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  • 特開-空気清浄媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057787
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】空気清浄媒体
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20230417BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20230417BHJP
   F24F 1/0073 20190101ALI20230417BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20230417BHJP
   B01D 46/42 20060101ALN20230417BHJP
   B01D 46/10 20060101ALN20230417BHJP
   A61L 9/16 20060101ALN20230417BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
B01D39/16 A
F24F8/108 110
F24F8/108 210
F24F1/0073
G01N33/52 B
B01D46/42 A
B01D46/10 Z
A61L9/16 F
C12Q1/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167454
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】598112279
【氏名又は名称】佐伯 午郎
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 午郎
【テーマコード(参考)】
2G045
3L051
4B063
4C180
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
2G045AA28
2G045CB21
2G045FB11
2G045HA10
2G045JA07
3L051BA01
3L051BA02
4B063QA01
4B063QQ10
4B063QS32
4B063QX01
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA17
4C180DD09
4C180KK01
4C180MM08
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC20
4D058JA12
4D058JA32
4D058SA13
4D058UA10
4D058UA30
(57)【要約】
【課題】本願は、ウイルスの空気感染を予防可能な空気清浄媒体を開示する。
【解決手段】本発明は、室内空間に気流を発生させる機器の外表面の吸込み部分を覆う空気清浄媒体であって、通気性素材を含み、空気中の不純物を捕捉する通気部と、吸込み部分に通気部を固定する固定部と、を備え、通気部は、ウイルスが付着すると変色する試薬を担持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間に気流を発生させる機器の外表面の吸込み部分を覆う空気清浄媒体であって、
通気性素材を含み、空気中の不純物を捕捉する通気部と、
前記吸込み部分に前記通気部を固定する固定部と、を備え、
前記通気部は、ウイルスが付着すると変色する試薬を担持する、
空気清浄媒体。
【請求項2】
前記吸込み部分は、天井埋め込み型室内機の吸込み部分である
請求項1に記載の空気清浄媒体。
【請求項3】
前記通気部は、シート状の部材である、
請求項1又は2に記載の空気清浄媒体。
【請求項4】
前記通気部は、前記試薬を少なくとも前記吸込み部分とは反対側の表面に担持する、
請求項1から3の何れか一項に記載の空気清浄媒体。
【請求項5】
前記通気部は、前記試薬を前記通気部全体のうち特定の領域に担持する、
請求項1から4の何れか一項に記載の空気清浄媒体。
【請求項6】
前記通気部は、前記特定の領域における単位面積当たりの通気抵抗が、他の領域における単位面積当たりの通気抵抗より低い、
請求項5に記載の空気清浄媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、空気清浄媒体を開示する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機や空気清浄機には、通常、フィルタが用いられる。例えば、空気調和機に用いられるフィルタは、機内へ流入する空気中の埃等を捕集することにより、熱交換器が埃等の堆積物によって性能低下するのを抑制する。また、空気調和機に用いられるフィルタとしては、例えば、室内空間の空気の浄化を目的としたものも提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/044489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空気中を漂うウイルスの感染予防策への関心が高まっている。しかし、ウイルスは、花粉や微小粒子状物質(PM:Particulate Matter)よりも微細である。よって、空気調和機のフィルタでウイルスを捕集することはできない。また、ウイルスを捕集可能な性能のフィルタを空気調和機や空気清浄機に用いると、通気性が著しく低下するため、空気調和機の性能が大きく低下する。
【0005】
そこで、本願は、ウイルスの空気感染を予防可能な空気清浄媒体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、室内空間に気流を発生させる機器の外表面の吸込み部分を覆う空気清浄媒体に、ウイルスが付着すると変色する試薬を担持させることにした。
【0007】
詳細には、本発明は、室内空間に気流を発生させる機器の外表面の吸込み部分を覆う空気清浄媒体であって、通気性素材を含み、空気中の不純物を捕捉する通気部と、吸込み部分に通気部を固定する固定部と、を備え、通気部は、ウイルスが付着すると変色する試薬を担持する。
【0008】
ここで、室内空間に気流を発生させる機器とは、建物内の部屋といった各種空間内の空気を流動させる機器であり、例えば、空気調和機、除湿器、加湿器、空気清浄機、扇風機、その他の各種送風手段を備えた機器が挙げられる。また、空気調和機とは、建物内の部屋といった各種空間内の空気を吸込み部分から吸い込んで温度や湿度、清浄度等の調整を行う機械であり、例えば、天井埋め込み型の空調室内機、壁付け型の空調室内機、除湿器、加湿器、空気清浄機、その他各種の機械が挙げられる。
【0009】
ウイルスが付着すると変色する試薬を、空気中の不純物を捕捉する通気部に担持させると、通気部でウイルスが捕捉された場合に、ウイルスが試薬に接触する。そして、試薬にウイルスが接触して試薬が変色すると、試薬の変色が通気部の表面に発現する。よって、空気清浄媒体が設置されている空間にいる者は、通気部の表面に発現した変色を視認することができる。したがって、空気清浄媒体が設置されている空間にいる者は、感染予防策を直ちに採ることができる。
【0010】
なお、吸込み部分は、天井埋め込み型室内機の吸込み部分であってもよい。天井埋め込み型室内機の吸込み部分であれば、試薬の変色を視認しやすい。
【0011】
また、通気部は、シート状の部材であってもよい。通気部がシート状の部材であれば、機器の外表面に取り付け容易である。
【0012】
また、通気部は、試薬を少なくとも吸込み部分とは反対側の表面に担持してもよい。試薬が通気部の表面に担持されていれば、試薬の変色を視認しやすい。
【0013】
また、通気部は、試薬を通気部全体のうち特定の領域に担持していてもよい。ここで、特定の領域とは、通気部全体のうちの一部分という意味であり、例えば、通気部全体のうちの特定の一領域のみならず、通気部全体のうちの特定の複数領域を含む概念である。試薬が通気部の特定の領域に担持されていれば、通気部全体に担持される場合に比べて、試薬の量を抑制することができる。また、この場合、通気部は、特定の領域における単位面積当たりの通気抵抗が、他の領域における単位面積当たりの通気抵抗より低くてもよい。これによれば、試薬を通気部の特定の領域に担持させても、空間内を浮遊するウイルスを検出する確率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記の空気清浄媒体であれば、ウイルスの空気感染を予防可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、空気清浄媒体の使用例を示した図である。
図2図2は、空調室内機の一例を示した図である。
図3図3は、不織布の試薬が変色する様子を例示した図である。
図4図4は、空気清浄媒体の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の一形態であり、本発明の技術的範囲を下記の実施形態に限定するものではない。
【0017】
図1は、空気清浄媒体の使用例を示した図である。本実施形態に係る空気清浄媒体1は、図1に示すように、建物の天井に取り付けられる天井埋め込み型の空調室内機10の吸込み部分を覆うように取り付けられるフィルタであり、全体的に矩形の形態を形作る不織布2(本願でいう「通気部」の一例である)を有する。また、空気清浄媒体1は、不織布2を空調室内機10に貼着するための粘着剤3(本願でいう「固定部」の一例である)を不織布2の裏面に有する。
【0018】
不織布2は、通気性素材で構成されている。不織布2を構成する通気性素材としては、例えば、ポリエステル製の繊維をシート状にした織布或いは不織布が挙げられる。不織布2は、空調室内機10の吸込み部分を覆うことが可能な大きさを有する矩形のシートである。
【0019】
粘着剤3は、不織布2を空調室内機10に貼着可能な粘着力を有する。粘着剤3は、不織布2の裏面に貼着された両面テープであってもよいし、或いは、不織布2の裏面に塗工された粘着剤であってもよい。粘着剤3は、空気清浄媒体1の使用開始前は粘着面が剥離紙等の各種保護材で保護されていることが好ましい。また、粘着剤3は、不織布2の裏面の四隅に設けられていてもよいし、不織布2の裏面に格子状に設けられていてもよいし、或いは、不織布2の裏面全体に設けられていてもよい。
【0020】
不織布2は、ウイルスが付着すると変色する試薬を担持する。不織布2は、当該試薬を少なくとも不織布2の表面に担持する。よって、不織布2は、当該試薬を、不織布2の表面のみに担持してもよいし、不織布2の表面と裏面の両方に担持してもよいし、或いは、不織布2の表面と裏面の間の厚み中に担持してもよい。
【0021】
ウイルスが付着すると変色する試薬としては、例えば、2020年に感染が世界中へ広がったコロナウイルス(COVID-19)の検出に好適な試薬や、その他各種の試薬が挙げられる。このようなコロナウイルスの検査用試薬を不織布2に担持させれば、空調室内機10が設置されている室内に浮遊するコロナウイルスが不織布2の試薬に付着した場合に、不織布2の表面が変色する。よって、空調室内機10が設置されている室内にいる者は、不織布2の表面の変色により、室内にコロナウイルスが漂っていることを把握することができる。試薬は、コロナウイルス以外のウイルスの検出を目的としたものであってもよい。
【0022】
図2は、空調室内機10の一例を示した図である。空調室内機10は、天井埋め込み型の室内機なので、例えば、図2に示されるように、機内へ空気を吸い込むための吸込み口11Sと、機内の熱交換器を経て温度調整された空気を吹き出すための吹出口11Fとを備える。そして、空調室内機10の内部には、熱交換器に埃等が堆積するのを抑制するためのフィルタが内蔵されている。よって、室内に浮遊するコロナウイルスを不織布2の試薬で検出可能にするためには、空調室内機10の機内のフィルタを通過する前の空気が通る吸込み口11Sに空気清浄媒体1を貼着することが好ましい。吸込み口11Sは、空気が吸い込まれる部位なので、吸込み口11Sを覆うように空気清浄媒体1を貼着すれば、空気清浄媒体1が吸込み口11Sへ空気抵抗により密着した状態となる。
【0023】
図3は、不織布2の試薬が変色する様子を例示した図である。図3では、空気清浄媒体1が吸込み口11Sを覆い隠すように空調室内機10へ貼着された状態が図示されている。コロナウイルスが不織布2の試薬に付着する前は、図3(A)に示すように、変色部分が存在しない。そして、空調室内機10の作動によって空気清浄媒体1を通過する室内の空気にコロナウイルスが含まれていると、不織布2に担持されている試薬に当該コロナウイルスが付着する。そして、不織布2に担持されている試薬がコロナウイルスで変色すると、図3(B)に示すように、試薬の変色が不織布2の表面に発現する。吸込み口11Sに貼着された空気清浄媒体1は、不織布2の表面が室内側を向くように貼着されている。よって、空気清浄媒体1が設置されている空間にいる者は、不織布2の表面に発現した変色を視認することができる。したがって、空気清浄媒体1が設置されている空間にいる者は、当該空間の換気を直ちに行ったり、マスクを装着したり、或いは、当該空間から退避するといった各種の感染予防策を直ちに採ることができる。すなわち、空間内を浮遊するコロナウイルスを検出して知らせる手段が何ら存在しない場合に比べて、より早くウイルスの空気感染の予防策を採ることが可能になる。
【0024】
なお、空気清浄媒体1は、上述したように、天井埋め込み型の空調室内機10に取り付ければ試薬の変色を視認しやすいが、天井以外の部位にある空気調和機に取り付けてもよい。空気清浄媒体1は、例えば、壁付け型の空調室内機、除湿器、加湿器、空気清浄機、扇風機、その他の各種送風手段を備えた機器の吸込み部分に取り付けてもよい。
【0025】
また、空気清浄媒体1は、上述したように、シート状の不織布2に試薬を担持させたものであれば、空調室内機10に取り付け容易であるが、シート状の不織布2以外の通気性素材に試薬を担持させたものであってもよい。このような通気性素材としては、例えば、連続気泡スポンジ、織布、ハニカム構造体、その他各種の素材が挙げられる。
【0026】
また、上記実施形態の空気清浄媒体1は、次のように変形してもよい。図4は、空気清浄媒体1の変形例を示した図である。上述したようなウイルス検出用の試薬は、一般的に高価である。よって、空調室内機10の吸込み口11Sの全域を覆う不織布2の前面の全領域に試薬を担持させると、試薬が多量に必要である。そこで、本変形例では、試薬を不織布2の一部分に担持させる。すなわち、本変形例では、図4に示すように、空気清浄媒体1の不織布2に枠4を設ける。そして、本変形例では、ウイルスが付着すると変色する試薬を、枠4の内側である検出領域R1に担持させる。枠4は、人が視認可能な形態であってもよいし、或いは、人が視認不能な形態であってもよい。また、枠4によって画定される検出領域R1は、複数箇所にあってもよい。また、枠4によって画定される検出領域R1は、円形や楕円形等、各種の形状であってもよい。
【0027】
試薬が検出領域R1のみに担持されている場合、枠4の外側である非検出領域R2は、ウイルスが付着しても変色しない通常のフィルタとして機能する。本変形例によれば、試薬が検出領域R1のみに担持されているので、不織布2に担持させる試薬の量を上記実施形態より抑制しつつ、ウイルスの検出も可能である。
【0028】
なお、本変形例においては、空間内を浮遊するウイルスが検出領域R1の試薬に付着する確率を上げるために、例えば、検出領域R1における不織布2の単位面積当たりの通気抵抗を、非検出領域R2における不織布2の単位面積当たりの通気抵抗より低くすることが好ましい。例えば、不織布2を、2枚のシートを積層した二重構造とする。そして、2枚のシートのうち表面側のシートの検出領域R1の部分に、シートを貫通する貫通孔を形成する。また、2枚のシートのうち裏面側のシートの検出領域R1の部分に、上記試薬を担持させる。このようにすれば、シートが2枚重ねになっている非検出領域R2よりも、シートが2枚重ねになっていない検出領域R1の方が、単位面積当たりの通気抵抗が低くなる。この結果、空調室内機10の作動により吸込み口11Sへ空気が吸い込まれる際、非検出領域R2よりも検出領域R1の方へ空気が流れやすい状態となり、空間内を浮遊するウイルスが検出領域R1の試薬に接触する確率が上がる。よって、試薬を不織布2の検出領域R1のみに担持させても、空間内を浮遊するウイルスを検出する確率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・空気清浄媒体
2・・不織布
3・・粘着剤
4・・枠
10・・空調室内機
R1・・検出領域
R2・・非検出領域
11S・・吸込み口
11F・・吹出口
図1
図2
図3
図4