(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057732
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20230417BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20230417BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167387
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB26
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062EE11
3H062GG01
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】強化繊維による金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することで、作動性や耐久性の向上を図ることができる電動弁を提供することを目的とする。
【解決手段】電動弁10は、弁本体1Aと、ねじ軸33を回転駆動する駆動部3と、ねじ軸33の回転に伴ってねじ軸33を軸線L方向に進退させるねじ送り機構4と、ねじ軸33の進退に伴って弁座部1Gに近接または離間可能な弁体2と、ねじ軸33と弁体2とを接続する接続体5と、を備えている。ねじ送り機構4は、弁本体1Aに支持された雌ねじ部材42を有し、ねじ軸33の雄ねじ部33Bと雌ねじ部材42の雌ねじ部42Aとが螺合され、雌ねじ部材42は、強化繊維Fを含む樹脂製である。ねじ軸33は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室および弁座部を構成する弁本体と、ねじ軸を回転駆動する駆動部と、前記ねじ軸の回転に伴って該ねじ軸を軸線方向に進退させるねじ送り機構と、前記ねじ軸の進退に伴って前記弁座部に近接または離間可能な弁体と、前記ねじ軸と前記弁体とを接続する接続体と、を備えた電動弁であって、
前記ねじ送り機構は、前記弁本体に支持された雌ねじ部材を有し、前記ねじ軸の雄ねじ部と前記雌ねじ部材の雌ねじ部とが螺合され、前記雌ねじ部材は、強化繊維を含む樹脂製であり、
前記ねじ軸は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記他の部材は、強化繊維を含む樹脂部材であり、
前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材を含み、
前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記樹脂部材と、前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材と、が前記接続体に含まれ、
前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記接続体は、ボールベアリングを含み、
前記ねじ軸の硬度は、前記ボールベアリングを除く前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことを特徴とする請求項2または3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記接続体は、前記ねじ軸に対して前記弁体を前記軸線方向に付勢する圧縮ばねを含み、
前記ねじ軸の硬度は、前記圧縮ばねを除く前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことを特徴とする請求項2または3に記載の電動弁。
【請求項6】
前記他の部材は、強化繊維を含む樹脂部材であり、
前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材を含み、
前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項7】
前記樹脂部材と、前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材と、が前記接続体に含まれ、
前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材よりも高いことを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項8】
前記雌ねじ部材の摺動面における強化繊維の配向方向は、少なくとも前記摺動面に交差する方向を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項9】
前記接続体は、前記ねじ軸に対して前記弁体を前記軸線方向に付勢する圧縮ばねと、前記圧縮ばねの付勢力を伝達するばね受け部材と、前記ばね受け部材と摺動する金属製の円筒部材と、を含み、
前記ねじ軸の硬度は、前記ばね受け部材と摺動する金属製の円筒部材よりも高いことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項10】
前記ばね受け部材は、強化繊維を含む樹脂製であり、
前記ばね受け部材の摺動面における強化繊維の配向方向は、前記摺動面に沿う方向に合っていることを特徴とする請求項9に記載の電動弁。
【請求項11】
前記ばね受け部材は、前記軸線方向に沿って前記円筒部材の内周面または外周面と摺動することを特徴とする請求項9または10に記載の電動弁。
【請求項12】
前記ねじ送り機構は、前記雌ねじ部材を前記弁本体に支持する金属製の固定部材を有し、前記固定部材は、前記雌ねじ部材を内蔵する円筒部と、前記弁本体に固定される鍔部と、を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項13】
圧縮機と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~12のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動弁として、弁本体と、ステッピングモータと、ねじ軸と、弁ホルダと、を備え、弁本体に支持された雌ねじ部材にねじ軸が螺合され、ステッピングモータがねじ軸を回転させることで、ねじ軸および弁体が進退駆動されるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載の電動弁では、金属製のねじ軸(ロータ軸)と樹脂製の雌ねじ部材とが螺合し、ねじ軸の回転に伴って互いのねじ部同士が摺動する。また、特許文献1および特許文献2の電動弁では、金属製の弁ホルダ(円筒部材)に樹脂製のばね受け部材が内蔵され、弁ホルダの内周面とばね受け部材の外周面とが摺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-148643号公報
【特許文献2】特開2013-108535号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の電動弁では、金属部材(ねじ軸や弁ホルダ)と樹脂部材(雌ねじ部材やばね受け部材)とが摺動するが、樹脂部材として、作動性や耐久性の向上を目的に、強化繊維を充填した樹脂材料が用いられることがある。このような強化繊維を含む樹脂部材と金属部材とが摺動すると、強化繊維が金属部材を傷つけることで摩耗紛が発生し、作動性や耐久性の低下を招く可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、強化繊維による金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することで、作動性や耐久性の向上を図ることができる電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、弁室および弁座部を構成する弁本体と、ねじ軸を回転駆動する駆動部と、前記ねじ軸の回転に伴って該ねじ軸を軸線方向に進退させるねじ送り機構と、前記ねじ軸の進退に伴って前記弁座部に近接または離間可能な弁体と、前記ねじ軸と前記弁体とを接続する接続体と、を備えた電動弁であって、前記ねじ送り機構は、前記弁本体に支持された雌ねじ部材を有し、前記ねじ軸の雄ねじ部と前記雌ねじ部材の雌ねじ部とが螺合され、前記雌ねじ部材は、強化繊維を含む樹脂製であり、前記ねじ軸は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、強化繊維を含む樹脂で構成された雌ねじ部材の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を備えるねじ軸は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されている。ここで、雌ねじ部と雄ねじ部とが摺動する際には、先ず雌ねじ部の樹脂が摩耗して強化繊維が露出する。そして、露出した強化繊維により雄ねじ部が削られて摩耗粉が生じる。そして、雌ねじ部材のねじ山の摺動面には、当該摺動面に交差する配向方向の強化繊維が含まれており、この配向によって露出した強化繊維が摺動する雄ねじ部に引っかかりやすいので特に雄ねじ部では、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して摩耗粉が生じやすい。さらに、雄ねじ部および雌ねじ部が配置される部分は、電動弁の中でも冷媒の流れのない部分であることが多く、当該部分は冷媒に洗われることがない部分であり、他の部材と摺動する金属製の摺動部材が配置される部分と比較して摩耗紛の発生の影響を受けやすい。このため、電動弁の作動性の悪化、耐久性の悪化を生じやすい。しかしながら、本発明の構成によれば、ねじ軸は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されているので、雄ねじ部と雌ねじ部とが摺動した場合でも、強化繊維による金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することで、作動性や耐久性の向上を図ることができる。
【0008】
この際、前記他の部材は、強化繊維を含む樹脂部材であり、前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材を含み、前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことが好ましい。また、前記樹脂部材と、前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材と、が前記接続体に含まれ、前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことが好ましい。また、前記接続体は、ボールベアリングを含み、前記ねじ軸の硬度は、前記ボールベアリングを除く前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことが好ましい。また、前記接続体は、前記ねじ軸に対して前記弁体を前記軸線方向に付勢する圧縮ばねを含み、前記ねじ軸の硬度は、前記圧縮ばねを除く前記樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材よりも高いことが好ましい。また、前記他の部材は、強化繊維を含む樹脂部材であり、前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材を含み、前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材よりも高いことが好ましい。また、前記樹脂部材と、前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材と、が前記接続体に含まれ、前記ねじ軸の硬度は、前記樹脂部材と軸線方向に摺動する金属製の摺動部材よりも高いことが好ましい。また、前記雌ねじ部材の摺動面における強化繊維の配向方向は、少なくとも前記摺動面に交差する方向を含む。また、前記接続体は、前記ねじ軸に対して前記弁体を前記軸線方向に付勢する圧縮ばねと、前記圧縮ばねの付勢力を伝達するばね受け部材と、前記ばね受け部材と摺動する金属製の円筒部材と、を含み、前記ねじ軸の硬度は、前記ばね受け部材と摺動する金属製の円筒部材よりも高いことが好ましい。また、前記ばね受け部材は、強化繊維を含む樹脂製であり、前記ばね受け部材の摺動面における強化繊維の配向方向は、前記摺動面に沿う方向に合っていることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、本発明の電動弁には、強化繊維を含む樹脂部材としてのばね受け部材と、ばね受け部材に摺動する金属製の摺動部材としての円筒部材と、が設けられている。ここで、上述の通り雌ねじ部材の摺動面における強化繊維の配向方向は、少なくとも摺動面に交差する方向を含むのに対し、ばね受け部材の摺動面における強化繊維の配向方向は、摺動面に沿う方向に合っている。この配向によれば、上述のように強化繊維が露出してもばね受け部材に摺動する円筒部材に強化繊維が引っ掛かりにくく、摩耗紛が生じにくい。そして、ねじ軸の硬度は、ボールベアリングや圧縮ばねを除く、円筒部材などの他の金属製の摺動部材よりも高い硬度となっている。すなわち、配向方向が摺動面に沿う方向に合っており上述のように露出しても摺動に対して影響の少ない強化繊維を有する樹脂部材(ばね受け部材)に対して摺動する金属製の摺動部材(円筒部材)の硬度よりも、少なくとも摺動面に交差する方向に配向するものを含み上述のように露出すると摺動に対して影響の多い強化繊維を有する樹脂部材(雌ねじ部材)に対して摺動する金属製の摺動部材(ねじ軸)の硬度の方が高くなるようにしている。このため、強化繊維による金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することができる。
【0010】
また、前記ばね受け部材は、前記軸線方向に沿って前記円筒部材の内周面または外周面と摺動することが好ましい。さらに、前記ねじ送り機構は、前記雌ねじ部材を前記弁本体に支持する金属製の固定部材を有し、前記固定部材は、前記雌ねじ部材を内蔵する円筒部と、前記弁本体に固定される鍔部と、を有することが好ましい。このような構成によれば、強化繊維を含んだ雌ねじ部材を固定部材に内蔵し、固定部材の鍔部を用いて弁本体に固定することができるので、強度の高い雌ねじ部材を安価に形成できる。
【0011】
そして、本発明における冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、上記いずれかに記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。このような構成によれば、強化繊維による金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制する電動弁を用いて、冷凍サイクルシステムを構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強化繊維による金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することで、作動性や耐久性の向上を図ることができる電動弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動弁の弁開状態を示す縦断面図である。
【
図2】前記電動弁の弁閉状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図2の領域P1における、部分拡大図である。
【
図4】
図2の領域P2における、部分拡大図である。
【
図5】本発明の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を
図1~
図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁ハウジング1と、弁体2と、駆動部3と、ねじ送り機構4と、圧縮ばね53を有した接続体5と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。弁ハウジング1は、有底筒状の弁本体1Aと、弁本体1Aの上端部に接続される筒状の接続部材1Bと、接続部材1Bの上端部に接続されるケース1Cと、を備えて構成されている。弁本体1Aは、切削加工されたSUS(ステンレス鋼)や黄銅等の金属製の部材であって、その内部は円筒状の弁室1Dを構成している。弁本体1Aの側壁には、弁室1Dの内外に連通する第1ポート1Eが形成され、弁本体1Aの底壁には弁室1Dの内外に連通する第2ポート1Fが形成されている。第1ポート1Eには、弁室1Dに連通して冷媒が流入または流出される第1継手管11が取り付けられ、第2ポート1Fには、弁室1Dに連通して冷媒が流入または流出される第2継手管12が取り付けられている。
【0015】
第2ポート1Fの弁室1D側の周縁部は、弁体2が近接または離間する弁座部1Gを構成している。接続部材1Bは、SUS製の金属板材からプレス加工や円筒状の部材からの切削加工により筒状に形成された部材であって、弁本体1Aの上端部にカシメ固定及びロウ付け固定されている。ケース1Cは、軸線L方向に延びる上側凸のカップ形状に形成されている。このケース1Cは、円環状の下端部が接続部材1Bの上端部を周方向に囲むように配置され、当該接続部材1Bの上端部に溶接固定されている。弁ハウジング1内の弁本体1Aと接続部材1Bとの境界部分には、弁体2のニードル部21を軸線L方向に案内するガイド部材13が設置されている。ガイド部材13の中央部には、軸線Lを中心とするガイド孔13aが形成されている。
【0016】
弁体2は、後述するねじ軸33の進退に伴って弁座部1Gに近接または離間可能に設けられている。この弁体2は、軸線L方向に延びる円柱状に形成されたニードル部21と、ニードル部21の上端部に設けられたフランジ部22と、を備えている。ニードル部21の下端側は、テーパ形状の先端部21Aを構成している。ニードル部21の上端側は、下端側よりも直径の小さい縮径部21Bを構成している。ニードル部21は、ガイド部材13のガイド孔13aに微小な隙間(クリアランス)をもって挿通され、軸線L方向に進退案内されるようになっている。フランジ部22は、接続体5と弁体2とを接続する際にニードル部21が接続体5から抜け落ちるのを抑制する抜け止めであり、縮径部21Bよりも大きな直径を有するように形成されている。
【0017】
駆動部3は、電動モータとしてのステッピングモータ3Aと、ステッピングモータ3Aの回転を規制するストッパ機構3Bと、を備えている。ステッピングモータ3Aは、ケース1Cの外周に設置されるステータコイル31と、ケース1Cを挟んでステータコイル31の内周に設置され軸線Lの周方向に回転するマグネットロータ32と、マグネットロータ32と一体に回転駆動される駆動軸としてのねじ軸33と、を備えている。マグネットロータ32の上端部には、上方に突出する延長軸32Aが設けられている。ねじ軸33は、その上端部が固定部材33Aを介してマグネットロータ32の中央部に固定されている。このねじ軸33は、SUS303やSUS304よりも硬度の高いステンレス材を用いて構成されている。具体的には、SUS303やSUS304の硬度は、ビッカーズ硬さすなわちHv換算で、約200(Hv約200とは、150~240Hvのことである。)以下であるが、本実施形態のねじ軸33は、Hv約300(Hv約300とは、250~340Hvのことである。)以上の硬度を備える金属部材で構成されている。一般的にSUS304の硬度はHv約200以下であることから、本実施形態のねじ軸33は、SUS304製の駆動軸と比較して、約30パーセント以上硬度が高いこととなる。ねじ軸33の軸線L方向中央部には、雄ねじ部33Bが形成され、この雄ねじ部33Bはねじ送り機構4の一部を構成している。ねじ軸33の下端部は、ねじ軸33の他の部分よりも直径が大きく形成され、拡径部33Cを構成している。そして、ねじ軸33における雄ねじ部33Bと拡径部33Cとの間には、ねじ軸33の外周を周方向に覆う保持部材34が取り付けられている。
【0018】
ストッパ機構3Bは、ケース1Cの天井部から垂下されるガイド35と、ガイド35の外周に螺旋状に巻き付くガイド線体36と、ガイド線体36に案内されて上下方向に可動する可動スライダ37と、を備えている。ガイド35は、中心軸がねじ軸33の中心軸と同軸となるように配置され、軸線L方向に延びている。可動スライダ37は、ガイド線体36の螺旋の溝に嵌りながら巻き付くように配置されている。この可動スライダ37は、ガイド35の径方向外方に突出する爪部37Aを備えている。この爪部37Aは、マグネットロータ32に設けられた上述の延長軸32Aと、互いに軸線Lの周方向に当接するようになっている。この構成により、マグネットロータ32の回転に伴って可動スライダ37がガイド線体36の溝に沿ってガイド35の周方向に連れ回され、これにより可動スライダ37が上下方向に可動するようになっている。
【0019】
ガイド線体36の上端部と、下端部には、可動スライダの爪部37Aに当接する上端ストッパ36Aと、下端ストッパ36Bと、が形成されている。上端ストッパ36Aおよび下端ストッパ36Bは、自身に当接する爪部37Aの回転を規制するように設けられている。この構成によれば、上端ストッパ36Aに当接した可動スライダ37Aはそれ以上回転できない。そして、可動スライダ37の回転が規制されると、可動スライダ37を連れ回すマグネットロータ32の回転が規制される。すなわち、上端ストッパ36Aは、マグネットロータ32の最上位位置を規定するストッパとして機能する。同様に、下端ストッパ36Bに爪部37Aが当接すると、可動スライダ37の回転が規制され、マグネットロータ32の回転が規制される。すなわち、下端ストッパ36Bは、マグネットロータ32の最下端位置を規定するストッパとして機能する。
【0020】
ねじ送り機構4は、ステッピングモータ3Aの駆動によるねじ軸33の回転にともなって、ねじ軸33を軸線L方向に進退させるものである。このねじ送り機構4は、弁ハウジング1における接続部材1Bの上端部に固定される金属製の固定部材41と、固定部材41を介して弁本体1Aに支持される雌ねじ部材42と、雌ねじ部材42の雌ねじ部42Aに螺合する上述の雄ねじ部33Bと、を備えている。固定部材41は、雌ねじ部材42を弁本体1Aに支持する部材であり、軸線L方向に延びる円筒部41Aと、円筒部41Aの下端部から径方向外方に突出する鍔部41Bと、を備えている。円筒部41Aは、雌ねじ部材42を内蔵するように設けられている。鍔部41Bは、接続部材1Bの上端部にカシメ及び溶接されることで接続部材1Bを介して弁本体1Aに固定されている。雌ねじ部材42は、円筒部41Aの内周にインサート成形により成形されて固定されている。この雌ねじ部材42は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)を主成分とした樹脂で構成されており、CF(炭素繊維)やGF(ガラス繊維)等の強化繊維Fや、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が充填されている。雌ねじ部材42の中央部には、中心軸がねじ軸33の中心軸と同軸の雌ねじ部42Aが形成されている。
【0021】
雌ねじ部42Aは、上述のインサート成形の際に併せて成形するか、インサート成形後に切削加工することにより形成されている。なお、いずれの方法で形成した場合も、
図3に示すように、強化繊維Fの配向方向は、ランダムに様々な方向を向くこととなる。ここで、雌ねじ部42Aのねじ山の上下面は、雌ねじ部42Aに対してねじ送りされる雄ねじ部33Bが摺動する摺動面となっているが、上述のように強化繊維Fの配向方向はランダムであるため、雌ねじ部材42には、摺動面に対して交差する配向方向の強化繊維Fが多く含まれることとなる。すなわち、雌ねじ部材42の摺動面における強化繊維Fの配向方向は、少なくとも摺動面に交差する方向を含んでいる。これは、インサート成形の場合、雌ねじ部42Aの凹凸に複雑に樹脂が流れ込むからである。また、切削加工の場合、雌ねじ部42Aを形成前の段階では、強化繊維Fを摺動面に沿う方向に配向するように誘導するような構成がないからである。雄ねじ部33Bは、上述のように硬度の高いSUSで構成され、雌ねじ部42Aに螺合し、そのねじ山の上下面に沿って周方向に摺動しながらねじ送りされるようになっている。すなわち、マグネットロータ32が回転すると、ねじ軸33が回転することで雄ねじ部33Bがねじ送りされ、これによって、ねじ軸33が弁ハウジング1内で進退移動するようになっている。
【0022】
接続体5は、ねじ軸33と弁体2とを接続する部材であり、ねじ軸33側に配置される金属製の円筒部材51(金属製の摺動部材)と、弁体2側に配置される樹脂製のばね受け部材52(樹脂部材)と、円筒部材51とばね受け部材52の間に介在する金属製の圧縮ばね53と、を備えている。円筒部材51は、ばね受け部材52の後述する筒状案内部52Aに挿入されてばね受け部材52と軸線L方向に沿って摺動する金属製の摺動部材である。この円筒部材51は、ねじ軸よりも硬度の低いSUS303やSUS304等のステンレス鋼で構成され、軸線L方向に延びる筒状摺動部51Aと、筒状摺動部51Aの上端部から径方向外方に突出するねじ軸側フランジ部51Bと、を備えて構成されている。筒状摺動部51Aは、ねじ軸33と径方向に所定の隙間を空けて配置されている。ねじ軸側フランジ部51Bは、圧縮ばね53の上端部を当接させるように構成されている。
【0023】
筒状摺動部51Aの内周壁における軸線L方向中央部には、径方向内方に突出する段部51A1が形成され、この段部51A1には、転がり軸受54(ボールベアリング)が設置されている。転がり軸受54は、ねじ軸33と円筒部材51とを相対回転可能に接続する軸受であり、内輪54A、鋼球54B、外輪54C、を備えて構成されている。内輪54Aは、上述の保持部材34の下端部から拡径部33Cの直前までの部分に亘ってねじ軸33の外周を覆うように配置されている。外輪54Cは、段部51A1に載置された状態で、筒状摺動部51Aの内周面における軸線L方向上端部に圧入される止め輪55によって筒状摺動部51Aに固定されている。これにより、ねじ軸33と円筒部材51とが転がり軸受54を介して接続されることとなる。筒状摺動部51Aの底壁中央部には、中心軸がねじ軸33の軸線Lと同軸の接続孔51A2が、貫通形成されている。この接続孔51A2は、後述する接続筒部56が挿入される孔である。
【0024】
ばね受け部材52は、圧縮ばね53の付勢力を軸線L方向に伝達する部材であり、軸線L方向に延びる筒状案内部52Aと、筒状案内部52Aの下端部から周方向外方に突出する弁体側フランジ部52Bと、を備えている。筒状案内部52Aは、上述の筒状摺動部51Aの直径の寸法よりも大きな寸法の内径を有し、筒状摺動部51Aを挿入可能に設けられている。この構成により、ばね受け部材52の内周面は摺動面を構成し、軸線L方向に沿って筒状摺動部51Aの外周面と摺動するようになっている。弁体側フランジ部52Bは、圧縮ばね53の下端部を当接させるように構成されている。筒状案内部52Aおよび弁体側フランジ部52Bは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)を主成分とした樹脂で構成されており、CF(炭素繊維)やGF(ガラス繊維)等の強化繊維や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が充填されている。
【0025】
筒状案内部52Aおよび弁体側フランジ部52Bは、射出成形で成形するか、樹脂製の材料を切削加工することにより形成されている。
図4に示すように、いずれの方法で形成した場合も、筒状案内部52Aの強化繊維Fの配向方向は、ばね受け部材52の摺動面に沿う方向(軸線L方向)が多くなっている。すなわち、ばね受け部材52の摺動面における強化繊維の配向方向は、摺動面に沿う方向に合っている。これは、射出成形の場合、ゲートを軸線Lの上方または下方に設けているためである。また、切削加工の場合、予め強化繊維Fの配向を軸線L方向に揃えた樹脂材料を用意し、その後に、加工を行うからである。
【0026】
筒状案内部52Aの底壁中央部には、中心線がねじ軸33の軸線Lと同軸の貫通孔52A1が形成され、貫通孔52A1には、接続筒部56が挿入されている。接続筒部56は、円筒部材51とばね受け部材52とを接続するとともに、ばね受け部材52と弁体2とを接続する部材であり、筒状案内部52Aの内外に亘って軸線L方向に延びている。接続筒部56の側壁下端部における筒状案内部52Aの外側の部分には、径方向内方に凹む溝部56Aが形成されている。溝部56Aには、C型に形成された固定リング57が径方向から嵌め込まれている。この固定リング57は、筒状案内部52Aの底壁の下端面に形成され入口ポートA側に開口する凹部52A2に対して駆動部5側に向けて嵌め込まれるように構成されている。そして、固定リング57が凹部52A2に嵌め込まれる際にばね受け部材52を介して駆動部5側に押圧された圧縮ばね53の反発力によって、接続筒部56がばね受け部材52に接続されるようになっている。接続筒部56の上端部には、上端フランジ56Bが形成されており、この上端フランジ56Bが上述の接続孔51A2の縁部に引っかかることでばね受け部材52と円筒部材51とが接続されるようになっている。なお、図示はしないが、接続筒部56の側壁は、一部が上端部から下端部まで切り欠かれており、この切り欠きによって接続筒部56の筒内に連通する開口部が形成されている。
【0027】
接続筒部56の内径の寸法は、上述のニードル部21における縮径部21Bの直径よりも大きく、フランジ部22の直径よりも小さく設定されている。また、接続筒部56の軸線L方向の寸法は、縮径部21Bの軸線L方向の寸法と略同じに形成されている。また、筒状接続部56の側壁の上述の開口部の軸線L方向に交差する幅方向の寸法は、縮径部21Bの直径と略同じに形成されている。そして、接続筒部56内には、開口部を介して径方向から縮径部21Bが挿入されるようになっている。この構成により、縮径部21Bは、接続筒部56に径方向の隙間を空けて挿入され、フランジ部22が抜け止めとなり、弁体2が接続筒部56の下方に抜け落ちることが抑制されるので、弁体2とばね受け部材52とが接続される。
【0028】
圧縮ばね53は、ねじ軸33に対して、弁体2を軸線L方向に付勢するものである。この圧縮ばね53は、金属製の部材で構成されており、円筒部材51とばね受け部材52との間に軸線L方向に亘って介在している。圧縮ばね53の上端部は、ねじ軸側フランジ部51Bに当接し、圧縮ばね53の下端部は、弁体側フランジ部52Bに当接している。
【0029】
ここで、ねじ軸33の硬度について、改めて説明する。上述の通り、本実施形態のねじ軸33は、Hv約300以上の硬度を備える金属部材で構成されている。このねじ軸33の硬度は、本実施形態における金属製の摺動部材としての円筒部材51のように、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、高い硬度を有している。なお、本実施形態における転がり軸受54や圧縮ばね53の硬度については、ねじ軸33の硬度よりも高い硬度になる場合はある。よって、ねじ軸33の硬度は、転がり軸受54や圧縮ばね53を除く、円筒部材51などの他の金属製の摺動部材よりも高く設定することが好ましい。
【0030】
以上の、電動弁10の動作としては、先ず、
図1に示す弁開状態において、弁体2は、フランジ部22が抜け止めとなることで、接続体5を介してねじ軸33に吊り下げられた状態となる。このような弁開状態から駆動部3のステッピングモータ3Aを回転駆動させ、ねじ軸33を弁閉方向に下降させていくと、ニードル部21のテーパ形状の先端部21Aが弁座部1Gに近接する。そして、この状態からさらに、ねじ軸33を下降させると、圧縮ばね53が軸線L方向に圧縮されることで下方に付勢力が働き、この付勢力が作用することで、ニードル部21の先端部が弁座部1Gに押し付けられ、
図2に示す弁閉状態となる。この弁閉状態では、ニードル部21および弁座部1Gが圧縮ばね53の付勢力で軸線L方向に押圧されていることで、例えば、第2継手管12側から冷媒の高い圧力がニードル部21に作用した場合でも、ニードル部21の浮き上がりを防止して弁閉状態が維持できるようになっている。以上、図にて本実施形態の弁開から弁閉の状態について順番に説明したが、この逆の弁閉から弁開のときは、この逆の順番で同様の作動となることは、言うまでもない。
【0031】
以上の本実施形態によれば、電動弁10は、弁室1Dおよび弁座部1Gを構成する弁本体1Aと、ねじ軸33を回転駆動する駆動部3と、ねじ軸33の回転に伴ってねじ軸33を軸線L方向に進退させるねじ送り機構4と、ねじ軸33の進退に伴って弁座部1Gに近接または離間可能な弁体2と、ねじ軸33と弁体2とを接続する接続体5と、を備えた電動弁10であって、ねじ送り機構4は、弁本体1Aに支持された雌ねじ部材42を有し、ねじ軸33の雄ねじ部33Bと雌ねじ部材42の雌ねじ部42Aとが螺合され、雌ねじ部材42は、強化繊維Fを含む樹脂製であり、ねじ軸33は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されていることを特徴とする。
【0032】
このような本発明によれば、強化繊維Fを含む樹脂で構成された雌ねじ部材42の雌ねじ部42Aに螺合する雄ねじ部33Bを備えるねじ軸33は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材(例えば、弁体2や円筒部材51、ベアリングの鋼球54B、圧縮ばね53等)と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されている。ここで、雌ねじ部42Aと雄ねじ部33Bとが摺動する際には、先ず雌ねじ部42Aの樹脂のうち特に柔らかいPTFEなどの成分で構成される部分が摩耗して強化繊維Fが露出する。そして、露出した強化繊維Fにより雄ねじ部33Bが削られて摩耗粉が生じる。そして、上述の通り、雌ねじ部材42の摺動面には、当該摺動面に交差する配向方向の強化繊維Fが含まれており、この配向によって露出した強化繊維Fが摺動する雄ねじ部33Bに引っかかりやすいので特に雄ねじ部33Bでは、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して摩耗粉が生じやすい。さらに、雄ねじ部33Bおよび雌ねじ部42Aが配置される部分は、電動弁10の中でも冷媒の流れのない部分であり、当該部分は、冷媒に洗われることがない部分である。すなわち、雄ねじ部33Bおよび雌ねじ部42Aが配置される部分は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材が配置される部分と比較して摩耗紛の発生の影響を受けやすい。このため、作動性の悪化、耐久性の悪化を生じやすい。しかしながら、本発明の構成によれば、ねじ軸33は、他の部材と摺動する金属製の摺動部材と比較して、最も高い硬度を有する金属部材で構成されている。このため、雄ねじ部33Bと雌ねじ部42Aとが摺動した場合でも、強化繊維Fによる金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することで、作動性や耐久性の向上を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、本発明の電動弁10には、強化繊維Fを含む樹脂部材としてのばね受け部材52と、ばね受け部材52に摺動する金属製の摺動部材としての筒部材51と、が設けられている。ここで、雌ねじ部材42の摺動面における強化繊維Fの配向方向は、少なくとも摺動面に交差する方向を含んでいるのに対し、ばね受け部材52の摺動面における強化繊維Fの配向方向は、ばね受け部材52の摺動面に沿う方向(軸線L方向)に合っている。この配向によれば、上述のように強化繊維Fが露出してもばね受け部材52に摺動する円筒部材51に強化繊維Fが引っ掛かりにくく、摩耗紛が生じにくい。そして、ねじ軸33の硬度は、円筒部材51など、転がり軸受54および圧縮ばね53を除く他の金属製の摺動部材よりも高い硬度となっている。すなわち、配向方向が摺動面に沿う方向に合っており上述のように露出しても摺動に対して影響の少ない強化繊維Fを有する樹脂部材(ばね受け部材52)に対して摺動する金属製の摺動部材(円筒部材51)の硬度よりも、少なくとも摺動面に交差する方向に配向するものを含み上述のように露出すると摺動に対して影響の多い強化繊維Fを有する樹脂部材(雌ねじ部材42)に対して摺動する金属製の摺動部材(ねじ軸33)の硬度の方が高くなるようにしている。このため、強化繊維Fによる金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することで、作動性や耐久性の向上を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、ねじ送り機構4は、強化繊維Fを含んだ雌ねじ部材42を固定部材41に内蔵し、固定部材41の鍔部41Bを用いて弁本体1Aに固定することができるので、強度の高い雌ねじ部材42を安価に形成することができる。
【0035】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを、
図5に基づいて説明する。
図5は、実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
図5において、符号100は、前記実施形態の電動弁10を用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。膨張弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0036】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、
図5に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は膨張弁100を介して室内熱交換器300側に流され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0037】
一方、暖房運転時には、
図5に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200側から流入する液冷媒、または暖房時に室内熱交換器300側から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0038】
このような構成によれば、強化繊維Fによる金属部材の傷つきを抑え、摩耗紛の発生を抑制することで、作動性や耐久性の向上を図ることができる電動弁10を用いて、冷凍サイクルシステムを構成することができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形例も本発明に含まれる。例えば、本実施形態では、ばね受け部材52の筒状案内部52Aに円筒部材51の筒状摺動部51Aを挿入し、これによって、ばね受け部材52が、軸線L方向に沿って円筒部材51の外周面と摺動することとした。しかしながら、筒状摺動部51Aの内径の寸法を筒状案内部52Aの直径の寸法よりも大きく設定して、ばね受け部材52が、軸線L方向に沿って円筒部材51の内周面と摺動することとしてもよい。また、本実施形態では、円筒部材51を金属部材で構成し、ばね受け部材52を強化繊維Fを含む樹脂部材で構成したが、この関係を逆にしてもよい。すなわち、円筒部材51を強化繊維Fを含む樹脂部材で構成し、ばね受け部材52をねじ軸33よりも硬度の低い金属部材で構成してもよい。
【0040】
なお、本実施形態において「硬度」について説明してきた部分は、当該硬度を「強度」と言い換えることもできる。また、本実施形態では、弁体2が弁座部1Gに押し付けられる電動弁10、すなわち、弁体2が弁座部1Gに着座または離座するタイプの電動弁10について説明した。しかしながら、弁体2が弁座部1Gに着座または離座せず、単に近接または離間する電動弁においても、本発明を適用することは可能である。さらに、上記の実施形態では、
図1、2のような構造の電動弁について説明してきたが、この構造に限定するものではなく、例えば特許文献1、2のような構造の電動弁等に本発明を適用してもよい。特許文献1の場合、例えば、樹脂部材は、ばね受けであり、樹脂部材と摺動する金属製の摺動部材は弁ホルダである、また、特許文献2の場合、例えば、摺動部材はニードルガイドである。このように特許文献1、2に記載されたような上記摺動部材をねじ軸33の硬度に対する比較対象として適用することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1A 弁本体
1G 弁座部
2 弁体
3 駆動部
33 ねじ軸
33B 雄ねじ部
4 ねじ送り機構
42 雌ねじ部材
42A 雌ねじ部
5 接続体
51 円筒部材(金属製の摺動部材)
52 ばね受け部材(樹脂部材)
10 電動弁
F 強化繊維
L 軸線