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特開2023-57654情報処理装置及び推奨視線方向取得方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057654
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】情報処理装置及び推奨視線方向取得方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167241
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信彦
(72)【発明者】
【氏名】荒井 和明
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB13
5H181CC04
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF33
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】運転状況に応じた適切な視線方向をリアルタイムで取得し、ドライバーに注意喚起を行うことが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】車両の位置情報に基づいて車両が進入する交差点を特定する交差点特定部と、交差点を通行する際の車両の予定通行方向を取得する予定通行方向取得部と、交差点の基準位置に対する車両の相対位置を逐次取得する相対位置情報取得部と、特定された交差点、相対位置及び予定通行方向に基づいて、相対位置において車両の運転者が視認すべき方向を示す推奨視線方向を取得する推奨視線方向取得部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置情報に基づいて前記車両が進入する交差点を特定する交差点特定部と、
前記交差点を通行する際の前記車両の予定通行方向を取得する予定通行方向取得部と、
前記交差点の基準位置に対する前記車両の相対位置を逐次取得する相対位置情報取得部と、
特定された前記交差点、前記相対位置及び前記予定通行方向に基づいて、前記相対位置において前記車両の運転者が視認すべき方向を示す推奨視線方向を取得する推奨視線方向取得部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記推奨視線方向取得部は、複数の交差点の各々に対応付けられた複数の推奨視線方向特定手段の中から、前記交差点特定部によって特定された交差点に対応する推奨視線方向特定手段を選択し、選択された前記推奨視線方向特定手段を用いて、前記推奨視線方向を取得することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数の推奨視線方向特定手段の各々は、交差点の基準位置に対する車両の相対位置及び予定通行方向を入力として、当該車両の運転者の推奨視線方向を出力するように機械学習がなされた学習済みモデルであることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数の推奨視線方向特定手段の各々は、前記複数の交差点の各々の形状を示す交差点情報に基づいて生成した前記交差点の各々の仮想環境を、前記交差点の各々を通行する際の通行態様を示す通行態様情報に従ってシミュレーション走行することで得られた、前記交差点の各々の基準位置に対する車両の相対位置と関連付けられた前記推奨視線方向に基づいて生成された視線モデルであることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記車両が前記交差点から所定距離範囲内に接近してから前記交差点を退出するまでの間に逐次検出される前記車両の運転者の視線方向を取得する視線方向取得部と、
前記視線方向取得部が取得した前記車両の運転者の視線方向と前記推奨視線方向とに基づいて、前記車両の運転者の視線方向の評価を示す視線評価を生成する視線評価生成部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推奨視線方向取得部が取得した前記推奨視線方向を前記車両の運転者に報知する報知部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
車両の運転者が視認すべき方向を示す推奨視線方向を取得するための情報処理方法であって、
車両の位置情報に基づいて前記車両が進入する交差点を特定するステップと、
前記交差点を通行する際の前記車両の予定通行方向を取得するステップと、
前記交差点の基準位置に対する前記車両の相対位置を逐次取得するステップと、
特定された前記交差点、前記相対位置及び前記予定通行方向に基づいて、前記推奨視線方向を取得するステップと、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、特に車両の運転者が視認すべき方向を示す推奨視線方向を取得する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、学習済みモデルを用いて、車両を運転するドライバーの運転行動を評価することが行われている。例えば、車載カメラにより撮影された画像及び自車両の位置情報の少なくとも一方を用いて運転シーンを特定し、複数の運転シーンそれぞれに対応付けられた複数のロジックのうち、特定した運転シーンのみに対応付けられた評価ロジックを実行することによって、運転行動に対する評価を導出する運転行動評価装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の運転行動評価装置では、車速や加速度等の車両の挙動に関するデータを学習用の入力データ及び批評価用の入力データとして用いることにより、運転行動の評価を行っている。しかし、入力データとして用いるのはいずれも車両の挙動に関するデータであるため、車両の挙動に表れないドライバーの運転行動は評価の対象にならない。特に交差点等における安全確認動作はドライバーの目視確認が中心であり、車両の挙動からは評価することができないという問題があった。
【0005】
また、従来行われていた運転行動評価は運転行動の事後的な評価であり、運転中にリアルタイムで運転行動を評価し、注意喚起を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、運転状況に応じた適切な視線方向をリアルタイムで取得し、ドライバーに注意喚起を行うことが可能な情報処理装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、情報処理装置であって、車両の位置情報に基づいて前記車両が進入する交差点を特定する交差点特定部と、前記交差点を通行する際の前記車両の予定通行方向を取得する予定通行方向取得部と、前記交差点の基準位置に対する前記車両の相対位置を逐次取得する相対位置情報取得部と、特定された前記交差点、前記相対位置及び前記予定通行方向に基づいて、前記相対位置において前記車両の運転者が視認すべき方向を示す推奨視線方向を取得する推奨視線方向取得部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項7に記載の発明は、車両の運転者が視認すべき方向を示す推奨視線方向を取得するための情報処理方法であって、車両の位置情報に基づいて前記車両が進入する交差点を特定するステップと、前記交差点を通行する際の前記車両の予定通行方向を取得するステップと、前記交差点の基準位置に対する前記車両の相対位置を逐次取得するステップと、特定された前記交差点、前記相対位置及び前記予定通行方向に基づいて、前記推奨視線方向を取得するステップと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の視線評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】交差点の基準位置及び視線方向の検出位置を模式的に示す図である。
【
図3】推奨視線方向取得部の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1視線モデルを用いた推奨視線方向の取得処理を示すブロック図である。
【
図5】視線モデルの第1の生成方法を示すブロック図である。
【
図6】視線モデルの第2の生成方法を示すブロック図である。
【
図7】実施例1の視線評価処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】実施例2の視線評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】実施例2の視線方向指示処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図10】視線評価装置がサーバ装置である場合の構成を示すブロック図である。
【
図11】視線方向指示装置がサーバ装置である場合の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0011】
図1は、本発明の実施例1に係る視線評価装置100の構成を示すブロック図である。本実施例では、視線評価装置100は、車両内部に搭載されている。視線評価装置100は、車両が交差点を通行する際のドライバーの視線方向を評価するための情報処理を行う情報処理装置である。
【0012】
本実施例において、ドライバーの「視線方向」とは、水平面内における視線の左右方向の振れ角を指す。換言すると、本実施例でいう「視線方向」は、垂直軸(Z軸)廻りの水平方向における視線移動の角度であり、例えば車両の進行方向を基準(0°)として左方向に〇〇°、右方向に〇〇°のように表される。
【0013】
視線評価装置100は、位置データ取得部11、交差点特定部12、予定通行方向取得部13、視線方向検出部14、相対位置情報取得部15、推奨視線方向取得部16、視線評価生成部17及び表示部18を有する。
【0014】
位置データ取得部11は、例えばGPS(Global Positioning System)センサから構成されている。位置データ情報取得部11は、視線評価装置100の現在位置、すなわち視線評価装置100を搭載する車両の現在位置を示す位置データを取得する。
【0015】
本実施例では、位置データ取得部11は、所定時間おきに車両の現在位置を示す位置データを取得する。なお、位置データ取得部11は、車両の現在位置に応じて異なる時間間隔で位置データを取得してもよい。例えば、車両がいずれの交差点からも離れた場所に位置しているときは数秒毎、車両が交差点の基準位置から所定距離範囲内に位置している場合には数十ミリ秒毎に位置データを取得してもよい。
【0016】
交差点特定部12は、位置データ取得部11が取得した位置データと、道路マップを含む地図データとに基づいて、車両が進入する交差点を特定する。例えば、交差点特定部12は、所定時間おきに取得された位置データから、車両が直近で進入することになる交差点を特定する。地図データは、例えばハードディスク等からなる記憶装置(図示せず)に格納されている。
【0017】
予定通行方向取得部13は、車両が交差点を通行する際の予定通行方向を取得する。予定通行方向とは、車両がこれから進入する交差点をどのように通行するかを示す通行態様の情報である。予定通行方向は、交差点への進入方向及び退出方向、換言すると交差点を直進するのか右左折するのかについての情報を含む。予定通行方向取得部13は、車両のウインカー情報や、車両にナビゲーション装置が搭載されている場合にはそのルート設定情報等に基づいて、予定通行方向を取得する。
【0018】
視線方向検出部14は、ドライバーの視線方向を検出する検出部である。視線方向検出部14は、例えば車両内部の運転席の前方に設けられた車内カメラ、及び車内カメラの映像に対して画像認識処理を行う画像処理装置から構成されている。視線方向検出部14は、ドライバーの顔を正面から撮影した映像(動画像)から、ドライバーの視線の方向又は顔の向きを取得して、当該取得した視線の方向または顔の向きからドライバーの視線方向を検出する。
【0019】
視線方向検出部14は、車両が交差点の基準位置から所定距離範囲内に接近してから交差点を退出するまでの間、所定時間おきにドライバーの視線方向を検出する。これにより、車両が交差点に進入する直前から交差点を退出するまでの間の複数の車両位置におけるドライバーの視線方向が検出される。
【0020】
図2は、視線方向が検出される車両位置の例を示す図である。図中のRPは交差点の基準位置を表している。例えば、矢印D1の方向に車両MVが進行し、交差点に進入して左折し、矢印D2の方向に進行する場合、
図2に示すP1~P9の車両位置におけるドライバーの視線方向が検出される。
【0021】
相対位置情報取得部15は、交差点特定部12によって特定された交差点の基準位置に対する車両の相対位置を取得する。例えば、相対位置情報取得部15は、
図2にける視線方向の検出位置P1~P9の各々について、基準位置RPに対する相対位置を取得する。ここで基準位置RPは、交差点の中心点に設定されている。ただし、基準位置は交差点の中心点に限定されるものではなく、複数の交差点の各々について任意に設定された位置であってよい。地図データには、道路マップ中の交差点毎に対応する基準位置が記憶されている。
【0022】
再び
図1を参照すると、推奨視線方向取得部16は、相対位置情報取得部15により取得された相対位置と、予定通行方向取得部13により取得された予定通行方向とに基づいて、推奨視線方向を取得する。「推奨視線方向」は、車両が交差点を通行する際にドライバーが視認すべき方向、すなわち模範的な視線方向であり、上述した「視線方向」と同様、水平面内における視線の左右方向の振れ角として表される。また、「推奨視線方向」は、ドライバーが視認すべき方向としてドライバーが向けるべき顔の向きであってもよい。
【0023】
推奨視線方向取得部16は、相対位置及び予定通行方向を入力として推奨視線方向を出力するように構成された視線モデルを用いて、推奨視線方向を取得する。推奨視線方向取得部16は、交差点毎に設けられた複数の視線モデルの中から、車両が通行する交差点に対応する1つの視線モデルを選択し、選択した視線モデルを用いて、交差点の基準位置に対する車両の相対位置毎に推奨される推奨視線方向を取得する。すなわち、推奨視線方向取得部16は、選択した視線モデルを用いて、交差点の基準位置と車両との距離に応じた推奨視線方向を取得する。なお、推奨視線方向取得部16は、車両が進行することにより、交差点の基準位置に対する相対位置が変わる毎に推奨視線方向を取得してもよいし、車両の位置が交差点の基準位置に対して所定の相対位置となった場合、すなわち、車両が交差点の基準位置に対して所定の距離に接近した場合に、車両がさらに進行するのに先立って、交差点の基準位置に対する車両の相対位置毎に推奨される推奨視線方向を一括して取得してもよい。
【0024】
図3は、推奨視線方向取得部16の構成を示すブロック図である。推奨視線方向取得部16は、第1視線モデルM-1、第2視線モデルM-2、・・・、第k視線モデルM-k(kは3以上の自然数)と、モデル選択部19と、を含む。
【0025】
第1視線モデルM-1、第2視線モデルM-2、・・・、第k視線モデルM-kは、それぞれ異なる交差点に対応して設けられた視線モデルである。モデル選択部19は、交差点特定部12により特定された交差点の情報に基づいて、第1視線モデルM-1~第k視線モデルM-kの中から1つの視線モデルを選択する。
【0026】
図4は、第1視線モデルM-1を用いた推奨視線方向の取得処理を示すブロック図である。第1視線モデルM-1には、相対位置情報取得部15により取得された相対位置、及び予定通行方向取得部13により取得された予定通行方向が入力データとして入力される。第1視線モデルM-1は、入力された相対位置及び予定通行方向を入力とした演算により、相対位置毎に推奨される推奨視線方向を出力する。
【0027】
次に、本実施例における視線モデルの生成方法について、第1視線モデルM-1の生成を例として説明する。なお、ここでは2通りの生成方法について説明する。
【0028】
図5は、第1視線モデルM-1の第1の生成方法を示すブロック図である。第1の生成方法では、まず第1視線モデルM-1に対応する交差点(以下、第1の交差点と称する)において、車両の運転に精通した熟練ドライバーの運転により、第1の交差点を車両により複数回通行させる。その際、車両が交差点を通行する際の熟練ドライバーの視線方向を逐次検出する。
【0029】
次に、第1の交差点をどのように通行するのか(すなわち、どの方向からどの方向に向かって通行するのか、直進するのか、左折するのか、右折するのか)を示す通行態様情報、熟練ドライバーの視線方向が検出された際の第1の交差点の基準位置に対する車両の相対位置、及び熟練ドライバーの視線方向を学習データとして、機械学習を行う。これにより、学習済みモデルである第1視線モデルM-1が生成される。
【0030】
図6は、第1視線モデルM-1の第2の生成方法を示すブロック図である。第2の生成方法では、例えば視線評価装置100の内部又は外部に設けられたシミュレーション実行部SPが、交差点の情報と、当該交差点を通行する際の複数の通行態様の各々について定められた安全確認ルールに基づいてシミュレーションを行い、車両が交差点を通行する際のドライバーの模範的な視線方向を算出する。
【0031】
シミュレーション実行部SPは、各種交差点を通行する際の複数の通行態様の各々について定められた安全確認ルールを人工知能に学習させたAIドライバーを含む。このAIドライバーは、車両が交差点を通行する際の状況に応じて適切な安全確認動作を行うように設定がなされている。
【0032】
シミュレーション実行部SPは、第1の交差点の道路マップに基づく形状や第1の交差点の実際の画像を含む交差点情報、及び第1の交差点をどのように通行するのかを示す通行態様情報が入力されることで、交差点情報に基づいて生成した第1の交差点の仮想環境を、AIドライバーにシミュレーション走行させ、通行態様情報に従って第1の交差点を通行する際の、安全確認のために推奨される視線方向である模範視線方向を、第1の交差点の基準位置に対する車両の相対位置と対応付けて出力する。
【0033】
次に、シミュレーション実行部SPから出力された、第1の交差点についての通行態様情報、車両相対位置、および模範視線方向を関連付けて記憶させることで、第1の交差点についての相対位置及び予定通行方向が入力されると、相対位置毎に推奨される推奨視線方向を出力する第1視線モデルM-1が生成される。
【0034】
このようなシミュレーションに基づく視線モデルの生成方法によれば、熟練ドライバー等による運転走行を前提としないため、仮にその交差点が新規の交差点(例えば、新たに開通した道路の交差点)である場合であっても、推奨視線方向を取得するための視線モデルを生成することが可能となる。
【0035】
再び
図1を参照すると、視線評価生成部17は、推奨視線方向取得部16により取得された推奨視線方向と視線方向検出部14により検出された視線方向とに基づいて、ドライバーの視線方向の評価を示す視線評価を生成する。例えば、視線評価生成部17は、交差点の基準位置に対する車両の相対位置が所定の位置関係となるたびに(言い換えれば、交差点の基準位置から車両までの距離が所定距離となるたびに)、その時点で視線方向検出部14により検出されたドライバーの実際の視線方向と、推奨視線方向取得部16により出力された当該相対位置に対応する推奨視線方向とを比較し、実際の視線方向と推奨視線方向の角度のずれが所定の閾値を超えているか否かを判定する。または視線評価生成部17は、視線方向検出部14により検出されたドライバーの実際の視線方向と推奨視線方向取得部16により出力された推奨視線方向とが略一致したタイミングにおける、相対位置のずれが所定の閾値を超えているか否かを判定してもよい。ずれが閾値を超えていない場合、視線評価生成部17は、ドライバーの視線方向に問題がないことを示すプラス評価(例えば、“〇”)を視線評価として生成する。一方、ずれが閾値を超えている場合、視線評価生成部17は、ドライバーの視線方向に問題があることを示すマイナス評価(例えば、“×”)を視線評価として生成する。
【0036】
表示部18は、液晶表示装置等の表示装置から構成され、車両内部の運転席の前方、例えばインスツルメントパネルに設けられている。表示部18は、視線評価生成部17により生成された視線評価を画面に表示する。例えば、表示部18は、視線評価がプラス評価である場合には“〇”、視線評価がマイナス評価である場合には“×”を画面に表示する。これにより、視線評価生成部17によって生成された視線評価がドライバーに報知される。
【0037】
次に、本実施例の視線評価装置100が実行する視線評価処理の処理動作について説明する。
【0038】
図7は、視線評価処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。まず、位置データ取得部11は、車両の現在位置を示す位置データを取得する(STEP101)。
【0039】
交差点特定部12は、位置データ取得部11により取得された位置データに基づいて、車両が直近で進入することになる交差点を特定する(STEP102)。
【0040】
予定通行方向取得部13は、ナビゲーション装置のルート設定情報等に基づいて、車両の予定通行方向を取得する(STEP103)。
【0041】
視線方向検出部14は、ドライバーの視線方向を逐次検出する(STEP104)。
【0042】
推奨視線方向取得部16は、STEP102で特定された交差点に対応する視線モデルを選択し、選択した視線モデルを用いて、視線方向が検出された際の交差点の基準位置に対する車両の相対位置と、予定通行方向取得部13により取得された予定通行方向と、を入力として推奨視線方向を出力させることにより、推奨視線方向を取得する(STEP105)。
【0043】
視線評価生成部17は、STEP104で検出された視線方向とSTEP105で取得された推奨視線方向とを比較し、比較結果に基づいて視線評価を生成する(STEP106)。
【0044】
表示部18は、STEP106で生成された視線評価を画面に表示する(STEP107)。
【0045】
なお、車両が交差点の基準位置から所定距離範囲内に進入してから交差点を退出するまでの間、位置データ取得部11による位置データの取得は所定時間おきに行われ、これに応じてSTEP101~107までの処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0046】
以上のように、本実施例の視線評価装置100は、交差点を通行する車両のドライバーの視線方向を検出するとともに、その通行態様に応じた適切な視線方向を推奨視線方向として取得する。そして、推奨視線方向に基づいてドライバーの視線方向の評価を示す視線評価を生成する。本実施例の視線評価装置100によれば、車両が交差点等を進行する際の運転者の視線方向をリアルタイムで評価することができる。
【0047】
また、本実施例の視線評価装置100は、生成した視線評価をドライバーにリアルタイムで報知する。報知される視線評価は、プラスの評価であってもマイナスの評価であっても、ドライバーに安全確認を促す注意喚起となる。したがって、本実施例の視線評価装置100によれば、ドライバーに対し、運転状況に応じた適切な目視確認を促す注意喚起を行うことができる。
【実施例0048】
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1とは異なり、本実施例の情報処理装置はドライバーに視認すべき方向を指示する視線方向指示装置として構成されている。なお、実施例2の説明において、実施例1における説明及び図面と実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0049】
図8は、本発明の実施例2に係る視線方向指示装置200の構成を示すブロック図である。視線方向指示装置200は、車両内部に搭載され、車両が交差点を通行する際の視線方向をドライバーに指示するための情報処理を行う情報処理装置である。
【0050】
視線方向指示装置200は、位置データ取得部11、交差点特定部12、予定通行方向取得部13、相対位置情報取得部15、推奨視線方向取得部16、表示部18及び視線方向指示部21を有する。
【0051】
本実施例の相対位置情報取得部15は、位置データ取得部11によって取得された所定時間おきの車両の位置データの各々について、交差点の基準位置に対する相対位置を取得する。
【0052】
視線方向指示部21は、推奨視線方向取得部16が取得した、交差点の基準位置に対する車両の相対位置毎に推奨される推奨視線方向に基づいて、視線方向を指示する視線方向指示を生成する。例えば、車両が交差点を左折する場合、交差点の基準位置に対する車両の相対位置が移動する毎に、右方向にα°視線を向けた後、左方向にβ°視線を向けることなどを指示する視線方向指示が生成される。
【0053】
本実施例の表示部18は、視線方向指示部21によって生成された視線方向指示を画面に表示する。表示部18は、ヘッドアップディスプレイであってもよい。例えば、車両が交差点の手前で左折しようとしている場合、表示部18は、右方向にα°視線を向けた後、左方向にβ°視線を向けるように指示する視線方向指示を矢印で画面に表示する。これにより、視線方向指示部21によって生成された視線方向指示がドライバーに報知される。
【0054】
次に、本実施例の視線方向指示装置200が実行する視線方向指示処理の処理動作について説明する。
【0055】
図9は、視線方向指示処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0056】
位置データ取得部11は、車両の現在位置を示す位置データを取得する(STEP101)。
【0057】
交差点特定部12は、位置データ取得部11により取得された位置データに基づいて、車両が直近で進入することになる交差点を特定する(STEP102)。
【0058】
予定通行方向取得部13は、ナビゲーション装置のルート設定情報等に基づいて、車両の予定通行方向を取得する(STEP103)。
【0059】
推奨視線方向取得部16は、STEP102で特定された交差点に対応する視線モデルを選択し、選択した視線モデルを用いて、位置データが取得された車両の交差点の基準位置に対する相対位置と、予定通行方向取得部13により取得された予定通行方向と、を入力として推奨視線方向を出力させることにより、推奨視線方向を取得する(STEP105)。
【0060】
視線方向指示部21は、STEP105で取得された推奨視線方向に基づいて視線方向指示を生成し、表示部18に表示させる(STEP206)。
【0061】
なお、車両が交差点の基準位置から所定距離範囲内に進入してから交差点を退出するまでの間、位置データ取得部11による位置データの取得は所定時間おきに行われ、これに応じてSTEP101~206までの処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0062】
以上のように、本実施例の視線方向指示装置200は、交差点を通行する車両を運転する際の適切な視線方向を推奨視線方向として取得し、それを視線方向指示としてドライバーにリアルタイムで報知する。
【0063】
本実施例の視線方向指示装置200によれば、実施例1の視線評価装置100と同様、運転状況に応じた適切な視線方向をリアルタイムで取得し、ドライバーに注意喚起を行うことができる。また、本実施例では、推奨視線方向に基づく視線方向の指示が報知されるため、運転中のドライバーに対してより直接的な注意喚起を行うことが可能となる。
【0064】
なお、本発明は上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記実施例では、視線評価装置又は視線方向指示装置が車両に搭載された情報処理装置から構成されている場合を例として説明した。しかし、これらの装置は所謂車載装置ではなく、例えばスマートフォン等の携帯型端末から構成されていても良い。例えば、携帯型端末が車両の内部にある状態でアプリケーションプログラムを実行し、上記実施例で説明した各機能ブロックを形成することにより、当該携帯型端末を視線評価装置又は視線方向指示装置として動作させることが可能である。
【0065】
また、上記実施例では、視線評価装置又は視線方向指示装置が車両に搭載された単一の情報処理装置から構成されている場合を例として説明した。しかし、これらの装置を車両の外部(車両から離間した位置)に設けられたサーバ装置として構成し、車両内の端末装置との間で情報の送受信を行うことにより上記の視線評価処理や視線方向指示処理の動作を実現するように構成されていてもよい。
【0066】
図10は、実施例1の視線評価装置が車両外部に設けられたサーバ装置300によって構成されている場合を例として、その構成を示すブロック図である。
【0067】
サーバ装置300は、各々が車両に搭載された装置である端末装置40-1~40-n(nは自然数)と無線通信接続されている。サーバ装置300は、通信部31、交差点特定部32、視線方向取得部33、相対位置情報取得部34、推奨視線方向取得部35及び視線評価生成部36を有する。
【0068】
通信部31は、端末装置40-1~40-nとの間で情報の送受信を行う。例えば、通信部31は、各端末装置において取得された車両の位置データを受信する。また、通信部31は、各端末装置からドライバーの顔の映像(動画像)を受信する。また、通信部31は、各端末装置から車両の予定通行方向を受信する。また、通信部31は、視線評価生成部36が生成した視線評価を対応する端末装置に送信する。
【0069】
交差点特定部32は、通信部31が端末装置から受信した位置データと、道路マップを含む地図データとに基づいて、当該端末装置を搭載する車両が進入する交差点を特定する。
【0070】
視線方向取得部33は、通信部31が受信したドライバーの顔の映像に対して画像認識処理を行い、ドライバーの視線方向を検出する。
【0071】
相対位置情報取得部34は、通信部31が端末装置から受信した位置データに基づいて、交差点特定部32によって特定された交差点の基準位置に対する車両の相対位置を取得する。
【0072】
推奨視線方向取得部35は、相対位置情報取得部34が取得した相対位置、及び通信部31が受信した予定通行方向を入力として、視線モデルを用いて推奨視線方向を取得する。
【0073】
視線評価生成部36は、推奨視線方向取得部35によって取得された推奨視線方向と視線方向取得部33によって取得された視線方向とに基づいて、ドライバーの視線方向の評価を示す視線評価を生成する。
【0074】
端末装置40-1~40-nは、車両に搭載された装置であり、例えばナビゲーション装置から構成されている。端末装置40-1~40-nは同様の構成を有するため、ここでは端末装置40としてその構成について説明する。
【0075】
端末装置40は、通信部41、位置データ取得部42、予定通行方向取得部43、顔画像取得部44及び表示部45を有する。
【0076】
通信部41は、サーバ装置300との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部41は、位置データ取得部42が取得した位置データをサーバ装置300に送信する。また、通信部41は、顔画像取得部44が取得したドライバーの顔の映像(動画像)をサーバ装置300に送信する。また、通信部41は、予定通行方向取得部43が取得した予定通行方向をサーバ装置300に送信する。また、通信部41は、サーバ装置300から視線評価の情報を受信する。
【0077】
位置データ取得部42は、例えばGPSセンサから構成されている。位置データ情報取得部11は、端末装置40の現在位置、すなわち端末装置40を搭載する車両の現在位置を示す位置データを取得する。
【0078】
予定通行方向取得部43は、ナビのルート設定情報や車両のウインカー情報に基づいて、車両が交差点を通行する際の予定通行方向を取得する。
【0079】
顔画像取得部44は、例えば車両内部の運転席の前方に設けられた車内カメラから構成されている。顔画像取得部44は、ドライバーの顔を正面から撮影することにより、ドライバーの顔の映像を取得する。
【0080】
表示部45は、液晶表示装置等の表示装置から構成され、通信部41がサーバ装置300から受信した視線評価を画面に表示する。
【0081】
一方、
図11は、実施例2の視線方向指示装置が車両外部に設けられたサーバ装置500によって構成されている場合を例として、その構成を示すブロック図である。
【0082】
サーバ装置500は、通信部31、交差点特定部32、相対位置情報取得部34、推奨視線方向取得部35及び視線方向指示生成部37を有する。
【0083】
サーバ装置500の視線方向指示部37は、推奨視線方向取得部35が取得した推奨視線方向に基づいて、視線方向指示を生成する。通信部31は、視線方向指示部37が生成した視線方向指示を、端末装置40に送信する。
【0084】
端末装置40の通信部41は、サーバ装置500から視線方向指示を受信する。表示部45は、通信部41が受信した視線方向指示を画面に表示する。
【0085】
このように、視線評価装置又は視線方向指示装置をサーバ装置として構成し、各車両に搭載された端末装置との通信に基づいて位置データの取得や視線方向の取得を行うことにより、車両に搭載される装置の構成を小規模に抑えつつ、運転状況に応じた適切な視線方向を取得してドライバーに注意喚起を行うことが可能となる。
【0086】
なお、上記実施例では、第1視線モデルM-1~第k視線モデルM-kがそれぞれ交差点毎に設けられている場合を例として説明した。しかし、これとは異なり、各交差点に対する車両の進行方向(交差点への進入方向、右左折、直進等)を表すシチュエーション毎に異なる視線モデルが設けられていてもよい。このようにシチュエーション毎に視線モデルが設けられている場合、推奨視線方向取得部16のモデル選択部19は、交差点特定部12が特定した交差点の情報に加えて、位置データ取得部11が取得した位置データ及び予定通行方向取得部13が取得した予定通行方向に基づいて、複数の視線モデルの中から視線モデルを選択する。
【0087】
また、交差点及び車両の進行方向の他に、信号機の表示色、時間帯、天候、道路の混雑度等に応じてそれぞれ異なる視線モデルが用意されていてもよい。
【0088】
また、上記の各実施例では、ドライバーの視線方向として、水平面内における視線の左右方向の振れ角を例に説明したが、視線方向の表し方はこれに限られず、例えば水平面内における視線の左右方向の振れ角に加えて、水平面に対する上下方向と組み合わせてもよい。
【0089】
また、推奨視線方向の取得方法は、上記の各実施例で説明した方法に限定されない。例えば、複数の相対位置と推奨視線方向とを対応付けて格納するテーブルを安全確認ルールに基づいて作成しておき、当該テーブルを推奨視線方向取得部16が参照することにより、推奨視線方向を取得する構成であってもよい。
【0090】
また、上記各実施例では、視線評価又は視線方向指示をドライバーに報知する報知部として、液晶表示装置等からなる表示部が設けられている場合を例として説明した。しかし、当該報知部の構成はこれに限られず、視線評価又は視線方向指示をドライバーに報知する報知部としての機能を有するものであれば良い。例えば、報知部は音声出力手段から構成されていてもよく、上記実施例のような表示部と音声出力手段等との組み合わせによって構成されていても良い。
【0091】
また、上記実施例では、位置データ取得部11が取得した位置データに基づいて、交差点特定部12が交差点を特定する場合を例として説明した。しかし、交差点特定部12は、位置データに加えて、車両に設けられた車外カメラの映像を用いて交差点を特定してもよい。