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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057618
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】塗布ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230417BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167186
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】丸畠 和也
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 和大
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA32
4F041BA35
4F041BA57
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA12
4F042BA27
4F042CA01
4F042CB03
4F042CB08
(57)【要約】
【課題】塗布ノズルの長手方向における液体の吐出量のばらつきを低減する。
【解決手段】塗布ノズルは、長手方向に延びるブロック状のノズル本体と、ノズル本体に設けられる導入口と、ノズル本体に設けられ、長手方向に配列される複数の吐出口を有する吐出部とを備える。ノズル本体は、導入口から連続するとともに、長手方向に配列される複数の流入流路25と、複数の流入流路25にそれぞれ接続する複数の流入開口261が長手方向に配列して設けられる第1拡散部26と、長手方向に配列されるとともに、第1拡散部26内の液体を流出させる複数の流出流路27と、複数の流出流路27から流入する液体が充填されるとともに吐出部に接続する第2拡散部とを備える。長手方向に関して、第1拡散部26に対する複数の流出流路27の接続位置が、複数の流入開口261の位置と相違する。これにより、長手方向における液体の吐出量のばらつきを低減することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布ノズルであって、
長手方向に延びるブロック状のノズル本体と、
前記ノズル本体に設けられ、外部から供給される液体を前記ノズル本体の内部に導入する導入口と、
前記ノズル本体に設けられ、前記長手方向に配列される複数の吐出口を有する、または、前記長手方向に延びる吐出口を有する吐出部と、
を備え、
前記ノズル本体が、
前記導入口から連続するとともに、前記長手方向に配列される複数の流入流路と、
前記長手方向に延びる空間であり、前記複数の流入流路にそれぞれ接続する複数の流入開口が前記長手方向に配列して設けられ、前記液体が充填される第1拡散部と、
前記長手方向に配列されるとともに、前記第1拡散部に接続し、前記第1拡散部内の前記液体を流出させる複数の流出流路と、
前記長手方向に延びる空間であり、前記複数の流出流路が接続し、前記複数の流出流路から流入する前記液体が充填されるとともに前記吐出部に接続する第2拡散部と、
を備え、
前記長手方向に関して、前記第1拡散部に対する前記複数の流出流路の接続位置が、前記複数の流入開口の位置と相違することを特徴とする塗布ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布ノズルであって、
各流出流路の前記第1拡散部に対する接続位置と、前記接続位置に最も近接する流入開口との間における前記長手方向の距離が、前記長手方向における前記流入開口の幅よりも大きいことを特徴とする塗布ノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗布ノズルであって、
前記長手方向に垂直な厚さ方向において前記第1拡散部と前記第2拡散部とが離れており、
前記複数の流出流路のそれぞれが、
前記厚さ方向に延びるとともに、一端部が前記第2拡散部に接続する流出流路本体と、
前記流出流路本体の他端部と前記第1拡散部とを接続する連結孔部と、
を備え、
前記ノズル本体が、
前記長手方向に延びるとともに、前記複数の流入流路および前記第1拡散部を形成する溝が側面に設けられた第1ノズルブロックと、
前記長手方向に延びるとともに、前記複数の流出流路の流出流路本体、および、前記第2拡散部を形成する溝が側面に設けられた第2ノズルブロックと、
前記第1ノズルブロックの前記側面と前記第2ノズルブロックの前記側面との間に配置され、前記複数の流出流路の連結孔部が設けられたシム板と、
をさらに備えることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布ノズルであって、
前記吐出部が、前記長手方向に配列される前記複数の吐出口から前記厚さ方向に延びる複数の吐出流路を有し、
前記複数の吐出流路が前記第2拡散部と接続し、
前記複数の吐出流路と前記第2拡散部とが接続する領域の面積の和が、前記複数の流出流路における連結孔部の流路面積の和よりも小さいことを特徴とする塗布ノズル。
【請求項5】
請求項4に記載の塗布ノズルであって、
各吐出流路と前記第2拡散部とが接続する領域の面積が、前記各吐出流路と前記第2拡散部とが接続する位置における前記長手方向に垂直な前記第2拡散部の断面積よりも小さいことを特徴とする塗布ノズル。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、
前記吐出部が、前記複数の吐出口を有し、
前記複数の吐出口における開口面積の和が、前記導入口の開口面積よりも小さいことを特徴とする塗布ノズル。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、
前記長手方向に垂直な厚さ方向において前記ノズル本体の先端に前記吐出部の吐出口が設けられており、
前記塗布ノズルが、
前記厚さ方向および前記長手方向に垂直な幅方向において、前記ノズル本体の両側に配置されるとともに、噴出口から所定のガスを噴出する一対のガスノズルをさらに備え、
前記一対のガスノズルから噴出される前記ガスが、前記吐出口の縁を形成する部位の外面に沿って流れ、前記吐出口から吐出される前記液体に衝突することを特徴とする塗布ノズル。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、
前記液体の粘度が、1~200mPa・sであることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、
前記複数の流入開口において互いに隣接する2つの流入開口を流入開口対として、各流入開口対の間に位置する流出流路の個数が一定であることを特徴とする塗布ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な種類の液体の塗布に塗布ノズルが利用されている。例えば、特許文献1では、発泡性溶融体用のノズルが開示されている。当該ノズルでは、複数の発泡性溶融体通路と、複数の発泡性溶融体通路と連通する横分配流路と、横分配流路内に配置された絞り部材と、発泡性溶融体を吐出するためのスロットと、横分配流路とスロットとを連通し、スロットへ向けて断面積が徐々に小さくなる収束部分とが設けられる。絞り部材は、多数の細かい貫通孔が設けられた分散板であり、当該分散板により、横分配流路が第一横分配流路と第二横分配流路とに分けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-22867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のノズル構造では、横分配流路の長手方向に関して、各発泡性溶融体通路と、分散板の一部の貫通孔とが同じ位置に配置されるため、発泡性溶融体通路から供給される液体(溶融体)が、横分配流路内で拡散することなく、当該一部の貫通孔を通過しやすくなる。その結果、長手方向において液体の吐出量のばらつきが生じやすくなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、塗布ノズルの長手方向における液体の吐出量のばらつきを低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、塗布ノズルであって、長手方向に延びるブロック状のノズル本体と、前記ノズル本体に設けられ、外部から供給される液体を前記ノズル本体の内部に導入する導入口と、前記ノズル本体に設けられ、前記長手方向に配列される複数の吐出口を有する、または、前記長手方向に延びる吐出口を有する吐出部とを備え、前記ノズル本体が、前記導入口から連続するとともに、前記長手方向に配列される複数の流入流路と、前記長手方向に延びる空間であり、前記複数の流入流路にそれぞれ接続する複数の流入開口が前記長手方向に配列して設けられ、前記液体が充填される第1拡散部と、前記長手方向に配列されるとともに、前記第1拡散部に接続し、前記第1拡散部内の前記液体を流出させる複数の流出流路と、前記長手方向に延びる空間であり、前記複数の流出流路が接続し、前記複数の流出流路から流入する前記液体が充填されるとともに前記吐出部に接続する第2拡散部とを備え、前記長手方向に関して、前記第1拡散部に対する前記複数の流出流路の接続位置が、前記複数の流入開口の位置と相違する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗布ノズルであって、各流出流路の前記第1拡散部に対する接続位置と、前記接続位置に最も近接する流入開口との間における前記長手方向の距離が、前記長手方向における前記流入開口の幅よりも大きい。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の塗布ノズルであって、前記長手方向に垂直な厚さ方向において前記第1拡散部と前記第2拡散部とが離れており、前記複数の流出流路のそれぞれが、前記厚さ方向に延びるとともに、一端部が前記第2拡散部に接続する流出流路本体と、前記流出流路本体の他端部と前記第1拡散部とを接続する連結孔部とを備え、前記ノズル本体が、前記長手方向に延びるとともに、前記複数の流入流路および前記第1拡散部を形成する溝が側面に設けられた第1ノズルブロックと、前記長手方向に延びるとともに、前記複数の流出流路の流出流路本体、および、前記第2拡散部を形成する溝が側面に設けられた第2ノズルブロックと、前記第1ノズルブロックの前記側面と前記第2ノズルブロックの前記側面との間に配置され、前記複数の流出流路の連結孔部が設けられたシム板とをさらに備える。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の塗布ノズルであって、前記吐出部が、前記長手方向に配列される前記複数の吐出口から前記厚さ方向に延びる複数の吐出流路を有し、前記複数の吐出流路が前記第2拡散部と接続し、前記複数の吐出流路と前記第2拡散部とが接続する領域の面積の和が、前記複数の流出流路における連結孔部の流路面積の和よりも小さい。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の塗布ノズルであって、各吐出流路と前記第2拡散部とが接続する領域の面積が、前記各吐出流路と前記第2拡散部とが接続する位置における前記長手方向に垂直な前記第2拡散部の断面積よりも小さい。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、前記吐出部が、前記複数の吐出口を有し、前記複数の吐出口における開口面積の和が、前記導入口の開口面積よりも小さい。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、前記長手方向に垂直な厚さ方向において前記ノズル本体の先端に前記吐出部の吐出口が設けられており、前記塗布ノズルが、前記厚さ方向および前記長手方向に垂直な幅方向において、前記ノズル本体の両側に配置されるとともに、噴出口から所定のガスを噴出する一対のガスノズルをさらに備え、前記一対のガスノズルから噴出される前記ガスが、前記吐出口の縁を形成する部位の外面に沿って流れ、前記吐出口から吐出される前記液体に衝突する。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、前記液体の粘度が、1~200mPa・sである。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の塗布ノズルであって、前記複数の流入開口において互いに隣接する2つの流入開口を流入開口対として、各流入開口対の間に位置する流出流路の個数が一定である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗布ノズルの長手方向における液体の吐出量のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】塗布ノズルを示す断面図である。
図2】第1ノズルブロックの側面を示す図である。
図3】シム板を示す図である。
図4】第2ノズルブロックの側面を示す図である。
図5】補助ブロックの対向面を示す図である。
図6】補助シム板を示す図である。
図7】気液供給部の構成を示す図である。
図8】塗布ノズルの他の例における第1ノズルブロックの側面を示す図である。
図9】塗布ノズルの他の例における第1ノズルブロックの側面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る塗布ノズル1を示す断面図である。塗布ノズル1は、外部から供給される所定の液体を吐出して、対象物9上に塗布するものである。当該液体は、例えば、消臭剤等の薬剤や接着剤等である。対象物9は、例えば、不織布やプラスチックフィルム等のシート部材である。塗布ノズル1は、複数の部材の組立体であり、図1では、理解を容易にするため、これらの部材を互いに離して描いている。また、図1では、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を矢印にて示している。塗布ノズル1の典型的な使用例では、Z方向は鉛直方向であるが、もちろん、Z方向は鉛直方向には限定されない。
【0018】
塗布ノズル1は、ノズル本体2と、一対のガスノズル3とを備える。ノズル本体2は、液体を吐出する液体ノズルであり、第1ノズルブロック21と、第2ノズルブロック22と、シム板23とを備える。第1ノズルブロック21、第2ノズルブロック22およびシム板23を形成する材料は特に限定されないが、例えば金属である。第1ノズルブロック21および第2ノズルブロック22は、図1中のX方向に延びるブロック状の部材である。以下の説明では、図1中のX方向を「長手方向」ともいう。図1の例では、対象物9はXY平面に平行かつY方向に連続する長尺部材であり、長手方向は、対象物9の幅に対応する方向となる。
【0019】
第1ノズルブロック21および第2ノズルブロック22は、Y方向に配列され、両者の間にシム板23が配置される。詳細には、第1ノズルブロック21において、シム板23に対向する側面211(図1中の(-Y)方向を向く側面)は、ZX平面に平行な略平面である。第2ノズルブロック22において、シム板23に対向する側面221(図1中の(+Y)方向を向く側面)は、ZX平面に平行な略平面である。シム板23は、ZX平面に平行な平板部材である。シム板23のX方向およびZ方向の大きさは、第1ノズルブロック21の側面211、および、第2ノズルブロック22の側面221とほぼ同じである。シム板23の両主面は、第1ノズルブロック21の側面211、および、第2ノズルブロック22の側面221にそれぞれ接触する。第1ノズルブロック21、シム板23および第2ノズルブロック22は、例えば、ボルトおよびナットにより互いに固定される。以下の説明では、図1中のY方向およびZ方向をそれぞれ「幅方向」および「厚さ方向」ともいう。
【0020】
図2は、第1ノズルブロック21の側面211を示す図である。第1ノズルブロック21の側面211には、所定形状の溝が形成される。既述のように、側面211には、シム板23が取り付けられ、当該溝はシム板23により覆われる。したがって、ノズル本体2では、当該溝およびシム板23により液体の複数の流路が形成される。以下の説明では、各流路の一部となる図2中の溝の部位を、当該流路と同じ名称で呼ぶものとする。第2ノズルブロック22の側面221に形成される後述の溝の部位についても同様である。
【0021】
図2に示すように、第1ノズルブロック21は、第1導入流路241と、第2導入流路242と、複数の流入流路25と、第1拡散部26とを備える。第1導入流路241は、X方向における第1ノズルブロック21の略中央においてY方向に延びており、例えば、その全長に亘って一定の断面積を有する。第1導入流路241は、第1ノズルブロック21を貫通し、第1ノズルブロック21の(+Y)側の面212(図1参照)、および、(-Y)側の側面211において開口する。面212における第1導入流路241の開口は、導入口24である。導入口24は、外部から供給される液体をノズル本体2の内部に導入する。本実施の形態では、後述の気液供給部6(図7参照)から導入口24に所定の液体が供給される。塗布ノズル1では、典型的には1つの導入口24のみが設けられるが、ノズル本体2の設計によっては、複数の導入口24が設けられてもよい。
【0022】
第2導入流路242、複数の流入流路25および第1拡散部26は、図2の側面211に設けられた溝およびシム板23により形成される。第2導入流路242、複数の流入流路25および第1拡散部26において、溝の深さ(Y方向の深さ)は、同じであっても、異なっていてもよい。第2導入流路242は、側面211における第1導入流路241の開口からX方向の両側に延びる第1部位243と、第1部位243の各端部から(-Z)方向に延びる第2部位244と、第2部位244の先端からX方向の両側に延びる第3部位245とを備える。
【0023】
複数の流入流路25は、それぞれZ方向に延びるとともに、X方向に配列される。複数の流入流路25は、互いに略平行であり、X方向の幅も略同じである。各流入流路25の(+Z)側の端部は、第2導入流路242の第3部位245の端部に接続される。ノズル本体2では、第2導入流路242および複数の流入流路25により、いわゆる、トーナメント状の流路が形成される。図2の例では、第1導入流路241の位置におけるX方向に垂直な面に関して、第2導入流路242および複数の流入流路25は対称な形状となっている(第1拡散部26も同様)。流入流路25の個数は、例えば、2以上の偶数個であり、好ましくは、4個以上である。流入流路25の個数は、奇数個であってもよい。流入流路25の個数は、例えば、16個以下である。第1導入流路241の開口から複数の流入流路25の(-Z)側の端部(後述の流入開口261)に至る複数の流路の抵抗は、略同じであり、導入口24に供給される液体の複数の流入流路25における流量は、略同じである。
【0024】
第1拡散部26は、X方向に延びる空間である。図2の例では、Z方向における第1拡散部26の幅は、X方向における各流入流路25の幅よりも大きい。第1拡散部26には、複数の流入開口261がX方向に配列して設けられる。複数の流入開口261は、複数の流入流路25にそれぞれ接続する。換言すると、複数の流入開口261は、複数の流入流路25における第1拡散部26側の開口である。複数の流入流路25を流れる液体は、複数の流入開口261を介して第1拡散部26に流入する。これにより、第1拡散部26内に液体が充填される。
【0025】
図3は、シム板23を示す図である。シム板23は、複数の連結孔部271と、吐出部29とを備える。吐出部29は、シム板23の(-Z)側の端部に設けられ、複数の連結孔部271は、吐出部29から(+Z)方向に離れて設けられる。吐出部29の詳細については後述する。複数の連結孔部271のそれぞれは、貫通孔であり、X方向に一定のピッチにて配列される。複数の連結孔部271は、略同じ直径を有する。各連結孔部271の直径は、例えば、流入開口261(図2参照)のX方向における幅よりも小さい。図2および図3では、連結孔部271を実際よりも大きく描いている(他の図において同様)。
【0026】
図2中に二点鎖線にて示すように、Y方向に沿って見た場合に、複数の連結孔部271は、第1拡散部26に重なる。第1拡散部26内の液体は、複数の連結孔部271から流出可能である。実際には、連結孔部271の流路面積(すなわち、液体が流れる方向に垂直な断面積であり、ここでは、Y方向に沿って見た連結孔部271の面積)は小さいため、第1拡散部26から連結孔部271を介して流出する液体の量が制限される。連結孔部271の個数は、例えば、流入流路25の個数よりも多く、好ましくは、流入流路25の個数の2倍以上である。連結孔部271の個数は、例えば、流入流路25の個数の4倍以下である。各連結孔部271は、後述の流出流路27の一端である。
【0027】
ここで、図2を参照して、第1拡散部26における流入流路25と連結孔部271との位置関係について説明する。ノズル本体2では、各流入流路25の延長線上に、いずれの連結孔部271も存在せず、X方向に関して、各連結孔部271の存在範囲は、いずれの流入開口261の存在範囲とも重ならない。このように、X方向に関して複数の連結孔部271の位置(すなわち、流出流路27の接続位置)が、複数の流入開口261の位置と相違する。例えば、各連結孔部271の位置と、当該位置に最も近接する流入開口261の位置との間におけるX方向の距離(中心間距離)は、X方向における流入開口261の幅よりも大きい。当該距離は、好ましくは、1.2mm以上であり、より好ましくは、4.8mm以上である。X方向に関して複数の連結孔部271の位置が、複数の流入開口261の位置と相違する(好ましくは、離れている)ことにより、複数の流入流路25から第1拡散部26に流入した液体は、直ぐには連結孔部271から流出せず、第1拡散部26の内面に衝突してX方向に広がる。これにより、連結孔部271からの流出前に、第1拡散部26内において液体をX方向に適切に拡散させることが可能となる。
【0028】
流入開口261から第1拡散部26への液体の流入方向は、ほぼ(-Z)方向であり、第1拡散部26から連結孔部271への液体の流出方向(図1参照)は、ほぼ(-Y)方向である。このように、第1拡散部26への液体の流入方向と、第1拡散部26からの液体の流出方向とが略直交することにより、第1拡散部26内において液体をX方向により確実に拡散させることが可能となる。
【0029】
図4は、第2ノズルブロック22の側面221を示す図である。第2ノズルブロック22の側面221には、第1ノズルブロック21の側面211とは異なる形状の溝が形成される。第2ノズルブロック22は、複数の流出流路本体272と、第2拡散部28とを備える。複数の流出流路本体272および第2拡散部28は、側面221に設けられた溝およびシム板23により形成される。複数の流出流路本体272および第2拡散部28において、溝の深さ(Y方向の深さ)は、同じであっても、異なっていてもよい。複数の流出流路本体272は、それぞれZ方向に延びるとともに、X方向に配列される。複数の流出流路本体272は、互いに略平行であり、X方向の幅も略同じである。Y方向に沿って見た場合に、複数の流出流路本体272の(+Z)側の端部は、複数の連結孔部271(図4中に二点鎖線にて示す。)とそれぞれ重なる。
【0030】
第2拡散部28は、X方向に延びる空間である。Z方向における第2拡散部28の幅は、第1拡散部26と同じであっても、異なっていてもよい。第2拡散部28には、複数の流出流路本体272の(-Z)側の端部が接続される。第1拡散部26から複数の連結孔部271を介して流出した液体は、複数の流出流路本体272を通過して第2拡散部28に流入する。これにより、第2拡散部28内に液体が充填される。
【0031】
ここで、互いに接続する連結孔部271および流出流路本体272の組合せを「流出流路27」と呼ぶと、ノズル本体2では、複数の流出流路27が、X方向に配列される。また、複数の流出流路27の両端部が、Z方向に離れた第1拡散部26および第2拡散部28に接続される。複数の流出流路27は、第1拡散部26内の液体を流出させ、第2拡散部28内に流入させる。複数の流出流路27における流路抵抗は、略同じであり、複数の流出流路27における液体の流量も、略同じである。
【0032】
図3のシム板23において吐出部29((-Z)側の端部)には、Z方向に延びる複数のスリット孔が、X方向に一定の間隔にて形成される。換言すると、吐出部29には、櫛歯状の部位が設けられる。既述のように、シム板23の両主面には、第1ノズルブロック21および第2ノズルブロック22が取り付けられ、第1ノズルブロック21の側面211および第2ノズルブロック22の側面221により、スリット孔のY方向の両側が覆われる。これにより、それぞれがZ方向に延びる複数の吐出流路291が形成される。以下の説明では、吐出流路291の一部となる図3中のスリット孔についても、吐出流路291と呼ぶ。図3では、X方向における吐出流路291の幅を実際よりも大きく、かつ、吐出流路291の個数を実際よりも少なく描いている。
【0033】
図3中に二点鎖線にて示すように、Y方向に沿って見た場合に、第2拡散部28は、複数の吐出流路291の(+Z)側の端部に重なる。すなわち、複数の吐出流路291は、第2拡散部28に接続する。複数の吐出流路291の他方の端部((-Z)側の端部)は、外部に向かって開口する吐出口290である。ノズル本体2の(-Z)側の端部では、複数の吐出口290がX方向に一定のピッチにて配列される。第2拡散部28に充填された液体は、複数の吐出流路291を介して複数の吐出口290から(-Z)方向に吐出される。図1の例では、Y方向に連続的に移動する対象物9上に、当該液体が吐出される。ノズル本体2では、各吐出流路291が、吐出口290からZ方向に延びていると捉えることも可能である。典型的には、吐出口290(吐出流路291)の個数は流出流路27の個数よりも十分に多い。
【0034】
図1に示すように、一対のガスノズル3は、Y方向におけるノズル本体2の両側にそれぞれ配置され、所定のガス(例えば、空気)を噴出する。(+Y)側のガスノズル3および(-Y)側のガスノズル3のそれぞれは、補助ブロック31と、補助シム板32とを備える。補助ブロック31および補助シム板32を形成する材料は特に限定されないが、例えば金属である。補助ブロック31は、図1中のX方向に延びるブロック状の部材である。
【0035】
既述のように、第1ノズルブロック21および第2ノズルブロック22のそれぞれでは、側面211,221の(-Z)側の端部211a,221aにおいて複数の吐出口290の縁が形成される。当該端部211a,221aは、塗布ノズル1において最も(-Z)側の部位、すなわち、図1中の最も下側の部位となる。第1ノズルブロック21では、端部211aから(+Y)側に向かうに従って(+Z)側に傾斜する傾斜面213が設けられる。(+Y)側のガスノズル3では、補助ブロック31が傾斜面213に略平行な対向面311を有する。対向面311と傾斜面213との間に補助シム板32を挟んだ状態で、補助ブロック31が第1ノズルブロック21に対してボルト等により取り付けられる。
【0036】
上記と同様に、第2ノズルブロック22では、端部221aから(-Y)側に向かうに従って(+Z)側に傾斜する傾斜面223が設けられる。(-Y)側のガスノズル3では、補助ブロック31が傾斜面223に略平行な対向面311を有する。対向面311と傾斜面223との間に補助シム板32を挟んだ状態で、補助ブロック31が第2ノズルブロック22に対してボルト等により取り付けられる。
【0037】
図5は、(+Y)側のガスノズル3における補助ブロック31の対向面311を示す図であり、対向面311に垂直な方向から見た様子を示している。図6は、(+Y)側のガスノズル3における補助シム板32を示す図であり、補助シム板32に垂直な方向から見た様子を示している。ノズル本体2に取り付けられた状態では、補助ブロック31の対向面311および補助シム板32は、ZX平面に対して傾斜する。図5および図6中の上側の部位は、図1の塗布ノズル1において(+Z)側に位置する部位である。以下、図5および図6を参照して、(+Y)側のガスノズル3の構造について説明するが、(-Y)側のガスノズル3の構造も同様である。
【0038】
図5に示すように、補助ブロック31の対向面311には、X方向に延びるガス供給溝312が形成される。図1に示すように、補助ブロック31の内部には、X方向に延びるガス導入流路313が設けられており、ガス供給溝312はガス導入流路313に接続する。図6中における補助シム板32の下側の部位では、X方向の両端部を除く部分が切り欠かれている。すなわち、補助シム板32の下側の部位には、上側に向かって窪む凹部321が形成される。
【0039】
既述のように、補助シム板32は、第1ノズルブロック21の傾斜面213と補助ブロック31の対向面311とに挟まれ、両者により、補助シム板32に垂直な方向における凹部321の両側が覆われる。したがって、図1のガスノズル3では、後述の気液供給部6からガス導入流路313に導入されたガスが、ガス供給溝312を介して凹部321内に供給され、凹部321の(-Z)側の開口である噴出口322から噴出される。塗布ノズル1では、最も(+X)側の吐出口290から最も(-X)側の吐出口290までの範囲を含むように、噴出口322がX方向に広がっている。補助シム板32の厚さは、ノズル本体2のシム板23の厚さよりも大きいため、X方向に垂直な方向における噴出口322の幅は、吐出口290のY方向の幅よりも大きい。
【0040】
図1の例では、(+Y)側のガスノズル3における噴出口322は、第1ノズルブロック21の側面211の(-Z)側の端部211aよりも(+Z)側に位置する。当該噴出口322から噴出されるガスは、傾斜面213に沿って当該端部211aに向かって流れ、複数の吐出口290から吐出される液体に衝突する。(-Y)側のガスノズル3における噴出口322は、第2ノズルブロック22の側面221の(-Z)側の端部221aよりも(+Z)側に位置する。当該噴出口322から噴出されるガスは、傾斜面213に沿って当該端部221aに向かって流れ、複数の吐出口290から吐出される液体に衝突する。このように、複数の吐出口290から吐出される液体に対してY方向の両側からガスが衝突する。
【0041】
図7は、気液供給部6の構成を示す図である。気液供給部6では、圧縮空気の供給源61から減圧弁62を介して液体タンク63内に圧縮空気が供給される。本実施の形態では、液体タンク63内には低粘度の液体が貯溜される。当該液体の粘度は、例えば1~200mPa・sであり、好ましくは1~50mPa・sである。液体タンク63には、液体供給ライン64の一端が接続されており、液体タンク63内への圧縮空気の供給により、液体供給ライン64に当該液体が圧送される。液体供給ライン64には、圧縮空気を利用するエアオペレートバルブ641、および、流量調整弁642が設けられる。液体供給ライン64の他端は、塗布ノズル1の導入口24(図1参照)に接続される。
【0042】
塗布ノズル1から液体を吐出する際には、エアオペレートバルブ641が開かれ、液体供給ライン64に圧送された液体が、導入口24に供給される。このとき、流量調整弁642により当該液体の塗布ノズル1への供給流量が調整される。当該液体は、図1の塗布ノズル1の第1導入流路241、第2導入流路242、複数の流入流路25、第1拡散部26、複数の流出流路27、および、第2拡散部28を順に通過して、吐出部29の複数の吐出口290から吐出される。液体の吐出を停止する際には、エアオペレートバルブ641が閉じられる。
【0043】
また、図7の気液供給部6では、一端がガス供給源66(圧縮空気の供給源61であってもよい。)に接続されたガス供給ライン67が設けられる。ガス供給ライン67の他端は、複数の分岐ラインに分岐しており、図1に示す一対のガスノズル3のガス導入流路313に接続される。ガス供給源66からガス供給ライン67に供給されたガスは、ガス導入流路313およびガス供給溝312を介して凹部321内に導かれ、噴出口322から噴出される。上記塗布ノズル1および気液供給部6は、塗工装置として対象物9への液体の塗布に利用される。
【0044】
塗布ノズル1におけるシム板23の厚さを0.02~0.05mmとし、補助シム板32の厚さを0.1mmとして、吐出量10~40g/minにて液体の吐出試験を行った。このとき、液体の粘度を1mPa・sとし、液体の導入圧力を0.034MPaとし、ガスの供給圧力を0.1MPaとした。吐出試験では、液体の対象物9への付着状態が良好となり、周囲への飛散も適切に抑制された。
【0045】
以上に説明したように、塗布ノズル1は、長手方向(上記では、X方向)に延びるブロック状のノズル本体2と、ノズル本体2に設けられる導入口24と、ノズル本体2に設けられ、長手方向に配列される複数の吐出口290を有する吐出部29とを備える。ノズル本体2は、導入口24から連続するとともに、長手方向に配列される複数の流入流路25と、複数の流入流路25にそれぞれ接続する複数の流入開口261が長手方向に配列して設けられる第1拡散部26と、長手方向に配列されるとともに、第1拡散部26内の液体を流出させる複数の流出流路27と、複数の流出流路27から流入する液体が充填されるとともに吐出部29に接続する第2拡散部28とを備える。長手方向に関して、第1拡散部26に対する複数の流出流路27の接続位置が、複数の流入開口261の位置と相違する。これにより、複数の流入開口261から流入する液体を、第1拡散部26において適切に拡散させることができ、長手方向における液体の吐出量のばらつき(上記の例では、複数の吐出口290からの液体の吐出量のばらつき)を低減することができる。
【0046】
好ましくは、各流出流路27の第1拡散部26に対する接続位置と、当該接続位置に最も近接する流入開口261との間における長手方向の距離が、長手方向における流入開口261の幅よりも大きい。これにより、複数の流入開口261から流入する液体を、第1拡散部26においてより確実に拡散させることができる。
【0047】
好ましくは、長手方向に垂直な厚さ方向において第1拡散部26と第2拡散部28とが離れる。また、複数の流出流路27のそれぞれが、厚さ方向に延びるとともに、一端部が第2拡散部28に接続する流出流路本体272と、流出流路本体272の他端部と第1拡散部26とを接続する連結孔部271とを備える。これにより、各流出流路27を流れる液体の流量を適切に制限することができ、一部の流出流路27において液体の流量が大きくなることをより確実に抑制することができる。その結果、長手方向における液体の吐出量のばらつきをより確実に低減することができる。
【0048】
好ましくは、ノズル本体2が、第1ノズルブロック21と、第2ノズルブロック22と、シム板23とを備える。第1ノズルブロック21の側面211には、複数の流入流路25および第1拡散部26を形成する溝が設けられる。第2ノズルブロック22の側面221には、複数の流出流路27の流出流路本体272、および、第2拡散部28を形成する溝が設けられる。シム板23は、第1ノズルブロック21の側面211と第2ノズルブロック22の側面221との間に配置され、複数の流出流路27の連結孔部271が設けられる。これにより、塗布ノズル1を容易に製造することができる。
【0049】
好ましくは、長手方向に垂直な厚さ方向においてノズル本体2の先端に吐出部29の吐出口290が設けられる。また、塗布ノズル1が、厚さ方向および長手方向に垂直な幅方向において、ノズル本体2の両側に配置されるとともに、噴出口322から所定のガスを噴出する一対のガスノズル3をさらに備える。一対のガスノズル3から噴出されるガスは、吐出口290の縁を形成する部位の外面に沿って流れ、吐出口290から吐出される液体に衝突する。これにより、表面張力によりノズル本体2の先端に付着(滞留)した液体を適切に剥離させるとともに、吐出口290から吐出される液体の幅方向への広がりを抑えることができる。なお、塗布ノズル1の設計によっては、一対のガスノズル3から噴出されるガスが、吐出口290から吐出される液体に衝突しなくてもよい。
【0050】
次に、塗布ノズル1の各位置における流路の面積の好ましい関係について述べる。まず、塗布ノズル1における液体の出口の面積は、液体の入口の面積よりも小さい、すなわち、複数の吐出口290の開口面積の和は、導入口24の開口面積よりも小さいことが好ましい。図1および図3の例では、各吐出口290の開口面積は、第1ノズルブロック21の側面211と第2ノズルブロック22の側面221との間のY方向の距離(すなわち、シム板23の厚さ)と、吐出流路291のX方向の幅とを掛けた値となる。また、導入口24の開口面積は、Y方向に垂直な第1導入流路241の断面積である。
【0051】
塗布ノズル1では、複数の吐出口290の開口面積の和が、導入口24の開口面積よりも小さいことにより、ノズル本体2内に液体を適切に充填して、液体の圧力を安定させることができ、複数の吐出口290から吐出される液体の吐出量のばらつきをより確実に低減することができる。複数の吐出口290の開口面積の和の、導入口24の開口面積に対する比率は、例えば2~10%であり、好ましくは5~7%である。塗布ノズル1では、シム板23の厚さを小さくすることにより、吐出口290の開口面積を容易に小さくすることが可能となる。
【0052】
また、各吐出流路291と第2拡散部28とが接続する領域の面積は、当該吐出流路291と第2拡散部28とが接続する位置における長手方向に垂直な第2拡散部28の断面積よりも小さいことが好ましい。これにより、第2拡散部28において液体を長手方向に適切に拡散させて、液体の圧力を安定させることができ、複数の吐出口290から吐出される液体の吐出量のばらつきをより確実に低減することができる。図3の例では、各吐出流路291と第2拡散部28とが接続する領域の面積は、Y方向に沿って見た場合に、第2拡散部28と吐出流路291とが重なる領域の面積であり、第2拡散部28のZ方向の幅と吐出流路291のX方向の幅とを掛けた値となる。
【0053】
さらに、複数の吐出流路291と第2拡散部28とが接続する領域の面積の和は、複数の流出流路27における連結孔部271の流路面積の和よりも小さいことが好ましい。これにより、第2拡散部28内に液体を適切に充填して、液体の圧力を安定させることができ、複数の吐出口290から吐出される液体の吐出量のばらつきをより確実に低減することができる。
【0054】
なお、複数の流出流路27における連結孔部271の流路面積の和は、導入口24の開口面積よりも、大きくても、小さくてもよいが、第1拡散部26内に液体を適切に充填して、第1拡散部26から上流側における液体の圧力を安定させるには、連結孔部271の流路面積の和は、導入口24の開口面積よりも小さいことが好ましい。流路の面積に係る上記関係は、塗布ノズル1の好ましい形態において満たされるものであり、塗布ノズル1の用途や利用する液体の種類等によっては、上記関係が満たされなくてもよい。
【0055】
図8は、塗布ノズル1の他の例における第1ノズルブロック21の側面211を示す図である。図8の第1ノズルブロック21では、X方向において複数の流入開口261(および複数の流入流路25)が一定の間隔で配置される。すなわち、複数の流入開口261において互いに隣接する2つの流入開口261を流入開口対として、当該2つの流入開口261間の距離が、複数の流入開口対において等しい。また、X方向に関して、当該2つの流入開口261の間に位置する連結孔部271の個数が、複数の流入開口対において等しい。このように、各流入開口対の間に位置する流出流路27の個数が一定であることにより、図8の第1ノズルブロック21を有する塗布ノズル1では、長手方向(X方向)における液体の吐出量のばらつきをさらに低減することができる。図8の例では、さらに、各連結孔部271と、当該連結孔部271に最も近接する流入開口261との間における長手方向の距離が、複数の連結孔部271において一定である。これにより、長手方向における液体の吐出量のばらつきをより一層低減することができる。
【0056】
上記塗布ノズル1では様々な変形が可能である。
【0057】
上記実施の形態では、第1ノズルブロック21に第1拡散部26が設けられ、第2ノズルブロック22に第2拡散部28が設けられるが、例えば、図9に示すように、第1ノズルブロック21に第1拡散部26および第2拡散部28が設けられてもよい。図9の例では、それぞれが厚さ方向(Z方向)に延びる複数の流出流路27が、第1拡散部26と第2拡散部28との間において長手方向(X方向)に配列される。図9では、シム板23に設けられる複数の吐出流路291を二点鎖線にて示している。図9の第1ノズルブロック21を有する塗布ノズル1においても、長手方向に関して、第1拡散部26に対する複数の流出流路27の接続位置が、複数の流入開口261の位置と相違することにより、長手方向における液体の吐出量のばらつきを低減することが可能となる。
【0058】
ノズル本体2は、必ずしも、第1ノズルブロック21、第2ノズルブロック22およびシム板23により構成される必要はない。例えば、図9の第1ノズルブロック21を有する塗布ノズル1において、第1ノズルブロック21の側面211または第2ノズルブロック22の側面221に、吐出流路291となる溝が設けられ、シム板23が省略されてもよい。
【0059】
吐出部29は、長手方向に延びる1つの吐出口を有するものであってもよい。この場合でも、長手方向に関して、第1拡散部26に対する複数の流出流路27の接続位置が、複数の流入開口261の位置と相違する塗布ノズル1では、長手方向における液体の吐出量のばらつきを低減することができる。
【0060】
塗布ノズル1から吐出される液体は、低粘度の液体には限定されず、比較的高い粘度の液体が吐出されてもよい。一方、塗布ノズル1において、仮に、長手方向に関して第1拡散部に対する流出流路の接続位置が流入開口の位置と同じである場合、粘度が1~200mPa・sである低粘度の液体は、第1拡散部に流入して直ぐに、当該流出流路から流出しやすくなる。すなわち、低粘度の液体は、第1拡散部において拡散しにくく、長手方向における液体の吐出量のばらつきが顕著に生じやすい。したがって、塗布ノズル1は、水を多く含む液体等、粘度が1~200mPa・sである液体の吐出に特に適しているといえる。
【0061】
上記塗布ノズル1では、一対のガスノズル3を設けることにより、カーテンスプレー方式にて液体を吐出することが可能であるが、塗布ノズル1の設計によっては、1つのガスノズル3のみが設けられてもよい。また、ガスノズル3が省略され、コーター方式にて液体が吐出されてもよい。
【0062】
吐出する液体の種類によっては、塗布ノズル1にヒータが設けられてもよい。更にガス供給ライン67にヒータが設けられてもよい。例えば、図1の第1ノズルブロック21において側面211と傾斜面213との間に長手方向(X方向)に延びる孔部が形成され、当該孔部内に棒状のヒータが設けられる。もちろん、第1ノズルブロック21のヒータに代えて、または、第1ノズルブロック21のヒータと共に、第2ノズルブロック22にヒータが設けられてもよい。
【0063】
塗布ノズル1により液体が塗布される対象物9は、シート部材以外の様々な部材であってもよい。
【0064】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0065】
1 塗布ノズル
2 ノズル本体
3 ガスノズル
21 第1ノズルブロック
22 第2ノズルブロック
23 シム板
24 導入口
25 流入流路
26 第1拡散部
27 流出流路
28 第2拡散部
29 吐出部
211,221 (ノズルブロックの)側面
213,223 (ノズルブロックの)傾斜面
261 流入開口
271 連結孔部
272 流出流路本体
290 吐出口
291 吐出流路
322 噴出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9