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特開2023-57704顆粒体の製造方法及び生菌含有顆粒体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057704
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】顆粒体の製造方法及び生菌含有顆粒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/04 20060101AFI20230417BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20230417BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20230417BHJP
   A23L 33/135 20160101ALN20230417BHJP
【FI】
B01J2/04
B01J2/00 A
F26B5/04
A23L33/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167329
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】512313920
【氏名又は名称】株式会社プリス
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】川口 晋也
【テーマコード(参考)】
3L113
4B018
4G004
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB10
3L113AC23
3L113AC48
3L113AC69
3L113BA36
3L113CB15
3L113DA24
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD85
4B018MD86
4B018MD87
4B018ME14
4B018MF05
4B018MF06
4B018MF08
4G004AA02
4G004EA00
4G004EA06
(57)【要約】
【目的】 生成する顆粒体の特性を十分に引き出すことができ、特に生菌を生存したまま含有する顆粒体の製造に好適な顆粒体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の顆粒体の製造方法は、多孔質の顆粒体を造粒する顆粒体の製造方法であって、連続的に供給される原液を噴霧機構を介して冷却チャンバー内に噴霧し、前記噴霧された原液の液滴に直接冷媒が接することで低収縮の凍結顆粒体を形成し、前記冷却チャンバー内から移送される前記凍結顆粒体に含まれる凍結水分を昇華させ、乾燥された多孔質の顆粒体を造粒することを特徴とする
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の顆粒体を造粒する顆粒体の製造方法であって、
連続的に供給される原液を噴霧機構を介して冷却チャンバー内に噴霧し、
前記噴霧された原液の液滴に直接冷媒が接することで低収縮の凍結顆粒体を形成し、
前記冷却チャンバー内から移送される前記凍結顆粒体に含まれる凍結水分を昇華させ、乾燥された多孔質の顆粒体を造粒することを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記冷却チャンバーでは、当該チャンバー壁面に冷却用ジャケット部が形成されることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記冷却チャンバーにおける凍結温度は摂氏マイナス5度乃至摂氏マイナス120度の範囲であることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の顆粒体の製造方法であって、前記冷却チャンバーにおける凍結温度は摂氏マイナス10度乃至摂氏マイナス100度の範囲であることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記多孔質の顆粒体は、冷却チャンバー内の温度を制御することで径の大きさが制御されることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記多孔質の顆粒体は、平均粒径が1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲の顆粒体であることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の顆粒体の製造方法であって、前記多孔質の顆粒体は、当該顆粒体の表面に現れた孔部が当該顆粒体内部に存在する孔部と連通するように形成されていることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記冷却チャンバー内での噴霧された原液の凍結時間は1秒未満であることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記冷媒は、液体窒素、窒素ガス、液体アルゴン、アルゴンガス、液体ヘリウム、ヘリウムガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス、又は大気を冷却した冷却ガスの何れかであることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記噴霧機構は、ニ流体ノズル、一流体加圧ノズル、三流体ノズル、四流体ノズル、超音波ノズル、又は遠心噴霧器の何れかの機構を具備することを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記冷却チャンバーの底部には凍結顆粒体を捕集する捕集機構が設けられることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載の顆粒体の製造方法であって、前記凍結顆粒体に含まれる凍結水分は溶解しない温度での気体による通気若しくは減圧により昇華されることを特徴とする顆粒体の製造方法。
【請求項13】
菌類を生存させた原液を冷却チャンバー内に噴霧して直後に冷却して凍結顆粒体を形成し、形成された前記凍結顆粒体に含まれる凍結水分を昇華させて乾燥させることで生菌含有顆粒体を造粒することを特徴とする生菌含有顆粒体の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の生菌含有顆粒体の製造方法であって、前記生存される菌類が、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌、酪酸菌、枯草菌、酵母、酢酸菌、ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌、カンピロバクター、腸炎ピブリオ、ウェルシュ菌、セレウス菌、及びペスト菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌である生菌含有顆粒体の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の生菌含有顆粒体の製造方法であって、造粒される前記生菌含有顆粒体は多孔質であることを特徴とする生菌含有顆粒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴霧した原液を急速冷却することにより凍結造粒体を生成し、生成した凍結造粒体を乾燥することで多孔質の顆粒体を造粒する顆粒体の製造方法に関し、特に多孔質の顆粒体は生菌を多く含有する顆粒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、農薬、化学薬品、金属材料、工業用材料等の製造分野においては、一般的に噴霧乾燥による顆粒体の製造がおこなわれている。噴霧乾燥法により製造される場合では、所要のノズルやアトマイザーを利用し乾燥室内に霧状の液滴を発生させ、熱風などの乾燥手段により、霧状の液滴における液体成分を蒸発させて乾燥した粉体を生成する。生成された粉体は所定の捕集手段に集められて、取り出されるようにしている。
【0003】
また、凍結造粒乾燥法を用いて顆粒体を製造する装置もあり、例えば、筒状の冷却チャンバーに所要の原液を噴霧して、凍結造粒をする装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような装置では、冷却チャンバー内に臨んで配置されるノズルなどの噴霧機構に、所定の加熱部材などを設ける一方で、噴霧された原液は比較的に低い温度で急速に冷凍化されるように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献2】再公表特許WO2019/175954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
噴霧乾燥装置を使用して乾燥した顆粒体を製造する場合、粒度分布にばらつきが少なく且つ再現性に優れるという利点があり、流動性の高い球形の乾燥顆粒体を非晶質化を伴って製造できる。しかしながら、噴霧乾燥装置においては、液滴から顆粒に乾燥される過程において、溶媒が急速に移動することにより、顆粒中に不均一な部位が生成し、物理的な空孔が発生したり、顆粒が熱風の影響を受け易いことが課題となり易い。
【0006】
また、上述のような凍結造粒装置では、生成する顆粒体を粒径分布も広がらずに均一なものとするために、噴霧された原液を急速に凍結するように制御させており、凍結を短時間に完了するためには液体窒素温度(摂氏マイナス196度)を冷媒として利用したり、液体窒素温度に近い温度の気化窒素で利用して凍結を行っている。ところで、最近の粉体利用分野としては、食品製造や医薬品などの技術分野においては、このような十分に低い温度での凍結をした場合には、生菌に対する影響があり、数多くの生菌を生存させたままに顆粒体を流通させることが困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、生成する顆粒体の特性を十分に引き出すことができ、特に生菌を生存したまま含有する顆粒体の製造に好適な顆粒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的な課題を解決するため、本件発明者らは鋭意研究の末、比較的に温度の高い冷風で瞬間凍結させることで、数多くの生菌を生存させたままに顆粒体を得ることができることを見出し、従来の噴霧乾燥機における急激な液滴の収縮の如き現象を抑えて、生菌を生存したまま含有する顆粒体の製造に好適な多孔質の顆粒体を造粒する方法を確立しようとするものである。従来の凍結乾燥法では、凍結速度を速めるためには高性能の冷凍機で更に低い温度で急速冷凍をする傾向があり、数秒乃至数十秒の時間を要することもあったが、本発明では噴霧により液体表面の表面積が大きく増大し、比較的に高温の冷風によりミリセカンド単位の時間での瞬間凍結が実現され、結果として、生菌を生存したまま含有させる場合に極めて有利であることが判明した。
【0009】
すなわち、ここに開示される顆粒体の製造方法の一例は、多孔質の顆粒体を造粒する顆粒体の製造方法であって、連続的に供給される原液を噴霧機構を介して冷却チャンバー内に噴霧し、前記噴霧された原液の液滴に直接冷媒が接することで低収縮の凍結顆粒体を形成し、前記冷却チャンバー内から移送される前記凍結顆粒体に含まれる凍結水分を昇華させ、乾燥された多孔質の顆粒体を造粒することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る実施形態の一例によれば、冷却チャンバーは、当該チャンバー壁面に冷却用ジャケット部が形成される構成とすることができ、また、冷却チャンバーにおける凍結温度は摂氏マイナス5度乃至摂氏マイナス120度の範囲とすることができ、好ましくは、摂氏マイナス10度乃至摂氏マイナス100度の範囲ですることができる。また冷却チャンバー内での噴霧された原液の凍結時間は1秒未満とすることができる。
【0011】
また、一実施態様にかかる顆粒体の製造方法においては、冷却チャンバー内に液体窒素などの冷媒が気化したガスを導入されるようにすることもでき、冷媒を気化させたガスの導入と、冷却用ジャケット部を形成する構造を併用することも可能である。
【0012】
このような本発明により製造される多孔質の顆粒体は、顆粒体の対象物により異なるものの、その一例としては、当該顆粒体の表面に現れた孔部が当該顆粒体内部に存在する孔部と連通するように形成される。それぞれの孔部は、気泡のように大小様々なサイズのものが入り混じって構成され、スポンジのように暈も大きくされ、体積を基準にすれば気泡により軽量化される。特に多孔質の顆粒体における種々のサイズの孔は、真空乾燥時に凍結していた氷が昇華して抜けた孔から構成されるものであって、顆粒体内部まで連通する。
【0013】
また、或る実施態様にかかる顆粒体の製造方法においては、冷媒は、液体窒素、窒素ガス、液体アルゴン、アルゴンガス、液体ヘリウム、ヘリウムガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス、又は大気を冷却した冷却ガスの何れかを選ぶことができ、噴霧機構は、ニ流体ノズル、一流体加圧ノズル、三流体ノズル、四流体ノズル、超音波ノズル、又は遠心噴霧器の何れかの機構を選んで具備することが可能とされる。
【0014】
さらに或る実施態様にかかる顆粒体の製造方法においては、冷却チャンバーの底部には凍結顆粒体を捕集する捕集機構を設けることができ、凍結顆粒体に含まれる凍結水分は減圧の状態で昇華されるようにすることができる。
【0015】
本発明の顆粒体の製造方法は、特に、生菌を含有する顆粒体を製造する場合に、好適とされ、菌類を生存させた原液を冷却チャンバー内に噴霧して直後に冷却して凍結顆粒体を形成し、形成された前記凍結顆粒体に含まれる凍結水分を昇華させて乾燥させることで生菌含有顆粒体を造粒することを特徴とする。
【0016】
前記顆粒体に含有され得る菌類としては、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌、酪酸菌、枯草菌、酵母、酢酸菌、ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌、カンピロバクター、腸炎ピブリオ、ウェルシュ菌、セレウス菌、及びペスト菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌とすることができ、造粒される前記生菌含有顆粒体は多孔質とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の顆粒体の製造方法の一例に使用される噴霧凍結造粒装置を示す模式正面図である。
図2図1に示した噴霧凍結造粒装置の噴霧機構部と冷却チャンバーを概略的に示す模式図である。
図3】本発明の顆粒体の製造方法の一例に使用される乾燥装置の模式図である。
図4】本発明の顆粒体の製造方法の一例と噴霧乾燥法による顆粒体の製造方法のそれぞれで得られた顆粒体を各袋に入れて示す図面代用写真である。
図5】噴霧乾燥法による顆粒体の製造方法で得られた顆粒体の電子顕微鏡写真であり、乾燥入口温度を摂氏180度に設定した際の顆粒体を示す。
図6】噴霧乾燥法による顆粒体の製造方法で得られた顆粒体の電子顕微鏡写真であり、乾燥入口温度を摂氏120度に設定した際の顆粒体を示す。
図7】噴霧乾燥法による顆粒体の製造方法で得られた顆粒体の電子顕微鏡写真であり、乾燥入口温度を摂氏90度に設定した際の顆粒体を示す。
図8】本発明の顆粒体の製造方法の一例で得られた顆粒体の電子顕微鏡写真であり、冷却チャンバー内の温度を摂氏マイナス30度に設定した際の顆粒体を示す。
図9】本発明の顆粒体の製造方法の一例で得られた顆粒体の電子顕微鏡写真であり、冷却チャンバー内の温度を摂氏マイナス60度に設定した際の顆粒体を示す。
図10】本発明の顆粒体の製造方法の一例で得られた顆粒体の電子顕微鏡写真であり、冷却チャンバー内の温度を摂氏マイナス90度に設定した際の顆粒体を示す。
図11】本発明の顆粒体の製造方法の一例と噴霧乾燥法による顆粒体の製造方法のそれぞれで検定した生菌数を示すグラフである。
図12】本発明の顆粒体の製造方法の一例による顆粒体と冷蔵庫で冷凍したものを乾燥した顆粒体のそれぞれにおける乳酸菌の生菌数を示すグラフである(単位:cfu/g)。
図13】本発明の顆粒体の製造方法の一例による顆粒体の一例であり、デキストリンとアスコルピン酸の顆粒体の電子顕微鏡写真である。
図14】本発明の顆粒体の製造方法の一例による顆粒体の一例であり、乳糖の顆粒体の電子顕微鏡写真である。
図15】本発明の顆粒体の製造方法の一例による顆粒体の一例であり、酵母の顆粒体の電子顕微鏡写真である。
図16】本発明の顆粒体の製造方法の一例による顆粒体の一例であり、アルミナの顆粒体の電子顕微鏡写真である。
図17】本発明の顆粒体の製造方法の一例に使用される噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システムの構成例の一例を説明するシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】
本発明の顆粒体の製造方法の一例では、製造のための装置が不可欠であり、図1に示すような噴霧凍結造粒装置と、例えば図3に模式的に示す、凍結した顆粒体を乾燥させる真空乾燥装置とを用いて、多孔質顆粒体を製造する。本実施形態の顆粒体の製造方法では、生菌を含有する顆粒体と生菌を含有しない顆粒体の両方を製造することができるが、特に食品や医療薬品、農業産物分野で有用な顆粒体は、生菌を含有する顆粒体である。本発明の顆粒体の製造方法では、噴霧凍造粒工程と真空乾燥工程を別の装置でそれぞれ処理するものとして説明するが、1つの装置内で噴霧凍造粒工程と真空乾燥工程を連続して行うようにすることも可能である。
【0020】
図1に示すように、噴霧凍結造粒装置は、所定の原液を噴霧して凍結させて凍結顆粒体を製造する装置であり、筒状の冷却チャンバー30は当該チャンバーの軸方向が直立するように架台70に支持され、冷却チャンバー30の上端部には噴霧機構部10が設けられ、冷却チャンバー30の下端部には凍結顆粒体の捕集部50が取り付けられている。噴霧凍結造粒装置は、所定の原液が冷却チャンバー30の上端部に配設された噴霧機構部10に送られ、そこから冷却チャンバー30内で噴霧され、且つ低温雰囲気であることから急速に凍結される。冷却チャンバー30内で凍結した細かい粒からなる顆粒体は、当該冷却チャンバー30の底部に設けられた凍結顆粒体の捕集部50で集められ、捕集部50内で凍結したまま図3に示す真空乾燥装置60に送られる。
【0021】
図2は、図1に示した噴霧凍結造粒装置の噴霧機構部10と冷却チャンバー30の詳細を模式的に示した図である。噴霧機構部10においては、原液Mを噴霧する吐出部21を有した二流体ノズル本体部11が冷却チャンバー30の上端部に形成され、この二流体ノズル本体部11には原液供給管12及び圧縮ガス供給管15がそれぞれ接続されている。原液供給管12は、原液タンク13に備蓄された原液Mをポンプ14を介して二流体ノズル本体部11に供給するための配管部材であり、圧縮ガス供給管15は、コンプレッサー、ボンベ等を備えた圧縮ガス供給部16からの圧縮ガス(例えば、空気)を二流体ノズル本体部11に供給するための配管部材である。二流体ノズル本体部11は、これらの配管部材から供給された原液Mと圧縮ガスとを混合したのち吐出部21を介して当該原液Mを凍結造粒するための冷却チャンバー30内に噴霧する。また、圧縮ガス供給部16からの圧縮ガスによるベンチュリー効果により、ポンプ14を介さず原液Mを供給することも可能である。
【0022】
なお、本実施形態に係る噴霧機構部10には、二流体ノズル本体部11の吐出部21に原液Mが凍結することにより生成する凍結固形物が付着するのを防止するための凍結防止手段が設けられている。凍結防止手段は、凍結防止ガス供給部として、ガス吸入フィルタ17、送風ブロワ18、ヒータ22、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)19等を介して供給された常温又は加温されたガスを吐出部21近傍に噴射する凍結防止ガス配管20を備える。二流体ノズル本体部11の吐出部21から原液Mが噴霧されている間、凍結防止ガス配管20から噴射された、例えば、空気等の常温ガスAにより、氷柱状の凍結固形物の発生・付着を抑制し、吐出部21における閉塞を防ぐことができる。また、送風ブロワ18を用いず、コンプレッサー、ボンベ等の圧力ガスを使用することも可能である。
【0023】
また、二流体ノズル本体部11の吐出部21に原液Mが凍結することにより生成する凍結固形物が付着するのを防止するための凍結防止手段の他の例としては、圧縮ガス供給管15にヒータを設置して、噴霧に必要な圧縮ガス自体を加温する構造とすることもできる。
【0024】
二流体ノズル本体部11の吐出部21から噴霧された原液Mは、凍結造粒用の冷却チャンバー30内で凍結し、凍結造粒体Gを形成する。冷却チャンバー30は、ステンレス等の鋼材で形成することができ、中空の略円筒形状に形成された凍結造粒室31を備える。そして、凍結造粒室外壁33から同心円状に外側に向って断熱室34が形成されおり、凍結造粒室外壁33と断熱室内壁35との間は、凍結造粒室31室内を間接冷却する冷却媒体を充填するための冷却媒体充填室37として用いられ、これらはジャケット構造体を形成している。
【0025】
凍結造粒室31は、天面近傍に設けられた二流体ノズル11の吐出部21から噴霧された原液Mから凍結造粒体Gを形成させる場であり、冷却媒体充填室37に充填された冷却媒体又は凍結造粒室31内部に直接導入された冷却媒体の冷却効果により、そのチャンバー内温度が原液Mを凍結させる冷却温度(-10℃~-190℃、好ましくは-20℃~-150℃)を維持することが可能となるように構成されている。さらに後述するように、本実施形態の顆粒体の製造方法では、生菌を顆粒体に生存させるために、凍結温度を摂氏マイナス5度乃至摂氏マイナス120度の範囲、より好ましくは摂氏マイナス10度乃至摂氏マイナス100度の範囲に設定することができる。これは通常の冷媒を直接利用する方法よりも高温となるため、例えば室温の窒素ガス、大気などを気化した冷媒の液体窒素と混合する方法などで各気体流量を調整して凍結温度を制御することもできる。
【0026】
凍結造粒室31の下部には、凍結造粒室31室内で形成された凍結造粒体Gを捕集する捕集部50との連通が可能となるように開口部32が設けられ、この開口部32を介して捕集部50が取り付けられている。また、本実施形態では捕集部50をバッチ式としているが、捕集部50は交換が容易なため、複数個を用意して切り替えて使用する方法や、コンベヤ方式や空気輸送方式で順次凍結造粒した顆粒体を次々と運び出すようにすることも可能であり、原則的に噴霧凍結造粒装置は連続運転による量産が可能とされる。
【0027】
図3は真空乾燥装置60の模式図であり、捕集部50により集めた凍結造粒体Gを捕集部50ごと或いは容器を移し替えて乾燥チャンバー62にセットし、温度を維持しながら、真空に引いていくことで、凍結造粒体Gを昇華させながら乾燥させることができる。特に真空乾燥については、装置全体が真空ポンプにより減圧されて真空状態となり、昇華現象が生じて凍結造粒体Gから氷が昇華して水蒸気が発生する。一般的に真空下では水蒸気は大気下の約100万倍も膨張することから、そのままでは真空ポンプで排出することはできず、真空を維持することが困難である。そこで本実施形態ではコールドトラップ部64に、摂氏マイナス40度乃至80度程度の冷媒を通した配管を設置し、水蒸気をトラップして再度氷に戻しながら運転をする。すると、水蒸気の排出が極力少なくなり、真空ポンプへの負担がかからない運転が実現される。
【0028】
なお、本実施形態においては、冷却媒体充填室37における冷却媒体の残量を検知する媒体残量検知手段80を設けても良い。媒体残量検知手段80は、例えば、冷却媒体が液体である場合には、フロート式、ディスプレーサー式、ガイドパルス式、光学式、超音波、レーザー式といった各種レベルセンサを用いることができ、冷却媒体がガス体である場合には、半導体式、熱線型半導体式、赤外線式、超音波式といった各種濃度センサを用いることができる。そして、これらの検知結果を制御コンピュータ81等の情報処理装置に出力し、管理することで冷却媒体の残量、補充タイミング等を的確に把握することができる。また、制御コンピュータ81を介して接続された図示せぬモニタ等の表示手段や、スピーカー等の報知手段を介してオペレータに対し、冷却媒体の残量、補充タイミングを報知する構成としてもかまわない。また、凍結造粒室31室内の温度を測定するための温度センサ88を制御コンピュータ81に接続して、凍結造粒室31室内の温度を監視するように構成することもできる。
【0029】
さらに、本実施形態においては、冷却媒体の補充用ボンベ82、バルブ83といった冷却媒体補充手段を更に設けてもよい。この場合、バルブ83の開閉をオペレータの手動で行う形態としてもよいし、これらの冷却補充手段をレギュレータ84を介して制御コンピュータ81と接続することで、冷却媒体の残量検知、残量が不足した場合の補充を制御コンピュータ81介して自動的に行う形態とすることも無論可能である。さらに、凍結造粒室の温度を指定し、一定に制御するために、温度センサ88の温度監視、バルブ83の開度、レギュレータ84の圧力を制御コンピュータ81にて調整することにより、冷却媒体の流量をコントロールすることもできる。
【0030】
本実施形態の顆粒体の製造方法に使用する冷媒としては、液体窒素などの冷媒を使用することが可能であり、その他にも、窒素ガス、液体アルゴン、アルゴンガス、液体ヘリウム、ヘリウムガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス、又は大気を冷却した冷却ガスなどを使用することができる。
【0031】
また、本実施形態の顆粒体の製造方法に用いる噴霧機構としては、ニ流体ノズル、一流体加圧ノズル、三流体ノズル、四流体ノズル、超音波ノズル、又は遠心噴霧器の何れかの機構とすることができる。
【0032】
本実施形態の顆粒体の製造方法では、上述のような噴霧凍結造粒装置と真空乾燥装置を用いて、多孔質の顆粒体を製造することが可能である。これは、多孔質の顆粒体の製造方法の一例として、噴霧された原液を凍結させる際の凍結温度を例えば摂氏マイナス5度乃至摂氏マイナス120度の範囲とすることができ、このような温度範囲で多孔質の顆粒体が得られることが以下に説明する実験から得られている。また、多孔質の顆粒体は、平均粒径が1ミクロン乃至1000ミクロンの範囲の顆粒体であり、好ましくは5ミクロン乃至600ミクロンの範囲の顆粒体である。さらに、このような多孔質での顆粒体として、生菌を含有する原料を用いた場合、菌を顆粒体に加工した後とも生存する確率が高いとの知見が次のような対比実験により得られている。
【0033】
本実施形態においては、噴霧凍結造粒真空乾燥法と噴霧乾燥法により製造される顆粒体との対比実験をしている。乳酸菌を生菌とする試料として市販のヨーグルトを調整した液体を原液として噴霧機構の2流体ノズルに導入し、そのノズルから冷却チャンバー内で噴霧した。噴霧凍結造粒真空乾燥法では、原液の供給測度を4kg/hに設定し、図1、2に示した噴霧凍結造粒装置で造粒し、図3に示した真空乾燥装置で凍結部分を昇華させて乾燥されている。これに対して噴霧乾燥法による顆粒体の製造を対比させるものとし、乾燥チャンバー内に原液を噴霧することで、顆粒体を得ている。この時、噴霧には遠心噴霧器が使用され、原液の供給速度は10kg/hに設定された。噴霧凍結造粒真空乾燥法では、凍結温度を摂氏マイナス30度、摂氏マイナス60度、摂氏マイナス90度に設定した。一方、対比される噴霧乾燥法による顆粒体の製造方法では、噴霧後の乾燥入口温度を摂氏180度、摂氏120度、摂氏90度に設定した。
【0034】
乾燥させた後の顆粒体をそれぞれ集めてみると次のような傾向が現れた。まず、噴霧凍結造粒真空乾燥法では、真球度は低いものの全体的に白色の顆粒体が得られ、これに対して噴霧乾燥法による顆粒体では、真球度は高いものの黄色を呈するような顆粒体の色が生じた。これらの対比を図4に写真で示す。また、これらの顆粒体の暈(かさ)密度(g/ml)を計測したところ、噴霧凍結造粒真空乾燥法では、摂氏マイナス30度のものが0.080、摂氏マイナス60度のものが0.088、摂氏マイナス90度のものが0.092であった。一方、噴霧乾燥法では、摂氏180度のものが0.712であり、摂氏120度のものが0.736であり、摂氏90度のものが0.756であった。明確に噴霧凍結造粒真空乾燥法で造粒したもの方がかさ密度が低く、軽くて空気を多く含んだ状態であることが分かった。
【0035】
図5乃至図10にそれぞれの顆粒体の電子顕微鏡写真を示す。図5に示す写真は摂氏180度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体を示しており、図6に示す写真は摂氏120度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体を示しており、図7に示す写真は摂氏90度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体を示している。各図において、写真は上側が50ミクロンのスケールがあり、下側が5ミクロンのスケールがあり、下側は上側の写真の10倍のスケールで拡大した写真であることが分かる。同様に、図8に示す写真は摂氏マイナス30度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体を示しており、図9に示す写真は摂氏マイナス60度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体を示しており、図10に示す写真は摂氏マイナス90度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体を示している。各図において、写真は上側が50ミクロンのスケールがあり、下側が5ミクロンのスケールがあり、下側は上側の写真の10倍のスケールで拡大した写真であることが分かる。
【0036】
特に、図8乃至図10の写真に着目すると、その表面が多孔質で海綿若しくはスポンジ状となっており、これらの写真および断面図を総合的に観察したところ、多孔質の顆粒体は、当該顆粒体の表面に現れた無数の孔部が当該顆粒体内部に存在する孔部と連通するように形成されており、このため顆粒体はかさ密度が極めて低く噴霧乾燥法で得られた顆粒体よりも軽い顆粒からなることが分かる。また、図8の顆粒体は図10の顆粒体よりも孔の径が大きいことが分かる。図8は摂氏マイナス30度と凍結造粒室31の温度が高いため、瞬間凍結に必要となる時間が長くなることから、氷結晶が大きく成長したことが要因である。大きく成長した氷結晶が次工程の真空乾燥にて昇華し、氷結晶が消失した結果、大きい孔が発生した。一方図9は-90℃と凍結造粒室31の温度が低いため、瞬間凍結の時間が短く、氷結晶が小さく抑制された結果、孔が小さくなった。したがって凍結造粒室31の温度或いは冷却チャンバーの内部の温度によって多孔質顆粒の孔径を制御することも可能である。
【0037】
次に、これらの顆粒体から乳酸菌の生菌数を計測するため、寒天平板嫌気培養法を採用して、それぞれの試料の生菌数を計測し、その結果を図11に示す。図11は、横軸が各試料を示し、摂氏180度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体(SD180)、摂氏120度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体(SD120)、摂氏90度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体(SD90)、摂氏マイナス30度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-30)、摂氏マイナス60度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-60)、摂氏マイナス90度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-90)を示しており、縦軸が培養して得られた生菌数である。
【0038】
この培養結果による生菌数では、図11に示すように、摂氏180度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体(SD180)が1.4×10、摂氏120度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体(SD120)が1.2×10、摂氏90度の噴霧乾燥法(SD)による顆粒体(SD90)が3.4×10、摂氏マイナス30度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-30)が8.9×10、摂氏マイナス60度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-60)が5.5×10、摂氏マイナス90度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-90)が3.3×10となり、摂氏マイナス30度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-30)が最も生菌数が多いことが示された。また、同時に、摂氏180度のような高温で乾燥した場合には、他のサンプルと比べても残存数が少なく生菌を利用する場合に不利であることが証された。
【0039】
このような噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による有用性が示されたところで、冷凍庫で冷凍化した試料と比較した。この冷蔵庫を利用したサンプルでは、調整したヨーグルトの原液を容器内に保存し摂氏マイナス20度で72時間冷凍保管し、次に冷凍庫から取り出し、真空乾燥して得られたサンプルを手動で粉砕して測定用の試料を得た。この冷凍庫を用いたサンプル(Freeze-20)と、噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)の凍結温度を、摂氏マイナス15度としたサンプル(SFGD -15)と、摂氏マイナス30度としたサンプル(SFGD -30)とを比較した。その比較結果が図12に示されており、この比較結果では、摂氏マイナス15度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-15)が5.0×10であって最も残存生菌数が多く、次に、摂氏マイナス30度の噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体(SFGD-30)が1.3×10であって、冷蔵庫を利用したサンプル(Freeze-20)は生菌数が5.6×10で最も少ないことが分かった。すなわち、冷凍庫を用いた凍結し真空乾燥により得られたサンプルよりも噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)の方が、生菌数を多く保つことが可能であることが証された。また、凍結温度を摂氏マイナス15度のような高めの温度とすることで、さらに低い温度のサンプルと比較しても生菌数は多くなり、生菌に対しては過度の凍結温度は良い結果にならないことが分かった。
【0040】
冷凍庫は-20℃、生菌数が高い結果となった噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)は-15℃と温度に大きく差異は無い。しかしながら、冷凍庫は数~数十時間を要する凍結、噴霧凍結造粒真空乾燥法は非常に短い時間、例えば1秒未満やミリセカンドの瞬間凍結と凍結時間で凍結が行われるため、冷凍庫を用いて凍結とは大きく異なっている。高い生菌数を保った顆粒体を得るには高めの温度での瞬間凍結し、その後凍結乾燥によりサンプルを得ることが効果的である。従来の菌体の真空乾燥による乾燥サンプルは、凍結工程で、保存瓶を液体窒素に含侵させる、またはプログラムフリーザーを使用して超低温環境にて短時間で凍結させることにより生菌数を高く保つことを実施してきた。しかし液体窒素の含侵やプログラムフリーザーを使用しても数秒~数分の時間が必要であることに対し、噴霧凍結造粒真空乾燥法であれば原液を噴霧することにより表面積が膨大になり、高温でも瞬間凍結が可能となり、より高い生菌数の顆粒体を得ることができる。
【0041】
図13乃至図15は、生菌を含有する原料などを調整して噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による顆粒体を製造したもののサンプルである。図13の電子顕微鏡写真は、デキストリンにアスコルピン酸を加えたものを顆粒体としたものであり、図14の電子顕微鏡写真は、乳頭を顆粒体としたものであり、図15の電子顕微鏡写真は酵母を顆粒体としたものである。また、図16の電子顕微鏡写真はアルミナを顆粒体としたものである。これらの写真からも噴霧凍結造粒真空乾燥法(SFGD)による多孔質の顆粒体が得られており、かさ密度が低いことが明らかとされ、一部の顆粒体では、これらの菌などの利用することで生菌数を高く維持することも可能である。
【0042】
顆粒体に含有され得る菌類としては、ビフィズス菌、乳酸菌、糖化菌、酪酸菌、枯草菌及び酵母などを挙げることができ、これらの生菌についても原液の濃度や凍結温度を調整して、生菌の含有数の多い顆粒体を得ることができる。また、顆粒体に含有され得る菌類としては、さらに酢酸菌、ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌、カンピロバクター、腸炎ピブリオ、ウェルシュ菌、セレウス菌、及びペスト菌などを挙げることができ、これらの生菌についても原液の濃度や凍結温度を調整して、生菌の含有数の多い顆粒体を得ることができる。
【0043】
ところで、凍結造粒室に送り込まれた冷却媒体を排気する際に、気流に乗って排出される凍結造粒体を捕集する捕集手段を本実施形態に係る噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置に対して設けることにより、さらなる収量向上を目指した噴霧凍結造粒粉体製造システムを構築することも可能である。
【0044】
図17は噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システム700の構成例の一例を説明するシステム構成図である。本実施形態の顆粒体の製造方法は、噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システム700を使用しても実現可能である。噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置として、凍結造粒体の大量生産を意図し、凍結乾燥部との接続を円錐形のホッパー部を介して行うものであって、噴霧機構部が備える噴霧機構として遠心噴霧機400を備えた噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置600を一例にして説明する。
【0045】
ガス吸入フィルタ617を介して送風ブロワ618により引き込まれた大気は、チラー619で冷却された熱交換器615を通すことにより冷却大気ガスとなる。冷却大気ガスはフィルタ623を介し冷却ガス供給管624を通して凍結造粒チャンバー630内の凍結造粒室631に導入される。この際、大気に含まれる水分が熱交換器615に霜となって付着することで、長時間運転に支障をきたす恐れがあるため、熱交換器615前段に除湿器621を付帯させることが好ましい。なお、冷却ガスとしては、ここで述べた冷却大気
ガスでもよいし、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の冷却ガスを用いることも無論可能である。また、凍結造粒チャンバー630の冷却は、前述したジャケット構造体を用いた間接冷却で行ってもかまわない。この場合、ジャケット構造体に蒸発ガス投入配管を設け、冷却媒体として、液体窒素や液体アルゴンといった液化ガスを使用する場合に、当該液化ガスが蒸発した蒸発ガスをジャケット構造体の上部から直接凍結造粒室631下部に直接導入する構成とすることが好ましい。
【0046】
原液タンク613内の原液Mは、ポンプ614により原液供給管612を介して遠心噴霧機400に供給される。遠心噴霧機400は、供給された原液Mを遠心噴霧することにより微粒子化させる。微粒子化した原液Mは冷却ガス供給管624を通して供給された冷却大気ガスと接触して凝固化し、凍結造粒体Gを形成する。遠心噴霧機400の回転ディスク部402の近傍には、回転ディスク部402の周囲を囲む形状の冷却ガス遮熱板634が設けられている。冷却ガス遮熱板634の前段には、ガス吸入フィルタ617’、送風ブロワ618’、ヒータ622が設けられている。送風ブロワ618’はガス吸入フィルタ617’を介して、例えば、大気等のガスを引き込む。常温又はヒータ622により加熱されたガスは、凍結防止ガス配管620を通して、冷却ガス遮熱板634の内側に投入され、回転ディスク402部への凍結固形物の発生・付着を抑制することができる。また、上記の冷却ガス供給ラインと同様に、除湿器621’を送風ブロワ618’とヒータ622’との間に設けることで、凍結造粒室631内に導入される水分を減少させ、凍結造粒室631内での霜の発生を抑制することも可能である。
【0047】
凍結造粒室631内で生成した凍結造粒体Gは、凍結造粒チャンバー630内の凍結造粒室631下方に位置する円錐形状のホッパー部632に堆積し、当該ホッパー部632に設けられたノッカー633、バイブレータ等による衝撃、振動により、前述の凍結乾燥部に強制落下させられる。凍結乾燥部内における結造粒体Gの貯留量が一定量となると、オペレータは凍結造粒用チャンバー630から凍結乾燥部を分離し、密閉後、凍結乾燥を行うことで乾燥粉末を得ることができる。
【0048】
なお、ホッパー部632には、凍結造粒室631に導入された冷却大気ガスを排気するための冷却ガス排気管625が接続されている。そして、冷却ガス排気管625には、冷却大気ガスの排気の際に、気流に乗って排出される微細な凍結造粒体Gを捕集するための捕集手段としてのサイクロン型集塵装置626が設けられている。サイクロン型集塵装置626で捕集された凍結造粒体Gは、サイクロン型集塵装置626下部に設けられた凍結乾燥部によって回収することができる。また、サイクロン型集塵装置626の上端部には、サイクロン型集塵装置626では捕集できない更に微細な凍結造粒体Gを捕集するための捕集手段としてのバグフィルタまたはデミスタ型集塵装置628が冷却ガス排気管627を介して接続されている。バグフィルタまたはデミスタ型集塵装置628で捕集された凍結造粒体Gは、バグフィルタまたはデミスタ型集塵装置628下部に設けられた凍結乾燥部によって回収することができる。なお、ホッパー部632、サイクロン型集塵装置626、バグフィルタまたはデミスタ型集塵装置628の下部に凍結造粒体Gの集合配管を設置、または凍結乾燥部に複数の凍結造粒体Gの投入口を設けることで、1つの凍結乾燥部で捕集することもできる。なお、サイクロン型集塵装置626及びバグフィルタまたはデミスタ型集塵装置628には、ホッパー部632と同様にノッカー633、バイブレータ等を設け、これらによる衝撃、振動により凍結造粒体Gを凍結乾燥部に強制落下させてもよい。なお、ここでの説明においては、冷却ガス排気管625をホッパー部632に設けた構成について説明したが、当該冷却ガス排気管625を凍結造粒室631側に設けた構成としてもかまわない。
【0049】
バグフィルタまたはデミスタ型集塵装置628を通過した冷却大気ガスは排風ブロワ629によって大気中に放出することも可能であるが、図中点線で示す循環用配管640を接続し、送風ブロワ618前において循環させることによって、冷却大気ガスを再利用することもできる。
【0050】
このように、凍結造粒室に送り込まれた冷却媒体を排気する際に、気流に乗って排出される凍結造粒体を捕集して回収する捕集回収手段を本実施形態に係る噴霧凍結造粒乾燥粉体製造装置に対して設けることにより、さらなる収量向上を目指した噴霧凍結造粒粉体製造システムを提供することも可能である。
【0051】
上述のように、本発明の顆粒体の製造方法によれば、生成する顆粒体の特性を十分に引き出すことができ、特に生菌を生存したまま含有する顆粒体に好適な製法を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 噴霧機構部
11 二流体ノズル本体部
12 原液供給管
13 原液タンク
14 ポンプ
15 圧縮ガス供給管
16 圧縮ガス供給部
17 ガス吸入フィルタ
18 送風ブロア
19 HEPAフィルタ
20 凍結防止ガス配管
21 吐出部
22 ヒータ
30 冷却チャンバー
31 凍結造粒室
32 開口部
33 凍結造粒室外壁
34 断熱室
35 断熱室内壁
36 蒸発ガス投入配管
36’ 冷却ガス供給・排気管
37 冷却媒体充填室
50 捕集部
60 真空乾燥装置
62 保持部
64 乾燥チャンバー
70 架台
80 媒体残量検知手段
81 制御コンピュータ
82 補充用ボンベ
83 バルブ
84 レギュレータ
88 温度センサ
400 遠心噴霧機
615 熱交換器
619 チラー
621、621’ 除湿器
623 フィルタ
624 冷却ガス供給管
625、627 冷却ガス排気管
626 サイクロン型集塵装置
628 バグフィルタまたはデミスタ型集塵装置
629 排風ブロワ
632 ホッパー部
633 ノッカー
634 冷却ガス遮熱板
640 循環用配管
700 噴霧凍結造粒乾燥粉体製造システム
図1
図2
図3
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図5
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図17