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特開2023-57662保持装置、移載システム、保持方法、制御装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057662
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】保持装置、移載システム、保持方法、制御装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167254
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小柳 佳介
(72)【発明者】
【氏名】安藤 富雄
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS13
3C707CX01
3C707DS02
3C707ES03
3C707ET08
3C707HS14
3C707HS27
3C707KS37
(57)【要約】
【課題】移載先のピッチに合わせて複数のワークを移載するための保持装置、移載システム、保持方法、制御装置及びコンピュータプログラムを提供すること。
【解決手段】第1ワークを保持可能な第1保持部と、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置において、第2ワークを保持可能な第2保持部と、前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更可能な第1ピッチ可変機構とを備えるロボット用の保持装置である。また、保持装置と、保持装置が取り付けられる多関節ロボットアームと、制御装置とを備える移載システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ワークを保持可能な第1保持部と、
前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置において、第2ワークを保持可能な第2保持部と、
前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更可能な第1ピッチ可変機構と
を備えるロボット用の保持装置。
【請求項2】
前記第2保持部は、前記第1ワークから第1方向に前記第1ピッチ離間した位置において、前記第2ワークを保持可能に構成されており、
前記第1方向と交差する第2方向において、前記第1ワークから第3ピッチ離間した位置において、第3ワークを保持可能な第3保持部と、
前記第1方向において、前記第3ワークから第4ピッチ離間した位置において、第4ワークを保持可能な第4保持部と、
前記第3ワークと前記第4ワークとのピッチを前記第4ピッチから第5ピッチに変更可能な第2ピッチ可変機構と
を更に備える請求項1に記載のロボット用の保持装置。
【請求項3】
前記第1ピッチ可変機構は、前記第1保持部から前記第2保持部に向かう第1方向に延伸し、前記第1保持部又は前記第2保持部に接続する第1ロッドと、前記第1ロッドを移動させることにより前記第1保持部と前記第2保持部とのピッチを変更可能な第1ピッチ変更手段とを備え、
前記第2ピッチ可変機構は、前記第1方向に延伸し、前記第3保持部又は前記第4保持部に接続する第2ロッドと、前記第2ロッドを移動させることにより前記第3保持部と前記第4保持部とのピッチを変更可能な第2ピッチ変更手段とを備える請求項2に記載のロボット用の保持装置。
【請求項4】
前記第1ロッドと前記第2ロッドとにそれぞれ接続する回転ロッドと、
前記回転ロッドを前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向を軸方向として回転可能な回転手段を更に備える請求項3に記載のロボット用の保持装置。
【請求項5】
前記第1ワーク、前記第1方向において前記第1ワークから前記第1ピッチ離間した位置に載置された前記第2ワーク、前記第2方向において前記第1ワークから前記第3ピッチ離間した位置に載置された前記第3ワーク、及び、前記第1方向において前記第3ワークから前記第1ピッチ離間した位置に載置された前記第4ワークを、前記第1保持部、前記第2保持部、前記第3保持部及び前記第4保持部を用いてそれぞれ保持した状態で、前記第1ピッチ変更手段、前記第2ピッチ変更手段及び前記回転手段を用いることにより、所定方向において前記第1ワーク、前記第2ワーク、前記第3ワーク及び前記第4ワークを整列可能に構成される請求項4に記載のロボット用の保持装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の前記ロボット用の保持装置と、前記ロボット用の保持装置に取り付けられるロボットアームとを備える移載システム。
【請求項7】
前記ロボットアームは、前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第1ワークから前記第2ピッチ離間した位置において、前記第2保持部により保持される前記第2ワークを同時に加工機に移載可能に構成された請求項6に記載の移載システム。
【請求項8】
前記ロボットアームに取り付けられた前記保持装置の前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第2保持部により保持される前記第2ワークを外観検査するための検査装置を更に備える請求項6又は7に記載の移載システム。
【請求項9】
前記ロボットアームに取り付けられた前記保持装置の前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第2保持部により保持される前記第2ワークとに付着する不要物を除去するための除去装置を更に備える請求項6乃至8の何れか一項に記載の移載システム。
【請求項10】
前記ロボットアームに取り付けられた前記保持装置の前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第2保持部により保持される前記第2ワークとを冷却する冷却装置を更に備える請求項6乃至9の何れか一項に記載の移載システム。
【請求項11】
前記ロボットアームは、柔軟性を有する駆動機構を備え、
前記ロボットアームは、前記第1保持部により保持された前記第1ワークを、移載先の対象物の第1領域の表面に接触させながら移動させると共に、前記第1ワークから前記第2ピッチ離間した位置において前記第2保持部により保持された前記第2ワークを、移載先の前記対象物の第2領域の表面に接触させながら移動させるように構成された請求項6乃至10の何れか一項に記載の移載システム。
【請求項12】
ロボットアームに取り付けられたロボット用の保持装置の第1保持部により、第1ワークを保持し、
前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第2保持部により、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置の第2ワークを保持し、
前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更する
保持方法。
【請求項13】
第1ワークを保持可能な第1保持部と、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置において、第2ワークを保持可能な第2保持部と、前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更可能な第1ピッチ可変機構とを備えるロボット用の保持装置の制御装置であって、
ロボットアームに取り付けられたロボット用の保持装置の第1保持部により、第1ワークを保持させ、
前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第2保持部により、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置の前記第2ワークを保持させ、
前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから前記第2ピッチに変更させるように前記保持装置を制御する制御装置。
【請求項14】
ロボット用の保持装置を制御する制御装置に制御命令を生成させるためのコンピュータプログラムであって、
ロボットアームに取り付けられたロボット用の保持装置の第1保持部により、第1ワークを保持させ、
前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第2保持部により、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置の第2ワークを保持させ、
前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更させる制御命令を生成させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置、移載システム、保持方法、制御装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機や、ダイキャスト成形機等の加工機で複数個の製品(以下、製品、部品、半製品等の物を「ワーク」と呼ぶ場合がある。)を同時に加工(以下、ワークの形状、構造、材料、その他の構成を変更することを「加工」と呼ぶ場合がある。また「加工」に用いられる装置又は部品を「加工機」と呼ぶ場合がある。)することがある。このように同時に加工された複数のワークを、その後の加工工程に付したり、他のワークに組み付けたり、パレットやベルトコンベヤー上に載置したり、箱等に梱包したりするためには、ワークを元の位置から他の位置に移動する必要がある(以下、ワークを元の位置から他の位置に移動することを「移載」と呼ぶ場合がある。)。
【0003】
ワークを移載するための方法として、ロボットアームを用いてワークを取り出した後、人間が所望の位置にワークを移載することや、カートナーやパレタイザーと呼ばれるロボットアームを備えた移載システムが知られている。
【0004】
特許文献1には、異なる種類のワークを保持するワーク投入システムが記載されている。このワーク投入システムは、ワークとしての金網を磁力によって保持するための磁性保持部を保持部として有する第1のハンド部と、ワークとしての中子を吸引によって保持するための吸引保持部を保持部として有する第2のハンド部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-037549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のワークを金型等から取り出すときの製品取り出しピッチ(以下、隣接するワークとワークとの間隔を「ピッチ」又は「距離」と呼ぶ場合がある。本明細書において「ピッチ」は、「距離」と読み替えてもよい。)と、取り出されたワークを移載先に載置するときの移載ピッチは、異なる場合が多い。
【0007】
例えば、複数のワークを金型から取り出すときの金型ピッチはワークを成形するためのキャビティ間の距離に基づいて定まるところ、キャビティ間の距離は射出成形等の加工製造上の都合に基づいて設計される。一方で、移送先のワーク間の移送ピッチは、例えば、省スペース化を図るために、金型ピッチよりも小さなピッチで定められたり、他の部材(例えばPCB:Print Circuit BoardやハイブリッドIC等の電子基板に加工成型後電子チップを搭載するケース等)への移載・実装・組付け等で平面的、あるいは立体的に異なる事になる。
【0008】
特許文献1のワーク投入システムは、軸線周りに回動可能なロボットアームで異なる種類のロボットハンドを切り替え可能に構成することにより、ロボットハンドに応じた異なる種類のワークの保持を可能にするシステムである。このため、複数のワークの移送に適した移載システムではない。
【0009】
そこで本発明は、移載先のピッチに合わせて複数のワークを移載するための保持装置、移載システム、保持方法、制御装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は、第1ワークを保持可能な第1保持部と、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置において、第2ワークを保持可能な第2保持部と、前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更可能な第1ピッチ可変機構とを備えるロボット用の保持装置を開示する。
【0011】
「ピッチ」とはワーク等の間の間隔のことをいう。本明細書において「ピッチ」は、「距離」と読み替えてもよい。
【0012】
「ワーク」とは、製品、部品、半製品等の物を含み、例えば、「ワーク」は、インサート成形により製造される成形品を含む。更に「ワーク」は、インサート成形に用いるインサートを含む。
【0013】
ワークを保持するための手段は、ワークに応じて様々な手段を採用することが可能であり、例えば、保持部は、電磁石等よる磁力、真空発生器等による負圧、静電気力、ファンデルワールス力等に基づいてワークを保持可能に構成されてもよいし、ワークを挟むことによりワークを把持することによりワークを保持可能に構成されてもよい。
【0014】
「第1保持部」等の保持部は、ロボットハンドを含む。
【0015】
ロボット用の保持装置は、更に、複数の保持部を備えてもよい。例えばロボット用の保持装置は、4又は5以上の保持部を備え、各保持部はそれぞれワークを保持可能に構成されてよい。
【0016】
例えばこのロボット用の保持装置は、前記第2保持部は、前記第1ワークから第1方向に前記第1ピッチ離間した位置において、前記第2ワークを保持可能に構成されており、前記第1方向と交差する第2方向において、前記第1ワークから第3ピッチ離間した位置において、第3ワークを保持可能な第3保持部と、前記第1方向において、前記第3ワークから第4ピッチ離間した位置において、第4ワークを保持可能な第4保持部とを備えてもよい。
【0017】
このロボット用の保持装置は、第1方向に離間して配置される第1ワーク及び第2ワークと、第1ワークに対して第2方向に離間して配置される第3ワーク及び第4ワークを保持可能である。
【0018】
このロボット用の保持装置は、前記第3ワークと前記第4ワークとのピッチを前記第4ピッチから第5ピッチに変更可能な第2ピッチ可変機構を備えてもよい。
【0019】
このロボット用の保持装置は、前記第1保持部を前記第1ワークに接近する第3方向に移動するための移動手段を備えてもよい。ここで第3方向は、第1方向及び第2方向に垂直な方向として規定されてよい。
【0020】
同様にこのロボット用の保持装置は、前記第1保持部又は前記第2保持部を前記第1ワーク又は第2ワークに接近する第3方向に移動するための移動手段を備えてもよい。
【0021】
ここで前記第1ピッチ可変機構は、前記第1保持部から前記第2保持部に向かう第1方向に延伸し、前記第1保持部又は前記第2保持部に接続する第1ロッドと、前記第1ロッドを移動させることにより前記第1保持部と前記第2保持部とのピッチを変更可能な第1ピッチ変更手段とを備えてよい。
【0022】
また、前記第2ピッチ可変機構は、前記第1方向に延伸し、前記第3保持部又は前記第4保持部に接続する第2ロッドと、前記第2ロッドを移動させることにより前記第3保持部と前記第4保持部とのピッチを変更可能な第2ピッチ変更手段とを備えてよい。
【0023】
ここで第1ピッチ変更手段は、例えば、第1ロッドを第1方向に移動させるための手段でよく、例えば、圧縮エアで第1ロッドを移動させるためのエアシリンダ、あるいは回転するピニオンをラックに係合(接続)することにより、又は、ラックと一体化された第1ロッドを移動させるラックアンドピニオン機構、電磁力等に基づいて第1ロッドを移動させるリニアモータ、圧電素子等を駆動することにより発生する超音波を用いて移動プレートに接続し、又は、移動プレートと一体化された第1ロッドを移動させる超音波モータ、電磁力等に基づいてプランジャに接続し、又は、プランジャと一体化された第1ロッドを移動させる電磁プランジャ等から構成されてよい。
【0024】
ここで第2ピッチ変更手段は、第1ピッチ変更手段と同様にエアシリンダ等から構成されてよい。
【0025】
前記ロボット用の保持装置は、前記第1ロッドと前記第2ロッドとにそれぞれ接続する回転ロッドと、前記回転ロッドを前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向を軸方向として回転可能な回転手段とを更に備えてもよい。
【0026】
このようなロボット用の保持装置は、前記第1ワーク、前記第1方向において前記第1ワークから前記第1ピッチ離間した位置に載置された前記第2ワーク、前記第2方向において前記第1ワークから前記第3ピッチ離間した位置に載置された前記第3ワーク、及び、前記第1方向において前記第3ワークから前記第1ピッチ離間した位置に載置された前記第4ワークを、前記第1保持部、前記第2保持部、前記第3保持部及び前記第4保持部を用いてそれぞれ保持した状態で、前記第1ピッチ変更手段、前記第2ピッチ変更手段及び前記回転手段を用いることにより、所定方向において前記第1ワーク、前記第2ワーク、前記第3ワーク及び前記第4ワークを整列可能に構成されてもよい。
【0027】
ここで前記第1ワーク、前記第2ワーク、前記第3ワーク及び前記第4ワークは、等ピッチで一方向に整列されてもよい。
【0028】
ただし、前記第1ワーク、前記第2ワーク、前記第3ワーク及び前記第4ワークは、等ピッチで整列されなくてもよい。例えば、第1ロッドに3つ以上の保持装置を設け、第2ロッドに3つ以上の保持装置を設け、回転手段により6つ以上のワークが一列に整列するようなロボット用の保持装置を設けてもよい。このような場合、第2ワークと第3ワークとの間には異なるワークが載置してもよい。
【0029】
本出願は、ワークの移載システムを開示する。このシステムは、上述されたロボット用の保持装置と、前記ロボット用の保持装置に取り付けられるロボットアームとを備える。
【0030】
前記ロボットアームは、前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第1ワークから前記第2ピッチ離間した位置において、前記第2保持部により保持される前記第2ワークを同時に加工機に移載可能に構成されてもよい。
【0031】
前記移載システムは、前記ロボットアームに取り付けられた前記保持装置の前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第2保持部により保持される前記第2ワークを外観検査するための検査装置を更に備えてよい。
【0032】
ここで検査装置は、ワークを撮像するための撮像装置を備えてよい。
【0033】
例えばロボットアームは、保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチより小さい前記第2ピッチに変更した状態で、前記検査装置の撮像装置に前記第1ワーク及び前記第2ワークを同時に撮像させるように前記第1ワーク及び前記第2ワークを移動させ、前記検査装置は、前記第1ワーク及び前記第2ワークを含む撮像データに基づいて前記第1ワークの検査及び前記第2ワークの検査をそれぞれ実行可能に構成されてもよい。
【0034】
更にロボットアームは、保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第2ピッチより大きいピッチに変更した状態で、前記第1ワーク及び前記第2ワークを移動させるように構成されてもよい。
【0035】
前記ロボットアームは、柔軟性を有する駆動機構を備えてもよい。
ここで「柔軟性」とは、弾性、粘性又は弾性及び粘性を備えていることをいう。弾性とは、応力を加えると変形し、応力を除去すると元に戻る性質をいい、弾性変形のしやすさを示す可撓性という言葉で表現される場合もある。粘性とは、流体の流動速度を一様化する応力を生じさせる性質をいう。柔軟性を備えた駆動機構は、柔軟性を付与するための、例えば、磁性流体、機械ばね、空気ばね、磁力ばね及びベーンモータの何れか一つを少なくとも備えてもよい。
【0036】
「柔軟性を有する駆動機構」は、直列弾性アクチュエータであってもよい。直列弾性アクチュエータ(Series Elastic Actuator)は、例えば、モータと、ばね等の弾性体とを備える。モータから出力されるトルクは、弾性体をして、剛性を有するリンクに伝達される。このため、ロボットアームにより部材を対象物に接触させて倣わせることを容易に実現することが可能になる。直列弾性アクチュエータが備える弾性体が弾性変形するように、部材を対象物に対して倣わせることが可能になる。
【0037】
なお、部材を対象物に対して倣わせるとは、部材を対象物に接触させながら、部材を対象物に対して相対的に移動させることをいう。相対的に移動させることは、並進移動に限られず、対象物に対して部材を相対的に回転移動させることを含む。
【0038】
前記移載システムは、前記ロボットアームに取り付けられた前記保持装置の前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第2保持部により保持される前記第2ワークとに付着する不要物を除去するための除去装置を更に備えてもよい。
【0039】
除去装置は、例えば、ドライアイスのパーティクルを噴霧してゲートやバリ等の不要物を除去するように構成されてもよい。このとき、保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチより小さい前記第2ピッチに変更した状態で、前記除去装置は、前記第1ワーク及び前記第2ワークの不要物を同時に除去可能に構成されてもよい。
【0040】
前記移載システムは、前記除去装置を保持するための第2のロボットアームを備えてもよく、更に第2のロボットアームは、柔軟性を有する駆動機構を備えてもよい。
【0041】
前記移載システムは、前記ロボットアームに取り付けられた前記保持装置の前記第1保持部により保持される前記第1ワークと、前記第2保持部により保持される前記第2ワークとを冷却する冷却装置を更に備えてもよい。
【0042】
除去装置は、例えば、圧縮空気を噴射してワークを冷却するように構成されてもよい。このとき、保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチより小さい前記第2ピッチに変更した状態で、前記冷却装置は、前記第1ワーク及び前記第2ワークを同時に冷却可能に構成されてもよい。
【0043】
前記移載システムは、前記冷却装置を保持するための第3のロボットアームを備えてもよく、更に第3のロボットアームは、柔軟性を有する駆動機構を備えてもよい。
【0044】
柔軟性を有する駆動機構を備える前記ロボットアームは、前記第1保持部により保持された前記第1ワークを、移載先の対象物の第1領域の表面に接触させながら移動させると共に、前記第1ワークから前記第2ピッチ離間した位置において前記第2保持部により保持された前記第2ワークを、移載先の前記対象物の第2領域の表面に接触させながら移動させるように構成されてもよい。
【0045】
ここで第1ワークその他のワークは、FET(Field Emission Transistor)その他の半導体素子でよく、移載先の対象物は、半導体素子のリードが挿入される複数のソケットが搭載されているPCB(Print Circuit Board)でよい。
【0046】
柔軟性を有する駆動機構を備えるロボットアームは、第1ワークである第1半導体素子の複数のリードをPCB上の第1領域に搭載される第1ソケットに当接させながら挿入すると共に第2ワークである第2半導体素子の複数のリードをPCB上の第2領域に搭載される第2ソケットに当接させながら挿入するように構成されてもよい。
【0047】
移載先の対象物は、複数の区画が設けられたプラスチック製の樹脂でもよい。柔軟性を有する駆動機構を備えるロボットアームは、第1ワークを第1区画の表面に接触させながら移動させて第1ワークを第1区画に載置すると共に、第2ワークを第2区画の表面に接触させながら移動させて第2ワークを第2区画に載置するように構成されてもよい。
【0048】
本出願は、ワークの保持方法を開示する。この方法は、ロボットアームに取り付けられたロボット用の保持装置の第1保持部により、第1ワークを保持し、前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第2保持部により、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置の第2ワークを保持し、前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更することを含む。
【0049】
本出願は、制御装置を開示する。この制御装置は、第1ワークを保持可能な第1保持部と、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置において、第2ワークを保持可能な第2保持部と、前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更可能な第1ピッチ可変機構とを備えるロボット用の保持装置の制御装置である。具体的には、ロボットアームに取り付けられたロボット用の保持装置の第1保持部により、第1ワークを保持させ、前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第2保持部により、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置の第2ワークを保持させ、前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更させるように保持装置を制御可能に構成されている。
【0050】
本出願は、ロボット用の保持装置を制御する制御装置に制御命令を生成させるためのコンピュータプログラムを開示する。このコンピュータプログラムは、ロボットアームに取り付けられたロボット用の保持装置の第1保持部により、第1ワークを保持させ、前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第2保持部により、前記第1ワークから第1ピッチ離間した位置の第2ワークを保持させ、前記ロボットアームに取り付けられた前記ロボット用の保持装置の第1ピッチ可変機構により前記第1ワークと前記第2ワークとのピッチを前記第1ピッチから第2ピッチに変更させるための制御命令を生成させる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】一実施形態に係るロボットアームの模式図である。
図2】一実施形態に係るロボットシステム(移載システム)の機能ブロック図である。
図3】一実施形態に係る保持装置の模式図である。
図4】一実施形態に係る移載方法のフローチャートである。
図5】一実施形態において複数のワークを成形するための金型の模式図である。
図6】一変形例に係る保持装置の模式図である。
図7】一変形例に係る保持装置の模式図である。
図8】一変形例に係る保持装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示を目的として記載されており、本発明をその実施形態のみに限定して解釈される目的で記載されていない。
【0053】
図1は本実施形態に係るロボットアーム20の模式図であり、図2は本実施形態に係るロボットシステム100の機能ブロック図である。同図に示されるようにロボットシステム100は、ロボットアーム20と、ロボットアーム20を制御するための制御装置10とを備えている。本実施形態に係るロボットシステム100は、金型等の移送元Oから複数の成形品(「第1ワーク」及び「第2ワーク」を含むワークの一例)を取り出して、パレットやベルトコンベア等の移載先Pに移載するための移載システムである。
【0054】
[ロボットアームの構成]
図1に示されるようにロボットアーム20は、多関節(例えば7軸)からなる垂直型の多関節ロボットアームであり、ベースBと、ベースBに接続される複数のリンクLと、複数のリンクLをそれぞれの回転軸に従って回転させるためのアクチュエータA(図2)が搭載される複数のジョイントJとを備える。
【0055】
ジョイントJに搭載されるアクチュエータAは、リンクLを回転軸に従って回転させるための回転力を付与するための部材である。本実施形態に係るアクチュエータAは、SEA(Serial Elastic Actuators)とも呼ばれる、直列弾性アクチュエータを備える知られた駆動機構から構成されており、例えば、特許第6329149号及び欧州特許第2890528号には、SEAの一例が記載されている。リンクLを回転させるためのアクチュエータAは、駆動部AA(図2)と、駆動部AAに接続される弾性体AB(図2)とから構成される。駆動部AAは、例えば、電動機であるサーボモータから構成される。弾性体ABは、例えば、機械ばねから構成される。アクチュエータAにおいて駆動部AAから出力される動力は、弾性体ABを介して出力側のリンクLに伝達し、リンクLを回転させる。
【0056】
更にアクチュエータAは、負荷の大きさを取得するためのセンサと、弾性体ABの変位量を取得するためのセンサと、サーボモータの変位量や出力軸の位置情報を取得するためのセンサを含む複数のセンサを備えている。但し、負荷の大きさを取得するセンサは、弾性体ABの変量から算出して代用することが可能である。
【0057】
負荷の大きさは、例えば、駆動部AAを構成するサーボモータに流れる電流量を取得する電流センサから取得することが、弾性体ABの弾性変位量計測センサ、歪ゲージ等を利用した力覚センサや、アクチュエータ入力軸(モータ軸)と出力軸(駆動軸)のエンコーダ信号の差分等から可能である。
【0058】
弾性体ABの変位量は、弾性体Aの両端の変位量(回転角度)を取得するために弾性体ABの両端にそれぞれ設けられた光学的センサ、弾性体ABに磁石等を取り付けこの磁石等から発生する磁場を検出する磁気センサ、又は、弾性体ABに設けられた歪センサ等から取得することが可能である。前述の通り弾性体ABの変位量及び弾性体ABの弾性定数に基づいて発生するトルクを取得することも可能となる。
【0059】
上記と同様に、サーボモータの変位量は、エンコーダ等の光学的センサや電磁気センサー(電磁誘導式や静電容量式を含む)、ホール素子等の磁気センサ、又は、歪センサ等から取得することが可能である。
【0060】
以上のような構成のアクチュエータAは、各リンクLに対応する各ジョイントJごとに、搭載されてもよい。
【0061】
複数のアクチュエータAごとにそれぞれ設けられた柔軟性を備えた駆動機構に相当する直列弾性アクチュエータによって駆動される部分の慣性、質量及び長さ、外力並びに直列弾性アクチュエータが備える弾性体である機械ばねの弾性率をパラメータとする運動方程式が成立する。このため、制御装置10は、機械ばねの弾性率及び変位量等に基づいて、インピーダンスを制御するメカニカル・コンプライアンス制御を行うように構成される。 なお、各アクチュエータAを構成する直列弾性アクチュエータは、駆動部であるサーボモータの駆動軸に接続され、動力を機械ばね等の弾性体に伝達するギヤを備えていてもよい。更に、直列弾性アクチュエータは、粘性に基づいて衝撃を緩和させるダンパ機構及び動力の伝達をスイッチするためのクラッチ機構を備えてもよい。粘性を有するダンパ機構等の粘性体を付与する場合、又は、ギヤの歯車間の摩擦等から生じる減衰を加味する場合、運動方程式には、粘性定数がパラメータとして加えられた運動方程式が成立する。
【0062】
例えば、サーボモータの駆動軸にギヤが接続され、ギヤの出力軸に弾性体を介して負荷(下流側のリンク等)が接続される直列弾性アクチュエータの場合、ギヤの出力軸に生じるトルクは、サーボモータに流れる電流及びギヤ比に比例し、このトルクが、ギヤの出力軸の角加速度に慣性を乗じた値と、ギヤの出力軸の角加速度にギヤの粘性を乗じた値と、弾性体の変位量に弾性率を乗じた値との和と等しくなる運動方程式が成立する。この運動方程式に基づいて、直列弾性アクチュエータの伝達関数を導くことにより、インピーダンスを制御するメカニカル・コンプライアンス制御が可能となる。尚、伝達関数を予め計測し、可搬重量毎に予測制御(フィードフォワード制御)する事も可能である。
【0063】
以上のような構成により、ロボットアーム20の複数のリンクLを回動させることが可能になるため、保持装置30に保持されるワークの位置及び姿勢を自由に変化させることが可能となる。なお、本開示における位置を示す情報は、合理的に必要と考えられる場合、姿勢を示す情報を含む場合がある。更にロボットアーム20は、ワーク等を画像認識するための撮像装置及び使用者と情報の授受を行うためのディスプレイを含む入出力手段を備えてもよい。更にロボットアーム20は、弾性を有さないアクチュエータによって駆動されるリンクを一部に備えてもよい。
【0064】
[保持装置の構成]
【0065】
図1に示されるように、ロボットアーム20先端のリンクL又はジョイントJには、インサート部材Wを保持するための保持装置30がリンクL又はジョイントJに対して着脱自在に取り付けられる。
【0066】
図3は、保持装置30を示す模式図である。図3(A)及び(B)にそれぞれ示されるように保持装置30は、第1ワークW1を保持するための第1保持部32Aと、第2ワークW2を保持するための第2保持部32Bと、第1保持部32A及び第2保持部32Bとのピッチを変更するためのピッチ可変機構34と、第1保持部32A及び第2保持部32Bを支持し、ピッチ可変機構34を収納するハウジング36とを備える。なお本明細書において「ピッチ」とは、例えば、図3で示されるように保持部と保持部との間隔のことをいう。「ピッチ」は、「距離」と言い換えられてもよい。
【0067】
第1保持部32Aは第1ワークW1を保持する。ワークを保持するための手段はワークの種類に適した知られた構成を搭載可能であり、例えば、電磁力、空圧、ファンデルワールス力又は静電気力を発生させてワークを保持するための手段を備えてよい。本実施形態に係る第1保持部32Aは、第1ワークW1を両側面から挟み込むことにより第1ワークW1を把持するように構成されるロボットハンドを備える。
【0068】
第2保持部32Bは第2ワークW2を保持する。第2保持部32Bは、第1保持部32Aと同様の構成を備えることが可能であるから説明を省略する。
【0069】
第1保持部32A及び第2保持部32Bは、先端のリンクL又はジョイントJに接続されたハウジング36によって移動自在に支持されている。このためロボットアームによりリンクLの位置及び姿勢を変更することにより、第1保持部及び第2保持部の相対的位置関係を維持したまま、第1保持部及び第2保持部の位置及び姿勢を変更することが可能である。
【0070】
ピッチ可変機構34は、第1保持部32Aと第2保持部32Bとのピッチを変更する。ピッチを変更するための手段は第1保持部32A等の種類に適した知られた構成を搭載可能である。本実施形態に係るピッチ可変機構34は、空圧によりピッチを変更可能に構成されており、具体的には第2保持部32B(又は第1保持部32A)に接続され、端部にピストンが設けられたピストンロッド34Aと、第1保持部32A(又は第2保持部32B)に接続され、ピストンロッド34Aのピストンを収納するエアシリンダ34Bと、エアシリンダ34B内のピストンの前方の空間及び後方の空間に空気を給排するためのポートが設けられた不図示のヘッドカバー及びロッドカバーを備える。不図示のエア供給手段を用いてエアシリンダ内のピストンの前方(後方)の空間に圧縮空気を供給し、後方(前方)の空間の空気を排気することにより、ピストン及びピストンロッド34Aを軸方向前方(又は軸方向後方)に移動させることが可能である。従ってピストンロッド34Aに接続されている第2保持部32B(又は第1保持部32A)とエアシリンダ34Bが設置される第1保持部32A(又は第2保持部32B)とのピッチを変更することが可能に構成されている。
【0071】
更にピッチ可変機構34は、ピストンロッド34Aの移動を規制して所定位置で停止させるためにピストンロッド34Aの所定位置に設けられたストッパ34Cとを備える。第2保持部32B(又は第1保持部32A)が第1保持部32A(又は第2保持部32B)に所定ピッチまで接近すると、ピストンロッド34Aに設けられたストッパ34Cがエアシリンダ34Bと接触してピストンロッド34Aの移動を規制するため第1保持部32Aと第2保持部32Bが所定ピッチよりも狭ピッチに接近することを抑制することが可能に構成されている。
【0072】
[制御装置の構成]
制御装置10(図2)は、ロボットアーム20及び保持装置を制御する。本実施形態に係る制御装置10は、ロボットアーム20を制御するための第1制御部101と、保持装置を制御するための第2制御部102とを備える。
【0073】
制御装置10の第1制御部101は、従来の位置制御ではなく、直列弾性アクチュエータを利用したメカニカル・コンプライアンス制御に基づいてロボットアーム20を制御する。
【0074】
第1制御部101は、ロボットアーム20の基準となる位置(例えば、手先位置に相当するリンクLのセンターポイント、又は、保持装置30のセンターポイント。以下、「基準位置」又は「基準部位」という。)の開始位置及びその時の姿勢を取得する開始位置取得部10Aと、目標位置及びその時の姿勢を取得する目標位置取得部10Bと、許容範囲取得部10Cと、開始位置と目標位置を結ぶ経路を取得する経路取得部10Dと、経路取得部10Dによって取得された経路に従って、各アクチュエータAの駆動部に相当するサーボモータを制御するための制御命令を取得する制御命令取得部10Eと、記憶部10Fとを備える。
【0075】
開始位置取得部10Aは、例えば、制御装置10に接続可能な教示装置(不図示)から入力された開始位置及びその時のロボットアーム20の姿勢を取得する。教示装置は、現場で実際にロボットアーム20を動かしてその時の基準位置及び姿勢を開始位置として教示するオンラインティーチングに従う教示装置でもよいし、コンピュータプログラムによって基準位置の位置及び姿勢を開始位置として教示する、テキスト型、シミュレータ型、エミュレータ型、又は、自動ティーチング型等のオフラインティーチングに従う教示装置でもよい。
【0076】
目標位置取得部10Bは、例えば、開始位置と同様に、教示装置から入力された目標位置及びその時の姿勢を取得する。目標位置取得部10Bは、複数の目標位置及びその時の姿勢を取得することが可能である。
【0077】
許容範囲取得部10Cは、基準位置の経路を基準として、ロボットアーム20の実際の基準位置が経路から離れることができる許容範囲を示す情報を取得する。例えば、ある目標位置にロボットアーム20の基準位置が到達した時の、直列弾性アクチュエータによって駆動される所定のリンクの角度がαであるとき、そのリンクの許容範囲を示す情報は、例えば、α±βという角度情報として取得される。βは、直列弾性アクチュエータの弾性体の弾性率等に基づいて、弾性変形可能な範囲として予め設定可能な角度単位の情報である。複数方向に対して柔軟性を有するために、ロボットアーム20は、複数の直列弾性アクチュエータを備えている。この場合、許容範囲取得部10Cは、直列弾性アクチュエータに駆動される複数のリンクごとに許容範囲を示す情報を取得することが可能である。
【0078】
なお、許容範囲を示す情報は、リンクの角度が変動した結果、ロボットアーム20の別の部位である基準位置が取り得る所定領域を示す位置情報であってもよい。即ち、所定のリンクの角度がα+βであるとき、βにリンクの長さを乗じた距離だけそのリンクの先端が変位するから、それに応じて、下流のロボットアーム20の部位も変位する。従って、許容範囲取得部10Cは、ロボットアーム20の他の部位を基準位置とし、この基準位置が取り得る所定領域を示す位置情報として取得してもよい。以下では、先端のリンクLによって保持されるワークのセンターポイントをロボットアーム20の基準位置とする場合を中心に説明する。許容範囲は、基準位置において少なくとも±5mm以上経路から離れることを許容するように構成されることが好ましい。
【0079】
許容範囲を示す情報は、記憶部10Fに格納されるコンピュータプログラム内において、予め、駆動機構が備える弾性又は粘性に基づく定数として定められることができる。従って、制御装置10の演算素子がコンピュータプログラムを読み出すことにより、許容範囲を示す情報が取得されるように構成されてもよい。或いは、制御装置10は、教示装置から、許容範囲を示す情報を取得してもよい。
【0080】
経路取得部10Dは、開始位置と目標位置を接続する経路(計画軌跡)を演算処理等により取得する。
【0081】
制御命令取得部10Eは、基準位置を経路に従って移動させるために各アクチュエータAの駆動部AAにそれぞれ搭載される各モータを制御するための制御命令を演算処理等により取得し、ロボットアーム20に供給する。例えば、制御命令取得部10Eは、逆運動学演算(インバースキネマティクス)により、基準位置が経路上に位置するための各モータの回転角度を算出し、これに基づいて制御命令を生成して、記憶部10Fに格納することが可能である。
【0082】
記憶部10Fは、各実施形態に示される各処理を実行するためのコンピュータプログラム(経路生成アルゴリズムを含む)及び必要なデータその他の情報を格納する。
【0083】
第2制御部102は、保持装置30を制御する。具体的には第2制御部102は、第1制御部101からの指令に基づいて第1ワークW1及び第2ワークW2を把持するように第1保持部及び第2保持部を制御可能に構成されていると共に、第1制御部101からの指令に基づいて第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチを変更するようにピッチ可変機構を制御可能に構成されている。
【0084】
以上述べた制御装置10のハードウェア構成に関し、制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサである演算素子と、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶素子と、NORフラッシュメモリ、NANDフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶素子と、これらを接続するバス等の通信手段を備えるコンピュータから構成することが可能である。不揮発性記憶素子は、非一時的(Non-transitory)に情報を記憶する記憶媒体である。揮発性記憶素子は、これらコンピュータプログラムの少なくとも一部及び演算処理結果等を一時的に記憶する。記憶部10Fは、これら記憶素子により構成される。また、記憶部10Fに格納されるコンピュータプログラムを演算素子が実行することにより、開始位置取得部10A、目標位置取得部10B、許容範囲取得部10C、経路取得部10D、制御命令取得部10E及び第2制御部102として機能する。但し、これら演算素子、不揮発性記憶素子等の少なくとも一部は、インターネット等の通信ネットワークに接続された遠隔地に設置されていてもよい。例えば、演算素子は、通信ネットワークを介して、コンピュータプログラム又は必要なデータを取得するように構成されてもよい。また制御装置10は、2又は3以上のプロセッサを演算素子として備え、第1制御部101を第1のプロセッサから構成し、第2制御部102を第2のプロセッサから構成してもよい。更に制御装置10は、複数のコンピュータプログラムを実行可能に構成され、第1制御部101による制御を第1コンピュータプログラムに基づいて実現し、第2制御部102による制御を第2コンピュータプログラムに基づいて実現してもよい。第1コンピュータプログラムは、記憶部10Fの不揮発性記憶素子に格納されてもよい。第2コンピュータプログラムは、記憶部10Fの、第1コンピュータプログラムを格納する不揮発性記憶素子とは異なる不揮発性記憶素子に格納されてもよい。
【0085】
制御装置10とロボットアーム20は、無線又は有線による通信手段によって情報の送受信が可能に構成されている。
【0086】
なお制御装置10には、ロボットシステム100に動作教示するための教示装置が接続、又は、一体的に設けられてもよい。また、教示装置は、ロボットアーム20に設けられてもよく、例えば、ディスプレイを含む入出力手段を教示装置の一部として利用してもよい。教示装置は、例えば、携帯型の教示ペンダントを備える。教示装置は、制御装置10と同様に、演算素子、揮発性記憶素子、不揮発性記憶素子を備え、更に、ディスプレイを有する表示手段及び複数の操作キー並びにレバーを有する入力手段を備えている。入力手段は、ディスプレイを押圧して入力を行うタッチパネル式の入力手段から構成されてもよい。
【0087】
ロボットシステム100は、付加的に、外観検査装置110、除去装置120及び冷却装置130の少なくとも一つを更に備えてもよい。
【0088】
[外観検査装置]
外観検査装置110は、保持装置30の第1保持部32Aにより保持される第1ワークW1及び第2保持部32Bにより保持される第2ワークW2の外観を同時に撮像するように構成された撮像部と、撮像部により取得された撮像データに基づいて第1ワークW1及び第2ワークW2の外観を検査するように構成された検査部とを備える。
【0089】
本実施形態において第1ワークW1及び第2ワークW2は、成形品(より具体的にはインサート成形品)であるから、外観検査装置110は、ロボットアーム20に取り付けられている保持装置30に保持されている2つの成形品である第1ワークW1及び第2ワークW2を同時に撮像し、基準値を超える傷やバリといった不良がないか外観検査を行う。
【0090】
ロボットアーム20は、撮像部の視野角及び焦点距離等を考慮して、第1ワークW1及び第2ワークW2の双方を撮像部により好適に撮像可能な位置に移動させる。また、保持装置30のピッチ可変機構34は、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP1からピッチP3に変更する。ここでピッチP3は、ピッチP1より小さい。このように第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP3にした状態で、撮像部は、第1ワークW1及び第2ワークW2の双方を同時に撮像するように構成されている。
【0091】
[除去装置]
除去装置120は、ロボットアームと、ロボットアームに取り付けられ、保持装置30の第1保持部32Aにより保持される第1ワークW1及び第2保持部32Bにより保持される第2ワークW2の表面に付着する不要物を除去するための工具とを備える。
【0092】
本実施形態において第1ワークW1及び第2ワークW2は、成形品(より具体的にはインサート成形品)である。除去装置120は、保持装置30に保持されている2つの成形品である第1ワークW1及び第2ワークW2に付着しているバリ等の不要物を、工具を用いて除去する。
【0093】
ここで除去装置120のロボットアームは、ロボットシステム100のロボットアーム20及び制御装置10と同一の構成を備えてもよい。その場合ロボットアームは柔軟性を有する駆動機構を備えることとなるから、工具を第1ワークW1(及び第2ワークW2)に対して倣わせること、即ち、工具を第1ワークW1に接触させながら工具を第1ワークW1(及び第2ワークW2)に対して相対的に移動させることが可能となる。このような構成により、工具と第1ワークW1(及び第2ワークW2)が接触した際に第1ワークW1(及び第2ワークW2)が傷つくことを抑制することが可能となる。なお除去装置120のロボットアームが柔軟性を有する駆動機構を備える場合、ロボットアーム20は柔軟性を発揮しない動作モードで第1ワークW1及び第2ワークW2を保持するように構成されてもよい。
【0094】
ロボットアームに取り付けられる工具は、例えば、ドライアイスパウダーを噴射するノズルでもよい。その場合ロボットアームは柔軟性を有する駆動機構を備えるから、冷却装置130のノズルがワークに接触したときにワークが傷つくことを抑制することが可能となる。ノズルは、固体であるドライアイスのパウダー(微粒子)を噴射可能に構成されるから、酸素濃度の低い不活性雰囲気下で気化熱を利用した第1ワークW1及び第2ワークW2の冷却が可能になると共に第1ワークW1及び第2ワークW2の表面に付着する不要物を除去することが可能となる。
【0095】
除去工程において、保持装置30のピッチ可変機構34は、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP1からピッチP1より大きいピッチP4に変更してもよい。このように第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP4にした状態で、除去装置120は、第1ワークW1(又は第2ワークW2)の表面に付着している不要物を除去することにより第2ワークW2(又は第1ワークW1)が邪魔になって不要物をうまく除去できないことや工具が第2ワークW2(又は第1ワークW1)に干渉する可能性を低減することが可能となる。
【0096】
除去工程において、反対に保持装置30のピッチ可変機構34は、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP1からピッチP1よりもピッチP5に変更してもよい。このように第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP5にした状態で、除去装置120は、第1ワークW1及び第2ワークW2の表面にドライアイスパウダーを噴射することにより、効率的に第1ワークW1及び第2ワークW2の双方を冷却することが可能となる。
【0097】
以上のようにピッチ可変機構34を用いてピッチを変更させながら除去工程を実行することにより、効率的に不要物を除去することが可能となる。
【0098】
なお上記構成に替えて除去装置120のロボットアームは、柔軟性を有さない通常のロボットアームから構成されてもよい。そのような構成によっても、ロボットアーム20は柔軟性を発揮する動作モードで第1ワークW1及び第2ワークW2を保持することにより、第1ワークW1(及び第2ワークW2)が傷つくことを抑制することが可能となる。
【0099】
[冷却装置]
冷却装置130は、ロボットアームと、ロボットアームに取り付けられ圧縮空気を噴射するノズルと、ワークの温度を検出する温度センサとを備える。ロボットアームは、ロボットシステム100のロボットアーム20及び制御装置10と同一の構成を備えてもよい。その場合ロボットアームは柔軟性を有する駆動機構を備えるから、冷却装置130のノズルがワークに接触したときにワークが傷つくことを抑制することが可能となる。ノズルは、圧縮空気を噴射可能に構成されるから、第1ワークW1及び第2ワークW2の冷却が可能になると共に第1ワークW1及び第2ワークW2の表面に付着する不要物を除去することが可能となる。
【0100】
上述したのと同様に保持装置30のピッチ可変機構34は、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP1からピッチP1よりも小さいピッチP5に変更してもよい。このように第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP5にした状態(接触する場合を含む)で、冷却装置130は、第1ワークW1及び第2ワークW2の表面に圧縮空気を噴射することにより、効率的に第1ワークW1及び第2ワークW2の双方を冷却することが可能となる。
【0101】
[ワーク移載方法]
以下本実施形態に係るワークの移載方法について説明する。上述したように本実施形態におけるワークは半製品であるインサート成形品である。移載システムは、インサート成形された成形品である複数のワークを取り出した後、ピッチを変更した上、移載先であるパレット上にワークを載置する。
【0102】
図4は、本実施形態に係るワークの移載方法を示すフローチャートである。また、図5は、本実施形態で利用される竪型射出成形機の下型である金型M(移動元の一例であり、かつ、「加工機」の一例でもある。)の模式図である。同図に示されるように金型Mには複数のキャビティが設けられているため、第1ワークW1及び第2ワークW2を含む複数の成形品が同時に成形される。ここで第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチは第1ピッチP1である。第1ピッチP1を小さくすると取り個数が多くなる一方で、成形品の寸法、重量及び外観等の品質のばらつきが大きくなってしまう。従ってワークが例えば精密部品又は電子部品の場合、第1ピッチP1は相対的に大きく設定されることが多い。
【0103】
金型Mによる成形が終了すると、ワークの取り出しが開始される。
【0104】
まず第2制御部102は、第1ピッチ離間する第1ワークW1と第2ワークW2との中心間距離PC1と、第1保持部32Aと第2保持部32Bとの中心間距離が一致するようにピッチ可変機構34を制御する(ステップS41)。
【0105】
一方で第1制御部101はロボットアーム20を制御して、図3(A)に示されるように、第1ワークW1の上方に第1保持部32Aが位置し、第2ワークW2の上方に第2保持部32Bが位置するようにリンクLを駆動する(ステップS42)。なおステップS41及びステップ42は、同時に実行されてもよいし、順番が前後しても(ステップS42を先に実行しても)よい。
【0106】
次いで第2制御部102により第1保持部32A及び第2保持部32Bのロボットハンドを開かせた状態で第1制御部101は、第1保持部32A及び第2保持部32Bを紙面下方に移動させて第1ワークW1及び第2ワークW2にそれぞれ接近させる。その後第2制御部102は、第1保持部32A及び第2保持部32Bのロボットハンドを閉じさせることにより、第1保持部32A及び第2保持部32Bにそれぞれ第1ワークW1及び第2ワークW2を把持(保持)させる(ステップS43)。ここで第1保持部32A及び第2保持部32Bのロボットハンドを同時に閉じることにより、第1ワークW1及び第2ワークW2の把持を同時に行わせてもよい。第1保持部32A及び第2保持部32Bによって保持されたとき、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチは、第1ピッチP1である。
【0107】
次いでワークの外観検査工程、付着物の除去工程及び冷却工程が実行される。但しこれら各工程の全て又は一部は、実行されなくてもよい。
【0108】
外観検査工程が実行される場合、第1制御部101はロボットアーム20を制御して、第1ワークW1及び第2ワークW2の双方を外観検査装置110の撮像部により好適に撮像可能な位置に移動させる。次いで第2制御部102はピッチ可変機構34を制御して、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP1からピッチP1より小さいピッチP3に変更させてよい。このように小さいピッチに変更することにより、撮像部は、第1ワークW1及び第2ワークW2の双方を同時に撮像することが可能となる。次いで撮像部は第1ワークW1及び第2ワークW2を撮像し、検査部は撮像部により取得された撮像データに基づいて第1ワークW1及び第2ワークW2の外観を検査することにより、外観検査工程が実行される(ステップS44)。
【0109】
付着物の除去工程が実行される場合、第1制御部101はロボットアーム20を制御して、第1ワークW1及び第2ワークW2を除去装置120による除去可能な位置に移動させる。次いで第2制御部102はピッチ可変機構34を制御して、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP1からピッチP1より大きいピッチP4に変更させてよい。このように大きいピッチに変更することにより、一方のワークが邪魔になることなく付着物の除去を行うことが可能となる。次いで除去装置120は、工具の一例であるノズルを第1ワークW1に対して近接させるか、又は、倣わせながらドライアイスパウダーを噴射することにより第1ワークW1の表面に付着したバリ等の不要物を除去し、続いて工具を第2ワークW2に対して倣わせることにより第2ワークW2の表面に付着した不要物を除去することにより、付着物の除去工程が実行される(ステップS45)。
【0110】
成形後はワークが高温のため冷却工程が実行されてもよい。冷却工程が実行される場合、第1制御部101はロボットアーム20を制御して、第1ワークW1及び第2ワークW2を冷却装置130により冷却可能な位置に移動させる。次いで第2制御部102はピッチ可変機構34を制御して、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチをピッチP1からピッチP1より小さいピッチP5に変更させてよい。このように小さいピッチに変更して2つのワークを近接させることにより、効率的な冷却が可能となる。なおピッチP3とピッチP5は同一でもよい。次いで冷却装置130は、ノズルを第1ワークW1及び第2ワークW2に対して近接させて圧縮空気を噴射して第1ワークW1及び第2ワークW2の双方を冷却することにより、冷却工程が実行される(ステップS46)。また、柔軟性を有する駆動機構を備えるロボットアームにノズルを取り付けたから、ノズルがワークに接触したときにワークが傷つくことを抑制することが可能となる。なお、付着物の除去工程(ステップS45)又は冷却工程(ステップS46)の実行後に外観検査工程(ステップS44)を実行してもよい。
【0111】
次いで第1ワークW1及び第2ワークW2への移載先Pへの移載が行われる。本実施形態において第1ワークW1及び第2ワークW2は、パレットに移載される。ここで省スペース化を図る目的で、移送先Pの第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチに相当する第2ピッチP2は、製造上の都合に基づいて設計される金型上における第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチに相当するピッチP1よりも小さい。また移載先Pであるパレットがプラスチック等の柔らかい材質から構成されている場合、パレットの表面にワークが接触したときにパレットが凹んだり傷ついてしまう可能性がある。このためいわゆるパレタイズは人間が手作業により実行したり、ロボットアームを用いて一つずつワークを移載することにより実行されていた。これに対し本出願の発明者らは移載先Pのピッチに合わせて複数のワークを移載することを可能とする移載システムを着想した。
【0112】
まず第2制御部102は、第1ピッチP1離間していた第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチが第2ピッチP2となるようにピッチ可変機構34を制御する(ステップS47)。ここで第2ピッチP2は、移載先Pであるパレット上における第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチに相当する。図3(B)に示される本実施形態においてパレット上には、ワークを挿入して配置するための第1凹部DT1及び第2凹部DT2が設けられているから、第2ピッチP2は、隣接する凹部間のピッチに相当する。
【0113】
具体的には第2制御部102は、エアシリンダ34B内のピストンの前方又は後方の空間に圧縮空気を供給し後方又は前方の空間の空気を排気することにより、ピストン及びピストンロッドを軸方向に移動させる。ピストンロッド34Aには第2保持部32Bが接続されているため、第2保持部32B及びこれに保持される第2ワークW2を第1保持部32A及び第1ワークW1に接近させる方向に移動させることが可能となる。ここでピストンロッド34Aの所定位置外周にはストッパ34Cが設けられているため、ストッパ34Cがエアシリンダ34Bと接触することにより第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチを調整することが可能である。より具体的には、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチが第2ピッチP2となったときに、エアシリンダ34Bと接触する位置にストッパ34Cを予め設けることにより、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチを第2ピッチP2に変更することが可能となる。但しこれ以外の方法で両者のピッチを変更することも可能である。
【0114】
一方で第1制御部101はロボットアーム20を制御して、第1ワークW1の上方に第1保持部32Aが位置し、第2ワークW2の上方に第2保持部32Bが位置するようにリンクLを駆動する(ステップS48)。なおステップS47及びステップ48は、同時に実行されてもよいし、順番が前後しても(ステップS48を先に実行しても)よい。
【0115】
次いで第2制御部102により第1保持部32A及び第2保持部32Bの各ロボットハンドを閉じた状態で第1制御部101は、第1保持部32A及び第2保持部32Bを紙面下方に移動させることにより、第1ワークW1を第1凹部DT1に、かつ、第2ワークW2を第2凹部DT2にそれぞれ接近させる。
【0116】
第1制御部101は、引き続き第1保持部32A及び第2保持部32Bを紙面下方に移動させることにより、第1ワークW1を第1凹部DT1の壁面に接触させ、かつ、第2ワークW2を第2凹部DT2の壁面に接触させ、第1ワークW1を第1凹部DT1の壁面に倣わせながら移動させ、かつ、第2ワークW2を第2凹部DT2の壁面に倣わせながら移動させる。ロボットアーム20は柔軟性を備えた駆動機構を有するから、第1凹部DT1の壁面及び第2凹部DT2の壁面を第1ワークW1及び第2ワークW2がそれぞれ押圧するように壁面に向かう方向の弾性力を発揮させながら第1ワークW1及び第2ワークW2をそれぞれ第1凹部DT1及び第2凹部DT2に隙間なく挿入することが可能となる。なお、許容範囲取得部10Cは、ワークと接触するパレットが塑性変形しない弾性領域範囲に基づいて定められた許容範囲を取得するように構成されてもよい。このように構成することで、ワークとの接触に伴うパレットの塑性変形を抑制することが可能である。
【0117】
第1制御部101による第1ワークW1及び第2ワークW2の第1凹部DT1及び第2凹部DT2への挿入が完了すると、第2制御部102は、各ロボットハンドを開かせることにより、第1ワークW1及び第2ワークW2をリリースする(S49。図3(B))。第1保持部32A及び第2保持部32Bによる保持が解除されたとき、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチは、第2ピッチP2である。
【0118】
以上のとおりであるから、本実施形態によれば、移載先Pにおけるピッチに合わせて複数のワークを移載することを可能とする移載システムを提供することが可能となる。
【0119】
[第1変形例]
以下第1実施形態の第1変形例について説明する。第1実施形態において、保持装置は2つのワークを保持したがこれに限られるものではない。図6は変形例に係る保持装置50の模式図を示している。この保持装置50は、第1ワークW1を保持可能な第1保持部52Aと、第1ワークW1から第1ピッチP1離間した位置において、第2ワークW2を保持可能な第2保持部52Bと、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチを第1ピッチP1(図6(A))から第2ピッチP2(図6(B))に変更可能な第1ピッチ可変機構54Aと、第3ワークW3を保持可能な第3保持部52Cと、第3ワークW3から第4ピッチP4離間した位置において、第4ワークW4を保持可能な第4保持部52Dと、第3ワークW3と第4ワークW4とのピッチを第4ピッチP4(図6(A))から第5ピッチP5(図6(B))に変更可能な第2ピッチ可変機構54Bとを備える。第1ワークW1から第2ワークW2に向かう方向を第1方向D1とし、第1ワークW1から第3ワークW3に向かう方向を第2方向D2とするとき、第2保持部52Bは、第1ワークW1から第1方向D1に第1ピッチP1離間した位置において、第2ワークW2を保持可能に構成されている。また、第1方向D1と交差する第2方向D2における第1ワークW1と第3ワークW3とのピッチを第3ピッチP3とすると、第3保持部52Cは、第2方向D2において第1ワークW1から第3ピッチP3離間した位置において、第3ワークW3を保持可能に構成されている。また、第1方向D1における第3ワークW3と第4ワークW4とのピッチを第4ピッチP4とすると、第4保持部52Dは、第1方向D1において、第3ワークW3から第4ピッチP4離間した位置において、第4ワークW4を保持可能に構成されている。ただし第1ピッチP1と第4ピッチP4は同一でもよい。
【0120】
第1ピッチ可変機構は、第1方向D1に延伸し第2保持部52Bに接続する第1ピストンロッドと、第1ピストンロッドを移動させることにより第2保持部52Bを第1保持部52Aに接近又は離間させることにより第1保持部52Aと第2保持部52Bとのピッチを変更可能(従って第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチを変更可能)なエアシリンダ(「第1ピッチ変更手段」の一例)を備える。
【0121】
第2ピッチ可変機構は、第1方向D1に延伸し第4保持部52Dに接続する第2ピストンロッドと、第2ピストンロッドを移動させることにより第4保持部52Dを第3保持部52Cに接近又は離間させることにより第3保持部52Cと第4保持部52Dとのピッチを変更可能(従って第3ワークW3と第3ワークW4とのピッチを変更可能)なエアシリンダ(「第2ピッチ変更手段」の一例)を備える。
【0122】
同図に示されるように第1保持部52Aと第3保持部52Cとを接続する第2方向D2に第3ピッチ可変機構54Cの第3ピストンロッドを更に配置することにより、図6(C)に示されるように、更に第2方向D2についてもピッチを変更可能に(例えばピッチP3からピッチP6に変更可能に)構成してもよい。一方で同図と異なりこのようなピストンロッドを設けないことにより、第1方向D1において、第1保持部52Aと第2保持部52Bとのピッチと、第3保持部52Cと第4保持部52Dとのピッチを独立に変更可能に構成してもよい。
【0123】
なお同図の各保持部は、負圧を発生させてワークを吸引することによりワークを保持する手段を備えている。このような構成によればワークの側面を保持する必要がなくなるのでワーク間の狭ピッチ化(ワーク同士を接触させる場合を含む)を実現することが可能となる。
【0124】
[第2変形例]
以下第1実施形態の第2変形例について説明する。第1実施形態及び第1変形例においてピッチの可変方向は、水平方向に限られていた。しかしながら、保持装置は、更にワークに接近する方向(「第3方向」の一例)及び離間する方向にワークを移動させるための移動手段を備えてもよい。図7は第2変形例に係る保持装置60の模式図を示している。この保持装置60は、第1ワークW1を保持可能な第1保持部62Aと、第1ワークW1から第1ピッチP1離間した位置において第2ワークW2を保持可能な第2保持部62Bと、第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチを第1ピッチP1から第2ピッチP2に変更可能な第1ピッチ可変機構64と、更に第2保持部62Bを第2ワークW2に接近する方向D3及び離間する方向に移動させる移動手段66を備えた構成を示している。
【0125】
ここで第2保持部62Bは、第1ピッチ可変機構64の第1ピストンロッド64Aに接続される上部62B1と、第2保持部62Bのロボットハンドに接続される下部62B2とを備えてよい。
【0126】
また移動手段66は、下部62B2に接続される第2ピストンロッド66Aと、第2ピストンロッド66Aを移動させるために上部62B1に設けられるエアシリンダ66Bを備えてよい。
【0127】
このような構成によれば第1ピッチ可変機構64のエアシリンダ64Bを動作させることにより第1ピストンロッド64Aを軸方向(第1方向D1)に移動させることにより第2保持部62B及びこれに保持される第2ワークW2を第1方向D1に移動させるとともに、移動手段66のエアシリンダ66Bを動作させることにより第2ピストンロッド66Aを軸方向(第3方向D3)に移動させることにより第2保持部62B及びこれに保持される第2ワークW2を第3方向D3に移動させることが可能となる。
【0128】
従って同図に示されるように第3方向D3に段差を有する配膳台PT(移送先の一例)にワークを配置するときであっても、第1ワークW1及び第2ワークW2をそれぞれ異なる高さに配置することが可能となる。
【0129】
なお図3(B)に示されるような同じ高さの移送先に2つのワークを配置する場合であっても、移動手段を利用して第1ワークW1を第1凹部DT1の壁面に接触させながら第1ワークW1を第1凹部DT1に挿入して配置した後に、第2ワークW2を第2凹部DT2の壁面に接触させながら第2ワークW2を第2凹部DT2に挿入して配置してもよい。このような構成により順番にワークを配置するため、より確実に各ワークを配置することが可能となる。また、それぞれのワークを移送先の壁面に確実に倣わせて移送先に配置することも可能となる。
【0130】
更に第1ワークと第2ワークとが異なる構成(形状を含む)を有するために、異なる高さで保持(把持を含む)することが必要な場合も、移動手段66に相当する構成を保持装置に設けることにより、第1保持部と第2保持部とで異なる高さにおいてそれぞれ第1ワークW1及び第2ワークW2を保持し、かつ、保持の解除をすることが可能である。
【0131】
なお同図に示されるように第3方向D3の第1保持部62Aに対する第2保持部62Bの移動を規制するために第2ピストンロッド66Aにもストッパ66Cを設けてもよい。
【0132】
[第3変形例]
以下第1実施形態の第3変形例について説明する。第1実施形態、第1変形例及び第2変形例においてピッチの可変方向は、並進方向に限られていた。しかしながら、保持装置は、更にワークを回転させる回転手段を備えてもよい。図8(A)及び(B)は第3変形例に係る保持装置70の模式図を示している。なお各ワークの移動の変化をわかりやすく表現するために図において各保持部等は省略されている。この保持装置70は、4つの保持部(不図示)を備えるとともに、図8(A)に示されるように、第1保持部から第2保持部に向かう第1方向D1に延伸する第1ピストンロッド74Aと、この第1ピストンロッド74Aを軸方向に移動させることにより第1保持部と第2保持部とのピッチを変更可能なエアシリンダ(不図示)とを備える第1ピッチ可変機構と、第3保持部から第4保持部に向かう第1方向D1に延伸する第2ピストンロッド74Bと、この第2ピストンロッド74Bを軸方向に移動させることにより第3保持部と第4保持部とのピッチを変更可能なエアシリンダ(不図示)とを備える第2ピッチ可変機構とを備える。更に保持装置70は、第1ピストンロッド74Aと第2ピストンロッド74Bとを接続する回転ロッド76Aと、回転ロッド76Aを第1方向D1(紙面左右方向)及び第1保持部から第3保持部に向かう第2方向D2(紙面上下方向)と垂直な第3方向D3(紙面垂直方向)を軸方向として回転可能な回転手段76とを備える。回転手段76は、例えば、クランク機構を備えてもよい。回転ロッド76Aの回転軸を第1ピストンロッド74A(又は第2ピストンロッド74B)上の一端とする場合、クランク機構は、第1ピストンロッド74A(第2ピストンロッド74B)上をスライドするスライダと、スライダと回転ロッド76Aの他端とを接続するリンクとを備えてもよい。そしてスライダを、エアを用いて第2ピストンロッド74Bと平行に並進運動させることにより回転ロッド76Aの一端を支点として回転させることが可能である。
【0133】
なお回転手段としてモータ等の他の知られた回転手段を用いることも可能であるが、脱調等が生じ得るステッピングモータやモータ減速機として磁気減速機を用いた駆動系と比較してクランク機構の方が動作の安定性が高い。
【0134】
以上のような保持装置70によれば、第1ワークW1、第1方向D1において第1ワークW1から第1ピッチP1離間した位置に載置された第2ワークW2、第2方向D2において第1ワークW1から第3ピッチP3離間した位置に載置された第3ワークW3及び第1方向D1において第3ワークW3から第1ピッチP1離間した位置に載置された第4ワークW4を、回転ロッド76Aを回転させることにより、第1方向D1に一列に整列させることが可能となる(図8(B))。
【0135】
その際、第1ピッチ変更手段を用いて第1ワークW1と第2ワークW2とのピッチを調整し、かつ、第2ピッチ変更手段を用いて第3ワークW3と第4ワークW4とのピッチを調整することにより、第1ワークW1、第2ワークW2、第3ワークW3及び第4ワークW4を、第1ピッチP1より小さい第2ピッチP2で等間隔に整列させることも可能となる。
【0136】
[ワークの変形例]
以上の実施形態及び各変形例においてワークはインサート成形により成形された成形品であった。しかしながら本発明は成形品以外のワークにも適用可能である。
【0137】
例えば、ワークは、インサート成形に用いるインサートであってもよい。この場合、保持装置の第1保持部により第1インサートを第1ワークとして保持させ、第2保持部により第2インサートを第2ワークとして保持させ、次いで、第1インサートを金型の第1キャビティに移載し、第2インサートを同じ金型(加工機の一例)の第2キャビティに移載するように保持装置を構成することが可能である。ここで第1インサート及び第2インサートを保持するときの取り出しピッチは、金型に移載するときの移載ピッチよりも小さくてよい。
【0138】
また、ワークは、FET(Field Emission Transistor)や、パワー半導体その他の半導体素子でもよい。このとき、移載先の対象物は、半導体素子のリードが挿入される複数のソケットが搭載されているPCB(Print Circuit Board)であってもよい。また、電気自動車等で用いられるバスバーをPBT(ポリブチルテレフタレート)等で射出成形したバスバーユニット等の自動車部品であれば、直接、電池ユニットや車体、あるは車体のサブアッシー部材に組付ける事が可能である。更には、家庭電気用品や計測器で用いられるSSR(ソリッドステートリレー)をエポキシ樹脂等で射出成形し、封止・絶縁するケースでは、直接筐体等にセットする事が可能である。
【0139】
柔軟性を有する駆動機構を備えるロボットアームは、第1ワークである第1半導体素子の複数のリードをPCB上の第1領域に搭載される第1ソケットに当接させながら挿入すると共に第2ワークである第2半導体素子の複数のリードをPCB上の第2領域に搭載される第2ソケットに当接させながら挿入するように構成されてもよい。柔軟性を備えた駆動機構を用いてワークである半導体素子を移載先であるPCB基板上に移載することにより、リードがソケットにうまく挿入されず折れ曲がってしまう事態を抑制することが可能となる。
【0140】
また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0141】
10 制御装置
10A 開始位置取得部
10B 目標位置取得部
10C 許容範囲取得部
10D 経路取得部
10E 制御命令取得部
10F 記憶部
20 ロボットアーム
30 保持装置
32A 保持部
32B 保持部
34 ピッチ可変機構
34A ピストンロッド
34B エアシリンダ
34C ストッパ
36 ハウジング
50 保持装置
54A ピッチ可変機構
54B ピッチ可変機構
54C ピッチ可変機構
60 保持装置
64 ピッチ可変機構
64A ピストンロッド
64B エアシリンダ
66 移動手段
66A ピストンロッド
66B エアシリンダ
66C ストッパ
70 保持装置
74A ピストンロッド
74B ピストンロッド
76 回転手段
76A 回転ロッド
100 ロボットシステム
101 第1制御部
102 第2制御部
110 外観検査装置
120 除去装置
130 冷却装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8