(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057670
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】飲料水製造方法および飲料水製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20230101AFI20230417BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230417BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230417BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20230417BHJP
【FI】
C02F1/68 530A
C02F1/68 520C
C02F1/68 540A
C02F1/68 540D
C02F1/68 510A
C02F1/44 A
C02F1/28 F
C02F9/02
C02F9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167271
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石橋 光
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 悠介
【テーマコード(参考)】
4D006
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA07
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA71
4D006KB12
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4D624AA01
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4D624DB04
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4D624DB26
(57)【要約】
【課題】安価な飲料水製造方法を提供すること。
【解決手段】逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水W2を脱塩処理し、脱塩水W3を得る脱塩処理工程と、前記脱塩水W3のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水W4を得る調整工程と、前記調整水W4とミネラル剤とを接触させ、ミネラル処理水W5を得る接触処理工程と、前記ミネラル処理水W5を活性炭で処理して活性炭処理水W7を得る活性炭処理工程と、前記活性炭処理水W7中から不純物を除去し、処理水W6を得る不純物除去工程とを有し、前記ミネラル剤は、炭酸塩含有量が99.8質量%以下のミネラル剤を含む、飲料水製造方法を採用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水とミネラル剤とを接触させ、ミネラル処理水を得る接触処理工程と、
前記ミネラル処理水中から不純物を除去し、処理水を得る不純物除去工程とを有する飲料水製造方法であって、
前記ミネラル剤は、炭酸塩含有量が99.8質量%以下のミネラル剤を含む、飲料水製造方法。
【請求項2】
前記不純物除去工程は、ミネラル処理水をろ過機構でろ過する工程である、請求項1に記載の飲料水製造方法。
【請求項3】
前記ろ過機構のフィルター孔径が、3μm以下である、請求項2に記載の飲料水製造方法。
【請求項4】
前記接触処理工程と前記不純物除去工程との間に、前記ミネラル処理水を活性炭で処理する活性炭処理工程をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料水製造方法。
【請求項5】
前記接触処理工程の前に、
逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理工程と、
前記脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る調整工程をさらに有し、
前記調整水を前記被処理水とする請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料水製造方法。
【請求項6】
被処理水とミネラル剤とを接触させ、ミネラル処理水を得る接触処理部と、
前記ミネラル処理水中から不純物を除去する不純物除去部とを有する飲料水製造システムであって、
前記ミネラル剤は、炭酸塩含有量が99.8質量%以下のミネラル剤を含む、飲料水製造システム。
【請求項7】
前記不純物除去部は、ミネラル処理水をろ過機構でろ過する工程である、請求項6に記載の飲料水製造システム。
【請求項8】
前記ろ過機構のフィルター孔径が、3μm以下である、請求項7に記載の飲料水製造システム。
【請求項9】
前記接触処理部と前記不純物除去部との間に、前記ミネラル処理水を活性炭で処理し活性炭処理水を得る活性炭処理部をさらに有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の飲料水製造システム。
【請求項10】
前記接触処理部の前に、
逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理部と、
前記脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る調整部をさらに有し、
前記被処理水が前記調整水である請求項6~9のいずれか一項に記載の飲料水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水製造方法および飲料水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下水や河川水などの原水を脱塩処理する方法が知られている。脱塩処理により得られる脱塩水はpHが低く、処理水を供給する配管や設備の腐食が度々問題になることがあった。そのため、通常、脱塩水には、腐食性を抑制するための後処理が行われる。
【0003】
このような後処理としては、脱塩水に炭酸カルシウムを溶解させる方法が知られている。例えば特許文献1には、逆浸透膜透過水と炭酸塩粒子とを接触させる、処理水の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で用いられる炭酸塩粒子は、純度の高い炭酸塩粒子は高価であり、鉱石から得られる純度の低い炭酸塩粒子は不純物を含むため飲料水に適さないという問題があった。なお、一般的に使用される純度の高い炭酸塩粒子は、人工的に作られるものであり、その純度は炭酸塩含有量が100質量%である。
【0006】
本発明は、純度の低い炭酸カルシウム鉱石を用いた場合であっても、飲料水の製造方法および飲料水製造システムを安価かつ簡便に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]被処理水とミネラル剤とを接触させ、ミネラル処理水を得る接触処理工程と、
前記ミネラル処理水中から不純物を除去し、処理水を得る不純物除去工程とを有する飲料水製造方法であって、
前記ミネラル剤の炭酸塩含有量が、99.8質量%以下である、飲料水製造方法。
[2]前記不純物除去工程は、ミネラル処理水をろ過機構でろ過する工程である、[1]に記載の飲料水製造方法。
[3]前記ろ過機構のフィルター孔径が、3μm以下である、[2]に記載の飲料水製造方法。
[4]前記接触処理工程と前記不純物除去工程との間に、前記ミネラル処理水を活性炭で処理する活性炭処理工程をさらに有する、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料水製造方法。
[5]前記接触処理工程の前に、
逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理工程と、
前記脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る調整工程をさらに有し、
前記調整水を前記被処理水とする[1]~[4]のいずれかに記載の飲料水製造方法。
[6]被処理水とミネラル剤とを接触させ、ミネラル処理水を得る接触処理部と、
前記ミネラル処理水中から不純物を除去する不純物除去部とを有する飲料水製造システムであって、
前記ミネラル剤の炭酸塩含有量が、99.8質量%以下である、飲料水製造システム。
[7]前記不純物除去部は、ミネラル処理水をろ過機構でろ過する工程である、[6]に記載の飲料水製造システム。
[8]前記ろ過機構のフィルター孔径が、3μm以下である、[7]に記載の飲料水製造システム。
[9]前記接触処理部と前記不純物除去部との間に、前記ミネラル処理水を活性炭で処理し活性炭処理水を得る活性炭処理部をさらに有する、[6]~[8]のいずれかに記載の飲料水製造システム。
[10]前記接触処理部の前に、
逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理部と、
前記脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る調整部をさらに有し、
前記被処理水が前記調整水である[6]~[9]のいずれかに記載の飲料水製造システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、純度の低い炭酸カルシウム鉱石を用いることで、安価な飲料水製造方法および飲料水製造システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る飲料水製造システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】孔径1μmのフィルターを用いた時の処理水の色度を示す図である。
【
図3】孔径10μmのフィルターを用いた時の処理水の色度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態における飲料水製造方法および飲料水製造システム1について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0011】
本実施形態の飲料水製造方法は、
原水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、供給水を得る第2調整工程と、
逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理工程と、
脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る第1調整工程と、
調整水とミネラル剤とを接触させ、ミネラル処理水を得る接触処理工程と、
ミネラル処理水を活性炭で処理し、活性炭処理水を得る活性炭処理工程と、
活性炭処理水中から不純物を除去し、処理水を得る不純物除去工程とを有する。
【0012】
本明細書において、遊離炭酸とは水中に溶けている二酸化炭素を表す。
【0013】
以下の説明においては、本実施形態の飲料水製造システム1における各処理を施す前の水を「原水W1」と称する。また、脱塩処理工程で処理される水を「供給水W2」、脱塩処理工程で得られる水を「脱塩水W3」、接触処理工程で処理される水を「調整水W4(被処理水W4)」、接触処理工程で得られる水を「ミネラル処理水W5」、活性炭処理工程で得られる水を「活性炭処理水W7」、不純物除去工程で得られる水を「処理水W6」と称する。
【0014】
[飲料水製造システム]
以下、本実施形態の飲料水製造に用いる飲料水製造システム1について説明する。
図1は、本実施形態の飲料水製造システム1の概略構成を示す図である。なお、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の飲料水製造システム1は、第2調整部50と、脱塩処理部30と、第1調整部40と、接触処理部10と、活性炭処理部70と、不純物除去部20と、処理水槽63と、を有している。
【0016】
第2調整部50にはラインL6が接続されている。第2調整部50と脱塩処理部30とはラインL4で接続されている。脱塩処理部30と第1調整部40とはラインL5で接続されている。第1調整部40と接触処理部10とはラインL1で接続されている。接触処理部10と活性炭処理部70とはラインL2で接続されている。活性炭処理部70と不純物除去部20とはラインL7で接続されている。不純物除去部20と処理水槽63とはラインL3で接続されている。
【0017】
飲料水製造システム1では、原水W1がラインL6を通じて第2調整部50に導入され、供給水W2としてラインL4から導出される。
供給水W2はラインL4を通じて脱塩処理部30に導入され、脱塩水W3としてラインL5から導出される。
脱塩水W3はラインL5を通じて第1調整部40に導入され、調整水W4としてラインL1から導出される。
調整水W4はラインL1を通じて接触処理部10に導入され、ミネラル処理水W5としてラインL2から導出される。
ミネラル処理水W5はラインL2を通じて活性炭処理部70に導入され、活性炭処理水W7としてラインL7から導出される。
活性炭処理水W7はラインL7を通じて不純物除去部20に導入され、処理水W6として処理水槽63に導入される。
【0018】
(第2調整部)
第2調整部50は、飲料水製造システム1に導入される原水W1のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、供給水W2とする。本実施形態の第2調整部50は、前処理槽53と、pH調整手段51と、二酸化炭素供給手段52と、を備えている。
【0019】
pH調整手段51は、原水W1に酸またはアルカリを添加してpHを所望の範囲に調整することが可能な手段であればよく、原水W1に酸またはアルカリを滴下し撹拌する手段を例示できる。
二酸化炭素供給手段52は、原水W1に二酸化炭素を供給して遊離炭酸の濃度を調整することが可能な手段であればよく、例えば、原水W1に二酸化炭素を直接吹き込む手段でもよいし、炭酸水素ナトリウムと硫酸との混合物を原水W1に供給し、系中で二酸化炭素を発生させることで二酸化炭素を供給する手段であってもよい。
【0020】
ラインL6およびラインL4は、前処理槽53に接続されている。
第2調整部50では、ラインL6を通じて前処理槽53に導入された原水W1のpHが調整されて供給水W2とされ、ラインL4から導出されて後段の脱塩処理部30に送られる。
【0021】
(脱塩処理部)
脱塩処理部30は、逆浸透膜を備え、逆浸透法により無機塩類を含む供給水W2を脱塩処理する。
逆浸透膜の材質としては、例えば、ポリアミド、ポリスルホン、セルロースアセテートが挙げられる。なかでも、逆浸透膜の材質としては、水処理効率及び価格の観点で、芳香族ポリアミドまたは架橋芳香族ポリアミドを含むポリアミドが好ましい。
【0022】
脱塩処理部30では、ラインL4を通じて導入された供給水W2が脱塩処理されて脱塩水W3とされ、ラインL5から導出されて後段の第1調整部40に送られる。
【0023】
(第1調整部)
第1調整部40は、脱塩水W3のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水W4(被処理水W4)とする。本実施形態の第1調整部40は、調整槽43と、pH調整手段41と、二酸化炭素供給手段42と、を備えている。
【0024】
pH調整手段41は、脱塩水W3に酸またはアルカリを添加してpHを所望の範囲に調整することが可能な手段であればよく、pH調整手段51で例示したものと同じものを例示できる。
二酸化炭素供給手段42は、脱塩水W3に二酸化炭素を供給して遊離炭酸の濃度を調整することが可能な手段であればよく、二酸化炭素供給手段52で例示した態様と同様の態様を例示できる。
【0025】
ラインL5およびラインL1は、調整槽43に接続されている。
第1調整部40では、ラインL5を通じて調整槽43に導入された脱塩水W3のpHが調整されて調整水W4とされ、ラインL1から導出されて後段の接触処理部10に送られる。
【0026】
(接触処理部)
接触処理部10は、調整水W4にミネラル剤に接触させる。
接触処理部10としては、調整水W4にミネラル剤に接触させることが可能な形態であれば特に限定されず、内部にミネラル剤が充填された通水管に調整水W4が通水される形態を例示できる。
【0027】
接触処理部10では、ラインL1を通じて導入された調整水W4にミネラル剤が添加されてミネラル処理水W5とされ、ラインL2から導出されて後段の活性炭処理部70に送られる。
【0028】
(活性炭処理部)
活性炭処理部70は、ミネラル処理水W5を活性炭で処理し、活性炭処理水W7とする。活性炭で処理することにより、ミネラル処理水W5中の金属由来の色素成分が活性炭に吸着して除去される。
【0029】
活性炭処理部70としては、ミネラル処理水W5にミネラル剤に接触させることが可能な形態であれば特に限定されず、内部に活性炭が充填された通水管にミネラル処理水W5が通水される形態を例示できる。
【0030】
活性炭処理部70では、ラインL2を通じて導入されたミネラル処理水W5が活性炭で処理されて活性炭処理水W7とされ、ラインL7から導出されて後段の不純物除去部20に送られる。
【0031】
(不純物除去部)
不純物除去部20は、活性炭処理水W7中の不溶性不純物を除去する。
不純物除去部20としては、活性炭処理水W7中の不溶性不純物を除去する機構を有するものであればよく、ろ過機構、遠心分離機構を有するものを例示できる。なかでも、不溶性不純物を容易に除去できる点から、ろ過機構が好ましい。
【0032】
ろ過機構に用いるフィルターの材質は、ミネラル処理水W5中の不溶性不純物をろ過できるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリプロピレン製糸巻きフィルターが挙げられる。
【0033】
フィルターの孔径は、炭酸カルシウムが水に溶けた後の不溶性不純物の大きさに応じて決定すればよい。例えば、不溶性不純物が、粒径1~20μmの範囲で分布している場合、孔径3μm以下のフィルターを用いることが好ましく、孔径2μm以下のフィルターを用いることがより好ましく、孔径1μm以下のフィルターを用いることがさらに好ましい。
【0034】
不純物除去部20では、ラインL7を通じて導入された活性炭処理水W7中の不溶性不純物が除去されて処理水W6とされ、ラインL3から導出されて後段の処理水槽63に送られる。
【0035】
処理水槽63は、ラインL3を通じて導入される処理水W6を貯留する。
この例の処理水槽63には、色濁計2およびポンプ3が設置された循環ラインが接続されており、処理水槽63中の処理水W6の色度を測定できるようになっている。ミネラル剤に含まれる不溶性不純物は着色しているため、処理水W6の色度を測定することによって不溶性不純物の残存量を判別することができる。不純物の残存量が少ないほど色度が低く、色度が低いほど、飲料水に適する。
【0036】
なお、本発明の飲料水製造システムは、飲料水製造システム1に限定されない。
例えば、本発明の飲料水製造システムは、第2調整部、脱塩処理部、第1調整部および活性炭処理部のうちの1つ以上を備えていなくてもよい。
【0037】
[飲料水製造方法]
以下、一例として、飲料水製造システム1を用いた飲料水製造方法を説明する。
【0038】
(第2調整工程)
第2調整部50において、ラインL6を通じて前処理槽53に導入された原水W1に、pH調整手段51によって酸またはアルカリを添加してpHを調整し、さらに二酸化炭素供給手段52によって二酸化炭素を供給して遊離炭酸の濃度を調整して供給水W2を得る。
【0039】
第2調整工程で添加する酸としては、硫酸が好ましい。
第2調整工程で添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)が好ましい。
【0040】
供給水W2のpHは、5.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましい。これにより、逆浸透膜の阻止率を維持することが可能である。また、供給水W2のpHは、8.5以下が好ましく、7.0以下がより好ましい。これにより、カルシウム等の硬度成分およびシリカのスケールを抑制することで、逆浸透膜のファウリングを防止するとこができる。上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0041】
供給水W2における遊離炭酸の濃度は、5.0mg/L以上が好ましく、10.0mg/L以上がより好ましい。これにより、調整水W4の遊離炭酸濃度を一定にすることが可能である。また、供給水W2における遊離炭酸の濃度は、25.0mg/L以下が好ましく、20mg/L以下がより好ましく、15.0mg/L以下がより好ましい。上記上限を超過すると、調整水W4の遊離炭酸濃度を調整するために、第1調整工程の薬品添加量が増加する恐れがある。上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0042】
(脱塩処理工程)
脱塩処理部30において、第2調整部50からラインL4を通じて送られてきた供給水W2に対し、逆浸透膜を用いて脱塩処理し、脱塩水W3を得る。
【0043】
(第1調整工程)
第1調整部40において、脱塩処理部30からラインL5を通じて調整槽43に送られてきた脱塩水W3に、pH調整手段41によって酸またはアルカリを添加してpHを調整し、さらに二酸化炭素供給手段42によって二酸化炭素を供給して調整水W4を得る。
【0044】
第1調整工程で添加する酸としては、水質基準を満たしやすいことから、硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、硫酸がより好ましい。
【0045】
上述の硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
上述の亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カリウムが挙げられる。
上述の重亜硫酸塩としては、例えば重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸マグネシウム、重亜硫酸カリウムが挙げられる。
上述の酸化剤としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム、オゾン、過酸化水素などが挙げられる。
【0046】
第1調整工程で添加するアルカリとしては、水質基準を満たしやすいことから、水酸化ナトリウム(NaOH)が好ましい。
【0047】
後述の接触処理工程で調整水W4とミネラル剤とが接触されると、下記式(1)に示す平衡反応が進行する。
【0048】
【0049】
(式(1)中、MはCaまたはMgである。)
【0050】
接触処理工程において、調整水W4に炭酸塩を溶解させるためには、遊離炭酸(CO2)の量を増やして、上記式(1)の右向きの平衡反応を進行させる必要がある。しかし、上記式(1)における右辺の陰イオンである重炭酸イオン(HCO3-)は、pHによって遊離炭酸および炭酸イオン(CO3
2-)に変化することが知られている。そのため、第1調整工程において調整水W4のpHと遊離炭酸の濃度を調整することが好ましい。
【0051】
調整水W4のpHは、4.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、5.5以上がさらに好ましい。これにより、調整水W4における遊離炭酸の濃度が高くなりすぎず、調整水W4とミネラル剤との平衡反応の反応時間を短くできる。また、調整水W4のpHは、7.0未満が好ましく、6.5以下がより好ましい。これにより、調整水W4に含まれる炭酸イオンの濃度が高くなりすぎず、得られた処理水W5の炭酸イオンの濃度が水質基準を満たしやすい。上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0052】
調整水W4における遊離炭酸の濃度は、5mg/L以上が好ましく、10mg/L以上がより好ましい。これにより、調整水W4とミネラル剤との平衡反応を効率的に進行させることができるため、処理時間を短くでき、また得られる処理水W6における遊離炭酸の濃度が水質基準以下となりやすい。また、調整水W4における遊離炭酸の濃度は、25mg/L以下が好ましく、20mg/L以下がより好ましく、15mg/L以下がさらに好ましい。これにより、接触処理工程で接触処理部10に調整水W4を流す時間が短くなる。上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0053】
本実施形態の飲料水製造システム1において、調整水W4の全炭酸の濃度が一定である場合、調整水W4のpHにより遊離炭酸の濃度が決定される。また、調整水W4のpHは、脱塩水W3における重炭酸イオンの濃度と、脱塩水W3のpH調整の際に混合される酸またはアルカリの量と、によって制御される。
【0054】
(接触処理工程)
接触処理部10において、第1調整部40からラインL1を通じて送られてくる調整水W4(被処理水W4)をミネラル剤に接触させ、ミネラル処理水W5を得る。
【0055】
接触処理工程で用いられるミネラル剤としては、炭酸塩(炭酸カルシウム等)含有量が99.8質量%以下のミネラル剤であり、好ましくは99.5質量%以下のミネラル剤である。ミネラル剤の炭酸塩含有量の下限は特に限定されず、接触効率と補充頻度の観点から、例えば炭酸塩含有量が90質量%以上のミネラル剤を用いることが好ましい。なお、本願発明において、「ミネラル剤に含まれる炭酸塩含有量」は、例えば、JIS M 8850石灰石分析法により測定される。また、本願発明において、炭酸塩含有量の異なるミネラル剤を混合してしても良く、全ミネラル剤に対して50質量%以上の割合で炭酸塩含有量99.8質量%以下のミネラル剤を含むことが好ましく、全ミネラル剤に対して80質量%以上含むことがより好ましく、全ミネラル剤に対して90質量%以上含むことが特に好ましい。
ミネラル剤に含まれ得る不純物としては、鉄酸化物(Fe2О3等)、マグネシウム酸化物(MgO)、アルミニウム酸化物(Al2O3等)、シリカ酸化物(SiO2)等が挙げられる。不純物は不溶性物質であり、炭酸カルシウムが水に溶けた後もミネラル処理水に残る。
ミネラル剤としては、炭酸カルシウムを含有する鉱石を用いることができ、例えば、寒水石、大理石、貝殻、石灰岩が挙げられる。
【0056】
ミネラル剤の平均粒径としては、特に限定しないが、接触効率の観点から10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましく、2mm以下が特に好ましい。また、0.1mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、1mm以上が特に好ましい。この平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子分布測定装置で測定した値である。上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0057】
接触処理工程では、空間速度5hr-1以上30hr-1以下にて調整水W4をミネラル剤に接触させることが好ましい。また、調整水W4の空間速度が30hr-1以下であると、飲料水製造システム1の運転時と停止時とで接触処理部10の内部の水質の変動が小さくなる。その結果、上記式(1)に示す平衡反応を制御しやすい。調整水W4の空間速度が5hr-1以上であると、調整水W4とミネラル剤との平衡反応を効率的に進行させることができる。
調整水W4の空間速度は、単位時間あたりに処理する調整水W4の体積を、ミネラル剤の体積で除したものである。
【0058】
(活性炭処理工程)
活性炭処理部70において、ラインL2を通じて接触処理部10から送られてきたミネラル処理水W5を活性炭で処理し、活性炭処理水W7を得る。
活性炭処理工程で用いる活性炭の種類は特に限定されない。
【0059】
(不純物除去工程)
不純物除去部20において、ラインL7を通じて送られてきた活性炭処理水W7中の不溶性不純物をろ過等によって除去し、処理水W6を得る。得られた処理水W6は、ラインL3を通じて処理水槽63へと送り、貯留する。
【0060】
以上説明したように、本発明では、純度の低い炭酸カルシウム鉱石を用いた安価な飲料水製造方法および飲料水製造システムを提供できる。より詳細には、純度の低い安価な炭酸カルシウム鉱石を被処理水に接触させても、不溶性不純物をろ過機構等で除去することにより、得られる処理水は飲料水に適したものとなる。
また、不溶性不純物は着色しているため、得られる処理水の色度を測定することで、不溶性不純物の残存量を判別することができる。不純物の残存量が少ないほど色度が低く、色度が低いほど、飲料水に適する。
【0061】
なお、本発明の飲料水製造方法は、飲料水製造システム1を用いるものに限定されない。
例えば、本発明の飲料水製造方法は、第2調整工程、脱塩処理工程、第1調整工程および活性炭処理工程のうちの1つ以上を有していなくてもよい。
【実施例0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0063】
<実施例1>
図1に示す飲料水製造システム1を、以下の条件で用いて、処理水W6を得た。得られた処理水W6の色度を
図2に示す。
【0064】
原水W1:地下水を使用。
脱塩処理工程:逆浸透膜(日東電工製ESPA2-LDMAX)を使用。
第1調整工程:硫酸およびNaOHを用い、pH7.0に調整。遊離炭酸の濃度は25.0に調整。
接触処理工程:寒水石(平均粒径:1.5mm、炭酸カルシウム純度:99.2~99.5質量%)をミネラル剤として使用。なお、炭酸塩含有量99.8質量%以下のミネラル剤は、全ミネラル剤に対して90質量%以上を占める。
活性炭処理工程:活性炭を使用。
不純物除去工程:フィルター(ゼット工業製ZW-PP1-750、孔径1μm)を用いたろ過機構を使用。
【0065】
図2より、本発明の飲料水製造システム1を用いることで、ミネラル剤に含まれる不純物が孔径1μmのフィルターに除去されるため、色度の低い処理水W6を製造できることが確認できた。
【0066】
<実施例2>
図1に示す飲料水製造システム1を、以下の条件で用いて、処理水W6を得た。得られた処理水W6の色度を
図3に示す。
【0067】
原水W1:地下水を使用。
脱塩処理工程:逆浸透膜(日東電工製ESPA2-LDMAX)を使用。
第1調整工程:硫酸およびNaOHを用い、pH6.5に調整。遊離炭酸の濃度は10.0に調整。
接触処理工程:寒水石(平均粒径:1.5mm、炭酸カルシウム純度:99.2~99.5質量%)をミネラル剤として使用。なお、炭酸塩含有量99.8質量%以下のミネラル剤は、全ミネラル剤に対して90質量%以上を占める。
活性炭処理工程:活性炭を使用。
不純物除去工程:フィルター(ゼット工業製ZW-PP10-750、孔径10μm)を用いたろ過機構を使用。
【0068】
図3より、本発明の飲料水製造システム1を用いることで、色度の低い処理水W6を製造できることが確認できた。
【0069】
フィルター孔径が1μmの時(実施例1)は、10μm(実施例2)の時より、通水時の色度が低下し、より好ましい飲料水製造が可能になることが確認できた。