(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057669
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】飲料水製造方法、飲料水製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230417BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20230417BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20230417BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230417BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20230417BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20230417BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20230417BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20230417BHJP
【FI】
C02F1/44 H
C02F1/50 510A
C02F1/50 520B
C02F1/50 531P
C02F1/50 540B
C02F1/50 550H
C02F1/50 560B
C02F1/50 560E
B01D71/56
C02F1/28 M
C02F1/70 Z
C02F1/72 Z
C02F1/76 A
C02F9/04
C02F9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167268
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石橋 光
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 悠介
【テーマコード(参考)】
4D006
4D050
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA04
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4D006KA01
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4D050CA16
4D624AA05
4D624AB11
4D624BA02
4D624CA01
4D624DA03
4D624DA04
4D624DB05
4D624DB22
4D624DB23
(57)【要約】
【課題】被処理水のアンモニア性窒素を充分に除去でき、水質が安定した飲料水を安価にかつ簡便に製造できる飲料水製造方法、飲料水製造システムの提供。
【解決手段】アンモニア性窒素を含む被処理水W1を、逆浸透膜5を用いて処理し、透過水W2を得る膜ろ過工程と;透過水W2と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水W3を得る次亜塩素酸塩混合工程と;酸化処理水W3に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水W4を得る全塩素除去工程と;全塩素除去処理水W4と殺菌剤とを混合し、処理水W5を得る殺菌剤混合工程と;を有し;次亜塩素酸塩混合工程では、酸化処理水W3の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の次亜塩素酸塩を前記透過水W2と混合する、飲料水製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素を含む被処理水を、逆浸透膜およびナノろ過膜のいずれか一方または両方を用いて処理し、透過水を得る膜ろ過工程と、
前記透過水と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水を得る次亜塩素酸塩混合工程と、
前記酸化処理水に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水を得る全塩素除去工程と、
前記全塩素除去処理水と殺菌剤とを混合し、処理水を得る殺菌剤混合工程と、
を有し、
前記次亜塩素酸塩混合工程では、前記酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の前記次亜塩素酸塩を前記透過水と混合する、飲料水製造方法。
【請求項2】
前記全塩素除去工程では、活性炭を用いて前記酸化処理水から前記全塩素を除去する、請求項1に記載の飲料水製造方法。
【請求項3】
前記逆浸透膜および前記ナノろ過膜のいずれか一方または両方が、ポリアミド樹脂の膜を有する、請求項1または2に記載の飲料水製造方法。
【請求項4】
前記殺菌剤混合工程では、前記殺菌剤として次亜塩素酸塩を用いる、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料水製造方法。
【請求項5】
アンモニア性窒素を含む被処理水を、逆浸透膜およびナノろ過膜のいずれか一方または両方を用いて処理し、透過水を得る膜ろ過手段と、
前記透過水と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水を得る次亜塩素酸塩混合手段と、
前記酸化処理水に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水を得る全塩素除去手段と、
前記全塩素除去処理水と殺菌剤とを混合し、処理水を得る殺菌剤混合手段と、
を有し、
前記次亜塩素酸塩混合手段が、前記酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の前記次亜塩素酸塩を前記透過水と混合する、飲料水製造システム。
【請求項6】
前記全塩素除去手段が、活性炭を用いて前記酸化処理水から前記全塩素を除去する、請求項5に記載の飲料水製造システム。
【請求項7】
前記逆浸透膜および前記ナノろ過膜のいずれか一方または両方が、ポリアミド樹脂の膜を有する、請求項5または6に記載の飲料水製造システム。
【請求項8】
前記殺菌剤混合手段が、前記殺菌剤として次亜塩素酸塩を用いる、請求項5~7のいずれか一項に記載の飲料水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水製造方法、飲料水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア性窒素を含む被処理水からアンモニアを除去し、飲料水を製造することがある。安全な水質の飲料水を製造するため、被処理水からアンモニア性窒素を除去した後、水質基準を満たすために次亜塩素酸塩を使用する。この次亜塩素酸塩に由来する塩素は、残留塩素として飲料水に含まれ得る。残留塩素は、遊離塩素と結合塩素に大別される。
【0003】
特許文献1には、地下水を直接逆浸透膜に供給し、逆浸透膜の透過水をカチオン交換樹脂に供給する、処理水の製造方法が記載されている。この製造方法では、逆浸透膜の透過水に含まれるアンモニアイオン等のカチオンをカチオン交換樹脂によって除去する。その後、カチオン交換樹脂によりカチオンが除去された透過水中のアンモニアは、アンモニア分解手段の次亜塩素酸塩によって分解され、処理水が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲料水の製造においては、殺菌剤の混合の際にアンモニアが水中に残存していると、次亜塩素酸等の殺菌剤がアンモニアや結合塩素と反応し、残留塩素濃度等の水質が変動しやすく不安定である。そのため、被処理水のアンモニア性窒素を充分に除去することが求められる。
しかし、カチオン交換樹脂を用いる特許文献1の方法では、逆浸透膜透過水中のアンモニアを吸着し、全て除去することが難しい。特に、逆浸透膜の膜閉塞が起きたときや再稼働したときは、透過水のアンモニア量が変動することで、カチオン交換樹脂から漏れるアンモニア量も変動するおそれがある。そのため、特許文献1の製造方法では、さらにカチオン交換樹脂処理水のアンモニア量に基づいて次亜塩素酸塩の使用量を制御する制御設置が必要である。
結果、特許文献1の製造方法では、飲料水の全体の製造工程が複雑となる。
【0006】
本発明は、被処理水のアンモニア性窒素を充分に除去でき、水質が安定した飲料水を安価にかつ簡便に製造できる飲料水製造方法、飲料水製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] アンモニア性窒素を含む被処理水を、逆浸透膜およびナノろ過膜のいずれか一方または両方を用いて処理し、透過水を得る膜ろ過工程と;前記透過水と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水を得る次亜塩素酸塩混合工程と;前記酸化処理水に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水を得る全塩素除去工程と;前記全塩素除去処理水と殺菌剤とを混合し、処理水を得る殺菌剤混合工程と;を有し;前記次亜塩素酸塩混合工程では、前記酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の前記次亜塩素酸塩を前記透過水と混合する、飲料水製造方法。
[2] 前記全塩素除去工程では、活性炭を用いて前記酸化処理水から前記全塩素を除去する、[1]の飲料水製造方法。
[3] 前記逆浸透膜および前記ナノろ過膜のいずれか一方または両方が、ポリアミド樹脂の膜を有する、[1]または[2]の飲料水製造方法。
[4] 前記殺菌剤混合工程では、前記殺菌剤として次亜塩素酸塩を用いる、[1]~[3]のいずれかの飲料水製造方法。
[5] アンモニア性窒素を含む被処理水を、逆浸透膜およびナノろ過膜のいずれか一方または両方を用いて処理し、透過水を得る膜ろ過手段と;前記透過水と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水を得る次亜塩素酸塩混合手段と;前記酸化処理水に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水を得る全塩素除去手段と;前記全塩素除去処理水と殺菌剤とを混合し、処理水を得る殺菌剤混合手段と;を有し;前記次亜塩素酸塩混合手段が、前記酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の前記次亜塩素酸塩を前記透過水と混合する、飲料水製造システム。
[6] 前記全塩素除去手段が、活性炭を用いて前記酸化処理水から前記全塩素を除去する、[5]の飲料水製造システム。
[7] 前記逆浸透膜および前記ナノろ過膜のいずれか一方または両方が、ポリアミド樹脂の膜を有する、[5]または[6]の飲料水製造システム。
[8] 前記殺菌剤混合手段が、前記殺菌剤として次亜塩素酸塩を用いる、[5]~[7]のいずれかの飲料水製造システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被処理水のアンモニア性窒素を充分に除去でき、水質が安定した飲料水を安価にかつ簡便に製造できる飲料水製造方法、飲料水製造システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る飲料水製造システムの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
「アンモニア性窒素」とは、水中にアンモニウム塩として含まれている窒素をいう。アンモニア態窒素ともいう。
「混合」とは、「接触」の概念を包含する用語である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0011】
<飲料水製造システム>
本実施形態の飲料水製造システムは、アンモニア性窒素を含む被処理水を、逆浸透膜およびナノろ過膜のいずれか一方または両方を用いて処理し、透過水を得る膜ろ過手段と;透過水と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水を得る次亜塩素酸塩混合手段と;酸化処理水に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水を得る全塩素除去手段と;全塩素除去処理水と殺菌剤とを混合し、処理水を得る殺菌剤混合手段と;を有し;次亜塩素酸塩混合手段が、酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の次亜塩素酸塩を透過水と混合する。
以下、本実施形態の飲料水製造システムの一例について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る飲料水製造システムの一例を示す概略構成図である。
飲料水製造システム1は、アンモニア性窒素を含む原水を貯留する原水槽2と;原水槽2の原水の給水ポンプ3と;原水の前処理手段4と;アンモニア性窒素を含む被処理水W1を、逆浸透膜5を用いて処理し、透過水W2を得る膜ろ過手段6と;透過水W2と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水W3を得る次亜塩素酸塩混合手段7と;酸化処理水W3に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水W4を得る全塩素除去手段8と;全塩素除去処理水W4と殺菌剤とを混合し、処理水W5を得る殺菌剤混合手段9と;第1の端部が原水槽2と接続され、第2の端部が膜ろ過手段6の一次側と接続されたラインL1と;第1の端部が膜ろ過手段6の二次側と接続され、第2の端部が全塩素除去手段8の一次側と接続されたラインL2と;ラインL2に設けられた水質計C1と;第1の端部が全塩素除去手段8の二次側と接続されたラインL3と;ラインL3に設けられた水質計C2と;を有する。
【0013】
飲料水製造システム1においては、ラインL1に給水ポンプ3、前処理手段4が一次側、すなわち原水槽2側からこの順に設けられている。原水槽2の原水は、給水ポンプ3によって前処理手段4に供給される。
【0014】
原水は、アンモニア性窒素を少なくとも含むものであれば、特に限定されない。原水として、例えば、地下水、井戸水、湖沼水、河川水等が挙げられる。また、これら各種の原水の水質は地域により異なることがあるが、本発明では、水質の差異は許容される。
原水としては、水源の確保の点から地下水が好ましい。地下水は、地中に存在する水であって、地層中の間隙に存在する水である。
【0015】
原水は、その採取地、種類に応じてアンモニア性窒素以外の種々の物質を含み得る。例えば、鉱物等に由来する各種ミネラル(例えばカルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン等のミネラル)、塩化物イオン、硫酸イオン、鉄イオン、シリカ等が挙げられる。溶性ケイ酸濃度(シリカ濃度)は、例えば10mg/L以上90mg/L以下の範囲内が好ましい。ナトリウムイオン濃度は6000mg/L以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。溶性ケイ酸濃度、ナトリウムイオン濃度が前記数値範囲内であると、本発明を適用した際の効果がさらに顕著に得られる。
他にも、原水は有機物、種々の細菌を含み得る。有機物の主成分として、フミン酸、フルボ酸等が挙げられる。ただし、原水は、これら例示した成分以外の有機物を含むことがある。全有機炭素(TOC)濃度は50mg/L以下が好ましく、30mg/L以下がさらに好ましく、10mg/L以下がさらに好ましく、5mg/L以下が特に好ましい。TOCが前記数値範囲内であると、本発明を適用した際の効果がさらに顕著に得られる。
【0016】
前処理手段4では原水の水質が調整され、被処理水W1となる。
前処理手段4は、原水の水質、被処理水W1に求められる水質に応じて適宜選択される。例えば、砂ろ過手段、pH調整手段、凝集手段、脱炭処理手段が挙げられる。
本形態例の飲料水製造システム1は前処理手段4を備えるが、前処理手段は必須の構成要件ではない。他の形態例において、原水の水質が良好であるなら、前処理手段は設置されなくてもよい。
本実施形態では、「被処理水」はアンモニア性窒素を含む水であって、膜ろ過手段の一次側に供給される水であるとも言える。
【0017】
被処理水W1のアンモニア性窒素の含有量は、特に限定されない。例えば、0.1~60mg/Lの範囲内である。
アンモニア性窒素濃度は50mg/L以下が好ましく、25mg/L以下がより好ましく、20mg/L以下がさらに好ましく、10mg/L以下が特に好ましい。被処理水W1のアンモニア性窒素が前記上限値以下であると、透過水W2のアンモニア性窒素濃度を抑制しやすく、次亜塩素酸塩の使用量を低減しやすい。
アンモニア性窒素濃度は0.5mg/L以上が好ましく、1mg/L以上がより好ましく、2mg/L以上がさらに好ましい。この範囲だと、本発明の適用性がさらに優れる。
【0018】
膜ろ過手段6は、逆浸透膜5と;逆浸透膜5の濃縮水が流れるラインL4とを有する。
逆浸透膜5の二次側にはラインL2の第1の端部が接続されている。逆浸透膜5の透過水W2は、ラインL2に導出される。
ラインL4は、第1の端部が逆浸透膜5の二次側と接続され、第2の端部がラインL4AとラインL4Bとに分岐している。分岐したラインL4Aは、前処理手段4と膜ろ過手段6の間の部分のラインL1の途中と接続している。膜ろ過手段6によれば、ラインL4Aを用いて濃縮水の一部を逆浸透膜5の一次側に再供給でき、ラインL4Bを用いて濃縮水の残部をシステム外に排出できる。
膜ろ過手段6の後段には、透過水W2のpHを調整するためのpH調整手段が設けられてもよい。
【0019】
逆浸透膜5は、特に限定されない。本形態例では膜ろ過手段6が逆浸透膜5を有するが、他の形態例において、膜ろ過手段はナノろ過膜を有してもよく、逆浸透膜およびナノろ過膜の両方を有してもよい。
逆浸透膜5(他の形態例においては、ナノろ過膜)の膜の形状も、特に限定されない。例えば、スパイラル状の膜、中空糸状の膜等が挙げられる。
逆浸透膜、ナノろ過膜として、市販品を使用してもよい。例えば、スパイラル状逆浸透膜エレメント(日東電工社製、「ESPA2-LD」)が挙げられる。
【0020】
逆浸透膜5(他の形態例においては、ナノろ過膜)の膜の材質としては、例えば、ポリアミド、ポリスルフォン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。透過水W2の水量を確保しやすい点、入手しやすさの点からポリアミドの膜が好ましい。
また、本実施形態のように次亜塩素酸塩混合手段の一次側に膜ろ過手段を設置することで、ポリアミドのアミド結合が次亜塩素酸塩によって塩素化されることに起因する膜劣化を防止できる。そのため、入手しやすく、透過水量を確保しやすいポリアミドの膜を、長期間連続して使用できるようになることも大きな利点である。
【0021】
次亜塩素酸塩混合手段7は、次亜塩素酸塩を貯留するタンク10と;第1の端部がタンク10と接続され、第2の端部がラインL2の途中と接続されるラインL5と;ラインL5に設けられたポンプ11とを有する。次亜塩素酸塩混合手段7は、タンク10の次亜塩素酸塩をラインL2に導出された透過水W2と混合できる。
【0022】
次亜塩素酸塩混合手段7において、透過水W2に残存したアンモニア性窒素が次亜塩素酸塩混合手段7のタンク10から供給される次亜塩素酸塩によって分解される。次亜塩素酸塩は水に溶解すると、水と反応して次亜塩素酸(HClO)を生成する。アンモニア性窒素の分解に関して、アンモニア(NH3)と次亜塩素酸(HClO)との反応は、下式(1)~(3)に示すように進行すると考えられる。
NH3+HClO→NH2Cl+H2O ・・・式(1)
NH2Cl+HClO→NHCl2+H2O ・・・式(2)
NHCl2+HClO→NCl3+H2O ・・・式(3)
【0023】
上式(1)~(3)に示すように、モノクロラミン(NH2Cl)、ジクロラミン(NHCl2)、トリクロラミン(NCl3)の結合塩素がそれぞれ順次生成し、次亜塩素酸(HClO)が消費される結果、透過水W2が酸化処理水W3となると考えられる。そのため飲用水製造システム1においては、水質計C1で遊離塩素としてのHClO等を検知した場合、全てのアンモニア性窒素が確実に酸化されたものと判断できる。
よって、酸化処理水W3の遊離塩素濃度に基づいてアンモニア性窒素の分解反応が完了したか否かを判断できる。
【0024】
具体的に次亜塩素酸塩混合手段7は、酸化処理水W3の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の次亜塩素酸塩を透過水W2と混合する。次亜塩素酸塩の使用量は、透過水W2のアンモニア性窒素のモル当量に基づいて算出すればよい。
例えば、透過水W2のアンモニア性窒素が全て確実に反応しきる量の次亜塩素酸塩は、化学反応式のモル当量から算出できる。確実に全てのアンモニア性窒素を酸化して分解するためには、アンモニア性窒素のモル当量を超える量の次亜塩素酸塩を多めに使用する。
【0025】
本発明における遊離塩素濃度は、電流法(ポーラログラフ法)によって測定される。尚、当該測定のpHは1以上10以下であり、測定対象液のpHが10を超える場合は、硫酸で1以上10以下に調整し、pHが1未満の場合は水酸化ナトリウム溶液で1以上10以下に調整する。
遊離塩素濃度は、ジエチルパラフェニレンジアミン法(DPD法)でも測定できるが、水処理システムの遠隔監視容易性の観点で、電流法(ポーラログラフ法)が好ましい。
【0026】
次亜塩素酸塩混合手段7の次亜塩素酸塩の使用量は、酸化処理水W3の遊離塩素濃度の目標値(0.01mg/L以上)に応じて適宜設定することが好ましい。酸化処理水W3の遊離塩素濃度の好ましい数値範囲については後述する。
【0027】
タンク10の次亜塩素酸塩は固体状(粉体)でもよく、溶液状でもよい。ただし、混合のしやすさの点で溶液状が好ましい。次亜塩素酸塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム等が挙げられる。使用量の調整の点では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が好ましい。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用する場合、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度は、透過水W2のアンモニア性窒素濃度に基づいて調整することが好ましい。具体的には、例えば、逆浸透膜5の通水初期の透過水W2のアンモニア性窒素濃度を測定する。そして、逆浸透膜の阻止率が低下することを想定しながら、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度および使用量を通水初期の透過水W2のアンモニア性窒素量に基づいて設定する。
【0028】
水質計C1は、酸化処理水W3の遊離塩素濃度を電流法(ポーラログラフ法)によって測定可能なものであれば特に限定されない。水質計C1は、遊離塩素濃度以外に例えば、pH、導電率、水温等の測定機能を追加的に有してもよい。
【0029】
全塩素除去手段8(例えば、塩素除去塔)は、活性炭を用いて酸化処理水W3から全塩素を除去し、酸化処理水W3を全塩素除去処理水W4とする。ここで、全塩素量は、結合塩素量と遊離塩素量の合計量である。酸化処理水W3から全塩素、特に結合塩素を除去することで、被処理水W1に含まれていたアンモニア性窒素の除去が完了する。
本形態例では、全塩素除去手段8が活性炭を用いる形態であるが、酸化処理水W3から全塩素を除去できるものであれば、活性炭以外の全塩素除去材を任意に使用できる。活性炭以外の全塩素除去材として、例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤が挙げられる。
【0030】
殺菌剤混合手段9は、次亜塩素酸塩を貯留するタンク12と;第1の端部がタンク12と接続され、第2の端部がラインL3の途中と接続されるラインL6と;ラインL6に設けられたポンプ13とを有する。
殺菌剤混合手段9はタンク12の次亜塩素酸塩を全塩素除去処理水W4と混合し、全塩素除去処理水W4を殺菌し、飲料水基準、水道水基準を満たす処理水W5とする。
水質計C2は、処理水W5の遊離塩素濃度を測定可能なものであれば特に限定されない。水質計C2は、遊離塩素濃度以外に例えば、pH、導電率、水温等の測定機能を追加的に有してもよい。
【0031】
処理水W5は、飲料水基準、水道水基準を満たす飲料水である。飲料水、水道水に課される水質基準は、地域によってまたは国によって異なる。そのため殺菌剤は、地域によってまたは国によって適宜変更できる。殺菌剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、クロラミン、塩素(Cl2)が挙げられる。日本国の場合は、次亜塩素酸ナトリウムを殺菌剤として用いる。
【0032】
<飲料水製造方法>
本実施形態の飲料水製造方法は、アンモニア性窒素を含む被処理水を、逆浸透膜およびナノろ過膜のいずれか一方または両方を用いて処理し、透過水を得る膜ろ過工程と;透過水と次亜塩素酸塩とを混合し、酸化処理水を得る次亜塩素酸塩混合工程と;酸化処理水に含まれる全塩素を除去し、全塩素除去処理水を得る全塩素除去工程と;全塩素除去処理水と殺菌剤とを混合し、処理水を得る殺菌剤混合工程と;を有し;次亜塩素酸塩混合工程では、酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の次亜塩素酸塩を透過水と混合する。
以下、本実施形態の飲料水製造方法の一例について飲料水製造システム1を参照しながら説明する。
【0033】
まず、飲料水製造システム1においては、原水槽2の原水が給水ポンプ3によって前処理手段4に供給される。前処理手段4では原水の水質が調整され、被処理水W1が得られる。ただし、本実施形態において前処理は必須ではない。例えば、原水の水質が良好であるなら、前処理は省略可能である。
【0034】
次に、膜ろ過工程では、被処理水W1は逆浸透膜5に通水され、逆浸透膜5の二次側から透過水W2が得られる。逆浸透膜5への被処理水W1の導入量は、逆浸透膜5の処理能力により適宜設定すればよい。膜ろ過流束は、例えば、0.1~2.0m3/m2/Dayが好ましく、0.2~0.6m3/m2/Dayがより好ましく、0.25~0.5m3/m2/Dayがさらに好ましい。
【0035】
逆浸透膜5の透過水W2は、ラインL2に導出される。また、逆浸透膜5の濃縮水は、ラインL4に導出される。濃縮水の一部は、ラインL4A、ラインL1を経由して逆浸透膜5の一次側に被処理水W1として再供給される。濃縮水の残部は、ラインL4Bを経由してシステム外に排出される。
本形態例では膜ろ過工程では逆浸透膜5を用いるが、他の形態例においては膜ろ過工程でナノろ過膜を用いてもよく、逆浸透膜およびナノろ過膜を併用してもよい。
【0036】
次亜塩素酸塩と混合する前の透過水W2のpHは、8.6以下が好ましく、7以下がより好ましい。この透過水W2のpHが前記上限値以下であると、透過水W2中でアンモニア性窒素のなかでもアンモニウムイオンが支配的となる。そのため、後段の次亜塩素酸塩混合工程において次亜塩素酸塩によってアンモニア性窒素を効率よく除去しやすい。
【0037】
次に、次亜塩素酸塩混合工程では透過水W2が次亜塩素酸塩と混合され、酸化処理水W3が得られる。
次亜塩素酸塩は、タンク10からラインL5を経由してポンプ11によってラインL2内の透過水W2と混合される。次亜塩素酸塩の混合後、透過水W2のアンモニア性窒素の酸化分解反応が開始する。
【0038】
次亜塩素酸塩混合工程では、酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の次亜塩素酸塩を透過水と混合する。そのため、透過水W2に残存したアンモニア性窒素を確実に酸化して分解し、透過水W2からアンモニア性窒素を除去できる。
例えば、水質計C1で0.01mg/L以上の遊離塩素を検知することで、全てのアンモニア性窒素が確実に酸化され、アンモニア性窒素の処理が完了したことを判断できる。
【0039】
酸化処理水W3の遊離塩素濃度は0.1mg/L以上が好ましく、1mg/L以上がより好ましく、2mg/L以上がさらに好ましく、3mg/L以上が特に好ましい。逆浸透膜の膜閉塞が起きたときや再稼働したときに透過水のアンモニア量が変動した場合であっても、遊離塩素濃度が前記下限以上となる量の次亜塩素酸塩を透過水W2と混合すれば、アンモニア性窒素をさらに確実に酸化できる。そのため、後段の処理で殺菌剤として次亜塩素酸塩を使用する時に、残存したアンモニア性窒素による悪影響を防止でき、安全で水質の変動が少ない飲料水を生産しやすい。
酸化処理水W3の遊離塩素濃度は10mg/L以下が好ましく、8mg/L以下がより好ましく、6mg/L以下がさらに好ましく、4mg/L以下が特に好ましい。遊離塩素濃度が前記上限値以下となる量の次亜塩素酸塩を透過水W2と混合すれば、後段に設置された全塩素除去手段8の遊離塩素による劣化を防止しやすい。また、次亜塩素酸塩の使用量を低減でき、コスト面でも有利である。
遊離塩素濃度のこれらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0040】
次亜塩素酸塩混合工程で使用する次亜塩素酸塩は、酸化処理水W3の遊離塩素濃度の目標値(0.01mg/L以上)に応じて適宜設定できる。
次亜塩素酸塩の使用量は、透過水W2のアンモニア性窒素量に基づいて調整できる。透過水W2のアンモニア性窒素を確実に酸化して分解する点では、逆浸透膜5の通水初期の透過水W2のアンモニア性窒素濃度を測定することが好ましい。酸化処理水W3の遊離塩素濃度がより確実に0.01mg/L以上となる次亜塩素酸塩量を算出して設定でき、より確実にアンモニア性窒素を充分に除去できるからである。
【0041】
次に、全塩素除去工程では、酸化処理水W3から全塩素が除去され、全塩素除去処理水W4が得られる。酸化処理水W3から全塩素、特に結合塩素を除去することで、被処理水に含まれていたアンモニア性窒素の除去が完了する。
本形態例では、全塩素除去手段8の活性炭を用いて酸化処理水W3から全塩素を除去する。ただし、酸化処理水W3から全塩素を除去できるものであれば、活性炭以外の全塩素除去材を任意に使用できる。
【0042】
全塩素除去工程の全塩素除去手段への酸化処理水W3の通水速度は、特に限定されない。例えば、空間速度(SV)では、1~200hr-1が好ましく、3~100hr-1がより好ましく、5~30hr-1がさらに好ましい。また、線速度(LV)では1~100m/hが好ましく、3~50m/hがより好ましく、6~30m/hがさらに好ましい。
通水速度が前記範囲の下限値以上であると、飲料水の生産性が優れ、処理効率を充分に確保しやすい。通水速度が前記範囲の上限値以下であると、活性炭等の全塩素除去材の消費量を少なくでき、コスト面で有利である。
【0043】
そして、殺菌剤混合工程では、全塩素除去処理水W4と殺菌剤とを混合し、処理水W5を得る。殺菌剤の種類は、地域によってまたは国によって適宜変更できる。日本国の場合は、次亜塩素酸ナトリウムを殺菌剤として用いる。日本の水道水基準においては、遊離塩素濃度を0.1mg/L以上とすること、または結合塩素濃度を0.4mg/L以上とすることが課される。殺菌剤としての次亜塩素酸ナトリウムの使用量は、これらの水質基準を満たすよう調整する。
【0044】
<作用機序>
以上、一形態例を示して説明した本実施形態においては、アンモニア性窒素を含む被処理水を、逆浸透膜およびナノろ過膜のいずれか一方または両方を用いて処理し、透過水を得る。この透過水にはアンモニア性窒素が残存することがあり、しかも、膜ろ過手段の膜閉塞や稼働状況によってはその残存量が変動することもある。
そこで本実施形態では、この透過水のアンモニア性窒素に対して充分量の次亜塩素酸塩を混合し、透過水のアンモニア性窒素を酸化する。具体的には、酸化後の酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる量の次亜塩素酸塩を透過水と混合する。酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L以上となる次亜塩素酸塩量は、透過水のアンモニア性窒素量と酸化反応する次亜塩素酸塩の反応当量よりも多めの設定量である。そのため、透過水のアンモニア性窒素量が変動したとしても、次亜塩素酸塩の使用量があらかじめ多めに設定されているから、アンモニア性窒素を確実に酸化して分解できる。
本実施形態によれば、透過水のアンモニア性窒素の全量を確実に酸化できるから、後段の全塩素、すなわち結合塩素および遊離塩素の除去によって被処理水に含まれていたアンモニア性窒素を充分に除去できる。
【0045】
加えて、酸化処理水と混合すべき次亜塩素酸塩の使用量の算出は、透過水のアンモニア性窒素量さえわかれば複雑な計算を必要としない。そのため、充分量の次亜塩素酸塩を酸化処理水と混合することで、次亜塩素酸塩の使用量の複雑な制御を必要とせずとも被処理水のアンモニア性窒素を充分に除去できる。
このようにして得られる酸化処理水にはアンモニア性窒素が残存しないから、次亜塩素酸等の殺菌剤を加えたときのアンモニアとの反応を確実に防止できる。また、殺菌剤の混合の前に全塩素、すなわち結合塩素および遊離塩素を除去するため、殺菌剤を混合した後には飲料水の残留塩素濃度等の水質が安定する。
したがって、次亜塩素酸塩の使用量の複雑な制御を必要とせずとも被処理水のアンモニア性窒素を充分に除去でき、水質が安定した飲料水を簡便に製造できる。
【0046】
以上説明した本実施形態の作用機序をさらに具体的に説明すると、飲料水製造システム1においては、酸化処理水W3の遊離塩素濃度が0.1mg/L以上となるように次亜塩素酸塩を透過水W2と混合する。そのため飲料水製造システム1によれば、運転停止後の再稼働時や膜閉塞時に逆浸透膜5の阻止率が変化したとしても、処理水W5の水質が安定しやすい。
加えて、アンモニア性窒素の除去のためのイオン交換樹脂を必要としないため、特許文献1の製造方法等の従来法と比較して省スペース化、低コスト化にも適している。
【0047】
以上説明した飲料水製造システム1は上述した構成を備えるため、飲料水製造システム1を用いることによって上述の本実施形態に係る飲料水製造方法を実施でき、上述の作用機序を発揮できる。
【0048】
<他の実施形態例>
以上、一例を示して本実施形態について説明したが、本発明は本明細書に開示の実施形態例に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0049】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0050】
<原水>
・原水1:アンモニア性窒素の濃度が4.9mg/L、硬度(カルシウムとマグネシウム)が17mg/L、ナトリウムイオンの濃度が250mg/L、TOCが9.5mg/L、溶性ケイ酸の濃度が54mg/Lである原水。
・原水2:アンモニア性窒素の濃度が2mg/L、硬度(カルシウムとマグネシウム)が86mg/L、ナトリウムイオンの濃度が164mg/L、TOCが2.3mg/L、溶性ケイ酸の濃度が45mg/Lである原水。
・原水3:アンモニア性窒素の濃度が0.9mg/L、硬度(カルシウムイオンとマグネシウム)が63mg/L、ナトリウムイオンの濃度が232mg/L、TOCが2.3mg/L、溶性ケイ酸の濃度が48mg/Lである原水。
【0051】
<試験用システムの構築>
図1に示す飲料水製造システム1を構築した。前処理手段4として、糸巻フィルター(ゼット工業株式会社製「ZW-PB10-750L」)をラインL1に設置した。また、膜ろ過手段6として、逆浸透膜エレメント(日東電工株式会社製「ESPA2-LD」)を使用した。水質計C1および水質計C2として、濃度測定器(横河電機株式会社製「無試薬形遊離塩素計FC400G」)を使用した。
実施例1~3、比較例3ではこの飲用水製造システム1を使用した。
【0052】
原水1を前処理した後の被処理水W1を逆浸透膜5に被処理水W1のpH7.0、膜ろ過流束0.30m3/m2/Day、透過水流量7.0m3/hの条件で通水し、アンモニア態窒素を残留する逆浸透膜透過水を得た。次いで、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を21.3mL/minの条件で膜透過水W2と混合した。その後、活性炭を用いて酸化処理水W3から全塩素を除去した。そして、殺菌剤として、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を0.4mL/minの条件で全塩素除去処理水W4と混合し、処理水W5を得た。
【0053】
<実施例2>
原水2のそれぞれを前処理した後の被処理水W1を逆浸透膜5に被処理水W1のpH7.0、膜ろ過流束0.25m3/m2/Day、透過水流量6.0m3/hの条件で通水し、アンモニア態窒素を残留する逆浸透膜透過水を得た。次いで、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を12.1mL/minの条件で膜透過水W2と混合した。その後、活性炭を用いて酸化処理水W3から全塩素を除去した。そして、殺菌剤として、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を0.3mL/minの条件で全塩素除去処理水W4と混合し、処理水W5を得た。
【0054】
<実施例3>
原水3のそれぞれを前処理した後の被処理水W1を逆浸透膜5に被処理水W1のpH7.0、膜ろ過流束0.40m3/m2/Day、透過水流量22.0m3/hの条件で通水し、アンモニア態窒素を残留する逆浸透膜透過水を得た。次いで、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を22.2mL/minの条件で膜透過水W2と混合した。その後、活性炭を用いて酸化処理水W3から全塩素を除去した。そして、殺菌剤として、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を1.1mL/minの条件で全塩素除去処理水W4と混合し、処理水W5を得た。
【0055】
<比較例1>
比較例1では原水1を使用した。そして、前処理手段の後に、次亜塩素酸塩混合手段、膜ろ過手段、全塩素除去手段と殺菌剤混合手段との順で構成された比較試験装置1を使用した。比較試験装置1の次亜塩素酸塩添加手段において、6質量%の次亜塩素酸ナトリウムを水溶液86.9mL/minの条件で被処理水W1と混合した以外は実施例1と同様の通水条件で処理水を得た。
【0056】
<比較例2>
比較例2では原水1を使用した。そして、前処理手段の後に、次亜塩素酸塩混合手段、全塩素除去手段、膜ろ過手段と殺菌剤混合手段との順で構成された比較試験装置2を使用した。比較試験装置2の次亜塩素酸塩添加手段において、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を89.5mL/minの条件で被処理水W1と混合した以外、実施例1と同様の通水条件で処理水を得た。
【0057】
<比較例3>
比較例3では原水1を使用した。酸化処理水W3の遊離塩素濃度を0.01mg/L未満となるように、次亜塩素酸塩添加手段における次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量を5.3mL/minと変更した以外は、実施例1と同様にして処理水を得た。
【0058】
<測定方法>
(アンモニア性窒素濃度)
HACH社の多項目水質分析計DR1900を用いて(測定項目は「アンモニア性窒素」)ネスラー法により、被処理水W1、透過水W2のアンモニア性窒素濃度を測定した。
【0059】
(遊離塩素濃度)
水質計C1、水質計C2を使用して、酸化処理水W3、処理水W5の遊離塩素濃度を測定した。水質計C1、水質計C2は、横河電機株式会社製「無試薬形遊離塩素計FC400G」を用い、電流法(ポーラログラフ法)によって遊離塩素濃度を測定した。酸化処理水W3のpHは5.0~5.5、処理水W5のpHは7.0~8.0だった。
【0060】
実施例1~3、比較例3の被処理水W1、透過水W2のアンモニア性窒素濃度、酸化処理水W3、処理水W5の遊離塩素濃度の測定結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
実施例1~3では、次亜塩素酸塩の使用量の複雑な制御を必要とせずとも被処理水のアンモニア性窒素を充分に除去でき、水質が安定した飲料水を製造できた。
対して、比較例1では、酸化剤として使用した次亜塩素酸ナトリウムにより逆浸透膜の膜阻止率が実施例1と比べ、70%に低下した。そのため、逆浸透膜の透過水の水質が悪化になり、飲料水基準を満たさなくなるため、逆浸透膜を交換する必要がある。
比較例2では、次亜塩素酸塩添加手段における次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量が実施例1と比べ、約4.2倍多くなり、これに伴って活性炭の消費量が多くなった。
比較例3では、膜閉塞で阻止率が変化したとき、次亜塩素酸ナトリウムの使用量が不足していたため、酸化処理水の遊離塩素濃度が0.01mg/L未満であった。被処理水中のアンモニア性窒素の除去が不充分であることから、殺菌剤としての次亜塩素酸ナトリウムを混合したとき、残存したアンモニア性窒素と次亜塩素酸ナトリウムが反応し、処理水の遊離塩素濃度が0.3~1.5mg/Lの範囲で変動した。このように処理水の水質が非常に不安定であった。したがって、飲料水基準を満たすためには、アンモニア性窒素の量に応じて、殺菌剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)の添加量を制御する等の煩雑な工程が必要となる。さらに、処理水の遊離塩素酸濃度が変動により高くなる場合があるため、配管や設備を腐食させるおそれもある。