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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057663
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】吸塵アダプター係止具
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20230417BHJP
   B23B 47/34 20060101ALI20230417BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230417BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B28D1/14
B23B47/34 A
B23Q11/00 M
B28D7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167255
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】390022389
【氏名又は名称】サンコーテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】八木沢 康衛
【テーマコード(参考)】
3C011
3C036
3C069
【Fターム(参考)】
3C011BB03
3C036HH09
3C069AA04
3C069BA09
3C069CA01
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】吸塵アダプターと吸塵ドリルとの着脱を容易に行うことができる、吸塵アダプター係止具を提供する。
【解決手段】本発明の吸塵アダプター係止具は、弾性部材で構成され、吸塵ドリルに対して吸塵アダプターを回転可能に係止する吸塵アダプター係止具であって、吸塵ドリルを挿入するための挿入孔が設けられたベース部と、ベース部から吸塵アダプター側に突出し、吸塵ドリルに係止される係止部と、を備え、係止部は、吸塵ドリルの軸方向に直交する径方向に延びるスリット部と、スリット部の幅方向一方側に位置し、吸塵ドリルに形成された係止用溝に係止される第1突起部と、スリット部の幅方向他方側に位置し、係止用溝に係止される第2突起部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材で構成され、吸塵ドリルに対して吸塵アダプターを回転可能に係止する吸塵アダプター係止具であって、
前記吸塵ドリルを挿入するための挿入孔が設けられたベース部と、
前記ベース部から前記吸塵アダプター側に突出し、前記吸塵ドリルに係止される係止部と、を備え、
前記係止部は、
前記吸塵ドリルの軸方向に直交する径方向に延びるスリット部と、
前記スリット部の幅方向一方側に位置し、前記吸塵ドリルに形成された係止用溝に係止される第1突起部と、
前記スリット部の幅方向他方側に位置し、前記係止用溝に係止される第2突起部と、を有する、
ことを特徴とする吸塵アダプター係止具。
【請求項2】
前記係止用溝は、前記吸塵ドリルの周方向に沿って環状に形成され、
前記第1突起部は、前記径方向から前記係止用溝に嵌め込まれる第1円弧状凸部を有し、前記第2突起部は、前記径方向から前記係止用溝に嵌め込まれる第2円弧状凸部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸塵アダプター係止具。
【請求項3】
前記軸方向から視て、前記第1円弧状凸部および前記第2円弧状凸部の内面を結ぶ仮想円の径を仮想円径としたとき、
前記スリット部の幅は、前記仮想円径の30%~40%に設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の吸塵アダプター係止具。
【請求項4】
前記軸方向において、前記スリット部は前記ベース部まで到達している、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の吸塵アダプター係止具。
【請求項5】
前記スリット部の両端部の少なくとも一方は、前記ベース部の外縁部から離間している、
ことを特徴とする請求項4に記載の吸塵アダプター係止具。
【請求項6】
前記軸方向から視て、前記第1突起部および前記第2突起部は前記スリット部を挟んで互いに対称な形状を有している、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の吸塵アダプター係止具。
【請求項7】
前記ベース部は、前記軸方向において前記スリット部の少なくとも一部と重なるとともに、前記係止部と反対側に設けられた肉厚部を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の吸塵アダプター係止具。
【請求項8】
前記第1突起部および前記第2突起部の少なくとも一方は、前記スリット部の幅方向に延びるリブを含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の吸塵アダプター係止具。
【請求項9】
前記軸方向から視て、前記第1突起部および前記第2突起部は、前記吸塵アダプターに対向する対向平面をそれぞれ有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか一項に記載の吸塵アダプター係止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸塵アダプター係止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートや大理石といった石材系の材料に穿孔する際に発生する粉塵は、作業者への健康被害、ドリルの摩耗や損傷、ドリルの回転停止などの様々な問題を引き起こすおそれがある。このような問題を回避しながら穿孔を行うため、吸塵ドリルが使用されている。
【0003】
吸塵ドリルは、ドリルの先端からドリルの軸に沿って伸びる吸塵用軸孔と、吸塵用軸孔に連結される吸塵用半径孔と、を有している。そして、吸塵用半径孔を囲む位置には、吸塵ドリルに相対的に回転可能な吸塵アダプターが装着され、この吸塵アダプターには、ドリルから離れた位置に設けられた吸塵装置から延びるホースが連結される。吸塵アダプターは吸塵ドリルに対し相対的に回転可能に取り付けられているため、吸塵ドリルが回転しても吸塵アダプターは回転しない。つまり、ドリルが回転して穿孔している間も、吸塵アダプター、および、吸塵アダプターに接続されるホース、吸塵装置は所定の位置で静止し、吸塵動作を継続することが可能となっている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、吸塵アダプターを吸塵ドリルに係止するための部材としてOリングを用いている。
【0005】
一方、吸塵ドリルは経時的に摩耗することで穿孔不能になった場合や穿孔する孔の直径を変える場合、新しい吸塵ドリルに交換したり、径の異なる吸塵ドリルに交換したりするなど、それまで使用していた吸塵ドリルを他の吸塵ドリルに交換する必要がある。この場合は、吸塵ドリルから吸塵アダプターを取り外し、別の吸塵ドリルに付け替える方法が一般的に採用されている。このようなドリル交換は、通常、工事現場で行う必要があるため、吸塵アダプターの着脱は簡単に行えることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-016214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示の吸塵ドリルにおいて、吸塵ドリルの外周溝に嵌まり込んだOリングを容易に取り外すことは難しく、吸塵アダプターを安定して吸塵ドリルに係止するとともに、吸塵ドリルに対して容易に着脱可能な新たな技術の提供が望まれている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、吸塵アダプターを安定して吸塵ドリルに係止するとともに、吸塵ドリルに対して容易に着脱できる、吸塵アダプター係止具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の吸塵アダプター係止具は、弾性部材で構成され、吸塵ドリルに対して吸塵アダプターを回転可能に係止する吸塵アダプター係止具であって、前記吸塵ドリルを挿入するための挿入孔が設けられたベース部と、前記ベース部から前記吸塵アダプター側に突出し、前記吸塵ドリルに係止される係止部と、を備え、前記係止部は、前記吸塵ドリルの軸方向に直交する径方向に延びるスリット部と、前記スリット部の幅方向一方側に位置し、前記吸塵ドリルに形成された係止用溝に係止される第1突起部と、前記スリット部の幅方向他方側に位置し、前記係止用溝に係止される第2突起部と、を有する。
【0010】
上記態様において、前記係止用溝は、前記吸塵ドリルの周方向に沿って環状に形成され、前記第1突起部は、前記径方向から前記係止用溝に嵌め込まれる第1円弧状凸部を有し、前記第2突起部は、前記径方向から前記係止用溝に嵌め込まれる第2円弧状凸部を有する、構成としてもよい。
【0011】
上記態様において、前記軸方向から視て、前記第1円弧状凸部および前記第2円弧状凸部の内面を結ぶ仮想円の径を仮想円径としたとき、前記スリット部の幅は、前記仮想円径の30%~40%に設定される、構成としてもよい。
【0012】
上記態様では、前記軸方向において、前記スリット部は前記ベース部まで到達している、構成としてもよい。
【0013】
上記態様において、前記スリット部の両端部の少なくとも一方は、前記ベース部の外縁部から離間している、構成としてもよい。
【0014】
上記態様において、前記軸方向から視て、前記第1突起部および前記第2突起部は前記スリット部を挟んで互いに対称な形状を有している、構成としてもよい。
【0015】
上記態様において、前記ベース部は、前記軸方向において前記スリット部の少なくとも一部と重なるとともに、前記係止部と反対側に設けられた肉厚部を含む、構成としてもよい。
【0016】
上記態様において、前記第1突起部および前記第2突起部の少なくとも一方は、前記スリット部の幅方向に延びるリブを含む、構成としてもよい。
【0017】
上記態様において、前記軸方向から視て、前記第1突起部および前記第2突起部は、前記吸塵アダプターに対向する対向平面をそれぞれ有する、構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一つの態様の吸塵アダプター係止具によれば、吸塵アダプターを安定して吸塵ドリルに係止するとともに、吸塵ドリルに対して容易に着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の吸塵アダプター係止具を取り付けた吸塵ドリルの構成を示す図である。
図2】吸塵ドリルに対して吸塵アダプター係止具を脱着する際の状態を示す図である。
図3】係止具の平面図である。
図4】係止具を+Y側から視た斜視図である。
図5図3のV-V線矢視による係止具の断面構成を示す図である。
図6図3のVI-VI線矢視による係止具の断面構成を示す図である。
図7】+X側から-X側に視た係止具の側面図である。
図8】(a)、(b)は比較例の係止具を折り曲げた際の第1、第2円弧状凸部間の距離の変化を示した概念図である。
図9】(a)、(b)は実施形態の係止具を折り曲げた際の第1、第2円弧状凸部間の距離の変化を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0021】
図1は本実施形態の吸塵アダプター係止具を取り付けた吸塵ドリルの構成を示す図である。図2は吸塵ドリルに対して吸塵アダプター係止具を脱着する際の状態を示す図である。
【0022】
図1に示すように、吸塵ドリル1には、係止具(吸塵アダプター係止具)10によって吸塵アダプター6が取り付けられている。吸塵ドリル1は、ドリル軸Jに沿って延びる金属棒状体であり、シャンク部2とドリル部3とを含む。ドリル部3は、吸塵アダプター6を保持するためのアダプター保持部13を有する。アダプター保持部13は、ドリル部3におけるシャンク部2側の端部に位置する。シャンク部2のドリル軸Jに沿う軸方向一端側には、不図示の電動工具に接続される工具接続部2aが設けられている。
【0023】
ドリル部3には、吸塵用軸孔7および吸塵用半径孔8が形成されている。吸塵用軸孔7は、ドリル部3のドリル先端3aからアダプター保持部13に至るようにドリル軸Jに沿うようにドリル部3の内部に形成されている。吸塵用半径孔8は、吸塵用軸孔7における軸方向の一端部(アダプター保持部13側の端部)からドリル軸Jに直交する径方向に向かって延びて外部と連通する。
【0024】
吸塵アダプター6は、ドリル部3のアダプター保持部13において、吸塵ドリル1のドリル軸Jに対して相対的に回転可能な状態に保持される。吸塵アダプター6は、例えば、ナイロンなどの樹脂を主材料としたリング状の部材で構成される。
【0025】
吸塵アダプター6は吸塵ドリル1を挿入するための貫通孔16を有している。貫通孔16は、ドリル軸Jに沿う軸方向の両側に位置する一対の第1孔部16aと、軸方向において一対の第1孔部16aの間に位置する第2孔部16bと、で構成される。第1孔部16aの内径は、吸塵ドリル1のアダプター保持部13の外径と同等の大きさを有する。これにより、第1孔部16aは、吸塵アダプター6が回転可能な状態でドリル部3の外周面に接触する。
【0026】
本実施形態において、第2孔部16bの内径は第1孔部16aの内径よりも大きく、吸塵アダプター6(第2孔部16b)とドリル部3(吸塵用軸孔7)との間には所定の隙間が生じるようになっている。これにより、吸塵アダプター6が吸塵ドリル1に保持された状態において、吸塵アダプター6の第2孔部16bは、ドリル部3のアダプター保持部13に形成された吸塵用半径孔8と対向し、アダプター保持部13の外周面との間において外部から密封された環状の密閉空間を構成する。
【0027】
吸塵アダプター6は、第2孔部16bに連通し径方向に延びる径方向孔17と、径方向孔17に挿入されて外周面から突出するホース接続部18と、をさらに有する。ホース接続部18には、不図示の吸塵用ホースの一端が取り付けられ、吸塵用ホースの他端は吸塵装置(不図示)に接続される。
【0028】
アダプター保持部13は、吸塵アダプター6の軸方向他方側(ドリル先端3a側)の端面に当接する当接部13aを有する。当接部13aは、吸塵アダプター6の軸方向他方側への移動を規制する位置規制部材として機能する。本実施形態において、当接部13aはドリル軸Jの周方向の全体に設けられるため、吸塵ドリル1の軸方向他方側への移動を良好に規制する。なお、当接部13aはドリル軸Jの周方向の一部に設けられていてもよい。
【0029】
図1および図2に示すように、係止具10は、吸塵アダプター6の軸方向一方側(シャンク部2側)にワッシャー9を介して取り付けられる。係止具10は、吸塵ドリル1の係止用溝11に係止されることで吸塵アダプター6を吸塵ドリル1に対して回転可能に保持する。本実施形態において、係止用溝11は、吸塵ドリル1のシャンク部2の周方向に沿って環状に形成された環状溝である。
【0030】
係止具10は、係止用溝11に係止されることで、吸塵アダプター6との間でワッシャー9を挟み込む。係止具10は、吸塵アダプター6の軸方向一方側(工具接続部2a側)への移動を規制する規制部材として機能する。このようにして吸塵ドリル1は、アダプター保持部13の外周面に吸塵アダプター6が回転可能な状態に保持される。
【0031】
吸塵ドリル1を用いて材料に穿孔を行う際、回転するドリル先端3aで粉砕された材料の粉塵は、吸塵用軸孔7、吸塵用半径孔8、吸塵アダプター6、ホース接続部18、不図示の吸塵用ホースを経由して吸塵装置へと排出される。この吸塵動作は、穿孔作業が行われている間、連続的に行われるため、ドリル先端3aの粉塵は発生と同時に吸塵装置で回収され、ドリル先端3aに粉塵が多量に溜まることはない。
【0032】
ところで、吸塵ドリル1が劣化したり、穿孔すべき孔径を変更したりする際、吸塵ドリル1を別の吸塵ドリル1に交換する必要が生じる。吸塵ドリル1を交換する場合、電動ドリルから吸塵ドリル1を取り外した後、図2に示すように係止具10を指で折り曲げて吸塵ドリル1から取り外すことで吸塵アダプター6と吸塵ドリル1とが分離可能となる。
【0033】
本実施形態の係止具10は、後述の構成を採用することで、吸塵アダプター6を安定して吸塵ドリル1に係止するとともに、吸塵ドリル1に対して容易に着脱可能となっている。
【0034】
以下、係止具10の具体的な構成についてXYZ直交座標系を用いて説明する。
Y軸は、係止具10が吸塵ドリル1に取り付けられた状態においてドリル軸Jに沿う軸である。X軸はY軸に直交する軸であり、Z軸はX軸およびY軸に直交する軸である。Y軸に沿う方向を「軸方向」と称し、Y軸に直交する方向を「径方向」、Y軸から遠ざかる方向を「径方向外側」、Y軸に近づく方向を「径方向内側」と称し、Y軸周りの方向を「周方向」と称す。
【0035】
図3は係止具10の平面図である。なお、図3は、係止具10において吸塵アダプター6に対向する面を平面視した図である。
図4は係止具10を+Y側から視た斜視図である。図5図3のV-V線矢視による係止具10の断面構成を示す図である。図6図3のVI-VI線矢視による係止具10の断面構成を示す図である。図7は+X側から-X側に視た係止具10の側面図である。
【0036】
図3から図7に示すように、本実施形態の係止具10は、ベース部20と、係止部30と、を備えている。本実施形態の係止具10は、例えば、ゴムなどの弾性部材で構成され、ベース部20および係止部30は一体に形成されている。これにより、係止具10は後述のように作業者の指により変形されることで吸塵ドリル1(係止用溝11)に対して容易に着脱可能とされる。
【0037】
ベース部20は円板状の部材であり、吸塵ドリル1を挿入するための挿入孔21が設けられている。挿入孔21の内径は吸塵ドリル1を挿入可能な大きさに設定される。なお、係止具10が吸塵ドリル1に係止された状態において、ベース部20の中心を通る中心軸Oは吸塵ドリル1のドリル軸Jに一致する。
【0038】
係止部30は、ベース部20から吸塵アダプター6側(+Y側)に突出し、吸塵ドリル1の係止用溝11に係止される。係止部30は、スリット部31と、第1突起部32と、第2突起部33と、を有する。スリット部31は、吸塵ドリル1のドリル軸Jに沿う軸方向(Y軸方向)に直交する径方向(X軸方向)に延び、係止部30を2つの部位に分離する。
【0039】
図3に示すように、軸方向(Y軸方向)から視て、第1突起部32および第2突起部33はスリット部31を挟んで互いに対称な形状を有している。これにより、第1突起部32および第2突起部33の剛性にばらつきが生じ難いため、第1突起部32および第2突起部33は吸塵ドリル1に安定的に係止される。よって、本実施形態の係止具10は吸塵ドリル1の使用時に発生する振動によっても外れ難い。
【0040】
第1突起部32は、スリット部31の幅方向一方側(+Z側)に位置し、吸塵ドリル1に形成された係止用溝11の一部に係止される。第2突起部33は、スリット部31の幅方向他方側(-Z側)に位置し、係止用溝11の他の一部に係止される。第1突起部32および第2突起部33は、径方向において互いに対向するように、係止用溝11に係止される。
【0041】
第1突起部32は、径方向から係止用溝11に嵌め込まれる第1円弧状凸部32aを有する。第2突起部33は、径方向から係止用溝11に嵌め込まれる第2円弧状凸部33aを有する。
本実施形態の場合、係止用溝11は吸塵ドリル1の周方向に沿う環状溝であるため、第1突起部32および第2突起部33は係止用溝11に対して径方向のいずれの方向からも嵌め込み可能である。よって、係止用溝11は、吸塵ドリル1の係止用溝11に対する嵌め込み方向が制限されないため、吸塵ドリル1に対する取り付け作業が容易である。
【0042】
また、本実施形態の係止具10は、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが係止用溝11に嵌まり込んだ状態においても吸塵ドリル1に対して回転可能である。そのため、本実施形態の係止具10は吸塵ドリル1に対してワッシャー9とともに回転可能であるため、ワッシャー9との摩擦で捩れ等の変形が生じ難く、吸塵ドリル1に安定して係止される。
【0043】
図5に示すように、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aにおける径方向内側に位置する内周面は、係止用溝11の表面形状に対応した形状、本実施形態の場合、中心軸Oを含むYZ面による断面が、例えば略半円形状となっている。これにより、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aは、係止用溝11に嵌め込まれることで吸塵ドリル1に対して良好に係止される。
【0044】
図2に示すように、本実施形態の係止具10は、ベース部20の両端部をつまむことで、スリット部31の開口端側を開くように、スリット部31に沿ってベース部20を折り曲げることで、吸塵ドリル1に対して着脱可能な状態とされる。
【0045】
係止具10は、ベース部20が折り曲げられた際、スリット部31の開口端側に位置する第1突起部32および第2突起部33の間隔が拡がる。具体的に、第1突起部32の第1円弧状凸部32aと第2突起部33の第2円弧状凸部33aとにおける径方向の間隔が拡がる。これにより、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aは吸塵ドリル1の係止用溝11から径方向外側に離間し、係止具10は吸塵ドリル1から取り外し可能な状態となる。
【0046】
本実施形態の係止具10では、図4図7に示したように、吸塵ドリル1の係止用溝11に係止する係止部30がベース部20よりも吸塵アダプター6側に突出させることで、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが容易に開くようになっている。
【0047】
以下、ベース部20の挿入孔21の内周面に第1円弧状凸部および第2円弧状凸部が直接形成された比較例の係止具を参照しつつ、本実施形態の係止具10において第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが開き易くなる理由について説明する。図8は比較例の係止具110を折り曲げた際の第1円弧状凸部132aと第2円弧状凸部133aとの距離の変化を示した概念図である。図8(a)は折り曲げ前の状態を示し、図8(b)は折り曲げ後の状態を示している。
【0048】
図8(a)、(b)に示すように、比較例の係止具110において、折り曲げ前の第1円弧状凸部132aおよび第2円弧状凸部133a間の距離をD11、折り曲げ後の第1円弧状凸部132aおよび第2円弧状凸部133a間の距離をD12とする。比較例の係止具110を折り曲げた際、ベース部120の挿入孔121の内周面に設けられた第1円弧状凸部132aおよび第2円弧状凸部133a間の距離がD11からD12へと狭まる。
【0049】
比較例の係止具110では、例えば、吸塵ドリル1から取り外すためにベース部120を折り曲げた際、図8に示すように、第1円弧状凸部132aおよび第2円弧状凸部133a間の距離が狭まってしまうため、係止用溝11に第1円弧状凸部132aおよび第2円弧状凸部133aがより嵌まり込んだ状態となってしまう。そのため、比較例の係止具110では、吸塵ドリル1からの取り外しが困難となる。同様に、比較例の係止具110では、吸塵ドリル1に対する取り付けも困難となる。
【0050】
図9は本実施形態の係止具10を折り曲げた際の第1円弧状凸部32aと第2円弧状凸部33aとの距離の変化を示した概念図である。図9(a)は折り曲げ前の状態を示し、図9(b)は折り曲げ後の状態を示している。
図9(a)、(b)に示すように、本実施形態の係止具10において、折り曲げ前の第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33a間の距離をD1、折り曲げ後の第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33a間の距離をD2とする。折り曲げ前のベース部20の挿入孔21の内周面の径をD3、折り曲げ後のベース部20の挿入孔21の内周面の径をD4とする。
【0051】
本実施形態の係止具10を折り曲げた際、折り曲げた係止具10の曲率中心Cに近いベース部20の挿入孔21の内周面は狭まるが、ベース部20よりも曲率中心Cの外側に位置する係止部30の内周面は拡がった状態となる。すなわち、係止具10を折り曲げた際、係止部30の第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33a間の距離はD1からD2へと拡がり、ベース部20の挿入孔21の内周面の径はD3からD4へと狭まる。
【0052】
このように本実施形態の係止具10は、吸塵ドリル1に対して着脱するために折り曲げた際、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33a間の距離を拡げることができるので、係止用溝11から第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aを離した状態とすることができる。
これにより、本実施形態の係止具10では、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが係止用溝11や吸塵ドリル1の外周面に接触し難くなるので、吸塵ドリル1に対する脱着作業が容易となる。
【0053】
なお、本実施形態の係止具10では折り曲げ時に挿入孔21の内周面が狭まるため、折り曲げ時に生じる変形分を考慮して挿入孔21の内径を設定することが好ましい。この構成によれば、係止具10の折り曲げ時において、挿入孔21の内周面と吸塵ドリル1の外周面との干渉が抑制されるので、吸塵ドリル1に対する係止具10の着脱作業が容易となる。
【0054】
また、本実施形態の係止具10において、第1突起部32および第2突起部33は、図3に示すように、スリット部31の幅方向(Z軸方向)に延びる複数のリブを含む。本実施形態において、第1突起部32はスリット部31の幅方向(Z軸方向)に延びる3つのリブ32bを含む。第2突起部33はスリット部31の幅方向(Z軸方向)に延びる3つのリブ33bを含む。なお、リブ32b、33bの数は特に限定されない。
【0055】
第1突起部32において、各リブ32bは、第1円弧状凸部32aの外周面からスリット部31の幅方向(Z軸方向)に沿って延びる。各リブ32bは、スリット部31の長さ方向(X軸方向)において、第1円弧状凸部32aの外周面の異なる位置に接続されている。各リブ32bは径方向外側から径方向内側に向かうにつれて軸方向(Y軸方向)の厚みが徐々に増す形状を有する。各リブ32bは第1円弧状凸部32aとの接続部分において最も肉厚となる形状を有している。
【0056】
第2突起部33において、各リブ33bは、第2円弧状凸部33aの外周面からスリット部31の幅方向(Z軸方向)に沿って延びる。各リブ33bは、スリット部31の長さ方向(X軸方向)において、第2円弧状凸部33aの外周面の異なる位置に接続されている。各リブ33bは径方向外側から径方向内側に向かうにつれて軸方向(Y軸方向)の厚みが徐々に増す形状を有する。各リブ33bは第2円弧状凸部33aとの接続部分において最も肉厚となる形状を有している。
【0057】
第1突起部32は、ベース部20に対して突出する第1円弧状凸部32aとベース部20とをリブ32bで連結して補強することで、吸塵ドリル1の係止用溝11に係止される第1円弧状凸部32aの剛性を高めている。
また、第2突起部33は、ベース部20に対して突出する第2円弧状凸部33aとベース部20とをリブ33bで連結して補強することで、吸塵ドリル1の係止用溝11に係止される第2円弧状凸部33aの剛性を高めている。
【0058】
このように本実施形態の係止具10によれば、第1突起部32および第2突起部33の剛性を高めることで、吸塵ドリル1による穿孔中に発生する振動による第1突起部32および第2突起部33の変形を抑制することができる。よって、本実施形態の係止具10は、穿孔中に発生する振動によっても変形することなく吸塵アダプター6を安定して吸塵ドリル1に係止することができる。
【0059】
また、本実施形態の係止具10において、ベース部20を折り曲げた際、リブ32b、33bを介して第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33a側へとベース部20を折り曲げる力が伝わり易い。そのため、本実施形態の係止具10によれば、ベース部20を折り曲げることで第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aを径方向外側に容易に開くことができるので、吸塵ドリル1に対する着脱が容易となる。
【0060】
本実施形態の係止具10において、リブ32b、33bはスリット部31の幅方向(Z軸方向)に延びている。つまり、リブ32b、33bは、ベース部20のうち、折り曲げ時に指でつままれる部分に向かって延びている。そのため、リブ32b、33bはベース部20を指でつまむ位置の目印として利用することもできる。
【0061】
本実施形態において、第1突起部32および第2突起部33は、軸方向(Y軸方向)から視て、吸塵アダプター6に対向する対向平面32c、33cをそれぞれ有する。対向平面32cは、第1円弧状凸部32aの+Y側の端部に連結される平面である。対向平面33cは、第2円弧状凸部33aの+Y側の端部に連結される平面である。係止具10が吸塵ドリル1に係止された状態において、対向平面32c、33cは、ワッシャー9を介して吸塵アダプター6を保持する(図1,2参照)。第1突起部32および第2突起部33は、吸塵アダプター6を平面(対向平面32c、33c)で受け、軸方向の移動を良好に規制することで、吸塵ドリル1に対して吸塵アダプター6を安定的に保持することができる。
【0062】
ここで、図3に示したように、軸方向(Y軸方向)から視て、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aの内面を結ぶ仮想円CRの径を仮想円径Rとする。
【0063】
スリット部31の幅Hが仮想円径Rの30%よりも小さくなると、スリット部31の幅が小さくなり過ぎてしまう。すると、ベース部20の剛性が高くなって折り曲げ難くなるので、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが良好に開かず、吸塵ドリル1に対する着脱作業が困難となる。
【0064】
また、スリット部31の幅Hが仮想円径Rの40%よりも大きくなると、スリット部31が大きくなり過ぎることで第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが小さくなり過ぎてしまう。すると、係止用溝11に対する第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aの嵌まり込み量が低下し、吸塵ドリル1による穿孔中に発生する振動によって吸塵ドリル1から外れ易くなる。
【0065】
これに対して本実施形態の係止具10では、スリット部31の幅Hを仮想円径Rの30%~40%に設定している。そのため、ベース部20の剛性が適度に設定されるため、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aを良好に開くことで吸塵ドリル1に対する着脱作業が容易となる。また、本実施形態の係止具10は、係止用溝11に対する第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aの嵌まり込み量が充分確保されるため、吸塵ドリル1による穿孔中に発生する振動によって吸塵ドリル1から外れ難くなる。
【0066】
図4から図7に示すように、軸方向(Y軸方向)において、スリット部31は、ベース部20まで到達している。ベース部20は、軸方向(Y軸方向)において、スリット部31の少なくとも一部と重なるとともに、係止部30と反対側に設けられた肉厚部34を含む。
【0067】
スリット部31が延びるX軸方向から視て、肉厚部34は、図5図7に示すように、ベース部20の表面から円弧状に突出した部位である。肉厚部34は、スリット部31を設けたことによるベース部20の剛性低下を抑制することで吸塵ドリル1の穿孔中に発生した振動によるベース部20の変形を抑制することができる。
【0068】
肉厚部34とベース部20との境界部分22(図4図7参照)は、図2に示すように、ベース部20を折り曲げる際に起点として働くため、ベース部20を折り曲げ易くすることができる。本実施形態において、肉厚部34の表面は円弧状の曲面で構成されるため、吸塵ドリル1とともに係止具10が回転した際の作業時の安全性を高めることができる。
【0069】
本実施形態の係止具10において、スリット部31の両端部は、ベース部20の外縁部20aから離間している。すなわち、スリット部31は、ベース部20の外縁部20aより内側に位置するように形成されている。図3図6に示すように、ベース部20は、スリット先端31aからベース部20の外縁部20aまでの間の部位において十分な厚みが確保されている。
【0070】
ここで、仮に、スリット部31の両端部がベース部20の外縁部20aまで到達するように形成されていたとすると、本実施形態の係止具10に比べてベース部20の剛性が低下してしまう。すると、吸塵ドリル1による穿孔中に発生する振動によって吸塵ドリル1から外れ易くなる恐れがある。また、吸塵ドリル1への装着時に、ベース部20をスリット部31に沿って折り曲げた際、ベース部20の剛性が不足することで、第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが閉じる方向に戻り難くなる恐れがある。
【0071】
これに対して、本実施形態の係止具10では、ベース部20の外縁部20aより内側にスリット部31のスリット先端31aが位置することでベース部20の剛性低下が抑制されるので、穿孔中に発生する振動で吸塵ドリル1から外れ難くすることができる。また、ベース部20は、スリット先端31aから外縁部20aまでの部位の肉厚が相対的に厚いことで折れ曲がり難くなっているため、折り曲げた状態から指を離した際、スリット部31を閉じる方向へと戻す戻り力を発生させることができる。
【0072】
そのため、本実施形態の係止具10において、ベース部20を折り曲げた状態で吸塵ドリル1の所定位置に配置した後、ベース部20から指を離すと、上述の戻り力を発生させることで第1円弧状凸部32aおよび第2円弧状凸部33aが径方向内側に近づき、係止用溝11内に容易に嵌め込まれるようになる。よって、本実施形態の係止具10は、吸塵ドリル1に対する着脱作業が容易なものとなる。
【0073】
このように本実施形態の係止具10は、ベース部20と、ベース部20から吸塵アダプター6側に突出し、スリット部31、第1突起部32および第2突起部33を有する係止部30と、を備えるので、吸塵アダプター6を安定して吸塵ドリル1に係止するとともに、吸塵ドリル1に対して容易に着脱することができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換および及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0075】
例えば、上記実施形態において、第1突起部32および第2突起部33の両方にリブが設けられていたが、第1突起部32および第2突起部33の少なくとも一方のみにリブが設けられてもよい。また、ベース部20において十分な剛性が確保できる場合はリブを省略してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…吸塵ドリル、6…吸塵アダプター、10…係止具(吸塵アダプター係止具)、11…係止用溝、20,120…ベース部、20a…外縁部、21,121…挿入孔、30…係止部、31…スリット部、32…第1突起部、32a,132a…第1円弧状凸部、32b,33b…リブ、32c,33c…対向平面、33…第2突起部、33a,133a…第2円弧状凸部、34…肉厚部、110…係止具、CR…仮想円、H…幅、R…仮想円径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9