IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住ベシート防水株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-防水シートおよびシート防水構造 図1
  • 特開-防水シートおよびシート防水構造 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057823
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】防水シートおよびシート防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 4/02 20060101AFI20230417BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230417BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230417BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230417BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230417BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230417BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230417BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
E04H4/02 B
B32B27/00 E
B32B27/20 A
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/22
C08K5/00
E04B1/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167507
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴通
(72)【発明者】
【氏名】天牛 英清
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001EA01
2E001FA18
2E001FA26
2E001GA24
2E001GA77
2E001HD11
2E001HD13
2E001KA01
2E001LA04
4F100AA08A
4F100AA08H
4F100AA17A
4F100AA17H
4F100AA21A
4F100AA21H
4F100AA23A
4F100AA23H
4F100AD11A
4F100AK01A
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100CA13A
4F100DC22A
4F100EC182
4F100HB00A
4F100JD05A
4F100JD05B
4F100JL10A
4F100YY00A
4J002AA001
4J002BB001
4J002BB061
4J002BD031
4J002DA038
4J002DE096
4J002DE116
4J002DE136
4J002ER007
4J002EU057
4J002FD096
4J002FD097
4J002FD098
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】躯体に防水シートを敷設することで防水を施すシート防水構造において、防水シートとして黒色に着色がなされたものが用いられていたとしても、このものの表面における経年に伴う膨れの発生が的確に抑制または防止された防水シート、かかる防水シートが躯体に敷設されているシート防水構造を提供すること。
【解決手段】本発明の防水シート50は、躯体10に防水を施す際に用いられ、樹脂材料を主材料として含有し、躯体10側に位置する接合面と、この接合面と反対側において露出する表面とを有する単層体で構成されるものであり、炭素材料の含有量が0.10重量%以下であり、色材として炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを含有することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に防水を施す際に用いられ、樹脂材料を主材料として含有する防水シートであって、
前記躯体側に位置する接合面と、該接合面と反対側において露出する表面とを有する単層体で構成され、
当該防水シートは、炭素材料の含有量が0.10重量%以下であり、色材として前記炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを含有することを特徴とする防水シート。
【請求項2】
前記躯体は、該躯体を覆う第1防水シートと、前記第1防水シートの前記躯体と反対側の一部に積層され、前記躯体に意匠性を付与する第2防水シートとにより防水が施され、
当該防水シートは、前記第2防水シートとして用いられる請求項1に記載の防水シート。
【請求項3】
前記躯体は、床部と、該床部から立設する壁部とを有し、主としてコンクリート、金属または繊維強化プラスチックで構成されるプールである請求項2に記載の防水シート。
【請求項4】
前記躯体は、前記プールが備える貯水槽であり、
前記第2防水シートは、遊泳者が泳ぐコースを示すコースラインとして前記第1防水シートに積層される請求項3に記載の防水シート。
【請求項5】
前記色材は、黒色の色材である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項6】
前記黒色の色材として、金属酸化物または黒色の有機材料を含有する請求項5に記載の防水シート。
【請求項7】
前記金属酸化物は、酸化カルシウム(CaO)、二酸化マンガン(MnO)、四三酸化鉄(Fe)および酸化チタン(TiO)のうちの少なくとも1種である請求項6に記載の防水シート。
【請求項8】
前記黒色の色材は、その含有量が0.2重量%以上5.0重量%以下である請求項5ないし7のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項9】
前記非炭素材料系の色材は、前記接合面および前記表面のうちの少なくとも前記表面側に偏在する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の防水シート。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の防水シートと、該防水シートを前記躯体に固定する配置部材とを有することを特徴とするシート防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体に防水を施す際に用いられる防水シート、および、かかる防水シートを備えるシート防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プールが備える貯水槽の改修において、防水シート(樹脂シート)を敷設施工したシート防水構造を採用することが提案されている。
【0003】
このシート防水構造では、例えば、貯水槽(躯体)を構成する床部および壁部の少なくとも一部を防水シートで覆う(敷設する)構成をなしている。
【0004】
そして、防水シートの貯水槽(躯体)への固定は、例えば、複数の所定の形状をなす固定具(鋼板)を、貯水槽(床部または壁部)に固定ビス等の固定治具を用いて固定し、さらに、これら固定具において、固定具の上面と防水シートとの下面とを接合することで、固定具を介して貯水槽と防水シートとを接合することにより実施される。これにより、貯水槽に再び防水が施されるとともに、貯水の際や、遊泳者が遊泳する際等に、防水シートのズレが生じることなく貯水槽に固定される。
【0005】
かかる構成をなすシート防水構造により改修がなされた貯水槽において、床部には、遊泳者にコースを示すコースライン、ならびに、遊泳者に遊泳している位置を示す5mラインおよび中央ラインが、また、壁部には、プールの深さを示す水位表示が、指標として設けられることがあるが、この場合、例えば、特許文献1に記載のような黒色等に着色がなされた着色防水シートを、シート防水構造を構成する防水シートに対して貼付することにより実施される。
【0006】
ところが、前記の通りに、シート防水構造が着色がなされた着色防水シート(防水シート)を備えるもの、すなわち、防水シートに着色防水シートを貼付することで、改修がなされた貯水槽に指標を形成すると、特に、黒色に着色がなされた着色防水シートにおいて、経年とともに、その表面における膨れが顕著に生じ、指標の見栄えを損ねたり、さらには、指標すなわち着色防水シートと防水シートとの間で剥離が生じてしまうと言う問題があった。
【0007】
そのため、シート防水構造において、指標として用いたとしても、経年にともなう表面における膨れの発生が抑制された、着色がなされた着色防水シートの提供が求められている。
【0008】
なお、このような問題は、意匠性を付与することを目的に、貯水槽(躯体)の床部および壁部に敷設する防水シートを、着色がなされたもので構成した場合においても同様に生じるものと推察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2010/116497
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、躯体に防水シートを敷設することで防水を施すシート防水構造において、防水シートとして着色がなされたものが用いられていたとしても、このものの表面における経年に伴う膨れの発生が的確に抑制または防止された防水シート、かかる防水シートが躯体に敷設されているシート防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 躯体に防水を施す際に用いられ、樹脂材料を主材料として含有する防水シートであって、
前記躯体側に位置する接合面と、該接合面と反対側において露出する表面とを有する単層体で構成され、
当該防水シートは、炭素材料の含有量が0.10重量%以下であり、色材として前記炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを含有することを特徴とする防水シート。
【0012】
(2) 前記躯体は、該躯体を覆う第1防水シートと、前記第1防水シートの前記躯体と反対側の一部に積層され、前記躯体に意匠性を付与する第2防水シートとにより防水が施され、
当該防水シートは、前記第2防水シートとして用いられる上記(1)に記載の防水シート。
【0013】
(3) 前記躯体は、床部と、該床部から立設する壁部とを有し、主としてコンクリート、金属または繊維強化プラスチックで構成されるプールである上記(2)に記載の防水シート。
【0014】
(4) 前記躯体は、前記プールが備える貯水槽であり、
前記第2防水シートは、遊泳者が泳ぐコースを示すコースラインとして前記第1防水シートに積層される上記(3)に記載の防水シート。
【0015】
(5) 前記色材は、黒色の色材である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の防水シート。
【0016】
(6) 前記黒色の色材として、金属酸化物または黒色の有機材料を含有する上記(5)に記載の防水シート。
【0017】
(7) 前記金属酸化物は、酸化カルシウム(CaO)、二酸化マンガン(MnO)、四三酸化鉄(Fe)および酸化チタン(TiO)のうちの少なくとも1種である上記(6)に記載の防水シート。
【0018】
(8) 前記黒色の色材は、その含有量が0.2重量%以上5.0重量%以下である上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の防水シート。
【0019】
(9) 前記非炭素材料系の色材は、前記接合面および前記表面のうちの少なくとも前記表面側に偏在する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の防水シート。
【0020】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の防水シートと、該防水シートを前記躯体に固定する配置部材とを有することを特徴とするシート防水構造。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、躯体側に位置する接合面と、該接合面と反対側において露出する表面とを有する単層体で構成される防水シートは、炭素材料の含有量が0.10重量%以下であり、色材として前記炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを含有している。
【0022】
そして、躯体に防水シートを敷設することで防水を施すシート防水構造において、防水シートとして色材に基づく色に着色がなされたものを用いる際に、この防水シートに、上記のような構成をなしている本発明の防水シートを適用することで、防水シートの表面における経年に伴う膨れの発生を的確に抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】躯体に施工された本発明のシート防水構造を部分的に取り出した部分斜視図である。
図2図1に示すシート防水構造が備える第2防水シートの近傍におけるシート防水構造の構成を示すA-A線縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の防水シートおよびシート防水構造を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明の防水シート50は、躯体10に防水を施すシート防水構造1に用いられ、樹脂材料を主材料として構成されるものであり、躯体10側に位置する接合面と、この接合面と反対側において露出する表面とを有する単層体で構成され、この防水シート50は、炭素材料の含有量が0.10重量%以下であり、色材として炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを含有することを特徴とする。
【0026】
床部11と壁部12とを有するシート防水構造1において、防水シートとして、色材に基づく色に着色がなされたものを用いる際に、この防水シート(着色防水シート)に、上記のような構成をなしている本発明の防水シート50を適用することで、防水シート50の表面における経年に伴う膨れの発生を的確に抑制または防止することができる。したがって、この防水シート50を備えるシート防水構造1を、優れた信頼性を有するものとし得る。
【0027】
以下、本発明の防水シート50を説明するのに先立って、このシート防水構造1(本発明のシート防水構造)、すなわち、着色がなされた防水シートに、本発明の防水シート50が適用されているシート防水構造1について詳述する。
【0028】
<シート防水構造>
図1は、躯体に施工された本発明のシート防水構造を部分的に取り出した部分斜視図、図2は、図1に示すシート防水構造が備える第2防水シートの近傍におけるシート防水構造の構成を示すA-A線縦断面図である。なお、以下の説明では、図1、2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1では、説明の便宜上、シート防水構造の全体を示すことなく、躯体が備える床部と壁部とを部分的に図示している。また、図1図2では、躯体および防水シートの厚さを誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0029】
本実施形態では、プールが備える貯水槽としての躯体10(構造体)に、図1に示すように、その改修のためにシート防水構造1が施工されている。
【0030】
躯体10は、長方形状をなす床部11と、この床部11の外縁を取り囲むように沿って立設して設けられた、長方形の枠状をなす壁部12(立ち上がり部)とを有している。
【0031】
躯体10を、このような床部11と壁部12とを備える構成とすることで、躯体10は、その中央部に、底部を備える凹部を有するものとなり、これにより、この凹部内に水が貯留されるプールの貯水槽を構成する(図1参照)。この躯体10すなわち貯水槽は、通常、繊維強化プラスチック(FRP)、または、アルミニウム、ステンレスのような金属のうちの少なくとも1種を主材料として構成され、コンクリート製の枠体が備える空間内に収納した状態で固定される。なお、FRPまたは金属で構成される貯水槽の収納が省略されて、コンクリート製の枠体が、直接、貯水槽すなわち躯体10を構成していてもよい。
【0032】
本実施形態では、シート防水構造1は、かかる構成の躯体10、すなわち枠状をなす壁部12と、底部を構成する床部11とに対して、防水シート30(第1防水シート)で覆い、防水シート50(第2防水シート)で意匠性を付与する施工を施すものであり、躯体10の凹部に敷設される防水シート30と、防水シート30の一部を覆うことで意匠性を付与する防水シート50(着色防水シート)と、防水シート30を固定するための固定具としての配置部材20および配置ディスク(図示せず)と、躯体10に固定され、かつ、配置部材20を固定するための固定治具(図示せず)とを有している(図1図2参照)。
【0033】
なお、以下では、床部11と壁部12とで形成された入隅部13(境界部)に対して配置部材20が固定され、さらに、床部11および壁部12に対してほぼ等間隔に格子状をなして配置された配置ディスクが固定されており、これら配置部材20および配置ディスクを介することで、敷設された防水シート30が躯体10に固定されている。
【0034】
配置部材20は、床部11と壁部12との入隅部13に配置された際に、床部11および壁部12の形状に対応するように、側面形状がL字状をなして2枚の平板が接合された構成をなしており、入隅部13に配置された状態で、固定ビスや固定ディスクのような固定治具(図示せず)により躯体10に固定されている。また、配置ディスク(図示せず)は、全体形状が円盤状をなし、床部11および壁部12にほぼ等間隔に格子状をなして配置された状態で、固定ビスや固定ディスクのような固定治具(図示せず)により躯体10に固定されている。そして、このような状態で、防水シート30(第1防水シート)は、配置部材20および配置ディスクとともに躯体10の凹部、すなわち、床部11と壁部12とを覆うように敷設され、かつ、配置部材20および配置ディスクを介して躯体10に固定されており、これにより、躯体10の防水性が確保される。
【0035】
すなわち、水には防水シート30が晒されることとなり、躯体10が直接的に水に晒されることが防止されるため、躯体10の防水性が確保される。これにより、防水シート30が敷設された躯体10すなわち貯水槽に対する、水の貯留が可能となる。また、配置部材20および配置ディスクの上面と防水シート30との下面とが接合され、かつ、配置部材20および配置ディスクが固定治具を介して躯体10に固定されており、これにより、配置部材20および配置ディスクを介して躯体10に防水シート30が接合・固定される。したがって、躯体10(貯水槽)への貯水の際や、遊泳者(水泳者)が遊泳する際等に、躯体10から防水シート30が位置ズレするのが的確に抑制または防止される。
【0036】
そして、この防水シート30(第1防水シート)は、その一部が、色材に基づく色に着色がなされた防水シート50(第2防水シート)で覆われることで、シート防水構造1に意匠性が付与され、本実施形態では、図1に示すように、遊泳者が遊泳するコースを示すコースラインを防水シート50(着色防水シート)が構成している。
【0037】
以下、このシート防水構造1を構成する各部について説明する。
配置部材20は、前述の通り、床部11と壁部12との入隅部13付近に配置されるものであり(図1参照)、配置ディスク(図示せず)は、床部11および壁部12にほぼ等間隔に格子状をなして配置されるものである。
【0038】
これら配置部材20および配置ディスクのうち、配置部材20は、本実施形態では、全体形状が平板状をなす第1部21(底部)と第2部22(立ち上がり面)との2つの部分からなり、第1部21の1つの長辺から第2部22が立設しており、その側面形状がL字状をなしている。また、配置ディスクは、図示を省略するが、全体形状が円盤状をなしている。
【0039】
なお、防水が施工される躯体10の形状は、当然、様々であることから、配置部材20としては、複数の種類の形状のものが予め用意され、実際に施工される躯体10が備える入隅部13の形状に合致する第1部21および第2部22を備える配置部材20が選択される。そして、配置部材20は、その第1部21および第2部22が、前記入隅部13において、床部11および壁部12の形状に対応するように並べられる。
【0040】
このような配置部材20および配置ディスクは、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とで構成される。すなわち、配置部材20および配置ディスクは、防水シート30が固着される側の表面に、樹脂層を備え、その反対側に金属板を備えるものである。このように、金属板の表面を樹脂層で被覆することで、金属板の腐食を確実に防止することができる。また、防水シート30に対して、溶着法および熱融着法を用いて確実に接合できるものとし得る。
【0041】
金属板は、例えば、ステンレス鋼板、鉄板のような鋼板、アルミ板、銅板等で構成されるが、鋼板であるのが好ましい。これにより、配置部材20および配置ディスクを優れた強度を有するものとし得る。
【0042】
また、金属板の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上3mm以下程度であるのが好ましく、0.3mm以上2.5mm以下程度であるのがより好ましい。
【0043】
樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。すなわち、後述する防水シート30を構成する樹脂と、同種または同一であることが好ましい。これにより、樹脂層と防水シート30との密着性を向上させることができる。さらに、ポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため、前記効果をより顕著に発揮させ得るとともに、配置部材20および配置ディスクの腐食をより確実に防止することができる。
【0044】
この樹脂層を構成する樹脂には、後述する防水シート30の構成材料で挙げる可塑剤、安定化剤等の他の材料が含まれていてもよい。
【0045】
樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上であるのが好ましく、0.3mm以上0.8mm以下であるのがより好ましい。これにより、防水シート30と樹脂層との接合、すなわち、防水シート30と配置部材20および配置ディスクとを強固に接合することができる。
【0046】
また、これら配置部材20および配置ディスクは、前述の通り、固定ビスや固定ディスクのような固定治具(図示せず)により、躯体10に固定されている。
【0047】
配置部材20および配置ディスクは、固定治具を介して躯体10に固定されていれば良く、例えば、固定治具として固定ビスを用いる場合、配置部材20および配置ディスクに設けられた孔部に、固定ビスが備えるネジ部を挿通した状態で、このネジ部を躯体10に埋入させることで、配置部材20および配置ディスクが躯体10に固定される。また、固定治具として固定ディスクを用いる場合、固定ディスクの両面にそれぞれ設けられた接着剤層を介して、配置部材20および配置ディスクと固定ディスクと躯体10とを接合することで、配置部材20および配置ディスクが躯体10に固定される。
【0048】
なお、接着剤層は、例えば、主として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤およびゴム系接着剤等のうちの少なくとも1種からなる接着剤を主材料として構成される。
【0049】
また、配置部材20は、本実施形態では、第1部21と第2部22とを備え、側面形状がL字状をなしているものとしたが、かかる構成のものに限定されず、例えば、第1部21と第2部22とが互いに連結されず、別体として第1部21と第2部22とを備えるものであってもよいし、第1部21と第2部22とのいずれか一方を単独で備えるものであってもよい。
【0050】
防水シート30は、シート状(板状)をなし、配置部材20、配置ディスクおよび固定治具とともに床部11と壁部12とを覆う、すなわち、躯体10を覆うものであり、配置部材20および配置ディスクの上面、すなわち、配置部材20および配置ディスクの固定治具と反対側の樹脂層が形成されている側の表面に固着されることで、配置部材20および配置ディスクと固定治具とを介して躯体10に固定される。
【0051】
これにより、水には防水シート30が晒され、躯体10が直接的に水に晒されることが防止されることから、躯体10の防水性が確保される。したがって、防水シート30が敷設された躯体10すなわち貯水槽に対する、水の貯留が可能となる。また、防水シート30が躯体10に配置部材20および配置ディスクと固定治具とを介して固定されているため、躯体10(貯水槽)への貯水の際や、遊泳者が遊泳する際等に、躯体10から防水シート30が位置ズレするのを的確に抑制または防止することができる。
【0052】
このような防水シート30は、樹脂材料を含有する樹脂組成物からなる樹脂シートで構成される。
【0053】
樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、防水シート30の溶剤溶着性や熱融着性を優れたものとし得る。
【0054】
なお、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
【0055】
また、樹脂組成物には、さらに、各種可塑剤、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等を含んでいてもよく、特に、可塑剤が含まれることが好ましい。これにより、防水シート30をより優れた柔軟性を有するものとし得る。
【0056】
なお、可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、DOP(ジオクチルフタレート)、DBP(ジブチルフタレート)、DIBP(ジイソブチルフタレート)、DHP(ジヘプチルフタレート)、DINP(フタル酸ジイソノニル)のようなフタル酸エステル系可塑剤、DOA(ジ-2-エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)、DOS(ジ-2-エチルヘキシルセバセート)のような脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、エチレングリコールのベンゾエート類のような芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、およびTOTM(トリオクチルトリメリテート)のようなトリメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
また、安定化剤としては、例えば、グリシン亜鉛等が挙げられ、この場合の安定助剤としては、例えば、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシリル(TXP)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸2-エチルヘキシル・ジフェニルのような有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
以上のことから、防水シート30は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する樹脂組成物からなる塩化ビニル系樹脂シートで構成されることが好ましい。また、この場合、防水シート30における、塩化ビニル系樹脂の含有量は、例えば、50重量%以上95重量%以下であることが好ましく、60重量%以上85重量%以下であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0059】
なお、防水シート30は、前記樹脂シートの単層で構成されるものの他、例えば、その厚さ方向の途中に繊維層が介挿されたもの、すなわち、厚さ方向に積層された第1樹脂層と第2樹脂層との間に繊維層(繊維シート)が挾持された構成のものであってもよい。
【0060】
この繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられるが、防水シート30を、このような繊維層を備えるものとすることで、防水シート30の強度(引き裂き強度や引っ張り強度等)および耐久性(耐繰り返し疲労特性)を向上させることができる。
【0061】
また、繊維層が含有する繊維材料としては、例えば、綿、麻のような天然セルロース系繊維、絹、羊毛のような天然タンパク系繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、塩化ビニリデンが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
さらに、防水シート30の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上3mm以下程度であるのが好ましく、0.8mm以上3mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、床部11と壁部12とを、防水シート30により確実に覆うことができる。また、貯水の際や、遊泳者が遊泳する際等に、防水シート30に応力が作用したとしても、早期に防水シート30に亀裂が生じるのを的確に抑制することができる。
【0063】
防水シート50(第2防水シート)は、着色がなされており、防水シート30(第1防水シート)の一部を被覆することで、シート防水構造1に意匠性を付与するための着色防水シートであり、本実施形態では、遊泳者への視認性の向上を図ることを目的に着色がなされた色が黒色であり、図1に示すように、遊泳者が遊泳するコースを示す指標すなわちコースラインを構成している。
【0064】
シート防水構造1において、このコースラインを構成する防水シート(第2防水シート)として、本発明の防水シート50が用いられている。すなわち、防水シート50は、躯体10側に位置する接合面と、この接合面と反対側において露出する表面とを有する単層体で構成されるものであり、炭素材料の含有量が0.10重量%以下であり、色材として前記炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを含有している。
【0065】
ここで、前述した背景技術で説明した通り、コースライン(指標)を構成する防水シート(着色防水シート)として、特に、色材として黒色のものを含有する単層体で構成した際に、この防水シート(単層体)において、経年とともに、表面に膨れが生じ、コースラインの見栄えを損ねたり、さらには、コースライン(着色防水シート)と下地層としての防水シートとの間で剥離が生じてしまうと言う問題があった。
【0066】
かかる問題点について、本発明者は、鋭意検討を行った結果、着色防水シートに含まれる黒色の色材(汎用黒色着色材)としてのカーボンブラックのような炭素材料と、貯水槽に貯留されている水(貯留水)中に含まれる次亜塩素酸との反応により、生成される高い活性(酸化力)を示すガスが関与していると推察されることが判ってきた。
【0067】
ここで、カーボンブラックのような炭素材料(黒色の色材)と、水中の次亜塩素酸(HClO)との反応では、炭素材料が触媒的に関与して、下記式(1)で表わされる反応が進行して、次亜塩素酸が分解することで、高い活性(酸化力)を示すガス(以下、このガスを「活性ガス」と言うこともある。)が発生する。
HClO → HCl + O(↑) … (1)
【0068】
そして、この活性ガスと着色防水シートに含まれる塩化ビニル系樹脂のような樹脂材料との反応により、樹脂材料が変質・劣化し、その結果、経年とともに、着色防水シートの表面に膨れが生じるものと推察された。なお、上記式(1)の反応式は、温度依存性を有し高温時により進行して、活性ガスの発生率が高くなること、また、着色防水シートの表面における膨れの発生が、温室プールにおいて、すなわち、水温が25℃以上35℃以下程度である際に頻度が高くなることを考慮すると、上記の推察が妥当であると言うことができる。
【0069】
そこで、本発明者は、高い活性を示すガスと、着色防水シートの表面における膨れの発生との関連性について、さらなる検討を行った。ここで、上記式(1)の反応式により活性ガスが発生すると、通常、この活性ガスは、貯留されている水中に拡散すると考えられる。ところが、躯体10に敷設された防水シート30と着色防水シートとが接合された接合界面付近で活性ガスが発生すると、この活性ガスにより接合界面において、防水シート30および着色防水シートが変質・劣化し、その結果、この接合界面に対して、貯留水が浸入することが許容される。このように接合界面に対する貯留水の浸入が許容され、これに起因して、接合界面にまで貯留水が到達すると、接合界面において発生した活性ガスの逃げ場がなくなる。そのため、経時的に、接合界面において、この活性ガスが貯留され、その結果、着色防水シートの表面に膨れが生じるものと推察された。
【0070】
したがって、着色防水シートすなわちコースライン(指標)の遊泳者に対する視認性を低下させることなく、接合界面における活性ガスの発生を抑制または防止するには、活性ガスの発生の際に触媒的に関与する炭素材料の着色防水シートにおける含有量を、低く設定し、かつ、着色防水シートを着色するための色剤として、炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを用いる必要があると言う要求が生じた。
【0071】
そして、接合界面における活性ガスの発生を抑制または防止し得る、炭素材料の着色防水シートにおける含有量について、さらなる検討を行った結果、炭素材料の含有量を0.10重量%以下に設定することで、活性ガスの発生を的確に抑制または防止し得ることが判った。
【0072】
したがって、着色防水シートを、防水シート50のように、防水シート30(躯体10)側に位置する接合面と、この接合面の防水シート30(躯体10)と反対側において露出する表面とを有する単層体で構成されるものとしたとき、この単層体からなる防水シート50における、炭素材料の含有量を0.10重量%以下とし、かつ、防水シート50に含まれる色材として炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを用いることで前記要求を満足し得るとの結論に至り、本発明を完成するに至った。
【0073】
以上のように、本発明の防水シート50は、上述した接合面と表面とを有する単層体により構成されており、活性ガスの発生の際に触媒的に作用する炭素材料の含有量が0.10重量%以下に設定され、遊泳者への視認性を付与するため、すなわち防水シート50を着色するために色材として、炭素材料とは異なる非炭素材料系のものを含んでいる。これに対して、防水シート30には、これら炭素材料と非炭素材料との双方が含まれないが、防水シート50と防水シート30とは、これらのこと以外は、同一の構成をなしており、防水シート50は、先に防水シート30で説明した、樹脂材料を含有する樹脂組成物で構成される。したがって、防水シート50における含有量が0.10重量%以下に設定されている炭素材料、および防水シート50に単独で含まれる非炭素材料以外は、ここでの説明を省略する。
【0074】
炭素材料は、一般的に、防水シートに黒色の色材として含まれ、これにより、防水シートに黒色の色調が付与されるが、前述の通り、本発明では、炭素材料が活性ガスの発生の際に触媒的に作用するため、その含有量が0.10重量%以下に設定されており、好ましくは0.07重量%以下に設定され、より好ましくは炭素材料が含まれていない。これにより、炭素材料が触媒的に作用することに起因する、活性ガスの発生を、的確に抑制または防止することができる。そのため、この活性ガスの発生に基づく、防水シート50の表面における経年に伴う膨れの発生を、的確に抑制または防止することができる。
【0075】
この炭素材料としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブおよびグラフェン等が挙げられる。黒色の色材として用いられる炭素材料のうち、これらのものが、活性ガスの発生に、触媒的に確実に作用するものであると考えられる。そのため、防水シート50に含まれる、これらの含有量を0.10重量%以下に設定することで、本発明により得られる効果を、確実に発揮させることができる。
【0076】
そして、防水シート50は、本実施形態では、図1に示すように、コースラインとして用いられるため、防水シート50に黒色の色調を付与する必要があり、そのために、防水シート50には、黒色の色材が含まれるが、この黒色の色材として、炭素材料とは異なる非炭素材料系のものが含まれている。これにより、活性ガスの発生を、的確に抑制または防止しつつ、防水シート50に黒色の色調を確実に付与することができる。
【0077】
この非炭素材料系の黒色の色材としては、特に限定されないが、好ましくは、金属酸化物の他、黒色の有機材料が挙げられる。金属酸化物によれば、黒色の色材として非炭素材料系のものを用いることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0078】
また、この金属酸化物としては、具体的には、例えば、酸化カルシウム(CaO)、二酸化マンガン(MnO)、四三酸化鉄(Fe)および酸化チタン(TiO)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
さらに、黒色の有機材料としては、例えば、ペリレン系顔料およびアゾメチン系顔料のうち黒色を示す有機顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
さらに、防水シート50における非炭素材料系の黒色の色材の含有量、すなわち、防水シート50を構成する、樹脂材料を含有する樹脂組成物における非炭素材料系の黒色の色材の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.2重量%以上5.0重量%以下程度であることが好ましく、0.4重量%以上3.0重量%以下程度であることがより好ましい。これにより、防水シート50に、コースラインすなわち指標としての機能を確実に付与することができる。また、かかる範囲内の含有量で非炭素材料系の黒色の色材が防水シート50に含まれていたとしても、この非炭素材料系の黒色の色材が触媒的に作用することに起因する、活性ガスの発生を、的確に抑制または防止することができる。
【0081】
また、防水シート50の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上3.0mm以下程度であるのが好ましく、0.8mm以上2.0mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、防水シート50に、コースライン(指標)としての機能を確実に付与し得るとともに、防水シート50により、防水シート30に対して確実に接合することができる。
【0082】
なお、非炭素材料系の色材は、防水シート50において、ほぼ均一に分散されていてもよいが、その接合面および表面のうちの少なくとも表面側に偏在するものであってもよい。防水シート50が、かかる構成をなす場合においても、本発明を適用することにより得られる効果を、確実に発揮させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、躯体10(貯水槽)すなわちプールに設けられる指標が、図1に示す、コースラインである場合、換言すればコースラインが本発明の防水シート50で構成される場合について説明したが、プールに設けられる指標としては、このコースラインの他、例えば、床部11に設けるものとして、遊泳者に遊泳している位置を示す5mラインおよび中央ライン等が、また、壁部12に設けるものとして、プールの深さを示す水位表示等が一例として挙げられる。そして、これらの指標も、コースラインと同様に、防水シート50で構成することで、防水シート50の表面における経年に伴う膨れの発生を的確に抑制または防止することができる。その結果、長期間に亘って、防水シート50(着色防水シート)と防水シート30との間における剥離の発生が的確に抑制または防止され、優れた各指標としての見栄えが維持される。
【0084】
さらに、本実施形態では、指標としてのコースラインが黒色に着色がなされ、この指標(コースライン)が本発明の防水シート50で構成されることとしたが、このように黒色に着色がなされた指標に限らず、例えば、青色や、赤色および緑色のような他の色に着色がなされ、これら他の色を暗色とするために、黒色の色材が含まれる指標においても、本発明の防水シート50を適用することが可能である。
【0085】
以上、本発明の防水シートおよびシート防水構造について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0086】
例えば、本発明の防水シートおよびシート防水構造において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0087】
また、前記実施形態では、躯体10を被覆する防水シート(第1防水シート)と、躯体10に意匠性を付与する指標としての着色防水シート(第2防水シート)とのうち、着色防水シート(第2防水シート)を、本発明の防水シート50で構成する場合について説明したが、これに限定されず、例えば、躯体10を被覆する防水シート(第1防水シート)に意匠性を付与するために、この防水シート(第1防水シート)が黒色の色材を含有する場合には、この防水シート(第1防水シート)を、本発明の防水シート50で構成することもできる。
【実施例0088】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0089】
1.着色防水シートの作製
[実施例1]
まず、塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニルの単量重合体で構成される粒子(平均粒径1μm)を、可塑剤として、DINP(フタル酸ジイソノニル)を、非炭素材料系の黒色の色材として、酸化カルシウム(CaO)と二酸化マンガン(MnO)と酸化チタン(TiO)との混合物(金属酸化物)を、それぞれ用意した。そして、塩化ビニル系樹脂64.38重量%、可塑剤35.00重量%および金属酸化物0.62重量%の混合比率でこれらを、ミキサーを用いて25℃で均一に混合することで樹脂組成物Aを得た。
【0090】
次に、樹脂組成物Aを、加熱・混練した後、ロールを用いてシート状に形成することで、加熱状態の着色防水シートを成形した後に冷却することで、実施例1の着色防水シートを得た。
【0091】
なお、この実施例1の着色防水シートの平面視での大きさは、縦100mm×横100mmであった。また、着色防水シートの厚さは、1.0mmであった。
【0092】
[実施例2]
非炭素材料系の黒色の色材として、酸化カルシウム(CaO)と二酸化マンガン(MnO)と酸化チタン(TiO)との混合物に代えてアゾメチンブラック(黒色の有機材料)を用意したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2の着色防水シートを作製した。
【0093】
[実施例3]
非炭素材料系の黒色の色材として、酸化カルシウム(CaO)と二酸化マンガン(MnO)と酸化チタン(TiO)との混合物に代えてペリレン顔料(黒色の有機材料)を用意したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例3の着色防水シートを作製した。
【0094】
[参考例1、比較例1、2]
非炭素材料系の黒色の色材に代えて、炭素材料としてのカーボンブラック(三菱ケミカル社製、「三菱カーボンブラック#45」)を黒色の色材として用意し、塩化ビニル系樹脂、可塑剤および炭素材料(黒色の色材)の混合比率を表1に示すものとして、これらを、ミキサーを用いて25℃で均一に混合することで樹脂組成物Aを得たこと以外は、前記実施例1と同様にして参考例1、比較例1、2の着色防水シートを作製した。
【0095】
2.着色防水シートの防水シートへの貼付
次に、各実施例、参考例および各比較例の着色防水シートを、それぞれ、防水シート30に対して貼付した。
【0096】
より詳しくは、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤が50重量部含まれる防水シート30を用意し、この防水シート30に対して、各実施例、参考例および各比較例の着色防水シートを貼付した。
【0097】
3.評価
各実施例、参考例および各比較例の着色防水シートについて、以下の方法を用いて評価した。
【0098】
すなわち、まず、各実施例、参考例および各比較例の着色防水シートが貼付された防水シート30について、それぞれ、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(塩素濃度:2000ppm、温度60℃)中に浸漬した。
【0099】
そして、各実施例、参考例および各比較例の着色防水シートについて、着色防水シートの表面における膨れの発生の有無、および、着色防水シートと防水シート30との間における剥離の有無について観察し、これらを、以下の基準にしたがって評価した。
【0100】
(着色防水シートの表面における膨れの評価)
次亜塩素酸ナトリウム水溶液中への浸漬後、着色防水シートの表面における膨れの発生が、
◎:70日を経過しても全く認められない
○:70日の経過の後に、若干ではあるが認められるが、違和感は認められない
△:70日の経過の後に認められるものの、
40日の経過の時点では認められない
×:40日の経過の時点で認められる
【0101】
(着色防水シートと防水シート30との間における剥離の評価)
次亜塩素酸ナトリウム水溶液中への浸漬後、
着色防水シートと防水シート30との間における剥離の発生が
◎:70日を経過しても全く認められない
○:70日の経過の後に、若干ではあるが認められるが、違和感は認められない
△:70日の経過の後に認められるものの、
40日の経過の時点では認められない
×:40日の経過の時点で認められる
これらの評価の結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示したように、各実施例の着色防水シートでは、炭素材料(カーボンブラック)が含まれず、その含有量が0.10重量%以下となっており、着色防水シート(防水シート50)の表面における膨れの発生、さらには、着色防水シート(防水シート50)と防水シート30との間における剥離の発生が抑制または防止されている結果を示した。
【0104】
これに対して、各比較例の着色防水シートでは、炭素材料(カーボンブラック)の含有量が0.10重量%超となっており、これに起因して、着色防水シートの表面において膨れが発生し、さらには、着色防水シートと防水シート30との間において剥離が発生してしまう結果を示した。
【符号の説明】
【0105】
1 シート防水構造
10 躯体
11 床部
12 壁部
13 入隅部
20 配置部材
21 第1部
22 第2部
30 防水シート
50 防水シート
図1
図2