(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057752
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】薄型基板の接合、剥離方法、薄型基板の製造方法、薄型基板、剥離装置、及び、接合装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167417
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】511027622
【氏名又は名称】ランテクニカルサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 好家
(57)【要約】
【課題】互いに接合された、表面に電子素子が形成される基板と該基板を搬送する為の搬送用基板とを容易に剥離することが可能な剥離技術を提供すること。
【解決手段】表面に電子素子4が形成される基板3と前記基板3を搬送する為の搬送用基板1との接合、剥離方法であって、前記基板3と前記搬送用基板1との接合面を無機材料層2を介して接合すること、前記基板3と前記搬送用基板1との接合面に水を介在させて剥離すること、を含む接合、剥離方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電子素子が形成される基板と前記基板を搬送する為の搬送用基板との接合、剥離方法であって、
前記基板と前記搬送用基板との接合面を無機材料層を介して接合すること、
前記基板と前記搬送用基板との接合面に水を介在させて剥離すること、を含む接合、剥離方法。
【請求項2】
前記水は超音波振動が付与されていること、を含む請求項1に記載の接合、剥離方法。
【請求項3】
前記接合面に水を介在させた後、前記接合面に超音波振動を付与すること、を含む請求項1に記載の接合、剥離方法。
【請求項4】
前記無機材料層には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流路が形成されていること、を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の接合、剥離方法。
【請求項5】
前記搬送用基板には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流通孔が形成されていること、を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の接合、剥離方法。
【請求項6】
前記流通孔に挿入した剥離部材により前記基板を押圧し剥離すること、を含む請求項5に記載の接合、剥離方法。
【請求項7】
前記無機材料層は、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、銅、窒化シリコン、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、グラファイトのいずれかまたはいずれかの組合せを含有すること、を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の接合、剥離方法。
【請求項8】
前記基板と前記搬送用基板とは、ガラス、シリコン、化合物半導体、高分子フィルムのいずれかまたはいずれかの組合せであること、を含む請求項1から7のいずれか1項に記載の接合、剥離方法。
【請求項9】
表面に電子素子が形成される基板の製造方法であって、
前記基板の搬送用基板が接合される接合予定面と、前記基板を搬送するための前記搬送用基板の接合予定面の少なくとも一方に、無機材料層を形成すること、
前記基板と前記搬送用基板とを互いに押し付けて、前記無機材料層を介して前記基板と前記搬送用基板とを接合すること、
前記基板と前記搬送用基板との接合面に水を介在させて剥離すること、を含む製造方法。
【請求項10】
前記水は超音波振動が付与されていること、を含む請求項9に記載の基板の製造方法。
【請求項11】
前記接合面に水を介在させた後、前記接合面に超音波振動を付与すること、を含む請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記無機材料層には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流路が形成されていることを、含む請求項9から11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記搬送用基板には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流通孔が形成されていること、を含む請求項9から12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記流通孔に挿入した剥離部材により前記基板を押圧し剥離すること、を含む請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記無機材料層は、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、銅、窒化シリコン、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、グラファイトのいずれかまたはいずれかの組合せを含有すること、を含む請求項9から14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記基板と前記搬送用基板とは、ガラス、シリコン、化合物半導体、高分子フィルムのいずれかまたはいずれかの組合せであること、を含む請求項9から15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記接合することの前に、前記無機材料層の表面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させること、を含む請求項9から16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記接合することは、真空雰囲気中または不活性ガスを含むガス雰囲気中で行われること、を含む請求項9から17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
請求項9から18のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される薄型基板。
【請求項20】
水を保留する容器と、
前記容器内の水に超音波を印可する超音波発生器と、
前記容器内において、基板接合体を載置する載置位置と前記基板接合体を水に浸す浸漬位置との間で移動可能とされる載置台と、
前記容器内の水面を予め定められた水位に保つ液面調整機構と、を備える剥離装置。
【請求項21】
水を保留する容器と、
基板接合体に超音波を印可する際に前記基板接合体を載置する超音波印可台と、
前記基板接合体に超音波を印可する超音波発生器と、
前記容器と前記超音波印可台との間で前記基板接合体を搬送する搬送ロボットと、を備え、
前記容器は、
前記容器内において、前記基板接合体を載置する載置位置と前記基板接合体を水に浸す浸漬位置との間で移動可能とされる載置台と、
前記容器内の水面を予め定められた位置に保つ液面調整機構と、を備える剥離装置。
【請求項22】
搬送用基板を搬入、搬出する搬送用基板ロードロックチャンバと、
基板を搬入、搬出する基板ロードロックチャンバと、
搬送ロボットが内部に設置される搬送チャンバと、
前記搬送用基板、前記基板に直接又はマスクを介して無機材料層を形成するスパッタチャンバと、
前記スパッタチャンバに連通して設けられ、前記搬送用基板、前記基板を覆うマスクを収納するマスク室と、
前記搬送用基板、前記基板を不活性ガス雰囲気に晒す不活性ガス処理チャンバと、
前記搬送用基板、前記基板をイオンビームにより活性化処理する活性化処理チャンバと、
前記搬送用基板、前記基板を接合する接合チャンバと、を備え、
前記搬送用基板ロードロックチャンバ、前記基板ロードロックチャンバ、前記スパッタチャンバ、前記不活性ガス処理チャンバ、前記活性化処理チャンバ、および接合チャンバは、相互間を前記搬送用基板、前記基板を搬送可能なように、前記搬送チャンバとゲートバルブによって接続されている接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型基板の接合、剥離方法、薄型基板の製造方法、薄型基板、剥離装置、及び、接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、透明基板上に形成された有機化合物からなる面状の発光層によって形成され、薄型ディスプレイなどへの実用化が進んできている。有機EL素子を利用した有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、視野角が大きく、消費電力が小さく、折り曲げることができる柔軟性を備えることが出来るので、商業的利用価値が高い。また、薄型基板(1μm厚のSiウエハー)を利用する製造方法として、ICの三次元実装分野やMEMS分野でもプロセス開発が行われている。
【0003】
ウエハーの厚さは、製造工程での取り扱いの簡便さから0.5-1mm程度に作られている。一般のシリコンウエハーの場合、外寸はSEMIなどの業界団体で標準化されており、直径150mm(6インチ)の場合は厚さ0.625mm、200mm(8インチ)では厚さ0.725mm、300mm(12インチ)では厚さ0.775mmとされている。しかしながら、利用しようとしている薄型基板は一般的には0.5μmから0.2mm程度の厚さであり、このままでは、一般の製造工程においては、搬送が困難である。また、基板サイズは小さいサイズではチップサイズ、4インチ角から、大きいサイズでは1m角をこえるものもある為、デバイス製造時における薄型基板をロボットなどで搬送することが困難である。
【0004】
そこで考えられるのは、0.1mm厚以上1.1mm厚ぐらいまでのガラス基板、フィルムまたはウエハーを搬送用基板として、その表面に上記の薄型基板を貼り付けて搬送する方法である。この方法であると、基板厚は既存の設備をそのまま使用して搬送できるという利点がある。しかし、搬送用基板はデバイスが完成した後、搬送用基板から剥がされなければならない。
【0005】
薄型基板には3つの種類がある。一つは薄型ガラスであり、もう一つはポリイミドに代表される耐熱性フィルムである。このフィルムには搬送基板にワニスを直接塗工し、焼成後、フィルム化する方法で作成されたフィルムも含まれる。3つ目はウエハーである。ウエハーは場合によっては、粘着剤がついているテープで保護されている場合もある。この場合、基板はウエハーとフィルムの積層体である。
【0006】
現在提案されている搬送方法は搬送のキャリアとしてガラスやウエハーを使う方法である。薄型ガラスの場合はガラス同士という特性からキャリアガラス表面を清浄な状態に保ち、直接貼り付けることにより接合する方法である。また耐熱性フィルムの場合、搬送ガラスとフィルムの間にレーザー照射により破壊現象の起こる膜を形成し、貼り合わせ後、レーザー照射で剥離する方法である。また薄型基板がウエハーである場合、非接触の搬送方法や特殊チャック方法が提案されているが搬送できる厚さに限度がある。実際には、厚さ100μm前後が実現可能な領域であり、1μmなどの厚さでは搬送方法がない。
【0007】
この場合では搬送基板を使う方法が考えられる。ただ剥離方法に良い方法がない。またウエハーの場合は薄くするために研磨を用いることがある。この場合はウエハーに粘着テープを貼り、研磨後、割れやかけを防ぐ。この場合もキャリアとしてガラスを使うことが提案されている。
【0008】
薄型基板は、たとえばディスプレイにおいてはTFT形成プロセスなどにおいて、300℃から500℃程度に加熱する工程がある。また、ウエハーなどの半導体プロセスでは、アニール工程で800℃以上に加熱する工程が存在する。加熱された工程を経るため、接着された搬送基板から薄型基板をはがす方法に有力な方式がない。
【0009】
一方、仮接合、剥離技術はデバイスが薄型化するに従い、多くの需要が生まれてきた。現在の仮接合、剥離は紫外線に反応するテープを貼り、すべての工程を経た後、紫外線で剥離する。またはレーザーリフトオフと呼ばれる接合界面にレーザー焦点をあてて剥がす方法がある。(フレキシブル有機ELのキャリアガラスとpiワニスの剥離に使っている)ただこれらの技術は紫外線を透過するものが使用される事を前提とする。キャリアとしてシリコンウエハーを使う場合は適応付加である。この技術は紫外線が寄与しない、または有機物質を剥離膜として使えない場合の解決策である。大きなアプリケーションとしてはシリコンウエハーとインターポーザー(ガラスやシリコン)の接合、剥離がある。
【0010】
例えば、特許文献1には、薄型基板と搬送用基板とを無機材料層を介して接合することにより、これらの剥離を容易にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、薄型基板と搬送用基板とを容易に剥離するためのさらなる方法が求められている。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、互いに接合された、表面に電子素子が形成される基板と該基板を搬送する為の搬送用基板とを容易に剥離することが可能な剥離技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明における表面に電子素子が形成される基板と前記基板を搬送する為の搬送用基板との接合、剥離方法は、前記基板と前記搬送用基板との接合面を無機材料層を介して接合すること、前記基板と前記搬送用基板との接合面に水を介在させて剥離すること、を含む。
【0015】
本発明の一態様では、前記水は超音波振動が付与されていること、を含む。
【0016】
本発明の一態様では、前記接合面に水を介在させた後、前記接合面に超音波振動を付与すること、を含む。
【0017】
本発明の一態様では、前記無機材料層には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流路が形成されていること、を含む。
【0018】
本発明の一態様では、前記搬送用基板には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流通孔が形成されていること、を含む。
【0019】
本発明の一態様では、前記流通孔に挿入した剥離部材により前記基板を押圧し剥離すること、を含む。
【0020】
本発明の一態様では、前記無機材料層は、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、銅、窒化シリコン、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、グラファイトのいずれかまたはいずれかの組合せを含有すること、を含む。
【0021】
本発明の一態様では、前記基板と前記搬送用基板とは、ガラス、シリコン、化合物半導体、高分子フィルムのいずれかまたはいずれかの組合せであること、を含む。
【0022】
また、本発明の表面に電子素子が形成される基板の製造方法は、前記基板の搬送用基板が接合される接合予定面と、前記基板を搬送するための前記搬送用基板の接合予定面の少なくとも一方に、無機材料層を形成すること、前記基板と前記搬送用基板とを互いに押し付けて、前記無機材料層を介して前記基板と前記搬送用基板とを接合すること、前記基板と前記搬送用基板との接合面に水を介在させて剥離すること、を含む。
【0023】
本発明の一態様では、前記水は超音波振動が付与されていること、を含む。
【0024】
本発明の一態様では、前記接合面に水を介在させた後、前記接合面に超音波振動を付与すること、を含む。
【0025】
本発明の一態様では、前記無機材料層には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流路が形成されていることを、含む。
【0026】
本発明の一態様では、前記搬送用基板には、前記接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流通孔が形成されていること、を含む。
【0027】
本発明の一態様では、前記流通孔に挿入した剥離部材により前記基板を押圧し剥離すること、を含む。
【0028】
本発明の一態様では、前記無機材料層は、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、銅、窒化シリコン、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、グラファイトのいずれかまたはいずれかの組合せを含有すること、を含む。
【0029】
本発明の一態様では、前記基板と前記搬送用基板とは、ガラス、シリコン、化合物半導体、高分子フィルムのいずれかまたはいずれかの組合せであること、を含む。
【0030】
本発明の一態様では、前記接合することの前に、前記無機材料層の表面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させること、を含む。
【0031】
本発明の一態様では、前記接合することは、真空雰囲気中または不活性ガスを含むガス雰囲気中で行われること、を含む。
【0032】
本発明の一態様では、上記製造方法によって製造される薄型基板を含む。
【0033】
本発明の剥離装置は、水を保留する容器と、前記容器内の水に超音波を印可する超音波発生器と、前記容器内において、基板接合体を載置する載置位置と前記基板接合体を水に浸す浸漬位置との間で移動可能とされる載置台と、前記容器内の水面を予め定められた水位に保つ液面調整機構と、を備える。
【0034】
また、本発明の別の側面に係る剥離装置は、水を保留する容器と、基板接合体に超音波を印可する際に前記基板接合体を載置する超音波印可台と、前記基板接合体に超音波を印可する超音波発生器と、前記容器と前記超音波印可台との間で前記基板接合体を搬送する搬送ロボットと、を備え、前記容器は、前記容器内において、前記基板接合体を載置する載置位置と前記基板接合体を水に浸す浸漬位置との間で移動可能とされる載置台と、前記容器内の水面を予め定められた位置に保つ液面調整機構と、を備える。
【0035】
本発明の接合装置は、搬送用基板を搬入、搬出する搬送用基板ロードロックチャンバと、基板を搬入、搬出する基板ロードロックチャンバと、搬送ロボットが内部に設置される搬送チャンバと、前記搬送用基板、前記基板に直接又はマスクを介して無機材料層を形成するスパッタチャンバと、前記スパッタチャンバに連通して設けられ、前記搬送用基板、前記基板を覆うマスクを収納するマスク室と、前記搬送用基板、前記基板を不活性ガス雰囲気に晒す不活性ガス処理チャンバと、前記搬送用基板、前記基板をイオンビームにより活性化処理する活性化処理チャンバと、前記搬送用基板、前記基板を接合する接合チャンバと、を備え、前記搬送用基板ロードロックチャンバ、前記基板ロードロックチャンバ、前記スパッタチャンバ、前記不活性ガス処理チャンバ、前記活性化処理チャンバ、および接合チャンバは、相互間を前記搬送用基板、前記基板を搬送可能なように、前記搬送チャンバとゲートバルブによって接続されている。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、基板と搬送用基板とを無機材料層を介して接合し、基板上に電子素子を形成した後、基板と搬送用基板との接合面に水を介在させて剥離することにより、基板と搬送用基板とを容易に剥離することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施形態に係る製造方法の工程を説明する概念的な図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る基板接合体の概念的な側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る剥離方法の工程を説明する模式図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る剥離装置の模式図ある。
【
図11】本発明の実施形態に係る剥離装置の模式図ある。
【
図12】本発明の実施形態に係る剥離装置の模式図ある。
【
図13】本発明の実施形態に係る剥離装置の模式図ある。
【
図14】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図20】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図21】本発明の実施形態に係る基板と搬送基板との接合面に形成される流路を示す図である。
【
図22】本発明の実施形態に係る接合装置の模式図ある。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明がこれらの具体的な実施形態に限定されないことは自明である。
【0039】
(第1実施形態)
本実施形態の製造方法は、表面に電子素子が形成される基板の製造方法であって、表面に電子素子4が形成される基板3と基板3を搬送するための搬送用基板1の接合面の少なくとも一方に、無機材料層2を形成する形成工程と、基板3と搬送用基板1とを互いに押し付けて、無機材料層2を介して基板3と搬送用基板1とを接合する接合工程と、基板3と搬送用基板1とをこれらの接合面に水を介在させて剥離する剥離工程と、を備える。
【0040】
上記構成からなる製造方法では、無機材料層を介して基板と搬送用基板とを接合することにより、基板接合後の工程において、たとえば、300℃から500℃の加熱処理などを行っても、後に基板と搬送用基板とをこれらの接合面に水を介在させて容易に剥離することができる。または、材料や条件によってはさらなる高温で加熱処理を行っても基板と搬送基板は容易に剥離できる可能性がある。
【0041】
上記製造方法において、接合工程の前または後に、かつ剥離工程の前に、基板上に電子素子4を形成する電子素子形成工程をさらに備えてもよい。また、電子素子を他の基板で封止する封止工程をさらに備えてもよい。
【0042】
基板3上に形成される電子素子4は、TFTや有機EL素子などが挙げられるが、これらに限定はされない。電子素子4が、たとえばTFT(薄膜トランジスタ)である場合、その形成プロセスなどにおいて、300℃から500℃程度の加熱工程がある。
【0043】
図1は、本実施形態に係る製造方法の一例を説明する図である。この例では、搬送用基板1上に無機材料層2を形成する形態を示している。
【0044】
(a)搬送用基板の準備工程
表面に電子素子4が形成される基板3を載置するための搬送用基板1を用意する。
【0045】
(b)無機材料層形成工程
基板3を搬送するための搬送用基板1の表面(基板3との接合面)に、無機材料層2を形成する。
【0046】
(c)接合工程
基板3と搬送用基板1とを互いに押し付けて、無機材料層2を介して基板3と搬送用基板1とを接合して、基板接合体を形成する。
【0047】
(d)電子素子形成工程
基板接合体の基板3上に電子素子4を形成する。その後、基板接合体の電子素子4を封止するように、他の基板(カバー側基板5)を貼り合わせる封止工程を経て、デバイスが形成される。
【0048】
(e)剥離工程
電子素子4が形成された基板3と搬送用基板1とをこれらの接合面に水を介在させて剥離する。接合面に水を介在させるとは、後程詳述するが、例えば、
図1(e)に示すように、水11を保留する容器13に、接合面に水が浸透する位置まで、基板3と搬送基板3の接合体を浸すことによって基板3と搬送用基板1を容易に剥離することができる。剥離工程において使用される水としては、例えば純水が用いられる。この工程により、電子素子4が表面に形成された基板3を含むデバイスが得られる。この例では、無機材料層2は、搬送用基板1側に残っている。また、剥離工程を水中で行ったとしても、既に電子素子形成工程で形成された電子素子4に対して何ら影響を及ぼすことはない。
【0049】
なお、上記の製造方法では、搬送用基板1上に無機材料層2を形成しているが、基板3上に無機材料層2を形成して、(c)接合工程、(d)電子素子形成工程、(e)剥離工程を行ってもよい。この場合でも、電子素子4が形成された基板3と搬送用基板1との接合面に水を介在させて剥離することにより、基板3と搬送用基板1とを容易に剥離することができる。
【0050】
上記の製造方法において、(b)と(c)との間に、後述する表面活性化工程をさらに備えてもよい。
【0051】
上記製造方法において、接合工程の前に、基板3か搬送用基板1の少なくとも一方の接合面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備えてもよい。
【0052】
あるいは、上記製造方法において、接合工程の前に、無機材料層2の表面を、所定の運動エネルギーを備える粒子を照射することで活性化させる表面活性化工程をさらに備えてもよい。
【0053】
表面活性化工程における表面活性化処理により、基板接合工程において、搬送用基板1、無機材料層2または基板3のいずれか同士の接合界面の接合強度を増すことができる。
【0054】
所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて、接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせることで、酸化物や汚染物など表面層を除去し、表面エネルギーの高い、すなわち活性な無機材料層の新生表面を露出させることができる。
【0055】
表面活性化処理に用いる粒子として、たとえば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)などの希ガスまたは不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、衝突される接合面を形成する物質と化学反応を起こしにくいので、化合物を形成するなどして、接合面の化学的性質を大きく変化させることはない。
【0056】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子には、粒子ビーム源やプラズマ発生装置を用いて、粒子を接合面に向けて加速することで所定の運動エネルギーを与えることができる。
【0057】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーは、1eVから2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さ、材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
【0058】
粒子ビーム源を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。粒子ビーム源は、たとえばバックグラウンド圧力が1×10-8Pa(パスカル)以下などの、比較的高い真空中で作動する。比較的高い真空に引くために真空ポンプの作動により、金属領域の表面から除去された物質が効率よく雰囲気外へ排気される。
【0059】
これにより、露出された新生表面への望ましくない物質の付着を抑制することができる。さらに、粒子ビーム源は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率よく表面層の除去および新生表面の活性化を行うことができると考えられる。
【0060】
あるいは、バックグラウンド圧力が1×10-8Pa以上大気圧未満である、真空ないしは減圧雰囲気中で表面活性化処理を行ってもよい。
【0061】
粒子ビーム源として、イオンビームを放射するイオンビーム源や中性原子ビームを放射する中性原子ビーム源を用いることができる。イオンビーム源としては、コールドカソード型イオン源を用いることができる。
【0062】
中性原子ビーム源としては、高速原子ビーム源(FAB,Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、典型的に希ガスのプラズマを発生させ、このプラズマに電界を掛けて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。
【0063】
この場合、たとえば、希ガスとしてアルゴン(Ar)の場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。たとえば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物など(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
【0064】
本発明において、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子またはイオンでもよく、さらには、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。
【0065】
各プラズマまたはビーム源の稼動条件、または粒子の運動エネルギーに応じて、表面層の除去速度は変化しえる。そこで、表面活性化処理に必要な処理時間を調節する必要がある。たとえば、オージェ電子分光法(AES,Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光法(XPS,X-ray Photo Electron Spectroscopy)などの表面分析法を用いて、表面層に含まれる酸素や炭素の存在が確認できなくなる時間またはそれより長い時間を、表面活性化処理の処理時間として採用してもよい。
【0066】
プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。基板の接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで、所定の運動エネルギーを与える。プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
【0067】
上記製造方法において、基板3と搬送用基板1とを接合する接合工程の前に、基板表面へ選択的に表面活性化処理を施してもよい。また接合工程の前に、無機材料層の一部へ選択的に表面活性化を施してもよい。
【0068】
無機材料層の一部とは、たとえば、基板3の外周部であり、外周部のみ表面活性化処理を施すことにより、基板3の中央部に対して外周部の接合力が高くなり好ましい。
【0069】
上記製造方法において、異なる種類の複数の無機材料層を形成してもよい。たとえば、基板3の中央部と外周部とで、異なる種類の無機材料層を形成するようにしてもよい。これにより、基板3の中央部と外周部とで接合強度の差を設けることができる。このことにより、基板に合わせて接合強度を制御することが可能となる。また、これらの無機材料層の一部に選択的に表面活性化処理をしても良い。
【0070】
搬送用基板1は、板状またはフィルム状のガラス、耐熱性フィルム、ウエハーまたはこれらの複合材料により形成されていてもよい。より具体的には、搬送用基板1は、基板3が薄型ガラスの場合は耐熱性フィルム、またはガラス基板、またはガラスに耐熱性フィルムを貼られた基板が好ましく、基板3が耐熱性フィルムの場合はガラス、基板3がウエハーの場合はウエハーまたはガラスであることが好ましい。搬送用基板1は、シート状またはロール状に巻かれた形で提供されてもよい。
【0071】
搬送用基板1は、既設の設備を使えるという観点から、厚みが0.1mm以上1.1mm以下であることが好ましい。
【0072】
無機材料層2は、シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、銅、窒化シリコン、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、グラファイトのいずれかまたはいずれかの組合せを含有するものを採用することができる。無機材料層2として具体的には、Al2O3(酸化アルミニウム)、TiO2(酸化チタン)、NiO(酸化ニッケル)、Ag2O(酸化銀)、SiO2(二酸化ケイ素)などを採用することができる。これにより、水中における剥離工程において基板3と搬送用基板1を容易に剥離することができる。
【0073】
無機材料層2は、複数形成してもよい。すなわち、第一無機材料層と第二無機材料層とが積層された構造としてもよい。
【0074】
無機材料層2は、プラズマ促進化学気相成長法(PECVD)やスパッタ蒸着など堆積方法で形成されることが好ましいが、これに限られない。無機材料層2を形成する際に、所定のマスクを用いることで、所定の領域にのみ形成することができる。また、後述するように、接合面に水を介在させるための流路を形成することができる。
【0075】
また、所定の無機材料層をプラズマ促進化学気相成長法(PECVD)やスパッタ蒸着などで所定の無機材料層材料を堆積させることで無機材料層2を形成する際に、当該所定の無機材料層材料以外の無機材料層材料を混合させてもよい。
【0076】
たとえば、粒子ビームをスパッタターゲットに照射することで、スパッタターゲットの所定の無機材料層材料を当該スパッタターゲットから放出させてスパッタ蒸着を行う際に、粒子ビームの経路に当該所定の無機材料層材料以外の無機材料層材料からなるターゲットを配置してもよい。
【0077】
これにより、所定の金属酸化材料に当該所定の金属酸化材料以外の金属酸化材料が混合した混合金属酸化材料をスパッタ蒸着することができる。
【0078】
基板3と搬送用基板1との接合のために用いられる無機材料層2は、加熱工程や洗浄工程などを経た後、容易に剥がれる状態に膜厚、膜質が調整されることが好ましい。
【0079】
基板3、搬送用基板1は、ガラスであることが好ましい。または、基板3、搬送用基板1は、PI(ポリイミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはCOP(シクロオレフィンポリマー)などの有機材料からなるフィルムであることが好ましい。または、基板3、搬送用基板1は、シリコン、化合物半導体(たとえば、GaP、GaAs、InP、GaN)などからなるウエハーであることが好ましい。
【0080】
基板3の厚みは、0.5μm以上0.5mm以下であることが好ましく、0.5μm以上0.2mm以下であることがより好ましい。基板3の供給形態はシートまたはロールでまいた形で提供されてもよい。
【0081】
上記製造方法において、基板が複数の層で構成され、ガラスからなる層を含み、有機材料からなる層を含んでもよい。このとき、基板が、ガラスからなる層と、有機材料からなる層で構成され、有機材料からなる層の側が搬送用基板に接合されてもよい。
【0082】
たとえば、
図2に示すように、ガラス層7と有機材料層8とからなる積層基板9を用いてもよい。この場合、ガラス層7と有機材料層8とを構成する材料は、ガラスとPIの組み合わせが特に好ましい。またガラス層7と有機材料層8を接合するには、無機材料をガラス層7または有機材料層8のどちらか一方に構成し、また無機材料表面に所定のエネルギーを与えて表面活性化する手法を用いるのが好ましい。これは接着剤などを使用した場合、加熱工程での凝固などの問題を起こすためである。
【0083】
従来、一度使用した搬送用基板は使い捨てであったが、上記実施形態の製造方法によれば、レーザー照射などの基板にダメージを与えなく、また有機系接着剤を使用していないという理由より、搬送用基板を再利用することができる。
【0084】
上記の実施形態に係る製造方法において、基板接合工程は、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で行われてもよい。これにより、搬送用基板1と基板3との接合強度が容易にコントロールできる。不活性ガスは窒素ガスであることがより好ましい。
【0085】
上記の実施形態に係る製造方法において、基板接合工程の前に、基板と搬送用基板の接合面を不活性ガス雰囲気中に晒す。これにより、加熱による、搬送用基板1と基板3との接合強度の変化が生じ難い。不活性ガスは窒素ガスであることがより好ましい。
【0086】
上記実施形態に係る製造方法において、基板接合工程が、バックグラウンド圧力が1×10-8Pa以上大気圧未満である、真空ないしは減圧雰囲気中で行われてもよい。
【0087】
また、たとえば、先述の表面活性工程を経ずに、基板同士の接合を行ってもよい。たとえば真空中で蒸着などにより形成された無機材料層は、表面において酸化や不純物による汚染などが進んでおらず、表面エネルギーが高い状態にある。このような無機材料層の表面と他方の表面とを接触させることで、比較的強度の高い接合界面を形成することができる。
【0088】
本実施形態に係る基板と搬送用基板の接合、剥離方法によれば、基板と搬送用基板とを無機材料層を介して接合し、基板上に電子素子を形成した後、基板と搬送用基板との接合面に水を介在させての剥離を行うことにより、基板と搬送用基板とを容易に剥離することが可能である。
【0089】
図3から
図6は、本実施形態の剥離方法を説明する模式図である。
図3に示すように、積層体10は、搬送用基板1と基板3が無機材料層2を介して接合されており、基板3の表面には、電子素子が形成された基板14a、14bが積層されている。これらの積層体の下方には、水11を保留した容器13が配置されている。水11には、超音波が印可されている。
【0090】
次に、
図4に示すように、基板3と基板14a、14bの側面を水の侵入を防ぐため、シール部材15で覆う。シール部材15で基板3と基板14a、14bの側面を覆われた積層体10を、
図5に示すように、搬送基板3と基板1の接合面が、超音波を印可された水中に位置するように、積層体10を容器のなかに沈める。このことにより、接合面の端から超音波で励起された水が浸透してゆき、
図6に示すように、無機材料層2が形成された搬送基板1と、電子素子が形成された基板14a、14bを積層した基板3とが分離し、剥離が完了する。このとき、水としては、例えば純水を用いてよい。また、水に印可される超音波としては、低周波帯(20kHz-100kHz)、中周波帯(78kHz-430kHz)、高周波帯(500kHz-5MHz)のそれぞれの範囲内から最適なものを適宜、剥離対象の接合面に応じて選択してよい。
【0091】
以上述べたように、本実施形態では、表面に電子素子が形成される基板と搬送用基板との接合面を無機材料層を介して接合し、基板と搬送用基板との接合面に水を介在させて剥離する。介在される水には、超音波が印可されており、この水が接合面の間に浸透していって、基板と搬送用基板を剥離する。したがって、物理的な応力を作用させることなく、基板と搬送用基板とを容易に剥離することができる。物理的な応力を利用しないので薄型基板に損傷を与えることなく、搬送用基板から剥離することが可能となる。搬送用基板への損傷も防ぐことができるので、搬送用基板を再利用することが可能となり、経済的に効率のよい生産工程を構築することができる。
【0092】
(第2実施形態)
本実施形態が、第1実施形態と異なるのは、剥離方法である。
図7~
図9は、本実施形態の剥離方法を説明する模式図である。
図7に示すように、積層体10は、搬送用基板1と基板3が無機材料層2を介して接合されており、基板3の表面には、電子素子が形成された基板14a、14bが積層されている。これらの積層体の下方には、水11を保留した容器13が配置されている。水11には、超音波が印可されている。
【0093】
本実施形態では、さらに、搬送用基板1に、搬送用基板1と基板3の接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流通孔17が形成されている。容器13内には、流通孔17に挿入される剥離部材19が配置されている。次に、
図8に示すように、積層体10の搬送用基板1側を水11に浸漬し、剥離部材19を流通孔17に挿入し、基板1を押圧する。すると、超音波を印可した水11の接合面への浸透が促進され、
図9に示すように、搬送用基板1と基板3とが剥離する。
【0094】
本実施形態では、超音波を印可した水を搬送用基板1と基板3との接合面に介在させると共に、搬送用基板1に流通孔17を設け、この流通孔17からも接合面に水を作用させると同時に流通孔17に剥離部材19を挿入し、基板1を押圧することによって、搬送用基板1と基板3の剥離を促進する。したがって、時間をかけずに効率よく、搬送用基板1と基板3を剥離することができる。均等に配置された複数の流通孔17を通して剥離部材19によって、基板3を押圧することにより、基板3に均等の圧力をかけることができ、基板3の破損を防止することができる。
【0095】
(第3実施形態)
図10は、本実施形態に係る剥離装置30の模式図である。剥離装置30は、水11を保留する容器31と、容器31内の水に超音波を印可する超音波発生器33と、容器31内において、基板積層体10を載置する載置位置35aと基板積層体10を水に浸す浸漬位置35bとの間で移動可能とされる載置台35と、容器31内の水面を予め定められた水位に保つ液面調整機構37と、を備えている。載置台35は、載置軸35cに接続されており、載置軸35cは、容器31の下部の孔31aを通過して容器の外部に延びており、その先に載置台35の移動を可能とする駆動源、例えばエアシリンダ(図示せず)に接続されている。載置軸35cが摺動する、容器31の孔31aのまわりには、容器31内のからの水漏れを防止するシールリング35dが装着されている。液面調整機構37は、たとえばフロートセンサと水の流入弁と流出弁とで構成することができ、フロートセンサの水面検知の位置によって水の流出を制御する。
【0096】
剥離装置30が始動すると、超音波発生器33は、容器31内の水に超音波の印可を開始する。液面調整機構37は、載置台35が浸漬位置35bに移動したときに基板接合体10の搬送用基板1と基板3との接合面が水11に浸るように、容器31内の液面を調整する。載置台35は、前述のエアシリンダの駆動によって、載置位置35aに移動し、基板接合体10を載置台35上に載置する。次いで、載置台35は、エアシリンダの駆動によって、浸漬位置35bに移動し、基板接合体10を水に浸す。超音波振動を印可された水11は、搬送用基板1と基板3の接合面に浸透してゆき、搬送用基板1と基板3を剥離する。本実施形態における剥離装置30は、第1実施形態の剥離工程で利用するのに好適な装置である。
【0097】
(第4実施形態)
図11は、本実施形態に係る剥離装置40の模式図である。本実施形態の剥離装置40が、第3実施形態の剥離装置30と異なっている点は、載置台45に剥離部材19としてピン45eが設けられた点である。その他の同様の作用効果を有する部材には、同じ符号を付しその説明を省略する。本実施形態では、載置台45が、基板接合体10を載置し、浸漬位置35bに移動した後、ピン45eがアクチュエータ(図示せず)によって、載置台45から上方にむけて突出し、搬送用基板1に設けられた流通孔17を通して基板3を押圧する。本実施形態における剥離装置40は、第2実施形態で利用するのに好適な装置である。
【0098】
(第5実施形態)
図12は、本実施形態に係る剥離装置50の模式的平面図である。
図13は、
図12における矢印A方向からみた拡大側面図である。本実施形態に係る剥離装置50は、水を保留する容器51と、基板接合体10に超音波を印可する際に基板接合体10を載置する超音波印可台53と、基板接合体10に超音波を印可する超音波発生器55と、容器51と超音波印可台53との間で基板接合体10を搬送する搬送ロボット57と、を備え、容器51は、容器51内において、基板接合体10を載置する載置位置35aと基板接合体を水に浸す浸漬位置35bとの間で移動可能とされる載置台35と、容器51内の水面を予め定められた位置に保つ液面調整機構37と、を備える。
【0099】
図12に示すように、本実施形態における搬送ロボット57は、回転アーム56aを備え、基板接合体10をキャリア(図示せず)から容器51に搬送する搬送ロボット57aと、平行移動アーム56bを備え、基板接合体10を容器51から超音波印可台53に搬送する搬送ロボット57bとによって構成されている。搬送ロボット57aは、回転軸Kを中心として矢印p、qに示すようにアーム56aを回転駆動することによって基板接合体10を搬送し、その端部には、基板接合体10の外周の4か所に接して基板接合体10を挟持する挟持部材59aが設けられている。搬送ロボット57bは、レール58にそって矢印rに示すようにアーム56bを平行駆動することによって基板接合体10を搬送し、その端部には、搬送ロボット57aと同様の動作をする挟持部材59bが設けられている。
【0100】
図13に示すように、本実施形態に係る容器51は、
図10に示す実施形態3の剥離装置30の超音波発生器33を取り外したものである。したがって、同様の作用効果を示す部材には、同じ符号を付しその説明を省略する。
【0101】
搬送ロボット57aによって、容器51に搬送された基板接合体10は、載置位置35aにおいて載置台33に載置される。載置台33は、そのご浸漬位置35bに移動し基板接合体10の搬送基板1と基板3との接合面に水11を浸透させる。あらかじめ定められた時間、浸漬位置35bにおいて基板接合体10を水に浸した後、基板接合体10は、載置台35と搬送ロボット57bの協働によって、容器51から超音波印可台53に搬送される。超音波印可台53では、隣接して配置された超音波発生器55がアクチュエータ(図示せず)によって基板接合体10に接触する位置に移動し基板接合体10に超音波を印可する。この超音波の印可によって、搬送用基板1と基板3とを剥離する。このように、基板接合体10の接合面に浸透した水によって、搬送用基板1と基板3の接合が弱められ、さらに超音波振動を印可することによって、搬送用基板1と基板3とを容易に剥離することができる。
【0102】
(第6実施形態)
図14~
図21は、本実施形態に係る搬送基板と基板との接合面に形成される流路を示す図である。本実施形態では、無機材料層に、接合面に水を介在させるための少なくとも一つの流路が形成されている。
図14~
図21に示されるように、流路61は、搬送用基板1または基板3の接合面にマスクを介してイオンビームスパッタ等で形成された無機材料層のパターン63の間隙として形成される。
図14~
図21では、無機材料層のパターン63は、斜線のハッチングで示され、イオンビームスパッタの際に、マスクが覆っていない部分に形成される。本実施形態は、上述の実施形態のいずれにも適用することが可能である。本実施形態では、基板接合体を水に浸した際に、この流路61が、搬送用基板1と基板3との接合面における水の接触を促進することができるので、より容易に搬送用基板1と基板3とを剥離することが可能となる。
【0103】
(第7実施形態)
図22は、本実施形態に係る接合装置70の模式的平面図である。接合装置70は、搬送用基板を搬入、搬出する搬送用基板ロードロックチャンバ71と、基板を搬入、搬出する基板ロードロックチャンバ72と、搬送ロボットが内部に設置される搬送チャンバ73と、搬送用基板、基板に直接又はマスクを介して無機材料層を形成するスパッタチャンバ74と、スパッタチャンバに連通して設けられ、搬送用基板、基板を覆うマスクを収納するマスク室75と、搬送用基板、基板を不活性ガス雰囲気に晒す不活性ガス処理チャンバ76と、搬送用基板、基板をイオンビームにより活性化処理する活性化処理チャンバ77と、搬送用基板、基板を接合する接合チャンバ78と、を備え、搬送用基板ロードロックチャンバ71、基板ロードロックチャンバ72、スパッタチャンバ74、不活性ガス処理チャンバ76、活性化処理チャンバ77、および接合チャンバ78は、相互間を搬送用基板、基板を搬送可能なように、搬送チャンバ73とそれぞれがゲートバルブ79によって接続されている。
【0104】
搬送用基板ロードロックチャンバ71、および基板ローロックチャンバ72に搬入された搬送用基板、および基板は、接合に必要な処理をそれぞれのチャンバで施され最終的に接合チャンバ78に送られて搬送用基板と基板との接合面を互いに押しつけて接合される。搬送用基板、基板に行われる処理を、以下に示す。
(1)無機材料層形成(スパッタチャンバ74)
スパッタチャンバ74では搬送用基板、基板の接合予定面のいずれかまたは双方にスパッタリング、例えばイオンビームスパッタによって無機材料層を形成する。接合面に実施形態6に示す流路を形成する場合は、隣接するマスク室75から必要なマスクが搬送され、搬送用基板、基板の接合予定面を覆う。
【0105】
(2)接合前の表面活性化(活性化処理チャンバ77)
活性化処理チャンバ77では、イオンビームにより搬送用基板、基板の接合予定面の表面活性化処理が行われる。
(3)不活性ガスによる表面置換処理(不活性ガス処理チャンバ76)
不活性ガス処理チャンバ76では、不活性ガスにより、搬送用基板、基板の接合予定面の表面置換処理が行われる。ここで不活性ガスとは、例えば窒素を使用してよい。
(4)接合(接合チャンバ78)
好適な(1)~(3)の処理の選択をし、処理が終了した搬送用基板と基板は、接合チャンバ78に搬送され、搬送用基板と基板との接合が行われる。接合が完了した基板接合体は、搬送用基板ロードロックチャンバ71、または、基板ロードロックチャンバ72に搬送チャンバ74の搬送ロボットにより搬送され、装置外部に搬出され、一連の接合工程が完了する。
【0106】
接合にいたるまでの、搬送用基板、基板に対して、上記(1)~(3)の処理を行うかどうかは、制御装置(図示せず)によって適宜設定されてよい。換言すると、(1)~(3)の処理は、所望の基板接合体の特性、状態に応じて自由に選択される。搬送用基板ロードロックチャンバ71、基板ロードロックチャンバ72、スパッタチャンバ74、不活性ガス処理チャンバ76、活性化処理チャンバ77、接合チャンバ78の各チャンバは、ゲートバルブ79によって、搬送チャンバ73に接続されているので、搬送チャンバ73に設置された搬送ロボットによって、適切な処理のフローを組み立てることができる。
【0107】
これまで上述した実施形態における剥離方法で、最も特徴的であるのは接合膜を調整できる事である。最も我々が注目するプロセスはシリコンウエハーが搬送基盤であり、基板(インターポーザー)がガラスかシリコンウエハーである場合である。この場合、搬送基盤とインターポーザーを仮接合し、その後CMPで薄化する。この時、削る圧力に耐え、また削る時の水洗浄にも耐え、その後の半導体ウエハーの積層工程にも耐える強度のある無機接合膜ができる、または調整できる技術だという事がこのプロセスの特徴である。そしてそれらの調整に、
(1)無機膜が片面
(2)無機膜が両面
(3)無機膜片面で片面のみ活性化する
(4)無機膜両面で両面とも活性化する。
という選択肢があり、またそれぞれの貼合わせも真空と窒素が選択できる。それ以外に、流路の形成により、接合力、剥離力とも調整可能である。また、流路はマスクで形成される。ゆえに様々な形状を有する流路を形成することができる。
【0108】
これまで述べてきた実施形態では、基板と搬送用基板との接合面に水を介在させて剥離することを説明してきた。ここにおいて、接合面に介在させる水としては、水が含まれているものであればよい。例えば、エタノール等のアルコール類や、ある種の化学物質が含有する水溶液であってよい。接合面に介在して剥離を促進するものであれば、水と同等の働きをする流体であればよい。ここでの流体は、液体に限らず気体であってもよい。
【0109】
以上、本発明の実施形態を説明した。特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想から逸脱することなく、これらに変更を施すことができることは明らかである。
【実施例0110】
以下に、本発明に係る実施例を示す。本発明の内容はこれらの実施例によって限定して解釈されるものではない。
【0111】
実施例の試験は、以下の手順で行った。
【0112】
(1)搬送用基板とデバイス基板の準備
試料の組み合わせとして、搬送用基板と仮定して、無アルカリガラスを用意し、デバイス基板と仮定して、シリコンウエハーを用意した。
【0113】
(2)無機物層の形成
以下[表1]で示す通り、サンプルごとに、イオンビームスパッタを使用して、Si(シリコン)とAlO(酸化アルミニウム)の無機物層をシリコンウエハーの表面に形成した。スキャン数は3であり、1スキャンにつき1.5nm形成されるため、4.5nmのSi(シリコン)、AlO(酸化アルミニウム)の無機物層が形成された。その際に、サンプルごとに、
図14に示す無機物層パターン63を形成するマスクの有無が選択された。
【0114】
(3)常温接合処理
下記条件で、常温接合処理を行った。
(常温接合条件)
・プレス条件:5kN/5min
・プレス環境:N2(窒素)環境下
【0115】
(5)剥離
接合後の試料を純水に水没させ、超音波振動を印可した。
【0116】
(剥離の結果)
[表1]に示す通り、すべて10分以内に剥離した。マスクによって、流路を形成したものが早く剥離することがわかる。
【表1】
【0117】
上記の結果によれば、本発明に係る剥離方法によって、基板を容易に剥離できることが理解される。