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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057744
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】予混合装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20230417BHJP
   F23D 14/62 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F23N5/00 S
F23N5/00 J
F23D14/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167404
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】則竹 克哉
【テーマコード(参考)】
3K003
3K017
【Fターム(参考)】
3K003EA02
3K003FA03
3K003FB03
3K003FC04
3K003FC05
3K003GA03
3K017CA04
3K017CB08
3K017CC01
3K017CE01
(57)【要約】
【課題】空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ガス供給路にゼロガバナと流量調節弁が介設され、混合気の空気過剰率が適正値になるように流量調節弁の開度を調節する制御を行うものにおいて、一次ガス圧の低下で燃料ガスの供給量がファン回転数に対応する量よりも減少して、混合気の空気過剰率が適正値よりも増加した場合の一時的な燃焼不良の発生を防止できるようにする。
【解決手段】流量調節弁の開度Gθを所定の基準開度Gθnよりも増加する制御が行われた場合、流量調節弁の開度増加が必要となるファン回転数Nfの下限を第1閾値YNf1として演算して記憶する。ファン回転数Nfが次に第1閾値YNf1以上に増加したときに、即時に、流量調節弁の開度Gθを、ファン回転数Nfの第1閾値YNf1からの偏差に所定の係数Kを乗算した開度分だけ基準開度Gθnよりも増加した開度にする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンと、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された流量調節弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、
制御手段は、ファンの回転数を要求燃焼量に応じて可変する制御を行うと共に、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定の適正値になるように流量調節弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、
制御手段は、要求燃焼量に応じてファンの回転数を増加した際に、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が適正値よりも増加して、流量調節弁の開度を混合気の空気過剰率が適正値になるように予め設定された所定の基準開度よりも増加する制御が行われた場合、流量調節弁の開度増加が必要となるファンの回転数の下限を第1閾値として演算して記憶し、ファンの回転数が次に第1閾値以上に増加したときに、即時に、流量調節弁の開度を、ファンの回転数の第1閾値からの偏差に所定の係数を乗算した開度分だけ基準開度よりも増加した開度にする制御を行うように構成されることを特徴とする予混合装置。
【請求項2】
請求項1記載の予混合装置であって、前記ガス吸引部の上流側の空気供給路の部分にバタフライ弁が設けられるものにおいて、
前記制御手段は、要求燃焼量に応じて前記ファンの回転数を前記第1閾値よりも大きな所定の第2閾値を上回る値に増加させた際に、前記空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が前記適正値よりも増加して、前記流量調節弁の開度を最大開度まで増加しても、空気過剰率が適正値にならない場合、バタフライ弁の開度を空気過剰率が適正値になる所定開度まで減少させて、この所定開度を記憶すると共に、流量調節弁の開度が最大開度の状態で、前記バーナの燃焼量が要求燃焼量に達するまでファンの回転数を要求燃焼量に対応する基準回転数よりも増加させ、このときのファンの回転数の基準回転数に対する増加量を回転数補正値として記憶し、ファンの回転数が次に第2閾値を上回る値に増加したときに、即時に、流量調節弁の開度を最大開度にすると共に、バタフライ弁の開度を所定開度にし、更に、ファンの回転数を回転数補正値に従って増加する制御を行うように構成されることを特徴とする予混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の予混合装置として、ファンと、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナとを備えるものが知られている。ここで、燃料ガスの供給量は、二次ガス圧である大気圧と空気供給路内の負圧との差圧に応じて変化する。そして、空気供給路内の負圧がファンの回転数に応じて変化するため、燃料ガスの供給量はファンの回転数、即ち、空気の供給量に比例して変化する。従って、要求燃焼量に応じてファンの回転数を制御することにより、要求燃焼量に応じた量の混合気がバーナに供給され、混合気の空気過剰率(一次空気量/理論空燃比の空気量)は一定になる。
【0003】
但し、外国では、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。上記従来例のものでは、燃料ガスの発熱量が変動しても、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比は一定であるため、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率が変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0004】
そこで、従来、特許文献1により、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された流量調節弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、制御手段により、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定の適正値になるように流量調節弁の開度を調節する制御を行うようにした予混合装置も知られている。これによれば、燃料ガスの発熱量が変動しても、流量調節弁の開度調節により混合気の空気過剰率が適正値に保たれ、燃焼不良の発生を防止できる。
【0005】
また、特許文献1に記載のものでは、ガス吸引部よりも上流側の空気供給路の部分にバタフライ弁を介設して、燃焼能力をバタフライ弁及び流量調節弁の開度変化で少なくとも大小2段に切換える制御を行うようにしている。即ち、要求燃焼量が比較的小さな場合には、バタフライ弁の開度を閉じ側の所定の小能力開度にすると共に、流量調節弁の開度を比較的小さな所定の小能力開度にすることで、燃焼能力を小能力に切換えて、空気過剰率が適正値で比較的小さな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナに供給されるようにし、要求燃焼量が比較的大きな場合には、バタフライ弁の開度を開き側の所定の大能力開度にすると共に、流量調節弁の開度を比較的大きな所定の大能力開度にすることで、燃焼能力を大能力に切換えて、空気過剰率が適正値で比較的大きな要求燃焼量に対応する量の混合気がバーナに供給されるようにしている。
【0006】
ところで、ガス配管の設置状況等で一次ガス圧が低くなった場合、要求燃焼量に応じてファンの回転数を増加した際に、燃料ガスの供給量がファンの回転数に対応する量よりも少なくなって、混合気の空気過剰率が適正値よりも増加する。この場合、上記従来例のものでは、流量調節弁の開度を増加する制御(フィードバック制御)が行われて、燃料ガスの供給量が増加し、混合気の空気過剰率が適正値に戻される。
【0007】
然し、これでは、流量調節弁の開度の変化で混合気の空気過剰率が適正値に戻されるまでに時間を要する。そして、空気過剰率が適正値に戻されるまでの間に、一時的に燃焼不良を生ずる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-25722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、一次ガス圧が低くなった場合の一時的な燃焼不良の発生を防止できるようにした予混合装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファンを介してバーナに供給する予混合装置であって、ファンと、ファンの上流側の空気供給路と、空気供給路に設けられたガス吸引部に下流端が接続されたガス供給路と、ガス供給路に介設された、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナと、ゼロガバナの下流側のガス供給路の部分に介設された流量調節弁と、混合気の空気過剰率を検出する空気過剰率検出手段と、制御手段とを備え、制御手段は、ファンの回転数を要求燃焼量に応じて可変する制御を行うと共に、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が所定の適正値になるように流量調節弁の開度を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、制御手段は、要求燃焼量に応じてファンの回転数を増加した際に、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が適正値よりも増加して、流量調節弁の開度を混合気の空気過剰率が適正値になるように予め設定された所定の基準開度よりも増加する制御が行われた場合、流量調節弁の開度増加が必要となるファンの回転数の下限を第1閾値として演算して記憶し、ファンの回転数が次に第1閾値以上に増加したときに、即時に、流量調節弁の開度を、ファンの回転数の第1閾値からの偏差に所定の係数を乗算した開度分だけ基準開度よりも増加した開度にする制御を行うように構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、一次ガス圧の低下に起因して、ファンの回転数を第1閾値以上に増加した際に、混合気の空気過剰率が適正値よりも増加する事態になった場合、一旦、第1閾値を演算して記憶した後は、ファンの回転数の第1閾値以上への増加時に、上述した制御により、即時に、混合気の空気過剰率を適正値に戻すことができる。従って、一次ガス圧が低くなった場合の一時的な燃焼不良の発生を防止できる。
【0012】
また、本発明において、上記従来例の如く、ガス吸引部の上流側の空気供給路の部分にバタフライ弁を設ける場合には、制御手段を、要求燃焼量に応じてファンの回転数を第1閾値よりも大きな所定の第2閾値を上回る値に増加させた際に、空気過剰率検出手段で検出される混合気の空気過剰率が適正値よりも増加して、流量調節弁の開度を最大開度まで増加しても、空気過剰率が適正値にならない場合、バタフライ弁の開度を空気過剰率が適正値になる所定開度まで減少させて、この所定開度を記憶すると共に、流量調節弁の開度が最大開度の状態で、バーナの燃焼量が要求燃焼量に達するまでファンの回転数を要求燃焼量に対応する基準回転数よりも増加させ、このときのファンの回転数の基準回転数に対する増加量を回転数補正値として記憶し、ファンの回転数が次に第2閾値を上回る値に増加したときに、即時に、流量調節弁の開度を最大開度にすると共に、バタフライ弁の開度を所定開度にし、更に、ファンの回転数を回転数補正値に従って増加する制御を行うように構成することが望ましい。
【0013】
これによれば、ファンの回転数を第2閾値を上回る値に増加させた際に、一次ガス圧の低下に起因して、流量調節弁の開度を最大開度まで増加しても、混合気の空気過剰率が適正値にならない事態になった場合、一旦、バタフライ弁の所定開度及び回転数補正値を記憶した後は、ファンの回転数が次に第2閾値を上回る値に増加したときに、上述した制御により、即時に、混合気の空気過剰率を適正値に戻して、且つ、バーナの燃焼量を要求燃焼量にすることができる。従って、一次ガス圧が低くなった場合のファンの高回転数領域における一時的な燃焼不良と燃焼量不足の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の予混合装置を示す説明図。
図2】実施形態の予混合装置における燃焼量とファンの回転数との関係を示すグラフ。
図3】実施形態の予混合装置における一次ガス圧が低下した場合のファンの回転数と流量調節弁の開度との関係を示すグラフ。
図4】実施形態の予混合装置における大能力状態での制御手段による制御内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す燃焼装置は、全一次燃焼式のバーナ1と、バーナ1の燃焼面1aから噴出する混合気の燃焼空間を囲う燃焼筐2と、燃焼筐2内に配置した熱交換器3とを備える熱源機である。混合気の燃焼で生ずる燃焼ガスは、熱交換器3を加熱した後に燃焼筐2の端部に接続される排気筒4を介して外部に排出される。また、本発明の実施形態の予混合装置Aにより、空気に燃料ガスを混合し、混合気をファン5を介してバーナ1に供給している。
【0016】
予混合装置Aは、ファン5と、ファン5の上流側の空気供給路6と、燃料ガスを供給するガス供給路7とを備えている。ガス供給路7の下流端は、空気供給路6に設けられたガス吸引部61に接続されている。ガス吸引部61の上流側に隣接する空気供給路6の部分には、後述するバタフライ弁62を配置した部分よりも小径なベンチュリ部63が設けられている。ベンチュリ部63の下流側に隣接する空気供給路6の部分は、ベンチュリ部63より大径の筒部64で囲われている。そして、ベンチュリ部63の下流端部を筒部64の上流端部に環状の隙間を存して挿入し、この隙間でガス吸引部61を構成している。ガス供給路7の下流端には、筒部64を囲うようにして、ガス吸引部61に連通するガス室71が設けられている。
【0017】
ガス供給路7には、上流側から順に、元弁72と、二次ガス圧を大気圧に調圧するゼロガバナ73と、流量調節弁74とが介設されている。また、予混合装置Aは、ファン5、元弁72、流量調節弁74及び後述するバタフライ弁62を制御する制御手段たるマイクロコンピュータから成るコントローラ8を備えている。
【0018】
ガス吸引部61を介して供給される燃料ガスの量は、二次ガス圧である大気圧と空気供給路6内の負圧との差圧に応じて変化する。ここで、空気供給路6内の負圧は、ファン5の回転数Nfに応じて変化する。そのため、燃料ガスの供給量はファン5の回転数Nf、即ち、空気の供給量に比例して変化する。また、燃料ガスの供給量と空気の供給量との比率は、流量調節弁74の開度Gθによって変化する。流量調節弁74の開度Gθを使用するガス種に応じた所定の基準開度にすることで、混合気の空気過剰率λが所定の適正値Yλ(例えば、1.3)になる。そして、要求燃焼量Qd(設定湯温の温水を出湯するために必要な燃焼量)に応じてファン5の回転数Nfを制御することにより、空気過剰率λが適正値Yλで要求燃焼量Qdに応じた量の混合気がバーナ1に供給される。
【0019】
尚、排気筒4への風の侵入で排気不良を生じないようにするため、即ち、耐風性能を確保するため、ファン5の下限回転数をあまり低く設定することはできない。そして、要求燃焼量Qdがファン5の下限回転数に対応する所定値以下になった場合には、要求燃焼量Qdに対応する量の空気を供給できなくなる。
【0020】
そこで、ガス吸引部61より上流側の空気供給路6の部分に、当該部分の通気抵抗を大小2段に切換えるために、図外のモータにより図1に実線で示す開き姿勢と仮想線で示す閉じ姿勢とに切換えられるバタフライ弁62を配置している。そして、要求燃焼量Qdが上記所定値以下になった場合には、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくし、ファン5の回転数Nfを下限回転数以下にせずに、所定値以下の燃焼量に対応する量の空気を供給できるようにしている。但し、バタフライ弁62を閉じ姿勢にして、空気供給路6の通気抵抗を大きくするだけでは、空気供給路6内の負圧が増加して、燃料ガスの供給量が過大となり、バーナ1に供給される混合気の空気過剰率λが適正値Yλを下回ってしまう。そのため、要求燃焼量Qdが比較的小さな場合には、バタフライ弁62を閉じ姿勢にすると共に、流量調節弁74の開度Gθを、バタフライ弁62を閉じ姿勢にした状態で混合気の空気過剰率が適正値になるように予め設定された比較的小さな小能力基準開度にした小能力状態として、空気過剰率λが適正値Yλで比較的小さな燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにし、要求燃焼量Qdが比較的大きな場合には、バタフライ弁62を開き姿勢にすると共に、流量調節弁74の開度Gθを、バタフライ弁62を開き姿勢にした状態で混合気の空気過剰率が適正値になるように予め設定された比較的大きな大能力基準開度にした大能力状態として、空気過剰率λが適正値Yλで比較的大きな燃焼量に対応する量の混合気がバーナ1に供給されるようにしている。ファン5の回転数Nfと混合気の供給量、即ち、バーナ1の燃焼量Qとの関係は、小能力状態では図2のLの特性線で示すようになり、大能力状態では図2のHの特性線で示すようになる。
【0021】
ところで、燃料ガスとして同じガス種を使用していても、時間により燃料ガスの発熱量(ウォッベ指数)が変動することがある。この場合、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比が一定であると、燃料ガスの発熱量の変動で混合気の空気過剰率λが変動して、燃焼不良が発生してしまう。
【0022】
そこで、混合気の空気過剰率λを検出する空気過剰率検出手段9を設けている。本実施形態では、バーナ1の燃焼面1aに臨ませて設けたフレームロッドで空気過剰率検出手段9を構成し、フレームロッドに流れるフレーム電流から混合気の空気過剰率λを検出するようにしている。尚、混合気の空気過剰率λに応じて火炎が燃焼面1aに近づいたり離れたりするため、燃焼面1aの裏面温度が混合気の空気過剰率λに応じて変化する。従って、燃焼面1aの裏面温度を検出する温度センサで空気過剰率検出手段9を構成することも可能である。
【0023】
そして、空気過剰率検出手段9で検出された混合気の空気過剰率λをコントローラ8に入力し、この空気過剰率λが一定になるように、即ち、所定の適正値Yλに保たれるように、コントローラ8で流量調節弁74をフィードバック制御する。具体的には、燃料ガスの発熱量の増加で混合気の空気過剰率λが減少したときは、流量調節弁74の開度Gθを基準開度(小能力状態では小能力基準開度、大能力状態では大能力基準開度)よりも減少させて、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比を空気過剰率λが適正値Yλになるように減少させ、また、燃料ガスの発熱量の減少で混合気の空気過剰率λが増加したときは、流量調節弁74の開度Gθを基準開度よりも増加させて、空気の供給量に対する燃料ガスの供給量の比を空気過剰率λが適正値Yλになるように増加させる。これによれば、燃料ガスの発熱量が変動しても、混合気の空気過剰率λが適正値Yλに保たれ、燃焼不良の発生を防止できる。
【0024】
また、ガス配管の設置状況等で一次ガス圧が低くなった場合、大能力状態において要求燃焼量Qdに応じてファン5の回転数Nfを増加した際に、燃料ガスの供給量がファン5の回転数Nfに対応する量よりも少なくなって、混合気の空気過剰率λが適正値Yλよりも増加してしまう。この場合、流量調節弁74の開度Gθがフィードバック制御で大能力基準開度Gθnよりも増加され、燃料ガスの供給量が増加して、混合気の空気過剰率λが適正値Yλに戻される。然し、このような流量調節弁74のフィードバック制御では、混合気の空気過剰率λが適正値Yλに戻されるまでに時間を要し、その間に、一時的に燃焼不良を生ずる虞がある。
【0025】
ここで、一次ガス圧が低くなった場合、大能力状態におけるファン5の回転数Nfと混合気の空気過剰率λが適正値Yλになる流量調節弁74の開度Gθとの関係は図3に示す通りになる。即ち、ファン5の回転数Nfが所定の第1閾値YNf1以上になるまでは、燃料ガスの供給量がファン5の回転数Nfに対応する量に維持されて、流量調節弁74の開度Gθは大能力基準開度Gθnに維持されるが、ファン5の回転数Nfが第1閾値YNf1以上になると、燃料ガスの供給量がファン5の回転数Nfに対応する量よりも少なくなり、流量調節弁74の開度Gθが、ファン5の回転数Nfの増加に伴い大能力基準開度Gθnから所定の傾きで増加する。即ち、Nf≧YNf1の領域で、次式、
Gθ=Gθn+K(Nf-YNf1)…(1)
が成立する。尚、(1)式中の係数Kは、予混合装置Aの機種毎に固有の値であって、試験的に求めることができる。
【0026】
また、流量調節弁74の開度Gθを(1)式に従って増加させた場合、ファン5の回転数Nfが第1閾値YNf1よりも大きな所定の第2閾値YNf2に達すると、流量調節弁74の開度Gθが最大開度Gθmaxに達する。そして、ファン5の回転数Nfが要求燃焼量Qdの増加で第2閾値YNf2以上に増加した場合には、燃料ガスの供給量不足で混合気の空気過剰率λが適正値Yλよりも増加する。この場合、バタフライ弁62の開度Aθを、バタフライ弁62の開き姿勢での開度である全開開度から減少させることで、空気の供給量を減少させて、混合気の空気過剰率λを適正値Yλに戻すことができる。尚、このままでは、燃料ガスの供給量不足でバーナ1の燃焼量Qが要求燃焼量Qdに達しない。然し、ファン5の回転数Nfを要求燃焼量Qdに対応する基準回転数Nfn(図2のHの特性線に合致する回転数)よりも増加することで、バーナ1の燃焼量Qを要求燃焼量Qdまで増加することができる。
【0027】
以上のことを考慮して、本実施形態では、大能力状態において、コントローラ8により図4に示す制御を行うようにした。以下、この制御について説明する。大能力状態に切換えられたときは、先ず、STEP1で第1フラグF1が「0」にリセットされているか否かを判別する。第1フラグF1は、初期状態では「0」にリセットされている。そのため、STEP1からSTEP2に進んで、ファン5の回転数Nfを要求燃焼量Qdに対応する基準回転数Nfnにすると共に、空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率λが適正値Yλになるように流量調節弁74の開度Gθを調節する通常制御が行われる。
【0028】
次に、STEP3に進み、流量調節弁74の開度Gθが大能力基準開度Gθnに燃料ガスの発熱量変化による調節幅の上限値αを加えた開度よりも大きくなっているか否かを判別する。Gθ>Gθn+αになるのは、要求燃焼量Qdに応じてファン5の回転数Nfを増加した際に、一次ガス圧の低下に起因して、燃料ガスの供給量がファン5の回転数Nfに対応する量よりも少なくなり、混合気の空気過剰率λが適正値Yλよりも増加した場合である。そこで、Gθ>Gθn+αであれば、STEP4に進み、流量調節弁74の開度増加が必要となるファン5の回転数Nfの下限である上記第1閾値YNf1を、(1)式から導き出される次式、
YNf1=Nf-(Gθ-Gθn)/K…(2)
から演算して記憶すると共に、上記第2閾値YNf2を、次式、
YNf2=YNf1+(Gθmax-Gθn)/K…(3)
から演算して記憶する。
【0029】
次に、STEP5で第1フラグF1を「1」にセットしてからSTEP1に戻る。この場合は、STEP1で「NO」と判定されるため、STEP6に進み、ファン5の回転数、即ち、その時点での要求燃焼量Qdに対応する基準回転数Nfnが第1閾値YNf1以上に増加したか否かを判別する。Nfn<YNf1であれば、STEP2に進んで通常制御を行う。一方、Nfn≧YNf1であれば、STEP7に進んで、要求燃焼量Qdに対応する基準回転数Nfnが第2閾値YNf2以下であるか否かを判別する。そして、Nfn≦YNf2であれば、STEP8に進み、流量調節弁74の開度Gθを上記(1)式に従った開度、即ち、ファン5の回転数Nf(=Nfn)の第1閾値YNf1からの偏差に所定の係数Kを乗算した開度分だけ大能力基準開度Gθnよりも増加した開度にすると共に、ファン5の回転数Nfを要求燃焼量Qdに対応する基準回転数Nfnにする。
【0030】
以上の制御によれば、ファン5の回転数Nfを第1閾値YNf1以上に増加した際に、一次ガス圧の低下に起因して、混合気の空気過剰率λが適正値Yλよりも増加する事態になった場合、一旦、第1閾値YNf1を演算して記憶した後は、ファン5の回転数Nfの第1閾値YNf1以上への増加時に、流量調節弁74の開度Gθが、フィードバック制御によらずに、即時に、混合気の空気過剰率λを適正値Yλに戻すことができる開度に調節されることになる。従って、一次ガス圧が低くなった場合の一時的な燃焼不良の発生を防止できる。
【0031】
尚、第1と第2の閾値YNf1,YNf2の正しい値が一次ガス圧の変化によりSTEP4で演算・記憶した値と異なってしまうことがある。この場合、STEP8での処理では、混合気の空気過剰率λが適正値Yλにならない。そこで、STEP8での処理後にSTEP9において、空気過剰率検出手段9で検出された混合気の空気過剰率λが適正値Yλになっているか否かを判別し、λ=Yλであれば、そのままSTEP1に戻るが、λ≠Yλであれば、STEP10で第1と第2の各フラグF1,F2を「0」にリセットしてからSTEP1に戻るようにした。これによれば、STEP4に再度進んで、第1と第2の閾値YNf1,YNf2が更新され、次にSTEP8での処理が行われたときは、混合気の空気過剰率λが適正値Yλになる。
【0032】
STEP7において、その時点での要求燃焼量Qdに対応するファン5の基準回転数Nfnが第2閾値YNf2を上回る値に増加していると判別されたときは、STEP11に進んで、流量調節弁74の開度Gθを最大開度Gθmaxにした後、STEP12で第2フラグF2が「0」にリセットされているか否かを判別する。第2フラグF2は、初期状態では「0」にリセットされている。そのため、ファン5の回転数Nf(=Nfn)が初めて第2閾値YNf2を上回る値に増加したときは、STEP12からSTEP13に進んで、バタフライ弁62の開度Aθを全開開度から空気過剰率検出手段9で検出される混合気の空気過剰率λが適正値Yλになる所定開度YAθまで減少させ、この所定開度YAθを記憶する。
【0033】
次に、STEP14に進み、バーナ1の燃焼量Qが要求燃焼量Qdに達するまで、即ち、出湯される温水の温度が設定温度に上昇するまで、ファン5の回転数Nfを要求燃焼量Qdに対応する基準回転数Nfnよりも増加させ、このときのファン5の回転数Nfの基準回転数Nfnに対する増加量(=Nf-Nfn)を回転数補正値ΔNfとして記憶する。図2にH´で示す線が基準回転数Nfnに回転数補正値ΔNfを加えた特性線になる。
【0034】
STEP14での処理を終了すると、STEP15で第2フラグF2を「1」にセットした後、STEP1に戻る。そのため、その時点での要求燃焼量Qdに対応するファン5の基準回転数Nfnが次に第2閾値YNf2を上回る値に増加して、STEP9で流量調節弁74の開度Gθを最大開度GθmaxしてからSTEP12に進んだとき、「NO」と判定される。この場合は、STEP16に進んで、バタフライ弁62の開度Aθを所定開度YAθにすると共に、ファン5の回転数Nfを回転数補正値ΔNfに従って増加すること、即ち、ファン5の回転数Nfを要求燃焼量Qdに対応する基準回転数Nfnに回転数補正値ΔNfを加えた回転数に増加することが行われる。
【0035】
これによれば、ファン5の回転数Nfを第2閾値YNf2を上回る値に増加させた際に、一次ガス圧の低下に起因して、流量調節弁74の開度Gθを最大開度まで増加しても、混合気の空気過剰率λが適正値Yλにならない事態になった場合、一旦、バタフライ弁62の所定開度YAθ及び回転数補正値ΔNfを記憶した後は、ファン5の回転数Nf(=Nfn)が第2閾値YNf2を上回る値に増加したときに、即時に、混合気の空気過剰率λを適正値Yλに戻して、且つ、バーナ1の燃焼量Qを要求燃焼量Qdにすることができる。従って、一次ガス圧が低くなった場合のファン5の高回転数領域における一時的な燃焼不良と燃焼量不足の発生を防止できる。
【0036】
尚、STEP16での処理を終了すると、STEP9に進んで、空気過剰率検出手段9で検出した混合気の空気過剰率λが適正値Yλになっているか否かを判別する。そして、λ=Yλであれば、そのままSTEP1に戻り、λ≠Yλであれば、STEP10で第1と第2の各フラグF1,F2を「0」にリセットしてからSTEP1に戻る。そのため、λ≠Yλであれば、次にSTEP12まで進んだときに、「NO」と判定されて、STEP13,14に進み、バタフライ弁62の上記所定開度YAθ及び上記回転数補正値ΔNfが更新される。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、ガス吸引部61の上流側の空気供給路6の部分にバタフライ弁62が設けられているが、バタフライ弁62を省略することも可能である。この場合は、熱交換器3への通水量を制限することで、要求燃焼量Qdが第2閾値YNf2に対応する燃焼量以上に増加することを防止し、図4のSTEP11以下の処理を行わずに済むようにすればよい。
【符号の説明】
【0038】
A…予混合装置、1…バーナ、5…ファン、6…空気供給路、61…ガス吸引部、62…バタフライ弁、7…ガス供給路、73…ゼロガバナ、74…流量調節弁、8…コントローラ(制御手段)、9…空気過剰率検出手段、Q…バーナの燃焼量、Qd…要求燃焼量、λ…混合気の空気過剰率、Yλ…適正値、Nf…ファンの回転数、YNf1…第1閾値、YNf2…第2閾値、Nfn…基準回転数、ΔNf…回転数補正値、Gθ…流量調節弁の開度、Gθn…基準開度、Gθmax…最大開度、Aθ…バタフライ弁の開度、YAθ…所定開度。
図1
図2
図3
図4