(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057639
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】遮断装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20230417BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230417BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
H02J7/00 S
H02H3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167216
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 脩平
(72)【発明者】
【氏名】餅川 宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 寿彰
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA03
5G165BB08
5G165CA01
5G165EA02
5G165HA06
5G165KA04
5G165LA01
5G165LA02
5G165NA05
5G165NA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503FA06
5G503FA17
(57)【要約】
【課題】 より安全に直流電流を遮断することが可能な遮断装置を提供する。
【解決手段】 実施形態の遮断装置は、直流電源と負荷との間に設けられた遮断装置であって、直流電源の正極に接続された第1端子と、負荷に接続された第2端子との間に接続された第1スイッチング素子と、直流電源の負極に接続された第3端子と、第2端子との間に接続された還流回路とを含む。還流回路は、第1ダイオードと、第1ツェナーダイオードとを含む。第1ダイオードのアノードは、第3端子に接続され、第1ダイオードのカソードは、第1ツェナーダイオードのカソードに接続され、第1ツェナーダイオードのアノードは、第2端子に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と負荷との間に設けられた遮断装置であって、
前記直流電源の正極に接続された第1端子と、前記負荷に接続された第2端子との間に接続された第1スイッチング素子と、
前記直流電源の負極に接続された第3端子と、前記第2端子との間に接続された還流回路と、
を具備し、
前記還流回路は、第1ダイオードと、第1ツェナーダイオードとを含み、
前記第1ダイオードのアノードは、前記第3端子に接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1ツェナーダイオードのカソードに接続され、
前記第1ツェナーダイオードのアノードは、前記第2端子に接続される
遮断装置。
【請求項2】
前記第1スイッチング素子に並列接続されたアクティブクランプ回路をさらに具備し、
前記アクティブクランプ回路は、第2ツェナーダイオードと、抵抗素子とを含み、
前記第2ツェナーダイオードのカソードは、前記第1スイッチング素子のドレインに接続され、
前記第2ツェナーダイオードのアノードは、前記第1スイッチング素子のゲートに接続され、
前記抵抗素子は、前記第1スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続される
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子と前記第2端子との間に直列接続された第2スイッチング素子をさらに具備する
請求項1又は2に記載の遮断装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子のゲート電圧を制御する第1制御回路と、
前記第2スイッチング素子のゲート電圧を制御する第2制御回路と、
前記第1端子に接続され、前記第1端子の電圧に基づいて、前記第1制御回路に電源を供給する第1電源自給回路と、
前記第1端子に接続され、前記第1端子の電圧に基づいて、前記第2制御回路に電源を供給する第2電源自給回路と、
をさらに具備する
請求項3に記載の遮断装置。
【請求項5】
前記第1及び第2電源自給回路の各々は、直流電圧を発生するDC/DC変換器を含む
請求項4に記載の遮断装置。
【請求項6】
前記第1端子と前記第3端子との間に接続された第1スナバ回路をさらに具備する
請求項1乃至5の何れか1項に記載の遮断装置。
【請求項7】
前記第1スイッチング素子に並列接続された第2スナバ回路をさらに具備する
請求項1乃至6の何れか1項に記載の遮断装置。
【請求項8】
前記還流回路は、第3ツェナーダイオードをさらに含み、
前記第3ツェナーダイオードのカソードは、前記第1ツェナーダイオードに接続され、前記第3ツェナーダイオードのアノードは、前記第2端子に接続される
請求項1乃至7の何れか1項に記載の遮断装置。
【請求項9】
前記還流回路は、第2ダイオードをさらに含み、
前記第2ダイオードのアノードは、前記第3端子に接続され、前記第2ダイオードのカソードは、前記第1ダイオードに接続される
請求項1乃至8の何れか1項に記載の遮断装置。
【請求項10】
前記第1スイッチング素子は、FET(Field Effect Transistor)で構成される
請求項1乃至9の何れか1項に記載の遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流電流を遮断する遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーで発電した電力を大容量の蓄電池に蓄え、蓄電池に蓄えた電力を利用する直流給電システムが注目されている。直流給電システムは、蓄電池などの直流電源と、直流電源から電源線を介して給電される負荷と、直流電源と負荷との間に設けられた遮断装置とを備える。遮断装置は、例えば負荷に短絡が発生した際に、直流電源から負荷に供給される直流電流を遮断し、直流電源と負荷とを電気的に切り離す。
【0003】
直流電力を給電する場合、蓄電池に接続された電源線に対し、複数の負荷が並列に接続される場合がある。ある負荷で短絡などの故障が発生した場合、遮断装置を用いて直流電源と負荷とを高速に遮断し、故障が発生していない負荷、及び直流電源を保護する必要がある。
【0004】
直流給電回路は、交流給電回路と異なり、電源から供給される電流の電流値がゼロになるタイミング(電流ゼロ点)がない。直流給電回路に機械式のサーキットブレーカを用いた場合、直流電源と負荷とを高速に遮断することが困難となる。このため、ある負荷に故障が発生した場合に、他の負荷及び直流電源を保護できない場合がある。よって、大電流を確実かつ高速に遮断するための保護回路を備えることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、より安全に直流電流を遮断することが可能な遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る遮断装置は、直流電源と負荷との間に設けられた遮断装置であって、前記直流電源の正極に接続された第1端子と、前記負荷に接続された第2端子との間に接続された第1スイッチング素子と、前記直流電源の負極に接続された第3端子と、前記第2端子との間に接続された還流回路とを具備する。前記還流回路は、第1ダイオードと、第1ツェナーダイオードとを含む。前記第1ダイオードのアノードは、前記第3端子に接続され、前記第1ダイオードのカソードは、前記第1ツェナーダイオードのカソードに接続され、前記第1ツェナーダイオードのアノードは、前記第2端子に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る遮断装置の回路図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る遮断装置の回路図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る遮断装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
[1] 第1実施形態
[1-1] 遮断装置1の構成
図1は、第1実施形態に係る遮断装置1の回路図である。遮断装置1は、直流電源2と負荷3との間に接続される。遮断装置1は、例えば負荷3に短絡などの故障が発生した場合に、直流電源2と負荷3とを電気的に遮断し、直流電源2及び負荷3を保護する機能を有する。
【0011】
直流電源2は、直流電力を発生する。直流電源2は、例えば容量の大きい蓄電池などを用いて構成される。直流電源2の正極(P)は、正極側電源線(正極線ともいう)4を介して、遮断装置1の端子T1に接続され、直流電源2の負極(N)は、負極側電源線(負極線ともいう)5を介して、遮断装置1の端子T2に接続される。直流電源2に接続された正極線4は、寄生インダクタンス6を有する。
【0012】
負荷3は、電力を消費する機器である。負荷3の一例としては、電気自動車(EV:Electric Vehicle)用の充電器(EVチャージャーともいう)が挙げられる。負荷3は、並列接続された複数の負荷であってもよい。負荷3の正極は、正極線7を介して、遮断装置1の端子T3に接続され、負荷3の負極は、負極線8を介して、遮断装置1の端子T4に接続される。負荷3に接続された正極線7は、寄生インダクタンス9を有する。正極線7が長くなるにつれて、寄生インダクタンス9は大きくなる。
【0013】
遮断装置1は、1個又は複数のスイッチング素子10を備える。本実施形態では、3個のスイッチング素子10-1~10-3を例に挙げて説明する。本明細書では、スイッチング素子10-1~10-3を特に区別する必要がない場合は、枝番を省略して表記する。他の枝番付の参照符号についても同様である。スイッチング素子10の数は、3個に限定されず、1個であってもよいし、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。典型的には、遮断装置1は、複数のスイッチング素子10を備える。図中のスイッチング素子10に示された白丸は、スイッチング素子10の端子を示している。
【0014】
遮断装置1は、3個のスナバ回路11-1~11-3、3個の抵抗素子14-1~14-3、スナバ回路20、還流回路30、3個の電源自給回路40-1~40-3、及び3個の制御回路50-1~50-3を備える。
【0015】
前述したように、端子T1、T2は、直流電源2に接続され、端子T3、T4は、負荷3に接続される。端子T1は、正極線PL1に接続され、端子T3は、正極線PL2に接続される。端子T2及び端子T4は、負極線NLに接続される。
【0016】
スイッチング素子10-1~10-3は、直列接続される。スイッチング素子10-1~10-3は、端子T1と端子T3とを電気的に遮断する機能を有する。スイッチング素子10は、機械式の素子に比べて高速動作が可能な半導体素子で構成され、例えば、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成される。スイッチング素子10としては、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、又はGTO(Gate Turn Off thyristor)などを用いてもよい。
【0017】
スイッチング素子10には、ダイオードDが逆並列接続される。ダイオードDは、還流ダイオードであり、スイッチング素子10に逆流電流が供給された場合に、スイッチング素子10を保護する機能を有する。
【0018】
スイッチング素子10-1の一端(ドレイン)は、正極線PL1に接続され、スイッチング素子10-1の他端(ソース)は、スイッチング素子10-2の一端(ドレイン)に接続される。スイッチング素子10-2の他端(ソース)は、スイッチング素子10-3の一端(ドレイン)に接続される。スイッチング素子10-3の他端(ソース)は、正極線PL2に接続される。
【0019】
スナバ回路11-1は、直列接続されたコンデンサ12-1及び抵抗素子13-1を備える。スナバ回路11-1は、スイッチング素子10-1に並列接続される。スナバ回路11-1は、スイッチング素子10-1がターンオフ時に、スイッチング素子10-1に印加されるサージ電圧を抑制する機能を有する。同様に、コンデンサ12-2及び抵抗素子13-2からなるスナバ回路11-2は、スイッチング素子10-2に並列接続される。コンデンサ12-3及び抵抗素子13-3からなるスナバ回路11-3は、スイッチング素子10-3に並列接続される。
【0020】
抵抗素子14-1~14-3はそれぞれ、スイッチング素子10-1~10-3に並列接続される。抵抗素子14-1~14-3は、スイッチング素子10-1~10-3に印加される電圧をおおよそ均等に分担させる機能を有する。
【0021】
スナバ回路20は、正極線PL1と負極線NLとの間に接続される。スナバ回路20は、コンデンサ21、抵抗素子22、及びバリスタ23を備える。コンデンサ21の一方の電極は、正極線PL1に接続され、コンデンサ21の他方の電極は、抵抗素子22の一端に接続される。抵抗素子22の他端は、負極線NLに接続される。バリスタ23は、コンデンサ21に並列接続される。
【0022】
スナバ回路20は、遮断装置1の遮断時に発生するサージ電圧を抑制し、スイッチング素子10-1~10-3を保護する機能を有する。スナバ回路20に含まれるコンデンサ21は、遮断時に直流電源2側の寄生インダクタンス6に起因して発生するサージ電圧を抑制する機能を有する。スナバ回路20に含まれる抵抗素子22は、寄生インダクタンス6とコンデンサ21との共振を抑制する機能を有する。
【0023】
スナバ回路20に含まれるバリスタ23は、コンデンサ21に過電圧が印加されるのを抑制する機能を有する。バリスタ23は、印加される電圧によって抵抗値が変化する素子である。バリスタ23にかかる電圧が小さいときは抵抗値が高く、バリスタ23にかかる電圧が大きいときは抵抗値が低くなる。
【0024】
還流回路30は、正極線PL2と負極線NLとの間に接続される。還流回路30は、1個又は複数個のダイオード31、ツェナーダイオード32、及びダイオード31と同じ数のバリスタ33を備える。本実施形態では、還流回路30が2個のダイオード31-1、31-2を備える場合を例に説明する。ダイオード31の数は、1個でもよいし、3個以上であってもよい。
【0025】
ダイオード31-1、31-2は直列接続される。ダイオード31-1のアノードは、負極線NLに接続される。ダイオード31-2のカソードは、ツェナーダイオード32のカソードに接続される。ツェナーダイオード32のアノードは、正極線PL2に接続される。バリスタ33-1は、ダイオード31-1に並列接続される。バリスタ33-2は、ダイオード31-2に並列接続される。
【0026】
遮断装置1の遮断時、負荷側の寄生インダクタンス9に蓄積されたエネルギーに起因して負荷3に電流が流れる。ダイオード31-1、31-2は、寄生インダクタンス9に起因して発生した電流を負荷3に還流する機能を有する。ダイオード31の数は、還流電流の大きさに応じて設定される。複数のダイオード31を直列接続することで、ダイオード群の耐電圧を高くすることができる。
【0027】
バリスタ33-1は、ダイオード31-1に過電圧が印加されるのを抑制する機能を有する。バリスタ33-2は、ダイオード31-2に過電圧が印加されるのを抑制する機能を有する。
【0028】
ツェナーダイオード32は、負荷3に流れる還流電流を減流しつつ消費する機能を有する。ツェナーダイオード32は、電圧が印加された場合に、抵抗のような役割を担う。ツェナーダイオード32は、TVS(transient-voltage-suppression)ダイオードとも呼ばれる。ツェナーダイオード32を設けることで、負荷側配線に蓄積されたエネルギーをより速く消費することができる。特に、負荷側配線が長くなった場合、寄生インダクタンス9に蓄積されるエネルギーが大きくなる。この場合でも、ツェナーダイオード32は、寄生インダクタンス9に蓄積されるエネルギーによって発生する還流電流をより速く消費することができる。
【0029】
遮断装置1は、電源自給回路40-1~40-3に流れる電流を調整するために、3個のダイオード51-1~51-3、及び2個の抵抗素子52-1、52-2を備える。ダイオード51は、電流が逆流するのを防止する機能を有する。抵抗素子52は、ノイズを低減する機能を有する。
【0030】
ダイオード51-1のアノードは、正極線PL1に接続され、そのカソードは、電源自給回路40-1に接続される。
【0031】
抵抗素子52-1の一端は、正極線PL1に接続され、その他端は、ダイオード51-2のアノードに接続される。ダイオード51-2のカソードは、端子T5を介して電源自給回路40-2に接続される。端子T5は、下流側のスイッチング素子10-2用の電源出力端子である。
【0032】
抵抗素子52-2の一端は、正極線PL1に接続され、その他端は、ダイオード51-3のアノードに接続される。ダイオード51-3のカソードは、端子T6を介して電源自給回路40-3に接続される。端子T6は、下流側のスイッチング素子10-3用の電源出力端子である。
【0033】
電源自給回路40-1~40-3はそれぞれ、制御回路50-1~50-3に電源を供給する機能を有する。電源自給回路40の具体的な構成については後述する。
【0034】
制御回路50-1~50-3はそれぞれ、スイッチング素子10-1~10-3のゲートに接続される。制御回路50-1~50-3はそれぞれ、スイッチング素子10-1~10-3のゲート電圧を制御することで、スイッチング素子10-1~10-3のオン及びオフを制御する。
【0035】
図2は、電源自給回路40の回路図である。電源自給回路40は、コンデンサ41、抵抗素子42、及び絶縁型のDC/DC変換器43を備える。電源自給回路40-1~40-3は、
図2と同じ構成である。
【0036】
コンデンサ41の一方の電極は、正極線PL1に接続され、その他方の電極は、負極線NLに接続される。
図2では、正極線PL1に接続されるダイオード51及び抵抗素子52の図示を省略している。
【0037】
抵抗素子42の一端は、正極線PL1に接続され、その他端は、負極線NLに接続される。抵抗素子42は、コンデンサ41に充電された電荷を放電する機能を有する。遮断装置1のメンテナンスなどを行う際に、コンデンサ41に電荷が充電されていると危険である。抵抗素子42がコンデンサ41に充電された電荷を放電することで、メンテナンスを安全に行うことができる。
【0038】
DC/DC変換器43は、コンデンサ41の両端に接続される。DC/DC変換器43は、入力と出力とが(例えば入力側のコイルと出力形のコイルとが)絶縁されたDC/DC変換器である。DC/DC変換器43は、第1直流電圧を、第1直流電圧と異なる第2直流電圧に変換する回路である。具体的には、DC/DC変換器43は、コンデンサ41に充電された電圧を用いて、制御回路50が必要な電圧を生成する。制御回路50は、DC/DC変換器43から所望の電圧を受ける。
【0039】
[1-2] 動作
上記のように構成された遮断装置1の動作について説明する。
【0040】
負荷3に直流電力を供給する場合、遮断装置1は、導通状態となる。制御回路50-1~50-3は、スイッチング素子10-1~10-3がオン可能なゲート電圧を、スイッチング素子10-1~10-3のゲートに印加する。これにより、スイッチング素子10-1~10-3がオンする。よって、端子T1と端子T3とが導通し、直流電源2が発生した直流電力が負荷3に供給される。
【0041】
次に、遮断装置1が直流電源2と負荷3とを遮断する動作について説明する。例えば、負荷3に短絡が発生したものとする。この場合、遮断装置1は、開放状態となる。制御回路50-1~50-3は、スイッチング素子10-1~10-3がオフ可能なゲート電圧を、スイッチング素子10-1~10-3のゲートに印加する。これにより、スイッチング素子10-1~10-3がターンオフする。
【0042】
スイッチング素子10-1~10-3がターンオフすると、負荷側の寄生インダクタンス9に蓄積されたエネルギーに起因して負荷3に電流が流れる。還流回路30に含まれるダイオード31-1、31-2は、負荷3に流れる電流を還流する。この還流電流は、配線抵抗などによって電気エネルギーが消費されて、徐々に減少する。
【0043】
還流回路30に含まれるツェナーダイオード32は、還流電流を消費する。よって、還流電流が低減する傾き(割合)を大きくすることができる。これにより、より高速に短絡電流をゼロにすることが可能となる。
【0044】
スナバ回路20は、遮断装置1の遮断時に、直流電源側の寄生インダクタンス6に起因して発生するサージ電圧を抑制する。
【0045】
スナバ回路11-1は、スイッチング素子10-1がターンオフ時、スイッチング素子10-1に印加されるサージ電圧を抑制する。スイッチング素子10-2、10-3がターンオフ時についても、スナバ回路11-2、11-3によってサージ電圧が抑制される。
【0046】
抵抗素子14-1~14-3は、スイッチング素子10-1~10-3に印加されるサージ電圧をおおよそ均等に分担させる。これにより、スイッチング素子10-1~10-3に印加される電圧のアンバランスを抑制できる。
【0047】
電源自給回路40-1は、正極線PL1の電圧を用いて、制御回路50-1に電圧を供給する。電源自給回路40-2は、正極線PL1の電圧を用いて、制御回路50-2に電圧を供給する。電源自給回路40-3は、正極線PL1の電圧を用いて、制御回路50-3に電圧を供給する。これにより、スイッチング素子10-1が完全にオフした後も、制御回路50-2は、スイッチング素子10-2にゲート電圧を供給することができる。また、スイッチング素子10-1又はスイッチング素子10-2が完全にオフした後も、制御回路50-3は、スイッチング素子10-3にゲート電圧を供給することができる。
【0048】
[1-3] 第1実施形態の効果
第1実施形態によれば、例えば負荷3に短絡が発生して、遮断装置1に過電流が流れた場合に、スイッチング素子10-1~10-3は、直流電流を遮断することができる。これにより、直流電源2及び負荷3を保護することが可能である。また、遮断装置1は、より安全かつ確実に直流電流を遮断することができる。
【0049】
また、スイッチング素子10は、FETからなる半導体素子で構成される。よって、スイッチング素子10は、機械式のサーキットブレーカに比べて、高速に直流電流を遮断することができる。
【0050】
また、遮断装置1は、還流用のダイオード31と、減流用のツェナーダイオード32とを含む還流回路30を備える。これにより、負荷側の寄生インダクタンス9に起因する還流電流、及び負荷3に発生した短絡電流をより速くゼロにすることができる。
【0051】
また、電源自給回路40は、専用の電源を用いずに、制御回路50に直流電力を供給することができる。制御回路50は、電源自給回路40から供給された直流電力を用いて、スイッチング素子10を制御するゲート電圧を生成することができる。これにより、遮断装置1は、ゲート電圧用の電源回路を新たに備える必要がない。
【0052】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、スイッチング素子10にアクティブクランプ回路を付加するようにしている。
【0053】
図3は、第2実施形態に係る遮断装置1の回路図である。遮断装置1は、スイッチング素子10-1~10-3に対応するようにして、3個のアクティブクランプ回路60-1~60-3をさらに備える。
【0054】
アクティブクランプ回路60-1は、スイッチング素子10-1に並列接続される。アクティブクランプ回路60-1は、ツェナーダイオード61-1、及び2個の抵抗素子62-1、63-1を備える。抵抗素子62-1の一端は、スイッチング素子10-1のドレインに接続され、その他端は、ツェナーダイオード61-1のカソードに接続される。ツェナーダイオード61-1のアノードは、スイッチング素子10-1のゲートに接続される。抵抗素子63-1は、スイッチング素子10-1のゲート及びソース間に接続される。
【0055】
同様に、アクティブクランプ回路60-2は、ツェナーダイオード61-2、及び2個の抵抗素子62-2、63-2を備える。アクティブクランプ回路60-3は、ツェナーダイオード61-3、及び2個の抵抗素子62-3、63-3を備える。
【0056】
アクティブクランプ回路60-1は、スイッチング素子10の両端に印加される電圧を所定のクランプ電圧にクランプする機能を有する。ツェナーダイオード61は、スイッチング素子10の両端にサージ電圧が印加された場合に降伏するように動作する。
【0057】
抵抗素子62は、ツェナーダイオード61に印加される電圧を調整する機能を有する。抵抗素子63は、スイッチング素子10のゲート及びソース間の電圧を所定電圧に固定する機能を有する。抵抗素子62は、省略してもよい。
【0058】
遮断装置1の遮断時、スイッチング素子10-1~10-3にサージ電圧が発生する場合がある。アクティブクランプ回路60-1~60-3は、サージ電圧をスイッチング素子10-1~10-3で分担させるように動作する。アクティブクランプ回路60のツェナーダイオード61は、スイッチング素子10の両端に印加されるサージ電圧を抑制するように動作する。すなわち、ツェナーダイオード61は、スイッチング素子10にクランプ電圧以上の電圧が印加されるのを防ぐように動作する。
【0059】
遮断装置1の遮断時に発生するサージ電圧をスイッチング素子10-1~10-3がおおよそクランプ電圧ずつ分担する。これにより、スイッチング素子10-1~10-3のそれぞれに印加される電圧のアンバランスを抑制することができる。結果として、スイッチング素子10-1~10-3の1つに相対的に大きな電圧が印加されるのを抑制できる。これにより、スイッチング素子10を保護することができる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0060】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、減流用のツェナーダイオード32を複数個設けるようにしている。
【0061】
図4は、第3実施形態に係る遮断装置1の回路図である。還流回路30は、複数のツェナーダイオード32を備える。本実施形態では、遮断装置1が2個のツェナーダイオード32-1、32-2を備える場合を例示している。ツェナーダイオード32の数は、3個以上であってもよい。ツェナーダイオード32-1、32-2は、正極線PL2とダイオード31-2との間に直列接続される。
【0062】
ツェナーダイオード32-1、32-2は、還流電流を消費する。よって、還流電流が低減する傾き(割合)を大きくすることができる。これにより、より高速に短絡電流をゼロにすることが可能となる。
【0063】
特に、負荷側配線が長く、寄生インダクタンス9が大きい場合に、複数のツェナーダイオード32を直列接続することで、還流電流が大きくなった場合でも、還流電流をより速く低減できる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0064】
本実施形態において、「接続される」とは、電気的に接続されることを意味し、電気回路素子(受動素子を含む)が間に介在することを除外しない。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…遮断装置、2…直流電源、3…負荷、4,7,PL1,PL2…正極線、5,8,NL…負極線、6,9…寄生インダクタンス、10-1~10-3…スイッチング素子、11-1~11-3…スナバ回路、12-1~12-3…コンデンサ、13-1~13-3…抵抗素子、14-1~14-3…抵抗素子、20…スナバ回路、21…コンデンサ、22…抵抗素子、23…バリスタ、30…還流回路、31-1,31-2…ダイオード、32…ツェナーダイオード、33-1,33-2…バリスタ、40-1~40-3…電源自給回路、41…コンデンサ、42…抵抗素子、43…DC/DC変換器、50-1~50-3…制御回路、51-1~51-3…ダイオード、52-1,52-2…抵抗素子、60-1~60-3…アクティブクランプ回路、61-1~61-3…ツェナーダイオード、62-1~62-3…抵抗素子、63-1~63-3…抵抗素子、T1~T6…端子。