(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057678
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】浴室用介護椅子
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20230417BHJP
A47K 3/12 20060101ALI20230417BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20230417BHJP
A61G 5/00 20060101ALI20230417BHJP
A47C 9/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61H33/00 310K
A47K3/12
A61G5/12 701
A61G5/00 701
A47C9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167283
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】吉村 治
【テーマコード(参考)】
2D132
3B095
4C094
【Fターム(参考)】
2D132DA01
3B095AC04
3B095CA05
3B095CA10
4C094BC25
4C094GG02
(57)【要約】
【課題】着座者の臀部が痛くなるのを抑制できる浴室用介護椅子を提供する。
【解決手段】シートフレームを含む座部を備えた浴室用介護椅子3の座部4のシートフレーム10の左右方向の中央部に、前後へ延びる中央溝穴11を形成する。シートフレーム10の座面10aの中央溝穴11を挟んで左右両側には、一対の段落ち部12を形成する。座面10aの段落ち部12を囲む外側座面部分14よりも段落ち部12を低くして、段落ち部12と外側座面部分14との間に段差13を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームを備えた浴室用介護椅子であって、
前記シートフレームの左右方向の中央部には、前後へ延びる中央溝穴が形成され、
前記シートフレームの座面の前記中央溝穴を挟んで左右両側には、一対の段落ち部が形成され、
前記座面の前記段落ち部を囲む外側座面部分よりも前記段落ち部が低く、前記外側座面部分と前記段落ち部との間に段差が形成されていることを特徴とする浴室用介護椅子。
【請求項2】
前記段落ち部が、前記座面の前後方向の中央部と背側端部との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の浴室用介護椅子。
【請求項3】
前記左右の各段落ち部が、平面視で、前記段差を弧とし、前記中央溝穴と連なる縁部を弦とする概略半円状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室用介護椅子。
【請求項4】
前記段落ち部が、前記中央溝穴へ向かって下がる段落ち傾斜面を有していることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の浴室用椅子。
【請求項5】
前記外側座面部分が、前記段差へ向かって下がるとともにその下がり勾配が前記段差に近づくにしたがって急になる外側傾斜面を有し、
前記段差が、前記外側座面部分の段差側端部より急勾配の上向きの傾斜面を有し、
前記段落ち傾斜面の勾配が、前記中央溝穴に近づくにしたがって緩やかになっていることを特徴とする請求項4に記載の浴室用椅子。
【請求項6】
前記シートフレーム上に被さるクッション材を更に備え、
前記クッション材の左右方向の中央部には、前記中央溝穴と連通する中央貫通穴が前後へ延びるように形成されており、
前記クッション材における、前記段落ち部に被さる段落ち被覆部と前記外側座面部分に被さる外側被覆部との上面どうしが、段差無く滑らかに連なっていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の浴室用介護椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用介護椅子に関し、特に浴室用介護椅子の座部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体障がい者が浴室で体を洗ったりシャワーを浴びたりするのに使用される浴室用介護椅子は、一般の風呂椅子よりも座面が高い。
また、腰を上げるのが苦痛な人用の浴室用介護椅子として、局部を洗うために、座面の中央部に凹溝や貫通溝等の中央溝穴が形成されたものが知られている(特許文献1~2等参照)。通常、中央溝穴の幅は、局部の洗いやすさと、着座者の臀部が嵌り込まないこととを考慮して、10cm前後になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-061509号公報(
図2)
【特許文献2】特開2018-130353号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の知見では、中央溝穴の縁と座面とで作るエッジ部が着座者の臀部を圧迫して、着座者が痛みや違和感を覚えることがある。一般に、座面が平坦な椅子に座る場合、臀部に加わる圧力の分布は、坐骨結節の辺りが最も高いとされている。また、平均的な体格の人の場合、左右の坐骨結節の間隔は11cm~15cm程度であるので、中央溝穴付き浴室用介護椅子に座ると、左右の坐骨結節が前記エッジ部の近くに配置されて、臀部の痛みが増幅されてしまう。椅子に座った際の臀部の痛みを和らげるために、座面上にクッション材を装着することが一般に行われているが、中央溝穴がある場合は、前記エッジ部の圧迫による痛みは解消されない。クッション材の厚みを大きくすることも考えられるが、そうすると、着座したままで椅子ごと浴槽に入る場合、着座者が浴槽の湯に深くつかることができないことを発見した。
本発明はかかる事情に鑑み、着座者の臀部が痛くなるのを抑制できる、中央溝穴付きの浴室用介護椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、シートフレームを備えた浴室用介護椅子であって、
前記シートフレームの左右方向の中央部には、前後へ延びる中央溝穴が形成され、
前記シートフレームの座面の前記中央溝穴を挟んで左右両側には、一対の段落ち部が形成され、
前記座面の前記段落ち部を囲む外側座面部分よりも前記段落ち部が低く、前記外側座面部分と前記段落ち部との間に段差が形成されていることを特徴とする。
【0006】
当該浴室用介護椅子によれば、着座者の臀部が段落ち部上に配置されることによって、シートフレームから臀部に加わる圧力を分散ないしは緩和できる。特に、中央溝穴の縁と座面とにより形成されるエッジ部が、座面の段落ち部によって凹んでいるために、臀部がエッジ部によって局所的に圧迫されるのを抑制できる。これによって、臀部の痛みを和らげることができる。
臀部の痛みを和らげるためにクッション材の厚みを大きくする必要が無い。したがって、着座したままで椅子ごと浴槽に入る場合、着座者が浴槽の湯に深くつかることができる。
【0007】
前記段落ち部が、前記座面の前後方向の中央部と背側端部との間に配置されていることが好ましい。
これによって、着座者がシートフレーム上の規定の位置に座った姿勢で、坐骨結節が段落ち部上に配置されるようにできる。したがって、坐骨結節が圧迫されるのを抑制でき、臀部の痛みを確実に和らげることができる。
【0008】
前記左右の各段落ち部が、平面視で、前記段差を弧とし、前記中央溝穴と連なる縁部を弦とする概略半円状に形成されていることが好ましい。
これによって、着座者の坐骨結節が段落ち部上に確実に配置されるようにできる。また、シートフレームからの圧力を坐骨結節の周辺の臀部に分散させて、坐骨結節に圧力が集中するのを防止できる。
【0009】
前記段落ち部が、前記中央溝穴へ向かって下がる段落ち傾斜面を有していることが好ましい。
これによって、シートフレームからの圧力を坐骨結節の周辺の臀部に確実に分散させることができる。
【0010】
前記外側座面部分が、前記段差へ向かって下がるとともにその下がり勾配が前記段差に近づくにしたがって急になる外側傾斜面を有し、
前記段差が、前記外側座面部分の段差側端部より急勾配の上向きの傾斜面を有し、
前記段落ち傾斜面の勾配が、前記中央溝穴に近づくにしたがって緩やかになっていることが好ましい。
これによって、着座者の体重をシートフレームの広い範囲で支えることができる。言い換えると、シートフレームからの圧力を臀部に広く分散させることができる。
【0011】
前記浴室用介護椅子が、前記シートフレーム上に被さるクッション材を更に備え、
前記クッション材の左右方向の中央部には、前記中央溝穴と連通する中央貫通穴が前後へ延びるように形成されており、
前記クッション材における、前記段落ち部に被さる段落ち被覆部と前記外側座面部分に被さる外側被覆部との上面どうしが、段差無く滑らかに連なっていることが好ましい。
これによって、段落ち部が椅子の外観に現れないようにできる。段落ち被覆部は、着座者の荷重によって、段落ち部に倣うように変形される。シートフレームから臀部に加わる圧力をクッション材によって緩和できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る浴室用介護椅子によれば、着座者の臀部が痛くなるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る浴室用介護椅子を含む入浴用車椅子の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記浴室用介護椅子の平面図である。
【
図3】
図3は、前記浴室用介護椅子のシートフレームの平面図である。
【
図4】
図4は、前記シートフレームの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿う、前記シートフレームの正面断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線に沿う、前記シートフレームの側面断面図である。
【
図7】
図7(a)は、
図2のVII-VII線に沿う、前記浴室用介護椅子の座部の正面断面図である。
図7(b)は、着座者が着座したときの前記座部を、前記着座者の骨盤と合わせて示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、入浴用車椅子1は、キャリー2と、浴室用介護椅子3を含む。キャリー2に浴室用介護椅子3が搭載されている。要介助者(図示省略)を浴室用介護椅子3に着座させ、キャリー2を押すことで、浴室用介護椅子3を運搬して、浴室(図示せず)に出入りできる。さらに、図示は省略するが、浴室用介護椅子3は、浴槽框に設置された支持レールに移送されて昇降されることで、要介助者(着座者)を着座させたまま入槽可能である。
【0015】
図1及び
図2に示すように、浴室用介護椅子3は、座部4と、背凭れ5を備えている。座部4は、シートフレーム10と、クッション材20を備えている。
【0016】
図3及び
図4に示すように、シートフレーム10は、平面視で概略四角形に形成されている。
図6に示すように、シートフレーム10の座面10a(上面)の前側部分(
図6において左側部分)は、前方へ向かって上へ傾斜されている。シートフレーム10の背側(
図6において右側)の端部は、背凭れ5(
図1、
図2)に沿うように、せりあがり、背部せり上がり部19を構成している
【0017】
図3及び
図4に示すように、シートフレーム10の左右方向の中央部には、中央溝穴11が形成されている。中央溝穴11は、シートフレーム10を厚み方向に貫通している。中央溝穴11は、平面視で、前後へ延びる長円形に形成されている。
図6に示すように、中央溝穴11の前端部(
図6において左端部)は、シートフレーム10の前後方向の中間部よりも前方に位置されている。中央溝穴11の後端部(
図6において右端部)は、背部せり上がり部19の中間高さ部分まで及んでいる。
【0018】
図5及び
図6に示すように、シートフレーム10の座面10a(上面)は、全体的に中央部へ向かって下がっている。
図3及び
図4に示すように、座面10aの中央溝穴11を挟んで左右両側には、一対の段落ち部12が形成されている。段落ち部12は、座面10aにおける段落ち部12を囲む外側座面部分14より低い。段落ち部12と外側座面部分14との間には、段差13が形成されている。
【0019】
図3及び
図4に示すように、各段落ち部12は、平面視で概略半円状に形成されるとともに、中央溝穴11に達している。前記段差13によって、段落ち部12における概略半円状に延びる外縁が構成されている。言い換えると、段落ち部12は、平面視で、段差13を弧とし、中央溝穴11と連なる縁部12eを弦とする概略半円状に形成されている。縁部12eは、段落ち部12と中央溝穴11の側方の穴縁とで作るエッジ部を構成している。
【0020】
図3に示すように、左右の概略半円状の段落ち部12どうしが、中央溝穴11を挟んで対向している。これら段落ち部12は、左右対称形状に形成されている。
【0021】
図3に示すように、段落ち部12は、シートフレーム10の前後方向における中央部と背部せり上がり部19との間に配置されている。これによって、段落ち部12は、シートフレーム10に正しく着座した着座者の骨盤Aの特に坐骨結節A1(
図7)と対応する。好ましくは、段落ち部12における左右に最も広がった最広部分12cが、坐骨結節A1と対応する。
【0022】
図5に示すように、左右の各段落ち部12は、中央溝穴11へ向かって下がる段落ち傾斜面12aを有している。段落ち傾斜面12aの下がり勾配は、中央溝穴11に近づくにしたがって僅かに緩やかになっている。したがって、段落ち傾斜面12aは、緩曲率の凹曲面となっている。
【0023】
図5に示すように、外側座面部分14は、段差13へ向かって下がる外側傾斜面14aを有している。外側傾斜面14aの勾配は、段差13に近づくにしたがって急になっている。したがって、外側傾斜面14aは、凸曲面となっている。
段差13は、外側傾斜面14aの段差側13端部より急勾配の上向き傾斜面となっている。
【0024】
更に、シートフレーム10の座面10aには、複数のネジ止め穴部16と連通溝17が形成されている。例えば、段落ち部12における最広部分12cの左右外側と、中央溝穴11の前端部の左右外側の外側座面部部分14にそれぞれネジ止め穴部16が配置されている。各ネジ止め穴部16と段落ち部12とが、左右へ延びる連通溝17によって連通されている。
【0025】
図2に示すように、シートフレーム10上にクッション材20が被せられている。クッション材20によって、シートフレーム10の座面10a(上面)の全体が覆われている。クッション材20の左右方向の中央部には、中央貫通穴21が形成されている。中央貫通穴21は、前後へ延びる長円形状に形成され、中央溝穴11と連通している。
入浴介助者は、中央溝穴11及び中央貫通穴21を通して、着座者の局部を洗うことができる。
【0026】
クッション材20における、段落ち部12に被さる段落ち被覆部22と、外側座面部分14に被さる外側被覆部24との上面どうしは、段差無く滑らかに連なっている。したがって、段落ち部12が椅子3の外観に現れないようにできる。
好ましくは、クッション材20は、シートフレーム10に対して着脱可能である。
【0027】
図7(a)に示すように、着座者などの荷重がかかっていない状態では、段落ち被覆部22の裏面と段落ち部12との間には、隙間12gが形成されている。
図7(b)に示すように、着座者が着座すると、その荷重によって、段落ち被覆部22が段落ち部12に沿うように変形される。詳しくは、クッション材20における中央貫通穴21を挟んで左右両側の部分20a,20aが、それぞれ段差13と対応する部分23を変曲部として、外側被覆部24は座面部分14に沿って上へ反り、段落ち被覆部22では段落ち部12に沿って下へ凹むことで、概略S字状の断面になるように湾曲される。段落ち被覆部22が段落ち部12と接することで、隙間12gが殆ど無くなる。
【0028】
浴室用介護椅子3によれば、着座者の臀部の坐骨結節A1の周辺が、シートフレーム10の段落ち部12上に配置される。これによって、シートフレーム10から臀部に加わる圧力を分散ないしは緩和できる。中央溝穴11付きの椅子3であっても、中央溝穴11の縁と座面10aとにより形成されるエッジ部12eが段落ち部12によって凹んでいるために、着座者の坐骨結節A1の辺りが、エッジ部12eによって局所的に圧迫されるのを抑制できる。
特に、着座者が座部4上の規定の位置に正しく座った姿勢では、坐骨結節A1が段落ち部12上に確実に配置されるようにできる。したがって、シートフレーム10からの圧力が坐骨結節A1に集中するのを防止でき、坐骨結節A1の周辺の臀部に圧力を分散させることができる。更に、段落ち部12及び外側座面部分14を含む座面10a全体の曲面形状によって、着座者の体重を座面10aの広い範囲で受けることができ、シートフレーム10からの圧力を臀部に広く分散させることができる。
加えて、クッション材20によって、シートフレーム10から臀部に加わる圧力を吸収し、緩和できる。
この結果、臀部が痛くなるのを抑えることができる。ないしは、痛みを和らげることができる。
【0029】
臀部の痛みを和らげるために、クッション材20の厚みを大きくする必要が無い。したがって、クッション材20の厚みは最小限に抑えることができる。これによって、着座したままで椅子3ごと浴槽に入る場合、着座者が浴槽の湯に深く漬かることができる。
クッション材20をシートフレーム10から取り外し自在とすることによって、清掃を容易化できる。クッション材20が汚れたり破れたりしたときは、簡単に交換できる。
【0030】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、クッション材20の段落ち被覆部22が、隙間12gを埋める分だけ厚肉になっていてもよい。
中央溝穴11は、貫通穴に限らず、座面10aから凹む有底溝であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば要介助者の入浴介助用の車椅子に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
A 骨盤
A1 坐骨結節
1 入浴用車椅子
2 キャリー
3 浴室用介護椅子
4 座部
5 背凭れ
10 シートフレーム
10a 座面(上面)
11 中央溝穴
12 段落ち部
12a 段落ち傾斜面
12c 最広部
12e 縁部(エッジ部)
12g 隙間
13 段差
14 外側座面部分
14a 外側傾斜面
16 ネジ止め穴部
17 連通溝
19 背側端部
20 クッション材
21 中央貫通穴
22 段落ち被覆部
24 外側被覆部