(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005766
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子機器、電力伝送システム、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20230111BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20230111BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20230111BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230111BHJP
【FI】
H02J50/20
H04B7/06 152
H02J50/40
H02J50/80
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107936
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 克敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中舎 朋之
(57)【要約】
【課題】受電側装置に特殊な構成を用いることなく、情報と電力の同時無線伝送を可能にする。
【解決手段】例えば、送電装置10は、複数のアンテナ11と、空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数のアンテナ11から送信される電力伝送用信号について、電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部16と、送信ウェイトを用いて、電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信可能な送信部13と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信可能な送信部と、
を備える電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記制御部は、電力伝送用信号と隣接する異なる周波数の情報通信用信号について、前記電力伝送用受電装置の前記第1アンテナ及び前記情報信号送受信機の前記第2アンテナにビームを向けるよう前記送信ウェイトを制御する、電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器において、
前記制御部は、
前記情報信号送受信機から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから前記周波数成分のチャネル特性を推定する第1推定部と、
前記電力伝送用受電装置から送信される規定信号を受信し、前記周波数成分のチャネル特性を推定する第2推定部と、
前記第1推定部及び前記第2推定部の推定結果に基づく電力伝送用受信応答ベクトルと通信受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを生成する生成部と、
を備える、電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記送信部は、前記電力伝送用信号に電力伝送用ウェイトを乗算し、前記情報通信用信号に信号用ウェイト乗算し、これらを足し合わせて前記送信信号を送信する、電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記制御部は、電力伝送用ウェイトの振幅が所定のレベル以下のアンテナに情報通信用ウェイトを重畳させる、電子機器。
【請求項6】
電子機器と、
前記電子機器から受信した電波によって給電される受電ユニットと、
を備え、
前記電子機器は、
複数のアンテナと、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信可能な送信部と、
を備え、
前記受電ユニットは、
前記電子機器からの前記電力伝送用信号を受信する前記第1アンテナと、
前記第1アンテナと所定距離離れ、前記電力伝送用信号とは異なる周波数帯域を占める前記情報通信用信号を受信する前記第2アンテナと、
を備える電力伝送システム。
【請求項7】
複数のアンテナを備える電子機器が、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信部に送信させること、
を含む制御方法。
【請求項8】
複数のアンテナを備える電子機器に、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信部に送信させること、
を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子機器、電力伝送システム、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、周波数の異なる複数の高周波信号を合成した信号を給電用信号とし、受電手段に供給すべき電力量に応じて、高周波信号の波数を設定すると共に、高周波信号を位相変調し、電力と情報の同時伝送を実現する非接触給電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力と情報の同時伝送を実現するにあたって、電力供給に必要な無線電力は、通信に必要な電力に比べて非常に大きくなる。このため、従来技術のように、広い帯域を電力供給に使う場合、周波数が隣接する他のシステムへの影響が懸念される。これを回避するために、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)のデジタル変調方式を用いて情報を通信し、OFDM信号において使われていないヌルサブキャリアに電力伝送用信号を挿入することが考えられる。しかし、この場合においては、受電側装置で、電力用信号と情報用信号を分離するなど、特殊な構成が必要になり、消費電力やコストの面で不利になる可能性がある。そこで、広帯域に渡って電力供給用信号を送信したり、受電側装置に特殊な構成を用いたりすることなく、情報と電力の同時無線伝送する技術に改善する余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様の1つに係る電子機器は、複数のアンテナと、空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信可能な送信部と、を備える。
【0006】
態様の1つに係る電力伝送システムは、電子機器と、前記電子機器から受信した電波によって給電される受電ユニットと、を備え、前記電子機器は、複数のアンテナと、空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信可能な送信部と、を備え、前記受電ユニットは、前記電子機器からの前記電力伝送用信号を受信する前記第1アンテナと、前記第1アンテナと所定距離離れ、前記電力伝送用信号とは異なる周波数帯域を占める前記情報通信用信号を受信する前記第2アンテナと、を備える。
【0007】
態様の1つに係る制御方法は、複数のアンテナを備える電子機器が、空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信部に送信させること、を含む。
【0008】
態様の1つに係る制御プログラムは、複数のアンテナを備える電子機器に、空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信部に送信させること、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力と情報の同時伝送を実現するワイヤレス電力伝送システムの概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る送電装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る送電装置の機能ブロックを説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るシステムのシーケンスの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの他の構成例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る送電装置及びOFDM信号送信機の機能ブロックを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願に係る電子機器、電力伝送システム、制御方法及び制御プログラム等を実施するための複数の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下の説明において、同様の構成要素について同一の符号を付すことがある。さらに、重複する説明は省略することがある。
【0011】
図1は、実施形態に係る電力と情報の同時伝送を実現するワイヤレス電力伝送システムの概要を説明するための図である。
図1に示すシステム1は、例えば、マイクロ波伝送型(空間伝送型)のワイヤレス電力伝送が可能なワイヤレス電力伝送システムを含む。ワイヤレス電力伝送は、例えば、ケーブルやプラグを用いることなく、電力を伝送することが可能な仕組みである。マイクロ波伝送型のシステム1は、エネルギー伝送として電波(マイクロ波)を使用するため、周波数を狭帯域かつ無変調波を使用する。システム1は、例えば、複数の周波数帯で電力を伝送することもできる。複数の周波数帯は、例えば、日本では、920MHz、2.4GHz、5.7GHz等を含む。本実施形態では、システム1は、状況に適した給電効率の向上及び安全性の確保を両立することを可能とする。システム1は、例えば、宇宙太陽光発電等に適用することができる。
【0012】
図1に示す一例では、システム1は、送電装置10と、受電ユニット20と、を備える。送電装置10及び受電ユニット20は、例えば、空間多重技術により、通信用信号210及び電力用信号220の通信を行う。空間多重技術は、例えば、空間分割多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)を含む。SDMAは、同一の通信路を複数の通信主体で混信することなく共用するための多元接続(多重アクセス)技術である。SDMAは、空間的に伝送路を分割して複数の主体で同時に通信する方式である。システム1は、空間多重化により、送電装置10が受電ユニット20への通信用信号210及び電力用信号220の同時送信を行う。システム1は、電力用信号220を含むビーム200Aを、電力伝送対象の受電装置22に接続されたアンテナ21Aに向け、電力用信号220を含まないビーム200Bを、送受信機25に接続されたアンテナ21Bに向ける。
図1において、送電装置10は、電子機器の一例である。通信用信号210及び電力用信号220は、情報通信用信号及び電力伝送用信号の一例である。
【0013】
送電装置10は、複数のアンテナ11を備える。送電装置10は、例えば、多入力多出力(MIMO:Multiple-Input Multiple-Output)のアンテナ技術を用いることができる。MIMOでは、通信回路の各端部のアンテナ素子が組み合わされて、エラーを最小限に抑え、データ速度を最適にする。送電装置10は、システム1において、ワイヤレスにより電力を送電する装置である。送電装置10は、給電電波を受電ユニット20に送電可能な装置である。送電装置10は、電力用信号220と通信用信号210を隣接する異なる周波数として電波を放射する。
【0014】
受電ユニット20は、システム1において、送電装置10から給電電波を受信して電力を得る被給電装置である。受電ユニット20は、例えば、IoT(Internet of Things)センサ、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナル・コンピュータ、ドローン、電気自動車、電動自転車、ゲーム機等の各種装置を含む。本実施形態では、受電ユニット20は、IoTセンサである場合について説明する。
【0015】
受電ユニット20は、例えば、アンテナ21A,21Bと、受電装置22と、バッテリ23と、センサ部24と、送受信機25と、を備える。受電ユニット20は、アンテナ21Aとアンテナ21Bとの間が所定距離だけ離れた状態で、別体のアンテナとして装備されている。所定距離は、例えば、アンテナ21A,21Bが受信対象ではない信号の影響を受けない距離、送電装置10の指向性制御の範囲に応じた距離等を含む。
【0016】
アンテナ21Aは、受電装置22と電気的に接続されている。アンテナ21Aは、例えば、受電用のアンテナである。アンテナ21Aは、例えば、規定信号を含む電波を放射し、送電装置10からの給電用信号を含む電波を受信する。アンテナ21Aは、受信した電波を受電装置22に供給する。
【0017】
アンテナ21Bは、送受信機25と電気的に接続されている。アンテナ21Bは、例えば、情報通信用アンテナである。アンテナ21Bは、例えば、送受信機25の制御に応じて、センサ部24で検出した情報を含むセンサデータを送信する。アンテナ21Bは、送電装置10から受信した信号を送受信機25に供給する。
【0018】
受電装置22は、送電装置10との間で定められた規定信号を送信する。規定信号は、例えば、ビーコン、パイロット信号等を含む。受電装置22は、例えば、予め設定された送信周期で規定信号を送信できる。受電装置22は、規定信号を含む電波を放射することで、規定信号を送信できる。受電装置22は、例えば、所定のタイミングで規定信号を送電装置10に送信できる。所定のタイミングは、例えば、一定時間が経過したタイミング、指定されたタイミング等を含む。
【0019】
受電装置22は、バッテリ23と電気的に接続されている。受電装置22は、例えば、無線受電装置を有する。受電装置22は、アンテナ21Aで受信した電波を直流電流に変換し、この直流電流を利用してバッテリ23を充電する制御を行う。受電装置22は、例えば、公知である整流回路を用いて、電波を直流電流に変換する。
【0020】
バッテリ23は、充電可能な電池を含む。バッテリ23は、例えば、Qi(ワイヤレス給電の国際標準規格)に対応したバッテリを含む。バッテリ23は、蓄電された電力を受電装置22において電力を必要とする各部等に供給できる。バッテリ23は、センサ部24及び送受信機25と電気的に接続されており、センサ部24及び送受信機25等に電力を供給する。
【0021】
センサ部24は、複数のセンサを含む。例えば、複数のセンサは、加速度センサ、方位センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含む。センサ部24は、測定対象の状態、変化等を検出できる。センサ部24は、送受信機25と電気的に接続されている。センサ部24は、検出結果を示す情報を送受信機25に供給する。
【0022】
送受信機25は、OFDMデジタル変調方式を用いて、OFDM信号を送受信する。送受信機25は、周波数帯域内に複数の異なる周波数の搬送波(サブキャリア)を形成し、それらを同時に送受信することで多重化を行う。
【0023】
送受信機25は、例えば、無線通信装置と制御装置とを有する。送受信機25は、センサ部24が検出した検出結果を示すOFDM信号を含む電波を、アンテナ21Bを介して放射する。送受信機25は、アンテナ21Bを介して受信した信号に基づいて、データ処理、センシングデータ取得、データ管理等の制御を実行する。
【0024】
以上、本実施形態に係る受電ユニット20の機能構成例について説明した。なお、
図1を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る受電ユニット20の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る受電ユニット20の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0025】
本実施形態では、システム1は、送電装置10が複数のアンテナ11のアンテナ指向性を制御することで、情報と電力の同時無線伝送を実現する。例えば、OFDM信号は、中心周波数がヌルサブキャリアと呼ばれ、情報通信用信号として利用しない。システム1は、使われていないヌルサブキャリアに電力伝送用信号を挿入した方式を用いる。システム1は、受電ユニット20の情報通信用のアンテナ21Bにおいて、電力用信号220を逆相合成するように制御(ヌルステアリング)する。システム1は、受電ユニット20の電力伝送用のアンテナ21Aにおいて、電力用信号220が同相合成されるようにアンテナ指向性を制御(ビームフォーミング)する。送電装置10は、通信用信号210の中心周波数付近に電力用信号220を重畳させた信号を、受電装置22に送信する。送電装置10は、通信用信号210の中心周波数付近をヌルにした信号を、送受信機25に送信する。これにより、システム1は、情報通信用としては広く普及した安価な無線LANの送受信回路をそのまま使用することが可能になる。
【0026】
システム1は、送電装置10からは通信用信号210と電力用信号220を重畳した信号を送信するが、電力用信号220が逆相合成されるのは通信相手の情報通信用のアンテナ21Bに限られる。このため、システム1は、送電装置10からの信号を他の受信装置で受け取っても情報を復調できないため、情報の秘匿・盗聴防止の効果もある。
【0027】
図2は、実施形態に係る送電装置10の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、送電装置10は、複数のアンテナ11と、送信信号生成部12と、送信部13と、受信部14と、記憶部15と、制御部16と、を備える。制御部16は、送信信号生成部12、送信部13、受信部14、記憶部15等と電気的に接続されている。本実施形態では、送電装置10は、複数のアンテナ11の数が4本である場合について説明するが、複数のアンテナ11の数はこれに限定されず、2本以上であればよい。
【0028】
複数のアンテナ11は、デジタル信号処理により指向性制御(ビームフォーミング)が可能な構成になっている。複数のアンテナ11は、アンテナアレイとなっている。複数のアンテナ11は、例えば、それぞれが同じ電波を放射し、それぞれの位相と電力強度を調整することで、特定の方向では電波を強め、別の方向では打ち消し合って弱めることが可能な構成になっている。複数のアンテナ11は、送信信号200を含む電波を放射し、受電装置22からの信号を含む電波を受信する。複数のアンテナ11は、受信した信号を受信部14に供給する。複数のアンテナ11は、電波の放射が最大となるビームの方向がメインローブである。
【0029】
送信信号生成部12は、受電装置22に送電する電流を電波に変換した電力用信号220を生成する。送信信号生成部12は、電力源から電流を伝送周波数の電波に変換して送信信号200を生成する。電力源は、例えば、商用電源、直流電源、バッテリ等を含む。送信信号生成部12は、送受信機25に送信する通信用信号210を生成する。送信信号生成部12は、生成した送信信号となる通信用信号210、電力用信号220を送信部13に供給する。
【0030】
送信部13は、複数のアンテナ11と電気的に接続されている。送信部13は、通信用信号210、給電用信号220等を含む電波を複数のアンテナ11から放射する。送信部13は、複数のアンテナ11で形成可能なビーム200A,200Bに対応したウェイトを適用することで、電波を複数のアンテナ11から特定の方向に放射させる。送信部13は、制御部16が指示したウェイトを複数のアンテナ11に適用する。
【0031】
受信部14は、複数のアンテナ11と電気的に接続されている。受信部14は、アンテナ11を介して受信した受電装置22からの電波から受信信号を抽出する。受信信号は、例えば、アンテナ21Aを介して受電装置22から送信された上述の規定信号、アンテナ21Bを介して送受信機25から送信された通信用信号等を含む。受信部14は、抽出した受信信号等を制御部16等に供給する。
【0032】
記憶部15は、プログラム及びデータを記憶できる。記憶部15は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的な記憶媒体を含んでよい。記憶部15は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部15は、RAMなどの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
【0033】
記憶部15は、制御プログラム15A、ベクトルデータ15B等を記憶できる。制御プログラム15Aは、送電装置10の各種動作に関する処理を実現するための機能をそれぞれ提供できる。制御プログラム15Aは、ワイヤレス電力伝送、通信制御等に関する各機能を提供できる。ベクトルデータ15Bは、例えば、受信応答ベクトル等を示すデータを含む。受信応答ベクトルは、受信信号から推定した送受信アンテナ間のチャネル特性を示す。受信応答ベクトルは、例えば、アンテナ本数分のチャネル特性を示す。受信応答ベクトルは、例えば、複数のアンテナ11ごとの振幅、位相等を合成したベクトルを含む。受信応答ベクトルは、例えば、電力用と情報通信用とに対応した受信応答ベクトルを含む。ベクトルデータ15Bは、例えば、受信信号に基づいて推定した受電装置22及び送受信機25の受信応答ベクトルを示す情報を含む。
【0034】
制御部16は、1又は複数の演算装置を含む。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System-on-a-Chip)、MCU(Micro Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびコプロセッサを含むが、これらに限定されない。制御部16は、制御プログラム15Aを演算装置に実行させることにより、送電装置10の各種動作に関する処理を実現する。制御部16は、制御プログラム15Aにより提供される機能の少なくとも1部を専用のIC(Integrated Circuit)により実現してもよい。
【0035】
制御部16は、制御プログラム15Aを実行することで、アンテナ指向性制御を行う。制御部16は、例えば、空間多重接続する受電装置22及び送受信機25に、複数のアンテナ11から送信される電力用信号220について、受電装置22のアンテナ21A(第1アンテナ)にはビーム200Aを向け、送受信機25のアンテナ21B(第2アンテナ)にはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する。制御部16は、電力用信号220と隣接する異なる周波数で送信される通信用信号210について、受電装置22のアンテナ21Aと送受信機25のアンテナ21Bの両方またはどちらか一方にビームを向けるよう送信ウェイトを制御する。
【0036】
制御部16は、例えば、第1推定部16A、第2推定部16B、生成部16C等の機能部を有する。制御部16は、制御プログラム15Aを実行することで、第1推定部16A、第2推定部16B、生成部16C等の各機能部を実現する。
【0037】
第1推定部16Aは、送受信機25から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから周波数成分のチャネル特性を推定する。第1推定部16Aは、例えば、特開2002-43995号公報に開示されているように周知のアルゴリズムを用いて受信応答ベクトルを推定する。第1推定部16Aは、アンテナ11の本数分のチャネル特性を情報通信用の受信応答ベクトルとしてベクトルデータ15Bに反映する。
【0038】
第2推定部16Bは、受電装置22から送信される規定信号を受信し、周波数成分のチャネル特性を推定する。第2推定部16Bは、規定信号の中心周波数のチャネル特定を推定する。規定信号は、無変調波でもよいし、OFDM信号などの変調波でもよい。OFDM信号などの変調波の場合、第2推定部16Bは、例えば、補間などにより中心周波数のチャネル特性を推定する。第2推定部16Bは、例えば、上述した周知のアルゴリズムを用いて受信応答ベクトルを推定する。第2推定部16Bは、アンテナ11の本数分のチャネル特性を電力伝送用の受信応答ベクトルとしてベクトルデータ15Bに保存する。
【0039】
生成部16Cは、第1推定部16A及び第2推定部16Bの推定結果に基づく電力伝送用の受信応答ベクトルと通信用受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを生成する。ウェイトの生成方法は、例えば、MIMOで用いられるZF(Zero-Forcing)アルゴリズム、MMSE(Minimum Mean Square Error)アルゴリズム等を用いることができる。生成部16Cは、電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを電力用信号220及び通信用信号210に適用する。これにより、送信部13は、電力用信号220に電力伝送用ウェイトを乗算し、通信用信号210に信号用ウェイトを乗算し、これらを足し合わせて送信する。
【0040】
生成部16Cによる送信ウェイトの生成の一例を説明する。生成部16Cは、受電装置22からの規定信号の受信応答ベクトルを式(1)に示すベクトルh
1とする。
【数1】
【0041】
生成部16Cは、送受信機25からの信号の受信応答ベクトルを式(2)に示すベクトルh
2とする。
【数2】
【0042】
生成部16Cは、ベクトルh
1及びベクトルh
2の伝搬チャネル行列Hを式(3)に示すように定義する。式(3)におけるKは、アンテナ素子の数である。
【数3】
【0043】
生成部16Cは、電力伝送用の送信ウェイトを式(4)とし、情報通信用の送信ウェイトを式(5)として、それぞれの送信ウェイトを生成する。
α1*(H*HH+σ2*I)-1*z1 ・・・(4)
α2*z2 ・・・(5)
ここで、α1,α2は、送信電力調整量である。HHは、伝搬チャネル行列Hの複素共役転置行列である。z1,z2は、h1,h2の複素共役ベクトルである。σ2は、雑音電力である。Iは、単位行列である。
【0044】
以上、本実施形態に係る送電装置10の機能構成例について説明した。なお、
図2を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る送電装置10の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る送電装置10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0045】
図3は、実施形態に係る送電装置10の機能ブロックを説明するための図である。
図3に示す一例では、送電装置10は、4本のアンテナ11の空間多重通信において、受電装置22及び送受信機25が接続する2多重に対応している。
【0046】
図3に示すように、送電装置10は、複数のアンテナ11で受信した信号が受信回路140を介して受信処理部10Aに供給され、アダプティブアレイ処理により、受電装置22からの受信信号及び送受信機25からの受信信号をそれぞれ抽出する。送電装置10は、受電装置22及び送受信機25に対する送信信号を送信処理部10Bに供給し、送信指向性が制御された後、合成されて複数のアンテナ11によって送信される。送電装置10は、複数のアンテナ11と、送信回路130及び受信回路140との間の接続が、スイッチSWにより、選択的に切り替え可能に構成されている。
【0047】
送電装置10は、複数のアンテナ11で受信した信号がスイッチSW及び受信回路140を介して受信処理部10Aに供給される。送電装置10は、受電装置22と送受信機25の両方またはどちらか一方からの受信信号を、複数の乗算器に供給するとともに、受信ウェイト生成部16D及び推定部160に供給する。推定部160は、上述した第1推定部16A及び第2推定部16Bを含む。
【0048】
送電装置10は、受信ウェイト生成部16Dがそれぞれのアンテナ11での受信信号に対するウェイトを出力し、複数の乗算器に供給する。推定部160で使用される受信応答ベクトル推定アルゴリズムは、周知であるMIMOで用いられるアルゴリズム等を用いることができる。
【0049】
送電装置10は、複数のアンテナ11で受信した信号と、対応するウェイトとを複数の乗算器のそれぞれで乗算し、その結果を加算器で加算する。送電装置10は、加算器からのアレイ出力を受信信号として受信処理部から出力するとともに、受信ウェイト生成部16Dに供給する。送電装置10は、既知の参照信号を受信ウェイト生成部16D及び推定部160に供給する。送電装置10は、加算器からのアレイ出力と既知の参照信号との誤差の2乗を減少させるように受信ウェイトベクトルをリアルタイムで収束させる。これにより、送電装置10は、特定の受電装置22及び送受信機25からの受信指向性を収束させ、受電装置22及び送受信機25からの受信信号を抽出することができる。
【0050】
送電装置10は、推定部160が複数のアンテナ11で受信した受信信号と、既知の参照信号とに応じて、受電装置22及び送受信機25の受信応答ベクトルをそれぞれ算出し、送信処理部10Bの生成部16Cに供給する。送電装置10は、電力伝送用の受信応答ベクトルと通信用受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを生成する。送電装置10は、複数のアンテナ11ごとに、電力用信号220に電力伝送用ウェイトを乗算し、通信用信号210に信号用ウェイトを乗算し、これらを足し合わせた送信信号を、送信回路130を介して複数のアンテナ11から送信する。
【0051】
送電装置10は、受電装置22及び送受信機25に対応するアンテナ組み合わせの成分からなる受信応答ベクトルを生成部16Cに供給し、受信応答ベクトルに基づいて送信ウェイトベクトルを生成する。送電装置10は、複数の乗算器によって電力用信号220及び通信用信号210に送信ウェイトベクトルを構成する送信ウェイトを乗算し、これらを加算器で足し合わせた送信信号を、送信回路130を介して複数のアンテナ11から送信する。
【0052】
図4は、実施形態に係るシステム1のシーケンスの一例を示す図である。
図4に示す一例では、システム1は、送電装置10と受電ユニット20とが電波伝搬環境に設けられている。
【0053】
受電ユニット20の送受信機25は、OFDM信号を送電装置に送信する(ステップS11)。例えば、送受信機25は、センサ部24が検出した検出結果を示す情報通信用のOFDM信号を含む電波をアンテナ21Bから放射することで、OFDM信号を送電装置10に送信する。
【0054】
送電装置10は、複数のアンテナ11を介してOFDM信号を受信すると、情報通信用の受信応答ベクトルを推定する(ステップS12)。OFDM信号の中心周波数は、ヌルサブキャリアであるため、送電装置10が推定したチャネル特性には当該チャネル特性は含まれていない。そこで、送電装置10は、隣接する他のサブキャリアから内挿補間などにより中心周波数のチャネル特性を推定する。送電装置10は、アンテナ11の本数分のチャネル特性を情報通信用の受信応答ベクトルとして記憶部15のベクトルデータ15Bに反映する。
【0055】
受電ユニット20の受電装置22は、規定信号を送電装置10に送信する(ステップS13)。例えば、受電装置22は、送信周期に応じて規定信号を含む電波をアンテナ21Aから放出することで、規定信号を送電装置10に送信する。
【0056】
送電装置10は、複数のアンテナ11を介して規定信号を受信すると、電力伝送用の受信応答ベクトルを推定する(ステップS14)。送電装置10は、規定信号が無変調波の場合は規定信号から、規定信号がOFDM信号の場合は規定信号の隣接する他のサブキャリアから内挿補間などにより、中心周波数のチャネル特性を推定する。送電装置10は、アンテナ11の本数分のチャネル特性を電力伝送用の受信応答ベクトルとしてベクトルデータ15Bに反映する。
【0057】
送電装置10は、電力伝送用信号のビームを受電装置22に向かわせ、送受信機25にヌルを向かわせるように送信ウェイトを生成する(ステップS15)。送電装置10は、ベクトルデータ15Bの電力伝送用の受信応答ベクトルと通信用受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを生成する。無線通信における空間多重技術の送信ウェイト生成は、複数のユーザからの信号を同時に受信することを前提に、受信時のウェイトをそのままコピーして使用することがある。しかし、実施形態に係るシステム1では、電力伝送用の規定信号と送受信機25からの無線信号が同タイミングで送信される保証はない。このため、送電装置10は、受信応答ベクトルを用いて電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを生成する。
【0058】
送電装置10は、生成した送信ウェイトに基づいて、電力用信号220及び通信用信号210を送信する(ステップS16)。送電装置10は、電力用信号220に電力伝送用ウェイトを乗算し、通信用信号210に信号用ウェイトを乗算し、これらを足し合わせて送信する。これにより、送電装置10は、通信用信号210及び電力用信号220を含む電波を複数のアンテナ11から受電装置22に向けて放射するとともに、複数のアンテナ11から送受信機25に接続されたアンテナ21Bに向けては、電力用信号220は逆相合成されるよう指向性を制御する。
【0059】
受電装置22は、受信した電力用信号220に基づいてバッテリ23を充電する(ステップS17)。例えば、受電装置22は、アンテナ21Aで受信した電波を直流電流に変換し、この直流電流を利用してバッテリ23を充電する。
【0060】
送受信機25は、受信した通信用信号210に基づく処理を実行する(ステップS18)。例えば、送受信機25は、通信制御、センサ部24のセンシング、データ管理等の処理を実行する。
【0061】
システム1は、送電装置10が通信用信号210の電波に対し受電装置22に接続されたアンテナ21Aにヌルを向ける必要がなく、通信用信号210が電力用信号220に比べて受信レベルが低くても通信可能であるため、通信用信号210の電波は必ずしも送受信機25にビームを向ける必要がない。このため、システム1の送電装置10は、電力伝送用の送信ウェイトを優先し、電力伝送への影響が少なくなるように情報通信用の送信ウェイトを生成してもよい。
【0062】
電力伝送用の送信ウェイトは、ヌルを向ける指向性制御のためにアンテナ11ごとに、ウェイトの振幅が異なるのが一般的であり、ウェイトの振幅の小さいアンテナ11のみに情報通信用を重畳させる。これにより、送電装置10は、電力伝送用信号と情報通信用信号を重畳した場合においても、送信アンプの性能に起因する瞬時最大出力の制限の影響を受けずに電力と情報の同時送信が可能になる。
【0063】
送電装置10は、空間多重接続する受電装置22及び送受信機25に、複数のアンテナ11から送信される電力用信号220について、受電装置22のアンテナ21Aにはビームを向け、送受信機25のアンテナ21Bにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御することができる。これにより、送電装置10は、受電装置22への電力供給と、送受信機25との通信を同時に実現することができる。その結果、送電装置10は、電力用信号220と通信用信号210とを分ける特殊な構成を受電装置22に用いることなく、情報と電力の同時無線伝送を実現することができる。
【0064】
送電装置10は、空間多重接続する受電装置22及び送受信機25に、複数のアンテナ11から送信される電力用信号220について、送受信機25のアンテナ21Bにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御することができる。これにより、システム1は、送受信機25として安価な無線LAN(Local Area Network)等を用いることができるので、受電側の構成を簡単化することができる。
【0065】
送電装置10は、送受信機25から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから該周波数成分のチャネル特性を推定する。送電装置10は、受電装置22から送信される規定信号を受信し、該周波数成分のチャネル特性を推定する。送電装置10は、それらの推定結果に基づく電力伝送用の受信応答ベクトルと通信用の受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを生成する。これにより、送電装置10は、受電装置22及び送受信機25からの電波のチャネル特性に応じた送信ウェイトを生成するので、電力用信号220について送受信機25のアンテナ21Bにはヌルを精度よく向けることができる。
【0066】
送電装置10は、電力伝送用の送信ウェイトの振幅が所定のレベル以下のアンテナ11に情報通信用の送信ウェイトを重畳させることができる。電力用信号220と通信用信号210を重畳させ送信する場合、電力用信号220の送信ウェイトの振幅と、通信用信号210の送信ウェイトの振幅とさらに、通信用信号210は変調波であるために通信用信号210の瞬時電力を考慮する必要がある。所定のレベルは、例えば、通信用信号210の送信ウェイト及び通信用信号210の瞬時最大電力を考慮しても送信アンプの特性上性能劣化を生じないかを判定するための閾値(レベル)を含む。送電装置10は、通信用信号210と電力用信号220を重畳しても、送信アンプの性能に起因する瞬時最大出力の制限の影響を受けずに電力と情報の同時送信を可能にすることができる。
【0067】
上述したシステム1では、送電装置10は、OFDM信号を受信する際の受信ウェイトやOFDM信号を送信する際の送信ウェイトは、全サブキャリア共通となっているが、サブキャリアごと異なるウェイトを用いてもよい。
【0068】
上述したシステム1では、送電装置10と受電ユニット20が一対一である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、システム1は、送電装置10と受電ユニット20が一対複数であってもよい。
【0069】
上述したシステム1では、送電装置10が情報通信用のOFDM信号の受信と電力伝送用と同一のアンテナ11を用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、システム1は、送電側において、情報通信用のOFDM信号の送信を別アンテナとしてもよい。
【0070】
図5は、実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの他の構成例を説明するための図である。
図6は、実施形態に係る送電装置10及びOFDM信号送信機30の機能ブロックを説明するための図である。
【0071】
図5に示すシステム1Aは、送電装置10と、受電ユニット20と、OFDM信号送信機30と、を有する。送電装置10とOFDM信号送信機30とは、電気的に接続されている。システム1Aは、送電装置10が受電ユニット20へ電力用信号220をアンテナ11から放射するが、このとき送電装置10は、ビーム200Aを、電力伝送対象の受電装置22に接続されたアンテナ21Aに向けると同時に、送受信機25に接続されたアンテナ21Bにはヌルを向ける。OFDM信号送信機30は、通信用信号210をアンテナ31から放射し、受電ユニット20の送受信機25へ通信用信号210を送る。これにより、送電装置10は、電力用信号220と通信用信号210を使って受電ユニット20との間で、電力と情報の同時伝送を実現する。
【0072】
図6に示すように、送電装置10は、第1推定部16A及び第2推定部16Bを含む推定部160が複数のアンテナ11で受信した受信信号と、既知の参照信号とに応じて、受電装置22及び送受信機25の受信応答ベクトルをそれぞれ算出し、送信処理部10Bの生成部16Cに供給する。送電装置10は、電力伝送用の受信応答ベクトルと通信用受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトを生成する。送電装置10は、複数のアンテナ11ごとに、電力用信号220に電力伝送用ウェイトを乗算した送信信号を、送信回路130を介して複数のアンテナ11から送信する。送電装置10は、通信用信号210の送信をOFDM信号送信機30に接続されたアンテナ31を介して送信する。
【0073】
OFDM信号送信機30は、アンテナ31と電気的に接続され、OFDM送信部32を備える。OFDM送信部32は、送電装置10からの通信用信号210を含む電波をアンテナ31から放出する。OFDM信号送信機30は、送電装置10の信号送信と自機の信号を同期させてもよいし、同期させなくてもよい。
【0074】
以上により、システム1Aは、送電装置10において通信用信号210の送信ウェイトを考慮する必要がないため、これによる送信アンプの性能に起因する瞬時最大出力の制限の影響を受けずに電力と情報の同時送信を可能にすることができる。
【0075】
無線通信での空間多重技術においては、電力用信号220を電力伝送用のアンテナ21Aのみに、通信用信号210を情報通信用のアンテナ21Bのみに届くように、指向性を制御するが、上述した本実施形態、システム1及びシステム1Aでは、これに限定されない。送電装置10は、電力用信号220が送受信機25に漏れ込まないように制御するが、通信用信号210が受電装置22に漏れ込ませてもよい。すなわち、本実施形態における空間多重技術は、無線通信での空間多重技術とは異なる技術である。
【0076】
上述した実施形態では、システム1およびシステム1Aは、送電装置10が電子機器である場合について説明したが、これに限定されない。電子機器は、例えば、給電用電波を放射可能な給電装置を制御する制御装置、給電装置に内蔵されたコンピュータ等で実現してもよい。また、システム1およびシステム1Aは、ワイヤレス電力伝送システムである場合について説明したが、これに限定されない。例えば、システム1およびシステム1Aは、電波伝搬環境で無線通信を行うシステム等に適用することができる。
【0077】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0078】
[付記1]
複数のアンテナと、
電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用送信信号を送信可能な送信部と、
を備える電子機器において、
前記制御部は、
前記情報信号送受信機から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから前記周波数成分のチャネル特性を推定する第1推定部と、
前記電力伝送用受電装置から送信される規定信号を受信し、前記周波数成分のチャネル特性を推定する第2推定部と、
前記第1推定部及び前記第2推定部の推定結果に基づく電力伝送用受信応答ベクトルと通信受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトを生成する生成部と、
を備える、電子機器。
[付記2]
電子機器と、
前記電子機器から受信した電波によって給電される受電ユニットと、
を備え、
前記電子機器は、
複数のアンテナと、
電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用送信信号を送信可能な送信部と、
を備える電子機器において、
前記制御部は、
前記情報信号送受信機から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから前記周波数成分のチャネル特性を推定する第1推定部と、
前記電力伝送用受電装置から送信される規定信号を受信し、前記周波数成分のチャネル特性を推定する第2推定部と、
前記第1推定部及び前記第2推定部の推定結果に基づく電力伝送用受信応答ベクトルと通信受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトを生成する生成部と、
を備え、
前記受電ユニットは、
前記電子機器からの前記電力伝送用信号を受信する前記第1アンテナと、
前記第1アンテナと所定距離離れ、前記電力伝送用信号とは異なる周波数帯域を占める前記情報通信用信号を受信する前記第2アンテナと、
を備える電力伝送システム。
[付記3]
複数のアンテナを備える電子機器が、
電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用送信信号を送信部に送信させること、
前記情報信号送受信機から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから前記周波数成分のチャネル特性を推定すること、
前記電力伝送用受電装置から送信される規定信号を受信し、前記周波数成分のチャネル特性を推定すること、
前記推定結果に基づく電力伝送用受信応答ベクトルと通信受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトを生成すること、
を含む制御方法。
[付記4]
複数のアンテナを備える電子機器が、
電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用送信信号を送信部に送信させること、
前記情報信号送受信機から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから前記周波数成分のチャネル特性を推定すること、
前記電力伝送用受電装置から送信される規定信号を受信し、前記周波数成分のチャネル特性を推定すること、
前記推定結果に基づく電力伝送用受信応答ベクトルと通信受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトを生成すること、
を実行させる制御プログラム。
【符号の説明】
【0079】
1 システム
10 送電装置
11 アンテナ
12 送信信号生成部
13 送信部
14 受信部
15 記憶部
15A 制御プログラム
15B ベクトルデータ
16 制御部
16A 第1推定部
16B 第2推定部
16C 生成部
20 受電ユニット
21A,21B アンテナ
22 受電装置
23 バッテリ
24 センサ部
25 送受信機
200A,200B ビーム
210 通信用信号
220 電力用信号
【手続補正書】
【提出日】2022-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信可能な送信部と、
を備え、
前記制御部は、電力伝送用信号と隣接する異なる周波数の情報通信用信号について、前記電力伝送用受電装置の前記第1アンテナ及び前記情報信号送受信機の前記第2アンテナにビームを向けるよう前記送信ウェイトを制御する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記制御部は、
前記情報信号送受信機から送信される周波数分割多重信号を受信し、帯域で使用していない周波数成分に隣接するサブキャリアから前記周波数成分のチャネル特性を推定する第1推定部と、
前記電力伝送用受電装置から送信される規定信号を受信し、前記周波数成分のチャネル特性を推定する第2推定部と、
前記第1推定部及び前記第2推定部の推定結果に基づく電力伝送用受信応答ベクトルと通信受信応答ベクトルから電力伝送用ウェイトと情報通信用ウェイトを生成する生成部と、
を備える、電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記送信部は、前記電力伝送用信号に電力伝送用ウェイトを乗算し、前記情報通信用信号に信号用ウェイト乗算し、これらを足し合わせて前記送信信号を送信する、電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記制御部は、電力伝送用ウェイトの振幅が所定のレベル以下のアンテナに情報通信用ウェイトを重畳させる、電子機器。
【請求項5】
電子機器と、
前記電子機器から受信した電波によって給電される受電ユニットと、
を備え、
前記電子機器は、
複数のアンテナと、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御する制御部と、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信可能な送信部と、
を備え、
前記受電ユニットは、
前記電子機器からの前記電力伝送用信号を受信する前記第1アンテナと、
前記第1アンテナと所定距離離れ、前記電力伝送用信号とは異なる周波数帯域を占める前記情報通信用信号を受信する前記第2アンテナと、
を備える電力伝送システム。
【請求項6】
複数のアンテナを備える電子機器が、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信部に送信させること、
前記電力伝送用信号と隣接する異なる周波数の情報通信用信号について、前記電力伝送用受電装置の前記第1アンテナ及び前記情報信号送受信機の前記第2アンテナにビームを向けるよう前記送信ウェイトを制御すること、
を含む制御方法。
【請求項7】
複数のアンテナを備える電子機器に、
空間多重接続する電力伝送用受電装置及び情報信号送受信機に、複数の前記アンテナから送信される電力伝送用信号について、前記電力伝送用受電装置の第1アンテナにはビームを向け、前記情報信号送受信機の第2アンテナにはヌルを向けるよう送信ウェイトを制御すること、
前記送信ウェイトを用いて、前記電力伝送用信号と情報通信用信号と重畳した送信信号を送信部に送信させること、
前記電力伝送用信号と隣接する異なる周波数の情報通信用信号について、前記電力伝送用受電装置の前記第1アンテナ及び前記情報信号送受信機の前記第2アンテナにビームを向けるよう前記送信ウェイトを制御すること、
を実行させる制御プログラム。