の資機材管理システムにおいて、前記通信アンテナの設置位置を決定するための方法であって、
前記かごの床面に向けて電波を照射するように複数の前記通信アンテナを仮設置する通信アンテナ仮設置工程と、
前記電子タグが取り付けられた資機材の試験体を前記かご内の各所に設置する試験用資機材設置工程と、
前記仮設置した通信アンテナから電波を照射して前記試験体の識別情報の読み取り状況を確認する読取試験実施工程と、を備え、
前記通信アンテナの仮設置位置を段階的に移動させて前記読取試験実施工程を繰り返し実施し、前記読取試験実施工程の結果に基づいて前記通信アンテナの設置位置を決定する
通信アンテナの設置位置決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資機材の資機材管理システム、および、通信アンテナの設置位置決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設現場においては、各階層への資機材の搬送が仮設の建設工事用エレベータを用いて行われている。こうした資機材がどの階層に搬送されたか管理するシステムとして、例えば特許文献1には、RFID(radio frequency identifier)技術を用いたシステムが開示されている。具体的には、エレベータのかごに設置された通信アンテナを用いて、かご内の資機材の各々に取り付けられた電子タグを読み取ることにより、どの資機材がどの階層に搬送されたかを把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-208878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、かごの天井面や側壁面、床面などのあらゆる面に多数の通信アンテナを配置して電子タグの読み込み不良を解消しようとしている。このため、かごの外部に漏れ出した電波によってかごの外部にある資機材の電子タグまでが読み込まれてしまい、結果として、資機材の管理が容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する資機材管理システムは、建設工事で用いられる資機材を管理する資機材管理システムであって、前記複数の資機材の各々に取り付けられるとともに取付対象となる資機材の識別情報が組み込まれた電子タグと、建設工事用のエレベータのかごの内面に取り付けられ、前記電子タグとの間で無線通信可能な通信アンテナと、を備え、前記通信アンテナは、前記かごの床面に向けて電波を照射するように設置されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、通信アンテナの電波がかごの外部に漏れ出ることが抑えられることから、資機材の管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】管理システムの一実施形態の概略構成を示す図。
図2】通信アンテナの設置位置の一例を示す上面図。
図3】通信アンテナの設置位置の一例を示す側面図。
図4】電波の反射態様を模式的に示す図。
図5】管理システムが実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図6】通信アンテナの設置位置決定方法の一実施形態を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図6を参照して、資機材管理システムおよび通信アンテナの設置位置決定方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、資機材管理システム20(以下、単に管理システム20という。)は、建設現場において利用される資機材11の位置を管理するシステムである。例えば、管理システム20は、建設中の建物において、金属製箱型形状のかご12を有するエレベータによって資機材11がどの階層に搬送されたかを管理するシステムである。かご12は、例えば四角箱状である。資機材11には、各々を識別可能にする識別情報を記憶する資機材電子タグ13が取り付けられている。識別情報は、資機材の種類のほか、資機材11の所属業者やその所属業者における管理番号等を含む情報である。資機材電子タグ13は、各資機材11に対して異なる位置に複数取り付けられていてもよい。管理システム20は、各階層において、通信アンテナ21を用いた資機材電子タグ13との無線通信により各資機材11の識別情報を取得する。管理システム20は、各階層において資機材11の識別番号を取得することで資機材11の位置を管理する。
【0009】
管理システム20は、通信アンテナ21のほか、入力装置22、表示装置23、リーダ24、開閉検出器25、および、情報処理装置26を備える。
入力装置22は、ユーザ等からの入力を受け付ける装置である。入力装置22は、各種情報や各種処理の実行指示等を情報処理装置26に入力する。入力装置22は、例えばマウスやキーボード、タッチパネル等である。情報処理装置26には、入力装置22を通じて、管理対象となる資機材11の識別情報や各階層の識別情報などが入力される。
【0010】
表示装置23は、情報処理装置26が実行する各種処理に基づいて、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネルディスプレイ等である。
リーダ24は、同軸ケーブルを介して通信アンテナ21に接続されている。リーダ24は、かご12の外側に一体に設置されている。リーダ24は、通信アンテナ21が読み取った識別情報を取得して、その取得した識別情報を情報処理装置26に出力する。なお、リーダ24は、かご12の内側に一体に設置されていてもよい。この場合、リーダ24が収納箱などに収納されていることが好ましい。
【0011】
開閉検出器25は、かご12に設けられた開閉扉30(図2参照)の開閉操作を検出する。具体的には、開閉検出器25は、開閉扉30の開操作の開始、および、開閉扉30の閉操作の完了を示す信号を情報処理装置26に出力する。
【0012】
情報処理装置26は、各種情報を取得し、その取得した各種の情報、および、メモリーに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。情報処理装置26は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。情報処理装置26は、かご12の内側や外側に一体に設置されていてもよいし、かご12の外部に設置されていてもよい。かご12の内側に一体に設置される場合、情報処理装置26は、収納箱などに収納されていることが好ましい。また、管理システム20は、情報処理装置26である第1情報処理装置とかご12の外部に設置された第2情報処理装置との間で通信することにより、第1情報処理装置における各種情報を第2情報処理装置から閲覧可能に構成されてもよい。
【0013】
情報処理装置26は、各種処理を実行する処理部27を有する。処理部27は、例えば、開閉扉30の開閉を検出すると、各通信アンテナ21に発信期間だけ電波を発信するコマンドをリーダ24に送信する。処理部27は、電波の発信中にリーダ24が取得した識別情報を取得する。
【0014】
情報処理装置26は、階層情報を記憶する階層情報記憶部28を有する。処理部27は、入力装置22から入力された各階層の識別情報を階層情報として階層情報記憶部28に記憶する。
【0015】
情報処理装置26は、資機材情報を記憶する資機材情報記憶部29を有する。処理部27は、入力装置22から入力された資機材11の識別情報を構成要素とする資機材情報を資機材情報記憶部29に記憶する。この資機材情報は、各資機材11の識別情報に対して状態情報が記録される情報である。状態情報は、例えば、かご12に積み込まれた搬送状態であることを示す情報や搬出された階層を示す情報などが関連付けられた情報である。処理部27は、各階層における資機材11の搬出入に応じて資機材情報を更新する。
【0016】
図2に示すように、通信アンテナ21は、電波誘導型のアンテナである。電波誘導型のアンテナは、直線偏波型や円偏波型とは電波の伝播態様が異なる方式のものであり、金属に取り付けられることにより、その効果が発揮される。通信アンテナ21は、四角箱型のかご12における4つのコーナー部に、側壁面12aの下端側に対して四角形状の鉄板31を介して設置されている。側壁面12aの下端側とは、天井面12tよりも床面12bに近い位置のことをいう。通信アンテナ21は、上面視においてかご12の中央側に向かって電波を照射する。通信アンテナ21が発した電波の一部は、鉄板31に反射してかご12の内側に向かって照射される。通信アンテナ21は、電波透過性を有するカバーなどによって覆われていてもよい。なお、図2においては、入力装置22と表示装置23を省略している。
【0017】
また、図3に示すように、通信アンテナ21は、側面視においてかご12の床面12bに向かって電波を照射する。電波誘導型の通信アンテナ21においては、床面12bに向かって照射された電波の一部が床面12bで反射して拡がる反射波RWとなって斜め上方へ向かって伝播する。また、照射された電波の一部が床面12bで回折して、床面12bに沿って拡がるような表面波BWとなって伝播する。
【0018】
図4に示すように、反射波RWは、かご12の天井面12tや側壁面12aなどにおいて再び反射し、かご12内の全体を伝播する。
このように電波誘導型の通信アンテナ21においては、照射した電波の一部が反射波RWとなってかご12内の全体を伝播するとともに、照射した電波の一部が表面波BWとなってかご12の床面12bに沿って伝播する。これにより、通信アンテナ21の発した電波がかご12の外部に漏れ出ることが抑えられる。また、反射波RWによって床面12bから離れた位置にある資機材電子タグ13との無線通信がより確実なものとなるとともに、表面波BWによって床面12b付近に位置している資機材電子タグ13との無線通信がより確実なものとなる。
【0019】
管理システム20は、上述した反射波RWと表面波BWとを通じて、かご12内の各資機材11の資機材電子タグ13から識別情報を取得する。また、管理システム20は、図2に示すように、開閉扉30の開放時に、通信アンテナ21を通じて、各階層の搬出入扉35に設けられた階層用電子タグ36から階層の識別情報を取得する。
【0020】
(管理システムによる管理方法)
管理システム20による資機材11の管理方法について説明する。ここでは、階層Aから階層Bへ移動するかご12に資機材11A,11Bが積み込まれており、階層Bにおいて資機材11Aが搬出されるとともに資機材11Cが搬入される場合を例に管理システム20が実行する処理の流れについて説明する。
【0021】
この場合、階層Aから階層Bへ移動時には、資機材11A,11Bが搭載されているため、資機材情報記憶部29には、資機材11A,11Bの識別情報に対して搬送状態であることを示す情報が関連付けられている。
【0022】
図5に示すように、階層Aから階層Bへの移動後に資機材11の搬出入が行われる際、かご12に搭乗している作業員によって開閉扉30が開操作される。このとき、開閉検出器25によって開閉扉30の開操作の開始が検出される(ステップS101)。そして、処理部27は、リーダ24を通じて通信アンテナ21にコマンドを送信し、通信アンテナ21から発信期間だけ電波を発信させる(ステップS102)。この発信期間に、処理部27は、通信アンテナ21を通じて、搬出入扉35の階層用電子タグ36から階層Bの識別情報を取得する(ステップS103)。処理部27は、資機材11A,11Bの識別情報に対して階層Bの識別情報を関連付けることにより、資機材情報を更新する(ステップS104)。なお、このときの発信期間は、開閉扉30の開操作に要する期間(例えば4~5秒程度)であることが好ましい。これにより、階層用電子タグ36から識別情報を確実に取得することができる。
【0023】
階層Bでの資機材11Aの搬出、資機材11Cの搬入が完了すると、開閉扉30が閉操作される。開閉扉30の閉操作の完了が開閉検出器25によって検出されると(ステップS105)、処理部27は、リーダ24を通じて通信アンテナ21にコマンドを送信し、通信アンテナ21から発信期間だけ電波を発信させる(ステップS106)。これにより、処理部27は、かご12内の資機材11B,11Cの識別情報を取得する(ステップS107)。そして、処理部27は、資機材11B,11Cの識別情報に対して搬送状態であることを示す情報を関連付けることにより、資機材情報を更新する(ステップS108)。なお、このときの発信期間は、かご12の移動速度が低速領域にある期間(例えば4~5秒程度)であることが好ましい。これにより、かご12の外部への電波の漏れを抑えることができる。
【0024】
ステップS108の更新後の資機材情報においては、資機材11Aの識別情報に対しては階層Bの識別情報が関連付けられており、資機材11B,11Cの識別情報に対しては搬送状態であることを示す情報が関連付けられていることとなる。このため、作業員は、資機材情報を確認することにより、資機材11Aについては階層Bに搬入されたこと、資機材11B,11Cについては搬送状態であることを把握することができる。
【0025】
(通信アンテナの設置位置決定方法)
図6を参照して、通信アンテナ21の設置位置決定方法について説明する。
通常、資機材11は、かご12内において高い位置に配置されることは少なく、おもに人の腰の高さよりも低い位置に配置される。そのため、通信アンテナ21による主な通信範囲はかご12における下側の領域であることが好ましい。また、かご12の大きさもその建設現場によって異なるとともに、通信アンテナ21の通信範囲はかご12の形状によっても異なる。そのため、通信アンテナ21の設置位置は、かご12ごとに異なることが一般的である。こうしたことを踏まえ、以下に説明する設置位置決定方法は、かご12内の資機材電子タグ13との通信をより確実に行うために最適な通信アンテナ21の設置位置を決定するための方法である。
【0026】
図6に示すように、設置位置決定方法は、指標取得工程(ステップS201)、比較工程(ステップS202)、階層用電子タグ位置決定工程(ステップS203)を備える。
指標取得工程(ステップS201)は、通信アンテナ21の最適な設置位置を比較するための指標を取得する工程である。指標取得工程は、通信アンテナ仮設置工程(ステップS201-1)、試験用資機材設置工程(ステップS201-2)、および、第1読取試験実施工程(ステップS202-3)を備える。
【0027】
通信アンテナ仮設置工程(ステップS201-1)においては、かご12の側壁面12aに、床面12bに向けて電波を照射するように複数の通信アンテナ21を仮設置位置に設置する。
【0028】
試験用資機材設置工程(ステップS201-2)では、各通信アンテナ21を仮設置位置に設置した状態で、資機材電子タグ13が取り付けられた資機材11の試験体をかご12内の各所に配置する。このとき、資機材11の試験体は、床面12bに近い位置、床面12bから離れた位置、側壁面12aに近い位置、側壁面12aから離れた位置など、かご12の全域にわたって満遍なく資機材電子タグ13が位置するように配置される。
【0029】
第1読取試験実施工程(ステップS201-3)では、仮設置位置に設置された複数の通信アンテナ21を用いて、資機材11の試験体の識別情報の読み取り状況を確認する。具体的には、実際に通信アンテナ21から所定の発信期間だけ電波を発信することでかご12内の資機材電子タグ13との間で通信を行い、通信環境を比較するための指標を算出する。例えば、第1読取試験実施工程では、かご12内に配置された資機材11の試験体の各々について、どの通信アンテナ21と通信可能であったかを確認し、その結果に基づく指標を算出する。
【0030】
指標取得工程では、通信アンテナ設置工程、試験用資機材設置工程、および、第1読取試験実施工程を、かご12の下端側において通信アンテナ21の仮設置位置を変更しながら何度か繰り返すことで、各仮設置位置についての指標を取得する。なお、仮設置位置の変更は、床面12bに対する照射方向のみの変更も含んでいる。
【0031】
比較工程(ステップS202)では、指標取得工程(ステップS201)において取得した指標を比較することにより、通信アンテナ21の最適な設置位置を決定する。
次の階層用電子タグ位置決定工程(ステップS203)は、階層用電子タグ取付工程(ステップS203-1)と第2読取試験実施工程(ステップS203-2)とを備える。
【0032】
階層用電子タグ取付工程(ステップS203-1)では、通信アンテナ21を正式な設置位置に設置した状態において、ある階層の搬出入扉35の仮設置位置に階層用電子タグ36を取り付ける。
【0033】
第2読取試験実施工程(ステップS203-2)では、ある階層にかご12が到達した状態において開閉扉30の開操作を行う。そして、通信アンテナ21から所定の発信期間だけ電波を発信することで階層用電子タグ36との間で通信を行い、その階層の識別情報の読み取り状況を確認する。その階層の識別情報が取得できた場合、その階層用電子タグ36の仮設置位置を搬出入扉35における正式な設置位置として採用する。一方、その階層の識別情報が取得できなかった場合、階層用電子タグの仮設置位置を変えて、階層用電子タグ取付工程(ステップS203-1)と第2読取試験実施工程(ステップS203-2)とが再び行われる。
【0034】
本実施形態の効果について説明する。
(1)管理システム20は、複数の資機材11の各々に取り付けられるとともに取付対象となる資機材11の識別情報が組み込まれた電子タグである資機材電子タグ13と、建設工事用のエレベータのかご12の内面に取り付けられ、資機材電子タグ13との間で無線通信可能な通信アンテナ21と、を備える。通信アンテナ21は、かご12の床面12bに向けて電波を照射するように設置されている。これにより、通信アンテナ21の電波がかご12の外部に漏れ出ることが抑えられた状態で通信アンテナ21と資機材電子タグ13との間の無線通信を確実に行うことができる。その結果、資機材11の位置をリアルタイムで把握することができることから、資機材11の管理を容易に行うことができる。
【0035】
(2)通信アンテナ21が電波誘導型のアンテナである。これにより、通信アンテナ21の電波がかご12の外部に漏れ出ることが抑えられ、かご12内の資機材電子タグ13との無線通信をより確実に行うことができる。
【0036】
(3)通信アンテナ21がかご12の側壁面12aの下端側に設置されている。これにより、表面波BWの電波強度が担保されることから、床面12b付近に位置する資機材電子タグ13との無線通信をより確実に行うことができる。
【0037】
(4)かご12が四角箱型であり、通信アンテナ21がかご12のコーナー部のそれぞれに設置されている。これにより、反射波RWおよび表面波BWによって、資機材電子タグ13の通信可能範囲として、かご12の全領域をカバーすることができる。その結果、かご12内にある資機材電子タグ13との無線通信をより確実に行うことができる。
【0038】
(5)管理システム20は、通信アンテナ21を介し、電子タグとの間で情報の読み込みを行うためのリーダ24を備え、リーダ24は、かご12の外側に設置されている。これにより、かご12に対する資機材11の搬出入時において、資機材11とリーダ24との接触を回避することができる。また、情報処理装置26がかご12の外側に設置されることにより、資機材11と情報処理装置26との接触も回避することができる。
【0039】
(6)管理システム20は、各階層に対応する識別情報が組み込まれた階層用電子タグ36を備え、階層用電子タグは、各階層に設けられた搬出入扉35に取り付けられ、かご12が到着した階層において通信アンテナ21との無線通信により当該階層の識別情報が読み込み可能に構成されている。これにより、資機材11の搬送先の階層を容易に判別することができる。
また、搬出入扉35の開(閉)動作とともに階層用電子タグ36が移動するため、例えば各階層の床面に階層用電子タグを設置する場合と比較し、通信アンテナ21による階層用電子タグ36の情報の読み取り性がよく、効果的に階層判別を行うことが可能になる。
【0040】
(7)情報処理装置26は、開閉扉30の開操作の開始が検出されると、開閉扉30の開操作に要する期間、通信アンテナ21から電波を発信する。これにより、階層用電子タグ36との間の無線通信を開閉扉30が開放状態にあるときに行うことができる。その結果、かご12が到着した階層の識別情報をより確実に取得することができる。
【0041】
(8)情報処理装置26は、開閉扉30の閉操作の完了が検出されると、かご12の移動速度が低速領域ある期間、通信アンテナ21から電波を発信する。これにより、かご12の移動中であっても資機材電子タグ13との無線通信をより確実に行うことができる。
【0042】
(9)通信アンテナ21は、鉄板31を介して側壁面12aに設置されている。この鉄板31により、通信アンテナ21が発した電波の一部をかご12の内側に向けて効果的に反射させることができる。
【0043】
(10)通信アンテナ21の設置位置決定方法は、かご12の床面12bに向けて電波を照射するように複数の通信アンテナ21を仮設置する通信アンテナ仮設置工程(ステップS201-1)と、資機材電子タグ13が取り付けられた資機材11の試験体をかご12内の各所に設置する試験用資機材設置工程(ステップS201-2)と、仮設置した通信アンテナ21から電波を照射して試験体の識別情報の読み取り状況を確認する第1読取試験実施工程(ステップS201-3)と、を備える。そして、通信アンテナ21の仮設置位置を段階的に移動させて第1読取試験実施工程を繰り返し実施し、第1読取試験実施工程の結果に基づいて通信アンテナ21の設置位置を決定する。これにより、かご12内の資機材11についての識別情報を確実に読み取れる位置に通信アンテナ21を設置することができる。
【0044】
(11)通信アンテナ21の設置位置決定方法は、階層用電子タグ位置決定工程に備える。これにより、各階層の搬出入扉35に取り付けられた階層用電子タグ36との間の無線通信をより確実に行うことができる。
【0045】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・通信アンテナの設置位置決定方法においては、通信アンテナ21の設置位置が決定されればよい。そのため、階層用電子タグ位置決定工程(ステップS203)は、例えば、階層用電子タグ36の設置位置が経験的に把握されている場合には、必ずしも行われる必要はない。
【0046】
・第1読み取り試験実施工程(ステップS201-3)および第2読み取り試験実施工程(ステップS203-2)においては、各種の読み取り状況が確認できればよく、通信アンテナ21からの電波の発信期間は、その時々に応じて変更してもよい。
【0047】
・通信アンテナ21は、電波誘導型のアンテナであることが好適であるが、例えば、通信アンテナ21は、直線偏波型のアンテナであってもよいし、円偏波型のアンテナであってもよい。こうした構成であっても、反射波RWによって資機材電子タグ13との無線通信を行うことが可能である。
【0048】
・通信アンテナ21は、かご12内の資機材11について識別情報を読み取り可能であればよい。このため、通信アンテナ21は、四角箱型のかご12において、4つのコーナー部に設置される構成に限らず、例えば、対向する一対の側壁面12aに1つずつ設置される構成であってもよい。また、天井面12t付近まで資機材11が配置される場合には、天井面12tに向けて電波を照射する通信アンテナ21が側壁面12aに設置されてもよいし、床面12bに向けて電波を照射する通信アンテナ21が天井面12tに設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
11…資機材、12…かご、12a…側壁面、12b…床面、12t…天井面、13…資機材電子タグ、20…資機材管理システム、21…通信アンテナ、22…入力装置、23…表示装置、24…リーダ、25…開閉検出器、26…情報処理装置、27…処理部、28…階層情報記憶部、29…資機材情報記憶部、30…開閉扉、31…鉄板、35…搬出入扉、36…階層用電子タグ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6