(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005765
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子機器、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20230111BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20230111BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/20
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107935
(22)【出願日】2021-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中舎 朋之
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】河合 克敏
(57)【要約】
【課題】マルチパスリッチの伝搬環境において、人体の安全性の確保を向上すること。
【解決手段】例えば、電子機器は、送信信号を送信する送信部13と、規定信号を受信する受信部14と、受信した規定信号から電波伝搬環境を推定可能な環境推定部15と、電波伝搬環境における人の有無を検出する人検出部16と、環境推定部15の推定結果及び人検出部16の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、送信信号のサイドローブを低減する制御部18と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を送信する送信部と、
規定信号を受信する受信部と、
受信した前記規定信号から電波伝搬環境を推定可能な環境推定部と、
前記電波伝搬環境における人の有無を検出する人検出部と、
前記環境推定部の推定結果及び前記人検出部の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、前記送信信号のサイドローブを低減する制御部と、
を備える電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記制御部は、
前記環境推定部の推定結果及び前記人検出部の検出結果から、直接波が支配的な環境であると判断された場合、または、前記マルチパスリッチな環境であると判断されたが人を検出していない場合は、前記送信信号のサイドローブを低減しない指向性制御を行う、電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器において、
前記送信信号は、電力を供給可能な電波を送信する信号である、電子機器。
【請求項4】
送信信号を送信する送信部と、
規定信号を受信する受信部と、
を備える電子機器が、
受信した前記規定信号から電波伝搬環境を推定すること、
前記電波伝搬環境における人の有無を検出すること、
前記電波伝搬環境の推定結果及び前記人の有無の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、前記送信信号のサイドローブを低減すること、
を含む制御方法。
【請求項5】
送信信号を送信する送信部と、
規定信号を受信する受信部と、
を備える電子機器に、
受信した前記規定信号から電波伝搬環境を推定すること、
前記電波伝搬環境における人の有無を検出すること、
前記電波伝搬環境の推定結果及び前記人の有無の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、前記送信信号のサイドローブを低減すること、
を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子機器、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送においては、給電効率の向上と人体の安全性の確保とを両立するための技術がある。例えば、特許文献1には、異物が存在しない通常の環境状態を示す環境情報との差分に基づき、検知範囲内への人などの異物の進入を検出することで、通常の環境状態において動きのある物体があったとしてもそれを誤検出することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、反射波の多いマルチパスリッチな環境においては、フェージングの影響により意図しないエリアで高い信号強度が確認されてしまう可能性があり、人体の安全性を確保することに改善の余地があった。フェージングとは、受信電波の強度が相互干渉の状態変化などによって変化する現象である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様の1つに係る電子機器は、送信信号を送信する送信部と、規定信号を受信する受信部と、受信した前記規定信号から電波伝搬環境を推定可能な環境推定部と、前記電波伝搬環境における人の有無を検出する人検出部と、前記環境推定部の推定結果及び前記人検出部の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、前記送信信号のサイドローブを低減する制御部と、を備える。
【0006】
態様の1つに係る制御方法は、送信信号を送信する送信部と、規定信号を受信する受信部と、を備える電子機器が、受信した前記規定信号から電波伝搬環境を推定すること、前記電波伝搬環境における人の有無を検出すること、前記電波伝搬環境の推定結果及び前記人の有無の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、前記送信信号のサイドローブを低減すること、を含む。
【0007】
態様の1つに係る制御プログラムは、送信信号を送信する送信部と、規定信号を受信する受信部と、を備える電子機器に、受信した前記規定信号から電波伝搬環境を推定すること、前記電波伝搬環境における人の有無を検出すること、前記電波伝搬環境の推定結果及び前記人の有無の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、前記送信信号のサイドローブを低減すること、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電子機器を用いたワイヤレス電力伝送システムの概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る親機の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る子機の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る親機が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1示すシステムのシーケンスの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1示すシステムの動作の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図1示すシステムのシーケンスの他の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1示すシステムの動作の他の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図1示すシステムのシーケンスの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願に係る電子機器、制御方法及び制御プログラム等を実施するための複数の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下の説明において、同様の構成要素について同一の符号を付すことがある。さらに、重複する説明は省略することがある。
【0010】
図1は、実施形態に係る電子機器を用いたワイヤレス電力伝送システムの概要を説明するための図である。
図1に示すシステム1は、例えば、マイクロ波伝送型(空間伝送型)のワイヤレス電力伝送が可能なワイヤレス電力伝送システムを含む。ワイヤレス電力伝送は、例えば、ケーブルやプラグを用いることなく、電力を伝送することが可能な仕組みである。マイクロ波伝送型のシステム1は、エネルギー伝送として電波(マイクロ波)を使用するため、周波数を狭帯域かつ無変調波を使用する。システム1は、例えば、複数の周波数帯で電力を伝送する。複数の周波数帯は、例えば、日本では、920MHz、2.4GHz、5.7GHz等を含む。本実施形態では、システム1は、状況に適した給電効率の向上及び安全性の確保を両立することを可能とする。システム1は、例えば、宇宙太陽光発電等に適用することができる。なお、本開示の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムでは、使用される電波の周波数帯域として上記マイクロ波に限定するものではなく、電波の波長として、数メートルから数pmまでの幅広い波長の電波を利用するとしてもよい。
【0011】
図1に示す一例では、システム1は、親機10と、子機20と、を備える。親機10は、システム1において、ワイヤレスにより電力を伝送する伝送装置である。親機10は、給電用の電波を伝送可能な装置である。親機10は、電子機器の一例である。親機10は、例えば、多入力多出力(Multiple-Input Multiple-Output:MIMO)アンテナ技術を用いることができる。MIMOでは、通信回路の各端部のアンテナ素子が組み合わされて、エラーを最小限に抑え、データ速度を最適にする。
【0012】
子機20は、システム1において、給電用の電波を受信して電力を得る被給電装置である。子機20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、IoT(Internet of Things)センサ、ノート型パーソナル・コンピュータ、ドローン、電気自動車、電動自転車、ゲーム機等を含む。システム1は、電波を干渉させないため、時間分割、周波数分割等で電波の使用を管理できるとしてもよい。
【0013】
場面C1では、子機20は、親機10との間で定められた規定信号100を送信する。規定信号100は、例えば、ビーコン、パイロット信号等を含む。子機20は、例えば、送信周期で規定信号100を送信できる。子機20は、規定信号100を含む電波を放射することで、規定信号100を送信できる。一方、親機10は、規定信号100を受信すると、当該規定信号に基づいて子機20の位置を推定する。親機10は、推定した子機20の位置に対する送信用の重み係数を算出する。
【0014】
場面C2では、親機10は、各アンテナに重み係数を乗算して指向性制御を行い、給電用の送信信号200の電波を送信する。指向性制御は、例えば、電波の放射方向と放射強度との関係を制御することを意味する。これにより、親機10は、放射指向性を有する放射パターンで電波を放射する。親機10は、メインローブ210が子機20に向かい、サイドローブ220が子機20とは異なる方向に向かう送信信号200の電波を放射(送信)することができる。メインローブ210は、放射する送信信号200の電波のうち最も強いビームを示している。サイドローブ220は、メインローブ210以外のビームを示している。
【0015】
例えば、直接波が支配的な伝搬環境では、親機10のビームの方向にのみ受信強度が強いエリアが発生する。これに対し、マルチパスリッチの伝搬環境では、壁面、障害物等の影響により、親機10のビームの方向以外にも受信強度が強いエリアが発生する。このため、システム1は、マルチパスリッチの伝搬環境において、親機10のビームの方向とは異なる方向にも受信強度が強いエリアが生じる可能性があるので、人体の安全性の確保を向上する機能を提供する。
【0016】
図2は、実施形態に係る親機10の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、親機10は、アンテナ11と、送信信号生成部12と、送信部13と、受信部14と、環境推定部15と、人検出部16と、記憶部17と、制御部18と、を備える。制御部18は、送信信号生成部12、送信部13、受信部14、環境推定部15、人検出部16、記憶部17等と電気的に接続されている。本実施形態では、説明を簡単化するために、親機10は、アンテナ11が4つのアンテナ素子11Aを備える場合について説明するが、アンテナ素子11Aの数はこれに限定されない。
【0017】
アンテナ11は、指向性制御(ビームフォーミング)が可能な構成になっている。アンテナ11は、複数のアンテナ素子11Aを備えたアンテナアレイとなっている。アンテナ11は、例えば、複数のアンテナ素子11Aのそれぞれが同じ電波を放射し、それぞれの位相と電力強度を調整することで、特定の方向では電波を強め、別の方向では打ち消し合って弱めることが可能な構成になっている。アンテナ11は、送信信号200を含む電波を放射し、子機20からの信号を含む電波を受信する。アンテナ11は、受信した信号を受信部14に供給する。アンテナ11は、電波の放射が最大となる方向がメインローブ210である。アンテナ11は、メインローブ210と交わる方向がサイドローブ220である。
【0018】
送信信号生成部12は、子機20に送電する電流を電波に変換した給電用の送信信号200を生成する。送信信号200は、電力を供給可能な電波を送信するための信号である。送信信号生成部12は、電力源から電流を伝送周波数の電波に変換して送信信号200を生成する。電力源は、例えば、商用電源、直流電源、バッテリ等を含む。送信信号生成部12は、生成した送信信号200を送信部13に供給する。
【0019】
送信部13は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aと電気的に接続されている。送信部13は、給電用の送信信号200を含む電波をアンテナ11から放射させる。送信部13は、複数のアンテナ素子11Aで形成可能なビームに対応したウェイトを適用することで、電波を複数のアンテナ素子11Aから特定の方向に放射させる。送信部13は、制御部18が指示したウェイトを複数のアンテナ素子11Aに適用する。
【0020】
受信部14は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11A、環境推定部15等と電気的に接続されている。受信部14は、アンテナ11を介して受信した子機20からの電波から受信信号を抽出する。受信信号は、例えば、上述した規定信号100等を含む。受信部14は、抽出した受信信号を環境推定部15、制御部18等に供給する。
【0021】
環境推定部15は、子機20から受信した既知である規定信号100から電波伝搬環境を推定する。電波伝搬環境は、例えば、親機10と子機20との間で電波を伝搬する空間を含む。環境推定部15は、例えば、空間における電波伝搬の状況を推定する。電波伝搬の状況は、例えば、直接波が支配的な環境、反射波が生じるマルチパスリッチな環境等を識別可能な状況を含む。環境推定部15は、受信信号から受信応答ベクトル(端末到来方向)を推定する。環境推定部15は、例えば、受信信号に含まれる既知の規定信号100と既知の参照信号との比較により受信応答ベクトルを推定する。環境推定部15は、例えば、空間における電波伝搬の状況を把握するために、規定信号100の受信レベル、感度、受信応答ベクトル、参照用の伝搬モデル、機械学習プログラム等を用いて、伝搬環境を推定する。環境推定部15は、例えば、受信した規定信号100の損失が判定閾値よりも小さい場合に、直接波が支配的な環境と電波伝搬環境を推定する。環境推定部15は、例えば、受信した規定信号100の損失が判定閾値以上である場合に、マルチパスリッチな環境と電波伝搬環境を推定する。環境推定部15は、規定信号100に基づく推定結果を制御部18に供給する。
【0022】
人検出部16は、電波伝搬環境における人の有無を検出する。人検出部16は、例えば、人感センサ、カメラ等を用いて、電波伝搬環境における人の有無を検出する。人検出部16は、例えば、検出エリアが人間の高さとなるように設けられている。人検出部16は、親機10の外部に設けられてもよいし、子機20の内部に設けられてもよい。人検出部16は、電波伝搬環境における人の有無の検出結果を制御部18に供給する。なお、本開示の人検出部16は、人の代わりに若しくは人と共に、犬、猫、牛、馬、魚若しくは鳥などの動物、植物、食物、薬品又は衣類などを検出するとしてもよい。
【0023】
記憶部17は、プログラム及びデータを記憶できる。記憶部17は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的な記憶媒体を含んでよい。記憶部17は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部17は、RAMなどの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
【0024】
記憶部17は、制御プログラム17A、ウェイトデータ17B等を記憶できる。制御プログラム17Aは、親機10の各種動作に関する処理を実現するための機能をそれぞれ提供できる。制御プログラム17Aは、ワイヤレス電力伝送に関する各機能を提供できる。ウェイトデータ17Bは、例えば、複数の指向性パターンごとに、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aから放射する信号の振幅と位相を調整するための複数のウェイト(重み係数)を示すデータを有する。ウェイトデータ17Bは、例えば、指向性パターンに対応する複数のアンテナ素子11Aの組み合わせを示すデータを有する。ウェイトデータ17Bは、例えば、ウェイトベクトル(重み係数ベクトル)が各アンテナ素子11Aにおける受信応答ベクトルにより一意に表わせることに着目し、受信応答ベクトルの時間変動を推定することによって得られたウェイトを示すデータを含む。
【0025】
制御部18は、1又は複数の演算装置を含む。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System-on-a-Chip)、MCU(Micro Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびコプロセッサを含むが、これらに限定されない。制御部18は、制御プログラム17Aを演算装置に実行させることにより、親機10の各種動作に関する処理を実現する。制御部18は、制御プログラム17Aにより提供される機能の少なくとも1部を専用のIC(Integrated Circuit)により実現してもよい。
【0026】
制御部18は、制御プログラム17Aを実行することで、環境推定部15の推定結果及び人検出部16の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、送信信号200のサイドローブ220を低減する。サイドローブ220を低減するとは、例えば、反射波の発生を抑制するように、サイドローブ220を抑制することを意味する。制御部18は、環境推定部15の推定結果及び人検出部16の検出結果から、直接波が支配的な環境であると判断された場合、または、マルチパスリッチな環境であると判断されたが人を検出していない場合は、送信信号200のサイドローブ220を低減しない指向性制御を行う。送信信号200のサイドローブ220を低減しない指向性制御は、例えば、送信信号200のメインローブ210の指向性を制御することを含む。
【0027】
例えば、制御部18は、判断部18A及び生成部18Bの機能部を有する。制御部18は、制御プログラム17Aを実行することで、判断部18A及び生成部18B等の機能部として機能する。
【0028】
判断部18Aは、環境推定部15の推定結果及び人検出部16の検出結果から、電波伝搬環境の状況を判断する。判断部18Aは、電波伝搬環境に適した送信信号200(電波)の指向性を判断する。判断部18Aは、例えば、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、送信信号200のサイドローブ220を低減すると判断する。判断部18Aは、直接波が支配的な環境であると判断された場合、または、マルチパスリッチな環境であると判断されたが人を検出していない場合は、送信信号200のサイドローブ220を低減しないと判断する。
【0029】
生成部18Bは、判断部18Aの判断結果に基づいて、送信信号200に用いるウェイトを生成する。生成部18Bは、例えば、サイドローブ220を低減して人体の安全性を確保する場合、送信信号200の振幅を不均一にするように、ウェイトデータ17Bに基づいてウェイトを生成する。生成部18Bは、例えば、サイドローブ220を低減して人体の安全性を確保する必要がない場合、最大指向性利得及び給電効率を高める目的である均一振幅となるように、ウェイトデータ17Bに基づいてウェイトを生成する。
【0030】
以上、本実施形態に係る親機10の機能構成例について説明した。なお、
図2を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る親機10の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る親機10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0031】
図3は、実施形態に係る子機20の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、子機20は、アンテナ21と、生成部22と、変換部23と、バッテリ24と、を備える。
【0032】
アンテナ21は、生成部22及び変換部23と電気的に接続されている。アンテナ21は、例えば、規定信号100を含む電波を放射し、親機10からの信号を含む電波を受信する。アンテナ21は、受信した電波を変換部23に供給する。
【0033】
生成部22は、規定信号100を生成し、該規定信号100を含む電波をアンテナ21に放射させる。生成部22は、所定のタイミングで規定信号100を生成する。所定のタイミングは、例えば、一定時間が経過したタイミング、指定されたタイミング等を含む。生成部22は、規定信号100とは異なる信号を生成する構成としてもよい。
【0034】
変換部23は、バッテリ24と電気的に接続されている。変換部23は、アンテナ21で受信した電波を直流電流に変換し、この直流電流を利用してバッテリ24を充電する。変換部23は、例えば、公知である整流回路を用いて、電波を直流電流に変換する。
【0035】
バッテリ24は、変換部23と電気的に接続されている。バッテリ24は、充電可能な電池を含む。バッテリ24は、例えば、Qi(ワイヤレス給電の国際標準規格)に対応したバッテリを含む。バッテリ24は、蓄電された電力を子機20において電力を必要とする各部等に供給できる。
【0036】
以上、本実施形態に係る子機20の機能構成例について説明した。なお、
図3を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る子機20の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る子機20の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0037】
図4は、実施形態に係る親機10が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4に示す処理手順は、親機10の制御部18が制御プログラム17Aを実行することによって実現される。
図4に示す処理手順は、例えば、アンテナ11で電波を受信した場合、電波を受信するタイミング等に、制御部18によって繰り返し実行される。
【0038】
図4に示すように、親機10の制御部18は、子機20から規定信号100を受信する(ステップS101)。例えば、制御部18は、アンテナ11で受信した電波から規定信号100を取得する。制御部18は、ステップS101の処理が終了すると、処理をステップS102に進める。
【0039】
制御部18は、環境推定部15の推定結果及び人検出部16の検出結果を取得する(ステップS102)。例えば、制御部18は、環境推定部15から取得した推定結果と人検出部16から取得した検出結果とを関連付けて記憶部17に記憶する。制御部18は、ステップS102の処理が終了すると、処理をステップS103に進める。
【0040】
制御部18は、電波伝搬環境がマルチパスリッチな環境であるか否かを判定する(ステップS103)。例えば、制御部18は、環境推定部15の推定結果がマルチパスリッチな環境を示している場合に、電波伝搬環境がマルチパスリッチな環境であると判定する。制御部18は、電波伝搬環境がマルチパスリッチな環境ではないと判定した場合(ステップS103でNo)、処理を後述するステップS106に進める。また、制御部18は、電波伝搬環境がマルチパスリッチな環境であると判定した場合(ステップS103でYes)、処理をステップS104に進める。
【0041】
制御部18は、人を電波伝搬環境に検出したか否かを判定する(ステップS104)。例えば、制御部18は、人検出部16の検出結果が人を検出したことを示している場合に、人を電波伝搬環境に検出したと判定する。制御部18は、人を電波伝搬環境に検出したと判定した場合(ステップS104でYes)、処理をステップS105に進める。
【0042】
制御部18は、送信信号200のサイドローブ220を低減するウェイトを生成する(ステップS105)。例えば、制御部18は、送信信号200の振幅を不均一にするように、ウェイトデータ17Bに基づいてウェイトを生成して記憶部17に記憶する。制御部18は、ステップS105の処理が終了すると、処理を後述するステップS107に進める。
【0043】
また、制御部18は、人を電波伝搬環境に検出していないと判定した場合(ステップS104でNo)、処理をステップS106に進める。制御部18は、送信信号200のサイドローブ220を低減しないウェイトを生成する(ステップS106)。例えば、制御部18は、最大指向性利得及び給電効率を高める目的である均一振幅となるように、ウェイトデータ17Bに基づいてウェイトを生成して記憶部17に記憶する。制御部18は、ステップS106の処理が終了すると、処理をステップS107に進める。
【0044】
制御部18は、生成したウェイトに基づいてアンテナ11の指向性制御を実行する(ステップS107)。例えば、制御部18は、生成したウェイトを送信部13に設定し、送信信号生成部12が生成した送信信号200を含む電波をアンテナ11から放射させる。これにより、制御部18は、送信信号200のメインローブ210及びサイドローブ220の指向性を調整した電波を放射する。制御部18は、ステップS107の処理が終了すると、
図4に示す処理手順を終了させる。
【0045】
図5は、
図1に示すシステム1のシーケンスの一例を示す図である。
図6は、
図1に示すシステム1の動作の一例を説明するための図である。
図5及び
図6に示す一例では、システム1は、親機10と子機20とが電波伝搬環境の内部に設けられており、当該電波伝搬環境には人が存在していることを前提とする。
【0046】
図5に示すように、子機20は、ワイヤレス給電の開始等に応じて、規定信号100を親機10に送信する(ステップS11)。これにより、子機20は、アンテナ21から規定信号100を含む電波を放射する。
【0047】
親機10は、アンテナ11を介して受信した規定信号100に基づいて、電波伝搬環境がマルチパスリッチな環境と推定する(ステップS12)。親機10は、人検出部16によって電波伝搬環境の人を検出する(ステップS13)。親機10は、サイドローブ220を低減するように、給電用の送信信号200を子機に送信する(ステップS14)。これにより、親機10は、送信信号200を含みかつサイドローブ220を低減させた電波を、アンテナ11から子機20に向けて放射する。
【0048】
子機20は、受信した信号に基づいてバッテリ24を充電する(ステップS15)。例えば、子機20は、受信した信号を変換部23で直流電流に変換し、この直流電流を用いてバッテリ24を充電する。
【0049】
図6に示すように、電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境であり、かつ電波伝搬環境500で人を検出する場合、親機10は、サイドローブ220を低減した送信信号200を子機20に送信する。この場合、電波伝搬環境500は、親機10と子機20の間において、親機10からの送信信号200の電波(メインローブ210)の方向に、電波強度が強いエリアE1が発生する。その結果、システム1は、電波伝搬環境500のエリアE1とは異なるエリアにおける人体の安全性を確保し、かつ給電効率の低下を抑制することができる。
【0050】
図7は、
図1に示すシステム1のシーケンスの他の一例を示す図である。
図8は、
図1に示すシステム1の動作の他の一例を説明するための図である。
図7及び
図8に示す一例では、システム1は、親機10と子機20とが電波伝搬環境の内部に設けられており、当該電波伝搬環境500には人が存在していないことを前提とする。
【0051】
図7に示すように、子機20は、ワイヤレス給電の開始等に応じて、規定信号100を親機10に送信する(ステップS21)。これにより、子機20は、アンテナ21から規定信号100を含む電波を放射する。
【0052】
親機10は、アンテナ11を介して受信した規定信号100に基づいて、電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境と推定する(ステップS22)。親機10は、人検出部16によって電波伝搬環境500で人を検出しない(ステップS23)。親機10は、サイドローブ220を低減せずに、給電用の送信信号200を子機に送信する(ステップS24)。これにより、親機10は、送信信号200を含みかつサイドローブ220を低減させていない電波を、アンテナ11から子機20に向けて放射する。
【0053】
子機20は、受信した信号に基づいてバッテリ24を充電する(ステップS25)。例えば、子機20は、受信した信号を変換部23で直流電流に変換し、この直流電流を用いてバッテリ24を充電する。
【0054】
図8に示すように、電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境であり、かつ電波伝搬環境500で人を検出していない場合、親機10は、サイドローブ220を低減していない送信信号200を子機20に送信する。この場合、電波伝搬環境500は、親機10と子機20の間において、親機10からの送信信号200の電波(メインローブ210)の方向に、電波強度が強いエリアE1が発生し、フェージングによる意図しないエリアE2が発生する。エリアE2は、エリアE1よりも電波強度が低いエリアである。これにより、システム1は、マルチパスリッチな環境において、電波伝搬環境500に人が存在しない場合、サイドローブ220を低減させないので、サイドローブ220を低減させる場合よりも、メインローブ210の指向性利得を向上させることができる。その結果、システム1は、子機20における給電効率を、サイドローブ220を低減させる場合よりも向上させることができる。
【0055】
図9は、
図1に示すシステム1のシーケンスの他の一例を示す図である。
図9に示す一例では、システム1は、親機10と子機20とが電波伝搬環境500の内部に設けられており、マルチパスリッチな環境ではないことを前提とする。
【0056】
図9に示すように、子機20は、ワイヤレス給電の開始等に応じて、規定信号100を親機10に送信する(ステップS31)。これにより、子機20は、アンテナ21から規定信号100を含む電波を放射する。
【0057】
親機10は、アンテナ11を介して受信した規定信号100に基づいて、電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境ではないと推定する(ステップS32)。親機10は、サイドローブ220を低減せずに、給電用の送信信号200を子機に送信する(ステップS33)。これにより、親機10は、送信信号200を含みかつサイドローブ220を低減させていない電波を、アンテナ11から子機20に向けて放射する。
【0058】
子機20は、受信した信号に基づいてバッテリ24を充電する(ステップS34)。例えば、子機20は、受信した信号を変換部23で直流電流に変換し、この直流電流を用いてバッテリ24を充電する。
【0059】
電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境ではない場合、親機10は、サイドローブ220を低減していない送信信号200を子機20に送信する。この場合、電波伝搬環境500は、
図6に示したように、親機10と子機20の間において、親機10からの送信信号200の電波(メインローブ210)の方向に、電波強度が強いエリアE1が発生する。これにより、システム1は、直接波が支配的な環境の場合、サイドローブ220を低減させないので、サイドローブ220を低減させる場合よりも、メインローブ210の指向性利得を向上させることができる。その結果、システム1は、子機20における給電効率を、サイドローブ220を低減させる場合よりも向上させることができる。
【0060】
以上のように、システム1では、電波のサイドローブ220を低減すると、メインローブ210の指向性利得は、サイドローブ220を低減しない場合と比べて減少し、効率も減少してしまう。このため、システム1は、規定信号100から電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境と推定し、かつ、電波伝搬環境500で人を検知した場合にのみ、電波のサイドローブ220を低減する。システム1は、規定信号100から電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境と推定し、かつ、電波伝搬環境500で人を検知していない場合、電波のサイドローブ220を低減しない。これにより、システム1は、電波伝搬環境500の状況に応じて電波のサイドローブ220を変化させるので、給電効率の向上及び人体の安全性確保を両立することができる。
【0061】
また、無線通信分野では、電波伝搬環境500は、時々刻々と変化することが知られており、親機10と子機20との間の状況も時々刻々と変化する可能性がある。このため、親機10は、規定信号100から電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境と推定し、かつ、電波伝搬環境500で人を検知した場合にのみ、電波のサイドローブ220を低減する。これにより、親機10は、電波伝搬環境500の状況が時々刻々と変化しても、人体の安全性を確保することができる。
【0062】
以上により、上述した親機10は、子機20から受信した規定信号100から電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境と推定しかつ電波伝搬環境500に人が検出された場合、送信信号200のサイドローブ220を低減することができる。これにより、親機10は、マルチパスリッチな環境に人が存在した場合、送信信号200の電波のサイドローブ220を低減するので、人体の安全性を確保することができる。
【0063】
親機10は、直接波が支配的な環境であると推定された場合、または、マルチパスリッチな環境であると推定されたが人を検出していない場合、送信信号200のサイドローブ220を低減しない指向性制御を行う。これにより、親機10は、電波伝搬環境500の状況または人の有無に基づいてサイドローブ220の抑制を制御できるので、空間上の電波の伝送効率と人体の安全性確保の両立を図ることができる。
【0064】
親機10は、送信信号200が電力を供給可能な電波を送信する信号である。これにより、親機10は、電波伝搬環境500の状況または人の有無に基づいてサイドローブ220の抑制を制御できるので、空間上の電力伝送効率と人体の安全性確保の両立を図ることができる。
【0065】
システム1は、親機10が子機20から受信した規定信号100から電波伝搬環境500がマルチパスリッチな環境と推定しかつ電波伝搬環境500に人が検出された場合、送信信号200のサイドローブ220を低減する。システム1は、子機20が規定信号100を親機10に送信し、親機10から受信した電波を電流に変換してバッテリ24を充電する。これにより、システム1は、電波伝搬環境500の状況または人の有無に基づいてサイドローブ220の抑制を制御できるので、空間上の電力伝送効率と人体の安全性確保の両立を図ることができる。
【0066】
上述した実施形態では、システム1は、親機10が電子機器である場合について説明したが、これに限定されない。電子機器は、例えば、給電用電波を放射可能な給電装置を制御する制御装置、給電装置に内蔵されたコンピュータ等で実現してもよい。また、システム1は、ワイヤレス電力伝送システムである場合について説明したが、これに限定されない。例えば、システム1は、電波伝搬環境で無線通信を行うシステム等に適用することができる。
【0067】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0068】
[付記4]
電子機器と、
前記電子機器から受信した電波によって給電される被給電装置と、
を備え、
前記電子機器は、
送信信号を送信する送信部と、
規定信号を受信する受信部と、
受信した前記規定信号から電波伝搬環境を推定可能な環境推定部と、
前記電波伝搬環境における人の有無を検出する人検出部と、
前記環境推定部の推定結果及び前記人検出部の検出結果から、反射波が生じるマルチパスリッチな環境と判断され、かつ、人が検出された場合は、前記送信信号のサイドローブを低減する制御部と、
を備え、
前記被給電装置は、
前記規定信号を送信する第2送信部と、
前記電子機器から受信した前記電波を電流に変換する変換部と、
変換した電流によって充電するバッテリと、
を備える電力伝送システム。
【符号の説明】
【0069】
1 システム
10 親機
11 アンテナ
12 送信信号生成部
13 送信部
14 受信部
15 環境推定部
16 人検出部
17 記憶部
17A 制御プログラム
17B ウェイトデータ
18 制御部
18A 判断部
18B 生成部
20 子機
21 アンテナ
22 生成部
23 変換部
24 バッテリ
100 規定信号
200 送信信号
210 メインローブ
220 サイドローブ